JP4676087B2 - 消防ホース - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は消防ホースに関し、さらに詳しくは、キンクを発生しにくくした消防ホースに関する。
【０００２】
【従来の技術】
消火作業中において、消防ホースは一方の端部を消火栓や放水ポンプ等に連結し、他方の端部に順次必要な本数を連結しながら火災現場まで展張し、最後の消防ホース端部にノズルを連結して放水を行う。放水ノズルは火勢の状況に応じて色々な場所へ移動させるため、その移動に伴って消火ホースも地上等を引きずり廻されることになる。
【０００３】
上記のような消火作業の過程で、消防ホースが何らかの理由により極端な曲げ荷重を受けると、図４に示すように、消防ホース１の湾曲部の内周側にＶ字状に折れ曲がったキンクＫを発生することがある。このようなキンクＫが発生すると、消防ホース１の通水面積が実質的にゼロになったり、或いは小さく絞られた状態になるため、通水が停止してしまったり、或いは通水量が極端に減少して、以後の消火作業が出来なくなったり、消火作業員が危険にさらされたりする等の問題があった。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解消し、キンクを発生しにくくした消防ホースを提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の消防ホースは、経糸と緯糸から筒状に製織したジャケットにライナー層を内貼りした消防ホースにおいて、該ジャケットの経糸をホース軸方向に対して傾斜角５°〜１２°で傾斜するように螺旋状に配列し、かつ前記緯糸の５０ｍｍ幅当たりの打込み数を３５〜６０本にしたことを特徴とするものである。
【０００６】
前述したように、キンクは消防ホースが小さな曲率半径になるまで曲げられたとき中間部がＶ字状に屈折する現象であるから、消防ホースを曲げていくときキンクを発生する寸前の曲率半径（最小曲げ半径）が小さければ小さいほどキンクを発生しにくいホースになる。本発明の消防ホースは、ジャケットを構成する経糸をホース軸方向に対して傾斜させ螺旋状に配列させているので、かつ曲げる際にホースに捩じれを発生しながら屈曲して小さな曲げ半径にできるため最小曲げ半径を小さくし、キンクを発生しにくくすることができる。
【０００７】
【発明の実施の形態】
本発明において、消防ホースの骨格をなすジャケットは、経糸と緯糸から筒状に織製されている。かつ、この筒状のジャケットにおける経糸が、ホース軸方向に対して斜めに傾斜するようにしてある。
【０００８】
図１（Ａ）（Ｂ）は、上記筒状のジャケットを有する本発明の消防ホースを例示したものである。
【０００９】
図１に示すように、消防ホース１は筒状のジャケット２の内面にライナー層３を貼り付け、また外表面に撥水剤４をコーティングするように構成されている。筒状のジャケット２は、多数本の経糸２ａがホース軸方向に対し角度θで傾斜するように配列し、これら経糸２ａに緯糸２ｂが螺旋状に周回するように織り込まれている。その組織としては綾織が好ましい。
【００１０】
ジャケット２の内側に貼り付けられたライナー層３はシール層として設けられたものである。このライナー層３には、ポリ塩化ビニル，ポリエステル、ポリウレタン等の軟質樹脂或いは天然ゴム、合成ゴムが使用されている。
【００１１】
撥水剤４は、前述したように消防ホース１が地上の水膜に接触したとき、その水によりジャケット２が湿潤状態にならないように設けたものである。ジャケット２が常に乾燥状態を維持することにより、消防ホース１は高いキンク防止効果を保つことができる。
【００１２】
本発明の消防ホース１のジャケット２は、図１（Ａ）のように、経糸２ａがホース軸方向Ｏに対して傾斜しているため、図２（Ａ）（Ｂ）に示すように、消防ホース１を図２（Ａ）のストレートの状態から図２（Ｂ）のように曲げると、角度θで傾斜する経糸２ａに沿う捩じれを生じながら屈曲するため、曲げ剛性が小さくなって小さな曲げ半径を生じやすくなる。その結果、従来の消防ホースに比べて消防ホースを曲げる際の最小曲げ半径が小さくなり、キンクを生じにくくなるのである。経糸２ａのホース軸方向Ｏに対する傾斜角θは、曲げ剛性の低下に寄与する大きさであれば良いが、一般に使用される消防用ホースとしては、５°〜１２°の範囲にすることが重要である。
【００１３】
本発明において、ジャケットを構成する経糸および緯糸としては、合成繊維であっても、天然繊維であってもよく、またフィラメント糸であっても、紡績糸であってもよい。
【００１４】
