JP4672375B2 - 建材の色合い決定作業支援装置および支援方法 - Google Patents

建材の色合い決定作業支援装置および支援方法 Download PDF

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Description

本発明は、建材の色合い決定作業を支援する技術に関し、特に、木材や石材などの天然素材をモチーフにした絵柄画像を、紙やフィルム上に印刷して建材を製造する際に、印刷に用いるインキの色あいを決定する作業を支援する技術に関する。
一般に、カラー印刷物は、複数の色インキを重ね刷りすることにより製作される。この場合、雑誌、ポスター、商品パッケージなど、ごく一般的な商用印刷物の場合、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色(いわゆる、CMYK系の4色)のインキを用いた印刷が行われる。これは、このCMYK系のインキは、減色混合に適した三原色を含み、非常に広い色再現領域を確保することができるからである。
一方、建材の印刷には、CMYK系のインキではなく、いわゆる特色と呼ばれるインキの組み合わせが用いられることが多い。特に、木材や石材などの天然素材をモチーフにした絵柄画像を、紙やフィルム上に印刷して建材を製造する際には、ほとんどの場合、個々の天然素材の印刷に適した特色インキの組み合わせが利用される。たとえば、木材をモチーフにした絵柄画像では、茶系の色が主体となり、赤、青、緑、黄、紫などの原色をそのまま用いることは皆無と言ってよいため、CMYK系のインキを用いた印刷を行うよりも、茶系の色表現に適したインキを用いた印刷を行う方が好ましい。このため、木目柄や石目柄など、天然素材をモチーフにした床材や壁紙を印刷する場合、通常、特色インキの組み合わせが用いられている。
このように、天然素材をモチーフとした建材の印刷では、特色インキの組み合わせを用いる必要があるため、CMYK系のインキを用いた印刷に比べて、色合わせの作業がむずかしい。それは、個々の天然素材ごとに、それぞれ異なる特色インキの組み合わせが利用されるからである。そこで、たとえば、下記の特許文献1には、このような色合わせ作業の負担を軽減するために利用できる、専用の色合わせ用スケールが開示されている。
特開平8−219883号公報
上述したように、天然素材をモチーフとした建材の印刷では、個々の天然素材に合わせた特色インキの組み合わせを用いるのが一般的であるが、特定の天然素材に適した特色インキの組み合わせを決定する作業は、熟練した印刷担当者が、長年の経験を頼りに行っているのが現状である。通常、モチーフとなる天然素材の絵柄画像を示す原画像データは、3枚もしくは4枚の色別レイヤーで構成され、個々のレイヤーには、それぞれ所定の濃度値が定義された多数の画素の配列が定義されている。印刷に用いる特色インキの組み合わせが決定すると、個々のレイヤーはそれぞれ対応する特色インキで刷られることになるので、用いる特色インキの組み合わせは、最終的に得られる建材の色合いを左右することになる。
建材の印刷を請け負う印刷会社では、通常、顧客(たとえば、建材メーカー)から、「オーク調の床材」とか、「メイプル調の壁紙」とか、「マーブル模様の床材」といったテーマの指定を受けて、顧客の希望に沿った建材を納品することが多い。この場合、各建材の印刷に用いる特色インキの組み合わせは、熟練した担当者が、顧客の指示を念頭に入れて、経験に基づいて決定することになる。こうして担当者が決定した特色インキの組み合わせを用いて実際に試し刷りを行い、顧客に提示することになるが、顧客の希望に合致した結果が直ちに得られることは非常に希である。通常は、「もう少し赤みを強くして欲しい」というような色合いを修正する要望が顧客から出され、その度に、担当者が、特色インキの配合を若干変える調整を行い、再び試し刷りを行って顧客に結果を提示する、という作業が繰り返されることになる。このような試し刷りを繰り返す作業は、印刷現場での作業負担を重くし、時間的なロスも大きなものになる。
そこで本発明は、天然素材をモチーフにした絵柄画像を印刷して建材を製造する際に、建材の色合い決定作業の負担を軽減させることが可能な支援システムを提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、天然素材をモチーフにした絵柄画像を印刷して建材を製造する際に、色あいの決定作業を支援するための色合い決定作業支援装置において、
それぞれ所定の濃度値が定義された多数の画素の配列からなる複数N枚の色別レイヤーから構成され、モチーフとなる天然素材の絵柄画像を示す原画像データを格納する原画像データ格納部と、
原画像データを構成する個々の色別レイヤーを印刷するために用いられるN種類のインキの組み合わせを1インキセットとして、複数通りのインキセットを定義するために、個々のインキセットについて、それぞれ構成要素となるインキを特定するためのインキセット構成情報を格納したインキセット構成情報格納部と、
各インキセットについて、その構成要素となるN種類のインキをそれぞれ所定の濃度値で所定の順序で印刷したときに得られる第1の色と、標準表色系を構成するM種類のパラメータ(M=Nでも、M≠Nでもよい)をそれぞれ所定値に設定したときに得られる第2の色と、が等しくなるように、N種類のインキの濃度値の組み合わせとM種類のパラメータの組み合わせとの間の対応関係を定義した色対応情報を格納した色対応情報格納部と、
オペレータに、複数通りのインキセットを提示し、その中から所望のインキセットを選択させるインキセット選択部と、
色対応情報格納部から、オペレータが選択したインキセットについての色対応情報を読み出し、原画像データ上の個々の画素の濃度値を、読み出した色対応情報を用いて、標準表色系を構成するM種類のパラメータに変換することにより、標準表色系画像データを生成するデータ変換部と、
データ変換部により生成された標準表色系画像データに、所定の画像出力装置の色特性に応じた補正を加えて、当該画像出力装置へ出力する画像データ出力部と、
を設け、
インキセット構成情報格納部には、それぞれ特定の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットの情報を格納しておくようにし、
インキセット選択部が、オペレータにインキセットを提示する際に、当該インキセットに対応する天然素材を示す情報を見出しとして提示するようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る建材の色合い決定作業支援装置において、
インキセット構成情報格納部に、種々の木材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットの情報と、種々の石材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットの情報と、を格納しておき、
インキセット選択部が、木材および石材を示す大見出しと、特定の木材および特定の石材を示す中見出しと、を提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせるようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2の態様に係る建材の色合い決定作業支援装置において、
インキセット構成情報格納部に、同一の木材についての複数通りのインキセットの情報と、同一の石材についての複数通りのインキセットの情報と、を格納しておき、
インキセット選択部が、個々のインキセットを示す小見出しを提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせるようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係る建材の色合い決定作業支援装置において、
