JP4681701B2 - 加速度センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電セラミックスを利用して加速度を検出する加速度センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一方の面上に想定するX軸方向仮想線上に配置された一対のX軸方向加速度検出用電極及びX軸方向仮想線と直交するY軸方向仮想線上に配置された一対のY軸方向加速度検出用電極を含む検出用電極パターンを形成し、他方の面上に検出用電極パターンと対向する対向電極パターンを形成した圧電セラミックス基板に分極処理を施し、加速度を受けて圧電セラミックス内に生じる応力により各方向の加速度検出用電極に発生する自発分極電荷に基づいてX軸方向及びY軸方向の加速度成分に対応した信号を出力する加速度センサが知られている。この加速センサの基本原理及び基本技術は、国際公開WO93/02342(PCT/JP92/00882)に詳しく開示されている。この加速度センサでは、圧電セラミックス基板の裏面にダイアフラムを介して重錘が接合されており、一対のX軸方向加速度検出用電極及び一対のY軸方向加速度検出用電極は、重錘と対向する圧電セラミックス基板の重錘対向領域と該重錘対向領域と外周部との間に位置する中間領域とに跨がり且つ互いに間隔をあけて重錘対向領域を囲む環状の電極列を構成するように形成されている。そして、分極処理はX軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向の加速度が重錘に作用したときに一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に異なる極性の自発分極電荷が発生するように施されている。これにより、Z軸方向の加速度が重錘に作用したときには、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する自発分極電荷または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する自発分極電荷が打ち消し合うため、Z軸方向のみの加速度が重錘に作用したときにX軸方向またはY軸方向に加速度が作用しているかのごとくに誤った検出がなされることはないようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような効果を完全に得られるには、X軸方向仮想線とY軸方向仮想線との交点(以下、単に仮想線の交点という)と重錘の中心とが完全に一致するように圧電セラミック基板をダイアフラムに接合して圧電セラミック基板と重錘との相互の位置関係を正確に設定した場合である。しかしながら、圧電セラミック基板を重錘に対して常に正確な位置に固定するのは、技術的に容易ではなく、また特に加工精度の誤差からもこの固定位置に誤差が生じる。従来の加速度センサでは、検出用電極の一対の辺が仮想線の交点から周囲方向に向って放射状に広がるように形成されているため、仮想線の交点と重錘の中心とがずれると、重錘対向領域と中間領域との境界部に仮想した境界線(以下、単に領域境界線という)が各検出用電極を横切る長さが異なっておく。そのため、各検出用電極に現れる自発分極電荷のピーク値のバラツキが大きくなり、加速度の検出精度が低下するという問題があった。また、このように仮想線の交点と重錘の中心とがずれた状態でZ軸方向のみに加速度が加わると、一対のX軸方向加速度検出用電極または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの一方の電極において大きな自発分極電荷が現れ、他方の電極において小さな自発分極電荷が現れることになる。そのため、Z軸方向のみの加速度が発生しているときでも、X軸方向にまたはY軸方向に加速度が発生していることを示すX軸方向加速度信号またはY軸方向加速度信号が発生するという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、圧電セラミック基板の位置決め誤差による測定精度の低下を抑制できる加速度センサ及び三軸加速度センサを提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、Z軸方向のみに加速度が加わった際に発生するX軸方向加速度信号またはY軸方向加速度信号を極力小さくすることができる加速度センサ及び三軸加速度センサを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の対象とする加速度センサは、表面上に想定するX軸方向仮想線上に配置された一対のX軸方向加速度検出用電極とX軸方向仮想線と直交するY軸方向仮想線上に配置された一対のY軸方向加速度検出用電極とを含む電極パターンが表面上に形成され、裏面上に少なくとも各検出用電極と対向する対向電極パターンが形成され、一対のX軸方向加速度検出用電極及び一対のY軸方向加速度検出用電極と対向電極パターンとの間の部分が分極処理されている圧電セラミックス基板と、表面に圧電セラミックス基板の裏面が接合されたダイアフラムと、ダイアフラムの裏面側に突出するようにダイアフラムに対して固定された円柱状の重錘と、重錘の変位を許容するようにダイアフラムの外周部を支持するベースとを具備する。そして、一対のX軸方向加速度検出用電極及び一対のY軸方向加速度検出用電極は、重錘と対向する圧電セラミックス基板の重錘対向領域と該重錘対向領域と外周部との間に位置する中間領域とに跨がり且つ互いに間隔をあけて重錘対向領域を囲む環状の電極列を構成するように形成されている。より具体的には、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれは、交点を中心として対象的な位置に配置され且つX軸方向仮想線を中心線として線対象になる形状を有している。また一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれは、交点を中心として対象的な位置に配置され且つY軸方向仮想線を中心線として線対象になる形状を有している。
【0007】
