JP4673978B2 - 濃縮された抗原特異的t細胞、ならびに関係する治療および予防の組成物および方法 - Google Patents
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Description
(発明の背景)
T細胞の活性化は、抗原提示細胞(APC)上でのTCR複合体とMHC/ペプチド複合体との間の分子相互作用を必要とする。これらのリガンドとの接触はTCRのダウンレギュレーションが後に続き(1)、そしてT細胞とAPCの相互作用はAPC由来のMHC分子をT細胞の表面に接着させることができる(2,3)ことが既知であるが、APC上のMHC/ペプチド複合体の運命は不明である。MHC分子の再利用が単一のMHC/ペプチド複合体に数百までのTCR分子を誘発させると仮定されている(4)。こうした情況下では、MHC/ペプチドおよびTCRの一過性の会合が存在し、そしてAPC上のMHCの運命はTCRの拘束(engagement)により決定されないと推定されている。しかしながら、T細胞/APC界面での安定な超分子活性化クラスター(SMAC)の形成(5)はこれらの複合体がどのように解離されるかという疑問を提起する。
【0002】
(発明の要約)
抗原特異的T細胞によるMHCクラスI/抗原複合体のインターナリゼーションが、T細胞の不均質な集団からの抗原特異的T細胞の濃縮方法を提供するために、本発明で利用されている。本発明の方法は、個々の抗原特異的T細胞を精製する、もしくは多数の抗原に特異的なT細胞の混合物から、1つの特定の抗原に特異的なT細胞のより均一な収集物を得るための手段を提供する。加えて、本発明の方法は、多数の抗原に特異的なT細胞の混合した集団中に存在する1つの特定の抗原に特異的なT細胞の存在を検出しかつそれを定量するための手段を提供する。
【0003】
(発明の詳細な記述)
T細胞の応答は、抗原提示細胞(APC)上でのMHCクラスI/ペプチド複合体との接触を介して開始される。しかしながら、これらの複合体の運命は未知である。ここで、緑色蛍光タンパク質と融合されたMHCクラスI分子を発現する生存APCを使用して、われわれは、ペプチド特異的なT細胞とAPCの相互作用が、MHCクラスI分子のクラスターが接触部位で数分以内に集合することを誘導することを示し;その後、これらのMHCクラスIのクラスターは小さな凝集物でT細胞により獲得される。われわれは、T細胞によるMHCクラスIの獲得がTCRのダウンレギュレーションと相互に関連し、そしてAPC由来のMHCクラスI分子がT細胞によりエンドサイトーシスされかつ分解されることをさらに立証する。これらのデータは、それによりMHC/ペプチド複合体のTCR認識がT細胞によるMHC分子のインターナリゼーションにより省略される可能性がある、新規の機構もまた示す。
【0004】
T細胞の拘束後のAPC上でのMHC/ペプチド複合体の運命を検討するため、われわれは、MHCクラスIのLd−緑色蛍光タンパク質融合分子(Ld−GFP)を発現する安定な哺乳動物およびショウジョウバエ属(Drosophila)の細胞系を生じさせた。Ld−GFPを含有するショウジョウバエ属(Drosophila)細胞の発現ベクター(JH102)は、以下のように構築した。すなわち、PCR突然変異誘発により、ベクターMJ262(22)中のLdの終止コドンのそれぞれ前および後にXho IおよびSal Iクローニング部位を生じさせた。その後、EGFPのDNAフラグメント(Xho I/Not I)をベクターpEGFP−N3(クロンテック(Clontech))から単離し、そして突然変異されたMJ262ベクター中のLdの3’端にサブクローニングした。新たな構築物(JH102)の配列をDNA配列決定により確かめた。それは、LdおよびEGFPの完全長の配列を含有する。Ldの配列とEGFPの配列の間に、ベクターのマルチクローニング部位由来であった22アミノ酸をコードするリンカー配列を生じさせた。B7−1およびICAM−1分子を伴いもしくは伴わずにLd−GFPを発現する安定なショウジョウバエ属(Drosophila)細胞系は、既に記述されたとおり(9)生じさせた。