JP4683742B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池に係わり、特に、複数の固体電解質形燃料電池セルを電気的に接続する際の導電部材を改良した燃料電池に関する。
【0002】
【従来技術】
図4は、円筒型の固体電解質形燃料電池セルを示すもので、円筒型燃料電池セル1は、例えば、LaMnO3系空気極2の支持管に、Y2O3安定化ZrO2からなる固体電解質3と、LaCrO3系よりなるインターコネクタ5の緻密質な膜を形成し、固体電解質3の上面にNi−ジルコニア系の燃料極4を設けて形成されている。
【0003】
そして、燃料電池セル1は、図5に示すように、上下方向の燃料電池セル1同士が導電部材10を介することにより接続され、図5における左右方向に隣接する燃料電池セル1の燃料極4同士が導電部材13を介することにより電気的に接続されている。
【0004】
即ち、図5における上下方向の燃料電池セル1同士は、上に位置する燃料電池セル1の燃料極4と、下に位置する燃料電池セル1のインターコネクタ5との間に、Niを主成分とする金属繊維の集合体からなる導電部材10が配置され、この導電部材10により、上に位置する燃料電池セル1の燃料極4と、下に位置する燃料電池セル1のインターコネクタ5とが電気的に導通している。
【0005】
導電部材10、13は、燃料電池セル1相互間の電気的な導通と、燃料電池セル1相互間の機械的な応力緩和にある。このため、導電部材10、13は、ガスの透過性があり、弾力性のある金属繊維の集合体が用いられている。また導電部材10の金属繊維の材料としては、雰囲気が水素雰囲気から発電によって生じた水蒸気を含む雰囲気まで安定であるという理由から、Ni金属が利用されている。
【0006】
燃料電池は、図5に示すような燃料電池セル1同士が電気的に接続されたスタックを作製し、これらを複数組み合わせるとともに、その集合体の両端(正極側および負極側)に集電部材を配置して構成される。燃料電池は、燃料電池セル1の空気極2側に酸素を含有するガス、たとえば空気を流し、燃料極4側に燃料、例えば水素を流しながら、1000℃近傍の温度で発電する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
導電部材10、13は、セル1間の電気的な導通を行うことと、セル1間の応力を緩和するために、円筒型固体電解質形燃料電池においてはセル1間に、即ちセル1の4側面に配置され、複数のセル1からなるセル列を複数行設けて束ねられている。このため、複数のセル1を束ねる行程は複雑で時間がかかるものであった。また、このようにセル1間に配置された導電部材はズレやすく、発電中のショートの原因にもなっていた。
【0008】
本発明は、セルを束ねる行程を簡略化できるとともに、さらにはインターコネクタと燃料極等との電気的なショートを防止できる燃料電池を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池は、筒状の固体電解質の片面に空気極を、他面に燃料極を形成してなり、前記空気極または前記燃料極に電気的に接続されるインターコネクタを有する複数の燃料電池セルからなるセル列を複数行設け、一方のセル列と他方のセル列との間に金属繊維の集合体からなる導電部材を設け、前記一方のセル列における前記燃料電池セルの前記インターコネクタと、前記他方のセル列における前記燃料電池セルの前記空気極または前記燃料極とを電気的に接続しており、前記導電部材は、前記インターコネクタに当接する第1導電部材と、前記空気極または前記燃料極と当接する第2導電部材とを備え、前記第1導電部材の密度が前記第2導電部材の密度よりも高いものである。
【0014】
このような構成によれば、導電部材の電気抵抗による出力低下と燃料ガスの不透過による出力低下を最小限に抑制できる。即ち、燃料ガス(空気または水素ガス)が密度の低い第2導電部材を透過して空気極または燃料極内に十分に侵入することができ、これにより、第2導電部材に当接する空気極または燃料極を介して十分な燃料ガスを供給できる。また、第2導電部材は密度が低いために変形しやすく、空気極または燃料極との接触面積が大きくなり電気抵抗による出力低下を抑えることができる。一方、密度が高い第1導電部材を、電流が流れる箇所にもってきてあるので、電気抵抗による損失を小さくできる。
【0015】
また、本発明では、第1導電部材と第2導電部材の間には、該第1導電部材および第2導電部材よりも密度が高い高密度導電部材が設けられていることが望ましい。このような構成によれば、第1導電部材と第2導電部材の間に高密度導電部材を配置したので、導電部材の電気抵抗による損失を小さくできる。
【0016】
