JP4674411B2 - エアベルト及びエアベルト装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の高速移動体の乗員を衝突時等に保護するためのエアベルト装置及びそのエアベルトに関するものであり、詳しくはガス発生装置からのガスによって内部のバッグを膨張させるようにしたエアベルト及びエアベルト装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
この種のエアベルト装置として、特開平５−８５３０１号公報記載のものがある。図６は同号公報のエアベルト装置の斜視図である。
【０００３】
このエアベルト装置１は、乗員の右側から左側へ斜めに延設されるエアベルト２と、このエアベルト２に接続されたウェビング２ａと、乗員の右側から左側へ延設されるラップベルト３と、車体床部等に配設されたバックル装置４と、ベルト装着時にバックル装置４に挿入係止されるタング５と、ウェビング２ａを案内するスルーアンカ６等を備えている。
【０００４】
ウェビング２ａは、従来の一般的なシートベルトと同様のノーマルベルトよりなり、スルーアンカ６に摺動自在に案内掛通されている。ウェビング２ａの端部は、車体に固定された緊急時ロック機構付きシートベルトリトラクタ（ＥＬＲ）７に巻き取り可能に連結されている。
【０００５】
エアベルト２は一端がウェビング２ａに縫合等により接続され、他端部がタング５に連結されている。
【０００６】
ラップベルト３は、一般的なシートベルトと同様のノーマルベルトにより形成され、その一端がタング５に連結されているとともに、他端が車体に固定されたシートベルトリトラクタ（ＥＬＲ）８に連結されている。バックル装置４には、車両衝突時等の緊急必要時に作動して高圧のガスを発生するガス発生装置９が連結されている。
【０００７】
タング５及びバックル装置４には、ガス発生装置９からのガスをエアベルト２に導くための通路が設けられている。
【０００８】
エアベルト２は、太幅の帯状のバッグを細幅帯状となるように折り畳んでカバーにより覆ったものであり、通常時には帯状に保形されている。このエアベルト装置１は、通常のシートベルト装置と同様に使用される。車両の衝突時等にガス発生装置９が作動すると、エアベルト２が二点鎖線で示すように膨張し、乗員が保護される。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のエアベルト装置にあっては、エアベルト２にウェビング２ａを接続し、このウェビング２ａをリトラクタ７に巻き取らせるようにしている。これは、エアベルト２を延長し、このエアベルト２を直接スルーアンカ６に掛通させた場合には、エアベルト２は、直接的にスルーアンカ６のガイド部材に沿って移動する内周側のパネルと、さらに外側を移動する外周側のパネルとのガイド部材回りの周長に差が生じるため、スルーアンカ６との接触面にしわ（皺）が生じ、スルーアンカ６をスムーズに通りにくいためである。
【００１０】
しかしながら、このようなエアベルト装置において、車両の側面衝突時等における側面からの衝撃に対する乗員保護性能の向上の観点から、エアベルト装着時にこのエアベルトの膨張部がスルーアンカ付近まで延在するように構成され、エアベルトが直接スルーアンカに掛通される場合がある。
【００１１】
本発明は、エアベルトの膨張部を延長した場合に、エアベルト自体をスルーアンカ等にスムーズに掛通できるようにすることを目的とする。
【００１２】
【課題を解決するための手段】
本発明は、中空の帯状のカバーと、該カバー内に配置されたバッグとを有し、該バッグ内にガスが導入されることにより膨張するエアベルトであって、掛通部材に掛通されるものであり、該カバーは、該掛通部材に接する側の内周パネルと、それと反対側の外周パネルとを有しているエアベルトの改良に関する。
【００１３】
請求項１にあっては、該外周パネルは、該エアベルトが掛通部材に掛通され、該掛通部材に沿って湾曲したときにエアベルト長手方向に伸長するものとなっている。
【００１４】
この外周パネルは、例えばゴム又はエラストマー製とされることにより長手方向に伸長可能とされる（請求項２）。
