JP4678752B2 - 圧力計の製造方法及びガス処理装置の製造方法 - Google Patents

圧力計の製造方法及びガス処理装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は圧力計の製造方法及びガス処理装置の製造方法に係り、特に、成膜装置内の圧力を測定する場合に好適な圧力計の製造技術並びに構成に関する。
一般に、半導体製造プロセスなどに用いられる成膜装置では、成膜チャンバ内に基板を配置し、この基板上に薄膜を形成するように構成されている。通常、成膜チャンバは真空ポンプなどの排気装置に接続され、この排気装置によって内部を所定の減圧状態に維持しながら成膜が行われるため、成膜チャンバには圧力を測定するための圧力計(真空計)が接続される。このような圧力計としては、例えば、測定すべき圧力に応じた撓み特性を備えたダイヤフラムを有し、このダイヤフラムの撓み量を検出することによって圧力を計測することができるように構成されたダイヤフラム型圧力計が知られている(例えば以下の特許文献1及び2参照)。
このようなダイヤフラム型圧力計としては、ダイヤフラムの撓み量を検出する方式別に、圧電方式、薄膜ピエゾ抵抗方式、半導体ピエゾ方式などの種々のものがある。このような各種のダイヤフラム型圧力計のうち、上記の成膜装置に最も頻繁に用いられる圧力計として、例えば、ダイヤフラム上に形成された電極とこれに対向する対向電極との間の静電容量を検出することによってダイヤフラムの撓み量を検出するキャパシタンスマノメータが知られている。このキャパシタンスマノメータは、成膜ガスの種類にほとんど影響されることなく、圧力の絶対値を精度良く計測できるという利点がある。
特開平5−203522号公報 特開2001−50841号公報
しかしながら、前述のダイヤフラム型圧力計を成膜装置に用いる場合には、成膜チャンバ内の反応ガスの一部がダイヤフラムに到達し、このダイヤフラムの表面上に薄膜が形成されるため、この薄膜によってダイヤフラムの撓み特性が変化して、圧力測定値に誤差が生ずるという問題点がある。
具体的には、所定の圧力において撓んだ状態でダイヤフラム上に薄膜が形成されると、薄膜から受ける圧縮応力(残留応力)により、ダイヤフラムには圧力が印加されていない状態でも所定の撓み量が発生するため、圧力計の出力に原点オフセットが発生する。また、ダイヤフラム上に薄膜が形成されると、ダイヤフラムの弾性率も実質的に変化するので、圧力変化に対するダイヤフラムの撓み特性が変わり、これによってダイヤフラムの圧力感度も変化する。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、ダイヤフラム上に薄膜などの異物が付着しても圧力測定値の誤差を低減することのできる圧力計及びその製造方法を提供することにある。
斯かる実情に鑑み、本発明の圧力計の製造方法は、ダイヤフラムと、該ダイヤフラムの撓みを検出する手段とを有する圧力計の製造方法であって、前記ダイヤフラムへの成膜状態による前記ダイヤフラムに対する影響を反映する前提条件を設定する条件設定ステップと、前記前提条件をモデル化された前記ダイヤフラムの構成に適用することにより、初期状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値に対する成膜状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値の誤差若しくはこれに関連する量と、前記ダイヤフラムの形状寸法との関係を導く関係導出ステップと、前記関係に基づいて前記ダイヤフラムの形状寸法を選定する形状寸法選定ステップと、を具備することを特徴とする。
一般に、ダイヤフラムに異物が付着するとダイヤフラムの撓み特性が変化するので、その出力値には、ダイヤフラムに異物が付着していない初期状態の出力値に対する誤差が生ずる。従来においては、圧力計内部へのガスの侵入を防止する観点から上記の誤差を低減するといった対策が一般的であったが、本願発明者らは、ダイヤフラムへの異物の付着を前提として、そのダイヤフラムの成膜状態による影響を最小限にとどめるために、当該影響とダイヤフラムの形状寸法との関係を導出し、この関係に基づいてダイヤフラムの形状寸法を決定するという新たなアプローチを採用した。
例えば、ダイヤフラムの材質や平面形状(外径など)が前提条件として決まっている場合、通常は、ダイヤフラムが厚くなるほどダイヤフラムに異物が付着したときの影響は小さくなるが、圧力計には所定の圧力計測範囲において充分な感度が要求されることから、ダイヤフラムの厚さには制約がある。したがって、ダイヤフラムの厚さをある程度に制限しつつ、ダイヤフラムに異物が付着したときの影響(誤差)を最小限にとどめる工夫が必要となる。そこで、本発明においては、成膜状態による誤差若しくはこれに関連する量とダイヤフラムの形状寸法との関係を導出し、この関係に基づいてダイヤフラムの形状寸法を選定することにより、ダイヤフラムに膜が付着しても誤差の少ない圧力計が製造可能となった。ここで、選定される形状寸法とはダイヤフラムの平面形状や厚さである。ここで、上記方法を容易に実行するためには、ダイヤフラムの平面形状と厚さのうちの一方を前提条件として定め、他方を選定することが好ましい。
本発明において、前記前提条件には、前記ダイヤフラムの機械的性質を反映する値と、ダイヤフラムへの成膜状態を反映する値とが含まれることが好ましい。前提条件として設定されたこれらの値によりダイヤフラムの機械的性質とダイヤフラムへの成膜状態とを把握できるため、成膜状態に起因するダイヤフラムの撓みに関する影響を導出することが可能になる。ここで、ダイヤフラムの機械的性質を反映する値としては、例えば、ダイヤフラムを構成する素材の弾性定数(ヤング率など)、径や厚さなどの形状寸法などを反映する値が挙げられる。また、ダイヤフラムへの成膜状態を反映する値としては、例えば、ダイヤフラムへの成膜量(薄膜の厚さ)、成膜範囲(薄膜の平面形状)、成膜素材(薄膜材料)の機械的特性を示す値、成膜状態に応じてダイヤフラムに与えられる応力値、成膜状態におけるダイヤフラムの撓み量などを反映する値が挙げられる。
本発明において、前記前提条件には前記圧力計の圧力計測範囲が含まれ、前記誤差若しくはこれに関連する量は、前記誤差を前記圧力計測範囲に亘って積算してなる積算誤差量であることが好ましい。