本発明では、X軸方向加速度検出用電極の環状の電極列が延びる方向に位置する一対の辺をX軸方向仮想線の両側にほぼ等しい間隔をあけてX軸方向仮想線とほぼ平行にし、Y軸方向加速度検出用電極の環状の電極列が延びる方向に位置する一対の辺をY軸方向仮想線の両側にほぼ等しい間隔をあけてY軸方向仮想線とほぼ平行にする。このようにすると、重錘対向領域と中間領域との境界部に仮想した領域境界線が各検出用電極の平行な一対の辺上を横切ることになる。そのため、圧電セラミック基板の固定位置が多少ずれても、領域境界線が各検出用電極を横切る長さは大きく変わることがない。そのため、製造上の誤差範囲で圧電セラミック基板の固定位置がずれても、各検出用電極に現れる自発分極電荷のピーク値の変動またはバラツキは少なくなり、加速度の検出精度が低下するのを抑制することができる。また、圧電セラミック基板の固定位置がずれた状態でX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向のみに加速度が加わっても、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に現れる極性の異なる自発分極電荷の量はほぼ等しくなる。そのため、Z軸方向のみに加速度が作用したときに発生するX軸方向加速度信号またはY軸方向加速度信号は小さくなる。
【0008】
しかしながら、各検出用電極をこのように形成しても、Z軸方向のみに加速度が加わった際に発生するX軸方向加速度信号またはY軸方向加速度信号を小さくすることには限界があった。この原因を調べた本発明者は、加速度が作用して重錘が変位したときに圧電セラミック基板の重錘対向領域内にも応力が発生する領域(応力発生領域)があることを発見した。この応力発生領域では、領域境界線から重錘対向領域の中心に向って応力が徐々に減少する。このような応力発生領域が重錘対向領域内に存在すると、重錘の中心と仮想線の交点とがずれた場合に、一対のX軸方向加速度検出用電極または一対のY軸方向加速度検出用電極の重錘対向領域内の応力発生領域上に位置する部分の面積が異なってくる。例えば、一対の加速度検出用電極の一方の電極の内側端部が応力発生領域の中央に位置し、他方の電極の内側端部が応力発生領域を越えて重錘対向領域の中心部側に位置すると、それぞれの電極が重錘対向領域内の応力発生領域と対向する面積が異なり、それぞれの電極に発生する自発分極電荷または電圧が異なったものになる。その結果、Z軸方向のみに加速度が作用した場合に、それぞれの電極に発生する自発分極電荷が相殺されずに、僅かなX軸方向加速度信号またはY軸方向加速度信号が出力される。そこで、本発明では、一対のX軸方向加速度検出用電極及び一対のY軸方向加速度検出用電極を、圧電セラミック基板をダイアフラムに接合する際に発生する重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量が最大になったときに、重錘のZ軸方向の変位により重錘対向領域内に応力が発生する領域を一対のX軸方向加速度検出用電極及び一対のY軸方向加速度検出用電極の内側端部が越えるように形成する。言い換えるならば、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極の内側端部及び一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極の内側端部を、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量が最大になったときの重錘対向領域内の応力発生領域を越えた重錘対向領域の中心部側に位置させる。このようにすると、重錘の中心と仮想線の交点とが最大にずれても、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極は、いずれも重錘対向領域内の応力発生領域上に位置することになる。そのため、Z軸方向のみの加速度が重錘に作用しても、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する極性の異なる自発分極電荷または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する極性の異なる自発分極電荷がほぼ等しくなり、それぞれの電極に発生する自発分極電荷はほぼ相殺し合う。その結果、Z軸方向にのみ加速度が作用したときに発生するX軸方向加速度信号またはY軸方向加速度信号を従来よりも大幅に小さくすることができ、測定精度を上げることができる。
【0009】
本発明のように、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量が最大になった場合においても、重錘対向領域内の応力発生領域上に一対のX軸方向加速度検出用電極及び一対のY軸方向加速度検出用電極を位置させるには、X軸方向仮想線とY軸方向仮想線の交点を中心にして重錘の半径寸法と同じ半径寸法Rで描いた仮想円を想定したときに、一対のX軸方向加速度検出用電極の仮想円を越えて延びる部分の長さを半径寸法Rの25%以上とし、一対のY軸方向加速度検出用電極の仮想円を越えて延びる部分の長さを半径寸法Rの25%以上とすればよい。そして、一対のX軸方向加速度検出用電極と一対のY軸方向加速度検出用電極とが接触しないようにすればよい。
【0010】
重錘、ダイアフラム及びベースは、種々の形状に形成することができるが、これらを金属材料により一体に成形された単体ユニットとして構成することができる。この場合、単体ユニットを樹脂射出成形のインサートとして用いることができる。また、このように単体ユニットを用いると、重錘のダイアフラムに対する取付け位置を一定にすることができ、加速度検出装置の組立精度が上がるだけでなく、測定精度の低下を抑制することができる。また、このようにすると加速度センサの部品点数が少なくなり、加速度センサの製造が容易になる。
【0011】
本発明を適用した三軸加速度センサは、表面上に想定するX軸方向仮想線上に配置された一対のX軸方向加速度検出用電極と、X軸方向仮想線と直交するY軸方向仮想線上に配置された一対のY軸方向加速度検出用電極と、一対のX軸方向加速度検出用電極及び一対のY軸方向加速度検出用電極の隣接する2つの電極間に配置された複数のZ軸方向加速度検出用電極を含む電極パターンが表面上に形成され、裏面上に少なくとも各検出用電極と対向する対向電極パターンが形成され、一対のX軸方向加速度検出用電極、一対のY軸方向加速度検出用電極及び複数のZ軸方向加速度検出用電極と対向電極パターンとの間の部分が分極処理されている圧電セラミックス基板と、表面に圧電セラミックス基板の裏面が接合されたダイアフラムと、ダイアフラムの裏面側に突出するようにダイアフラムに対して固定された円柱状の重錘と、重錘の変位を許容するようにダイアフラムの外周部を支持するベースとを具備している。