インキセット構成情報格納部に、印刷対象となる媒体ごとに異なるインキセットの情報を格納しておき、
インキセット選択部が、印刷対象となる媒体を示す見出しを提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせるようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1〜第4の態様に係る建材の色合い決定作業支援装置において、
インキセット構成情報格納部に、印刷後に施される加工の内容ごとに異なるインキセットの情報を格納しておき、
インキセット選択部が、印刷後に施される加工の内容を示す見出しを提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせるようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1〜第5の態様に係る建材の色合い決定作業支援装置において、
インキセット構成情報として、構成要素となる個々のインキを配合するための原材料となるインキの型番および配合割合を用いるようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1〜第6の態様に係る建材の色合い決定作業支援装置をコンピュータを利用して実現することができるように、各機能を実現するためのプログラムを用意するようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、天然素材をモチーフにした絵柄画像を印刷して建材を製造する際に、色あいの決定作業を支援する支援方法において、
それぞれ所定の濃度値が定義された多数の画素の配列からなる複数N枚の色別レイヤーから構成され、モチーフとなる天然素材の絵柄画像を示す原画像データを用意する段階と、
原画像データを構成する個々の色別レイヤーを印刷するために用いられるN種類のインキの組み合わせを1インキセットとして、それぞれ特定の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットを複数通り用意する段階と、
各インキセットについて、その構成要素となるN種類のインキをそれぞれ所定の濃度値で所定の順序で印刷したときに得られる第1の色と、標準表色系を構成するM種類のパラメータ(M=Nでも、M≠Nでもよい)をそれぞれ所定値に設定したときに得られる第2の色と、が等しくなるように、N種類のインキの濃度値の組み合わせとM種類のパラメータの組み合わせとの間の対応関係を定義した色対応情報をデジタルデータとして用意する段階と、
複数通りのインキセットの中から、所望の天然素材に対応するインキセットを選択する段階と、
原画像データと選択したインキセットについての色対応情報とをコンピュータに与え、原画像データを構成するN枚の色別レイヤーに分散して定義されている原画像上の個々の画素の濃度値を、色対応情報を用いて標準表色系を構成するM種類のパラメータに変換する処理を実行させ、標準表色系画像データを生成する段階と、
この生成された標準表色系画像データに、所定の画像出力装置の色特性に応じた補正を加える処理をコンピュータに実行させ、補正後のデータを当該画像出力装置に与え、原画像データに基づいて、選択したインキセットを用いて印刷を行ったときの結果を予測する画像を出力する段階と、
を行うようにしたものである。
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第8の態様に係る建材の色合い決定作業支援方法において、
印刷対象となる媒体ごとに異なるインキセットを用意し、印刷対象となる媒体を考慮して、インキセットの選択を行うようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第8または第9の態様に係る建材の色合い決定作業支援方法において、
印刷後に施される加工の内容ごとに異なるインキセットを用意し、印刷後に施される加工の内容を考慮して、インキセットの選択を行うようにしたものである。
本発明によれば、予め個々の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適した特色インキの組み合わせを、それぞれインキセットとして用意しておくことができ、オペレータは、特定の天然素材を示す見出しを指定するだけで、所望の特色インキの組み合わせを選択することができる。しかも、個々のインキセットごとに、それぞれ標準表色系との対応関係を示す色対応情報がデータとして用意されているので、特定のインキセットを選択すると、当該インキセットに係る特色インキの組み合わせを用いて原画像を印刷した場合に実際に得られるであろう建材の色合いを、ディスプレイの画面上やプリンタによる出力結果として、事前に確認することができる。必要に応じて、別なインキセットを選択しなおせば、新たに選択されたインキセットを用いた印刷結果の確認を直ちに行うことができるので、色合い決定作業の負担は大幅に軽減される。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.一般的な建材印刷の方法 >>>
図1は、原画像データDに基づく通常の印刷および建材用の印刷のプロセスの概念を示す図である。原画像データDは、図示の例では、4枚の色別レイヤーL1〜L4によって構成されている。個々の色別レイヤーは、それぞれ所定の濃度値が定義された多数の画素配列からなる。4枚の色別レイヤーL1〜L4は、いずれも同一の画素配列からなり、原画像を構成する個々の画素は、4枚の色別レイヤーの同一位置に配置された4つの画素の濃度値の組み合わせによって表現されることになる。
原画像データDが、通常の印刷物の画像を含むデータの場合、各色別レイヤーL1〜L4に、それぞれCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)なる4色のインキを対応させて印刷を行えばよい。たとえば、雑誌、ポスター、商品パッケージなど、ごく一般的な商用印刷物を印刷するために用意された原画像データの場合、通常、CMYK系の4色のインキを用いた印刷を行ったときに、意図する色合いをもった画像が印刷されることになる。
なお、4色のインキを順に刷り重ねると、先に印刷したインキ層は、後に印刷したインキ層の下層になるため、印刷の順序を変えると、最終的に得られる印刷物の色合いが若干異なる。したがって、実用上は、4色のインキについての印刷順序を予め定めておく必要がある。たとえば、シアンCのインキで色別レイヤーL1を印刷し、次に、マゼンタMのインキで色別レイヤーL2を印刷し、更に、イエローYのインキで色別レイヤーL3を印刷し、最後に、ブラックKのインキで色別レイヤーL4を印刷する、というような順序で印刷工程が行われる。
これに対して、建材用の印刷では、CMYK系のインキではなく、図示のとおり、別な系統の特色インキ(ここでは、各インキをWXYZと呼ぶが、CMYKのYと、WXYZのYとは、全く別のインキである。)が用いられることが多い。特に、木材や石材などの天然素材をモチーフにした絵柄画像を、紙やフィルム上に印刷して建材を製造する際には、個々の天然素材の印刷に適した特色インキの組み合わせを利用するのが一般的である。図示の例では、各色別レイヤーL1〜L4に、それぞれWXYZなる4色の特色インキを対応させて印刷を行うことになる。この場合も、印刷順を考慮する必要があるため、たとえば、特色インキWで色別レイヤーL1を印刷し、次に、特色インキXで色別レイヤーL2を印刷し、更に、特色インキYで色別レイヤーL3を印刷し、最後に、特色インキZで色別レイヤーL4を印刷する、というような順序で印刷工程が行われる。
