JP4684435B2 - 不飽和ポリエステル化合物、その製造方法及び硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な不飽和ポリエステル化合物及びその製造方法に関する。該不飽和ポリエステル化合物は、末端にエチレン性不飽和基、側鎖にヒドロキシメチル基を有するため、種々の分野において光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有利に用いることができる。
本発明はさらに、上記不飽和ポリエステル化合物を含有し、紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、あるいはさらに加熱によって硬化し、柔軟性(耐屈曲性)と強度を兼ね備え、かつ、基材との密着性に優れた硬化物を与える硬化性組成物に関する。該組成物は接着剤、コーティング材料、プリント配線板用レジスト材料など広範囲に利用可能である。
【0002】
【従来の技術】
活性エネルギー線の照射による樹脂の硬化は、その硬化速度が速いことなどから、金属塗装、木材コーティング、印刷インキ、電子材料などに広く利用されている。これらの分野において用いられる光硬化性組成物は、一般的に、不飽和二重結合を有するプレポリマー、重合性モノマー、及び光重合開始剤を必須成分としている。光硬化性成分として主に用いられる前記プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、及びエポキシアクリレートが挙げられる。これらプレポリマーは、重合性の不飽和基を有しているので、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物(光重合開始剤)と混合することで架橋可能である。
【0003】
しかしながら、ポリエステルアクリレートは、側鎖に水酸基などの極性基がほとんど存在しないため、更なる変性反応に用いることが不可能である。ウレタンアクリレートは、基材との密着性には優れるものの、耐熱性に劣るウレタン結合を有しているためその用途は限定されている。エポキシアクリレートは、物性面で最も優れており、種々の分野での応用がなされているが、主に2級の水酸基を有するため、密着性の点では満足すべき性能が得られていないのが現状である。
【0004】
一方で、前記のようなラジカル重合性のプレポリマーは、一般に分子量が小さく、活性エネルギー線の照射により瞬間的に硬化するため、塗膜中に残留応力が生じ、基材への密着性、機械的特性が低下する問題点があった。かかる問題点を解決するために、オキセタンのカチオン重合を硬化反応として使用する組成物が報告されているが、ラジカル重合性のプレポリマー又はモノマーと比べて、使用できる材料の種類が少ないため、所望の硬化物特性を達成することは困難であった。
【0005】
また最近、新しい有機反応の創製や、その高分子反応への応用の観点から、4員環エーテルであるオキセタン環の開環付加反応を利用した有機合成が報告されており、例えばオキセタン化合物と活性エステルとの付加反応(T. Nishikubo and K. Sato, Chem. Lett., 697 (1992))や、ビスオキセタンとジカルボン酸との重付加反応による側鎖一級の水酸基を有するポリエステルの合成(T. Nishikubo, A. Kameyama, and A. Suzuki, Reactive & Functional Polymers, 37, 19 (1998))が報告されている。
【0006】
さらに、特開平10−168120号公報には、カルボキシル基含有樹脂にオキセタン基含有(メタ)アクリレートモノマーを開環付加するか、あるいはオキセタン環を含有する樹脂にカルボキシル基含有不飽和モノマーを開環付加することで、活性エネルギー線硬化型樹脂を製造する方法が開示されている。
しかしながら、前記したような公知文献にも、本発明の化合物類及びそれを用いた硬化性組成物に関する記載は無い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化すると共に、加熱による硬化も可能であり、かつ、側鎖に一級の水酸基を有することにより各種基材に対する密着性に優れ、また他の諸特性にも優れた硬化物を与える不飽和ポリエステル化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、このような不飽和ポリエステル化合物を生産性良く製造できる方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、あるいはさらに加熱によって硬化し、柔軟性(耐屈曲性)と強度を兼ね備え、かつ、基材に対する密着性等の諸特性に優れた硬化物が得られる硬化性組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の一側面によれば、(a)1分子中に少なくとも2つのオキセタン環を有する化合物と、(b)1分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物及び(c)不飽和モノカルボン酸とを、反応促進剤の存在下、上記化合物(a)と化合物(b)の割合がモル比で0.1<(b)/(a)<1の範囲で反応させて得られることを特徴とする、少なくとも2つの末端にエチレン性不飽和基、側鎖にヒドロキシメチル基を有する不飽和ポリエステル化合物が提供される。
【0009】
