JP4681129B2 - 核酸末端領域の非対称的修飾法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、標的核酸の末端領域の一方に、所望の処理を優先的に施す方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子のクローニングや遺伝子ライブラリーの構築、ポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと称する)等の遺伝子工学的技術は、遺伝子の切断や連結、及び遺伝子へのマーカーやアダプターの付加等の基本的操作を組み合わせることによって行われる。
【0003】
これらの操作は、遺伝子工学に不可欠な基礎的手法であるが、所望する特定の領域のみにこのような操作を行うことができれば、さらに多くの有用な手法を開発することができる。
【0004】
例えば、遺伝子にアダプターを付加する場合、標的核酸の末端領域が等価であれば、両末端領域に同じアダプターが付加されてしまうが、5’RACEを実施するときには、片方の末端領域のみにアダプターを付加することができれば有用である。
【0005】
所望する特定の領域のみに遺伝子工学的な操作を施す場合にも、PCRは多用されているが、標的核酸のサイズが大きい場合には、PCRによる操作は不可能である。
【0006】
このため、所望する特定の領域や所望する特定の遺伝子のみに遺伝子工学的な操作を施すための、より汎用性のある方法が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、標的核酸の末端領域の一方に、所望の処理を優先的に施す方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、
標的核酸の末端領域の一方に、所望の処理を優先的に施す方法であって、
前記標的核酸を含む試料に、RecAタンパク質と、前記処理を施すべき末端領域とは反対側の末端領域と相同な核酸プローブとを添加することにより、前記RecAタンパク質を介して前記標的核酸に前記核酸プローブを結合させ、前記反対側の末端領域を三本鎖構造にする工程と;
前記標的核酸に結合した前記RecAタンパク質を前記標的核酸から解離させて、前記RecAタンパク質を介さずに前記核酸プローブが前記反対側の末端領域に結合した核酸を得る工程と;
該核酸に前記処理を施すことにより、標的核酸の末端領域の一方に優先的に所望の処理を施す工程と
を備えた方法を提供する。
【0009】
ここで、以下の発明の詳細な説明の理解を助けるために、図9を参照しながら、本発明の方法の概略を説明する。
【0010】
本発明の方法の第一の工程では、標的核酸、一般的には標的DNA1に、該DNAの一方の末端領域と相同な配列を有するプローブDNA2とRecAタンパク質3とを添加して、三本鎖DNA形成反応を行う。RecAタンパク質3は、プローブDNA2に結合してプローブDNA・RecAタンパク質複合体4を形成した後、標的DNA1の末端領域に存在するプローブDNA2と相同な領域を検索し、プローブDNA2を該相同な領域に結合させる。このようなRecAタンパク質の作用により、第一の工程では、標的DNA1の一方の末端領域に、RecAタンパク質3を介してプローブDNA2が結合し、末端領域に三本鎖DNA構造5が形成される。
【0011】
第二の工程では、除タンパク反応を行い、プローブDNA2に結合したRecAタンパク質3を除去する。プローブDNA2が末端領域に結合している場合には、RecAタンパク質3を除去した後でも三本鎖DNA構造5が維持される。第二の工程において、三本鎖DNA構造5からRecAタンパク質3を除去することにより、三本鎖DNA構造5に対して様々な処理を施すことが可能となる。
【0012】
第三の工程では、RecAタンパク質3が除去された三本鎖DNA構造5に、所望の処理(図では、アダプターDNAのライゲーションが例示されている)を施す。三本鎖DNA構造5を有する末端領域と二本鎖の末端領域とは構造が異なるので、本来等価であった二つの領域のうちの一方の領域のみに所望の処理を施すことができる。図9には、三本鎖DNA構造5が形成されていない方の末端領域にアダプターDNA6がライゲーションされた様子が示されている。
【0013】
なお、図に示されている具体的な反応や構造などは、あくまでも理解を容易にする目的で記載されているにすぎないので、実際には、それらの細部が図面と一致しない場合があり得る。すなわち、本発明者らは、本発明の方法の基礎となった本発明者らによる下記の発見の他には、いかなる特定の理論にも拘泥しない。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、標的核酸の末端領域の一方に、所望の処理を優先的に施す方法を提供する。
【0015】
本発明は、RecAタンパク質を介して形成される三本鎖構造が標的核酸の末端領域に形成される場合には、前記三本鎖構造からRecAタンパク質を解離させた後にも前記三本鎖構造が維持されるという本発明者らの発見に基づいてなされたものである。RecAタンパク質、及びRecAタンパク質を介して三本鎖構造が形成されることは公知である。
【0016】
以下、本発明の方法の最も典型的な実施の態様について詳述する。
【0017】