Ld−GFP哺乳動物細胞発現ベクターの構築は以下のとおりであった。Ldを含有するBam HI DNAフラグメントをベクターJH102から単離し、そしてベクターpEGFP−N3(クロンテック(Clontech))にサブクローニングした。生じるプラスミド(JH103)を電気穿孔法によりRMA.S細胞中にトランスフェクションし、そしてLd−GFPを発現する安定な細胞系をG418(1mg/ml)を用いる選択により生じさせた。抗原が会合されたMHCクラスI分子の産生のためのいかなる手段も本発明での使用に適することが、当業者に容易に明らかである。当該技術分野で既知の方法の例は、限定されるものでないが米国特許第5,595,881号、米国特許第5,827,737号および米国特許第5,731,160号明細書に記述されるものを挙げることができる。緑色蛍光タンパク質以外の多様な検出可能なマーカーをMHCクラスI分子に融合することができ、そして本発明の方法での使用に適し、また、多様な手段によりMHCクラスI分子に連結することができることもまた当業者に容易に明らかである。本発明の方法で使用することができる検出可能なマーカーの例は、限定されるものでないが、MHCクラスIタンパク質に取り込まれたもしくはこれに結合された放射性同位元素、あるいは例えば組換え融合タンパク質を創製することにより、化合物もしくはタンパク質を翻訳後に化学的に連結することにより、あるいは抗原−抗体またはストレプトアビジン−ビオチンもしくはアビジン−ビオチン結合対のようないずれかの結合対パートナーを利用して検出可能なマーカーをタンパク質に連結することによりMHCクラスIタンパク質に連結することができるいずれかの比色的もしくは蛍光の化合物もしくはタンパク質を挙げることができる。
【0005】
Ld−GFPを発現する細胞系を、2C TCRトランスジェニックマウス系からのCD8+ T細胞(T細胞抗原QL9を特異的に認識する(8))(2C T細胞)に特異的なQL9ペプチド(7)を提示するための抗原提示細胞(APC)として使用した。Ldを発現するショウジョウバエ属(Drosophila)細胞について既に報告されたとおり(9)、Ld−GFPおよび2種の補助刺激(co−stimulating)分子、B7−1およびICAM−1を発現するショウジョウバエ属(Drosophila)細胞は、ペプチド特異的なTCRのダウンレギュレーションおよび2C細胞の強い増殖応答を誘導し、Ld−GFP分子が機能的であることを示した。別の方法で述べられない限り、Ld−GFP、B7−1およびICAM−1でコトランスフェクションされたショウジョウバエ属(Drosophila)細胞(Ld−GFP.B7.ICAM)をAPCとして使用した。Ldに強く結合するがしかし2C TCRにより認識されない(9)P1Aペプチド(10)を特異性対照として使用した。T細胞への抗原の提示のためのいかなる手段も本発明の方法での使用に適することが、当業者に容易に明らかである。限定されるものではないが米国特許第5,595,881号、米国特許第5,827,737号および米国特許第5,731,160号明細書に記述されるものを挙げることができる、多様な抗原提示系が既知である。ant T細胞抗原が本発明の方法で有用であることもまた当業者に容易に明らかである。MHCクラスIタンパク質と会合することができかつT細胞に提示することができるいかなるT細胞抗原も、本発明での使用に適する。こうした抗原のいかなる供給源も、抗原が化学的に合成されるにしろ天然の供給源に由来するにしろ、本発明での使用に適する。抗原はいずれの供給源由来であることもでき、そしていずれかの特定の型に限定されないが、但し、抗原がMHCクラスIタンパク質と会合しかつ抗原をT細胞に提示することができる。
【0006】