好適な態様においては、下記一般式(1)で表わされ、両末端にエチレン性不飽和基、側鎖にヒドロキシメチル基を有する不飽和ポリエステル化合物が提供される。
【化3】
式中、R1は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、R2は2官能オキセタン残基、R3はジカルボン酸残基、R4、R5及びR6は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、フッ素原子、又はフリル基を表わし、nは1〜300、好ましくは1〜150、さらに好ましくは1〜50の整数である。
【0010】
本発明の他の側面によれば、(a)1分子中に少なくとも2つのオキセタン環を有する化合物と、(b)1分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物及び(c)不飽和モノカルボン酸とを、反応促進剤の存在下、上記化合物(a)と化合物(b)の割合がモル比で0.1<(b)/(a)<1の範囲で反応させることを特徴とする不飽和ポリエステル化合物の製造方法が提供される。
【0011】
本発明のさらに他の側面によれば、(A)(a)1分子中に少なくとも2つのオキセタン環を有する化合物と、(b)1分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物及び(c)不飽和モノカルボン酸とを、反応促進剤の存在下、上記化合物(a)と化合物(b)の割合がモル比で0.1<(b)/(a)<1の範囲で反応させて得られる、少なくとも2つの末端にエチレン性不飽和基、側鎖にヒドロキシメチル基を有する不飽和ポリエステル化合物、及び(B)重合開始剤を必須成分として含有することを特徴とする硬化性組成物が提供される。
好適な態様においては、上記不飽和ポリエステル化合物(A)は、前記一般式(1)で表わされ、両末端にエチレン性不飽和基、側鎖にヒドロキシメチル基を有する不飽和ポリエステル化合物である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、1分子中に少なくとも2つのオキセタン環を有する化合物(以下、ビスオキセタン化合物という)と、1分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物(以下、ジカルボン酸という)との重付加反応を行なう際に、不飽和モノカルボン酸共存下、及び/又は重付加反応終了後に不飽和モノカルボン酸を添加しさらに付加反応を行なうことにより、ポリマーの末端に重合性の不飽和基が導入され、かつ、側鎖に一級水酸基を有する不飽和ポリエステル化合物が得られること、及びこの化合物は、オキセタン環の開環反応によって生成する一級の水酸基と、末端に不飽和二重結合を併せ持つ特定の構造を有するため、短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化すると共に、不飽和二重結合の存在により熱ラジカルによる加熱硬化が可能であり、また、上記側鎖の一級水酸基の存在のために水酸基と反応し得る硬化剤(例えば、イソシアネート類)の添加により加熱硬化も可能であること、かつ、一級水酸基の水素結合性によって、得られた硬化物は各種基材に対して優れた密着性を示すこと、さらに、主鎖がエーテル結合とエステル結合の直鎖状構造のため、これを硬化性成分として含有する組成物は、硬化収縮が少なく、柔軟性(耐屈曲性)と強度を兼ね備え、さらには主鎖のポリエステル構造に起因する優れた機械的特性も有する硬化物を与えることを見出した。また、このような化合物の工業的に有利な製造方法も見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の不飽和ポリエステル化合物は、ビスオキセタン化合物(a)と、ジカルボン酸(b)及び不飽和モノカルボン酸(c)との反応から得られることを特徴とする、末端に重合性不飽和基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂であると共に、熱硬化性樹脂でもあり、反応促進剤、例えば三級アミン、四級オニウム塩、三級ホスフィン等の存在下、簡便な工程を経て製造することができる。
その反応過程は以下の通りである。
▲1▼まず、下記反応式のようにビスオキセタン化合物(a)とジカルボン酸(b)の重付加反応が進行する。この反応は、ビスオキセタン化合物(a)をジカルボン酸(b)よりも過剰に用いることによりほぼ理論的に進行し、両末端にオキセタン環を有する化合物が得られる。
【化4】
【0014】
▲2▼次に、下記反応式に示すように、上記重付加反応の生成物の末端オキセタン環に対する不飽和モノカルボン酸(c)の開環付加反応が生起し、本発明の不飽和ポリエステル化合物が得られる。なお、副反応として、未反応のジカルボン酸が一方の末端オキセタン環に反応し、そのまま一方の末端にカルボキシル基が残存する可能性も考えられるが、この化合物も末端に重合性の不飽和基が導入され、かつ、側鎖に一級水酸基を有する不飽和ポリエステル化合物であり、混在していてもなんら差し支えない。
【化5】
【0015】
ここで、本発明に用いられるビスオキセタン化合物(a)の代表例としては、下記一般式(2)で示されるビスオキセタン類が挙げられる。
【化6】
