以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
まず、本発明の抵抗率測定装置で測定される対象となる半導電性部材について説明する。
<半導電性部材>
本発明の抵抗率測定装置で測定される対象となる半導電性部材の一例及び作成方法の一例を説明するが、本発明で用いられる半導電性部材及び半導電性部材の作製方法は以下に限られるものではない。
―半導電性部材の製造方法―
本発明の抵抗率測定装置で測定され、画像形成装置に搭載されうる半導電性部材は、例えば、少なくとも熱可塑性樹脂とカーボンブラックとを混合し、溶融混練して、成形して製造される。加熱温度は、熱可塑性樹脂が軟化する温度であり、溶融混練は、公知の押し出し機等を使用することができる。
使用される熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、等を挙げることができる。
導電剤としては、導電性もしくは半導電性の微粉末が使用でき、所望の電気抵抗を安定して得ることができれば、特に制限はないが、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、表面が酸化処理されたカーボンブラック等のカーボンブラック;アルミニウムやニッケル等の金属;酸化イットリウム、酸化錫等の酸化金属化合物;チタン酸カリウム、LiCl等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性高分子材料;等を例示することができる。これらの導電剤は単独での使用はもちろん、併用して使用してもよい。さらに、必要に応じて分散剤、滑剤などの加工助剤を添加することができる
カーボンブラックの酸化処理の方法としては、(a)高温下で、空気と接触させて反応させる空気酸化法、(b)常温下で、窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、(c)高温下で、空気酸化後、低温でオゾン酸化する方法、等が挙げられる。
この導電剤は、上記熱可塑性樹脂100質量部に対し、5〜50質量部の範囲であることが好ましい。この配合量が、5質量部未満では抵抗が高すぎて、例えば帯電ロールにおいて静電潜像担持体を帯電させるに足る電荷が付与できない場合があり、一方、50質量部を超えると抵抗が低すぎて、ピンホールリーク等の防止に効果がない上、異常放電が発生し、白抜けなどの画質欠陥が発生する場合がある。
なお、別の方法として熱硬化性樹脂としてポリイミド樹脂を使用し、金型内面内への低粘性状態で塗布し、遠心成型により膜厚を均一化する。次に、内面に貼りついている樹脂膜を脱型し、別の金型外側にはめ込む。その後、恒温糟で熱を加え、硬化させて成型させる方法を用いるようにしてもよい。
<半導電性部材>
上述のような製造方法を一例として作製された、本発明の抵抗率測定手段において測定される半導電性部材は、電複写方式の画像形成装置用の部材として、特に限定されずに用いられる。
例えば、像担持体を帯電させる帯電装置、像担持体上に形成されたトナー像を転写するための転写ロール、転写ロールと像担持体との間に挟持搬送されることにより像担持体上のトナー像が転写される転写ベルト、等に用いることができる。
本発明の半導電性部材を、転写ベルト(所謂、中間転写体)として搭載した画像形成装置の一例を図1に示した。
なお、本発明の半導電性部材が搭載される画像形成装置は、図1に示すような画像形成装置に限られるものではない。
図1に示すように、画像形成装置10は、所定方向(図1矢印A方向)に回転される像担持体32を備えている。像担持体32の近傍には、上記回転方向(図1矢印A方向)に沿って順に、像担持体32の表面を一様に帯電させるための帯電装置34、一様に帯電された像担持体32上に画像信号に応じて変調したレーザ光を走査露光して静電潜像を形成するための露光部、BK(ブラック)色に対応したトナーによって静電潜像を現像するための現像器36、Y(イエロー)色に対応したトナーによって静電潜像を現像するための現像器38、M(マゼンタ)色に対応したトナーによって静電潜像を現像するための現像器40、C(シアン)色に対応したトナーによって静電潜像を現像するための現像器42、が備えられている。また、像担持体32の現像器42の設置位置の回転方向(矢印A方向)下流側には、現像器36、現像器38、現像器40、及び現像器42の何れか1つによって現像されたトナー像Tが転写されると共に、転写されたトナー像を記録媒体41へ転写するための転写ベルト46が設けられている。
転写ベルト46は、ベルトローラ48、ベルトローラ50、ベルトローラ54、及びバックアップローラ52によって張架されており、その一部が像担持体32の外周に当接されるように配置されている。転写ベルト46と像担持体32との当接位置には、転写ローラ25が配置されている。転写ローラ25には、電圧印加部26が設けられており、電圧印加部26によって転写ローラ25に電圧を印加して、像担持体32上のトナー像Tのトナーの極性と逆極性の電界を形成することで、静電的に像担持体32上のトナー像を転写ベルト46表面に転写する。
転写ベルト46の周囲には転写電極であるバイアスローラ56、電極ローラ58、剥離爪59、及びベルトクリーナー57が配設されている。
また、バックアップローラ52の周囲であって、転写ベルト46の内側には電極ローラ58が配設されている。