また、本発明の別の圧力計の製造方法は、ダイヤフラムと、該ダイヤフラムの撓みを検出する手段とを有する圧力計の製造方法であって、初期状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値に対する成膜状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値の誤差を所定の圧力計測範囲に亘って積算することにより積算誤差量を導出し、前記ダイヤフラムの厚さを、前記積算誤差量が所定の許容値以下となる厚さに設定することを特徴とする。
本発明者らは、ダイヤフラムに異物が付着したときの影響を示す指標として、上記の積算誤差量を用いる。この積算誤差量は、ダイヤフラムに異物が付着していない初期状態における出力値に対する所定の薄膜がダイヤフラムに被着された成膜状態における出力値の誤差を所定の圧力計測範囲に亘って積算したものであり、圧力計の上記所定の圧力計測範囲全体の誤差の大小を表す指標としての意味を有する。そして、本発明の方法によってダイヤフラムの厚さを上記の積算誤差量が所定の許容値以下となる厚さに設定することにより、ダイヤフラムに異物が形成された場合でもその出力値の上記圧力計測範囲の全体に亘る誤差を低減することができるため、測定精度の高い圧力計を製造することができる。
さらに、本発明の異なる圧力計の製造方法は、ダイヤフラムと、該ダイヤフラムの撓みを検出する手段とを有する圧力計の製造方法であって、初期状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値に対する成膜状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値の誤差を所定の圧力計測範囲に亘って積算することにより導出した積算誤差量を前記ダイヤフラムの厚さを変数とする関数として表現し、前記ダイヤフラムの厚さを、前記関数が二次関数となる領域内の厚さであって、しかも前記関数が一次関数となる領域における前記積算誤差量の最低値以下の前記積算誤差量を有する範囲内の厚さに設定することを特徴とする。
上記の積算誤差量をダイヤフラムの厚さの関数として表現したとき、当該関数は、後述するように、ダイヤフラムの厚さが比較的小さい領域では二次係数が正の二次関数となり、ダイヤフラムの厚さが比較的大きい領域では一次係数が正の一次関数となる。このとき、ダイヤフラムの厚さを、上記関数が二次関数となる領域内の厚さであって、しかも、上記関数が一次関数となる領域における積算誤差量の最低値以下の積層誤差量を有する範囲内の厚さに設定することにより、積算誤差量を上記関数の最小値に近い値に抑制することができる。
本発明において、前記ダイヤフラムの厚さを、前記積算誤差量が最小値をとる厚さ以上とすることが好ましい。一般に、ダイヤフラムに異物が付着すると圧力計の出力値には原点オフセットが生ずる。例えば、圧力が0のときの出力値がダイヤフラムに異物が付着することによってシフトする。これは、多くの場合、ダイヤフラムが付着した異物から応力を受けることに起因する。ところが、ダイヤフラムが厚いほど上記応力の影響は小さくなり、原点オフセットも小さくなるので、上記の積算誤差量が所定の許容値以下となる範囲内、或いは、上記の関数が二次関数となる領域内であって上記最低値以下の積算誤差量を有する範囲内であっても、上記の原点オフセットが小さい方が、特に上記所定の圧力計測範囲のうち圧力が比較的小さい領域の出力値の誤差を低減する上でより好ましい。そこで、ダイヤフラムの厚さを上記範囲内に設定して積算誤差量を抑制しつつ、さらにダイヤフラムの厚さを積算誤差量が最小値をとる厚さ以上に制限することで、原点オフセットを低減するようにした。
また、本発明に係るガス処理装置の製造方法は、ガス供給部と、該ガス供給部から供給されるガスにより処理を行うガス処理室と、前記ガス供給部若しくは前記ガス処理室の排気経路と、前記ガス処理室若しくは前記排気経路の内圧を測定する圧力計とを具備するガス処理装置の製造方法であって、上記のいずれかに記載の圧力計の製造方法を用いて前記圧力計を製造し、前記圧力計を前記ガス処理室若しくは前記排気経路に接続することを特徴とする。この発明によれば、ガス処理室や排気経路に接続される圧力計のダイヤフラムへの成膜による影響を低減することができ、その圧力検出誤差を抑制することができる。
次に、本発明の圧力計は、ダイヤフラムと、該ダイヤフラムの最大撓みを検出する手段とを有する圧力計であって、初期状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値に対する成膜状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値の誤差を所定の圧力計測範囲に亘って積算することにより導出した積算誤差量を前記ダイヤフラムの厚さを変数とする関数として表現したとき、前記ダイヤフラムの厚さが、前記関数が二次関数となる領域内の厚さであって、しかも前記関数が一次関数となる領域における前記積算誤差量の最低値以下の前記積算誤差量を有する範囲内の厚さに設定されていることを特徴とする。ここで、前記ダイヤフラムの厚さが前記関数の最小値をとる値以上に設定されていることが好ましい。
また、本発明に係るガス処理装置は、ガス供給部と、該ガス供給部から供給されるガスにより処理を行うガス処理室と、前記ガス供給部若しくは前記ガス処理室の排気経路と、前記ガス処理室若しくは前記排気経路の内圧を測定する上記のいずれかに記載の圧力計とを具備することを特徴とする。
本発明によれば、ダイヤフラムに異物(例えば薄膜)が付着した場合でも、所定の圧力計測範囲において誤差の少ない出力値を得ることができる圧力計を構成できるという優れた効果を奏し得る。
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。ここで、以下に説明する実施形態は、図示しない成膜装置の成膜チャンバに取り付けて用いるための成膜装置用圧力計であるが、本発明はこのような圧力計に限らず、ダイヤフラムを備えた圧力計であれば如何なる圧力計にも適用できるものであり、特に、ダイヤフラムに異物が付着する可能性のある用途であれば如何なる用途であっても本実施形態と同様の効果を得ることができるものである。
[圧力計の構造]
図1は、本実施形態の圧力計100の構造を模式的に示す概略断面図である。本実施形態の圧力計100はダイヤフラム型圧力計であり、特に、キャパシタンスマノメータと呼ばれる静電容量の変化によりダイヤフラムの撓み量を検出することで、圧力を測定するタイプの圧力計である。