休止期の(resting)CD8+ 2C T細胞を精製し、そして多様な期間の間、QL9ペプチドを負荷されたショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCとともに培養し;その後、共焦点顕微鏡(フルオビュー(FluoView)、オリンパス(Olympus))を用いて、T細胞およびAPCの動的相互作用を検討した。APCとの2C T細胞の相互作用の数分以内に、Ld−GFP分子はT細胞の接触の部位で大型のクラスターを形成した(図1A)。対照的に、対照のP1Aペプチドの添加では、Ld−GFPは、T細胞との接触後、APC上に均一に分布されたままであった(図1A)。単一のT細胞が1個以上のAPCに結合した、もしくは1個のAPCが数個のT細胞と相互作用した情況では、特異的QL9ペプチドにより導き出されたLd−GFPクラスターが、T細胞とAPCの接触部位のそれぞれで形成された。前活性化された2C T細胞で類似の結果が得られた(図1B)。QL9に誘導されたLd−GFPクラスターの形成はショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCに独特でなかった。なぜなら、Ld−GFPでトランスフェクションされたRMA.S細胞(11)(マウスの細胞系)をAPCとして使用した場合に類似のクラスターが生じたからである。興味深いことに、QL9依存性のLd−GFPクラスター形成は、Ld−GFP単独で(B7−1もしくはICAM−1を伴わずに)トランスフェクションされたショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCでもまたみられた。従って、T細胞とAPCの接触部位でのMHCクラスターの形成は、主としてTCR/MHC/ペプチドの相互作用に依存する。
【0007】
T細胞/APC複合物の時間経過研究は、界面のLd−GFPクラスターが1時間の期間にわたって徐々に大きさを減少させそして最終的にはAPCから消失したことを示した。驚くことに、Ld−GFPクラスターの大きさの減少に付随して、Ld−GFPの小型の断続的(punctuate)凝集物が、APCとの拘束後約15分ほどで2C T細胞と会合したようであった。ショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCおよびQL9ペプチドでの休止期2C T細胞の拘束の2分以内に(図1C)、Ld−GFPの大型のクラスターが接触部位に出現した。しかしながら、培養のさらなる20分後、Ld−GFPの小型の凝集物が2C T細胞中で明白であり;培養の30分後に2C T細胞中でより多くのLd−GFP凝集物が出現した(図1C)。T細胞中のLd−GFPの存在は前活性化された2C T細胞を用いてもまた検討した(図1D、E)。活性化された2C T細胞を、Ld−GFPでトランスフェクションされたショウジョウバエ属(Drosophila)のAPC(図1D)もしくはRMA.S細胞(図1E)のいずれかおよびQL9ペプチドとともに30分間培養した場合、Ld−GFPの複数の小型の凝集物が、活性化された2C T細胞中で観察された。Ld−GFPの凝集物はより低親和性のペプチドp2Ca(7)により活性化された2C T細胞中でもまた出現し、そして対照P1AペプチドではLd−GFPの凝集はT細胞中でみられなかった。従って、Ld−GFPの獲得はペプチド特異的であるようである。
【0008】
T細胞によるLd−GFPのペプチド特異的な獲得をFACS分析によりさらに検討した。図2Aに示されるとおり、Ld−GFPは、ショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCおよびQL9ペプチドとともに30分間培養した後に、大多数の休止期の2C T細胞上で検出された。対照的に、Ld−GFPは、対照のP1Aペプチドを負荷されたAPCとともに培養された2C T細胞上で観察されなかった(図2A)。速度論の研究は、QL9ペプチドを用いて、2C細胞により獲得されたLd−GFPの量が30分で最大であり、そしてその後数時間にわたって徐々に減少したことを示した(図2B)。16時間までに、T細胞中の大部分のLd−GFPは消失していた。2C T細胞によるLdの獲得は、Ldを発現するショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCとともに培養された2C T細胞上でのLdの発現のFACS分析によってもまた確認された。ペプチドの力価測定(titration)研究は、T細胞によるLd−GFPの獲得が高濃度のQL9ペプチドを用いて最も顕著であり、そして2C細胞に対しより低親和性のペプチド、p2Caペプチド(7)でより小さく顕著(だが有意)であったことを示した。APCによる補助刺激分子(B7−1およびICAM−1)の発現は、2C T細胞によるLd−GFP分子の獲得を高めなかった。