本発明の方法を実施するには、まず、その末端領域の一方に所望の処理を優先的に施すべき標的核酸を含む試料に、RecAタンパク質と、前記処理を施すべき末端領域とは反対側に位置する前記標的核酸中の末端領域と相同な核酸プローブとを添加する。
【0018】
本明細書において、「標的核酸」は、任意の単純ヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドからなるポリヌクレオチドであり得、本方法の実施者が任意に選択し得る。標的核酸は、典型的には、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNA等のDNA、並びにmRNA、全RNA、hnRNA、及び合成RNA等のRNAである。「単純ヌクレオチド」には、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシルが含まれる。「修飾ヌクレオチド」には、例えば、イノシン、アセチルシチジン、メチルアデノシン、メチルグアノシンを含むリン酸エステルなどが含まれる。
【0019】
「標的核酸を含む試料」は、生物から採取した未処置の試料、例えば、ゲノムDNA、mRNA、プラスミドを含む生物試料であり得る。また、「標的核酸を含む試料」は、前記未処置の試料に対して様々な操作又は処理を行った試料であり得る。このような操作又は処理は、核酸抽出操作、増幅操作、制限酵素、リガーゼ、ポリメラーゼ、ヌクレアーゼを含む酵素による処理、及び遺伝子工学の領域において周知であるその他の処理、並びにこれらの組み合わせであり得る。
【0020】
「核酸抽出操作」は、フェノール抽出、エタノール沈殿であり得るが、これらに限定されない。
【0021】
「増幅操作」は、典型的にはPCR、又はその変法、例えば、逆転写PCR、逆PCR、5‘RACE、3’RACEであり得る。
【0022】
あるいは、「標的核酸を含む試料」は、人工的に調製した核酸を含有する試料、又は該試料に前記各処理を施すことによって調製された試料であってもよい。
【0023】
より具体的には、前記「標的核酸を含む試料」は、遺伝子のクローニングの各段階で得られる試料、例えば、DNAライブラリー、標的mRNAを含む試料、1st strand cDNAを含む試料、アダプターが付加された1st strand cDNAを含む試料、PCR産物がその中にサブクローニングされたプラスミドを含む試料であり得る。
【0024】
本明細書において、「RecAタンパク質」とは、二本鎖核酸の一方のストランド中の任意の領域に、該領域と相同な一本鎖核酸を結合させることにより、前記領域に三本鎖構造を形成させ得るタンパク質を意味する。RecAタンパク質は、相同的組換え、DNAの修復、又は大腸菌のSOS遺伝子の発現などに関与することが知られている。RecAタンパク質の中では、大腸菌やλファージのRecAタンパク質が最も有名である。しかしながら、大腸菌のRecAタンパク質に類似した構造及び機能を有するタンパク質は、大腸菌以外の生物にも広く分布していることが知られており、これらのタンパク質は、一般に、RecA類似タンパク質と呼称されている。本明細書において、「RecAタンパク質」には、大腸菌やλファージのRecAタンパク質のみならず、RecA類似タンパク質も含まれる。
【0025】
前述のように、RecAタンパク質は、一本鎖核酸を二本鎖核酸にランダムに結合させるのではなく、二本鎖核酸の一方のストランド中に存在する相同な領域に結合させる。二つの核酸が「相同」であるということは、RecAタンパク質を介して特異的な三本鎖構造を形成し得る程度に、両核酸が同一である、又は類似していることを意味する。「類似」とは、例えば、二つの塩基配列が少なくとも50%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の同一性であり得る。
【0026】
前記核酸プローブは、三本鎖構造を形成しない部分を含んでもよい。該部分は、核酸プローブの中間及び/又は末端に位置し得る。
【0027】
三本鎖構造を形成しない部分が、核酸プローブの末端に位置する場合には、核酸プローブは、例えば、前記末端が、標的核酸の末端領域から1塩基以上突出するように標的核酸に結合する。三本鎖構造を形成しない部分が、核酸プローブの中間に位置する場合には、核酸プローブは、ループ状の中間部を有するように標的核酸に結合する。
【0028】
RecAタンパク質は上記のごとき機能を有しているので、前記試料に、RecAタンパク質及び相同な核酸プローブを添加すると、該核酸プローブは、標的核酸に、より正確には、標的核酸の一方のストランド中に存在する相同な部分に結合する。核酸プローブが結合した末端領域には三本鎖構造が形成されるので、該末端領域の構造は、核酸プローブが結合していないほうの末端領域の構造とは異なる。本発明の方法は、一方の末端領域に、一般的には、三本鎖構造が形成されていない方の末端領域に、優先的に所望の処理を施すためにこのような構造の相違を利用する。
【0029】
一般的には、RecAタンパク質が末端領域に結合した状態では、標的核酸に所望の処理を行えないので、以下に記載されているように、RecAタンパク質は、最終的には、標的核酸から解離させる必要がある。
【0030】