この圧力計100では、基板101の片面にスペーサ102を介してダイヤフラム103が支持され、さらに、ダイヤフラム103に対してスペーサ104を介して蓋材105が配置されている。蓋材105には、ダイヤフラム103に向けて開口する開口部105aが設けられている。ダイヤフラム103はAl、AlN、SiN、SiC、Y、サファイアなどのセラミックス(焼結材)や単結晶、多結晶、アモルファスなどの各種の無機材料(無機薄膜)、ステンレス鋼、Ni−Cr合金、Feなどの金属、シリコン、Ge、GaAsなどの半導体、その他、合成樹脂などの素材で構成できる。ダイヤフラム103の素材としては、通常、使用環境(使用温度や圧力計測範囲など)に適合したものが適宜に選定される。ダイヤフラム103の製造方法としては、焼結法、PVD(物理的気相成膜)、CVD(化学気相成膜)、プラズマ溶射法などが挙げられる。ここで、金属材料の場合は、加圧(プレス)、溶接、打ち抜きの順で加工される。
基板101とダイヤフラム103との間に画成される背後空間Sは基準圧力とされ、例えば、成膜装置などに使用される場合には高真空状態(すなわち絶対圧力がほぼ0)とされる。また、ダイヤフラム103の開口部105a側に構成される前方空間Tは、開口部105aを介して圧力測定の対象空間に開口し、当該対象空間の圧力、すなわち外部圧力とされる。そして、ダイヤフラム103は、上記背後空間Sと前方空間Tとの間の圧力差に応じて撓むように構成されている。
ここで、圧力計100の上記圧力検出部分の構成は、図示例に限定されるものではなく、ダイヤフラム103の両側の圧力差によってダイヤフラム103が撓むように構成されているものであれば、如何なる構造であっても構わない。
また、この圧力計100においては、基板上に形成された電極106Xと、ダイヤフラム103上に形成された電極106Yとが上記背後空間Sを介して対向配置されている。そして、電極106Xの端子106Xaと、電極106Yの端子106Yaとの間の静電容量を測定回路106Zによって測定することにより、上記ダイヤフラム103の撓み量(最大撓み)に応じた出力Voを得ることができるように構成されている。
例えば、本実施形態の場合、測定回路106Zの出力電圧Voとダイヤフラム103の最大撓み(ダイヤフラムの中心点における撓み量)ωとの関係は、Vo=Vref×Cref×ω×G/εA=d×ω×Gで表される。ここで、定数d=Vref×Cref/εAとしてある。なお、Vrefは基準電圧、Crefは基準容量、Gは増幅率(ゲイン)、εは電極106Xと106Yの間(背後空間S)の誘電率、Aは電極106Xと106Yの対向面積である。
この圧力計100では、上記開口部105aにコネクタ107を介して測定アダプタ108を取り付けることができるようになっている。この測定アダプタ108内には、金属などで構成されたシールド板109が配置され、接続口108aを成膜チャンバに接続したとき、成膜チャンバ内のプラズマをシールド板109によって遮断することができるように構成されている。
[圧力計の動作]
図2は、上記圧力計100の検出構造を模式的に示す説明図である。図2(a)はダイヤフラム103の両側の圧力差が0のとき(例えば、上記背後空間Sが高真空状態であれば外部圧力が0のとき)の状態を示す。ここに外部から所定の圧力が加わり、ダイヤフラム103の両側の圧力差がPdになる(例えば、背後空間Sが高真空状態であれば外部圧力がPdになる)と、図2(b)に示すように、ダイヤフラム103は背後空間S側に撓む。このときのダイヤフラム103の最大撓みωをωdとする。
次に、上記の図2(b)の状態でダイヤフラム103の表面上に開口部105aを介して流入したガスなどにより、図2(c)に示すように薄膜110が形成されたとする。その後、外部圧力が低下し、再びダイヤフラム103の両側の圧力差が0となると、ダイヤフラム103の最大撓みωも低下するが、上記図2(a)に示すように最大撓みωが0になることはなく、薄膜110の形成に起因する僅かな最大撓みωxが残留し、これによって圧力計の出力Voに原点オフセットVxが生ずる。この原点オフセットVxは、薄膜110が圧力Pdに対応する最大撓みωdで撓んだ状態のダイヤフラム103の表面に形成されたものであるため、ダイヤフラム103の両側の圧力差が低下して最大撓みωが減少したときには、ダイヤフラム103が薄膜110から圧縮応力(残留応力)を受けることに起因している。
また、上記のようにダイヤフラム103上に薄膜110が形成されると、薄膜110の弾性特性やその形成範囲、厚さなどによって圧力変化に対するダイヤフラム103の撓み特性も初期状態に対して変化するため、圧力に対する感度も変化する。
上記の事項について、ダイヤフラム103の上記撓み量として最大撓み(ダイヤフラムの中心点における撓み量)ωを検出して出力値を得るように構成された圧力計の場合について詳述すると、以下のようになる。
初期状態(薄膜110が形成されていない状態)のダイヤフラムの最大撓みをω0(圧力Pの関数)としたとき、
(1) ω0=a×P
が成立すると仮定する。ここで、aは初期状態のダイヤフラム103の機械的特性によって定まる係数である。上記式(1)の関係の例は、図3の実線(初期特性)に示されている。ただし、出力Vo=d×ω0×G、Vmax=d×ω0×Pmaxである。ここで、dはダイヤフラムの撓み量の検出方法によって定まる係数、Gは増幅率(ゲイン)である。また、圧力計100の圧力計測範囲をP=0〜Pmaxとしてある。
一方、上記のように、ダイヤフラム103上に薄膜110が形成されたとき(成膜状態)のダイヤフラムの最大撓みをω1(圧力Pの関数)とすると、
(2) ω1=b×P+c
が成立すると仮定する。ここで、bは成膜状態のダイヤフラム103の機械的特性によって定まる係数、cは原点オフセットVxに対応する定数であり、上記の薄膜110を形成することによって生ずるダイヤフラム103の最大撓みωxに等しい。上記式(2)の関係の例は、図3の一点鎖線(成膜後特性A)及び点線(成膜後特性B)に示されている。上記の式(1)及び(2)では、いずれもダイヤフラムの最大撓みωと圧力P(ダイヤフラムの両側の圧力差)との関係が一次式で表されると仮定している。
上記のように仮定すると、初期状態のダイヤフラムと、成膜状態のダイヤフラムとの間の最大撓みの差│ω0−ω1│に基づく出力Voの誤差ΔVは以下のように表される。
(3) ΔV=d×│ω0−ω1│×G
ここで、Vmax=d×ωmax×G、ωmax=a×Pmaxとすると、G=Vo/(d×ω0)=Vo/(d×a×P)=Vmax/(d×a×Pmax)となるから、上記の誤差ΔVを圧力計測範囲P=0〜Pmaxで積分して得られる積算誤差量Xは、
(4) X=d×G×∫│ω0−ω1│×dP=d×Vmax/(d×a×Pmax)×∫│ω0−ω1│×dP=Vmax/(a×Pmax)×∫│(a−b)×P−c│×dP
