JP4667897B2 - 歯科用粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床との接着性調整剤 - Google Patents

歯科用粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床との接着性調整剤 Download PDF

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本発明は、口腔粘膜の変形や炎症などを有する義歯装着患者のための歯科用粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床との接着力を制御し、使用後に義歯床より除去しやすくするための接着性調整剤に関する。
義歯使用者が義歯を長期にわたって使用していると顎堤を形成する歯槽骨の吸収等が原因となり口腔の形状が次第に変化することが知られている。この様な場合、義歯床と口腔粘膜との適合が悪くなり、義歯が不安定になる。適合不良な義歯をそのまま使用し続けると義歯床下粘膜に不均一な圧力が加わるため、該粘膜に潰瘍や炎症が発生したり、咬合圧による疼痛が引き起こされたりするようになる。上記のような不適合が起こった場合には新しい義歯を作製するか、使用中の義歯を裏装するなどして、義歯の粘膜に対する適合性を回復させる必要がある。
しかしながら、著しい潰瘍や炎症がある患者の口腔粘膜は極めて不安定な状態であるため、新しい義歯の作製や裏装の前に口腔粘膜が比較的健全な状態になるのを待ち、義歯床下粘膜との良好な適合性を確保する必要がある。このような場合に使用される材料が歯科用粘膜調整材である。即ち、歯科用粘膜調整材は義歯床下粘膜の形態、色調が正常な状態に回復するまで使用中の義歯の粘膜面に裏装して用いられる治療用材料である。
現在、義歯床に関連する軟質材料としては、大きく分けて義歯床固定用糊材(いわゆる義歯安定材)、歯科用粘膜調整材、軟質裏装材の3種類があるが、これらはいずれも使用目的、方法、使用期間、所要性状などが異なっている。
例えば義歯床固定用糊材は、疼痛緩和のために患者本人が自ら施術して非常に短い期間使用するものである。一時的な使用に限定されるものであり治療を目的とする材料ではない。粉状、クリーム状、シール状のものがあり、水溶性のものと非水溶性のものがある。前者はだ液の粘性を高め、義歯床の粘膜面との粘着力の増大を期待する。非水溶性のものは義歯床と粘膜面の隙間をなくして適合性をよくするとともに辺縁封鎖効果による吸着力などを期待している。その組成物はほとんど弾性を有しておらず、咬合するたびにその咬合圧に応じた大きな塑性変形が起こるため、該義歯床固定用糊材の使用期間は1日ないしは数日間に限定される。
これに対し、歯科用粘膜調整材(以下、単に粘膜調整材)は暫間的な材料である点で、義歯床固定用糊材と同じであるが、その目的は大きく異なっている。即ち、前述したように粘膜調整材は、軟質裏装材等の義歯床裏装材による義歯修理の前段階で口腔粘膜の治療用として使用するものである。義歯床下粘膜のひずみ、圧痕を開放し、各部の被圧変位性に対応した機能的な形態を印記するために、義歯床下粘膜面に用いられる軟性高分子材である。粉末と液の混和によって、始めは流動性の高いペースト状を示すが、液が粉末に浸透して粘弾性が発現してくる。ペーストに流動性のあるうちに義歯床粘膜面に盛りつけ、口腔内に挿入して賦形する。使用期間として口腔粘膜が健全な状態に回復するまでの1週間〜数週間必要である。その目的からして咬合時に義歯と粘膜面の間より押し出されず粘膜面に保持されながらも、柔軟で且つ口腔粘膜の回復に追従する程度の微小変形が可能でなければならない。
一方、軟質裏装材等の義歯床裏装材は半永久的な義歯の適合性改善を目的とする材料であり、顎堤のさらなる形状変更などのために再裏装が必要な場合を除き、その撤去が前提にされた材料ではない。
上記のように、粘膜調整材にはそれほど高い強度が求められない反面、高い柔軟性と可塑性が要求されており種々の組成が提案されているが、使用時の簡便性などの点から(メタ)アクリル系の重合体粉末からなる粉材と、各種可塑剤からなる液材とを主成分とするものが多い(例えば、非特許文献1、2、特許文献1、2参照)。上記可塑剤は柔軟性と可塑性を発現させるために必要な成分であり、現在は、フタレート系(フタル酸エステル系)の可塑剤が主流である。より詳細には、(メタ)アクリル系の粘膜調整材としては、ポリエチルメタクリレートもしくはその共重合体などの(メタ)アクリル系の重合体粉末からなる粉成分と、エタノールを4〜30質量%程度含有するフタレート系可塑剤からなる液成分との練成材料が広く使用されている。なお、液成分には、練和性や練和後の物性などを改良するために、エタノールが配合されることが多い。
このような粘膜調整材は、粉/液練和により得られたペーストを対象の義歯床に直接盛り付け、大まかに形態付与の後、最終的には口腔内にて適合を合わせて用いるのが通常である。