上記一般式(2)において、R1は前記と同じ意味であり、R2は、炭素数1〜12の線状又は分岐状飽和炭化水素類、炭素数1〜12の線状又は分岐状不飽和炭化水素類、下記式(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)で示される芳香族炭化水素類、式(F)及び(G)で示されるカルボニル基を含む直鎖状又は環状のアルキレン類、式(H)及び(I)で示されるカルボニル基を含む芳香族炭化水素類から選択される2価の原子価を持った基である。
【0016】
【化7】
式中、R7は、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表わし、R8は、−O−、−S−、−CH2−、−NH−、−SO2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、又は−C(CF3)2−を表わし、R9は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表わす。
【0017】
【化8】
式中、mは1〜12の整数を表わす。
【0018】
【化9】
【0019】
本発明に用いられるジカルボン酸(b)の代表例としては、下記一般式(3)で示されるジカルボン酸類が挙げられる。
【化10】
式中、R3は前記と同じ意味である。
【0020】
ジカルボン酸の具体的な例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカ二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸等の炭素数2〜20の直鎖脂肪族ジカルボン酸;メチルマロン酸、エチルマロン酸、n−プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、1,1,3,5−テトラメチルオクチルコハク酸等の炭素数3〜20の分岐状脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メチルシトラコン酸、メサコン酸、メチルメサコン酸、イタコン酸、グルタコン酸等の直鎖又は分岐状脂肪族不飽和ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−1,6−ジカルボン酸、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸、式(J)でそれぞれ示されるメチルヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロイソフタル酸及びメチルヘキサヒドロテレフタル酸等のテトラヒドロフタル酸などが挙げられる。
【化11】
【0021】
さらに、シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキセン−1,5−ジカルボン酸、シクロヘキセン−3,5−ジカルボン酸等のテトラヒドロイソフタル酸;シクロヘキセン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキセン−3,6−ジカルボン酸等のテトラヒドロテレフタル酸;1,3−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサジエン−1,6−ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサジエン−2,3−ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサジエン−5,6−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサジエン−1,6−ジカルボン酸等のジヒドロフタル酸;1,3−シクロヘキサジエン−1,3−ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサジエン−3,5−ジカルボン酸等のジヒドロイソフタル酸;1,3−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサジエン−2,5−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサジエン−3,6−ジカルボン酸等のジヒドロテレフタル酸;式(K)で示されるメチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンド−cis−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(商品名:ナジック酸)及びメチルエンド−cis−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(商品名:メチルナジック酸)などの飽和又は不飽和脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【化12】
【0022】