となる。この積算誤差量Xの例は、図3の斜線領域の面積Sa又はSbにて示される。
上記積算誤差量Xは、上記の圧力計測範囲においてダイヤフラムの初期状態と成膜状態の出力Voの誤差ΔVの程度を示す指標として用いることができる。そして、この積算誤差量Xを小さくすることによって成膜による影響の少ない圧力計を得ることが可能になる。
図4はダイヤフラム103の形状を模式的に示す斜視図、図5はダイヤフラム103の中心Cxの周りの微小扇形片103pの断面図である。図4に示すように、ダイヤフラム103(図示2点鎖線)を固定端Dxの半径がr1で厚さがt1の円板(図示実線)と仮定し、このダイヤフラム103上に形成される薄膜110を半径r2で厚さt2の円板と仮定する。このとき、ダイヤフラム103の中心Cxの周りの微小角度dθを中心角とする微小扇形片103pを想定すると、この微小扇形片103pは、圧力Pに対応する応力を受ける梁とみなすことができる。
ここで、図5に示すように、薄膜110が形成されたことによって微小扇形片103pの作用点Cz(ダイヤフラム103における薄膜110の外縁位置に相当する、中心Cxから半径方向外側に向けてr2の距離にある点)に対して半径方向内側に圧縮応力(残留応力)Ffが加わっているとする。すると、微小扇形片103pには作用点Czを中心とする曲げモーメントMfが生ずる。そして、この微小扇形片103pに関して薄膜110の形成により発生する最大撓み(すなわち中心Cxでの撓み量)dωx/dθと厚さt1との関係は、圧力Pにより生ずる応力に起因する曲げモーメントと上記薄膜の形成により生ずる圧縮応力Ffに起因する曲げモーメントMfとの釣り合い条件や、微小扇形片103pにおいては自由滑動端である上記中心Cxや固定端であるDxの境界条件に基づいて計算を行うことにより、以下の近似式(5)のように表される。ここで、薄膜110による撓み特性への寄与分は圧縮応力Ffにて代表して示すこととし、薄膜110の機械的特性や厚さt2による寄与分は、厚さt1>>t2であるために無視してある。例えば、最大測定圧力Pmax=1〜10torr程度の圧力計では、ダイヤフラム103の厚さt1は50〜200μm程度であるのに対して、上記薄膜110の厚さt2は高々0.1〜5μm程度であるから、このような近似でも問題はない。
(5) dωx/dθ=(6Fflog│r2│−6Fflog│r1│)/(E×t1×dθ)
ここで、Eはダイヤフラム103の弾性係数である。そして、上記微小扇形片103pを中心角dθに関して積分することによって、薄膜110の形成に起因するダイヤフラム103の最大撓みωxが以下のように導出される。
(6) ωx=∫(dωx/dθ)×dθ=(6Fflog│r2│−6Fflog│r1│)/(E×t1
この式(6)により、ダイヤフラム103の原点オフセットVx=d×ωx×Gは、ダイヤフラム103の厚さt1の2乗に反比例することがわかる。
図6には、有限要素法を用いて算出した原点オフセット量Vxと、ダイヤフラム103の厚さt1との関係、Vx=0.0038×t1−1.9906を示す。ここで、上記r1=15mm、r2=5mmとし、ダイヤフラム103の質量密度は3.82×10−5[N/mm]、ヤング率は3.5×10[N/mm]、ポアソン比は0.23を用いた。また、Pmax=10[torr]、Vmax=10[V]としてある。この結果は、上記の式(6)とよく整合している。上記の有限要素法による計算は、構造解析用コンピュータプログラムPro/Mechanica 2000i(商標、商品名:PTC(パラメトリック・テクノロジー・コーポレーション)社製)を用いた。このコンピュータプログラムでは、形状モデリング、材料定義、拘束条件設定、荷重条件設定、解析セット設定、要素の作成などによって準備されるモデル構造に基づいて有限要素法により構造解析を行うことができる。すなわち、この場合には、ダイヤフラム103のモデル構造、材料定数、内部応力及び外部応力の値、並びに、拘束条件の設定を行うことによって、ダイヤフラム103の応力変形を求めることができる。
次に、上記式(4)にて定義した積算誤差量Xを図4に示す円板型のダイヤフラム103に対して求めてみる。上記の円板型のダイヤフラム103において、圧力Pが作用したときの最大撓みω0を示す上記式(1)の係数aは一般に[r1/(κ×t1)]で表される。すなわち、上記式(1)は、
(7) ω0=P×r1/(κ×t1
となる。κはダイヤフラムの機械的特性によって定まる定数である。この式(7)は、最大撓みω0が[r1/(κ×t1)]を比例係数とする圧力Pの一次関数で表されることを示しているが、ダイヤフラム103に薄膜110が形成されると厚さt1が実質的に変化することになるので、上記比例係数は薄膜110の有無によって変化することがわかる。
ここで、式(1)の係数をa=r1/(κ×t1)=g/t1とし、式(2)の係数をb=h/t1とし、また、上記式(6)の結果を用いて上記式(2)の定数をc=j/t1とした上で、上記式(4)と(7)を用いると、
(8) X=Vmax×t1/(g×Pmax)×∫│(g−h)×P/t1−j/t1│×dP=Vmax/(g×Pmax)×∫│(g−h)×P−j×t1│×dP
となる。
このとき、0≦j×t1/(g−h)≦Pmaxのときには、
(9) X=Vmax/(g×Pmax)×{(g−h)×Pmax/2−j×t1×Pmax+j×t1/(g−h)}
となり、
また、Pmax≦j×t1/(g−h)のときには、
(10) X=Vmax/(g×Pmax)×{j×t1×Pmax−(g−h)×Pmax /2}
となる。

上記の式(9)は積算誤差量Xがダイヤフラムの厚さt1の二次関数であることを示す。ここで、ダイヤフラム103上に薄膜110が形成された場合にはダイヤフラム103の剛性が増大するためにg>hとなるから、積算誤差量Xは上に開いた二次曲線となり、最小値をとることがわかる。一方、式(10)は積算誤差量Xがダイヤフラムの厚さt1の一次関数であることを示している。すなわち、t1≦(g−h)×Pmax/jの領域では積算誤差量Xは厚さt1の二次関数であり、t1≧(g−h)×Pmax/jの領域では積算誤差量Xは厚さt1の一次関数である。したがって、積算誤差量Xは、厚さt1が(g−h)×Pmax/jである境界の両側でダイヤフラムの厚さt1に関して異なる依存性を備えている。
以上のように表される積算誤差量Xを実際の圧力計について試算した結果を示すものが図7である。図7に示す結果は、ダイヤフラム103の素材としてアルミナ(Al)を用い、その質量密度として3.82×10−5[N/mm]、ヤング率として3.5×10[N/mm]、ポアソン比として0.23を用いて計算した結果である。また、r1=15mm、r2=5mm、Pmax=10[torr]、Vmax=10[V]とした。この計算においても、上記の構造解析用コンピュータプログラムを利用した。
