JP4681152B2 - 自己潤滑式軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば給水ポンプの駆動軸に設けられて潤滑油を自己潤滑させる軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばコンバインドサイクルを採用する火力発電所においてボイラ設備への給水を行うポンプには、給水ベーンを多段に備える横型ポンプが採用される。この多段横型の給水ポンプには、ケーシングを貫通して前後に駆動軸の端部が突出しており、一端がラジアル軸受によって支承されるととに継手を介してモータを連結され、他端は同様のラジアル軸受とスラスト軸受とによって支承される。
【0003】
上記の給水ポンプには、駆動軸を支承する3つの軸受に潤滑油を循環供給して駆動軸の回転を円滑に保持するシステムが構築されている。この循環供給システムは、3つの軸受間に通じる潤滑油の流路を形成し、この流路系に潤滑油を貯留する油タンク、系内の潤滑油を吸入吐出して循環させる油ポンプ、各軸受を通過して過熱した潤滑油を冷却するオイルクーラ、系内の油圧を調節する油圧調節弁を設け、さらにシステム全体を監視する監視用計器類を設けた構成となっている。油ポンプは専用のモータを備えて独自に駆動するタイプが採用されており、監視用計器類はモータによる油ポンプの駆動状態や系内の油圧等の状況を常時監視している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような潤滑油の循環供給システムにおいては、潤滑油の供給が、モータによって独自に駆動される油ポンプを使った強制給油方式であることから、こういった各種の機器やそれらを監視する計器類が必要である等、システムの構成が複雑になるとともに給水ポンプを含めた全体のボリュームが大きくなるといった問題がある。同時に、システム構成が複雑になることで部品の調達コストが嵩むことから価格競争力に劣るという問題もある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、構成が簡素で装置全体のボリュームが小さく、使用する部品の調達コストが安価で価格競争力にも秀でた自己潤滑式軸受装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成の自己潤滑式軸受装置を採用する。すなわち本発明に係る請求項1記載の自己潤滑式軸受装置は、回転駆動される駆動軸を有する機関に具備され、前記駆動軸に設けられて潤滑油を自己潤滑させる軸受装置であって、前記駆動軸の一方の軸端を支承する軸受と、該軸受を内部に配設して前記機関に固定される筐体と、該筐体の内部において前記駆動軸に設けられた大径の円盤状部と、該円盤状部の周面をなぞるようにして前記筐体の内側に設けられた無端の溝と、前記筐体の内部に設けられて前記溝に供給すべき潤滑油を溜め置く油溜まりと、該油溜まりから前記溝、該溝から前記軸受に通じ、さらに該軸受から前記油溜まりに通じる給油路とを備え、前記溝から前記駆動軸の他方の軸端を支承する軸受に通じ、さらに該軸受から前記油溜まりに通じる給油路を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の自己潤滑式軸受装置は、請求項1記載の自己潤滑式軸受装置において、前記一方の軸端を支承する軸受が、ラジアル軸受とスラスト軸受とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の自己潤滑式軸受装置は、請求項1または2記載の自己潤滑式軸受装置において、前記他方の軸端を支承する軸受が、ラジアル軸受であることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の自己潤滑式軸受装置は、請求項1、2または3記載の自己潤滑式軸受装置において、前記潤滑油を冷却するオイルクーラを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の自己潤滑式軸受装置は、請求項4記載の自己潤滑式軸受装置において、前記オイルクーラが前記油溜まりよりも低位に配置されるとともに、両者間に通じる連通路が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の自己潤滑式軸受装置は、請求項1、2、3、4または5記載の自己潤滑