この高密度導電部材は、Niを主成分とする金属板であることが望ましい。これにより、燃料ガスの不透過による出力低下を最小限に抑制できるとともに、電気抵抗の小さい金属板が介装されているため導電部材全体の電気抵抗を抑えて、導電部材の電気抵抗による出力低下をさらに抑制できる。
【0017】
さらに、本発明では、燃料電池セルの外径は10mm以下であることが望ましい。このような外径が10mm以下の燃料電池セルでは、導電部材の凹凸が大きくないためセル形状に対応しやすく変形しにくく、バンドル化(導電部材の一体化)に適しているとともに、インターコネクタと燃料極がショートしにくくなる。
【0018】
また、本発明では、導電部材はNiを主成分とする金属繊維を加圧し、先に高密度の部位を作製し、後になるほど低密度の部位を加圧し、一体に成形することが望ましい。金属繊維を密度の高い部位から加圧成形し、低い部位へと次第に加圧成形していくため、一体の導電部材を作製できるとともに、密度が高い部位を先に加圧するので低い部位の加圧でも密度の影響を受けないので、導電部材の密度を制御でき、目的の密度にできる。
【0019】
さらに、本発明では、導電部材は、還元雰囲気中、燃料電池の動作温度以上の温度で熱処理されていることが望ましい。これにより、動作温度で連続運転しても導電部材が収縮することなく、安定した性能が望める。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料電池は、図1に示すように、複数の燃料電池セル1から構成されており、これらの燃料電池セル1は、固体電解質3の内面に円筒状の空気極2が、外面に燃料極4が形成されており、空気極2に電気的に接続されたインターコネクタ5が、燃料極4と導通せずに、外部に露出して構成されている。
【0021】
そして、本発明では、図1に示したように、複数の燃料電池セル1からなるセル列Aが複数行設けられ、一方のセル列Aと他方のセル列Aとの間に導電部材20が設けられ、一方のセル列Aにおける燃料電池セル1のインターコネクタ5と、他方のセル列Aにおける燃料電池セル1の燃料極4とが電気的に接続されている。燃料電池セル1は、図1では、インターコネクタ5が上側を向くように配列されている。
【0022】
即ち、導電部材20は波板状に形成されており、上側の燃料電池セル1の燃料極4と下側の燃料電池セル1のインターコネクタ5との間に、導電部材20が位置するとともに、この導電部材20が、左右方向に隣接する燃料電池セル1の燃料極4間にも位置している。
【0023】
左右方向に隣接する燃料電池セル1の燃料極4間の電気的な接続については、どの位置を接続しても良いが、燃料電池セル1間の機械的な保持、位置固定という点から、導電部材20は蛇行した形状とされ、隣接する燃料極4間の間隔が最も近い位置において、導電部材20が介装されている。導電部材20は、Niを主成分とする金属繊維の集合体から構成されている。
【0024】
金属繊維の集合体からなる導電部材20は、還元雰囲気中、燃料電池の動作温度以上の温度で熱処理されていることが望ましい。これにより、動作温度で連続運転しても導電部材が収縮することなく、安定した性能が望める。
【0025】
このような導電部材20がセル列A間に配置されているので、導電部材20の変形や位置ズレが殆どなく、同一のセルの燃料極の部分とインターコネクタの部分が接触することがなく、電気的なショートの発生を防止できる。
【0026】
また、一方のセル列Aと他方のセル列Aとの間に一体化した導電部材20を複数の燃料電池セル1を並列に接続するように設けたので、従来のように、燃料電池セルの4側面に配置することがなく、スタック化する際の作業効率を飛躍的に上昇できる。
【0027】
また、本発明では、図2に示すように、平板形状の導電部材20が密度の異なる二層以上からなるとともに、同一セル列Aのインターコネクタ5に当接する第1導電部材20aの密度が、同一セル列Aの燃料極4に当接する第2導電部材20bの密度よりも高いことが望ましい。
【0028】
このような構成によれば、燃料ガスが密度の低い第2導電部材20bを透過して燃料極4内に十分に侵入することができ、これにより、第2導電部材20bに当接する燃料極4を介して十分な燃料ガスを供給できる。
【0029】
また、第2導電部材20bは密度が低いために変形しやすく、燃料極4の形状に沿って変形し易く、燃料極4との接触面積が大きくなり電気抵抗による出力低下を抑えることができる。一方、密度が高い第1導電部材20aをインターコネクタ5に当接しているため、電気抵抗による損失を小さくできるとともに、第1導電部材20aの変形が抑制されているため、同一燃料電池セル1での燃料極4とインターコネクタ5とのショートを防止できる。
【0030】