【0009】
APCおよびGFP標識されたMHCとのインキュベーション後のT細胞の付加的FACS分析の結果を図5に示す。示されたパーセンテージの抗原特異的T細胞(2C)および非抗原特異的T細胞(B6)とのT細胞の混合物を、MHC−GFP(Ld−GFP)を発現するショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCとともに培養した。抗原性ペプチド(QL9)もしくは対照ペプチド(P1A)とともに37℃で1時間培養した後、Ld−GFP+ T細胞をFACSにより分析した。各サンプル中のLd−GFP+ T細胞のパーセント(Y軸)を、そのサンプル中の抗原特異的T細胞(2C)の示されたパーセント(X軸)に対してプロットした。該データは、APCにより提示されるGFP標識を、T細胞の混合物中の抗原特異的T細胞の量に対する正しい比率で取り込んでいるT細胞の分離を明瞭に立証する。
【0010】
2C T細胞によるAPC由来のLd分子の取込みは、免疫沈降研究において、T細胞による35S標識されたAPC由来のMHC I分子の獲得によりさらに立証された(図2C)。これらの研究のAPCとして、Ldを発現する線維芽細胞(L細胞)(12)を使用した。なぜなら、ショウジョウバエ属(Drosophila)の細胞と異なり、それらは接着性(APC/T細胞混合物からのT細胞の純粋な一集団の単離で大きく補助する特性)であるからである。2C細胞を、LdでトランスフェクションされたL細胞(L−Ld)およびQL9ペプチドとともに培養した後、Ldを2C細胞から免疫沈降させることができ、培養の4時間でピークに達した。2C細胞から沈降されたLdの量は、培養物中の2C T細胞の数と緊密に相互に関連した(図2C)。しかしながら、対照ペプチド(P1A)の存在下では、Ldの沈降は非常に制限された。L細胞上で発現される他のクラスI分子(DkおよびKk)は、免疫沈降により2C T細胞中で検出可能でなかった(図2C)。重要なことに、T細胞によるLd分子のペプチド依存性の獲得は、抗TCRもしくは抗LdいずれかのmAbを培養物に添加することにより封鎖することができ、T細胞によるLdの獲得がTCRとMHC/ペプチドとの間の特異的相互作用を必要とすることを示した(図2D)。
【0011】
T細胞によるLd分子の迅速な獲得が2C TCRの同等に迅速なダウンレギュレーションと相互に関連したことは注目に値する(図2B)。TCRのダウンレギュレーションはT細胞によるインターナリゼーションを反映する(13)ため、Ld分子もまたインターナリゼーションされる(internalized)かもしれない。この疑問を取り扱うため、液体に可溶性の蛍光色素(DiI)(モレキュラー プローブス(Molecular Probes))(14)を使用して、活性化された2C細胞の膜を標識した。図3Aに示されるとおり、Ld−GFPを発現するAPCおよびQL9ペプチドとともにT細胞を30分間培養した後、実質的な数の小型のLd−GFP凝集物が、活性化されたT細胞中で検出された。Ld−GFP凝集物のいくらかはT細胞の明瞭に内側にあった一方、他者はT細胞とAPCの接触部位に留まった(図3A)。DiI標識された2C T細胞のAPCとともに2時間のさらなる培養は、2C T細胞の内側のLd−GFPの夥しい凝集物をもたらし、そしてこれらの凝集物はDiI標識された膜小胞と共に配置された(co−localized)(図3B)。
【0012】
2C T細胞中のLd−GFPの細胞内局在化を、トランスフェリン受容体に特異的なモノクローナル抗体での2C T細胞の表面染色によりさらに確認した(図3C)。QL9ペプチドの存在下で、Ld−GFPを発現するAPCとともに活性化された2C T細胞を1時間培養した場合に、Ld−GFP凝集物がT細胞の内側で検出され、そして核周囲の分布を示した(図3C)。対照的に、P1Aペプチドを使用した場合には、Ld−GFP凝集物が2C T細胞中で観察されなかった(図3C)。