【００１５】
また、この外周パネルは、長手方向に伸長可能な編物又は織物にて構成される（請求項３）。
【００１６】
本発明（請求項４）のエアベルトにあっては、該内周パネルは、該エアベルトが掛通部材に掛通され、該掛通部材に沿って湾曲したときにエアベルト長手方向に短縮するものとなっている。
【００１７】
この内周パネルは、例えばエアベルトが掛通部材に掛通されたときに幅方向に伸長し、これによって長手方向に短縮する編物又は織物よりなる（請求項５）。
【００１８】
本発明のエアベルト装置は、かかるエアベルトと、該エアベルトを膨張させるためのガス発生器と該エアベルトが掛通された掛通部材とを備えてなる。
【００１９】
この掛通部材は、例えばスルーアンカ又はタングである。
【００２０】
このように構成されたエアベルト及びエアベルト装置にあっては、掛通部材に掛通されたエアベルトの外周パネルが掛通部材に沿って伸長するか、又は内周パネルが掛通部材に沿って短縮することにより、この掛通部材に掛通された部分にしわが生じることが防止され、エアベルトが掛通部材に沿ってスムーズに移動する。
【００２１】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図１（ａ）はこの実施の形態に係るエアベルト装置を備えた車両内部の斜視図、図１（ｂ）はこのエアベルト装置を示す斜視図である。図２はエアベルトの断面図、図３はエアベルトを掛けたスルーアンカの要部断面図である。
【００２２】
この実施の形態に係るエアベルト装置のエアベルト１０は、バッグ１１と、該バッグ１１を囲んでいる外周パネル１２及び内周パネル１３とを備えている。バッグ１１は、その一端がタング５に連結され、他端はリトラクタ７にまで延在されている。
【００２３】
この外周パネル１２は、エアベルト１０の長手方向に伸長可能な編物又は織物よりなる。内周パネル１３は例えば加熱延伸加工が施されることにより該長手方向には殆ど伸長しない編物又は織物よりなる。具体的には、外周パネル１２の長手方向の伸びは、スルーアンカ６のガイド部材６ａの径と、このスルーアンカ６に掛通されるエアベルト１０の厚みとによって決定され、例えば、一般に、スルーアンカのガイド部材の径は１４〜２２ｍｍ程度であり、このようなスルーアンカに掛通されるエアベルトの厚みは３〜４ｍｍ程度であることから、内周パネル１３の伸びに対して１．２〜１．６倍程度とされる。このような外周パネル１２に用いられる伸び易い織としては綾織、斜綾織などが例示され、比較的伸びが小さい織としては平織が例示される。
【００２４】
伸び易い外周パネルとするために、外周パネルの組織を２重組織（詳しくは、たて２重組織）としてもよい。この２重組織は、表地用のタテヨコ糸と裏地用のタテヨコ糸それぞれ２組を用いて、２重の織物をつくりながら、この２枚の織物を部分的に結びつけたものである。たて２重組織は、１重のヨコ糸と表裏２重のタテ糸からなるものであり、１組のヨコ糸と２組のタテ糸（表面を作る表ダテと裏面を作る裏ダテ）で製織され、普通の織物の裏にもう一つタテ糸が織りつけられている。
【００２５】
伸び易い外周パネルとするために、外周パネルのタテ糸の素材に、ストレッチヤーン、スパンデックスヤーン、ゴム糸を用いてもよい。ストレッチヤーンとしては、カール状、クリンプ状、コイル状などの形をした伸縮するヤーンが例示される。具体的には、ナイロン（商標）のフィラメント糸にヨリをかけて熱処理し、これを解いてまた熱処理してＳヨリの糸とＺヨリの糸とし、これらの糸を引き揃えて軽くなったものが例示される。また、合成繊維のフィラメント糸を筒の中に押し込んでジグザグ形にし、これに熱をかけて賦形した糸も好適である。
【００２６】
スパンデックスヤーンとしては、繊維自身が伸縮するポリウレタン系弾性糸が例示される。なお、スパンデックスヤーンに他の糸を巻き付けて伸びを抑制するようにしたカバードヤーンやコアヤーンを用いることもできる。カバードヤーンとしては、スパンデックスを芯とし、これに他の糸を１方向から巻き付けたシングルのものと、左右から巻き付けたダブルのものとがあるが、いずれでもよい。