バイアスローラ56近傍には、記録媒体47を貯留するための用紙トレー49、用紙トレー49に貯留されている記録媒体47をバクアップローラ52とバイアスローラ56によって挟持搬送される位置に供給及び案内するためのピックアップローラ42及びローラ53が設けられている。
像担持体32の矢印A方向への回転に伴い、像担持体32は、帯電器34によって表面を一様に帯電される。帯電された像担持体32には、露光部44によって、画像信号に応じたレーザ光が走査露光されて、画像信号に応じた第1色の静電潜像が形成される。この静電潜像は、第1色に応じた現像器(例えば、ブラックであれば現像器36)によって現像されることにより、トナー画像Tが像担持体32上に形成される。
単色画像を形成する場合には、トナー画像Tは像担持体32の回転に伴い、転写ロール25が配置された位置まで移動され、転写ローラ25からトナー画像Tに逆極性の電界を作用させることにより、静電的に転写ベルト46表面に一次転写される。転写ロール25上に一次転写されたトナー画像Tは、所定方向(図1中矢印B方向)に周回する転写ベルト46の搬送に伴って移動し、バックアップローラ52およびトナーの帯電極性と逆極性の転写電圧を印加するバイアスローラ56との間で挟持搬送される位置に達すると、トレー49からピックアップローラ42およびローラ53により案内された記録媒体47に二次転写される。二次転写された記録媒体47上のトナー画像Tは、図示を省略する定着器によって記録媒体47上に定着される。
トナー像が記録媒体47へ転写された後に、転写ベルト46上の残留トナー(未転写トナー)がベルトクリーナー57により除去される。また、転写ベルト46は、クリーニングブレード59によって、トナー粒子や紙粉等の異物が除去される。
ここで、上記説明したように、像担持体32に形成されたトナー像Tを転写ベルト46へ転写するには、電圧印加部26によって転写ロール26に電圧を印加することにより、転写ベルト46を介して像担持体32上のトナー像へ、該トナー像のトナーと逆極性の電界が形成されるように調製している。同様に、転写ベルト46上に一次転写されたトナー像を記録媒体47へ転写するときには、トナーの帯電極性と逆極性の転写電圧を印加するバイアスローラ56と転写ベルト46との間に記録媒体47を挟持搬送することによって、記録媒体47への転写を行っている。
このように、転写時には、転写ベルト46は、転写ロール25またはバイアスローラ56により電圧が印加された状態となるが、転写ベルト46は周方向に所定速度で回転されることから、搬送された状態で、転写ロール25またはバイアスローラ56と接する領域45内に位置する転写ベルト46の領域のみに順次電圧が印加される。
なお、本実施の形態では、本発明の半導電性部材としての転写ベルト46が搭載される画像形成装置10における、転写ベルト46の搬送速度は、転写ベルト46の外周面において104mm/sであるものとして説明する。
画像形成装置10の稼働時には、図2に示すように、転写ベルト46への電圧印加は、転写ベルト46の全領域に施されるのではなく、転写ロール25またはバイアスローラ56と転写ベルト46とが当接する領域45のみに施される。転写ベルト46は、所定速度で周方向に回転されるので、転写ベルト46の同一領域が、転写ロール25またはバイアスローラ56と当接している時間は、転写ベルト46の搬送速度、転写ベルト46の材質、バイアスローラ56または転写ロール25の材質によって異なるが、何れにしても、電子写真方式の画像形成装置10の特性上、2秒以下である。
なお、上述のように、転写ベルト46の搬送速度が104mm/sであり、転写ロール25の回転速度は連れ回りより、ロール径20mmとすると円周長62.8mmから1.7rpsであり、転写ロール25の直径Φが20mm、転写ベルト46の表面硬度が35mN/μm2であり、転写ロール25と像担持体32との間で転写ベルト46が挟持搬送される場合には、該領域45の周方向の長さは1〜2mmとしていることから、このような場合には、転写ベルト46の同一領域が転写ロール25と継続して接触している最小時間は、約10msecとなる。
転写ベルト46の同一領域が転写ロール25と継続して接触している時間、及び転写ベルト46の同一領域がバイアスローラ56と継続して接触している時間は、転写ベルト46の搬送速度、転写ベルト46の材質、転写ベルト46の硬度、転写ベルト46と転写ロール25または転写ベルト46とバイアスローラ56との挟持力等によって異なる値となるが、電子写真方式の画像形成装置の性質状、この接触時間は、一般的に、10msec以上50msec以下である。
転写ロール25は、転写ベルト46との接触面積を面接触で確実に保持するために、ウレタン及び発泡材の軟性状を有している。このように構成された転写ロール25と転写ベルト46との接触する領域における周方向の長さは、通常1〜2mm幅で安定して接触できるように画像形成装置内で予め設定されている。
このため、転写ロール25と転写ベルト46とが同一領域において接触している時間は、転写ロール25と転写ベルト46とが接触している領域における周方向の長さが1mmの場合に、1mm÷104mm/s(搬送速度)で10msecとなる。また、転写ロール25と転写ベルト46とが同一呂言う来において接触している時間は、転写ロール25と転写ベルト46とが接触している領域における周方向の長さが2mmの場合に、2mm÷104mm/sで20msecとなる。