このように、木材や石材などの天然素材をモチーフにした建材を印刷する場合に、CMYK系のインキではなく、特色インキWXYZを用いるのは、木材や石材などの天然素材の色合いが特定の色領域に偏っているためである。たとえば、木目柄をモチーフにした床材や壁材の絵柄の色は、茶系の色領域に偏在しているので、この茶系の色表現に適したインキを用いた印刷を行う方が好ましい。図2は、CMYK系のインキにより再現可能な色領域と、特色インキWXYZにより再現可能な色領域との対比を示す図である。図示のとおり、CMYKなる4色のインキを用いた印刷では、再現可能な色領域は非常に広く、実用上、人間が認識できるほとんどの色領域をカバーしていることになる。これに対して、建材印刷用の特色インキWXYZを用いた印刷では、図にハッチングを施して示すように、再現可能な色領域はかなり限定されるが、これは換言すれば、図にハッチングを施して示す色領域でカバーできる画像であれば、CMYKなる4色のインキの代わりに、特色インキWXYZを用いた印刷を行う方が、安定した印刷結果が得られることを意味する。
以上のような理由から、木材や石材などの天然素材をモチーフにした建材印刷では、通常、特色インキWXYZが用いられている。もっとも、ここで言う特色インキWXYZの具体的な色は、表現対象となる天然素材によって千差万別である。たとえば、同じ原画像データDを用いて壁紙を印刷したとしても、特色インキW1,X1,Y1,Z1の組み合わせで印刷すると、オーク材の色合いをもつ壁紙が得られるが、特色インキW2,X2,Y2,Z2の組み合わせで印刷すると、チェリー材の色合いをもつ壁紙が得られる、というように、最終的な建材の色合いは、用いる特色インキの組み合わせによって大きく異なる。
木目柄の建材を印刷する場合、実際の天然木の木目柄を写真撮影し、これに種々のレタッチ処理やエンドレス処理(同一の柄を二次元平面上に繰り返し配置した場合に、境界線を跨いで連続した模様が得られるように画像を修正する処理)を施し、処理後の画像データを原画像データDとして利用するのが一般的である。このような原画像データDは、たとえば図1に示すように、4枚の色別レイヤーL1〜L4によって構成されることになるが、この時点では、各色別レイヤーL1〜L4は、いずれも特定の色との直接的な関係はもっていない。この原画像データDを利用して、どのような色合いの建材を印刷するかは、印刷作業を行う担当者の判断に委ねられることになる。
たとえば、上述の例の場合、この担当者が、特色インキW1,X1,Y1,Z1の組み合わせを選んで印刷すると、オーク材の色合いをもつ建材が得られ、特色インキW2,X2,Y2,Z2の組み合わせを選んで印刷すると、チェリー材の色合いをもつ建材が得られる。したがって、実際には、天然のオーク材の木目柄を写真撮影することにより得られた原画像データを用いて、チェリー材の色合いをもつ建材を印刷するようなことも可能である。この場合、木目模様はオーク材の風合いをもつが、色合いはチェリー材というような建材が製造されることになる。もちろん、天然木をそのまま加工して得られる建材では、このようなことは起こり得ないが、印刷により製造するのであれば、顧客の要望に応じて、任意の絵柄、任意の色合いをもった建材を自由に製造することができる。
実際、建材の印刷を請け負う印刷会社には、建材メーカーなどの顧客から種々の要望が寄せられる。たとえば、「原画像データDの絵柄を用いたオーク調の壁紙」というような希望が寄せられた場合、熟練した印刷担当者が、長年の経験を頼りに、顧客の要望に合致するような特色インキW1,X1,Y1,Z1の組み合わせを決定する作業を行う必要がある。そして、こうして決定した特色インキW1,X1,Y1,Z1を用いて実際に試し刷りを行い、これを顧客に提示する。通常、1回目の試し刷りで、顧客の満足する結果が得られることは希であり、「もう少し赤みを強くして欲しい」というような色合いを修正する要望が顧客から出されることになる。このような修正要求に応じて、担当者は、特色インキの配合を若干変える調整を行い、たとえば、特色インキW1,X2,Y1,Z2を用いて2回目の試し刷りを行い、これを顧客に提示することになる。このような試し刷りを繰り返す作業は、印刷現場での作業負担を重くし、時間的なロスも大きなものになる。
<<< §2.本発明の基本原理 >>>
さて、上述の§1では、建材印刷における色合いの決定作業(用いるインキの組み合わせの決定方法)の一般的なプロセスを簡単に説明した。本発明は、このような色合いの決定作業の負担を軽減させるための支援手法に係るものである。
本発明を実施する際には、まず、複数通りのインキセットを予め用意しておく。ここで、1つのインキセットは、原画像データを構成する個々の色別レイヤーを印刷するために用いられるインキの組み合わせを意味する。たとえば、図1に示す例のように、4枚の色別レイヤーL1〜L4によって構成される原画像データDを用いて印刷を行う場合、4種類のインキの組み合わせが1つのインキセットになる。しかも、個々のインキセットは、それぞれ特定の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせによって構成するようにする。
図3は、合計12通りのインキセットを用意した例を示す模式図である。図示のとおり、インキセット11〜13は、オーク材用のセットであり、いずれもオーク材の色合いを再現するのに適した4種類のインキの組み合わせから構成されている。たとえば、図1に示す原画像データDを、図3に示すインキセット11を用いて印刷する場合、色別レイヤーL1はインキW11で印刷され、色別レイヤーL2はインキX11で印刷され、色別レイヤーL3はインキY11で印刷され、色別レイヤーL4はインキZ11で印刷されることになる。そして、この場合、印刷された建材は、オーク材の色合いをもったものになる。別言すれば、インキセット11を構成する4種類のインキW11,X11,Y11,Z11は、原画像データDを印刷したときに、オーク材の色領域を再現するのに適した特色インキの組み合わせになっている。ここで、インキセット12を構成する4種類のインキW12,X12,Y12,Z12や、インキセット13を構成する4種類のインキW13,X13,Y13,Z13も、オーク材の色領域を再現するのに適した特色インキの組み合わせになっているが、各インキセットごとに、特色インキの配合が若干異なっている。したがって、インキセット11,12,13は、オーク材用のインキセットのバリエーションということができ、このいずれを用いてもオーク材に適した色合いが得られるが、細かな色合いは個々のバリエーションごとにそれぞれ異なる。
図3には、この他、チェリー材用のインキセット21〜23、メイプル材用のインキセット31〜33、ローズウッド材用のインキセット41〜43を用意した例が示されている。ここでは、説明の便宜上、4種類の木材の色合いを再現するのに適したインキセットを示すが、実用上は、より多種類の木材についてのインキセットを用意することが可能であり、木材だけではなく、石材についてのインキセットを用意することも可能である。また、図3では、1つの木材用のインキセットにそれぞれ3通りのバリエーションを用意した例を示したが、実用上は、より多数のバリエーションを用意しておいた方が好ましい。ここでは、これらのインキセットを構成する各インキに、それぞれユニークなインキ識別コードが付されているものとする。たとえば、インキセット11を構成する4種類のインキW11,X11,Y11,Z11における記号「W11,X11,Y11,Z11」は、それぞれユニークなインキ識別コードである。