上記の計算においては、ダイヤフラム103の密度、弾性係数及び形状寸法によって上記の係数gを求めることができ、また、ダイヤフラム103上に所定の素材で所定の厚さに薄膜110が形成されたときの薄膜110の成膜に起因するダイヤフラム110の最大撓みωxを測定すれば、この最大撓みωxから式(6)を用いて薄膜110によりダイヤフラム103に及ぼされる圧縮応力Ffを求めることができる。そして、この圧縮応力Ffを用いて上記式(2)の係数h及びjを求めることができる。そして、これらを元に上記式(9)及び(10)を計算することで、積算誤差量Xをダイヤフラムの厚さt1の関数として求めることができる。
なお、上記の方法の代わりに、係数g、h及びj(或いは、a、b及びc)を全て実験によって定めた上で、上記式(9)及び(10)を用いて積算誤差量Xを求めてもよい。また、上記のように最大撓みωxを測定する代わりに、薄膜110の機械的特性(弾性係数など)や厚さを設定して計算を行うことによって、上記の係数h及びjを求めてもよい。
ここで、上記の計算過程において、薄膜110によるダイヤフラム103の撓み特性への影響を示すパラメータ(上記のh及びj或いはb及びc)は、実際に用いられるときの状況(例えば実際に用いられる成膜装置への接続)によってダイヤフラム103に形成される薄膜の素材や厚さを基準として設定されることが好ましい。例えば、圧力計100を使用する成膜回数をN回としたとき、N回の成膜処理によって圧力計100のダイヤフラム103に堆積する薄膜の厚さを予め実験などによって測定しておき、この厚さの薄膜を基準として上記パラメータを決定することが好ましい。
この計算例では、図7に示すように、ダイヤフラムの厚さt1が約0.1mmの境界領域の値以下である領域では積算誤差量Xは厚さt1の二次関数になり、また、厚さt1が約0.1mmの境界領域の値以上である領域では積算誤差量Xは厚さt1の一次関数になる。したがって、この結果は、(g−h)×Pmax/jが約0.1mmとなる場合の上記式(9)及び(10)が示す特性とよく整合している。
本実施形態において圧力計を製造する場合には、ダイヤフラム103の厚さt1を、図7に示す積算誤差量Xが所定の許容値Xs以下になる範囲A内の厚さに設定する。すなわち、ダイヤフラム103の厚さt1を、上記の許容値Xs以下の積算誤差量Xを有する範囲A内の厚さ、より具体的には積算誤差量XがXmin以上Xs以下である厚さta〜tb内の値に設定する。ここで、許容値Xsは、例えば、積算誤差量Xの最小値Xminを基準として、当該Xminの5倍以下であることが好ましく、特にXminの3倍以下とすることが望ましい。このようにすることによって、薄膜110がダイヤフラム103上に形成された場合でも測定誤差の少ない圧力計を構成することができる。
また、図6に示すように、ダイヤフラム103の厚さt1が大きい方が原点オフセットVxは小さくなるので、原点オフセットVxを極力小さくするために、ダイヤフラム103の厚さt1を、上記積算誤差量Xの最小値Xminが得られるダイヤフラムの厚さtmin以上で、かつ、上記許容値Xsの積算誤差量Xが得られるダイヤフラムの厚さtb以下である範囲B内に設定することが望ましい。ここで、ダイヤフラム103の厚さt1を上記積算誤差量Xの最小値Xminに対応する厚さtminに設定することがより望ましいことはもちろんである。
一方、ダイヤフラム103の厚さt1を別の方法で設定することもできる。上記のように、積算誤差量Xは、図7に示す厚さtcu=(g−h)×Pmax/jを境界として、厚さt1が境界厚さtcuよりも小さい領域では二次関数となり、厚さt1が境界厚さtcuよりも大きい領域では一次関数となる。そこで、ダイヤフラムの厚さt1を、積算誤差量Xが二次関数となる領域内の厚さであって、積算誤差量Xが一次関数である領域の最低値、すなわち上記境界厚さtcuにおける積算誤差量Xt以下になる範囲C内の厚さ、すなわち、図7に示すtcd以上tcu以下の厚さに設定する。このようにすると、従来よりも積算誤差量Xが小さい圧力計を構成することができる。
この範囲C内においても、上記と同様に、図6に示すようにダイヤフラムの厚さt1が大きい方が原点オフセットVxを小さくする上で好ましいため、ダイヤフラムの厚さt1を上記積算誤差量Xの最小値Xminに対応する厚さtmin以上に設定する、すなわち、厚さt1を図7に示すtmin以上tcu以下の範囲D内に設定することが望ましい。この場合にも、ダイヤフラム103の厚さt1を上記積算誤差量Xの最小値Xminに対応する厚さtminに設定することがより望ましいことはもちろんである。
なお、本実施形態と従来技術との関係を明らかにするために、本実施形態と同方式のキャパシタンスマノメータの従来品の一例を挙げると、測定範囲が0〜10torr(上記のPmax=10torr)のセラミックスキャパシタンスマノメータ(ダイヤフラムがアルミナで構成されたもの)では、ダイヤフラムの厚さは0.15mm以上であり、例えば、図6及び図7で示すY点に相当する。このY点は、上記の範囲A〜Dのいずれにも含まれていない。
次に、図8を参照して、本実施形態に係る製造方法の一例を具体的に説明する。本実施形態では、まず、ステップS1において圧力計の主要な構成条件や使用条件を設定する。このステップS1では、例えば、圧力計の圧力測定範囲、ダイヤフラムを構成する素材の弾性特性(例えば、ヤング率やポアソン比など)、ダイヤフラムの形状寸法のうちの一部(例えば、上記の半径r1)、ダイヤフラムへの成膜範囲(例えば、上記の半径r2)、ダイヤフラム上の成膜量(例えば、上記の厚さt2)などを設定する。すなわち、このステップS1では、次のステップS2で設定する圧力計のモデル化に基づいて行う計算のパラメータを設定する。
次のステップS2においては、圧力計のモデル化を行う。このステップS2では、上記ステップS1にて設定したパラメータを用いる計算モデルを構成する。この計算モデルは、上記の例では図4及び図5に示すようなダイヤフラムの抽象化乃至簡易化のプロセスを含む。このステップは、上記の例では、式(1)〜(10)で示される計算モデルの構成を設定する段階である。ただし、予め設定された複数の計算モデルのうちの一つを選択するようにしてもよい。また、既に計算モデルが設定されている場合には、このステップS2においては実質的に何も行わなくても構わない。上記のステップS1とこのステップS2は上記の条件設定ステップを構成する。
