JP4681259B2 - 汚泥の処理方法及び汚泥処理システム - Google Patents
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Description
この種の汚泥には排水中に含まれていたフッ素やホウ素が濃縮されているため、汚泥をそのまま廃棄した場合は、フッ素やホウ素が汚泥から溶出する恐れがある。また、汚泥自身が水分を多く含むため、取り扱いが困難であるという問題点もある。
従来、汚泥中からの重金属の溶出を抑制する方法として、例えば、汚泥にセメントなどを混合して固化する(例えば、特許文献1(特開平11−19508号公報))方法、あるいは、汚泥に、石灰、石膏、石炭灰などを添加して混合する(例えば、特許文献2(特開平8−206700号公報))方法が提案されている。
いずれの方法も、汚泥と添加剤を混合することにより、汚泥が固化または塊状化され、ハンドリングが容易で重金属の溶出を低減することが可能になる。しかしながら、特開平11−19508号公報の方法は、比較的高価なセメントを使用するので経済的でないし、特開平8−206700号公報の方法は、重金属などの溶出を抑制する効果が小さいという問題があった。
特開2002−346595号公報の汚泥の処理方法によれば、汚泥中の有害物質(フッ素やホウ素)の溶出が少なく、かつ、ハンドリングが容易であるという効果を有していることが記載されている。
そこで本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、最小限の設備・機器の追加でかつ処理物自体の容積、重量を増加させることなくフッ素、さらにはホウ素の溶出を抑制することのできる汚泥の処理方法及び汚泥処理システムの提供を課題とする。
本発明は以上の知見に基づくものであり、石炭燃焼生成物を処置することにより生じた汚泥を所定の含水率まで脱水処理する工程(a)と、工程(a)を経た汚泥にCaCl2 水溶液を添加する工程(b)と、CaCl 2 水溶液が添加された汚泥をさらに脱水処理する工程(c)と、を備え、汚泥を搬送する過程で工程(a)、工程(b)及び工程(c)を連続的に実施することを特徴とする汚泥の処理方法である。
本発明の汚泥の処理方法によれば、石炭燃焼生成物を処置することにより生じた汚泥にCaCl2 水溶液を添加するので、汚泥中の水溶解性フッ素イオンがCaにより固定され、後の溶出を抑制することができる。しかも、汚泥の脱水機は従来から備えているため、CaCl2 水溶液を添加するための設備の追加のみで足りるとともに、汚泥の重量又は体積の増加は微々たるものである。
本発明の汚泥の処理方法においては、CaCl2 を水溶液として添加する。これにより、ホウ素の溶出低減効果を得ることができる。工程(c)では、CaCl2 水溶液が添加された汚泥をさらに脱水処理し、ホウ素を含む水分を汚泥から除去する。
本発明の汚泥の処理方法では、処理効率の観点から、汚泥を搬送する過程で工程(a)、工程(b)及び工程(c)を連続的に実施する。この処理は、例えばベルトで汚泥を搬送しつつ脱水処理を行うことのできるベルト式の脱水機を用い、ケーキ状に脱水された汚泥にCaCl 2 水溶液を添加することにより実現することができる。ベルト式の脱水機の場合、CaCl 2 水溶液を添加している間にも脱水処理を同時に進行させることができる。
また、CaCl2水溶液の汚泥に対する添加量は、少なくとも未処理汚泥の含水量以上とすればよい。未処理の汚泥に含まれる水を塩化カルシウムの水溶液に置換するための必要量は押出し流れを想定した単純計算に基づいて求められる。例えば含水率が20%であれば0.2l/kgとなる。実験結果に基づいた場合の汚泥に対する望ましいCaCl2水溶液の添加量は1.0〜5.0l/kgである。
図1は、本実施の形態における排ガス処理システム1の構成を示す図である。
図1に示すように、排ガス処理システム1は、ボイラ2に付帯する脱硝装置3を有している。ボイラ2から排出された排ガスは脱硝装置3にて脱硝処理され、さらに、エアヒータ4を経た後に集塵機5に導入される。集塵機5を経た排ガスは、熱エネルギーを回収する熱交換器6の後流に位置する脱硫装置7に導入される。脱硫装置7を経た排ガスは、湿式集塵機8及び再加熱器9を経由して煙突10から大気中に放出される。脱硫装置7では図示しない硫黄酸化物の吸収剤である石灰石を供給する設備と脱硫によって生成する石膏を取り出す設備がある。その一方において脱硫装置7からはスラリ状の汚泥を含む排水13が抜き出される。以上の構成は、一般的な排ガス処理システムであるが、スラリ状の汚泥は脱硫装置のみならず、図示しない石炭火力発電所での石炭灰処理装置やフライアッシュを扱う装置の洗浄液処理装置からも抜き出される。
脱硫装置7で発生したスラリ状の汚泥を含む排水13は脱水機11に配送される。タンク12にはCaCl2水溶液が収容されており、脱水機11にはタンク12からCaCl2水溶液が供給されるようになっている。
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O…(2)
集塵機5を経て熱交換器6で熱エネルギーが回収された排ガスは、例えば90〜100℃の温度になる。