ジャケットの織組織は特に限定されないが、好ましくは綾織にすることが望ましい。綾織は平織に比べて組織点が少なくなるため、消防ホースを曲げるときの曲げ剛性が小さく、かつ湾曲内周面に発生する応力をホース長手方向に分散させて、１箇所に集中しないようにする。そのためキンクを発生しにくくすることができる。
【００１５】
上記織組織において、緯糸の５０ｍｍ幅当たりの打込み数は３５本以上にするのである。従来の消防ホースに使用されているジャケットでは、緯糸は５０ｍｍ幅当たりの打込み数が２５本程度であるので、これよりも密にするのである。このように緯糸の５０ｍｍ幅当たりの打込み数を３５本以上に密にすることにより、消防ホースが曲げ作用を受けたときの湾曲内側面の変形を１か所に集中させず、多数の各緯糸に分散吸収させることができる。そのため上記綾織組織にしたことと相まって、本発明の消防ホースにキンクを一層発生しにくくすることができる。
【００１６】
緯糸の打込み数は、ホースの呼び径により、呼び径が大きいほど多くすることが望ましい。すなわち、特に呼び径５０ｍｍ以上のホースにおける緯糸の５０ｍｍ幅当たりの打込み数は３５本以上とし、さらに好ましくは３８本以上にするとよい。緯糸の５０ｍｍ幅当たりの打込み数の上限は特に限定されないが、６０本程度に設定することが実際的である。
【００１７】
経糸や緯糸の繊度としては特に限定されるものではないが、好ましくは１１００ｄｔｅｘ以上の糸を用いることが望ましい。
【００１８】
本発明において、さらに好ましくは、上記のようなジャケット構造に加えて、ジャケット外表面に撥水剤をコーティングするとよい。火災現場では路面に水が溜まって水膜が形成されることが多いが、消防ホースが水膜と接触してジャケットを湿潤状態にすると、地上を引きずり廻されるときの摩擦抵抗が高くなり、大きな摩擦力による曲げ作用を受けることによりキンクを発生しやすくなる。しかし、上記のようにジャケット外表面に撥水剤をコーティングし、ジャケットが常に乾燥状態を維持するようにすることにより、上記摩擦力による曲げ作用を受け難くなるため、キンクの発生を低減することができる。
【００１９】
コーティングに使用する撥水剤としてはシリコーンが好ましい。シリコーンは、ジャケットの乾燥状態に維持するのみならず、路面との摩擦抵抗も低減するため、路面との摩擦力により受ける曲げ作用を低減することができる。シリコーンの種類としては特に限定されるものではないが、好ましくは主鎖がオルガノシロキサン結合─（ＳｉＲ₂ Ｏ）_n ─からなるシリコーンゴムがよい。
【００２０】
消防ホースが有するキンク防止効果の確認は、図３に示すような測定法によって容易に行うことができる。
【００２１】
まず、対象の消防ホースに水を充填して、０．４ＭＰａの圧力（水圧）を負荷した状態にし、それを図３のように２枚の板２０，２０の間に挟み、互いに接近させながらホースを湾曲させていくとき、キンクが発生する直前の最小曲げ半径ｒを測定する（圧力０．４ＭＰａは消防ホースから水を放水するときのノズル出口での水圧に相当する）。その最小曲げ半径ｒが小さいほど、キンクが発生しにくいホースであることを意味する。
【００２２】
本発明の消防ホースによれば、上記最小曲げ半径ｒを２５ｃｍ以下、さらに好ましくは２０ｃｍ以下にすることができる。
【００２３】
【発明の効果】
上述したように本発明の消防ホースによれば、ジャケットを構成する経糸をホース軸方向に対して傾斜させ螺旋状に配列させているので、かつ曲げる際にホースに捩じれを発生しながら屈曲して小さな曲げ半径にできるため最小曲げ半径を小さくし、キンクを発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の消防ホースを例示したものであり、（Ａ）は正面図、（Ｂ）は（Ａ）のＸ−Ｘ矢視断面図である。
【図２】本発明の消防ホースを曲げるときの作用の説明図であり、（Ａ）はストレート状態のときの正面図、（Ｂ）は曲げたときの正面図である。
【図３】消防ホースのキンク防止効果を測定する方法の説明図である。
【図４】消防ホースに発生するキンクの説明図である。
【符号の説明】
１ 消防ホース
２ ジャケット
２ａ 経糸
２ｂ 緯糸
３ ライナー層
４ 撥水剤
Ｋ キンク

Claims (4)

1. 経糸と緯糸から筒状に製織したジャケットにライナー層を内貼りした消防ホースにおいて、該ジャケットの経糸をホース軸方向に対して傾斜角５°〜１２°で傾斜するように螺旋状に配列し、かつ前記緯糸の５０ｍｍ幅当たりの打込み数を３５〜６０本にした消防ホース。
2. 前記ジャケットの織組織を綾織にした請求項１に記載の消防ホース。
3. 前記ジャケットの外周面に撥水剤をコーティングした請求項１または２に記載の消防ホース。
4. 前記撥水剤がシリコーンである請求項３に記載の消防ホース。

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