このようなインキセットは、熟練した印刷担当者が、長年の経験を利用して、予め用意しておくようにする。前述したとおり、熟練した印刷担当者であれば、特定の木材あるいは石材の色領域を再現するのに適した特色インキの組み合わせを把握しているので、その経験を生かして、原画像データDの印刷に用いるために、図3に示すような複数通りのインキセットを用意することができる。もちろん、実際に印刷を行いながら、試行錯誤で、図3のようなインキセットを用意してもかまわない。
なお、これらのインキセットは、必ずしも直ちに利用可能な物理的な特色インキの状態で用意しておく必要はなく、必要に応じて、その都度配合することができれば十分である。一般に、個々の特色インキは、市販のCMYK系インキを特定の配合割合で混合することにより作成される。たとえば、インキW11は、「A社製の型番A1234‐Yellowインキを30%と、B社製の型番B5678‐Magentaインキを70%と、を混合したもの」というように、原材料となる市販インキの型番および配合割合を示すことにより特定することができる。したがって、実用上は、図3に示されている個々の特色インキは、常に現物が用意されている必要はなく、原材料となるインキの型番および配合割合が定まっており、必要に応じていつでも配合できるような状態になっていればよい。
さて、この図3に示すような種々のインキセットが予め用意され、しかも個々のインキセットがそれぞれ特定の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせから構成されていれば、個々の天然素材を示す情報を見出しとして提示することにより、特定の天然素材の色合いをもった建材を印刷するために適したインキセットを容易に選択することが可能である。たとえば、顧客から、オーク調の色合いの壁紙が欲しい旨の要望が出された場合であれば、現場の印刷担当者ではなく、たとえば、営業担当者であっても、図3に示すインキセットの中から、インキセット11,12あるいは13を選択することができる。本発明の第1のポイントは、このように、予め用意されたインキセットの中から、当該インキセットに対応する天然素材を示す見出し情報に基づいて、顧客の意図する範疇のインキセットを容易に選択できるようにした点にある。
そして、本発明の第2のポイントは、こうして特定のインキセットを選択すると、当該インキセットを用いて実際に印刷を行う前に、コンピュータを利用して、印刷結果を予測する画像を提示することができる点である。たとえば、図1に示す原画像データDを、インキセット11を用いて印刷した結果を確認したい場合、通常は、4枚の刷版を作成し、特色インキW11,X11,Y11,Z11を用いて試し刷りを行う必要があるが、本発明では、そのような試し刷りを行うことなしに、コンピュータに接続されたディスプレイ画面上で印刷結果予測画像を確認したり、コンピュータに接続されたプリンタから印刷結果予測画像を出力することが可能になる。
このような印刷結果予測画像を提示する具体的な手法は、§3で詳述するが、本発明を利用すれば、印刷会社の営業担当者は、現場の印刷担当者の手を煩わせることなしに、顧客からの要望に合致すると思われるインキセットを選択し、この選択したインキセットを用いて原画像を印刷した場合の印刷結果予測画像を、コンピュータ用ディスプレイ画面上の画像あるいはプリンタによる出力物として得ることができるようになる。そこで、異なる複数通りのインキセットを用いた印刷結果予測画像を顧客に提示し、顧客に好みの画像を選択してもらえば、顧客の要望に沿った色合いを決定することができる。
もちろん、既存のインキセットでは顧客の要望に十分に対応できない場合には、顧客の要望に最も近いインキセットを選択した後、現場の印刷担当者に細かな色調整を行わせるようなことも可能である。
<<< §3.本発明に係る色合い決定作業支援装置 >>>
図4は、本発明の一実施形態に係る建材の色合い決定作業支援装置100の基本構成を示すブロック図である。この支援装置100は、§2で述べた作業、すなわち、木材や石材などの天然素材をモチーフにした絵柄画像を印刷して建材を製造する際に、色あいを決定する作業を支援する機能を有しており、図示のとおり、色対応情報格納部110、インキセット構成情報格納部120、インキセット選択部130、原画像データ格納部140、データ変換部150、画像データ出力部160なる各構成要素を有している。もっとも、これらの各構成要素は、実際にはコンピュータによって実現されるものであり、実際には、この支援装置100は、パソコンなどの汎用コンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより実現することができる。
原画像データ格納部140は、建材に印刷する絵柄(木目柄や石目柄)の原画像データを格納する構成要素である。ここでは、各原画像データが、4枚の色別レイヤーL1〜L4によって構成されている例を示すが、原画像データを構成する色別レイヤーの数は、必ずしも4枚に限定されるものではなく、複数N枚の色別レイヤーによって構成された原画像データが用意されていればよい。要するに、原画像データ格納部140に格納されている原画像データDは、それぞれ所定の濃度値が定義された多数の画素の配列からなる複数N枚の色別レイヤーから構成され、モチーフとなる天然素材の絵柄画像を示すデータであれば足りる。なお、図4の原画像データ格納部140のブロック内には、4枚の色別レイヤーL1〜L4によって構成された原画像データDが1つだけ格納されている状態が示されているが、実用上は、種々の絵柄をもった多数の原画像データを原画像データ格納部140に格納しておくことになる。
一方、インキセット構成情報格納部120には、図3に示すような個々のインキセットの構成を示すインキセット構成情報が格納されている。既に§2で述べたとおり、本発明における「インキセット」とは、原画像データ格納部140内の原画像データを構成する個々の色別レイヤーを印刷するために用いられるN種類(図示の例では4種類)のインキの組み合わせを示すものである。インキセット構成情報は、インキセットの構成要素となるインキを特定するための情報である。前述したとおり、個々のインキにユニークなインキ識別コードを付与しておけば、構成要素となるインキのインキ識別コードを羅列した情報をインキセット構成情報として用いることができる。たとえば、図3に示すインキセット11についてのインキセット構成情報は、「W11,X11,Y11,Z11」という4種類のインキのインキ識別コードによって構成することができる。
もっとも、インキセット構成情報は、当該インキセットの構成要素となる個々のインキを特定することができる情報であれば、どのような情報を用いてもかまわない。たとえば、インキ識別コードを用いる代わりに、構成要素となる個々のインキを配合するための原材料となるインキの型番および配合割合を用いることも可能である。たとえば、インキW11を特定するのであれば、「W11」なるインキ識別コードを用いる代わりに、「A社製の型番A1234‐Yellowインキを30%と、B社製の型番B5678‐Magentaインキを70%と、を混合したもの」というような情報を用いることが可能である。
色対応情報格納部110には、インキセット構成情報格納部120内に定義されている個々のインキセットのそれぞれについての色対応情報が格納されている。ここで、あるインキセットについての色対応情報とは、「当該インキセットの構成要素となるN種類のインキをそれぞれ所定の濃度値で所定の順序で印刷したときに得られる第1の色と、標準表色系を構成するM種類のパラメータ(M=Nでも、M≠Nでもよい)をそれぞれ所定値に設定したときに得られる第2の色と、が等しくなるように、前記N種類のインキの濃度値の組み合わせと前記M種類のパラメータの組み合わせとの間の対応関係を定義した情報」と言うことができる。