ただし、転写ベルト46の搬送速度はコピーモード等により可変され、たとえば転写ベルト46の搬送速度が遅くなるようなモード(高画質モード等)が選択されて、該モード下において画像形成装置が稼働されル場合には、転写ベルト46の搬送速度は、上記104mm/sの半分の速度の52mm/sとなる場合もある。このような場合には、転写ロール25と転写ベルト46とが同一領域において接触している時間は、転写ロール25と転写ベルト46とが接触している領域における周方向の長さが1mmの場合に、1mm÷52mm/sで20msecとなる。また、転写ロール25と転写ベルト46とが同一領域において接触している時間は、転写ロール25と転写ベルト46とが接触している領域における周方向の長さが2mmの場合に、2mm÷52mm/sで40msecとなる。
このため、画像形成装置における転写ベルト46の搬送速度は、一定ではなく、転写ロール25と転写ベルト46とが同一領域において接触している時間が10msec以上50msec以下の範囲で変動することから、転写ベルト46が画像形成装置に搭載された環境下における抵抗率を測定するためには、電圧印加後10msec以上50msec以下の範囲内において、抵抗率を計測することが必要となる。
このため、抵抗値測定装置において、測定対象となる転写ベルトに、電圧を継続して印加して、電圧経過から50msec以上後に電圧値を測定した測定結果に基づいて抵抗率を測定した場合には、実際に画像形成装置に、測定対象となる転写ベルトを搭載したときの環境とは異なる環境下における抵抗率が測定されるという問題が発生する。
なお、搬送速度が遅い機種の場合には、当然転写ベルト46と転写ロール25とが同一領域において接触している時間は増加することとなる。例えば、転写ベルト46の搬送時間として52mm/sと、26mm/sの双方に対応可能な画像形成装置である場合には、転写ロール25と転写ベルト46とが同一領域において接触している時間は、転写ロール25と転写ベルト46とが接触している領域における周方向の長さが2mmの場合に、100msecとなると考えられる。この場合を含めて考えると、転写ベルト46が画像形成装置に搭載された環境下における抵抗率を測定するためには、電圧印加後10msec以上200msec以下の範囲内において、抵抗率を計測することが必要となるとも考えられ、また、転写ベルト46の摩耗等によって転写ベルト46と転写ロール25との接触面積が大きくなることも考えられることから、抵抗率測定のために、電圧印加後10msec以上2sec以下の期間内に転写ベルト46に流れた電流値に基づいて、転写ベルト46の抵抗率を測定するようにしてもよい。
―抵抗率測定装置―
そこで、本発明の抵抗値測定装置は、半導電性部材としての転写ベルトに、所定のパルス電圧を印加し、前記半導電性部材に印加されたパルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点から10msec以上50msec以下の間に該半導電性部材に流れた電流値に基づいて、半導電性部材の抵抗率を測定することが必須であり、10msec以上40msecがさらに好ましく、10msec以上20msec以下が特に好ましい。
半導電性部材に印加されたパルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点から10msec未満の間に半導電性部材に流れた電流値に基づいて抵抗率を測定すると、計測器の応答速度およびデータ通信速度の制約から最大5msecの時間の遅れ、ばらつきが発生しており安定して計測するのが困難となる、という問題がある。
また、半導電性部材に印加されたパルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点から50msecより経過した後に半導電性部材に流れた電流値に基づいて抵抗率を測定すると、転写ロール25と転写ベルト46とが同一領域において接触している時間より長い時間が経過された後に抵抗率測定が行われる可能性があり、半導電性部材が画像形成装置に搭載された環境下における抵抗率を測定するとはいえない、という問題がある。
図3に示すように、本発明の抵抗率測定装置10は、抵抗率測定対象の半導電性部材に印加するパルス電圧のパルス波形を発生する基準波形電圧発生部12、基準波形発生部12で発生されたパルス波形を増幅して最大電圧値が、該半導電性部材を画像形成装置に搭載したときに転写ロールやバイアスローラ等によって印加される最大電圧値に等しい値となるように、パルス振幅を増幅する増幅器14、基本波形発生部12によって発生されたパルス波形で且つ増幅器14によって増幅されたパルス振幅のパルス電圧を測定対象の半導電性部材としての転写ベルト46に印加するための電圧印加部16、電圧印加部16によって転写ベルト46にパルス電圧が印加されたときに転写ベルト46に流れる電流に含まれるノイズを除去するノイズフィルタ20と、ノイズフィルタ20によってノイズ除去された電流の電流値を測定する電流計17を介して入力された電流値を電圧値に変換するI/V変換器18、及び抵抗率測定装置10の装置各部を制御するための制御部22を含んで構成されている。
制御部22は、基本波形電圧発生部12、電圧印加部16、及びI/V変換器18に信号授受可能に接続されている。基準波形電圧発生部12は、増幅器14に信号授受可能に接続されている。増幅器14は、電圧印加部16に信号授受可能に接続されている。ノイズフィルタ20は、電圧印加部16及びI/V変換器18に信号授受可能に接続されている。また、制御部22は、電圧印加部16から転写ロール46に印加されたパルス電圧を検出可能となるように信号授受可能に接続されている。このため、制御部22は、電圧印加部16から転写ベルト46に印加されたパルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点及び立ち下がり開始時点を把握可能に構成されている。