そして、分極処理はZ軸方向の加速度が重錘に作用したときに一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に異なる極性の自発分極電荷が発生するように行われており、一対のX軸方向加速度検出用電極、一対のY軸方向加速度検出用電極及び複数のZ軸方向加速度検出用電極が、重錘と対向する圧電セラミックス基板の円形の重錘対向領域と該重錘対向領域と外周部との間に位置する中間領域とに跨がり且つ互いに間隔をあけて重錘対向領域を囲む環状の電極列を構成するように形成されている。このような三軸加速度センサでは、X軸方向加速度検出用電極の環状の電極列が延びる方向に位置する一対の辺をX軸方向仮想線の両側にほぼ等しい間隔をあけてX軸方向仮想線とほぼ平行にし、Y軸方向加速度検出用電極の環状の電極列が延びる方向に位置する一対の辺をY軸方向仮想線の両側にほぼ等しい間隔をあけてY軸方向仮想線とほぼ平行にする。そして、一対のX軸方向加速度検出用電極及び一対のY軸方向加速度検出用電極は、圧電セラミック基板をダイアフラムに接合する際に発生する重錘の中心とX軸方向仮想線とY軸方向仮想線の交点とのずれ量が最大になったときに、重錘にZ軸方向の加速度が作用した際の一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する異なった極性の自発分極電荷による電圧の和が,複数のZ軸方向加速度検出用電極に現れる最大電圧の10%以下になるように形成する。このように形成すれば、重錘の中心と仮想線の交点とが最大にずれても、Z軸方向のみの加速度が重錘に作用しても、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する極性の異なる自発分極電荷または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する極性の異なる自発分極電荷がほぼ等しくなり、それぞれの電極に発生する自発分極電荷はほぼ相殺し合う。その結果、Z軸方向にのみ加速度が作用したときに発生するX軸方向加速度信号またはY軸方向加速度信号を従来よりも大幅に小さくすることができ、測定精度を上げることができる。
【0012】
このような構成を具体的に行うには、X軸方向仮想線とY軸方向仮想線の交点を中心にして重錘の半径寸法と同じ半径寸法Rで描いた仮想円を想定したときに、一対のX軸方向加速度検出用電極の仮想円を越えて延びる部分の長さを半径寸法Rの25%以上とし、一対のY軸方向加速度検出用電極の仮想円を越えて延びる部分の長さを半径寸法Rの25%以上とする。そして、一対のX軸方向加速度検出用電極と一対のY軸方向加速度検出用電極と複数のZ軸方向加速度検出用電極とが接触しないようにすればよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、三軸加速度センサに適用した本発明の実施の形態の加速度センサの概略断面図である。本図に示すように、この三軸加速度センサは、ダイアフラム1と、重錘3と、ベース5と、ダイアフラム1の重錘3が取り付けられた面側とは反対側の面上に固定されたセンサ素子7とを備えている。なお、本図では、理解を容易にするため、センサ素子7の各部の厚みを誇張して描いている。そして、これらの各部材は、絶縁樹脂製ケース9に収納されており、この絶縁樹脂製ケース9には、センサ素子7内の出力電極OZ,OE0 …に接続される端子金具25…を備えた2つの端子ユニット11,11と、金属製の蓋部材6とが取り付けられている。
【0014】
ダイアフラム1,重錘3及びベース5は、図1,図2(A)及び図2(B)に示すように、真鍮からなる金属材料により一体に成形された単体ユニット10として構成されている。なお、図2(A)は単体ユニット10の底面図であり、図2(B)は図2(A)のB−B線断面図である。ダイアフラム1は、円板形状を有しており、約0.1mmの厚みを有している。重錘3は、直径40mmの円柱形状を有しており、その軸線の延長部分がダイアフラム1の中心を通るようにダイアフラム1と一体化されている。ベース5は円筒形状を有しており、ダイアフラム1の外周部を支持している。また、ベース5の外周部には、周方向に連続するV字溝5aが形成されている。本実施例では、真鍮からなる円柱状金属材料を用意し、この円柱状金属材料に対して重錘3を削り出すように切削加工を施して環状部分Cの空洞部を形成し、また外周部に切削加工を施こしてV字溝5aを形成して単体ユニット10を一体成形した。
【0015】
この例では、センサ素子7として、図1及び図3の平面図に示すように圧電セラミックス基板7aの表面に三軸加速度の検出用電極パターンE1 が形成され、裏面に検出用電極パターンE1 の主要部と対向する環状の対向電極パターンE0 が形成されて構成された圧電型三軸センサ素子を用いている。圧電セラミックス基板7aの裏面及び対向電極パターンE0 がエポキシ系の接着剤によりダイアフラム1の表面に接合されて、センサ素子7はダイアフラム1に取り付けられている。対向電極パターンE0 のダイアフラム1側の表面は凹凸を有しており、この凹凸の凹部とダイアフラム1との間に接着剤が充填され、凸部がダイアフラム1と接触するように、対向電極パターンE0 は、ダイアフラム1に接合されている。このため、対向電極パターンE0 は、ダイアフラム1を介してベース5と電気的に接続されることになる。圧電セラミックス基板7aは、輪郭形状が四角形をなしており、内部に応力が加わると自発分極電荷が発生するように電極に対応した部分に分極処理が施されている。分極処理については後に詳細に説明する。
【0016】
図3に示すように、圧電セラミックス基板7aは、重錘対向領域8Aと第1の応力発生領域8Bと第2の応力発生領域8Cとを有している。そして、重錘対向領域8Aと第1の応力発生領域8Bとの間には領域境界線8Dが形成されている。重錘対向領域8Aは、圧電セラミックス基板1の中心部において円形の形状を有している。この重錘対向領域8Aに対応する部分には、重錘3が位置している。なお、本例では第1の応力発生領域8Bと第2の応力発生領域8Cにより中間領域が形成されている。
【0017】
第1の応力発生領域8Bは、重錘対向領域8Aを囲む環状の形状を有している。第1の応力発生領域8Bは、重錘3に対して圧電セラミックス基板7aと平行な方向(X軸方向またはY軸方向)に加速度が作用すると、重錘3の重心を中心として点対称に異なった状態(引っ張り応力が加わった状態と、圧縮応力が加わった状態と)に変形する。また、重錘3に対して圧電セラミックス基板7aと直交する方向(Z軸方向)に加速度が作用すると、第1の応力発生領域8Bの各部は同じ状態に変形する。
【0018】