次のステップS3においては、上記の計算モデルに従ってダイヤフラムの形状寸法と撓み量の関係を導出する。このステップS3は、上記の例では式(6)を計算し、例えば、図6に示す関係、すなわち、ダイヤフラムの厚さと原点オフセットVxとの関係を導出する段階に相当する。また、ステップS4においては、上記の計算モデルに従ってダイヤフラムの形状寸法と積算誤差量との関係を導出する。このステップS4は、上記の例では式(9)及び(10)を計算し、ダイヤフラムの厚さと積算誤差量との関係を導出する段階に相当する。これらのステップS3とS4は上記の関係導出ステップを構成する。ここで、上記のステップS3を実行せず、ステップS4のみを実行してもよい。
これらのステップS3及びS4は、上記の構造解析用コンピュータプログラムを用いて成膜状態のダイヤフラムの圧力依存特性(例えば、上記の式(2)に相当する特性)を算出し、この特性に基づいて上記関係(例えば、上記の式(6)或いは(9)及び(10)に相当する関係)を示す計算結果を得ることができる。このとき、上記の構造解析用コンピュータプログラムの形状モデリング工程及び拘束条件設定の各工程において、上記ステップS2で決定されたモデル構造を指定し、また、上記プログラムの材料定義及び荷重条件設定の各工程において、上記ステップS1で決定された材料定数や応力などのパラメータの値を入力する。
例えば、上記の構造解析用プログラムでは、最初に、形状モデリング工程として、座標点や面情報などを入力し、成膜状態のダイヤフラムの3次元の構造モデルを形成する。次に、薄膜から受ける応力(荷重)値或いは原点オフセット量の設定、ダイヤフラムの材料定数(ヤング率、ポアソン比、密度など)の設定、上記構造モデルの拘束部位(上記例ではダイヤフラムの外縁部)を選択することなどにより拘束条件の設定を、選択操作や入力操作により行う。これらを行うことによって、応力変形問題の解析、すなわち上記構造モデルに対して測定すべき圧力に相当する所定の応力(荷重)が加わったときの上記構造モデルの変形状態の3次元的な計算ができるようになる。そして、この結果を用いて、上記構造モデルの圧力依存性、すなわち、成膜状態のダイヤフラムによる圧力計の出力特性を求めることができる。
この関係導出ステップにおいて、上記の例では、ダイヤフラムの形状寸法のうちの厚さを変数として計算を実行している。これは、上記の例では、条件設定ステップ(ステップS1,S2)において前提条件のうちの一つとしてダイヤフラムの平面形状(外径)を設定しているため、ダイヤフラムの形状寸法のうち関係導出ステップにおいて変数となるのは厚さのみだからである。したがって、例えば、条件設定ステップにおいてダイヤフラムの厚さを前提条件の一つとして設定する場合には、この関係導出ステップにおいてダイヤフラムの外径を変数として上記の関係を導出することも可能である。
次のステップS5においては、上記の関係に応じてダイヤフラムの形状寸法を選定する。例えば、上記の例であれば、ダイヤフラムの厚さを選定する。このステップS5は、上記の形状寸法選定ステップを構成する。この形状寸法選定ステップは、上記の例の場合、図6及び図7に示す関係に応じてダイヤフラムの好適な厚さ範囲を確定し、この範囲内の厚さを選択する段階に相当する。このダイヤフラムの形状寸法の選定が終了すると、次のステップS6において圧力計が製造される。そして、以下に説明する各ガス処理装置に対して取り付け(ガス処理室若しくは排気経路に対する接続)が行われる。
ここで、上記の例とは異なり、薄膜を構成する素材の機械的特性を考慮する場合には、上記のステップS1において薄膜素材の弾性特性(例えば、ヤング率やポアソン比など)をも設定する。また、薄膜によるダイヤフラムへの影響をより高精度に計算に組み込む場合には、薄膜やダイヤフラムの熱膨張係数、薄膜とダイヤフラムとの間の密着係数などを設定する必要もある。この場合には、上記のステップS3,S4の計算もまたより高精度なものとする必要がある。このようなより詳細なモデルにて計算を実行する方法としては、例えば、日本マーク社(或いは、MSC.Software Corporation)製の「MARC(商標)」という有限要素法解析プログラムを用いる方法が挙げられる。
最後に、上記圧力計を備えたガス処理装置の実施形態について説明する。図9に示すガス処理装置10はプラズマエッチングシステムを構成するものである。このガス処理装置10には、チャンバ11と、チャンバ11のガス導入口11aにエッチングガス(例えば、Cl、C、SF6、Arなど)を導入するガス供給部10Aと、チャンバ11の排気口11cに接続され、チャンバ11内を排気する排気装置10Bとを備えている。チャンバ11の上記ガス導入口11aの内側には上部電極12が設置され、この上部電極12には電源13により高周波電力が印加される。ガス導入口11aに供給されたエッチングガスは上部電極12のガス通過孔を通過することにより活性化され、チャンバ11の内部へと導入される。チャンバ11には開閉可能なゲートバルブなどを備えた給材口11bが設けられている。チャンバ11の内部にはサセプタ(載置台)14が配置され、このサセプタ14には電源15により高周波電力が印加される。また、サセプタ14上には被処理物(半導体ウエハなど)Wを吸着保持するための静電チャック16が配備され、この静電チャック16は直流電源17による給電により動作するように構成されている。なお、サセプタ14上に配置される被処理物Wを冷却するための冷却用ガスを供給するガス供給源18と、被処理物Wを吸着保持するための吸引装置19とが設けられている。また、サセプタ14は冷却水などの冷媒を通過させることなどにより冷却されていることが好ましい。
この実施形態のガス処理装置10では、チャンバ11の壁面にポート(開口部)11dが設けられ、このポート11dを介して上記の圧力計100がチャンバ11の内部に接続され、この圧力計100によりチャンバ11の内圧を測定できるようになっている。また、通常、圧力計100によって検出された圧力検出値に基づいて排気口11cと排気装置10Bとの間に設けられた図示しない流量制御弁などを動作させることによりチャンバ11の内圧を制御できるように構成される。このガス処理装置10では、エッチングガスの活性種により被処理物Wがエッチングされるが、この際において、被エッチング材料がポート11dを介して圧力計100の内部に配置されたダイヤフラムの表面に成膜される可能性がある。したがって、予めガス処理装置10のメンテナンスサイクル(すなわち圧力計100のダイヤフラムを清掃若しくは交換するサイクル)を設定し、このサイクルにおいて成膜される薄膜の厚さや圧力計測範囲などに応じて上記の条件設定ステップを実行し、このステップで設定された前提条件に基づいて上記の関係導出ステップを実行し、このステップで導出された関係に基づいてダイヤフラムの形状寸法(例えば厚さ)を選定する。このようにすることで、圧力計100による圧力検出誤差を最小限に抑制することができる。また、チャンバ11の内圧を高精度に制御することも可能になる。