しかしながら、末端領域以外の領域に核酸プローブを結合させた場合には、標的核酸からRecAタンパク質を解離させると、一旦形成された三本鎖構造が再び解消する。それ故、本発明の方法では、核酸プローブは標的核酸の末端領域に結合させなければならない。
【0031】
所望の処理を施すべき標的領域が、末端領域に位置していないときには、該領域が末端領域に位置するように標的核酸の一部を切除してから、本発明の方法を適用すればよい。あるいは、一度環状の核酸にしてから、特定領域が末端領域にくるように再び切断してもよい。また、標的核酸が、環状の核酸であるときには、三本鎖核酸を形成させる前に、又は形成させた後に、所望の処理を施すべき領域が末端領域に位置するように環状の標的核酸を切断すればよい。
【0032】
なお、本明細書において、標的核酸の「末端領域」とは、標的核酸の終末端と標的核酸の終末端から400番目、より好ましくは200番目、より好ましくは150番目、より好ましくは100番目、より好ましくは80番目、さらに好ましくは60番目、さらに好ましくは50番目、さらに好ましくは40番目、さらに好ましくは20番目、さらに好ましくは10番目の塩基との間に位置する領域(各終末端を含む)を指すものとする。
【0033】
末端領域の終末端の形状は、平滑末端と突出末端のうち何れでもよい。標的核酸に施すべき処理が、アダプターの付加等の終末端への付加反応である場合には、終末端の形状は突出末端であることが好ましい。
【0034】
下記の実験例に詳述されているように、前記核酸プローブが、RecAタンパク質を介して試料中の標的核酸に結合する場合、核酸プローブの方向性によっては三本鎖構造を形成しないことがある。従って、適切な方向性を有する核酸プローブを使用しないと、三本鎖構造は形成されないことがあることに注意しなければならない。
【0035】
典型的には、三本鎖構造を形成させるべき末端領域において5’末端を有するストランドと相同な配列を有する核酸プローブを使用すれば、三本鎖構造が形成される。
【0036】
下記の実験例に詳述されているように、RecAタンパク質が解離した後にも三本鎖構造が安定に維持されるためには、前記核酸プローブの長さは、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上、好ましくは20塩基以上、より好ましくは30塩基以上、さらに好ましくは40塩基以上、最も好ましくは60塩基以上である。
【0037】
安定な三本鎖構造を得るためには、三本鎖構造の両末端のうち外側(すなわち、標的核酸の終末端側)に存在する末端が、標的核酸の終末端から50番目の塩基、より好ましくは30番目の塩基、さらに好ましくは20番目の塩基、さらに好ましくは10番目の塩基よりも外側に位置することが好ましい。
【0038】
RecAタンパク質は、本来、ATPの存在下において、相同的な組換えを触媒するタンパク質なので、前記試料中にATPが存在すると相同的組換えが進行して、三本鎖構造は直ぐに消滅してしまう。
【0039】
従って、本発明の方法を実施する場合には、少なくとも三本鎖核酸を形成させているときと、三本鎖核酸を形成させた後には、試料中にATPが4.8mM以上存在してはならないことに注意しなければならない。好ましくは、ATPの濃度は、0.48mM以下であり、ATPが試料中に存在しないことが最も好ましい。
【0040】
RecAタンパク質を介して三本鎖構造を形成させるためには、ATPの機能を代替し得る物質、例えば、ATPγSのような非分解性ATP類似体を添加しなければならない。
【0041】
RecAタンパク質を介して三本鎖構造を形成させる前工程に続いて、前記標的核酸に結合したRecAタンパク質を解離させる工程を実施する。本工程において、標的核酸からRecAタンパク質を解離させることによって、続く最後の工程で、標的核酸の末端領域の一方に所望の処理を施すことが可能となる。
【0042】
前述のように、標的核酸の末端領域に形成された三本鎖構造は、RecAタンパク質が該領域から解離しても維持される。従って、本工程において、前記標的核酸からRecAタンパク質を解離させれば、末端領域のうち一方のみに三本鎖構造が形成された標的核酸が得られる。
【0043】
三本鎖構造が形成されている領域と形成されていない領域では、次工程で施すべき所望の処理の効率が異なるので、両末端領域のうちの一方に対して優先的に、より好ましくは選択的に所望の処理を施すことが可能となる。一般的には、優先的に所望の処理が施されるのは、三本鎖構造が形成されていないほうの末端領域である。
【0044】
標的核酸からのRecAタンパク質の解離は、トリクロロ酢酸、過塩素酸の添加等の除タンパク操作、SDSのような界面活性剤の添加、又はタンパク質分解酵素の添加のような簡易な操作によって行い得る。
【0045】
次に、末端領域の一方だけが三本鎖構造となった標的核酸に所望の処理を与えれば、典型的には、三本鎖構造が形成されていないほうの末端領域に対して、優先的に、好ましくは選択的に所望の処理を施すことができる。
【0046】
本明細書において、「優先的に」とは、一方の末端領域に対する処理の効率が、他方の末端領域に対する処理の効率を上回ることを意味する。「選択的に」とは、一方の末端領域のみに所望の処理が施されることを意味する。
【0047】