【0013】
APCからT細胞により獲得されたLd分子がインターナリゼーションされる可能性があるという上の観察結果は、この過程がどのように起こるかという疑問を提起する。可溶性のリガンドはクラスリン被覆小孔を介するエンドサイトーシスによりインターナリゼーションされることが知られている(15)。T細胞によるLd−GFPのインターナリゼーションはTCRおよびMHC/ペプチドの相互作用に依存性であり、かつ、Ld−GFPがTCRと共に局在化した(図3D)ため、APCからのMHC分子がTCRに媒介されるエンドサイトーシスによりインターナリゼーションされることが可能である。
【0014】
トランスフェリンは受容体に媒介されるエンドサイトーシスによって細胞によりインターナリゼーションされる(13)ため、われわれは、2C T細胞中でのLd−GFPの細胞内の運命の跡を辿るためのマーカーとして、テキサスレッドに結合されたトランスフェリンを使用した。図4Aに示されるとおり、トランスフェリンはT細胞によりインターナリゼーションされ、そして複数の膜小胞と会合した。T細胞によりインターナリゼーションされたLd−GFP凝集物は、類似のパターンの細胞内分布を表した(図4A)。トランスフェリンおよびLd−GFPの上置き像(overlay image)は、T細胞によりインターナリゼーションされたLd−GFP凝集物が、トランスフェリンを含有する小胞と共に局在化したことを示した(図4A)。これらのデータは、TCRとの相互作用後にAPC由来のMHC分子がエンドサイトーシスによってT細胞によりインターナリゼーションされることを強く示唆する。
【0015】
細胞の低pH区画に特異的に蓄積する赤色蛍光色素、リソトラッカー(lysoTracker)(16)をリソゾームのマーカーとして使用して、Ld−GFPの細胞内の運命を追跡した。図4Aに示されるとおり、2C T細胞をAPCとともに1時間培養した後、Ld−GFPが、リソトラッカー(lysoTracker)色素により示されるとおりT細胞の酸性区画中に出現した。リソゾーム中のLdの存在は、LAMP−1(リソゾームに会合される膜分子)に特異的なmAbでの固定された2C T細胞の免疫染色によりさらに確認された。
【0016】
リソトラッカー(lysoTracker)およびLAMP−1でのLd−GFPの共局在化は、2C T細胞によりエンドサイトーシスされたLd−GFPがリソゾームの分解にさらされたことを示唆する。この可能性を検査するため、2C細胞を、リソゾーム阻害剤(NH4Cl、クロロキンおよびE64)の存在もしくは非存在下で、Ld−GFPのショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCおよびQL9ペプチドとともに6時間まで培養し、そしてその後Ld−GFPの総量についてFACSにより分析した。図4Bに示されるとおり、2C細胞におけるLd−GFPの消失は、リソゾーム阻害剤の添加により明瞭に阻害された。
【0017】
類似の知見がLdの免疫沈降でみられた(図4C)。示される実験において、2C細胞を最初に4時間、35S標識されたLdでトランスフェクションされたL細胞およびQL9ペプチドとともに培養し;Ldのさらなる取込みを予防するため、その後、2C細胞をAPCと分離し、そしてリソゾーム阻害剤(NH4ClおよびE64)の存在もしくは非存在下で2〜4時間培養した。これらのAPCを含まない条件下で、2C細胞中のLd分子は、阻害剤とともに培養された細胞についてよりも、培地単独中で培養された細胞について、より迅速に消失した。
【0018】
いくつかの研究が、T細胞とAPCの相互作用が、APCからの多数の分子をT細胞の表面に接着させることができることを示している(2,3)。本開示は、CD8+ 2C細胞について、APC上のMHCクラスI分子(Ld)が、T細胞とAPCの相互作用の部位で超分子活性化クラスター(SMAC)を形成した後にT細胞により獲得されることを立証し(3);SMAC中でのAPC由来のMHCクラスI分子の出現はペプチド依存性でありかつ迅速に発生する。加えて、われわれは、APC由来のMHCクラスI分子が、TCRへの結合後にT細胞によりエンドサイトーシスされ、そしてその後リソゾーム経路によって分解されることを示す。興味深いことに、T細胞はAPCからのB7分子もまたインターナリゼーションすることができる(3)。B7がインターナリゼーション後に分解されるかどうかは不明である。