図10には、別のガス処理装置20の概略構造を示す。このガス処理装置20は、プラズマCVD装置若しくは熱CVD装置として用いることができるものである。このガス処理装置20には、チャンバ21と、このチャンバ21にガスを供給するガス供給部20Aと、チャンバ21内を排気する排気装置20Bとが設けられている。チャンバ21の壁面の一部にはガス導入部(シャワーヘッド)22が構成されている。このガス導入部22には上記ガス供給部20Aから供給されたガス(例えばガス供給管20xを通じて供給されるTiClなどの金属化合物や有機金属化合物その他の原料ガス及びガス供給管20yを通じて供給されるNHなどの反応ガス)が導入され、ガス導入部22に設けられた多数の細孔からチャンバ21の内部へと放出される。ここで、ガス導入部22には整合器(マッチング回路)22Sを介して電源22Tにより高周波電力が印加される。また、ガス導入部22はヒータなどの加熱手段22Hにより加熱される。なお、ヒータ電源22Jは加熱手段22Hに電力を供給するものである。
チャンバ21の内部にはサセプタ(載置台)23が配置され、このサセプタ23上に被処理物Wが配置される。このサセプタ23はヒータなどの加熱手段23Hにより加熱される。ヒータ電源23Jは加熱手段23Hに電力を供給するものである。また、サセプタ23にはゲートを介して搬送された被処理物Wをサセプタ23の表面上へリフトアップさせるためのリフタピン23Pが設けられ、このリフタピン23Pは駆動部材24を介したモータなどの駆動装置25による駆動によりサセプタ23の載置面より出没動作するように構成されている。さらに、チャンバ21にはゲートバルブなどの開閉機構を備えた給材口21bが設けられている。なお、このガス処理装置20においては、上記電源22Tによりガス導入部22に対して高周波電力を印加する場合にはプラズマCVD装置として用いることができ、高周波電力を印加しない場合には熱CVD装置として用いることができるように構成されている。
このガス処理装置20のチャンバ21にはポート21dが設けられ、このポート21dに上記の圧力計100が接続され、圧力計100によってチャンバ21の内圧を測定できるようになっている。また、通常、圧力計100によって検出された圧力検出値に基づいて排気口21cと排気装置20Bとの間に設けられた図示しない圧力制御弁などを動作させることによりチャンバ21の内圧を制御できるように構成される。このガス処理装置20においては、被処理物Wに対して成膜処理を行う際にポート21dを介して圧力計100の内部にも成膜が行われることから、この成膜による圧力測定への影響を低減するために上記のガス処理装置10と同様に本発明を適用する。これによって圧力計100の圧力検出誤差を抑制することができる。また、チャンバ21の内圧を高精度に制御することで良好な成膜制御が可能になる。
図11には、異なるガス処理装置30の概略構成を示す。このガス処理装置30は、LP−CVD(低圧CVD)装置として用いることができるものである。ガス処理装置30には、石英やSiCなどで構成された外筒31と、この外筒31の内部に配置された内筒32とを有し、内筒32の内部に被処理物Wを載置するボート及び保温筒を備えたキャリア33が配置されている。外筒31の外側にはヒータなどで構成される加熱手段34が配置されている。内筒32の内部には、ガス供給部30Aから供給されるガスがガス導入管35を経て導入される。内筒32に導入されたガスは内筒32に設けられた多数のガス排出孔を経て外筒31と内筒32の間の空間に導出され、さらにガス導入口31cから排気管36に排出されるように構成されている。排気管36は排気トラップ37及びバルブ(圧力制御弁)38などを経て排気装置30Bに接続されている。
排気管36にはポート36dが形成され、このポート36dを介して圧力計100が排気管36に接続され、これによって圧力計100により排気管36の内圧を測定できるようになっている。また、通常、圧力計100によって検出された圧力検出値に基づいて上記の圧力制御弁38などを動作させることにより排気管36或いは外筒31の内圧を制御できるように構成される。この圧力計100には、排気管36内を流れる排気ガスによってダイヤフラム上に薄膜が成膜されることから、この成膜による影響を低減するために上記ガス処理装置10と同様に本発明を適用する。これによって圧力計100の圧力検出誤差を抑制することができる。また、外筒31の内圧を高精度に制御することで良好な成膜制御が可能になる。
図12には、さらに異なるガス処理装置40の概略構成を示す。このガス処理装置40は、ICP(誘導結合型)プラズマ装置を構成することができるものである。ガス処理装置40においては、容器41と、この容器41の上部を覆うように配置された石英などで構成されるベルジャー42とによってチャンバが構成されている。ベルジャー42の外周には誘導コイル42Eが形成され、この誘導コイル42Eには電源42Tにより整合器(マッチング回路)42Sを介して高周波電力が印加される。ガス供給部40Aから供給されるガスは、チャンバの一部(容器41とベルジャー42の間の部分)に設けられたガス導入部41xを介して導入される。容器41にはゲートバルブなどの開閉機構を備えた給材口41bが設けられている。
チャンバ内には、被処理物Wを載置するためのサセプタ(載置台)43が配置されている。サセプタ43はヒータなどの加熱手段43Hによって加熱されるように構成され、この加熱手段43Hはヒータ電源43Jから電力の供給を受けるようになっている。また、サセプタ43内には下部電極が配置され、ここに電源43Tにより整合器(マッチング回路)43Sを介して高周波電力が供給される。さらに、チャンバの上記下部電極と対向する壁面(ベルジャー42の上壁部)の外面上には接地された対向電極42Gが配置されている。この対向電極42Gはチャンバ内に形成される斜め電界による悪影響やプラズマの点火不良などを防止するものである。チャンバの排気口41cには排気装置20Bが接続されている。