第2の応力発生領域8Cは第1の応力発生領域8Bを囲む環状の形状を有している。重錘3に対して圧電セラミックス基板1と直交する方向(Z軸方向)に加速度が作用すると、第2の応力発生領域8Cの各部は第1の応力発生領域8Bと異なった状態に変形する。
【0019】
圧電セラミックス基板7aの表面及び裏面に形成された検出用電極パターンE1 及び対向電極パターンE0 は、いずれもスクリーン印刷により形成されている。重錘3に作用する加速度に基づいてダイアフラム1が変形すると圧電セラミックス基板7aが撓んで検出用電極パターンE1 と対向電極パターンE0 との間に発生する自発分極電荷が変化して、重錘3に加わった三軸(X軸,Y軸,Z軸)方向の加速度が電流または電圧の変化として測定される。なお、ここでいうX軸,Y軸,Z軸は互いに直交する方向に延びる軸である。X軸はX軸方向仮想線XLの方向に延びており、Y軸はY軸方向仮想線YLの方向に延びており、Z軸は圧電セラミックス基板7aの面方向と直交する方向に延びている。
【0020】
検出用電極パターンE1 はX軸方向検知電極パターン13とY軸方向検知電極パターン15とZ軸方向検知電極パターン17とを有している。X軸方向検知電極パターン13は、一対のX軸方向加速度検出用電極EX1,EX2とX軸出力電極OXとが接続線L1,L2により直列に接続された構造を有している。一対のX軸方向加速度検出用電極EX1,EX2は、後に説明するY軸方向検知電極パターン15の一対のY軸方向加速度検出用電極EY1,EY2及びZ軸方向検知電極パターン17のZ軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4と共に、重錘対向領域8Aを囲む環状の列を形成している。一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極EX1,EX2は、X軸方向仮想線XLに対して線対象になり且つ重錘対向領域8Aと第1の応力発生領域8Bとに跨がる(領域境界線8Dを跨がる)矩形に近い形状を有している。また、加速度検出用電極EX1,EX2の環状の検出用電極列が延びる方向に位置する一対の辺EXa,EXaはそれぞれほぼ平行になっている。なお、加速度検出用電極EX1,EX2が重錘対向領域8A内に入り込む寸法については後に詳細に説明する。
【0021】
Y軸方向加速度検出用電極パターン15は、2つのY軸方向加速度検出用電極EY1,EY2とY軸出力電極OYとが接続線L3〜L5により直列に接続された構造を有している。一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの加速度検出用電極EY1,EY2もX軸方向加速度検出用電極EX1及びEX2と同様な形状を有しており、Y軸方向仮想線YLに対して線対象になり且つ重錘対向領域8Aと第1の応力発生領域8Bとに跨がる(領域境界線8Dを跨がる)矩形に近い形状を有している。また、加速度検出用電極EY1,EY2の環状の検出用電極列が延びる方向に位置する一対の辺EYa,EYaはそれぞれほぼ平行になっている。なお、加速度検出用電極EY1,EY2が重錘対向領域8A内に入り込む寸法については後に詳細に説明する。Y軸方向仮想線YLとX軸方向仮想線XLとは互いに直交するので、X軸方向加速度検出用電極EX1,Y軸方向加速度検出用電極EY1,X軸方向加速度検出用電極EX2及びY軸方向加速度検出用電極EY2はそれぞれ90度の間隔を隔てて配置されることになる。Y軸出力電極OYはX軸出力電極OXと同様にほぼ正方形の形状を有しており、第2の応力発生領域8Cの外側にある圧電セラミックス基板7aの外周縁部に位置するようにX軸出力電極OXと並んで形成されている。
【0022】
Z軸方向加速度検出用電極パターン17は、Z軸方向加速度検出用電極EZ1,Z軸方向加速度検出用電極EZ2,Z軸方向加速度検出用電極EZ3,Z軸方向加速度検出用電極EZ4,Z軸出力電極OZが、これらの順に接続線L6〜L9によって直列に接続された構造を有している。4つのZ軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4は、矩形に近い形状を有している。Z軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4もX軸方向加速度検出用電極EX1及びEX2と同様に重錘対向領域8Aと第1の応力発生領域8Bとに跨がって形成されている。またZ軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4は、X軸方向加速度検出用電極EX2とY軸方向加速度検出用電極EY1との間,Y軸方向加速度検出用電極EY1とX軸方向加速度検出用電極EX1との間,X軸方向加速度検出用電極EX1とY軸方向加速度検出用電極EY2との間,Y軸方向加速度検出用電極EY2とX軸方向加速度検出用電極EX2との間の各中央部にそれぞれ配置されている。したがって、Z軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4は、それぞれ90度の間隔を隔てて配置されることになる。Z軸出力電極OZもX軸出力電極OXと同様にほぼ正方形の形状を有しており、第2の応力発生領域8Cの外側にある圧電セラミックス基板7aの外周縁部に位置するようにX軸出力電極OX及びY軸出力電極OYと並んで形成されている。
【0023】
出力電極OX,OY,OZが並ぶ外周縁部と対称的に位置する圧電セラミックス基板7aの外周縁部には、3つのアース電極OE0 …が出力電極OX,OY,OZと平行をなすように並んで形成されている。アース電極OE0 は、圧電セラミックス基板7aを貫通するスルーホール導電部及び接続線(図示せず)を介して対向電極パターンE0 と接続されている。なお、導電性接着剤を用いてアース電極OE0 とベース5とを積極的に接続してもよい。また、このようにセンサ素子7に含まれる出力電極は、OX,OY,OZとOE0 …の2つのグループに分けられて配置されることになる。なお、この例では、圧電セラミックス基板7aの外周縁部に位置する3つの電極全てをアース電極OE0 …としたが、3つの電極の少なくとも1つをアース電極OE0 とし、残りの電極を端子を接続するためだけのダミー電極としても構わない。
【0024】
X軸方向加速度検出用電極EX1,EX2に対応する圧電セラミックス基板7aの各部分には、重錘3にZ軸方向の加速度が作用して各部分に同種類の応力が発生したときに重錘対向領域8Aの一方の側に位置する加速度検出用電極EX1と他方の側に位置する加速度検出用電極EX2とにそれぞれ逆極性の自発分極電荷が現れるように分極処理が施されている。この例では、X軸方向加速度検出用電極EX1,EX2に対応する圧電セラミックス基板7aの各部分に引っ張り応力が発生したときに、一方のX軸方向加速度検出用電極EX1にマイナスの自発分極電荷が現れ、他方のX軸方向加速度検出用電極EX2にプラスの自発分極電荷が現れるように分極処理が施されている。