式軸受装置において、前記機関からの熱伝達による前記筐体の過熱を防止する冷却ジャケットを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の自己潤滑式軸受装置は、請求項1、2、3、4、5または6記載の自己潤滑式軸受装置において、前記機関が、バランスディスクを有する多段横型給水ポンプであって、前記駆動軸を支承するスラスト玉軸受を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る軸受装置においては、機関が作動すると駆動軸とともに円盤状部が回転し、円盤状部の周面と溝との間に生じたポンプ作用によって油溜まりから潤滑油が吸引、吐出され、軸受に供給される。軸受において摺動部分の潤滑に供した潤滑油は前記ポンプ作用によって油溜まりに戻される。
【0015】
つまり、従来のように別個に油ポンプやその駆動用モータ、これらを監視する監視用計器をもたず、駆動軸の回転によってポンプ作用を生み出して潤滑油の循環供給を行うようになっているので、構成が簡素で装置全体のボリュームを小さく抑えられる。しかも、構成が簡素であるから部品の調達コストも安価に抑えられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る自己潤滑式軸受装置の実施形態を図1ないし図6に示して説明する。
図1に示す自己潤滑式軸受装置は、火力発電所においてボイラ設備への給水に用いられる多段横型の給水ポンプに設けられたものである。図において、符号1は給水ポンプ、2は給水ポンプ1を駆動するモータ、3はモータ2によって駆動される給水ポンプ1の駆動軸、4はモータ2と駆動軸3とを連結する継手である。
【0017】
最初に、給水ポンプ1の構造について簡単に説明する。給水ポンプ1は、駆動軸3に給水ベーン5を多段に備えており、これら多段の給水ベーン5を収めたケーシング6には吸込口7aと吐出口7bとが設けられている。駆動軸3はケーシング6から両端を突出させており、一方の軸端3aに継手4を介してモータ2が連結されている。ケーシング6の内部には、駆動軸3に作用するスラスト方向の力を相殺するバランスディスク8が配設されている。
【0018】
給水ポンプ1を駆動させると、給水ベーン5が被搬送物である水に及ぼす力の反作用により、駆動軸3には軸端3aに向かうスラスト方向の力が作用する。この力を相殺するため、図2に示すように、給水ベーン5によって高められた水の圧力が、駆動軸3に固定されたバランスディスク8とケーシング6に固定されたベースディスク9との間に導入される。両者間に圧が導入されると、バランスディスク8の側面を反スラスト方向に押圧する力が生まれてスラスト方向の力が相殺されるようになっている。
【0019】
自己潤滑式軸受装置は、駆動軸3の両端にそれぞれ設けられた2つの軸受部10,20を備えて構成されている。以下では、モータ2を連結された一方の軸端3aを支承する軸受部10を継手側、他方の軸端3bを支承する軸受部20を軸端側と称するものとする。
【0020】
継手側の軸受部10は、図3に示すように、軸端3aを支承するラジアル軸受11と、ラジアル軸受11に潤滑油を供給するオイルリング12と、これらを内部に配設してケーシング6に固定された軸受箱13とを備えて構成されている。
【0021】
ラジアル軸受11は内側に軸端3aを挿入嵌合され、軸受箱13に外周を固定されている。ラジアル軸受11には、駆動軸3の長手方向中央に駆動軸3の摺動面を露出させる開口部14が形成されており、オイルリング12は駆動軸3を挿通され、内周面を開口部14を通じて駆動軸3に当接させた状態に配置されている。オイルリング12の径は駆動軸3より大きく、駆動軸3に吊り下げられた格好となっている。
【0022】
軸受箱13の内部は油溜まりを兼ねており、駆動軸3に吊り下げられたオイルリング12は一部を油溜まりの潤滑油に浸しており、駆動軸3が回転すると連れ回りして駆動軸3とラジアル軸受11との間に潤滑油を供給するようになっている。
【0023】
軸端3aは軸受箱13を貫通しており、軸受箱13を貫通した駆動軸3の周りにはメカニカルシール15が配設されている。また、ケーシング6との接合部に近い箇所には、油溜まりとは独立した小空間16が形成されている。この小空間16は、後述する冷却水供給系を通じて冷却水を導入されることで給水ポンプ1からの熱伝達による軸受箱13の過熱を防止する冷却ジャケットとして機能している。