本工程で与えるべき所望の処理は、ヌクレアーゼ、ポリメラーゼ、及びリガーゼ等を用いた酵素反応、化学的な修飾や付加を含む化学反応、DNAチップの基板などの固相担体への吸着や電荷の付与などの物理的な処理など核酸に対してなし得る任意の処理であり得る。該処理は、末端領域に形成された三本鎖構造が破壊されない条件で行わなければならない。
【0048】
末端領域に施すべき所望の処理としては、例えば、アンカー配列の付加、アダプターの付加等を挙げることができる。これらの処理において使用されるリガーゼに対しては、両末端領域は等価なので、本発明の方法を用いなければ、両末端領域には共にアンカー配列、又はアダプターが付加される。
【0049】
本発明の方法を用いて、一方の末端領域のみにアダプターを付加させる場合、標的核酸の長さは、PCRでアダプターを付加できないサイズ、具体的には、40kb以上、例えば、50kb、75kb、100kb、150kb、又は200kbのサイズであり得る。
【0050】
一方の末端領域に対して、優先的に、あるいは選択的にアダプターを付加するためには、核酸プローブは、その一端が核酸塩基の終末端から一ヌクレオチド以上突出するように標的核酸に結合するものを選択することが好ましい。このような核酸プローブは、標的核酸の終末端の一方のみに優先的に所望の処理を施す場合に、一般的に有用であろう。
【0051】
さらに、本発明の方法は、DNA組み換え反応を利用した、クローニング技術にも有用である。この技術は、遺伝子、ゲノムDNA、PCR産物などのDNA断片を、制限酵素やリガーゼ連結の使用なしで、ベクターDNAにクローニングすることができる技術である。そこでは、λファージの部位特異的組換え系を使っているため、目的DNA断片の両端に組換えに必要な異なるDNA配列を付加する必要がある。それ故、本発明の方法は、特に、PCRを使用できないような長いDNA断片を、この方法によりクローニングする際に有用である。
【0052】
このように、本発明の方法を用いれば、標的核酸の末端領域の一方に、所望の処理を優先的に施すことができる。それ故、末端領域の一方に所望の処理が優先的に施すことによって、末端領域が非対称的に修飾された核酸、及びこのような核酸を製造する方法も本発明の範囲に属する。
【0053】
末端領域が非対称的に修飾された核酸としては、一方の末端領域のみが制限酵素、ヌクレアーゼ、リガーゼなどで処理された核酸、一方の末端領域のみにアダプターが付加された核酸、一方の末端領域のみに固相担体(DNAチップなどの基板)が結合した核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
末端領域が非対称的に修飾された核酸を製造するには、前記本発明の方法の各工程を行えばよい。
【0055】
以上が、本発明の方法の基本的な操作であるが、以下に示すように、これらの各操作を改変した操作を行ってもよく、さらに、上記各操作に新たな操作を適宜付加してもよい。
【0056】
新たな操作を付加する場合、上記基本的な操作を行って標的核酸の末端領域の一方に優先的に所望の処理を施した後に、前記反対側の末端領域に形成された前記三本鎖構造を解消させ、該反対側の末端領域に前記処理とは異なる処理を施してもよい。このような操作を行えば、標的核酸中の等価な領域に対して異なる二種類の処理を施すことが可能になる。
【0057】
このような操作を行えば、標的核酸の一方の終末端に第一のアダプターを付加した後、他方の終末端に前記第一のアダプターとは異なる第二のアダプターを付加することができる。これによって、現在、PCRではアダプターを付加できないサイズが大きな標的核酸にも、異なるアダプターを付加することが可能となる。
【0058】
三本鎖構造を解消させるためには、例えば、熱処理、アルカリ処理、酵素処理(DNAポリメラーゼなど)を使用し得る。あるいは、三本鎖構造を解消させやすくするために、変異が導入された核酸プローブを使用することも有用である。変異が導入された核酸プローブは、標的核酸への結合性が弱いために三本鎖構造を解消させやすい。
【0059】
さらに、本発明は、RecAタンパク質などのタンパク質を介さずに、二本鎖核酸の末端領域の一方又は双方に、該末端領域と相同な一本鎖核酸を結合することにより、末端領域の一方又は双方に三本鎖構造が形成された末端被修飾核酸を製造する方法、及びこのような末端被修飾核酸も提供する。
【0060】
一方の末端領域のみに三本鎖構造が形成された末端被修飾核酸を作成するためには、本発明の方法の第一の工程と第二の工程を実施すればよい。双方の末端領域に三本鎖構造が形成された末端被修飾核酸を作成するためには、前記第一の工程において、二種類のプローブ、すなわち、一方の末端領域と相同な核酸プローブと他方の末端領域と相同な核酸プローブとを添加すればよい。
【0061】
以下、実験例及び実施例に従って、本発明をさらに詳細に説明するが、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0062】
[実験例1]
本実験例では、図1を参照しながら、三本鎖構造の形成における各反応成分の依存性について記載する。
【0063】