ここでは、この色対応情報の実体を、具体的な例に基づいて説明しよう。一般に、色を定義する基準として、いくつかの標準表色系が用いられているが、印刷の分野で最も広く利用されている標準表色系は、L表色系である。このL表色系では、すべての色は、L,a,bの3つのパラメータ値の組み合わせによって表現される。色対応情報格納部110内に格納される色対応情報とは、個々のインキセットの構成要素となるインキの濃度値(階調値)で表現される特定の色を、L表色系で表現するための表現形式の変換規則というべきものである。
たとえば、標準表色系としてL表色系を用いる場合に、インキセット11についての色対応情報がどのような情報になるのかを考えてみよう。インキセット11は、図3に示すように、4種類のインキW11,X11,Y11,Z11の組み合わせである。いま、個々のインキの印刷時の濃度を、0〜255の256段階(8ビット)で制御できるとすると、このインキセット11に含まれる4種類のインキの各濃度値の組み合わせによって、256通りの色を再現することが可能になる。インキセット11についての色対応情報とは、この256通りの色のそれぞれについての、L表色系での表現方法を示す情報ということになる。
より具体的には、4種類のインキW11,X11,Y11,Z11の濃度値を、それぞれw,x,y,z(いずれも0〜255の値)として、この順序で紙面に印刷を行ったとすると、紙面上には何らかの色が表現されることになる。この色を、L表色系を用いて表現した場合に(l,a,b)なるパラメータの組み合わせになったとすれば、(w,x,y,z)と(l,a,b)との対応関係が定義できる。別言すれば、4種類のインキW11,X11,Y11,Z11を、それぞれ濃度値(w,x,y,z)で、この順序で印刷したときに得られる第1の色と、L表色系を構成する3種類のパラメータをそれぞれ所定値(l,a,b)に設定したときに得られる第2の色と、が等しくなったわけである。これにより、インキの濃度値の組み合わせ(w,x,y,z)とパラメータの組み合わせ(l,a,b)とが対応づけられることになる。
上述の例の場合、原理的には、インキセット11の色対応情報は、W11,X11,Y11,Z11なる4種類のインキの濃度値のすべての組み合わせ(256通りの組み合わせ)について、それぞれ所定のパラメータ(l,a,b)を対応づける情報である必要があるが、実用上は、離散的な濃度値の組み合わせについて、それぞれ対応するパラメータを定義しておき、補間法を適用することにより、正確なパラメータを演算で求めるようにすればよい。したがって、実用上は、256通りの対応関係をすべて定義する必要はない。
特定のインキセット11についての色対応情報を求めるには、W11,X11,Y11,Z11なる4種類のインキを用いて、実際に種々のグラデーションパターンを印刷し、この印刷画像の各部の色を測色器を用いて測定し、L表色系のパラメータ(l,a,b)を求めればよい。このように、実際の印刷物上の特定色を測色器で測定して、当該特定色についてのL表色系のパラメータを求める方法は、公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。なお、色対応情報は、インキの濃度値の組み合わせ(w,x,y,z)とパラメータの組み合わせ(l,a,b)との対応関係を示すテーブルとして用意することもできるし、任意の濃度値の組み合わせ(w,x,y,z)に基づいて、特定のパラメータの組み合わせ(l,a,b)を算出する演算式として用意することもできる。
色対応情報格納部110には、個々のインキセットごとに、それぞれ上述した色対応情報が格納されることになる。個々のインキセットごとにそれぞれ色対応情報を求める作業は、比較的労力を必要とする作業になるが、一度求めてしまえば、以後、色対応情報格納部110内に格納して繰り返し利用することが可能になる。
一方、インキセット選択部130は、オペレータに、インキセット構成情報格納部120内に定義されている複数通りのインキセットを提示し、その中から所望のインキセットを選択させる処理を行う機能を有する。前述したとおり、インキセット構成情報格納部120内に定義されている各インキセットは、それぞれ特定の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットである。そこで、インキセット選択部130は、オペレータにインキセットを提示する際に、当該インキセットに対応する天然素材を示す情報を見出しとして提示する機能を有している。たとえば、図3に示すインキセット11〜13については、「オーク材」用のインキセットである旨の見出しが提示されることになる。オペレータは、このような見出しを利用して、顧客の要望に合致するインキセットを容易に選択することができる。
データ変換部150は、色対応情報格納部110から、オペレータが選択したインキセットについての色対応情報を読み出し、原画像データ格納部140から取り出した特定の原画像データDを構成するN枚の色別レイヤーに分散して定義されている原画像上の個々の画素の濃度値を、読み出した色対応情報を用いて、標準表色系を構成するM種類のパラメータに変換することにより、標準表色系画像データSを生成する処理を行う。
たとえば、オペレータが、インキセット選択部130に対して、図3に示すインキセット11を選択する指示を与えたとしよう。この場合、色対応情報格納部110からデータ変換部150に対して、選択されたインキセット11についての色対応情報が読み出される。そして、データ変換部150は、原画像データDを構成する個々の画素の濃度値を、この色対応情報に基づいて、標準表色系画像データSに変換する処理を実行することになる。より具体的な例で説明すると、原画像データDを構成する各色別レイヤーL1,L2,L3,L4上の特定位置における画素の各レイヤーの濃度値が(w,x,y,z)であったとすると、インキセット11についての色対応情報を利用することにより、この濃度値(w,x,y,z)は、L表色系の特定のパラメータの組み合わせ(l,a,b)に変換されることになる。標準表色系画像データSは、このようなL表色系のパラメータによって表現された画素の集合ということになる。いわば、データ変換部150は、WXYZ系で表現されていた画像を、L表色系で表現された画像に変換する処理を行ったことになる。
こうして得られた標準表色系画像データSは、画像データ出力部160に与えられる。この画像データ出力部160は、標準表色系画像データSを、支援装置100に接続されたディスプレイ210やプリンタ220に出力するための構成要素である。但し、画像データ出力部160は、この標準表色系画像データSを、各画像出力装置に出力する際に、当該画像出力装置の色特性に応じた補正を加える処理を行う。
たとえば、ディスプレイ210に対して標準表色系画像データSを出力する際には、ディスプレイ210に固有の色特性を考慮した補正を施し、ディスプレイ出力用データSd(RGB系のデータ)の形で出力を行う。同様に、プリンタ220に対して標準表色系画像データSを出力する際には、プリンタ220に固有の色特性を考慮した補正を施し、プリンタ出力用データSp(CMYK系のデータ)の形で出力を行うことになる。
このような画像データ出力部160における補正は、一般に、ICCプロファイル(International Color Consortium Profile)を用いた色補正処理として知られている処理である。具体的には、ディスプレイ210に固有の色特性を示すICCプロファイルや、プリンタ220に固有の色特性を示すICCプロファイルを、画像データ出力部160内に用意しておき、これらICCプロファイルを利用して、ディスプレイ出力用データSdを得るための色補正処理や、プリンタ出力用データSpを得るための色補正処理が実行されることになる。このICCプロファイルを利用した色補正処理も公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