さらには、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、3−メチルフタル酸、3−エチルフタル酸、3−n−プロピルフタル酸、3−sec−ブチルフタル酸、3−イソブチルフタル酸、3−tert−ブチルフタル酸等の3−アルキルフタル酸類;2−メチルイソフタル酸、2−エチルイソフタル酸、2−プロピルイソフタル酸、2−イソプロピルイソフタル酸、2−n−ブチルイソフタル酸、2−sec−ブチルイソフタル酸、2−tert−ブチルイソフタル酸等の2−アルキルイソフタル酸;4−メチルイソフタル酸、4−エチルイソフタル酸、4−プロピルイソフタル酸、4−イソプロピルイソフタル酸、4−n−ブチルイソフタル酸、4−sec−ブチルイソフタル酸、4−tert−ブチルイソフタル酸等の4−アルキルイソフタル酸:メチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸、プロピルテレフタル酸、イソプロピルテレフタル酸、n−ブチルテレフタル酸、sec−ブチルテレフタル酸、tert−ブチルテレフタル酸等のアルキルテレフタル酸;ナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ナフタレン−1,3−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−1,6−ジカルボン酸、ナフタレン−1,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、アントラセン−1,3−ジカルボン酸、アントラセン−1,4−ジカルボン酸、アントラセン−1,5−ジカルボン酸、アントラセン−1,9−ジカルボン酸、アントラセン−2,3−ジカルボン酸、アントラセン−9,10−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0023】
また本発明では、ジカルボン酸として上記の他に、下記一般式(L)で示されるジカルボン酸を用いることができる。
【化13】
式中、R10は、−O−、−S−、−CH2−、−NH−、−SO2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、又は−C(CF3)2−を表わす。
【0024】
本発明に用いられる不飽和モノカルボン酸(c)としては、分子中に重合性の不飽和基とカルボキシル基を併せ持つ化合物であれば公知のものが使用可能である。具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、ソルビン酸、α−シアノケイ皮酸、β−スチリルアクリル酸等が挙げられる。また、二塩基酸無水物と水酸基を有する(メタ)アクリレート類とのハーフエステルを用いてもよい。具体的には、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸等の酸無水物と、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類とのハーフエステルなどが挙げられる。これらの不飽和モノカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0025】
本発明において、ビスオキセタン化合物(a)とジカルボン酸(b)との割合(反応混合物中の仕込み割合)は、モル比で0.1<(b)/(a)<1の範囲が好ましく、より好ましくは0.5<(b)/(a)<1の範囲である。上記割合が0.1以下であると、生成する樹脂中へのジカルボン酸骨格の導入量が少なくなり、所望の分子量のポリエステル樹脂が得られず、充分な塗膜物性が得られないので好ましくない。一方、上記割合が1を超えると、重付加反応において重合末端がカルボキシル基となるため、引き続く不飽和モノカルボン酸(c)の付加反応が進行せず、重合性基の導入が困難となるため好ましくない。
【0026】
本発明において、不飽和モノカルボン酸(c)の割合(反応混合物中の仕込み割合)は、オキセタニル基1モルに対し不飽和モノカルボン酸が約0.1〜3.0モルの割合であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.5モルの割合、より好ましくは0.5〜1.0モルの割合である。不飽和モノカルボン酸の量がオキセタニル基1モル当り0.1モルより少ない場合は、前記重付加生成物中への重合性基の導入が不充分となり、充分な光硬化性が得られないので好ましくない。未反応の不飽和モノカルボン酸が残存した場合は、減圧留去、アルカリ洗浄などの周知の方法にて除去してもよい。
また、不飽和モノカルボン酸(c)の添加方法は、前記ビスオキセタン化合物(a)とジカルボン酸(b)との重付加反応終了後に添加するか、又はビスオキセタン化合物、ジカルボン酸、及び不飽和モノカルボン酸の3成分を一括で添加する方法のいずれかでかまわないが、作業性を考慮すると一括で添加するのが好ましい。
【0027】
本発明の不飽和ポリエステル化合物の製造において使用する反応促進剤としては、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、又はホスホニウムイリドの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン)、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンなどが挙げられる。
三級アミン塩としては、例えば、サンアプロ(株)製のU−CATシリーズなどが挙げられる。
【0029】