【0025】
また、Y軸方向加速度検出用電極EY1,EY2に対応する圧電セラミックス基板7aの各部分もX軸方向加速度検出用電極EX1,EX2に対応する圧電セラミックス基板7aの各部分と同様に、重錘3にZ軸方向の加速度が作用して各部分に同種類の応力が発生したときに重錘対向領域8Aの一方の側に位置するY軸方向加速度検出用電極EY1と他方の側に位置するY軸方向加速度検出用電極EY2とにそれぞれ逆極性の自発分極電荷が現れるように分極処理が施されている。この例では、Y軸方向加速度検出用電極EY1,EY2に対応する圧電セラミックス基板7aの各部分に引っ張り応力が発生したときに、一方のY軸方向加速度検出用電極EY1にマイナスの自発分極電荷が現れ、他方のY軸方向加速度検出用電極EY2にプラスの自発分極電荷が現れるように分極処理が施されている。
【0026】
また、Z軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4に対応する圧電セラミックス基板7aの各部分は、重錘3にZ軸方向の加速度が作用して各部分に同種類の応力が発生したときにすべてのZ軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4に同じ極性の自発分極電荷が現れるように分極処理が施されている。この例では、Z軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4に対応する圧電セラミックス基板7aの部分に引っ張り応力が生じた際にZ軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4にプラスの自発分極電荷が現れるように分極処理が施されている。これらの分極処理は、検出用電極パターンE1 及び対向電極パターンE0 を形成する前の圧電セラミックス基板7aに直流電圧を印加することにより行った。
【0027】
本実施例では、X軸方向加速度検出用電極EX1,EX2、Y軸方向加速度検出用電極EY1,EY2、Z軸方向加速度検出用電極EZ1〜EZ4を銀ペーストを用いてスクリーン印刷により5μmの厚みに形成した後に接続線L1〜L9を銀ペーストによりスクリーン印刷により形成した。
【0028】
図4(A)〜(C)は、ダイアフラム1,重錘3及びベース5が一体に成形された単体ユニット10をインサートとして樹脂射出成形された絶縁樹脂製ケース9の平面図、側面側から見た一部破断断面図、正面側から見た半部破断断面図である。なお、図4(B)及び(C)は、蓋部材6を取付けた状態の図を示しており、図4(A)は、蓋部材6を取付けない状態の図を示している。図4(A)から分るように絶縁樹脂製ケース9の輪郭は、ほぼ角形を呈しており、ダイアフラム1が位置する側に凹部9aを有している。これにより絶縁樹脂製ケース9は、凹部9aを囲むように側壁部9jを有することになる。なお、側壁部9jは、後述する溝部分19a,19b及び窓部9iの一部からなる切欠き状部分を有しており、これらの切欠き状部分により分断された3つの側壁部分から構成されている。ダイアフラム1は、この凹部9aの底面9a1 に露出している。凹部9aの下側に形成される単体ユニット収納部9bの内部には、単体ユニット10のベース5の外周部に形成したV字溝5aに樹脂が入り込んで突起部9b1 が形成されている。また、ダイアフラム1と反対側のベース5の端面5bと接触するように突起部9b2 が形成されている。本例では、単体ユニット10をインサートとして射出成形により絶縁樹脂製ケース9を一体成形しているため、突起部9b1 及び9b2 は、抜け止めとして機能している。また、凹部9aの底面9a1 には、圧電セラミックス基板7aの位置決め部を構成する4つの位置決め用突起9c…と、5つの蓋部材載置用リブ9d〜9hとが一体に形成されている。位置決め用突起9c…は、絶縁樹脂製ケース9の凹部9a内に圧電セラミックス基板7aを配置する際に、圧電セラミックス基板7aの隣接する2辺と接触して、ダイアフラム1の中心または重錘の中心と圧電セラミックス基板7aの中心を一致させる役割を果している。本例では、圧電セラミックス基板7aの直交する2つの辺7a1 ,7a1 (図3参照)に位置決め用突起9cがそれぞれ2つずつ当接するように位置決め用突起9c…が配置されている。蓋部材載置用リブ9d〜9hは、底面9a1 から突出する高さ寸法が、位置決め用突起9c…の底面9a1 から突出する高さ寸法を上回るように形成されている。そして、蓋部材載置用リブ9d〜9hの底面9a1 と反対側に位置する面上に蓋部材6が載置される。蓋部材載置用リブ9d〜9hの内、4つの蓋部材載置用リブ9d〜9gは底面9a1 の4隅において側壁部9jと底面9a1 とにそれぞれ繋がるするように形成され、1つの蓋部材載置用リブ9hは、蓋部材載置用リブ9gと9dとの間において側壁部9jと底面9a1 とにそれぞれ繋がるように形成されている。また、絶縁樹脂ケース9の底面9a1 側の一部分及び該一部分に連続する側壁部9jの部分には、ベース5の外周面の一部(露出部分)5cを露出させる窓部9iが形成されている。絶縁樹脂ケース9の単体ユニット10を間に挟んで対向する一対の側壁部には、図1に示す端子ユニット11,11の端子支持体21,21がそれぞれ嵌合されて固定される支持体嵌合溝19,19が形成されている。そして、端子ユニット11のうち、一方の端子ユニットの端子金具の端部は、一方のグループの出力電極OX,OY,OZとそれぞれ半田導電性接着により接続され、他方の端子ユニットの端子金具の端部は、他方のグループのアース電極OEO …とそれぞれ半田導電性接着により接続される。
【0029】