結局、原画像データ格納部140内に格納されていた原画像データDは、データ変換部150において、標準表色系画像データSへと変換され、更に、画像データ出力部160において、ディスプレイ出力用データSdもしくはプリンタ出力用データSpに変換されることになる。各ICCプロファイルが正確なものであれば、原理的には、ディスプレイ210の画面上に表示された画像と、プリンタ220により紙面上に出力された画像の色合いは同一のものになる。
図5は、このような変換プロセスを示すブロック図である。原画像データDは、原画像データ格納部140内に用意されているデータであり、オペレータが選択した特定のインキセットを用いて印刷されることになる画像である。選択されたインキセットがWXYZなる4種類のインキから構成されるものとすれば、この原画像データDは、WXYZ系の画像データということができる。この原画像データDは、データ変換部150において、L表色系の標準表色系画像データSへと変換される。この変換には、色対応情報格納部110に格納されていた色対応情報(オペレータが選択した特定のインキセットについての色対応情報)が利用されることになる。そして、最終的な画像をディスプレイ210の画面上で確認する場合には、画像データ出力部160において、標準表色系画像データSがRGB系のディスプレイ出力用データSdへと変換される。この変換には、画像データ出力部160内に組み込まれていたディスプレイ用ICCプロファイルが利用されることになる。一方、最終的な画像をプリンタ220によって紙面上に出力させて確認する場合には、画像データ出力部160において、標準表色系画像データSがCMYK系のプリンタ出力用データSpへと変換される。この変換には、画像データ出力部160内に組み込まれていたプリンタ用ICCプロファイルが利用されることになる。
<<< §4.本発明に係る色合い決定作業支援方法 >>>
続いて、図4に示す支援装置100を用いて建材の色合いを決定する作業の手順を説明する。既に述べたとおり、実用上は、原画像データ格納部140内には、モチーフとなる天然素材の絵柄画像を示す原画像データDが複数通り用意されている。そこで、オペレータは、顧客の要望に応じて、建材に用いる特定の原画像データDを選択する。続いて、インキセット選択部130からの提示に応じて、インキセット構成情報格納部120内に定義されている複数通りのインキセットの中から、顧客の要望に応じた天然素材に対応するインキセットを選択する。たとえば、「オーク調」という要望があれば、図3に示すインキセット11〜13のいずれか1つを選択すればよい。
こうして、特定の原画像データDと、特定のインキセットが選択されると、選択されたインキセットについての色対応情報が、色対応情報格納部110からデータ変換部150へと読み出され、データ変換部150におけるデータ変換処理が実行される。すなわち、原画像データDに対して、読み出された色対応情報に基づく画像変換処理が行われ、標準表色系画像データSが生成されることになる。
ここでオペレータは、画像データ出力部160に対して、画像をディスプレイ210の画面上に出力させるか、あるいは、プリンタ220を利用して紙面上に出力させるか、を指示する。ディスプレイ210上への出力が指示された場合には、標準表色系画像データSはディスプレイ出力用データSdに変換されてディスプレイ210へ与えられることになり、プリンタ220を用いた紙面上への出力が指示された場合には、標準表色系画像データSはプリンタ出力用データSpに変換されてプリンタ220へ与えられることになる。
このような手順により、ディスプレイ210の画面上、もしくはプリンタ220から出力された紙面上に、選択したインキセットを用いて原画像データDを印刷した場合の印刷結果予測画像が提示される。オペレータは、この画像を顧客に提示して確認してもらうことができる。顧客の要望に合致しなかった場合には、インキセット選択部130に対して、別なインキセットを選択する指示を与えれば、当該別なインキセットを用いて印刷した場合の印刷結果予測画像を得ることができる。かくして、最終的に顧客の要望に合致した結果が得られるまで、もしくはそれに近い結果が得られるまで、新たなインキセットを選択して、印刷結果予測画像を提示する作業を繰り返してゆけばよい。
こうして、最終的に顧客の要望に合致した結果、もしくはそれに近い結果が得られた場合には、インキセット構成情報格納部120内のインキセット構成情報を参照することにより、最終的に選択したインキセットを構成するインキを特定することができるので、これらのインキを用いて実際の印刷を行うことができる。当該印刷の結果が、顧客の要望に合致していれば、そのまま正式な建材作成プロセスを進めればよいが、実用上は、この段階で試し刷りを行い、現場の印刷担当者による細かな色合い修正作業を行うようにするのが好ましい。顧客は、既に、この試し刷りの結果に近い画像を、ディスプレイ210上の画面もしくはプリンタ220から出力された紙面上で確認しているので、試し刷りの結果は顧客の要望にかなり近いものになる。
<<< §5.実用的なインキセットの種類と提示方法 >>>
最後に、本発明を実施する上で用意する実用的なインキセットの種類とその提示方法の一例を述べておく。
既に述べたとおり、本発明で定義されるインキセットは、それぞれ特定の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせである。実用上、建材に利用される天然素材の絵柄画像は、木目柄と石目柄がほとんどである。そこで、実際には、予め用意するインキセットとしては、種々の木材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットと、種々の石材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットを用意しておくようにし、インキセット選択部130が、木材および石材を示す大見出しと、特定の木材および特定の石材を示す中見出しと、を提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせるようにしておくと便利である。
図6は、このような大見出しと中見出しとにより、用意されたインキセットを提示した画面の一例を示す図である。インキセット選択部130によって、たとえば、ディスプレイ210の画面上に、この図6に示すような画面を表示させ、オペレータに、マウスなどの入力機器で、所望の木材もしくは石材を選択する操作を行わせればよい。図示の例の場合、<木目>および<石目>という文字列が、大見出しを構成している。この大見出しを提示することにより、画面の左側には木目柄用のインキセットが列挙され、画面の右側には石目柄用のインキセットが列挙されていることを、オペレータに認識させることができる。
一方、木目に関しては、オーク材、チェリー材、メイプル材、ローズウッド材なる中見出しが表示されており、石目に関しては、マーブル材、グラニット材なる中見出しが表示されている。この実施例では、オペレータが、これらの中見出しのいずれかをマウスクリックなどで選択すると、当該中見出しに該当する素材用に用意されたインキセットのバリエーションが表示されるようになっている。たとえば、オペレータが、「オーク材」なる中見出しをクリックすると、図7に示すように、「オーク材」のバリエーションとして用意されているインキセット11〜13が表示される。この図7に示されている「インキセット11」、「インキセット12」、「インキセット13」なる見出しは、1つのインキセットを選択するための小見出しということになる。ここで、オペレータが、「インキセット11」なる小見出しをクリックすると、最終的に「インキセット11」の選択作業が完了することになる。