四級オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。特に好ましいものは、アンモニウム塩及びホスホニウム塩である。アンモニウム塩の具体例としては、テトラn−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラn−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)等のテトラn−ブチルアンモニウムハライドや、テトラn−ブチルアンモニウムアセテート(TBAAc)などが挙げられる。ホスホニウム塩の具体例としては、テトラn−ブチルホスホニウムクロライド(TBPC)、テトラn−ブチルホスホニウムブロミド(TBPB)、テトラn−ブチルホスホニウムアイオダイド(TBBI)等のテトラn−ブチルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド(TPPC)、テトラフェニルホスホニウムブロミド(TPPB)、テトラフェニルホスホニウムアイオダイド(TPPI)等のテトラフェニルホスホニウムハライドや、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ETPPB)、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(ETPPAc)などが挙げられる。
【0030】
三級ホスフィンとしては、炭素数1〜12のアルキル基、又はアリール基を有する、三価の有機リン化合物であればよい。具体例としては、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0031】
さらに、三級アミン又は三級ホスフィンと、カルボン酸あるいは酸性の強いフェノールとの付加反応により形成される四級オニウム塩も反応促進剤として使用可能である。これらは、反応系に添加する前に四級塩を形成するか、もしくはそれぞれを別に添加して反応系中で四級塩形成を行なわせるいずれの方法でもよい。具体的には、トリブチルアミンと酢酸より得られるトリブチルアミン酢酸塩、トリフェニルホスフィンと酢酸より形成されるトリフェニルホスフィン酢酸塩などが挙げられる。
【0032】
また、クラウンエーテル錯体の具体例としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ18−クラウン−6、21−クラウン−7、24−クラウン−8等のクラウンエーテル類と、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属塩との錯体が挙げられる。
【0033】
ホスホニウムイリドとしては、ホスホニウム塩と塩基との反応により得られる化合物であれば公知のものが使用可能であるが、取扱いの容易さから安定性の高いものの方が好ましい。具体的な例としては、(ホルミルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ピバロイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メトキシベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メチルベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−ニトロベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ナフトイル)トリフェニルホスフィン、(メトキシカルボニル)トリフェニルホスフィン、(ジアセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルシアノ)トリフェニルホスフィン、(ジシアノメチレン)トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0034】
この反応促進剤の使用量は、オキセタニル基1モルに対して約0.1〜25モル%の割合であることが望ましく、さらに好ましくは0.5〜20モル%の割合であり、より好ましくは1〜15モル%の割合である。反応促進剤の使用量がオキセタニル基に対して0.1モル%よりも少ない割合の場合、実用的な速度で反応が進行し難く、一方、25モル%を超えて多量に存在しても顕著な反応促進効果は見られないため、経済性の点で好ましくない。
【0035】
本発明の不飽和ポリエステル化合物の製造における反応温度としては、約100〜200℃の範囲が望ましく、さらに好ましくは120〜160℃である。反応温度が100℃よりも低い場合には、反応が進行し難くなるので好ましくない。一方、200℃を超えた場合には、生成物の二重結合が反応して熱重合を生じ易くなり、また低沸点の不飽和モノカルボン酸が蒸発するので好ましくない。反応時間は、原料の反応性、反応温度に応じて適時選択すればよいが、約5〜72時間が好適である。
【0036】
本発明の不飽和ポリエステル化合物の製造における前記反応は、有機溶媒の存在下又は無溶剤下のいずれでも進行するが、反応速度が速い点では無溶剤の方が望ましい。一方、反応時の攪拌効果を改善するために希釈剤の存在下で行なうこともできる。用いる希釈剤としては反応温度を維持できるものであれば特に限定されないが、好ましくは原料を溶解するものが良い。また、合成時の希釈剤として有機溶媒を用いた場合には、減圧蒸留など公知の方法にて溶媒を除去してもよい。さらには、製造時に後述する反応性モノマーなどの反応性希釈剤の存在下で行なうことも可能である。
【0037】
有機溶剤としては、反応に影響を与えず、反応温度を維持できるものであれば公知のものが使用できる。具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0038】