制御部22は、基準波形電圧発生部12から増幅器14を介して電圧印加部16へ印加されたパルス電圧と、電圧印加部16から転写ベルト46に印加されたパルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点から10msec以上50msec以下の期間内のタイミングにおいて、転写ベルト46に流れた電流値(I/V変換器18から入力された電流値)と、に基づいて、半導電性部材としての転写ベルト46の抵抗率を測定するための抵抗率測定部24を含んで構成されている。
基準波形電圧発生部12は、複数種の異なるパルス波形を示すデータを予め記憶した記憶部12Aを含んで構成されている。記憶部12Aに予め記憶されているデータに応じたパルス波形としては、方形波、台形波、三角波、矩形波、及びサイン波等があり、測定対象物の応答特性に応じた波形が定められる(詳細後述)。
―表面抵抗率測定―
抵抗率測定装置10によって、転写ベルト46の表面抵抗率を測定する場合には、例えば、電圧印加部16としては、図4に示すような、三菱油化(株)製ハイレスター1Pの「HRプローブ」を用いて計測することができる。この場合には、電圧印加部16は、第1電圧印加電極16A、及び板状絶縁体16Bを含んで構成されたものを用いることができる。
第1電圧印加電極16Aは、円柱状電極部16Cと、該円柱状電極部16Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部16Cを、所定間隔を開けて囲むように設けられた円筒状のリング状電極部16Dと、を備えている。
―抵抗率測定装置10による表面抵抗率測定方法―
抵抗率測定装置10による転写ベルト46の表面抵抗率測定時には、第1電圧印加電極16Aにおける円柱状電極部16C及びリング状電極部16Dと、板状絶縁体16Bとの間に半導電性部材としての転写ベルト46を挟持する。
次に、制御部22は、第1電圧印加電極16における円柱状電極部16Cとリング状電極部16Dとの間に、該転写ベルト46の応答特性(詳細後述)に応じたパルス波形(詳細後述)の電圧が増幅器14へ出力されるように、パルス波形電圧発生部12を制御する。
増幅器14では、入力されたパルス波形を、転写ベルト46を画像形成装置10に搭載したときに該転写ベルト46に印加される電圧値と同じ最大電圧値を示すパルス波形となるように、パルス振幅を増幅したパルス電圧を、電圧印加部16へ出力する。
増幅器14からパルス電圧が供給されると、電圧印加部16は、第1電圧印加電極16Aにおける円柱状電極部16Cとリング状電極部16Dとの間に、供給されたパルス電圧を印加する。この電圧印加部16によるパルス電圧の印加を示す信号は、パルス波形として制御部22へと出力される。このため、制御部22では、電圧印加部16によるパルス電圧のパルス波形を示す信号が入力され、パルス波形の立ち上がり時点や立ち下がり時点を把握可能となっている。
電圧印加部16によって、第1電圧印加電極16Aにおける円柱状電極部16Cとリング状電極部16Dとの間に、パルス電圧が印加されたときに転写ベルト46表面を流れる電流は、ノイズフィルタ20によってノイズ除去された後に、電流計17により計測される。電流計17による電流値計測結果は、I/V変換器18によって電圧値に変更された後に、制御部24へと出力される。
制御部24の抵抗率測定部24では、電圧印加部16から入力されたパルス電圧(すなわち、電圧印加部16から転写ベルト46に印加されたパルス電圧)のパルス波形の立ち上がり開始時点から10msec以上50msec以下の期間内に転写ベルト46に流れた電流値に基づいて、転写ベルト46の表面抵抗率を算出する。
なお、転写ベルト46の外周面(あるいは内周面)の表面抵抗率を測定する場合には、外周面(あるいは内周面)が円柱状電極部16C及びリング状電極部16Dに接するように転写ベルト46を配置するものとする。
転写ベルト46の外周面の表面抵抗率ρs(Ω/□)は、電圧印加部16として、上記三菱油化(株)製ハイレスター1Pの「HRプローブ」を用いた場合には、下記式(1)により算出することができる。
[式]
ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I) 式(1)
上記式(1)中、d(mm)は円柱状電極部16Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。また、Vは、電圧印加部16から転写ベルト46に印加されたパルス電圧の最大電圧値を示し、Iは、転写ベルト46に流れる電流値を示している。
なお、表面抵抗率の測定は、電圧印加部16として、上述の図4に示すような、三菱油化(株)製ハイレスター1Pの「HRプローブ」を用いることに限られるものではなく、任意の装置を用いることができる。例えば、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト社製)と、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP−HTP12及びレジテーブUFL MCP−ST03(何れも、株式会社ダイアインスツルメンツ社製)を用いて計測してもよい。