コアヤーンは、糸を紡出しながら芯糸に巻き付けたものである。
【００２７】
ゴム糸としては、糸状のゴムの周囲に綿糸、その他の糸を巻き付けたものが例示される。具体的には、天然ゴムや合成ゴムを細長く切った角ゴムや、ゴム溶液を押し出し成形した丸ゴムを芯糸とし、この芯糸に綿糸、スパンレーヨン又は化学繊維のフィラメント糸を巻き付けたものが例示される。
【００２８】
この外周パネル１２の織の構成は、その要求される伸びの程度に応じて適宜決定され、また、複数の種類の織を組み合わせてもよい。例えば、この外側パネル１２の長手方向に沿って、中央部とその両側部とに異なる種類の織を用い、より大きな形状変化が伴う側部の織を中央部の織よりも伸び易いものとすることができる。具体的には、この外側パネル１２が比較的小さい伸びで足りる場合には、その中央部を比較的伸びの小さい平織とし、両側部を伸びの大きい綾織としてもよく、外側パネル１２が比較的大きな伸びを要する場合には、該中央部を比較的伸びの大きい斜綾織とし、その両側をさらに伸びの大きい綾織としてもよい。この際、各織の組織も、例えば綾織において、外側パネル１２の伸びの大きさに応じて、２×２綾織や、より伸びの大きい２×２以上の綾織等を適宜選択して用い、斜綾織においても、外側パネル１２の伸びの大きさに応じて１／２斜綾織等の各種の織組織を用いることができる。第７図に、このような構成を有した外側パネル１２の織の組織図を例示する。
【００２９】
第７図（ａ）において、外側パネル１２は、長手方向に沿ってその中央部が比較的伸びの小さい平織にて構成され、その両側部が伸びの大きい２×２綾織にて構成されている。
【００３０】
第７図（ｂ）に示す外側パネル１２は、（ａ）図と同様に、該中央部が平織にて構成され、その両側部が２×２以上の綾織にて構成されている。
【００３１】
第７図（ｃ）においては、外側パネル１２は、中央部が比較的伸びの大きい１／２斜綾織にて構成されており、その両側部がさらに伸びの大きい２×２綾織にて構成されている。
【００３２】
上記３種類の構成のうち、（ｃ）図に示す構成が最も外側パネル１２の伸びが大きく、次いで（ｂ）図、（ａ）図の各構成の順に外側パネル１２の伸びが大きいものとなる。
【００３３】
このように外周パネル１２が伸び易いので、このエアベルト１０がスルーアンカ６のガイド部材６ａに掛けられたときに、外周パネル１２が伸び、エアベルト１０にしわが発生しない。従って、このエアベルト１０はスルーアンカ６をスムーズに通過しうる。
【００３４】
このエアベルト装置のその他の構成は図６と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【００３５】
このように構成されたエアベルト装置においても、バックル装置４にタング５を装着した状態でガス発生装置９が作動すると、エアベルト１０が膨張し、エアベルト１０が乗員に密着し、乗員を保護する。
【００３６】
図４、５はそれぞれ別の実施の形態に係るエアベルト２０、３０の断面図である。
【００３７】
図４のエアベルト２０は、外周パネル２２が長手方向に伸びるシリコンゴム、ウレタンゴム等のエラストマーにて構成され、内周パネル２３は長手方向には殆ど伸長しない編物又は織物よりなる。
【００３８】
図５のエアベルト３０は外周パネル３２が長手方向には殆ど伸長しない編物又は織物よりなる。内周パネル３３はガイド部材６ａに掛けられたときにガイド部材に押し付けられて幅方向に広がり、その結果長手方向に短縮する編物又は織物により構成されている。また、このような構成と同様の作用を奏するエアベルト３０の構成として、例えば、エアベルト３０の各パネルに同一のメッシュ状の材料を用い、内側パネル３３のメッシュの向きを外側パネル３２のメッシュの向きに対して斜交するように配置することも可能である。
【００３９】
図４、５のエアベルト２０、３０のいずれもガイド部材６ａに掛けられたときにしわが発生せず、該ガイド部材６ａに沿ってエアベルト長手方向にスムーズに移動する。
【００４０】
本発明は、外周パネルが長手方向に伸長し且つ内周パネルが長手方向に短縮する構成としてもよい。本発明では、エアベルトはタングに掛通されてもよい。