次に加速度検出用電極EX1,EX2,EY1,EY2が重錘対向領域8A内に入り込む寸法について説明する。加速度検出用電極EX1,EX2,EY1,EY2はいずれも同じ形状を有しており、各加速度検出用電極の重錘対向領域8A内に入り込む寸法はいずれも同じなので、加速度検出用電極EY1,EY2を用いて各加速度検出用電極の説明を行う。図5(A)は、重錘3の中心C0と仮想線の交点C1とが一致している場合における加速度検出用電極EY1,EY2の重錘対向領域8A内に位置する部分の状態を示している。なお、図5(A)では、理解を容易にするために、圧電セラミックス基板7a及び加速度検出用電極EY1,EY2を除く各部材は図示を省略している。図5(A)に示すように、X軸方向仮想線XLとY軸方向仮想線YLの交点(仮想線の交点)C0を中心にして重錘3の半径寸法と同じ半径寸法R(本例では2mm)で描いた第1の仮想円30を想定したときに、一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの加速度検出用電極EY1,EY2の第1の仮想円30を越えて延びる延長部分の長さS0は、半径寸法Rの25%以上(本例では29%)になる。そして、加速度検出用電極EY1,EY2の幅寸法は他の加速度検出用電極EX1,EX2,EZ1〜EZ4と接触しない寸法に設定されている。言い換えるならば、加速度検出用電極EY1,EY2の内側端部EYb,EYbは、半径寸法Rの25%の径を有する第2の仮想円31を越えた仮想線の交点C1側に位置している。なお、この例では、重錘3の中心C0と仮想線の交点C1とが一致しているので、第1の仮想円30は、図3に示す領域境界線8Dと重複している。図5(A)に示した領域境界線8Dと第2の仮想円31との間に位置する第3の仮想円32と、領域境界線8Dとに挾まれた円環状部分が、重錘3のZ軸方向の変位により重錘対向領域8A内に応力が発生する領域(応力発生領域)33になっている。したがって、加速度検出用電極EY1,EY2の内側端部EYb,EYbは、いずれもこの応力発生領域33を越えている。
【0030】
これに対して図5(B)は、圧電セラミック基板7aをダイアフラム1に接合する際に発生する重錘3の中心C0と仮想線の交点C1とのずれ量が最大になったときの状態を示している。なお、この図では、重錘3の中心C0が加速度検出用電極EY2に向って最大にずれた例を示している。このようなずれは、絶縁樹脂製ケース9の位置決め用突起9c…または圧電セラミック基板7aの寸法精度により生じる。本例のように、加速度検出用電極EY1,EY2の延長部分の長さを設定すると、図5(B)に示すように、重錘の中心C0と仮想線の交点C1とのずれ量が最大になっても、加速度検出用電極EY1,EY2の内側端部EYb,EYbは、いずれも応力発生領域33を越えた仮想交点C1側に位置している。これによって、加速度検出用電極EY1,EY2は、いずれも重錘対向領域8A内の応力発生領域33上に位置することになる。そして、Z軸方向のみの加速度が重錘3に作用したときに加速度検出用電極EY1,EY2に発生する極性の異なる自発分極電荷がほぼ等しくなり、それぞれの加速度検出用電極EY1,EY2に発生する自発分極電荷はほぼ相殺し合うことになる。そのため、Z軸方向のみの加速度が重錘に作用したときに発生するY軸方向加速度信号を従来よりも大幅に小さくすることができる。また、同様にしてZ軸方向のみの加速度が重錘に作用したときに発生するX軸方向加速度信号を従来よりも大幅に小さくすることができる。
【0031】
なお、上記の各図では、延長部分の長さの半径寸法Rに対する割合が29%の場合の例を示したが、この割合が25%の場合には、図5(B)に示すように重錘の中心C0と仮想線の交点C1とがずれると、加速度検出用電極EY1の内側端部EYbは、第2の仮想円31(応力発生領域33の端部)と重複することになる。
【0032】
次に図6に示す試験電極パターンを用いて電極の寸法を変えた複数種類の試験用三軸加速度センサを作成して各種の試験を行った。なお、この試験用三軸加速度センサは、圧電セラミックス基板47a上の電極パターンを除いて上記例の三軸加速度センサと同じ構造を有している。下記の表1には、試験用三軸加速度センサ1〜10の各寸法が示されている。表1における各寸法は図6に対応する各部の寸法である。具体的に説明すると、S1は加速度検出用電極Y1と加速度検出用電極Y2との内側端部間の寸法であり、S2は加速度検出用電極Y1と加速度検出用電極Y2との外側端部間の寸法であり、S3はX軸方向仮想線XLと平行な方向に延びる加速度検出用電極Y1または加速度検出用電極Y2の幅寸法である。また、表1のS0/Rは仮想線の交点C1を中心にして重錘の半径寸法と同じ半径寸法R(2mm)で描いた仮想円40を加速度検出用電極Y1,Y2が越えて延びる延長部分の長さS0の半径寸法Rに対する割合である。
【0033】
【表1】
次に上記試験用三軸加速度センサ1〜10にZ軸方向の加速度のみを作用させたときのZ軸方向加速度検出用電極Z1〜Z4から得られる最大電圧Vz に対する加速度検出用電極Y1及びY2に発生した逆極性の自発分極電荷による電圧Vy1,Vy2の和の割合[他軸感度(%):(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘3の中心C0と仮想線の交点C1とのずれ量(μm)との関係を調べた。図7〜16は、試験用三軸加速度センサ1〜10のそれぞれのデータを示している。なお、ここでのずれ量は、重錘の中心C0が加速度検出用電極Y2側にずれた量を正のずれ量とし、重錘の中心C0が加速度検出用電極Y1側にずれた量を負のずれ量としている。図7〜図16より、S0/Rが25%以上の加速度センサ5〜10(図11〜図16)では、ずれ量に対する他軸感度の変化を小さくすることができ、他軸感度を0%に近い値にできるのが分る。そのため、圧電セラミック基板をダイアフラムに接合する際に発生するずれ量が最大(この例では−300μm〜300μm)になったときにおいて、他軸感度の絶対値を10%以下にできるのが分る。特にS0/Rが42.5%の加速度センサ8〜10(図14〜図16)では、ずれ量に対する他軸感度の変化を著しく小さくできるのが分る。
【0034】
次に上記試験用三軸加速度センサ1〜10にZ軸方向の加速度のみを作用させたときの加速度検出用電極Y1及びY2に発生した逆極性の自発分極電荷による電圧Vy1,Vy2の和[出力差(mV/G):(Vy1+Vy2)]と、重錘3の中心C0と仮想線の交点C1とのずれ量(μm)との関係を調べた。図17〜図26は、試験用三軸加速度センサ1〜10のそれぞれのデータを示している。図17〜図26より、S0/Rが25%以上の加速度センサ5〜10(図21〜図26)では、ずれ量に対する出力差の変化を小さくでき、他軸感度を0%に近い値にできるのが分る。特にS0/Rが42.5%の加速度センサ8〜10(図24〜図26)では、ずれ量に対する出力差の変化を著しく小さくできるのが分る。
【0035】