測定時には、レジテーブUFL MCP−ST03のフッ素樹脂面が上になるように、転写ベルトの内側に入れ、転写面側(ベルトの外側)からURプローブMCP−HTP12の二重電極を当てることによって測定すればよい。なお、URプローブMCP−HTP12の上部には19.6N±1Nの錘を取り付け、転写ベルトの転写面に一様な荷重がかかるようにすると良い。
この時、表面抵抗率をρs、R8340Aデジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、URプローブMCP−HTP12の表面抵抗率補正係数をRCF(S)とすると、三菱化学「抵抗率計シリーズ」カタログによればRCF(S)=10.00なので、このように、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト社製)と、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP−HTP12及びレジテーブUFL MCP−ST03(何れも、株式会社ダイアインスツルメンツ社製)を用いた場合には、表面抵抗率ρs[Ω/□]は、下記式(2)により求めるようにすればよい。
[式]
ρs[Ω/□]=R×RCF(S)=R×10 式(2)
―体積抵抗率測定―
抵抗率測定装置10によって、転写ベルト46の体積抵抗率を測定する場合には、図5に示すような、三菱油化(株)製ハイレスター1Pの「HRプローブ」を用いて計測することができる。この場合には、電圧印加部16は、第1電圧印加電極16Aを備えると共に、上記表面抵抗を測定する場合に用いた板状絶縁体16Bの代わりに第2電圧印加電極16Bを備えている。
―抵抗率測定装置10による体積抵抗率測定方法―
抵抗率測定装置10による転写ベルト46の体積抵抗率測定時には、第1電圧印加電極16Aにおける円柱状電極部16C及びリング状電極部16Dと、第2電圧印加電極17Bとの間に半導電性部材としての転写ベルト46を挟持する。
次に、制御部22は、第1電圧印加電極16における円柱状電極部16Cと第2電圧印加電極17Bとの間に、該転写ベルト46の応答特性(詳細後述)に応じたパルス波形(詳細後述)の電圧が増幅器14へ出力されるように、パルス波形電圧発生部12を制御する。
増幅器14では、入力されたパルス波形を、転写ベルト46を画像形成装置10に搭載したときに該転写ベルト46に印加される電圧値と同じ最大電圧値を示すパルス波形となるように、パルス振幅を増幅したパルス電圧を、電圧印加部16へ出力する。
次に、増幅器14からパルス電圧が供給されると、電圧印加部16は、第1電圧印加電極16Aにおける円柱状電極部16Cと、第2電圧印加電極17Bとの間に、供給されたパルス電圧を印加する。この電圧印加部16によるパルス電圧の印加を示す信号は、パルス波形として制御部22へと出力される。このため、制御部22では、電圧印加部16によるパルス電圧のパルス波形を示す信号が入力される。
電圧印加部16によって、第1電圧印加電極16Aにおける円柱状電極部16Cと、第2電圧印加電極17Bとの間に、パルス電圧が印加されたときに転写ベルト46に流れる電流は、ノイズフィルタ20によってノイズ除去された後に、電流計17により計測される。電流計17による電流値計測結果は、I/V変換器18によって電圧値に変化された後に、制御部24へと出力される。
制御部24の抵抗率測定部24では、電圧印加部16から入力されたパルス電圧(すなわち、電圧印加部16から転写ベルト46に印加されたパルス電圧)のパルス波形の立ち上がり開始時点から10msec以上50msec以下の期間内に転写ベルト46に流れた電流値に基づいて、転写ベルト46の体積抵抗率を算出する。
転写ベルト46の体積抵抗率ρv(Ω/cm)は、下記式(3)により算出することができる。
[式]
ρv=19.6×(V/I)×t 式(3)
上記式(3)中、Vは、電圧印加部16から転写ベルト46に印加されたパルス電圧の最大電圧値を示し、Iは、電流値を示している。また、tは、転写ベルトTの厚さ(mm)を示している。
なお、体積抵抗率の測定は、電圧印加部16として、上述の図5に示すような、三菱油化(株)製ハイレスター1Pの「HRプローブ」を用いることに限られるものではなく、任意の装置を用いることができる。例えば、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社 アドバンテスト社製)と、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP−HTP12及びレジテーブUFL MCP−ST03(何れも、株式会社 ダイアインスツルメンツ社製)を用いて測定するようにしてもよい。
測定時には、レジテーブUFL MCP−ST03の金属面が上になるように、転写ベルトの内側に入れ、転写面側(ベルトの外側)からURプローブMCP−HTP12の二重電極部を当て、URプローブMCP−HTP12の上部には19.6N±1Nの錘を取り付け、転写ベルトの転写面に一様な荷重がかかるようにすることが好ましい。
この場合には、体積抵抗率をρvは、転写ベルトの厚さt(μm)、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、URプローブMCP−HTP12の体積抵抗率補正係数をRCF(V)とすると、三菱化学「抵抗率計シリーズ」カタログによれば、RCF(V)=2.011なので、下記式(4)によって求められる。
[式]