【0019】
T細胞およびAPCの抗原特異的相互作用は、抗原用量および時間依存性の様式で、リソゾーム中でTCRのインターナリゼーションおよび分解を誘導する(17)。ここで、われわれは、APC由来のMHC I分子のインターナリゼーションおよび分解の要件および速度論が、TCRのインターナリゼーションおよび分解のものに類似であること、ならびにAPC由来のMHCがT細胞中でTCRと共局在化することを立証した。これらの知見は、MHC I分子およびTCRがT細胞によって一緒にインターナリゼーションかつ分解されることを強く示唆する。T細胞活性化の連続的誘発モデルによれば、TCRとのMHC/ペプチドの一過性の会合が複数のTCRの連続的な誘発(triggering)に必要とされる(1,4)。しかしながら、TCRとの特異的相互作用の後にMHC分子が安定なクラスターを形成し、そしてその後TCRとともにインターナリゼーションされるというわれわれの知見は、TCR/MHC/ペプチドの相互作用が一過性でないことを示唆する。これは、T細胞の活性化におけるMHCおよびTCRの共インターナリゼーションの役割に関する疑問を提起する。
【0020】
成長因子およびホルモンのような可溶性リガンドの場合には、インターナリゼーションがシグナル伝達に関与していることが既知である(18)。これゆえに、T細胞によるMHC分子のインターナリゼーションは、TCRに媒介される細胞内シグナル伝達に寄与しているかもしれず(19)、また、T細胞中でのTCRおよびMHCの共局在化が持続性のTCRのシグナル伝達に必要とされるのかもしれない(20)。隣接するT細胞上の特定の受容体を介する7膜貫通リガンド(boss)のインターナリゼーションが昆虫の目の発生に重要である(21)という知見により、類似の、しかし関係のない観察結果が提供される。
【0021】
代替の1つの可能性は、T細胞とAPCの相互作用の間のMHC分子のインターナリゼーションが、応答性のT細胞をAPCからの過剰の刺激から保護するための装置であるということである。ここで、T細胞へのMHCクラスI分子の結合がTCRのダウンレギュレーションと緊密に相互に関連することは注目に値する。すなわち、双方の過程は類似の速度論を有し、共刺激分子に非依存性であり、そして低濃度のMHCに結合されるペプチドではずっとより少なく顕著である。これゆえに、高濃度のペプチドを発現するAPCとのT細胞の相互作用に関して、TCR/MHC/ペプチド複合体の迅速なインターナリゼーションが、TCRのシグナル伝達の強度を低下させそして従って耐性誘導の危険を小さくするよう作用しているのかもしれない。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 発明にかかる、MHCクラスI分子はT細胞とAPCの接触部位でクラスターを形成する。休止期の(A)もしくは活性化された(B)CD8+ 2C T細胞を、室温で、Ld−GFP、B7−1およびICAM−1を発現するショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCならびに10?MのQL9もしくはP1Aペプチドとともに培養した。共焦点顕微鏡系(フルオビュー(Fluoview)、オリンパス(Olympus))を使用し、ΔTC3培養皿(バイオプテクス(Bioptechs))中のAPCにT細胞を添加した直後に、GFPの蛍光を分析した。左図:Ld−GFP蛍光。中央図:T細胞/APC対のDIC(微分干渉対比)像。右図:Ld−GFP蛍光およびDIC像の上置き。(C)ショウジョウバエ属(Drosophila)のAPC(+QL9)からLd−GFPを獲得する休止期のCD8+ 2C T細胞。T細胞/APC対中のLd−GFP蛍光後の時間経過画像形成を30秒ごとに実施した。