【００４１】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、エアベルトをスルーアンカやタング等に通し、スムーズに移動させることができ、エアベルト装置がより操作しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施の形態に係るエアベルト及びエアベルト装置を示す斜視図である。
【図２】図１のエアベルトの断面図である。
【図３】エアベルトを掛通したガイド部材の断面図である。
【図４】別の実施の形態に係るエアベルトの断面図である。
【図５】さらに別の実施の形態に係るエアベルトの断面図である。
【図６】従来のエアベルト及びエアベルト装置を示す斜視図である。
【図７】第４図のエアベルトの外側パネルの織の構成例を示す組織図である。
【符号の説明】
１ エアベルト装置
２，１０，２０，３０ エアベルト
２ａ ウェビング
３ ラップベルト
４ バックル装置
５ タング
７，８ リトラクタ
１１ バッグ
１２，２２，３２ 外周カバー
１３，２３，３３ 内周パネル
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の高速移動体の乗員を衝突時等に保護するためのエアベルト装置及びそのエアベルトに関するものであり、詳しくはガス発生装置からのガスによって内部のバッグを膨張させるようにしたエアベルト及びエアベルト装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
この種のエアベルト装置として、特開平５−８５３０１号公報記載のものがある。図６は同号公報のエアベルト装置の斜視図である。
【０００３】
このエアベルト装置１は、乗員の右側から左側へ斜めに延設されるエアベルト２と、このエアベルト２に接続されたウェビング２ａと、乗員の右側から左側へ延設されるラップベルト３と、車体床部等に配設されたバックル装置４と、ベルト装着時にバックル装置４に挿入係止されるタング５と、ウェビング２ａを案内するスルーアンカ６等を備えている。
【０００４】
ウェビング２ａは、従来の一般的なシートベルトと同様のノーマルベルトよりなり、スルーアンカ６に摺動自在に案内掛通されている。ウェビング２ａの端部は、車体に固定された緊急時ロック機構付きシートベルトリトラクタ（ＥＬＲ）７に巻き取り可能に連結されている。
【０００５】
エアベルト２は一端がウェビング２ａに縫合等により接続され、他端部がタング５に連結されている。
【０００６】
ラップベルト３は、一般的なシートベルトと同様のノーマルベルトにより形成され、その一端がタング５に連結されているとともに、他端が車体に固定されたシートベルトリトラクタ（ＥＬＲ）８に連結されている。バックル装置４には、車両衝突時等の緊急必要時に作動して高圧のガスを発生するガス発生装置９が連結されている。
【０００７】
タング５及びバックル装置４には、ガス発生装置９からのガスをエアベルト２に導くための通路が設けられている。
【０００８】
エアベルト２は、太幅の帯状のバッグを細幅帯状となるように折り畳んでカバーにより覆ったものであり、通常時には帯状に保形されている。このエアベルト装置１は、通常のシートベルト装置と同様に使用される。車両の衝突時等にガス発生装置９が作動すると、エアベルト２が二点鎖線で示すように膨張し、乗員が保護される。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のエアベルト装置にあっては、エアベルト２にウェビング２ａを接続し、このウェビング２ａをリトラクタ７に巻き取らせるようにしている。これは、エアベルト２を延長し、このエアベルト２を直接スルーアンカ６に掛通させた場合には、エアベルト２は、直接的にスルーアンカ６のガイド部材に沿って移動する内周側のパネルと、さらに外側を移動する外周側のパネルとのガイド部材回りの周長に差が生じるため、スルーアンカ６との接触面にしわ（皺）が生じ、スルーアンカ６をスムーズに通りにくいためである。
【００１０】