川口 稔、外3名、「試作粘膜調整材からのフタル酸エステル類の溶出性に影響をおよぼす因子について」、歯科材料・器械、日本歯科理工学会、平成16年7月、第23巻、第4号、p.273−278 中村 正明、「フタル酸エステルフリーの粘膜調整材の開発を目指して」、[online]、2003年3月、日本歯科医師会、[平成17年1月12日検索]、インターネット<URL:http://eturan.bookpark.ne.jp/jdab/pdf/JDAB-200307-008.pdf> 特開平3−20204号公報 特開平2−297358号公報
粘膜調整材は口腔粘膜の回復具合に応じて数回の張替えを行うことが一般的である。しかしながら、上記のような可塑剤を用いた粘膜調整材を(メタ)アクリル系の義歯床に適用すると、義歯床と粘膜調整材の境界部分で両者が一体化して容易に除去できなくなる傾向にある。言い換えると、義歯床と粘膜調整材の接着性が徐々に高くなっていく傾向がある。これは粘膜調整材に含まれる可塑剤が徐々に溶出、拡散し、義歯床に移行して一体化していくためであると推測される。逆に、張替え時に容易に除去可能なようにしようとすると、こんどは初期の接着性が低くなりすぎ、粘膜調整材としての目的を果たすことができなくなる。
そのため、現在用いられている粘膜調整材では、張替え時には、引き剥がしやスパチュラを用いて大部分を除去した後、さらに、歯科用研削器具等による機械的な方法で義歯床から粘膜調整材を除去する方法がとられている。このような方法では手間がかかるのみならず、強い臭気が生じることも問題になっている。この臭気は、粘膜調整材や義歯床に付着したプラーク等の異物が、機械的研削に伴う発熱等により分解や飛散などするためであると考えられている。
また近年、健康面で問題視されているフタレート系可塑剤に替わる新しい可塑剤として、セバケート系(セバシン酸エステル系)可塑剤が用いられるようになってきている。しかしながら、前述の可塑剤の義歯床への移行に伴う粘膜調整材と義歯床との一体化の問題は解決されていない。
従って本発明の目的は、可塑剤の義歯床への移行を抑えて粘膜調整材と義歯床との一体化による強固な接着を抑制し、粘膜調整材の除去を容易にする手段を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、メチル(メタ)アクリレートと炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートとの共重合体を義歯床表面に塗布することで歯科用粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床の一体化を抑制できることを見出した。そしてこの知見に基づき更に検討を進めた結果、本発明を完成した。
即ち本発明は、メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位、及び炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートに基づく単量体単位の双方を有する重合体を0.5〜30質量%含む有機溶媒溶液からなる、歯科用粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床との接着性調整剤である。
本発明の歯科用粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床との接着性調整剤は、初期段階で十分な接着力を有しつつも、可塑剤の義歯床への移行を抑えて粘膜調整材と義歯床との一体化による強固な接着を抑制し、これにより歯科用粘膜調整材の除去を容易にする。
本発明の粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床との接着性調整剤は、上記の通り、メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位、及び炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートに基づく単量体単位の双方を有する重合体(以下、単に共重合体と呼ぶことがある)を0.5〜30質量%含む有機溶媒溶液からなる。
このような組成物を、粘膜調整材の適用に先立って義歯床に塗布しておくことにより、粘膜調整材と義歯床との一体化が抑制され、張替え時にも容易に粘膜調整材を除去することができる。これは、上記共重合体が、可塑剤の義歯床への移行、拡散を押さえるためであると推測される。
上記本発明の接着性調整材に配合される共重合体においては、メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位と、炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートに基づく単量体単位の双方を有していることが必須である。メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位を含まない共重合体(あるいは単独重合体)では、初期に充分な接着性を得ることができない。また、メチル(メタ)アクリレートの単独重合体や、メチル(メタ)アクリレートとエチル(メタ)アクリレート{即ち、炭素数2のアルコールの(メタ)アクリレート}との共重合体では、粘膜調整材と義歯床との一体化の抑制効果が十分に得られない。