このガス処理装置40においても、チャンバ(容器41)の壁面にポート41dが形成され、このポート41dを介して圧力計100がチャンバに接続され、圧力計100によってチャンバの内圧を測定できるようになっている。また、通常、圧力計100によって検出された圧力検出値に基づいて排気口41cと排気装置40Bとの間に設けられた図示しない圧力制御弁などを動作させることによりチャンバの内圧を制御できるように構成される。この圧力計100には、チャンバ内にエッチングされた被着物等がダイヤフラム上に付着することから、この付着物による影響を低減するために上記ガス処理装置10と同様に本発明を適用する。これによって圧力計100の圧力検出誤差を抑制することができる。また、チャンバの内圧を高精度に制御することで良好なエッチング制御が可能になる。
尚、本発明の圧力計の製造方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では圧力計の一例としてキャパシタンスマノメータを挙げたが、本発明はキャパシタンスマノメータに限らず、ダイヤフラムの撓み量を検出して圧力を測定するダイヤフラム型圧力計であれば、如何なる形式のものに対しても適用可能である。また、本発明に係るガス処理装置及びその製造方法の対象となるガス処理装置としては、上記実施形態に示されたものに限らず、接続された圧力計のダイヤフラム上に異物が付着される可能性のあるものであれば、如何なるガス処理装置であっても構わない。
実施形態の圧力計の構造を示す概略構成図。 実施形態の圧力計の動作状態について初期状態と成膜状態を対比する形で示す概略説明図(a)〜(d)。 実施形態の圧力計における出力特性を示すグラフ。 実施形態のダイヤフラムの形状寸法を示すモデル図。 実施形態のダイヤフラムのモデルにて想定した微小扇形片の断面構造とパラメータとの関係を示す説明図。 有限要素法を用いて算出した実施形態の原点オフセット量ΔVとダイヤフラムの厚さt1との関係を示すグラフ。 実施形態の計算により求めた積算誤差量Xとダイヤフラムの厚さt1との関係を示すグラフ。 圧力計の製造方法の実施形態の手順を示す概略フローチャート。 ガス処理装置の実施形態の概略構成を示す概略断面図。 ガス処理装置の別の実施形態の概略構成を示す概略断面図。 ガス処理装置の異なる実施形態の概略構成を示す概略断面図。 ガス処理装置のさらに異なる実施形態の概略構成を示す概略断面図。
符号の説明
100…圧力計、101…基板、103…ダイヤフラム、103p…微小扇形片、106X、106Y…電極、106Z…測定回路、110…薄膜、P…測定圧力、ω…ダイヤフラムの最大撓み、t1…ダイヤフラムの厚さ、t2…薄膜の厚さ、r1…ダイヤフラムの実効半径、r2…薄膜の半径、ωx…薄膜形成に起因するダイヤフラムの最大撓み、Vo…出力値、Vx…原点オフセット、G…増幅率、Vmax…最大出力値、Pmax…最大測定圧力、10〜40…ガス処理装置、10A,20A,30A,40A…ガス供給部、10B,20B,30B,40B…排気装置、11,21,31…チャンバ、11d、21d、36d、41d…ポート、36…排気管

Claims (7)

  1. ダイヤフラムと、該ダイヤフラムの撓みを検出する手段とを有する圧力計の製造方法であって、
    前記ダイヤフラムへの成膜状態による前記ダイヤフラムに対する影響を反映する前提条件を設定する条件設定ステップと、
    前記前提条件をモデル化された前記ダイヤフラムの構成に適用することにより、初期状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値に対する成膜状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値の誤差若しくはこれに関連する量と、前記ダイヤフラムの形状寸法との関係を導く関係導出ステップと、
    前記関係に基づいて前記ダイヤフラムの形状寸法を選定する形状寸法選定ステップと、
    を具備することを特徴とする圧力計の製造方法。
  2. 前記前提条件には、前記ダイヤフラムの機械的性質を反映する値と、ダイヤフラムへの成膜状態を反映する値とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の圧力計の製造方法。
  3. 前記前提条件には前記圧力計の圧力計測範囲が含まれ、
    前記誤差若しくはこれに関連する量は、前記誤差を前記圧力計測範囲に亘って積算してなる積算誤差量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力計の製造方法。
  4. ダイヤフラムと、該ダイヤフラムの撓みを検出する手段とを有する圧力計の製造方法であって、
    初期状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値に対する成膜状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値の誤差を所定の圧力計測範囲に亘って積算することにより積算誤差量を導出し、前記ダイヤフラムの厚さを、前記積算誤差量が所定の許容値以下となる厚さに設定することを特徴とする圧力計の製造方法。
  5. ダイヤフラムと、該ダイヤフラムの撓みを検出する手段とを有する圧力計の製造方法であって、
    初期状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値に対する成膜状態の前記ダイヤフラムにより検出された出力値の誤差を所定の圧力計測範囲に亘って積算することにより導出した積算誤差量を前記ダイヤフラムの厚さを変数とする関数として表現し、前記ダイヤフラムの厚さを、前記関数が二次関数となる領域内の厚さであって、しかも前記関数が一次関数となる領域における前記積算誤差量の最低値以下の前記積算誤差量を有する範囲内の厚さに設定することを特徴とする圧力計の製造方法。
  6. 前記ダイヤフラムの厚さを、前記積算誤差量が最小値をとる厚さ以上とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の圧力計の製造方法。
  7. ガス供給部と、該ガス供給部から供給されるガスにより処理を行うガス処理室と、前記ガス供給部若しくは前記ガス処理室の排気経路と、前記ガス処理室若しくは前記排気経路の内圧を測定する圧力計とを具備するガス処理装置の製造方法であって、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧力計の製造方法を用いて前記圧力計を製造し、
    前記圧力計を前記ガス処理室若しくは前記排気経路に接続することを特徴とするガス処理装置の製造方法。
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