まず、標的核酸として、M13mp18RF DNAを制限酵素SnaBIで直鎖状にしたものと、前記標的核酸の末端領域と相同な配列を有する60マーの核酸プローブ1(配列番号1)を用意した。核酸プローブ1は、T4ポリヌクレオチドキナーゼと[γ−32P]ATPを用いて、32Pで5’末端を標識した。前記標的核酸と標識された核酸プローブ1との間に三本鎖を形成させるために、1pmolの標識核酸プローブ1、3.0μgのRecAタンパク質、4.8mM ATP−γS、200ngの標的核酸を、20mM 酢酸マグネシウム、30mM 酢酸トリス(pH7.2)中にて、37℃で30分間保温した。以下、本実験例、及び実験例2〜4において、該反応条件を標準反応条件と称する。
【0064】
反応後に、0.5%(W/V)SDS、0.7mg/mLプロテイナーゼKを加え、37℃で30分間保温することにより、除タンパクを行い、その半分量を1%アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後に、エチジウムプロミドでゲルを染色し、DNAの写真を記録した。結果を図1(B)に示す。
【0065】
図1(B)から、全てのレーン(各レーンの反応条件は、以下に記載されている)で、標的核酸が正しく泳動されていることが分かる。
【0066】
次に、ゲルを濾紙の上に載せてゲル乾燥器で乾燥させた後、ゲルのオートラジオグラムをとり、標識核酸プローブ1からのシグナルをX線フィルム上に記録した。結果を図1(A)に示す。
【0067】
図1(A)中、レーンMは、DNAサイズマーカーであり、図面の左端にはそれらのサイズが示されている。このサイズマーカーは、λDNAを制限酵素HindIIIで切断し、T4ポリヌクレオチドキナーゼと[γ―32P]ATPを用いて、32Pで5’末端標識したものである。
【0068】
レーン2は、前記標準反応条件からRecAタンパク質を除いた条件を用いて、三本鎖形成反応を行った場合の結果である。
【0069】
レーン3は、前記標準反応条件からATP−γSを除いた条件を用いて、三本鎖形成反応を行った場合の結果である。
【0070】
レーン4は、前記標準反応条件からRecAタンパク質とATP−γSを除いた条件を用いて、三本鎖形成反応を行った場合の結果である。
【0071】
レーン5は、前記標準反応条件において、32P標識核酸プローブ1に代えて、32P標識核酸プローブ2(配列番号2)を用いた条件で、三本鎖形成反応を行った場合の結果である。
【0072】
レーン6は、前記標準反応条件において、32P標識核酸プローブ1に代えて、32P標識核酸プローブ3(配列番号3)を用いた条件で、三本鎖形成反応を行った場合の結果である。
【0073】
レーン7は、前記標準反応条件において、標的核酸として、pBR322DNAを制限酵素ScaIで切断したものを使用し、且つ該標的核酸の末端領域と相同な配列を有する前記32P標識核酸プローブ4(配列番号4)を用いた条件で、三本鎖形成反応を行った場合の結果である。
【0074】
図1(A)のレーン2〜4では、三本鎖が全く形成されていないので、三本鎖形成反応には、RecAタンパク質とATP−γSが不可欠であることが分かる。また、標的核酸と相同でない核酸プローブを用いたレーン5とレーン6では、三本鎖は形成されなかったので、三本鎖は、RecAタンパク質を介した特異的な反応によって形成されることが明らかである。
【0075】
レーン1とレーン7では、三本鎖が形成されたので、標的核酸と相同な核酸プローブを用いれば、任意の標的核酸に三本鎖が形成されることが分かった。
【0076】
[実験例2]
本実験例では、三本鎖形成反応において使用すべきオリゴヌクレオチドの方向性について検討した。以下、図2を参照しながら、本実験例について説明する。
【0077】
図2(A)の各レーンは、実験例1と同様に、標的核酸に結合した標識核酸プローブを検出したものである。
【0078】
レーン1は、標準反応条件を用いて三本鎖形成反応を行った後に、実験例1に記載されている除タンパク操作及び電気泳動を行った場合の結果である。
【0079】
レーン2は、標準反応条件において、核酸プローブ1に代えて、核酸プローブ2を用いた場合の結果である。
【0080】
レーン3は、標準反応条件において、核酸プローブ1に代えて、核酸プローブ5(配列番号5)を用いた場合の結果である。
【0081】
レーン4は、標準反応条件において、核酸プローブ1に代えて、核酸プローブ6(配列番号6)を用いた場合の結果である。
【0082】
核酸プローブ1及び2は、前記標的核酸中の一方の末端領域において三本鎖核酸を形成する。これに対して、核酸プローブ5及び6は、核酸プローブ1及び2が三本鎖核酸を形成する末端領域とは反対側の末端領域において三本鎖核酸を形成する。
【0083】
また、核酸プローブ1及び5は、標的核酸の各ストランドの5’末端と相同性を有するのに対して、核酸プローブ2及び6は、標的核酸の各ストランドの3’と相同性を有する。
【0084】
図2の(A)から明らかなように、核酸プローブ1(レーン1)と核酸プローブ5(レーン3)は、標的核酸と三本鎖を安定に形成することができたが、核酸プローブ2(レーン2)と核酸プローブ6(レーン4)は、標的核酸と三本鎖を安定に形成することができなかった。
【0085】
図2の(B)は、エチジウムブロミドで全てのDNAを染色した結果を示している。図2の(B)では、全てのレーンで標的核酸が泳動されているので、核酸プローブ2と核酸プローブ6は、標的核酸が存在しているにもかかわらず、標的核酸と安定に三本鎖を形成し得なかったことが分かる。
【0086】
本実験例によって、安定な三本鎖を形成するためには、一般に、標的核酸の各ストランドの5’末端と相同な核酸プローブを使用すべきであることが明らかとなった。