結局、この例では、同一の木材についての複数通りのインキセットと、同一の石材についての複数通りのインキセットとが用意されていることになり、個々のインキセットを示す小見出しを提示することにより、特定のインキセットの選択が可能になっている。
もちろん、図6および図7に示した表示例は、説明の便宜を考慮した非常に単純な例であり、本発明を実施する上での表示形式は、このような例に限定されるものではない。たとえば、第1段階のステップにおいて、<木目>および<石目>という大見出しのみを提示していずれかをクリックさせ、第2段階のステップにおいて、木目または石目のうちの選択された一方についてのみの中見出しを提示し、第3段階のステップにおいて、小見出しを提示するような方法をとることもできる。あるいは、大見出しから小見出しに至るまで、同一画面上にツリー構造をもったメニューで表示し、直接小見出しをクリックさせるような方法をとってもかまわない。
なお、図7に示す例では、個々のインキセットを示す小見出しとして、「インキセット11」、「インキセット12」、「インキセット13」のような意味のない文言を用いたが、実際には、たとえば、「オーク材(標準)」、「オーク材(赤)」、「オーク材〔黄)」のように、意味のある文言を用いるのが好ましい。この場合、「オーク材(標準)」なる小見出しで選択されるインキセット11は、標準的なオーク材の色合いを再現するのに適したインキセットとなっており、「オーク材(赤)」なる小見出しで選択されるインキセット12は、若干赤みの強いオーク材の色合いを再現するのに適したインキセットとなっており、「オーク材(黄)」なる小見出しで選択されるインキセット12は、若干黄色みの強いオーク材の色合いを再現するのに適したインキセットとなっている。このように、小見出しに意味をもたせておけば、まず、「オーク材(標準)」を選択して、印刷結果予測画像を提示し、顧客が「もう少し赤っぽく」のような要望を出してきた場合には、「オーク材(赤)」の選択を行う、などの修正を容易に行うことができる。
また、天然素材を示す情報としては、必ずしも、「オーク材」、「チェリー材」、「メイプル材」、「ローズウッド材」のような材質名を用いる必要はない。たとえば、「白木」、「唐木」、「濃色材」、「針葉樹」のような分類名を用いることもできる。
なお、建材の絵柄画像を印刷する場合、必ず何らかの物理的な媒体上に印刷を行うことになるが、印刷対象となる媒体ごとに、用いるインキが異なる場合も少なくない。特に、紙媒体上に印刷する際に用いるインキと、フィルム媒体上に印刷する際に用いるインキとでは、通常、インキ成分が全く異なる。したがって、実用上は、紙に印刷する場合のインキセットと、フィルムに印刷する場合のインキセットとは、全く異なるインキセットにせざるを得ない。このように、印刷対象となる媒体ごとに異なるインキセットを用意する場合には、インキセット選択部130によって、印刷対象となる媒体を示す見出しを提示させ、特定のインキセットの選択を行わせるようにするのが好ましい。
また、建材の場合、絵柄画像を印刷した後、種々の加工を施すことが少なくない。たとえば、印刷後に樹脂を含浸させる加工を行ったり、表層に別な樹脂層を塗布形成する加工を行ったりすることは、ごく一般的に行われている。また、絵柄画像の印刷層を別な媒体に転写するプロセスを行う場合もある。このように、印刷後に施される加工の内容が異なると、当該加工の内容に応じて、それぞれ異なる成分のインキを用意する必要が生じる。このように、印刷後に施される加工の内容に応じて異なるインキセットを用意する場合には、インキセット選択部130によって、印刷後に施される加工の内容を示す見出しを提示させ、特定のインキセットの選択を行わせるようにするのが好ましい。
図8は、このような点を考慮して、印刷対象となる媒体を示す見出し(<紙>および<フィルム>なる見出し)と、印刷後に施される加工の内容を示す見出し(樹脂含浸加工用、表層加工用、転写用なる見出し)を提示させ、特定のインキセットの選択を可能にした実施例を示す図である。図6および図7に示す選択画面に先立って、まず、図8に示すような画面を提示し、印刷対象となる媒体および印刷後に施される加工内容を選択させるようにすれば、印刷対象となる媒体や印刷後に施される加工内容に応じて、異なるインキセットが用意されている場合にも対応することが可能になる。
たとえば、紙媒体に表層加工を行う建材を製造することが前提となっている場合であれば、オペレータは、まず、図8に示す画面上で、左側(紙媒体側)の「表層加工用」なる見出しをクリックする作業を行った後に、前述したように、特定の天然素材に適したインキセットを選択する作業を行えばよい。その結果、紙媒体および表層加工に適したインキセットが選択されることになる。
図9は、このように、印刷対象となる媒体および印刷後に施される加工内容をも考慮して、それぞれ別個のインキセットを用意した場合の階層構造を示す図である(図が繁雑になるのを避けるため、一部、内容の記載を省略した)。この例では、まず、第1階層として、印刷対象媒体が「紙」であるか、「フィルム」であるか、という事項に基づく分類を行い、第2階層として、印刷後に施される加工内容が「樹脂含浸加工」であるか、「表層加工」であるか、「転写」であるか、という事項に基づく分類を行っている。そして、第3階層として、「木目」であるか、「石目」であるか、という事項に基づく分類(前述した大見出しによる分類)を行っており、第4階層として、「オーク材」、「チェリー材」、「メイプル材」、「ローズウッド材」、「マーブル材」、「グラニット材」のような材質名に基づく分類(前述した中見出しによる分類)を行っている。そして、最後の第5階層が、個々のインキセットに対応する。
このような階層構造を定義しておけば、オペレータは、第1階層から順に選択を行ってゆき、最終的に第5階層の特定のインキセットを選択することができる。こうして選択された特定のインキセットは、顧客の要望に応じた色合いを再現するのに適したインキの組み合わせになっているだけではなく、印刷対象となる媒体および印刷後に施される加工内容をも考慮したインキの組み合わせになっている。
原画像データDに基づく通常の印刷および建材用の印刷のプロセスの概念を示す図である。 CMYK系のインキにより再現可能な色領域と、特色インキWXYZにより再現可能な色領域との対比を示す図である。 本発明を実施するために、合計12通りのインキセットを用意した例を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る建材の色合い決定作業支援装置の基本構成を示すブロック図である。 図4に示す支援装置100において行われる画像データの変換プロセスを示すブロック図である。 大見出しと中見出しとにより、用意されたインキセットを提示した画面を示す図である。 図6に示す「オーク材」をクリックすることにより表示される小見出しの画面を示す図である。 印刷対象となる媒体および印刷後の加工内容を示す見出しにより、特定のインキセットの選択を行わせる選択画面の図である。 印刷対象となる媒体および印刷後に施される加工内容をも考慮して、それぞれ別個のインキセットを用意した場合の階層構造を示す図である。
符号の説明
11〜43…各インキセット
100…建材の色合い決定作業支援装置
110…色対応情報格納部
120…インキセット構成情報格納部
130…インキセット選択部
140…原画像データ格納部
150…データ変換部
160…画像データ出力部
210…ディスプレイ
220…プリンタ
D…原画像データ
CMYK…通常の印刷で用いられるインキ
L1〜L4…原画像データを構成する個々の色別レイヤー
S…標準表色系画像データ
Sd…ディスプレイ出力用データ
Sp…プリンタ出力用データ
WXYZ…建材の印刷で用いられる特色インキ