次に上記試験用三軸加速度センサ1〜10にY軸方向の加速度を作用させたときの加速度検出用電極Y1及びY2に発生した同極性の自発分極電荷による電圧Vy1,Vy2の和[主軸感度(mV/G):(Vy1+Vy2)]と、重錘3の中心C0と仮想線の交点C1とのずれ量(μm)との関係を調べた。図27〜図36は、試験用三軸加速度センサ1〜10のそれぞれのデータを示している。図27〜図36より、S0/Rが25%以上の加速度センサ5〜10(図31〜図36)では、ずれ量に対する主軸感度のばらつきを小さくできるのが分る。特にS0/Rが42.5%の加速度センサ8〜10(図34〜図36)では、ずれ量に対する主軸感度のばらつきを著しく小さくできるのが分る。
【0036】
なお、本例では三軸加速度センサに本発明を適用した例を示したが、X軸方向及びY軸方向の二軸の加速度を検出する二軸加速度センサにも本発明を適用できるのは勿論である。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、重錘の中心と仮想線の交点とが最大にずれても、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極は、いずれも重錘対向領域内の応力発生領域上に位置することになる。そのため、Z軸方向のみの加速度が重錘に作用しても、一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する極性の異なる自発分極電荷または一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に発生する極性の異なる自発分極電荷がほぼ等しくなり、それぞれの電極に発生する自発分極電荷はほぼ相殺し合う。その結果、Z軸方向にのみ加速度が作用したときに発生するX軸方向加速度信号またはY軸方向加速度信号を従来よりも大幅に小さくすることができ、測定精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の三軸加速度センサの概略断面図である。
【図2】(A)は本発明の実施の形態の三軸加速度センサに用いる単体ユニットの底面図であり、(B)は図2(A)のB−B線断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の三軸加速度センサに用いるセンサ素子の平面図である。
【図4】(A)〜(C)は、単体ユニットをインサートとして樹脂射出成形された絶縁樹脂製ケースの平面図、側面側から見た一部破断断面図、正面側から見た半部破断断面図である。
【図5】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態の三軸加速度センサの加速度検出用電極の態様を説明するのに用いる図である。
【図6】試験に用いた三軸加速度センサに用いるセンサ素子の平面図である。
【図7】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図8】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図9】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図10】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図11】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図12】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図13】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図14】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図15】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図16】試験用三軸加速度センサの他軸感度[(Vy1+Vy2)/Vz ]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図17】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図18】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図19】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図20】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図21】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図22】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図23】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図24】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図25】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図26】試験用三軸加速度センサの出力差[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図27】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図28】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図29】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図30】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図31】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図32】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図33】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図34】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図35】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【図36】試験用三軸加速度センサの主軸感度[(Vy1+Vy2)]と、重錘の中心と仮想線の交点とのずれ量との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 ダイアフラム