【0087】
[実験例3]
本実験例では、三本鎖の形成に必要な核酸プローブの長さについて調べた。
【0088】
反応は、前記標準反応条件において、核酸プローブ1に代えて、核酸プローブ7、8、9、10、及び11(配列番号7、8、9、10、及び11)を用いた条件下で行った。
【0089】
核酸プローブ7、8、9、10、及び11は、それぞれ、核酸プローブ1の5‘末端から、10、20、30、40、及び50個のヌクレオチドを除去したものである。
【0090】
本実験例の結果を図3に示す。
【0091】
図3(A)に示されているように、核酸プローブが長いほど、より多くの三本鎖を形成することができた。核酸プローブ9は、ほとんど三本鎖を形成することができなかった(レーン4)。核酸プローブ10、及び11は、三本鎖を形成することができなかった(レーン5、及び6)。核酸プローブ8は、ある程度三本鎖を形成することができた。これに対して、核酸プローブ7と核酸プローブ1は、大量の三本鎖を形成することができた。
【0092】
図3(B)は、エチジウムブロミド染色で染色した標的核酸を表している。
【0093】
本実験例から、三本鎖を形成するためには、一定の長さ以上の長さを有する核酸プローブを用いることが必要であることが明らかとなった。
【0094】
[実験例4]
本実験例では、三本鎖が形成される位置と三本鎖の形成量との関係について調べた。
【0095】
同一の長さ(60マー)を有する4種類の核酸プローブ1、12(配列番号12)、13(配列番号13)、及び14(配列番号14)を調製した。核酸プローブ12、13、及び14の3’末端は、それぞれ、M13mp18RF標的核酸のストランドの5’末端から10、20、及び30番目のヌクレオチドと結合する。結果を図4(A)及び4(B)に示す。
【0096】
図4(A)に示されているように、三本鎖が標的核酸の終末端から近い位置に形成される核酸プローブを用いると、三本鎖の形成量が多かった。
【0097】
図4(A)において、レーン1〜3は、それぞれ、核酸プローブ1、12、及び13を用いたときの結果を示している。
【0098】
標的核酸の終末端から30番目のヌクレオチドに、3’末端が結合する核酸プローブ14は、全く三本鎖を形成しなかった(レーン4)。
【0099】
本実験例でも、エチジウムブロミド染色によって、各レーンに標的DNAが存在することが確認された(図4B)。
【0100】
本実験例の結果から、三本鎖を効率よく形成させるためには、できる限り、標的核酸の末端付近に三本鎖を形成させるべきであることが明らかとなった。
【0101】
[実施例1]
本実施例では、図5を参照しながら、標的核酸の一方の末端にアダプターDNAをライゲーションする方法について説明する。
【0102】
本実施例では、標的核酸として、pBR322DNAを制限酵素ScaIで直鎖状にしたものと、該標的核酸の末端領域の一方と相同な配列を有する60マーの核酸プローブ15(配列番号15)を用意した。
【0103】
標的核酸と核酸プローブ15との間の三本鎖形成反応は、10pmolの核酸プローブ15、5.0μgのRecAタンパク質、4.8mM ATP−γS、100ngの標的核酸を、20mM酢酸マグネシウム、30mM酢酸トリス(pH7.2)中で、37℃で30分間保温した。反応後に、0.5%(W/V)SDS、0.7mg/mLプロテイナーゼKを加え、37℃で30分間保温することにより、除タンパクを行った。
【0104】
その後、40μLのTE緩衝液(10mM Tris−HCl、1mM EDTA)を加え、60μLとして、フェノール・クロロホルム抽出を1回、クロロホルム抽出を1回行った後、エタノール沈殿を行った。
【0105】
乾燥させたDNAペレットを、10μLの蒸留水に溶かした。続いて、1pmolの32P標識アダプターを加え、ライゲーションキット(タカラ酒造)を用いて、16℃で60分間保温することにより、ライゲーション反応を行った。ここで用いたアダプターDNAは、オリゴヌクレオチド1(配列番号16)とオリゴヌクレオチド2(配列番号17)を0.1×SSC中にて、80℃で10分間保温し、2時間かけて徐々に冷却して二本鎖にすることによって調製した。
【0106】
ライゲーション反応後に、フェノール・クロロホルム抽出を1回、クロロホルム抽出を1回行った後、エタノール沈殿を行った。
【0107】
乾燥させたDNAペレットを、8μLの蒸留水に溶かした後、2μLの、ゲルローディング バッファー(0.25% ブロモフェノールブルー、 0.25%キシレン シアノール FF、 15% フィコール (タイプ 400;ファルマシア)in water)を混ぜ、その半分量について、37℃で60分間保温した。その半分量について、1%アガロースゲル電気泳動を行った。
【0108】
泳動後に、ゲルをエチジウムブロミド染色し、DNAの写真を記録した(図5(B))。また、ゲルを濾紙の上に載せてゲル乾燥器で乾燥させた後、ゲルのオートラジオグラムをとり、標識核酸アダプターからのシグナルをX線フィルム上に記録した。その結果を図5(A)に示す。
【0109】
レーン1は、標的核酸にさらなる処理を行わずに、三本鎖を形成させた場合の結果を示している。
【0110】