しかしながら、このようなエアベルト装置において、車両の側面衝突時等における側面からの衝撃に対する乗員保護性能の向上の観点から、エアベルト装着時にこのエアベルトの膨張部がスルーアンカ付近まで延在するように構成され、エアベルトが直接スルーアンカに掛通される場合がある。
【００１１】
本発明は、エアベルトの膨張部を延長した場合に、エアベルト自体をスルーアンカ等にスムーズに掛通できるようにすることを目的とする。
【００１２】
【課題を解決するための手段】
本発明は、中空の帯状のカバーと、該カバー内に配置されたバッグとを有し、該バッグ内にガスが導入されることにより膨張するエアベルトであって、掛通部材に掛通されるものであり、該カバーは、該掛通部材に接する側の内周パネルと、それと反対側の外周パネルとを有しているエアベルトの改良に関する。
【００１３】
請求項１にあっては、該外周パネルは、該エアベルトが掛通部材に掛通され、該掛通部材に沿って湾曲したときにエアベルト長手方向に伸長するものとなっている。
【００１４】
この外周パネルは、例えばゴム又はエラストマー製とされることにより長手方向に伸長可能とされる（請求項２）。
【００１５】
また、この外周パネルは、長手方向に伸長可能な編物又は織物にて構成される（請求項３）。
【００１６】
本発明（請求項４）のエアベルトにあっては、該内周パネルは、該エアベルトが掛通部材に掛通され、該掛通部材に沿って湾曲したときにエアベルト長手方向に短縮するものとなっている。
【００１７】
この内周パネルは、例えばエアベルトが掛通部材に掛通されたときに幅方向に伸長し、これによって長手方向に短縮する編物又は織物よりなる（請求項５）。
【００１８】
本発明のエアベルト装置は、かかるエアベルトと、該エアベルトを膨張させるためのガス発生器と該エアベルトが掛通された掛通部材とを備えてなる。
【００１９】
この掛通部材は、例えばスルーアンカ又はタングである。
【００２０】
このように構成されたエアベルト及びエアベルト装置にあっては、掛通部材に掛通されたエアベルトの外周パネルが掛通部材に沿って伸長するか、又は内周パネルが掛通部材に沿って短縮することにより、この掛通部材に掛通された部分にしわが生じることが防止され、エアベルトが掛通部材に沿ってスムーズに移動する。
【００２１】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図１（ａ）はこの実施の形態に係るエアベルト装置を備えた車両内部の斜視図、図１（ｂ）はこのエアベルト装置を示す斜視図である。図２はエアベルトの断面図、図３はエアベルトを掛けたスルーアンカの要部断面図である。
【００２２】
この実施の形態に係るエアベルト装置のエアベルト１０は、バッグ１１と、該バッグ１１を囲んでいる外周パネル１２及び内周パネル１３とを備えている。バッグ１１は、その一端がタング５に連結され、他端はリトラクタ７にまで延在されている。
【００２３】
この外周パネル１２は、エアベルト１０の長手方向に伸長可能な編物又は織物よりなる。内周パネル１３は例えば加熱延伸加工が施されることにより該長手方向には殆ど伸長しない編物又は織物よりなる。具体的には、外周パネル１２の長手方向の伸びは、スルーアンカ６のガイド部材６ａの径と、このスルーアンカ６に掛通されるエアベルト１０の厚みとによって決定され、例えば、一般に、スルーアンカのガイド部材の径は１４〜２２ｍｍ程度であり、このようなスルーアンカに掛通されるエアベルトの厚みは３〜４ｍｍ程度であることから、内周パネル１３の伸びに対して１．２〜１．６倍程度とされる。このような外周パネル１２に用いられる伸び易い織としては綾織、斜綾織などが例示され、比較的伸びが小さい織としては平織が例示される。
【００２４】
伸び易い外周パネルとするために、外周パネルの組織を２重組織（詳しくは、たて２重組織）としてもよい。この２重組織は、表地用のタテヨコ糸と裏地用のタテヨコ糸それぞれ２組を用いて、２重の織物をつくりながら、この２枚の織物を部分的に結びつけたものである。たて２重組織は、１重のヨコ糸と表裏２重のタテ糸からなるものであり、１組のヨコ糸と２組のタテ糸（表面を作る表ダテと裏面を作る裏ダテ）で製織され、普通の織物の裏にもう一つタテ糸が織りつけられている。