ρv[Ω・cm]=R×RCF(V)×(10000/t)=R×2.111×(10000/t) 式(4)
以上説明したように、本発明の体積抵抗測定装置10によれば、半導電性部材としての転写ベルト46にパルス電圧を印加し、半導電性部材に印加されたパルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点から10msec以上50msec以下の間に該転写ベルト46に流れる電流値に基づいて、該半導電性部材の表面抵抗率または体積抵抗率を測定する。
このように本発明の抵抗率測定装置では、転写ベルトに印加されたパルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点を開始位置として半導電性部材に流れる電流値に基づいて、半導電性部材の抵抗率を測定するので、電圧が印加された直後の半導電性部材の抵抗率を用意に精度良く測定することができ、半導電性部材が画像形成装置に搭載された環境下における抵抗率を測定することができる。
なお、本来、表面抵抗率や体積抵抗率は、パルス電圧印加直後に計測した計測結果によって得られるものであるが、高電圧を印加する場合には、高電圧を印加する電線の浮遊容量(数十から数百pF/cm2)やノイズの影響を無視することが困難となる場合がある。
このような場合に対応するためには、パルス電圧印加終了直後に測定された電流値から抵抗率を求めるようにすれば、ノイズの影響や浮遊容量の影響を抑制することができる。
この場合には、パルス電圧のパルス波形の立ち下がり時点を開始位置として10msec以上50msec以下の期間内に導電性部材に流れる電流値を更に測定するようにすれば、電圧印加直後における導電性部材の抵抗率を測定することができ、実際に画像形成装置10に搭載された転写ベルトが転写ロールとの接する領域を通過した直後における抵抗率を測定することが可能となる。
なお、パルス電圧のパルス波形の立ち下がり時点を開始位置とする電流値の測定期間は、半導電性部材としての転写ベルト46が画像形成装置に搭載されて該画像形成装置が稼働するとき(転写ベルト46が搬送されているとき)に、転写ロール25と転写ベルト46とが同一領域において接触している時間と同等であることが望ましいため、10msec以上50msec以下の期間内であることが必須であり、10msec以上40msec以下の期間内であることが好ましく、10msec以上20msec以下の期間内であることが好ましい。
このパルス波形の立ち下がり時点を開始位置とする電流値の測定期間が、10msec未満であると、計測器の応答時間およびデータ通信時間の不安定性により正確に電流値を測定することが困難であるという問題があり、50msecより長時間経過した後であると、転写ロール25と転写ベルト46とが同一領域において接触している時間より長い時間が経過された後に抵抗率測定が行われる可能性があり、半導電性部材が画像形成装置に搭載された環境下における抵抗率を測定するとはいえない、という問題がある。
なお、転写ベルトの抵抗が高く、パルス電圧を印加する前に、既に帯電している静電気の影響を無視できないような場合には、パルス電圧印加直後及びパルス電圧印加終了直後の双方の電圧値に基づいて抵抗率を測定すれば、静電気の影響を抑制し、精度良く抵抗率を測定することができる。
―転写ベルトの応答特性に応じたパルス波形の選択―
基準波形電圧発生部12の記憶部12Aには、測定対象となる転写ベルト46の応答特性に対応するパルス波形を示すデータが予め記憶されており、基準波形電圧発生部12では、制御部22から入力された測定対象となる転写ベルト46の応答特性を示すデータに応じたパルス波形のデータを選択し、選択したデータのパルス波形のパルス電圧を増幅器14へ出力する。
すなわち、本発明の抵抗率測定装置10では、パルス波形を半導電性部材の応答特性により定めることができる。
この応答特性とは、電圧印加部16によって半導電性部材に電圧印加されることにより該半導電性部材を流れる電流について、該電圧印加が開始されることにより、電圧印加前の電流値から電流値の遷移が開始された遷移開始時からその最大値の63.2%となるまでの経過時間を示している。
すなわち、応答特性が良い場合には、電圧印加時の電流値の変化率が高いといえる。
従って、電圧印加が開始されることにより、電圧印加前の電流値から電流値の遷移が開始された遷移開始時からその最大値の63.2%となるまでの経過時間が短く、電圧印加時の電流値の変化率が高い程、応答特性が良いものとして説明する。
なお、応答特性とは、転写ベルト46への電圧印加が終了されたときに、電圧印加停止により電流値の遷移が開始された遷移開始時から、その最大値の63.2%となるまでの経過時間であってもよい。
より抵抗が大きい部材となるほど、静電容量が半導電性部材の特性として無視出来ない程度に大きくなり、この静電容量が無視出来ない値となる。応答特性は、抵抗が大きい部材であるなら、静電容量が小さい部材ほど、応答特性が良いといえる。応答特性は高抵抗部材では静電容量が無視できなくことから時定数の概念からR(抵抗)×C(静電容量)でも表現できる。すなわち抵抗Rが大きくても静電容量Cが小さいほど時定数が短くなる、すなわち応答特性がよくなるといえる。
測定対象となる転写ベルト46の静電容量が小さい場合には、電圧印加部16によって半導電性部材に電圧印加されることにより該半導電性部材を流れる電流について、該電圧印加が開始されることにより、電圧印加前の電流値から電流値の遷移が開始された遷移開始時からその最大値の63.2%となるまでの経過時間が短く、静電容量が大きい場合に比べて変化率が大きいことから、応答特性が良く、電圧印加直後に抵抗成分としての半導電性部材に電流が流れる。