W11〜W43,X11〜X43,Y11〜Y43,Z11〜Z43…特色インキ

Claims (10)

  1. 天然素材をモチーフにした絵柄画像を印刷して建材を製造する際に、色あいの決定作業を支援するための装置であって、
    それぞれ所定の濃度値が定義された多数の画素の配列からなる複数N枚の色別レイヤーから構成され、モチーフとなる天然素材の絵柄画像を示す原画像データを格納する原画像データ格納部と、
    前記原画像データを構成する個々の色別レイヤーを印刷するために用いられるN種類のインキの組み合わせを1インキセットとして、複数通りのインキセットを定義するために、個々のインキセットについて、それぞれ構成要素となるインキを特定するためのインキセット構成情報を格納したインキセット構成情報格納部と、
    前記各インキセットについて、その構成要素となるN種類のインキをそれぞれ所定の濃度値で所定の順序で印刷したときに得られる第1の色と、標準表色系を構成するM種類のパラメータ(M=Nでも、M≠Nでもよい)をそれぞれ所定値に設定したときに得られる第2の色と、が等しくなるように、前記N種類のインキの濃度値の組み合わせと前記M種類のパラメータの組み合わせとの間の対応関係を定義した色対応情報を格納した色対応情報格納部と、
    オペレータに、前記複数通りのインキセットを提示し、その中から所望のインキセットを選択させるインキセット選択部と、
    前記色対応情報格納部から、オペレータが選択したインキセットについての色対応情報を読み出し、前記原画像データ上の個々の画素の濃度値を、読み出した色対応情報を用いて、前記標準表色系を構成するM種類のパラメータに変換することにより、標準表色系画像データを生成するデータ変換部と、
    前記データ変換部により生成された標準表色系画像データに、所定の画像出力装置の色特性に応じた補正を加えて、前記画像出力装置へ出力する画像データ出力部と、
    を備え、
    前記インキセット構成情報格納部には、それぞれ特定の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットの情報が格納されており、
    前記インキセット選択部が、オペレータにインキセットを提示する際に、当該インキセットに対応する天然素材を示す情報を見出しとして提示する機能を有することを特徴とする建材の色合い決定作業支援装置。
  2. 請求項1に記載の支援装置において、
    インキセット構成情報格納部に、種々の木材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットの情報と、種々の石材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットの情報と、が格納されており、
    インキセット選択部が、木材および石材を示す大見出しと、特定の木材および特定の石材を示す中見出しと、を提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせることを特徴とする建材の色合い決定作業支援装置。
  3. 請求項2に記載の支援装置において、
    インキセット構成情報格納部に、同一の木材についての複数通りのインキセットの情報と、同一の石材についての複数通りのインキセットの情報と、が格納されており、
    インキセット選択部が、個々のインキセットを示す小見出しを提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせることを特徴とする建材の色合い決定作業支援装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の支援装置において、
    インキセット構成情報格納部に、印刷対象となる媒体ごとに異なるインキセットの情報が格納されており、
    インキセット選択部が、印刷対象となる媒体を示す見出しを提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせることを特徴とする建材の色合い決定作業支援装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の支援装置において、
    インキセット構成情報格納部に、印刷後に施される加工の内容ごとに異なるインキセットの情報が格納されており、
    インキセット選択部が、印刷後に施される加工の内容を示す見出しを提示することにより、特定のインキセットの選択を行わせることを特徴とする建材の色合い決定作業支援装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の支援装置において、
    インキセット構成情報として、構成要素となる個々のインキを配合するための原材料となるインキの型番および配合割合を用いることを特徴とする建材の色合い決定作業支援装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の支援装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
  8. 天然素材をモチーフにした絵柄画像を印刷して建材を製造する際に、色あいの決定作業を支援する方法であって、
    それぞれ所定の濃度値が定義された多数の画素の配列からなる複数N枚の色別レイヤーから構成され、モチーフとなる天然素材の絵柄画像を示す原画像データを用意する段階と、
    前記原画像データを構成する個々の色別レイヤーを印刷するために用いられるN種類のインキの組み合わせを1インキセットとして、それぞれ特定の天然素材をモチーフにした絵柄画像の色領域を再現するのに適したインキの組み合わせからなるインキセットを複数通り用意する段階と、
    前記各インキセットについて、その構成要素となるN種類のインキをそれぞれ所定の濃度値で所定の順序で印刷したときに得られる第1の色と、標準表色系を構成するM種類のパラメータ(M=Nでも、M≠Nでもよい)をそれぞれ所定値に設定したときに得られる第2の色と、が等しくなるように、前記N種類のインキの濃度値の組み合わせと前記M種類のパラメータの組み合わせとの間の対応関係を定義した色対応情報をデジタルデータとして用意する段階と、
    前記複数通りのインキセットの中から、所望の天然素材に対応するインキセットを選択する段階と、
    前記原画像データと選択したインキセットについての色対応情報とをコンピュータに与え、前記原画像データを構成するN枚の色別レイヤーに分散して定義されている原画像上の個々の画素の濃度値を、色対応情報を用いて前記標準表色系を構成するM種類のパラメータに変換する処理を実行させ、標準表色系画像データを生成する段階と、
    この生成された標準表色系画像データに、所定の画像出力装置の色特性に応じた補正を加える処理をコンピュータに実行させ、補正後のデータを前記画像出力装置に与え、前記原画像データに基づいて前記選択したインキセットを用いて印刷したときの結果を予測する画像を出力する段階と、
    を有することを特徴とする建材の色合い決定作業支援方法。
  9. 請求項8に記載の支援方法において、
    印刷対象となる媒体ごとに異なるインキセットを用意し、印刷対象となる媒体を考慮して、インキセットの選択を行うことを特徴とする建材の色合い決定作業支援方法。
  10. 請求項8または9に記載の支援方法において、
    印刷後に施される加工の内容ごとに異なるインキセットを用意し、印刷後に施される加工の内容を考慮して、インキセットの選択を行うことを特徴とする建材の色合い決定作業支援方法。
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