前記のようにして得られた本発明の不飽和ポリエステル化合物(A)の1種又は2種以上の混合物に、重合開始剤(B)として光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を混合することにより、光硬化性及び/又は熱硬化性の組成物が得られる。さらに該組成物に希釈剤(C)として後述するような反応性モノマーを添加することにより、光硬化性を向上させることができる。なお、本発明の硬化性組成物に含まれる不飽和ポリエステル化合物(A)の使用量には、特に制限が無い。
【0039】
ここで、重合開始剤(B)として用いられる光ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する公知の化合物が使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチルチオ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアミノアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィン類;9−フェニルアクリジン等のアクリジン類などが挙げられる。
【0040】
これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光ラジカル重合開始剤の配合量は、前記不飽和ポリエステル化合物(A)100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。光ラジカル重合開始剤の配合量が上記範囲よりも少ない場合、活性エネルギー線の照射を行なっても硬化しないか、もしくは照射時間を増やす必要があり、適切な塗膜物性が得られ難くなる。一方、上記範囲よりも多量に光ラジカル重合開始剤を添加しても、硬化性に変化は無く、経済的に好ましくない。
【0041】
本発明の硬化性組成物においては、活性エネルギー線による硬化を促進させるために、硬化促進剤及び/又は増感剤を上記のような光ラジカル重合開始剤と併用してもよい。使用し得る硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート等の三級アミン類;β−チオジグリコール等のチオエーテル類などが挙げられる。増感剤としては、(ケト)クマリン、チオキサンテン等の増感色素類;及びシアニン、ローダミン、サフラニン、マラカイトグリーン、メチレンブルー等の色素のアルキルホウ酸塩などが挙げられる。これらの硬化促進剤及び/又は増感剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、前記不飽和ポリエステル化合物(A)100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。
【0042】
本発明において使用し得る熱ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2,4−ジバレロニトリル、1,1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1´−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレイト、4,4´−アゾビス−4−シアノバリックアシツド、2−メチル−2,2´−アゾビスプロパンニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられ、より好ましくはノンシアン、ノンハロゲンタイプの1,1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤は、前記不飽和ポリエステル化合物(A)100質量部当り0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部の割合で用いられる。
【0043】
また、熱ラジカル重合開始剤として有機過酸化物のうち硬化速度の小さいものを用いる場合には、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチル−p−トルイジン、ジメチルアニリン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の三級アミン、あるいはナフテン酸コバルト、オクトエ酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の金属石鹸を促進剤として用いることができる。
【0044】
本発明の硬化性組成物には、希釈剤(C)を合成時あるいは合成後に加えることができる。希釈剤(C)としては、硬化反応に関与することができる重合性基を有する化合物を好適に用いることができ、単官能(メタ)アクリレート類及び/又は多官能(メタ)アクリレート類などの公知の反応性希釈剤が使用可能である。具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレート、及び二塩基酸無水物と1分子中に少なくとも1個以上の不飽和基を有するアルコールとの反応物などを挙げることができる。さらに、粘度調整のために前記したような有機溶剤を希釈剤として添加することも可能である。希釈剤(C)は、単独で又は2種以上の混合物で用いられ、その使用量には制限が無い。
【0045】