3 重錘
5 ベース
8A 重錘対向領域
8D 領域境界線
9 絶縁樹脂製ケース
10 単体ユニット
C0 重錘の中心
C1 仮想線の交点
30 仮想円
33 重錘対向領域内の応力発生領域
EX1,EX2 一対のX軸方向加速度検出用電極
EY1,EY2 一対のY軸方向加速度検出用電極
Claims (3)
- 表面上に想定するX軸方向仮想線上に配置された一対のX軸方向加速度検出用電極と前記X軸方向仮想線と直交するY軸方向仮想線上に配置された一対のY軸方向加速度検出用電極とを含む電極パターンが表面上に形成され、裏面上に少なくとも前記各検出用電極と対向する対向電極パターンが形成され、前記一対のX軸方向加速度検出用電極及び前記一対のY軸方向加速度検出用電極と前記対向電極パターンとの間の部分が分極処理されている圧電セラミックス基板と、
表面に前記圧電セラミックス基板の前記裏面が接合されたダイアフラムと、
前記ダイアフラムの裏面側に突出するように前記ダイアフラムに対して固定された円柱状の重錘と、
前記重錘の変位を許容するように前記ダイアフラムの外周部を支持するベースとを具備し、
前記一対のX軸方向加速度検出用電極及び前記一対のY軸方向加速度検出用電極が、前記重錘と対向する前記圧電セラミックス基板の重錘対向領域と該重錘対向領域と前記外周部との間に位置する中間領域とに跨がり且つ互いに間隔をあけて前記重錘対向領域を囲む環状の電極列を構成するように形成されている加速度センサにおいて、
前記X軸方向加速度検出用電極の前記環状の電極列が延びる方向に位置する一対の辺が前記X軸方向仮想線の両側に等しい間隔をあけて前記X軸方向仮想線と平行になっており、
前記Y軸方向加速度検出用電極の前記環状の電極列が延びる方向に位置する一対の辺が前記Y軸方向仮想線の両側に等しい間隔をあけて前記Y軸方向仮想線と平行になっており、
前記一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれは、前記X軸方向仮想線と前記Y軸方向仮想線の交点を中心として対称的な位置に配置され且つ前記X軸方向仮想線を中心線として線対称になる形状を有しており、また前記一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれは、前記交点を中心として対称的な位置に配置され且つ前記Y軸方向仮想線を中心線として線対称になる形状を有しており、
前記X軸方向仮想線と前記Y軸方向仮想線の交点を中心にして前記重錘の半径寸法と同じ半径寸法Rで描いた仮想円を想定したときに、前記一対のX軸方向加速度検出用電極の前記仮想円を越えて前記重錘対向領域内に延びる部分の長さは前記半径寸法Rの25%以上であり、前記一対のY軸方向加速度検出用電極の前記仮想円を越えて前記重錘対向領域内に延びる部分の長さは前記半径寸法Rの25%以上であり、しかも前記一対のX軸方向加速度検出用電極と前記一対のY軸方向加速度検出用電極とが接触しないことを特徴とする加速度センサ。 - 前記重錘、前記ダイアフラム及び前記ベースが金属材料により一体成形された単体ユニットとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の加速度センサ。
- 表面上に想定するX軸方向仮想線上に配置された一対のX軸方向加速度検出用電極と、前記X軸方向仮想線と直交するY軸方向仮想線上に配置された一対のY軸方向加速度検出用電極と、前記一対のX軸方向加速度検出用電極及び前記一対のY軸方向加速度検出用電極の隣接する2つの電極間に配置された複数のZ軸方向加速度検出用電極を含む電極パターンが表面上に形成され、裏面上に少なくとも前記各検出用電極と対向する対向電極パターンが形成され、前記一対のX軸方向加速度検出用電極、前記一対のY軸方向加速度検出用電極及び前記複数のZ軸方向加速度検出用電極と前記対向電極パターンとの間の部分が分極処理されている圧電セラミックス基板と、
表面に前記圧電セラミックス基板の前記裏面が接合されたダイアフラムと、
前記ダイアフラムの裏面側に突出するように前記ダイアフラムに対して固定された円柱状の重錘と、
前記重錘の変位を許容するように前記ダイアフラムの外周部を支持するベースとを具備し、
前記一対のX軸方向加速度検出用電極、前記一対のY軸方向加速度検出用電極及び前記複数のZ軸方向加速度検出用電極が、前記重錘と対向する前記圧電セラミックス基板の円形の重錘対向領域と該重錘対向領域と前記外周部との間に位置する中間領域とに跨がり且つ互いに間隔をあけて前記重錘対向領域を囲む環状の電極列を構成するように形成され、
前記分極処理はZ軸方向の加速度が前記重錘に作用したときに前記一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極または前記一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれの電極に異なる極性の自発分極電荷が発生するように行われている三軸加速度センサにおいて、
前記X軸方向加速度検出用電極の前記環状の電極列が延びる方向に位置する一対の辺が前記X軸方向仮想線の両側に等しい間隔をあけて前記X軸方向仮想線と平行になっており、
前記Y軸方向加速度検出用電極の前記環状の電極列が延びる方向に位置する一対の辺が前記Y軸方向仮想線の両側に等しい間隔をあけて前記Y軸方向仮想線と平行になっており、
前記一対のX軸方向加速度検出用電極のそれぞれは、前記X軸方向仮想線と前記Y軸方向仮想線の交点を中心として対称的な位置に配置され且つ前記X軸方向仮想線を中心線として線対称になる形状を有しており、また前記一対のY軸方向加速度検出用電極のそれぞれは、前記交点を中心として対称的な位置に配置され且つ前記Y軸方向仮想線を中心線として線対称になる形状を有しており、
前記X軸方向仮想線と前記Y軸方向仮想線の交点を中心にして前記重錘の半径寸法と同じ半径寸法Rで描いた仮想円を想定したときに、前記一対のX軸方向加速度検出用電極の前記仮想円を越えて前記重錘対向領域内に延びる部分の長さは前記半径寸法Rの25%以上であり、前記一対のY軸方向加速度検出用電極の前記仮想円を越えて前記重錘対向領域内に延びる部分の長さは前記半径寸法Rの25%以上であり、しかも前記一対のX軸方向加速度検出用電極と前記一対のY軸方向加速度検出用電極と前記複数のZ軸方向加速度検出用電極とが接触しないことを特徴とする三軸加速度センサ。
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