それぞれ5、20および30分で採られたLd−GFP蛍光像を左図に示し、また、Ld−GFP/DICの上置き像を右図に示す。(D)ショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCからLd−GFPを獲得する活性化されたCD8+ 2C T細胞。活性化されたCD8+ 2C T細胞を、ショウジョウバエ属(Drosophila)のAPC(+QL9)とのインキュベーション前に5μMのDiI(赤色)(モレキュラー プローブス(Molecular Probes))で前染色した。代表的なT細胞/ACP対の像を示す。(E)活性化されたCD8+ 2C T細胞によるRMA.S細胞(+QL9)からのLd−GFPの獲得。
【図2】 発明にかかる、CD8+2C T細胞によるAPC由来のMHCクラスI分子のTCRに媒介される獲得。休止期の2C T細胞を、37℃で、示された時間の間、QL9もしくはP1Aペプチドを負荷された、Ld−GFP、B7−1およびICAM−1を発現するショウジョウバエ属(Drosophila)細胞とともに培養した。Ld−GFPの総量およびCD8+ 2C T細胞上のTCRの表面レベルをFACSにより分析した。(A)培養の0および30分での2C T細胞上でのLd−GFPおよびTCRの発現。(B)2C T細胞上でのLd−GFPおよびTCR発現の速度論。2C T細胞上でのLd−GFPおよびTCRの発現の平均蛍光強度(MFI)を、FACSを用いて、示された時点で分析した。(C)2C T細胞からのAPC由来のLdクラスI分子の免疫沈降。力価測定された数の2C細胞(レーン1:T細胞なし、レーン2:2×107個およびレーン3:4×107個)を、Ldを発現する3×106個の35S−メチオニン標識されたL細胞(12)とともに培養した。4時間の培養後にL細胞(L−Ld)から2C T細胞を精製し、そして精製された2C細胞の細胞ライセートをそれぞれ抗H−2K mAbもしくは抗Ld mAb(28−14−8)(ファーミンゲン(PharMingen))を用いて免疫沈降させた。(D)T細胞によるLd分子の獲得はTCR/MHC/ペプチドの相互作用に依存する。2C T細胞を、示されたようなmAbの存在もしくは非存在下で4時間、L−Ld細胞およびQL9ペプチドとともに培養した。抗TCR mAb、1B2(2C TCRの双方の鎖を認識する)を使用し、そして上述されたとおりLdの免疫沈降を実施した。
【図3】 発明にかかる、T細胞によるAPC由来のMHCクラスI分子のインターナリゼーション。(A)ショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCと相互作用する活性化された2C T細胞のZ軸に沿った連続共焦点像。CD8+ 2C T細胞を5?MのDiI(赤色)で標識し、そしてLd−GFP(緑色)を発現するショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCおよびQL9ペプチドとともに30分間培養した。(B)DiI標識された膜小胞とのLd−GFPの共局在化。2C T細胞を、Ld−GFPを発現するQL9を負荷されたRMA.S細胞とともに37℃で2時間インキュベートした。(C)2C T細胞により獲得されたLd−GFPは細胞質中にある。活性化されたCD8+ 2C T細胞をリソゾームプロテアーゼ阻害剤(100?Mクロロキンおよび50?M E64)で前処理し、そしてLd−GFPおよび示されたペプチドを発現するショウジョウバエ属(Drosophila)のPACとともに1時間培養した。その後、それらをトランスフェリン受容体に特異的なビオチニル化抗体、次いでストレプアビジン(Strepavidin)−Cyt3(ファーミンゲン(PharMingen))で染色した。(D)2C T細胞におけるTCRおよびLd−GFPの細胞内共局在化。2C細胞を、Ld−GFPを発現するショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCおよびQL9もしくはP1Aペプチドとともに1時間培養した後、TCRに対するビオチニル化mAb(抗CD3?、抗TCR?、およびクローン型mAb、1B2)のカクテルで、そしてその後ストレプアビジン−テキサスレッドで細胞内染色した。