導電部材20は、Niを主成分とする金属繊維を加圧し、先に高密度の部位を作製し、後になるほど低密度の部位を加圧し、一体に成形することが望ましい。金属繊維を密度の高い部位から加圧成形し、低い部位へと次第に加圧成形していくため、一体の導電部材20を作製できるとともに、密度が高い第1導電部材20aを先に加圧するので低い第2導電部材20bの加圧でも密度の影響を受けないので、導電部材20の密度を制御でき、目的の密度にできる。
【0031】
また、図2(b)に示すように、第2導電部材20bの厚みを厚くし、変形し易くすることにより(密度を小さくしても良い)、燃料極4を半分程度埋設することもできる。この場合には、隣接する燃料極4間の間隔が最も近い位置まで埋設することにより、燃料電池セル1間の機械的な保持、位置固定を行うことができる。
【0032】
第1導電部材20a、第2導電部材20bは、Niを主成分とする金属繊維の集合体から構成されている。Niを主成分とする金属繊維の集合体は嵩密度0.44〜2.21g/cm3が望ましい。嵩密度が0.44g/cm3よりも小さい場合には導電部材20a、20bの電気抵抗が大きくなる傾向があり、燃料電池セルをスタック化した場合に出力が低下する傾向がある。嵩密度が2.21g/cm3を越えると燃料ガスの透過性が悪くなり、接触している燃料極に燃料ガスを供給しにくく、発電性能が低下する傾向がある。また、弾力性も低下し易く、セル間の応力を吸収できなくなる傾向がある。
【0033】
導電部材20a、20bの嵩密度は、導電部材20a、20bの電気抵抗を小さくし、燃料ガスの透過性を向上するという観点から、導電部材20a、20bの嵩密度は0.44〜2.21g/cm3であることが望ましい。
【0034】
導電部材20a、20bの嵩密度は0.44〜2.21g/cm3である場合には、導電部材20a、20bがNi金属である場合の比重の5〜25%である。つまり、導電部材20a、20bがNi金属の塊からなる場合の比重をρ1、導電部材20a、20bが金属繊維の集合体からなる場合の嵩密度をρ2とした時、ρ2/ρ1が5〜25%であることを意味する。
【0035】
導電部材20a、20bの嵩密度を0.44〜2.21g/cm3と高くするためには、Ni金属繊維の集合体(フェルト等)をプレス機により所定圧力により押圧することにより達成できる。ちなみに、Ni金属である場合の比重は8.845であり、通常のNiフェルトの嵩密度は0.35g/cm3であり、導電部材20a、20bの嵩密度は、導電部材20a、20bがNi金属である場合の比重の4%程度である。金属繊維は、Niを主成分とし、Fe、CoおよびCrのうち少なくとも一種を含有しても良い。
【0036】
第1導電部材20aの嵩密度は1.5〜2.0g/cm3、第2導電部材20bの嵩密度は0.5〜1.5g/cm3であることが望ましい。
【0037】
なお、本発明の導電部材20a、20bは、上述した導電部材20a、20b自身の電気的な問題以外に、インターコネクタ5や燃料極4、集電材との接触界面の抵抗を減少させるため、Niからなる金属繊維の線径が5〜80μmであることが望ましい。Niを主成分とする金属繊維の線径が5μmより小さいと導電部材20a、20b自身が発電時に収縮し、接触界面から剥離し易く、電気抵抗が増大する傾向にある。この値が80μmより大きいと界面での接触面積が小さいことや表面エネルギーの減少によって界面での接触が悪くなる。Niからなる金属繊維の線径は、接触抵抗の低下という観点から20〜50μmの範囲が良い。
【0038】
また、上述した導電部材20a、20bと他の部材との接触界面の電気抵抗を減少させる別の方法として、Niを主成分とする金属繊維中に平均粒径10μm以下のNi金属を主成分とする金属粒子を重量比40%以下含むこともできる。Ni金属粒子の平均粒径が10μmより大きいと界面の接触抵抗を低減する効果がなく、40%より多いと導電部材自身が収縮し、接触抵抗が増大し、電気抵抗が増大する傾向がある。
【0039】
Niを主成分とする金属繊維の平均粒径、重量比は、接触抵抗を低下し電気抵抗を低下するという観点から、平均粒径が1〜3μmであり、重量比は5〜30%であることが望ましい。ここで、重量比とは、導電部材20a、20b全体の重量に対する金属粒子の重量比である。金属粒子としては、Niあるいは、Niと他のFe、Co、Crとの合金の粒子、あるいは金属粒子のコンポジットがある。
【0040】
また、本発明では、図3(a)、(b)に示すように、図2(a)、(b)に示すような第1導電部材20aと第2導電部材20bの間に、該第1導電部材20aおよび第2導電部材20bよりも密度が高い高密度導電部材20cが設けられていることが望ましい。この高密度導電部材20cは、Niを主成分とする金属板であることが望ましい。
【0041】