レーン2は、前記標的核酸の一ヶ所を制限酵素で切断して得られた産物の半分量をゲルにかけ、核酸プローブ15を用いて該産物を検出した場合の結果を示している。制限酵素による切断は、エタノール沈殿後の前記乾燥DNAペレットを、8μLの蒸留水に溶かした後、10Unitsの制限酵素PyuIIを加えて、37℃で60分間保温することによって行った。
【0111】
核酸プローブ15は、レーン2のサイズが小さいほうのバンドに相当する断片と三本鎖を形成することができる。
【0112】
レーン3は、レーン2に存在するバンドのうちサイズが大きいほうのバンドに相当する断片と三本鎖を形成することができる核酸プローブ16(配列番号18)を用いた場合の結果を示す。
【0113】
レーン4は、レーン2と同様に、標的核酸の一ヶ所を制限酵素で切断して得られた産物の半分量をゲルにかけた場合の結果を示している。レーン4では、核酸プローブ16を使用した。
【0114】
レーン5は、標的核酸を制限酵素で切断せずにゲルにかけた場合の結果を示している。レーン5では、核酸プローブ15と16を使用した。
【0115】
レーン6は、レーン2と同様に、標的核酸の一ヶ所を制限酵素で切断して得られた産物の半分量をゲルにかけた場合の結果を示している。レーン6では、核酸プローブ15と16を使用した。
【0116】
レーン7〜12では、それぞれ、標的核酸の終末端からその末端が1塩基突出するように標的核酸と三本鎖を形成する核酸プローブ17(配列番号9;レーン7及び8)、核酸プローブ18(配列番号20;レーン9及び10)、及び核酸プローブ17と核酸プローブ18の両者(レーン11及び12)を使用した。核酸プローブ17は、レーン8のサイズが小さいほうの断片と三本鎖を形成することができ、核酸プローブ18は、レーン8のサイズが大きいほうの断片と三本鎖を形成することができる。
【0117】
レーン7、9、及び11では、標的核酸を制限酵素で処理せずにゲルにかけた。レーン8、10、及び12では、レーン2と同様に、標的核酸を制限酵素で処理した後にゲルにかけた。
【0118】
レーン1〜6では、標的核酸の終末端から、その末端が突出しないように三本鎖を形成する核酸プローブ15及び16(以下、非突出プローブという)を使用したので、標識アダプターの付加を効率的に阻害することができなかった。
【0119】
これに対して、標的核酸の終末端から、その末端が突出するように三本鎖を形成する核酸プローブ17及び18(以下、突出プローブ)を使用すると、標識アダプターの付加を効率的に阻害することができた。レーン8、10、及び12の対応するバンドが薄くなっていることから、核酸プローブ17、18、及び両者を用いたときに、それぞれ、小さいほうの断片への標識アダプターの付加、大きいほうの断片への標識アダプターの付加、及び両断片への標識アダプターの付加が効率的に阻害されたことが分かる。
【0120】
本実施例により、本発明の方法を用いると、標的核酸の末端へのアダプターの付加を阻害できることが明らかとなった。本実施例により、標的核酸の終末端から、その末端が突出するような核酸プローブを用いると、アダプターの付加を効率的に阻害できることも明らかとなった。
【0121】
[実施例2]
本実施例では、図6を参照しながら、標的核酸へのアダプター付加の阻害における、各反応成分への依存性について説明する。
【0122】
図6のレーン1は、実施例1における図5のレーン8と同じ反応を行ったときの結果を示している。
【0123】
レーン2は、RecAタンパク質を添加せずに、レーン1と同じ反応を行ったときの結果を示している。
【0124】
レーン3は、図5のレーン8で使用した反応工程において、エタノール沈殿後の乾燥DNAペレットを、8μLの蒸留水に溶かした後に、85℃で10分間熱処理を行い、その後は同じ処理を行ったときの結果を示している。
【0125】
レーン4は、ATP−γSとRecAタンパク質をともに添加せずに、レーン1と同じ反応を行った結果を示している。
【0126】
レーン5は、核酸プローブを添加せずに、レーン1と同じ反応を行ったときの結果を示している。
【0127】
レーン6は、標的核酸と相同な配列を持たない核酸プローブ1(配列番号1)を用いて、レーン1と同じ反応を行ったときの結果を示している。
【0128】
図6の(A)から、標的核酸へのアダプターの付加を阻害するためには、ATP−γS、RecAタンパク質、標的核酸と相同な核酸プローブを使用しなければならないことが明らかとなった。
【0129】
図6の(A)のレーン3では、標的核酸のアダプターの付加が阻害されているので、標的核酸と核酸プローブとによって形成される三本鎖は、熱処理に対して比較的安定であることも明らかとなった。
【0130】
図6の(B)は、エチジウムブロミドで全てのDNAを染色した結果を示している。
【0131】
[実施例3]
本実施例では、図7を参照しながら、標的核酸へのアダプターの付加の阻害に対する、標的核酸の末端の形状の効果について説明する。
【0132】
図7の(A)のレーン1は、実施例1における図5のレーン8と同じ反応を行ったときの結果を示している。
【0133】
レーン2は、核酸プローブを添加せずに、レーン1と同じ反応を行ったときの結果を示している。
【0134】
レーン3は、標的核酸として、pBR322DNAを制限酵素PstIで切断したものを用いたことと、核酸プローブ19(配列番号21)を用いたこと以外は、図5のレーン8と同じ反応を行ったときの結果を示している。