熱交換器6を経た排ガスが導入される脱硫装置7は、一般に排煙処理で用いられている湿式の吸収塔の前段に冷却塔を設置した脱硫装置を用いることができ、特に限定されるものではない。脱硫装置7から排出される排ガスは、例えば50〜60℃に温度低下している。
熱交換器6と再加熱器9は、所定の熱媒を媒体として熱エネルギーを交換する方式のガスガスヒータで構成されている。ここで、熱交換器6と再加熱器9はそれぞれ排ガスの温度を冷却、加熱するものであればよく、別々の系統であっても直接熱交換するガスガスヒータであってもよい。
脱水機11内において、ケーキ状の汚泥にタンク12から供給されたCaCl2水溶液が添加され、その後再度脱水処理される。この過程を図2に模式的に示している。
フッ素は汚泥中にCaF2及び水溶解性フッ素イオンとして存在しているが、フッ素イオン濃度はカルシウムイオン濃度に依存しているためにカルシウムイオンが不足するとフッ素イオン濃度を下げることができない。汚泥中においてCaF2は下記式(3)の挙動を示す。式(3)において、←→は、その左辺及び右辺が可逆的であることを示しており、カルシウムイオンが不足すると反応が左方向に進まないため、水溶解性フッ素イオン濃度を下げることができない。
CaF2←→Ca2++2F-…(3)
ここで、溶解度積より、Ca2+とF-は下記式(4)の関係を満足する。
[F-]=(Ksp/[Ca2+])1/2…(4)
ただし、[F-]:フッ素イオン濃度、[Ca2+]:カルシウムイオン濃度、
Ksp:溶解度積
石炭火力発電所で排出される排ガスを処理するシステムの脱硫装置で発生した3種類のスラリ状の汚泥(A、B及びCとする)をケーキ状とした後に、CaCl2水溶液処理によるフッ素及びホウ素の溶出低減効果を確認する実験を行った。
ここで、汚泥Aは、脱硫装置の湿式吸収塔の前段に設置した冷却塔から抜出されたスラリ状の汚泥を含む排水を沈降法により分離することで得られる、更に濃厚にスラリ状の汚泥を含む排水を脱水機で処理したケーキ状の汚泥である。汚泥Bは、前記冷却塔から抜出されたスラリ状の汚泥を含む排水を沈降法により分離することで得られる清澄液を、窒素化合物及び硫黄化合物の分解工程、フッ素、重金属及びカルシウムの除去工程により処理する際に発生する固形分を排水から分離したものである。汚泥Cは前記窒素化合物及び硫黄化合物の分解工程、フッ素、重金属及びカルシウムの除去工程により処理された排水を、更に生物処理により窒素除去する際に発生する固形分を排水から分離したものである。汚泥A、B及びCの含水率は各々25%程度、60%程度及び80%程度であり、CaCl2水溶液の濃度は1.0 mol/l、CaCl2水溶液のフライアッシュ汚泥ケーキに対する添加量は5.0 l/kgである。結果を表1に示す。なお、フッ素、ホウ素の溶出量は、環境庁告示第13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」(環告第13号)に準じて実施した。また、CaCl2水溶液処理を行わない汚泥についても同様の試験を行った。
図3に示すように、フッ素については、CaCl2水溶液の濃度が1.0 mol/lのときに溶出量を6 mg/l程度(CaCl2水溶液添加量1.0 l/kg)まで低減できることから、CaCl2水溶液の添加量を調整することにより、0.5 mol/l以上のCaCl2水溶液の濃度で溶出量を8.0 mg/l以下に規制できる。さらに、CaCl2水溶液の濃度が0.1 mol/lのときにも未処理の濃度に比べて顕著な低減効果を認めることが分かる。また、CaCl2水溶液の添加量については、1.0 l/kg以上で溶出量を8.0 mg/l以下に規制できる。
例えば、排ガス処理システム1の構成はあくまで一例であって、本実施の形態に限定されない。また、排ガス処理システム1は、ボイラ2に付設されており、そのために汚泥処理システムもボイラ2に付設したものとなっているが、ボイラ2とは別系統のシステムとしても良いことは言うまでもない。
Claims (5)
- 石炭燃焼生成物を処置することにより生じた汚泥を所定の含水率まで脱水処理する工程(a)と、
前記工程(a)を経た前記汚泥にCaCl2 水溶液を添加する工程(b)と、
前記CaCl 2 水溶液が添加された前記汚泥をさらに脱水処理する工程(c)と、を備え、
前記汚泥を搬送する過程で前記工程(a)、前記工程(b)及び前記工程(c)を連続的に実施することを特徴とする汚泥の処理方法。 - 前記CaCl2水溶液の濃度を0.1〜3.0mol/lとすることを特徴とする請求項1に記載の汚泥の処理方法。
- 前記CaCl2水溶液の添加量を前記汚泥中の含水量以上とすることを特徴とする請求項2に記載の汚泥の処理方法。
- 前記CaCl2水溶液の添加量を前記汚泥に対して1.0〜5.0l/kgとすることを特徴とする請求項2に記載の汚泥の処理方法。
- フッ素及びホウ素を含む汚泥にCaCl2水溶液を添加する溶液添加部と、
前記汚泥を搬送する搬送路と、前記CaCl2水溶液が添加される前の前記汚泥を脱水処理する前脱水処理部と、
前記溶液添加部で前記CaCl2水溶液が添加された前記汚泥を脱水処理する後脱水処理部と、を備え、
前記前脱水処理部と前記後脱水処理部が前記搬送路上に隣接して配設されていることを特徴とする汚泥処理システム。
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