【0024】
軸端側の軸受部20は、図4に示すように、軸端3bを支承するラジアル軸受21と、さらにその先の小径部3cを支承するスラスト玉軸受22と、ラジアル軸受21に潤滑油を供給するオイルリング23と、駆動軸3の回転によってポンプ作用を生み出すポンプ機構24と、これらを内部に配設してケーシング6に固定された軸受箱25とを備えて構成されている。
【0025】
ラジアル軸受21は内側に軸端3bを挿入嵌合され、軸受箱25に外周を固定されている。ラジアル軸受21にも、駆動軸3の長手方向中央に駆動軸3の摺動面を露出させる開口部26が形成されており、オイルリング23は駆動軸3を挿通され、内周面を開口部26を通じて駆動軸3に当接させた状態に配置されている。オイルリング23の場合も、オイルリング12と同じく駆動軸3に吊り下げられた格好となっている。
【0026】
ポンプ機構24は、駆動軸3に設けられた駆動軸3より大径の円盤状部27と、円盤状部27の周面をなぞるように軸受箱25の内側に設けられた無端の溝28とからなる。円盤状部27と溝28との間には一方を偏らせたようにC形状の空隙が設けられており、駆動軸3とともに円盤状部27が回転すると空隙に導かれた潤滑油が自らの粘性によって円盤状部27とともに回転し、漸次狭くなる溝28との関係から昇圧されてポンプ作用を生じるようになっている。
【0027】
軸受箱25の内部も油溜まりを兼ねており、駆動軸3に吊り下げられたオイルリング23は一部を油溜まりの潤滑油に浸しており、駆動軸3が回転すると連れ回りして駆動軸3とラジアル軸受21との間に潤滑油を供給する。なお、軸受箱13の油溜まりは潤滑油の中継地的な役割を担い、軸受箱25の油溜まりは潤滑油を湛える主要な油タンクとしての役割を担っている。
【0028】
軸端3aは軸受箱25を貫通しており、軸受箱25を貫通した駆動軸3の周りにはメカニカルシール29が配設されている。また、ケーシング6との接合部に近い箇所には、油溜まりとは独立した小空間30が形成されている。この小空間30も、後述する冷却水供給系を通じて冷却水を導入されることで給水ポンプ1からの熱伝達による軸受箱25の過熱を防止する冷却ジャケットとして機能している。
【0029】
軸端側の軸受部20には、各軸受の潤滑に供して過熱した潤滑油を冷却するオイルクーラ31が設けられている。後述する冷却水供給系を通じて冷却水を導入されることで潤滑油を冷却している。
【0030】
オイルクーラ31は軸受箱25の外にあって軸受箱25の内底面よりもさらに低位に配置されている。また、軸受箱25とオイルクーラ31との間には連通路32が形成されており、オイルクーラ31内の油溜まりに生じた気泡は連通路32を通じて油溜まりに移動するようになっている。
【0031】
軸端側の軸受部20には、図5に示すように、軸受箱25の油溜まりから溝28に通じる給油路33、溝28からオイルクーラ31に通じる給油路34、オイルクーラ31からラジアル軸受21およびスラスト玉軸受22に通じる給油路35が設けられている。また、継手側の軸受部10には、軸受部20との間に配設された油配管40を介してオイルクーラ31からラジアル軸受11に通じる給油路36が設けられている。さらに、軸受部10と軸受部20との間には、軸受箱13内部の油溜まりから軸受箱25内部の油溜まりに潤滑油を戻す油配管41が配設されている。
【0032】
続いて、上記のように構成された自己潤滑式軸受装置の作動について図6をもとに説明する。図6は、給水ポンプ1に設けられた自己潤滑式軸受装置の各構成要素とこれらを繋ぐ給油路33,34,35,36、および油配管40,41を模式的に示したものである。図において、実線は潤滑油の流れる経路を、破線は冷却水の流れる経路をそれぞれ示している。
【0033】
モータ1によって駆動軸3を回転駆動し、給水ポンプ1を作動させると、駆動軸3とともに円盤状部27が回転してポンプ作用が生み出され、軸受箱25の油溜まりから給油路33を通じて潤滑油が吸い上げられる。吸い上げられた潤滑油は給油路34を通じてオイルクーラ31に導入され、冷却水との間で熱交換して冷却される。
【0034】
冷却された潤滑油はオイルクーラ31から押し出され、一部が給油路35を通じてラジアル軸受21およびスラスト玉軸受22に供給される。ラジアル軸受21に供給された潤滑油は駆動軸3との摺動面を潤滑し、ラジアル軸受21の開放端から流出して油溜まりに戻る。また、ラジアル軸受21では、オイルリング12が駆動軸3と連れ回りして駆動軸3との間に潤滑油が供給される。