【００２５】
伸び易い外周パネルとするために、外周パネルのタテ糸の素材に、ストレッチヤーン、スパンデックスヤーン、ゴム糸を用いてもよい。ストレッチヤーンとしては、カール状、クリンプ状、コイル状などの形をした伸縮するヤーンが例示される。具体的には、ナイロン（商標）のフィラメント糸にヨリをかけて熱処理し、これを解いてまた熱処理してＳヨリの糸とＺヨリの糸とし、これらの糸を引き揃えて軽くなったものが例示される。また、合成繊維のフィラメント糸を筒の中に押し込んでジグザグ形にし、これに熱をかけて賦形した糸も好適である。
【００２６】
スパンデックスヤーンとしては、繊維自身が伸縮するポリウレタン系弾性糸が例示される。なお、スパンデックスヤーンに他の糸を巻き付けて伸びを抑制するようにしたカバードヤーンやコアヤーンを用いることもできる。カバードヤーンとしては、スパンデックスを芯とし、これに他の糸を１方向から巻き付けたシングルのものと、左右から巻き付けたダブルのものとがあるが、いずれでもよい。
コアヤーンは、糸を紡出しながら芯糸に巻き付けたものである。
【００２７】
ゴム糸としては、糸状のゴムの周囲に綿糸、その他の糸を巻き付けたものが例示される。具体的には、天然ゴムや合成ゴムを細長く切った角ゴムや、ゴム溶液を押し出し成形した丸ゴムを芯糸とし、この芯糸に綿糸、スパンレーヨン又は化学繊維のフィラメント糸を巻き付けたものが例示される。
【００２８】
この外周パネル１２の織の構成は、その要求される伸びの程度に応じて適宜決定され、また、複数の種類の織を組み合わせてもよい。例えば、この外側パネル１２の長手方向に沿って、中央部とその両側部とに異なる種類の織を用い、より大きな形状変化が伴う側部の織を中央部の織よりも伸び易いものとすることができる。具体的には、この外側パネル１２が比較的小さい伸びで足りる場合には、その中央部を比較的伸びの小さい平織とし、両側部を伸びの大きい綾織としてもよく、外側パネル１２が比較的大きな伸びを要する場合には、該中央部を比較的伸びの大きい斜綾織とし、その両側をさらに伸びの大きい綾織としてもよい。この際、各織の組織も、例えば綾織において、外側パネル１２の伸びの大きさに応じて、２×２綾織や、より伸びの大きい２×２以上の綾織等を適宜選択して用い、斜綾織においても、外側パネル１２の伸びの大きさに応じて１／２斜綾織等の各種の織組織を用いることができる。第７図に、このような構成を有した外側パネル１２の織の組織図を例示する。
【００２９】
第７図（ａ）において、外側パネル１２は、長手方向に沿ってその中央部が比較的伸びの小さい平織にて構成され、その両側部が伸びの大きい２×２綾織にて構成されている。
【００３０】
第７図（ｂ）に示す外側パネル１２は、（ａ）図と同様に、該中央部が平織にて構成され、その両側部が２×２以上の綾織にて構成されている。
【００３１】
第７図（ｃ）においては、外側パネル１２は、中央部が比較的伸びの大きい１／２斜綾織にて構成されており、その両側部がさらに伸びの大きい２×２綾織にて構成されている。
【００３２】
上記３種類の構成のうち、（ｃ）図に示す構成が最も外側パネル１２の伸びが大きく、次いで（ｂ）図、（ａ）図の各構成の順に外側パネル１２の伸びが大きいものとなる。
【００３３】
このように外周パネル１２が伸び易いので、このエアベルト１０がスルーアンカ６のガイド部材６ａに掛けられたときに、外周パネル１２が伸び、エアベルト１０にしわが発生しない。従って、このエアベルト１０はスルーアンカ６をスムーズに通過しうる。
【００３４】
このエアベルト装置のその他の構成は図６と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【００３５】
このように構成されたエアベルト装置においても、バックル装置４にタング５を装着した状態でガス発生装置９が作動すると、エアベルト１０が膨張し、エアベルト１０が乗員に密着し、乗員を保護する。
【００３６】
図４、５はそれぞれ別の実施の形態に係るエアベルト２０、３０の断面図である。
【００３７】