さらに、本発明の硬化性組成物には、必要に応じて硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどの公知慣用の充填剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知慣用の着色顔料、消泡剤、密着性付与剤、レベリング剤等の各種添加剤類を加えてもよい。
【0046】
前記硬化性組成物を硬化させるための活性エネルギー線照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが適当である。また、レーザー光線なども露光用活性光線として利用できる。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線、中性子線なども利用可能である。
【0047】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限りすべて質量基準である。
【0048】
合成例1
撹拌機、温度計、及び還流冷却管を備えた100mLの4つ口フラスコに、テレフタレートビスオキセタン(宇部興産(株)製)18.1g、イソフタル酸2.5g、メタクリル酸4.3g、テトラフェニルホスホニウムブロミド1.0g、メトキノン0.05g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20gを加え、140℃にて12時間撹拌することで不飽和ポリエステル化合物を55%含む樹脂溶液を得た。GPCにてモノマー成分が全て消費されているのを確認し、反応が完結したと判断した。その構造はIRスペクトル及び1H−NMRにより確認した。また、GPC測定より重量平均分子量は2500であった。これを、樹脂−Aとする。得られた樹脂のIRスペクトルを図1に示す。
【0049】
合成例2
イソフタル酸の仕込み量を7.1gに、メタクリル酸の仕込み量を1.5gに変えたこと以外は、合成例1と同様な方法にて重量平均分子量4200の不飽和ポリエステル化合物を55%含む樹脂溶液を得た。その構造はIRスペクトル及び1H−NMRにより確認した。また、GPC測定より重量平均分子量は4200であった。これを、樹脂−Bとする。
【0050】
合成例3
撹拌機、温度計、及び還流冷却管を備えた100mLの4つ口フラスコに、ビス(3−エチル−3−オキセタニル)エーテル(宇部興産(株)製)10.7g、アジピン酸5.5g、テトラフェニルホスホニウムブロミド1.0g、及びN−メチルピロリドン20gを加え、140℃にて12時間撹拌し重付加反応を行なった。この反応溶液に、メタクリル酸2.2g及びメトキノン0.1gを添加してさらに140℃にて12時間撹拌した。得られた反応混合物を大量の水に注ぎ、沈澱物を減圧乾燥することで不飽和ポリエステル化合物を8.5g得た。その構造はIRスペクトル及び1H−NMRにより確認した。また、GPC測定より重量平均分子量は2100であった。これを、樹脂−Cとする。
【0051】
合成例4
撹拌機、温度計、及び還流冷却管を備えた100mLの4つ口フラスコに、4,4´−ビス(3−エチル−3−オキセタニル)ビフェノール9.6g、テレフタル酸3.2g、テトラフェニルホスホニウムブロミド1.0g、及びN−メチルピロリドン20gを加え、140℃にて12時間撹拌し重付加反応を行なった。この反応溶液に、メタクリル酸2.2g及びメトキノン0.05gを添加してさらに140℃にて12時間撹拌した。得られた反応混合物を大量のメタノールに注ぎ、沈澱物を減圧乾燥することで不飽和ポリエステル化合物を9.7g得た。その構造はIRスペクトル及び1H−NMRにより確認した。また、GPC測定より重量平均分子量は9000であった。これを、樹脂−Dとする。
【0052】
合成例5
ジカルボン酸をイソフタル酸に変えたこと以外は、合成例4と同様の方法にて不飽和ポリエステル化合物を10.6g得た。その構造はIRスペクトル及び1H−NMRにより確認した。また、GPC測定より重量平均分子量は8000であった。これを、樹脂−Eとする。
【0053】
合成例6
ジカルボン酸を4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸4.6gに変えたこと以外は、合成例4と同様の方法にて不飽和ポリエステル化合物を12.4gを得た。その構造はIRスペクトル及び1H−NMRにより確認した。また、GPC測定より重量平均分子量は7000であった。
【0054】
下記実施例及び比較例で用いた原材料を表1に示す。
【表1】
【0055】
実施例1〜5及び比較例
表2に示す配合割合で各成分を配合し、3本ロールミルを用いて混練し、活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、以下の性能試験に供した。
【表2】
【0056】
(1)光硬化性
活性エネルギー線硬化性組成物を、バーコーターにて銅箔上に10μmの膜厚で塗布し、高圧水銀灯を用いて光照射を行ない、タックフリーとなるまでの時間を測定した。
【0057】
(2)二重結合の転化率
活性エネルギー線硬化性組成物を、KBr板に10μmの膜厚になるように塗布し、高圧水銀灯にて120秒間光照射を行ない、IRスペクトルにて二重結合の転化率を測定した。
【0058】
(3)耐溶剤性
活性エネルギー線硬化性組成物を、銅箔上に10μmの膜厚になるように塗布し、高圧水銀灯にて120秒間光照射を行ない、硬化塗膜を作成した。この塗膜を、アセトンをしみ込ませた脱脂綿でこすり、表面に曇りが見られるまでの回数を目視にて評価した。