【図4】 発明にかかる、T細胞によるAPC由来のMHCクラスI分子のエンドサイトーシスおよび分解。(A)2C T細胞中での、トランスフェリン(tfとして標識を付けられる)およびリソトラッカー(lysoTracker)(lyとして標識を付けられる)とのLd−GFPの共局在化。左図の像:活性化されたCD8+ 2C T細胞に、テキサスレッド結合トランスフェリン(5?g/ml)を負荷し、そしてQL9ペプチドを負荷されたショウジョウバエ属(Drosophila)のAPC(Ld−GFP)とともに37℃で1時間インキュベートした。右図の像:活性化されたCD8+ 2C T細胞を、Ld−GFPを発現するQL9を負荷されたRMA.S細胞とともにインキュベートし、5nMのリソトラッカーレッド(lysoTracker Red)DND−99(モレキュラー プローブス(Molecular Probes))で染色した。(B)リソソーム阻害剤による2C細胞上でのLd−GFPの阻害。休止期のCD8+ 2C T細胞を、リソソーム阻害剤のカクテル(25mM NH4Cl、10mMクロロキンおよび10μM E64)の存在もしくは非存在下に、Ld−GFPを発現するショウジョウバエ属(Drosophila)のAPCおよびQL9ペプチドとともに培養した。示された時間の間の培養の後、CD8+ 2C細胞上のLd−GFP蛍光強度をFACSにより分析した。(C)2C T細胞中でのAPC由来のMHCクラスI分子の分解。2C T細胞を、NH4ClおよびE64の存在もしくは非存在下に、示された時間の間、35S−メチオニン標識されたLdでトランスフェクションされたL細胞とともに培養した。Ldの免疫沈降を図2で記述されたとおり実施した。残存するLdの量をデンシトメトリーにより定量した。
【図5】 発明にかかる、非特異的T細胞と混合された多様な比の2C T細胞を使用する、抗原QL9を負荷された、GFP標識されたMHCクラスI分子を特異的に取り込んだCD8+ 2C T細胞のFACSによる分離を示す。
Claims (9)
- a)特異的抗原と会合されたMHCクラスIタンパク質の供給源をT細胞の集団と接触させる工程であって、かつ、当該MHCクラスIタンパク質が蛍光マーカー、比色マーカーおよび放射能標識マーカーよりなる群から選ばれる検出可能なマーカーを含有するものである工程、
b)特異的抗原と会合されたMHCクラスIタンパク質が供給源からインターナリゼーションされるのにT細胞にとって十分な2分〜6時間の間、T細胞の集団と一緒に、特異的抗原と会合されたMHCクラスIタンパク質をインキュベートする工程;および
c)検出可能なマーカーのインターナリゼーションされたT細胞を同定する工程
を含んで成る、抗原特異的T細胞の検出方法。 - 検出可能なマーカーを含有する特異的抗原と会合されたMHCクラスIタンパク質の供給源が、蛍光タンパク質と融合されたMHCクラスIタンパク質を発現する組換え細胞である、請求項1記載の方法。
- 蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質である、請求項2記載の方法。
- 組換え細胞がショウジョウバエ属(Drosophila)の細胞である、請求項2記載の方法。
- 検出可能なマーカーのインターナリゼーションされたT細胞の同定が、検出可能なマーカーの蛍光を検出することによりなされる、請求項1記載の方法。
- 検出可能なマーカーのインターナリゼーションされたT細胞の同定が、蛍光標示式細胞分取器中で検出可能なマーカーの蛍光を検出することによりなされる、請求項1記載の方法。
- 検出可能なマーカーが蛍光マーカーである、請求項1記載の方法。
- 検出可能なマーカーが緑色蛍光タンパク質である,請求項7記載の方法。
- 検出可能なマーカーを含有する特異的抗原と会合されたMHCクラスIタンパク質の供給源がMHCクラスIタンパク質と緑色蛍光タンパク質を含む組換え融合分子である、請求項8記載の方法。
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