図４のエアベルト２０は、外周パネル２２が長手方向に伸びるシリコンゴム、ウレタンゴム等のエラストマーにて構成され、内周パネル２３は長手方向には殆ど伸長しない編物又は織物よりなる。
【００３８】
図５のエアベルト３０は外周パネル３２が長手方向には殆ど伸長しない編物又は織物よりなる。内周パネル３３はガイド部材６ａに掛けられたときにガイド部材に押し付けられて幅方向に広がり、その結果長手方向に短縮する編物又は織物により構成されている。また、このような構成と同様の作用を奏するエアベルト３０の構成として、例えば、エアベルト３０の各パネルに同一のメッシュ状の材料を用い、内側パネル３３のメッシュの向きを外側パネル３２のメッシュの向きに対して斜交するように配置することも可能である。
【００３９】
図４、５のエアベルト２０、３０のいずれもガイド部材６ａに掛けられたときにしわが発生せず、該ガイド部材６ａに沿ってエアベルト長手方向にスムーズに移動する。
【００４０】
本発明は、外周パネルが長手方向に伸長し且つ内周パネルが長手方向に短縮する構成としてもよい。本発明では、エアベルトはタングに掛通されてもよい。
【００４１】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、エアベルトをスルーアンカやタング等に通し、スムーズに移動させることができ、エアベルト装置がより操作しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施の形態に係るエアベルト及びエアベルト装置を示す斜視図である。
【図２】図１のエアベルトの断面図である。
【図３】エアベルトを掛通したガイド部材の断面図である。
【図４】別の実施の形態に係るエアベルトの断面図である。
【図５】さらに別の実施の形態に係るエアベルトの断面図である。
【図６】従来のエアベルト及びエアベルト装置を示す斜視図である。
【図７】第４図のエアベルトの外側パネルの織の構成例を示す組織図である。
【符号の説明】
１ エアベルト装置
２，１０，２０，３０ エアベルト
２ａ ウェビング
３ ラップベルト
４ バックル装置
５ タング
７，８ リトラクタ
１１ バッグ
１２，２２，３２ 外周カバー
１３，２３，３３ 内周パネル
Claims (7)
- 中空の帯状のカバーと、該カバー内に配置されたバッグとを有し、該バッグ内にガスが導入されることにより膨張するエアベルトにおいて、
該エアベルトは掛通部材に掛通されるものであり、
該エアベルトのカバーは、該掛通部材に接する側の内周パネルと、それと反対側の外周パネルとを有しており、
該外周パネルは、該エアベルトが掛通部材に掛通され、該掛通部材に沿って湾曲したときにエアベルト長手方向に伸長するものであることを特徴とするエアベルト。 - 請求項１において、外周パネルはゴム又はエラストマーよりなることを特徴とするエアベルト。
- 請求項１において、外周パネルは長手方向に伸長可能な編物又は織物よりなることを特徴とするエアベルト。
- 中空の帯状のカバーと、該カバー内に配置されたバッグとを有し、該バッグ内にガスが導入されることにより膨張するエアベルトにおいて、
該エアベルトは掛通部材に掛通されるものであり、
該エアベルトのカバーは、該掛通部材に接する側の内周パネルと、それと反対側の外周パネルとを有しており、
該内周パネルは、該エアベルトが掛通部材に掛通され、該掛通部材に沿って湾曲したときにエアベルト長手方向に短縮するものであることを特徴とするエアベルト。 - 請求項４において、該内周パネルは、エアベルトが掛通部材に掛通されたときに幅方向に伸長し、これによって長手方向に短縮する編物又は織物よりなることを特徴とするエアベルト。
- 請求項１ないし５のいずれか１項に記載のエアベルトと、該エアベルトが掛通された掛通部材と、該エアベルトのバッグ内にガスを供給するガス発生器と、
を備えてなるエアベルト装置。 - 請求項６において、該掛通部材は、スルーアンカ又はタングであることを特徴とするエアベルト装置。
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