【0135】
レーン4は、核酸プローブを添加せずに、レーン3と同じ反応を行ったときの結果を示している。
【0136】
レーン1とレーン3では、ともに、アダプターの付加が阻害されているが、突出末端を有する標的核酸を使用したレーン1のほうが、平滑末端を有する標的核酸を使用したレーン3に比べて、より効率的に、アダプターの付加が阻害されることが分かった。
【0137】
核酸プローブを添加しなかったレーン2とレーン4では、アダプターの付加は全く阻害されなかった。
【0138】
図7の(B)は、エチジウムブロミドで全てのDNAを染色した結果を示している。
【0139】
本実施例から、標的核酸の末端の形状が、アダプターの付加の阻害効率に影響を与えることが明らかとなった。
【0140】
[実施例4]
本実施例では、図8を参照しながら、本発明の方法によるアダプター付加の阻害の経時変化について説明する。
【0141】
図8(A)のレーン1は、実施例1における図5のレーン2で使用した条件(非突出プローブを使用)において、三本鎖形成反応を30秒行ったときの結果を示している。
【0142】
レーン2、3、4、及び5は、レーン1と同一の条件下で、それぞれ、30、60、120、及び180分間、三本鎖形成反応を行ったときの結果を示している。
【0143】
レーン6は、図5のレーン8で使用した条件(突出プローブを使用)において、三本鎖形成反応を30秒行ったときの結果を示している。
【0144】
図8(C)は、図8(A)のレーン1〜5のシグナル強度を、BAS 2000 Image analyzerを用いて測定し、これをグラフ化したものである。
【0145】
レーン7、8、9、及び10は、レーン6と同一の条件下で、三本鎖形成反応を、それぞれ、30、60、120、及び180分間行ったときの結果を示している。
【0146】
図8(D)は、図8(A)のレーン6〜10のシグナル強度を、BAS 2000 Image analyzerを用いて測定し、これをグラフ化したものである。
【0147】
図8(C)と(D)の横軸は反応時間であり、縦軸は標的核酸に付加された放射能のパーセントである。アダプター中の放射能の総量が100%である。
【0148】
図8(A)のレーン1〜5、及び図8(C)から明らかなように、三本鎖形成反応に、非突出プローブを使用すると、三本鎖の形成は殆ど進行しないために、アダプター付加及びこれに続くライゲーション反応が阻害されなかった。
【0149】
図8(A)のレーン6〜10、及び図8(D)から明らかなように、三本鎖形成反応に、突出プローブを使用すると、三本鎖の形成は殆ど進行しないために、アダプター付加及びこれに続くライゲーション反応が経時的に阻害された。
【0150】
図8(B)は、エチジウムブロミドで全てのDNAを染色した結果を示している。
【0151】
本実施例から、突出プローブを用いると、三本鎖が経時的に形成され、アダプター付加及びライゲーション反応が経時的に阻害されるのに対して、非突出プローブを用いると、殆ど三本鎖が形成されず、このため、アダプター付加及びライゲーション反応が殆ど阻害されないことが明らかとなった。
【0152】
【発明の効果】
本発明によれば、標的核酸の末端領域の一方に、所望の処理を優先的に、又は選択的に施すことができる。
【0153】
本発明によれば、標的核酸の末端領域の一方のみに、アダプターなどの配列を付加することができる。あるいは、標的核酸の末端領域に、それぞれ異なるアダプターを付加することができる。
【0154】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例1の結果を示す電気泳動。
【図2】実験例2の結果を示す電気泳動。
【図3】実験例3の結果を示す電気泳動。
【図4】実施例4の結果を示す電気泳動。
【図5】実施例1の結果を示す電気泳動。
【図6】実施例2の結果を示す電気泳動。
【図7】実施例3の結果を示す電気泳動。
【図8】実施例4の結果を示すグラフと電気泳動。
【図9】本発明の方法の基本的操作の概略を示した模式図。
【符号の説明】
1 標的DNA
2 プローブDNA
3 RecAタンパク質
4 プローブDNA・RecAタンパク質複合体
5 三本鎖DNA構造
6 アダプターDNA
Claims (1)
- 5’および3’末端に平滑末端を有する標的核酸の末端領域の一方のみに、アダプターを付加する方法であって、
前記標的核酸を含む試料に、RecAタンパク質と、当該アダプターを付加すべき末端領域とは反対側の末端領域と相同な核酸プローブとを添加することにより、前記RecAタンパク質を介して前記標的核酸に前記核酸プローブを結合させ、前記反対側の末端領域を三本鎖構造にする工程と;
前記標的核酸に結合した前記RecAタンパク質を前記標的核酸から解離させて、前記RecAタンパク質を介さずに前記核酸プローブが前記反対側の末端領域に結合した核酸を得る工程と;
該核酸に当該アダプターを添加し、ライゲートすることにより、標的核酸の末端領域の一方のみにアダプターを付加する工程と
を備えること;および
前記核酸プローブは、前記反対側の末端領域の終末端から、その3’末端を1塩基以上突出するように前記反対側の末端領域に結合すること;
を特徴とする方法。
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