このように、応答特性の良い転写ベルト46が測定対象である場合には、立ち上がり時間の短いパルス波形のパルス電圧を印加するほど、電流値の計測が困難となり、結果的に抵抗率の計測が精度良く行われないことから、応答特性の良い転写ベルト46が測定対象である場合には、応答特性の悪い転写ベルト46に比べて立ち上がり時間の長い波形(例えば、台形波)のパルス電圧を印加することが好ましい。
このため、記憶部12Aには、応答特性が悪いほど、立ち上がり時間の長い波形を示すデータが、応答特性に対応して予め記憶される。
一方、測定対象となる転写ベルト46の静電容量が大きい場合には、応答特性が悪いことから、立ち上がり時間の短いパルス波形のパルス電圧を印加した場合であっても、電流値の変化率が応答特性の良い場合に比べて小さいことから、応答特性の良い転写ベルト46に比べて立ち上がり時間の短い波形(例えば、矩形波)のパルス電圧を印加することができる。
このため、記憶部12Aには、応答特性が良いほど、立ち上がり時間の短い波形(例えば、矩形波)を示すデータが、応答特性に対応して予め記憶される。
具体的には、静電容量が500pF/cm2の転写ベルトAと、転写ベルトAに比べて静電容量が大きい(静電容量1000pF/cm2)の転写ベルトB各々について、パルス電圧のパルス波形として矩形波を用いて、パルス電圧を印加したときの、転写ベルトA及び転写ベルトB各々の電流値の変化を図7に示す。
なお、図7に示す測定結果は、本発明の抵抗値測定装置10を用い、増幅器14としてAC/DC AMPLIFIER HVA4321((株)エヌエフ回路設計ブロック)を用い、基準波形電圧発生装置12としてFUNCTION GENERATION DF1905((株)エヌエフ回路設計ブロック)、電圧印加部16としてURプローブ MCPHTP12((株)ダイアインスツルメンツ)、I/V変換器18としてCURENT INPUT PREAMPLIFIER((株)エヌエフ回路設計ブロック)、ノイズフィルタ20として、マルチファンクションフィルター3611((株)エヌエフ回路設計ブロック)を用いた。また、電流値の測定のために、電流計17としてデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A( (株) アドバンテスト製)を用いた。
また、パルス電圧としては、立ち上がり時間1msec、立ち下がり時間1msec、パルス幅1sec、パルス周期2sec、パルス振幅100V、最大電圧値100Vの矩形波78が電圧印加部16に印加されるものとした。
図7には、印加したパルス電圧の矩形波78と、静電容量が転写ベルトBに比べて小さい、すなわち転写ベルトBに比べて応答特性の良い転写ベルトAの電流値の変化を示す波形74と、転写ベルトAに比べて応答特性の悪い転写ベルトBの電流値の変化を示す波形76と、を示した。
図7の各波形に示されるように、矩形波78によって示されるパルス電圧の立ち上がり後における転写ベルトAの電流値の変化率は、転写ベルトAより応答特性の悪い転写ベルトBの電流値の変化率より大きい。
このため、応答特性が所定レベル以上の転写ベルト46について、矩形波や方形波等の立ち上がり時間の短いパルス波形のパルス電圧を印加して抵抗率を測定すると、電流値の変化率が大きいために、精度良く電流値の変化を測定することが困難となると考えられる。
そこで、静電容量が500pF/cm2の上記転写ベルトAを測定対象の半導電性部材として、パルス電圧のパルス波形としては、矩形波より立ち上がり時間の長い台形波をパルス電圧として加えたときの、電流値の変化を測定した。測定結果を図6に示した。
なお、図6に示す測定結果は、本発明の抵抗値測定装置10を用い、増幅器14としてAC/DC AMPLIFIER HVA4321((株)エヌエフ回路設計ブロック)を用い、基準波形電圧発生装置12としてFUNCTION GENERATION DF1905((株)エヌエフ回路設計ブロック)、電圧印加部16としてURプローブ MCPHTP12((株)ダイアインスツルメンツ)、I/V変換器18としてCURENT INPUT PREAMPLIFIER((株)エヌエフ回路設計ブロック)、ノイズフィルタ20として、マルチファンクションフィルター3611((株)エヌエフ回路設計ブロック)を用いた。また、電流値の測定のために、電流計17としてデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A((株)アドバンテスト製)を用いた。
また、パルス電圧としては、立ち上がり時間1000msec、立ち下がり時間1000msec、パルス幅3sec、パルス周期6sec、パルス振幅100V、最大電圧値100Vの台形波70が電圧印加部16に印加されるものとした。
図6に示すように、静電容量が小さい転写ベルト46が抵抗率測定対象の場合には、矩形波に比べて立ち上がり時間の長い台形波70をパルス電圧の波形として用いることにより、計測される電流値の波形72に示されるように、パルス電圧が印加されたときの電流値遷移開始時(図6中、波形72の領域72A)における変化率を、同一部材に矩形波のパルス電圧を印加した場合に比べて小さくすることができ、電流値の変動を精度良く測定することができる。
このように、測定対象となる半導電性部材の応答特性に応じたパルス電圧の波形を選択することにより、精度良く抵抗率を測定することができる。