【0059】
(4)密着性
活性エネルギー線硬化性組成物を、銅箔上に10μmの膜厚になるように塗布し、高圧水銀灯にて120秒間光照射を行ない、硬化塗膜を作成した。この塗膜にクロスカットを入れ、セロハン粘着テープでのピーリングにより塗膜の剥がれ具合を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ 100/100で全く変化が見られないもの
△ 50/100〜90/100
× 0/100〜50/100
【0060】
(5)耐屈曲性
活性エネルギー線硬化性組成物をポリイミドフィルムに10μmの膜厚になるように塗布し、高圧水銀灯にて120秒間光照射を行ない、評価サンプルを作成した。この評価サンプルを180°に折り曲げた際のクラックの有無を目視にて評価した。
○ 全くクラックの無いもの
△ わずかにクラックが発生したもの
× 全面にクラックが発生したもの
【0061】
上記の試験結果を表3にまとめて示す。
【表3】
表3に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1〜5の活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性及び耐溶剤性については充分であることが確認できた。また、比較例に係る組成物では、密着性の評価において剥がれが多く、しかも、耐屈曲性の試験においてクラックが多く発生した。この点、本発明に係る組成物では、表3に示す結果から明らかなように、密着性及び耐屈曲性に優れた硬化物を与えることが分かる。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、本発明の不飽和ポリエステル化合物は、オキセタン環の開環反応によって生成する一級の水酸基と、不飽和二重結合を併せ持つ特定の構造を有するため、短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化すると共に、不飽和二重結合の存在により熱ラジカルによる加熱硬化が可能であり、また、上記側鎖の一級水酸基の存在のために水酸基と反応し得る硬化剤(例えば、イソシアネート類)の添加により加熱硬化も可能である。しかも、一級水酸基の水素結合性によつて、得られた硬化物は各種基材に対して優れた密着性を示す。従って、本発明の不飽和ポリエステル化合物は、様々の分野において、硬化性組成物の光硬化性成分や熱硬化性成分などとして有利に用いることができる。さらに本発明の方法によれば、上記のような不飽和ポリエステル化合物を収率良く製造できる。
また、このような不飽和ポリエステル化合物を光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として含有する本発明の硬化性組成物は、短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化すると共に、加熱硬化も可能であり、また主鎖がエーテル結合とエステル結合の直鎖状構造のため、これを硬化性成分として含有する組成物は硬化収縮が少なく、各種基材に対する密着性に優れると共に、柔軟性(耐屈曲性)と強度を兼ね備え、さらには主鎖のポリエステル構造に起因する優れた機械的特性も有する硬化物が得られるので、各種保護膜、塗料、接着剤、シーリング剤、印刷インキ、電気絶縁材料、プリント配線基板の各種レジスト、層間絶縁材料などの様々の応用分野において有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1で得られた不飽和ポリエステル化合物のIRスペクトルである。
Claims (5)
- (a)1分子中に少なくとも2つのオキセタン環を有する化合物と、(b)1分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物及び(c)不飽和モノカルボン酸とを、反応促進剤の存在下、上記化合物(a)と化合物(b)の割合がモル比で0.1<(b)/(a)<1の範囲で反応させて得られることを特徴とする、少なくとも2つの末端にエチレン性不飽和基、側鎖にヒドロキシメチル基を有する不飽和ポリエステル化合物。
- (a)1分子中に少なくとも2つのオキセタン環を有する化合物と、(b)1分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物及び(c)不飽和モノカルボン酸とを、反応促進剤の存在下、上記化合物(a)と化合物(b)の割合がモル比で0.1<(b)/(a)<1の範囲で反応させることを特徴とする不飽和ポリエステル化合物の製造方法。
- (A)(a)1分子中に少なくとも2つのオキセタン環を有する化合物と、(b)1分子中に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物及び(c)不飽和モノカルボン酸とを、反応促進剤の存在下、上記化合物(a)と化合物(b)の割合がモル比で0.1<(b)/(a)<1の範囲で反応させて得られる、少なくとも2つの末端にエチレン性不飽和基、側鎖にヒドロキシメチル基を有する不飽和ポリエステル化合物、及び(B)重合開始剤を必須成分として含有することを特徴とする硬化性組成物。
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