スラスト玉軸受22に供給された潤滑油は、玉の周囲を潤滑して油溜まりに戻る。
【0035】
オイルクーラ31から押し出された潤滑油の残りは、油配管40、給油路36を通じてラジアル軸受11に供給される。ラジアル軸受11に供給された潤滑油は駆動軸3との摺動面を潤滑し、ラジアル軸受11の開放端から流出して軸受箱13の油溜まりに戻る。また、ラジアル軸受11では、オイルリング22が駆動軸3と連れ回りして駆動軸3との間に潤滑油が供給される。
軸受箱13の油溜まりに戻った潤滑油は、軸端側の軸受部20におけるポンプ作用によって挿引され、油配管41を通じて軸受箱25の油溜まりに戻る。
【0036】
オイルクーラ31に導入される冷却水は、平行して継手側、軸端側の各小空間16,30にも導入され、給水ポンプ1からの熱伝達による軸受箱13の過熱を防止する。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る自己潤滑式軸受装置によれば、従来のように別個に油ポンプやその駆動用モータ、これらを監視する監視用計器をもたず、駆動軸の回転によってポンプ作用を生み出して潤滑油の循環供給を行うようになっており、構成が簡素で装置全体のボリュームを小さく抑えられるので、装置の小型化が図れる。しかも、構成が簡素であるから部品の調達コストも安価に抑えられるので、装置そのものの価格競争力にも秀でる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る自己潤滑式軸受装置を備える給水ポンプの構造を示す断面図である。
【図2】 給水ポンプ内に具備されるバランスディスクを示す断面図である。
【図3】 自己潤滑式軸受装置を構成する継手側の軸受部を示す断面図である。
【図4】 自己潤滑式軸受装置を構成する軸端側の軸受部を示す断面図である。
【図5】 図4の軸端側軸受部を、図4とは異なる方向から見た断面図である。
【図6】 自己潤滑式軸受装置の各構成要素とこれらを繋ぐ給油路および油配管の各系統を模式的に示した概略図である。
【符号の説明】
1 給水ポンプ
3 駆動軸
10 軸受部
11 ラジアル軸受
12 オイルリング
16 小空間
20 軸受部
21 ラジアル軸受
22 スラスト玉軸受
23 オイルリング
24 ポンプ機構
27 円盤状部
28 溝
30 小空間
31 オイルクーラ
32 連通路
Claims (7)
- 回転駆動される駆動軸を有する機関に具備され、前記駆動軸に設けられて潤滑油を自己潤滑させる軸受装置であって、
前記駆動軸の一方の軸端を支承する軸受と、該軸受を内部に配設して前記機関に固定される筐体と、該筐体の内部において前記駆動軸に設けられた大径の円盤状部と、該円盤状部の周面をなぞるようにして前記筐体の内側に設けられた無端の溝と、前記筐体の内部に設けられて前記溝に供給すべき潤滑油を溜め置く油溜まりと、該油溜まりから前記溝、該溝から前記軸受に通じ、さらに該軸受から前記油溜まりに通じる給油路とを備え、
前記溝から前記駆動軸の他方の軸端を支承する軸受に通じ、さらに該軸受から前記油溜まりに通じる給油路を備えることを特徴とする自己潤滑式軸受装置。 - 前記一方の軸端を支承する軸受が、ラジアル軸受とスラスト軸受とからなることを特徴とする請求項1記載の自己潤滑式軸受装置。
- 前記他方の軸端を支承する軸受が、ラジアル軸受であることを特徴とする請求項1または2記載の自己潤滑式軸受装置。
- 前記潤滑油を冷却するオイルクーラを備えることを特徴とする請求項1、2または3記載の自己潤滑式軸受装置。
- 前記オイルクーラが前記油溜まりよりも低位に配置されるとともに、両者間に通じる連通路が形成されていることを特徴とする請求項4記載の自己潤滑式軸受装置。
- 前記機関からの熱伝達による前記筐体の過熱を防止する冷却ジャケットを備えることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の自己潤滑式軸受装置。
- 前記機関が、バランスディスクを有する多段横型給水ポンプであって、前記駆動軸を支承するスラスト玉軸受を備えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の自己潤滑式軸受装置。
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