なお、応答特性の良い半導電性部材は、該半導電性部材より応答特性の悪い半導電性部材に比べて、所定の抵抗値に早く到達することから、より高速に転写ベルトが搬送されることにより高速処理可能な画像形成装置に適用可能であるといえる。
[試験例1]
本発明の効果を確かめるために、応答特性の異なる3種類の転写ベルトを用意し、上記説明した本発明の抵抗値測定装置10を用いて、電流計17により測定された電流値の変化を比較した。
―各転写ベルトの特性―
・転写ベルトA:層厚:0.08mm、静電容量:500pF、体積抵抗率(100V印加30秒後)の常用対数値:9.7(logΩcm)。
・転写ベルトB:層厚:0.08mm、静電容量:750pF、体積抵抗率(100V印加30秒後)の常用対数値:10.6(logΩcm)。
・転写ベルトC:層厚:0.065mm、静電容量:1000pF、体積抵抗率(100V印加30秒後)の常用対数値:10.4(logΩcm)。
―試験条件―
・装置構成:本発明の抵抗率測定装置10(図3参照)を用いた。
増幅器14:AC/DC AMPLIFIER HVA4321((株)エヌエフ回路設計ブロック製)
基準波形電圧発生装置12:FUNCTION GENERATION DF1905((株)エヌエフ回路設計ブロック製)
電圧印加部16:URプローブ MCPHTP12((株)ダイアインスツルメンツ)
I/V変換器18:CURENT INPUT PREAMPLIFIER((株)エヌエフ回路設計ブロック製)
ノイズフィルタ20:マルチファンクションフィルター3611((株)エヌエフ回路設計ブロック製)
電流計17:デジタル超高抵抗/微小電流計R8340A((株)アドバンテスト)を用いた。
・パルス電圧:パルス波形としては、立ち上がり時間1msec、立ち下がり時間1msec、パルス幅1sec、パルス振幅100V、パルス周期2sec、且つ最大電圧値が100Vの矩形波をパルス電圧として電圧印加部16により測定対象の上記転写ベルトA、転写ベルトB、及び転写ベルトCに印加した。
―試験結果―
上記転写ベルトA、転写ベルトB、及び転写ベルトC各々について、上記パルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点からから10msec、20msec、30msec、40msec、50msec、60msec、100msec、500msec、及び100msec各々の電流値の計測結果を図8及び図10に示した。また、電流値の計測結果に基づいて、上記転写ベルトA、転写ベルトB、及び転写ベルトC各々について、上記パルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点からから10msec、20msec、30msec、40msec、50msec、60msec、100msec、500msec、及び100msec各々の表面抵抗値の常用対数値を、図9及び図11に示した。
なお、表面抵抗値は、測定された電流値と、同一タイミングにおけるパルス電圧の電圧値と、に基づいて、抵抗値=電圧値/電流値の関係に基づいて差出したものであり、この表面抵抗値に基づいて、常用対数値を算出したものを図9及び図11に示した。
図8、図9、図10、及び図11に示されるように、パルス電圧のパルス波形の立ち上がり開始時点から10msec以上50msec以下、すなわち画像形成装置10に搭載されたときに同一領域に電圧が印加される期間(10msec以上50msec以下)と同一の期間内における電流値の測定結果に基づいて、電流値及び抵抗値を測定した場合には、半導電性部材(転写ベルトA、転写ベルトB、転写ベルトC)の種類毎に略同一の電流値の変化及び表面抵抗値の常用対数値が測定された。
しかし、10msec以上50msec以下の範囲外における電流値、及び該電流値の測定結果に基づいて算出された表面抵抗値の常用対数値は、該範囲から時間が経過するほど、該範囲内とは異なる値を示していることがわかる。
このため、従来方式のように、測定対象となる半導電性部材に電圧を印加してから2秒以降の電流値に基づいて抵抗率を測定した測定結果は、半導電性部材としての転写ベルトを転写ロールまたは転写ベルトとして搭載可能となる画像形成装置に実際に搭載したときと同一環境における測定を行った結果とはいえないということがわかる。
一方、本発明の方式によれば、半導電性部材が画像形成装置に搭載された環境下における抵抗率を測定することができる、といえる。
なお、上記転写ベルトA、転写ベルトB、及び転写ベルトCの応答特性は、パルス波形立ち上がり時点後10msecの電流値と基準とすると、パルス波形立ち上がり時点後20msecの時点の電流値の比は、転写ベルトA:2.26/2.93=0.77であり、転写ベルトB:2.16/3.44=0.62であり、転写ベルトC:0.79/2.61=0.30である。応答特性とは、電圧印加部16によって半導電性部材に電圧印加されることにより該半導電性部材を流れる電流について、該電圧印加が開始されることにより、電圧印加前の電流値から電流値の遷移が開始された遷移開始時からその最大値の63.2%となるまでの経過時間を示していることから、転写ベルトAが最も応答特性が良く、次いで、転写ベルトB、転写ベルトCの順となっているといえる。
このことから、転写ベルトAを測定対象とする場合には、応答特性の悪い転写ベルトC及び転写ベルトCに比べて、立ち上がり時間の長い波形(例えば、台形波)のパルス電圧を印加することが好ましい。