このような構成を採用することにより、図2に示す燃料電池と同様の効果を得ることができるとともに、電気抵抗の小さい高密度導電部材20cが介装されているため導電部材20全体の電気抵抗を抑えて、導電部材20の電気抵抗による出力低下をさらに抑制できる。さらに、導電部材20a、20b、20cが一体となっているため、インターコネクタ側の第1導電部材20aの変形をさらに抑制でき、第1導電部材20aが同一セルの燃料極4とショートすることもない。
【0042】
以上のように構成された本発明の燃料電池では、燃料電池セル1間を一体の導電部材20で接続しているので、スタック組み立て時、発電時のずれや変形がなく、電気的なショートがない。また、部位によって密度の差を付けているために、燃料極へのガスの透過も十分確保でき、セル間の電気抵抗も小さくできる。
【0043】
本発明の燃料電池は、セルの外径が10mm以下である場合に好適に用いることができる。即ち、セルの外径が10mm以下である場合には、導電部材の凹凸を10mm以下にできるため、導電部材(フェルト)の弾力性により導電部材が凹凸に変形し、セルに密着よく接合できる。このため、スタック組み立ての作業効率がいいことと、発電時のショートもない。また、変形量の観点からセルの外径は8mm以下が望ましい。
【0044】
尚、図1の導電部材20を、第1導電部材と第2導電部材から、または第1導電部材と第2導電部材の間に高密度導電部材を設けて構成しても良いことは勿論である。また、本発明は、円筒状の燃料電池セル以外の断面が四角筒状の燃料電池セルであっても良いことは勿論である。
【0045】
【発明の効果】
本発明の燃料電池は、一方のセル列と他方のセル列との間に一体化した導電部材を設けたので、従来の性能を保ったまま、電気的なショートの危険のない燃料電池を供給できるとともに、導電部材を一体化しているため、スタック化する際の作業効率を飛躍的に上昇できる。
【0046】
また、導電部材が密度の異なる二層以上からなるとともに、インターコネクタに当接する第1導電部材の密度を、空気極または燃料極に当接する第2導電部材の密度よりも高くすることにより、燃料ガスが密度の低い第2導電部材を透過して空気極または燃料極内に十分に侵入することができ、第2導電部材に当接する空気極または燃料極を介して十分な燃料ガスを供給できるとともに、第2導電部材は密度が低いために変形しやすく、空気極または燃料極との接触面積が大きくなり電気抵抗による出力低下を抑えることができ、さらに、密度が高い第1導電部材を、インターコネクタ側に設けたので、電気抵抗による損失を小さくでき、同一燃料電池セルにおける燃料極とインターコネクタのショートを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池を説明するための横断面図である。
【図2】セル列間に第1導電部材と第2導電部材を配置した状態を示す断面図である。
【図3】図2の第1導電部材と第2導電部材の間に高密度導電部材を配置した状態を示す断面図である。
【図4】円筒型燃料電池セルを説明するための横断面図である。
【図5】従来の燃料電池セルを9個接続したスタックを示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・燃料電池セル
2・・・空気極
3・・・固体電解質
4・・・燃料極
5・・・インイターコネクタ
20、・・・導電部材
20a・・・第1導電部材
20b・・・第2導電部材
20c・・・高密度導電部材
A・・・セル列
Claims (4)
- 筒状の固体電解質の片面に空気極を、他面に燃料極を形成してなり、前記空気極または前記燃料極に電気的に接続されるインターコネクタを有する複数の燃料電池セルからなるセル列を複数行設け、一方のセル列と他方のセル列との間に金属繊維の集合体からなる導電部材を設け、前記一方のセル列における前記燃料電池セルの前記インターコネクタと、前記他方のセル列における前記燃料電池セルの前記空気極または前記燃料極とを電気的に接続しており、前記導電部材は、前記インターコネクタに当接する第1導電部材と、前記空気極または前記燃料極と当接する第2導電部材とを備え、前記第1導電部材の密度が前記第2導電部材の密度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
- 前記第1導電部材と前記第2導電部材の間には、前記第1導電部材および前記第2導電部材よりも密度が高い高密度導電部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
- 前記高密度導電部材は、Niを主成分とする金属板であることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
- 前記燃料電池セルの外径は10mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の燃料電池。
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