炭素数3以上のアルコールの(メタ)アクリレートとしては公知の如何なるものでもよいが、炭素数が20を越えるアルコールの(メタ)アクリレートは入手が困難であり、さらに、このような(メタ)アクリレートに基づく単量体単位が多くなるにつれ、溶媒に溶解しにくくなり、義歯床に塗布可能な溶液の調整が困難になるため、本発明における上記共重合体における、炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートとしては、炭素数3〜20のアルコール類の(メタ)アクリレートが好ましい。
このような炭素数3〜20のアルコール類の(メタ)アクリレートを具体的に例示すると、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの中でも、溶液の調製の容易さ、入手や合成の容易さ等の点から、炭素数3〜10のアルコール類の(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数3〜5のアルコール類の(メタ)アクリレートがより好ましい。特に好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレート及びi−プロピルアクリレートである。
また、本発明における共重合体には、上記炭素数3以上のアルコールの(メタ)アクリレートに基づく単量体単位として、炭素数などの異なる2種以上の単量体単位が含まれていてもよい。
本発明における共重合体における、メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位と、炭素数3以上のアルコールの(メタ)アクリレートに基づく単量体単位の割合(共重合比)は特に限定されるものではないが、初期における充分な接着性と、張替え時の除去の容易性を両立させやすい点で、両者がモル比で20:80〜80:20であることが好ましく、さらに25:75〜75:25であることがより好ましい。また本発明における共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、メチル(メタ)アクリレート及び炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレート以外の重合性単量体に基づく単量体単位(その他の単量体単位)が含まれていてもよい。この場合、該その他の単量体単位の割合は、全体の20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。
また上記共重合体における共重合の配列に特に制限はなく、またランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれでも好適に用いることができる。
上記共重合体における分子量は、該共重合体が有機溶媒に溶解する範囲であれば特に制限はなく用いることが可能であるが、合成の容易さ、有機溶媒に対する溶解性の面から重量平均分子量(GPC測定による標準ポリスチレン換算分子量)が5万〜100万であることが好ましく、10万〜80万であることがより好ましい。
本発明における上記のような共重合体は、如何なる製造方法で製造してもよく、代表的には、メチル(メタ)アクリレートと、炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートとを公知の方法で共重合させて容易に得ることができる。また、市販品として入手することもできる。
上記メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位、及び炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートに基づく単量体単位の双方を有する重合体は、室温近辺では固体であるか、極めて高粘度の液体であるため、義歯床に塗布するために有機溶媒に溶解する必要があり、さらに、適度な塗布性と接着性を両立させるために、その濃度を0.5〜30質量%とする(接着性調整剤全体を100質量%とする)。より好ましくは1〜30質量%であり、特に好ましくは2〜25質量%である。
上記有機溶媒としては、本発明における前記共重合体を溶解させるものであれば特に限定されない。該有機溶媒を具体的に、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン等の炭化水素化合物;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール化合物;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル等のエステル化合物等の非ハロゲン系有機溶媒が挙げられる。さらに平成10年に厚生省より各都道府県に対して通知された医薬審307号「医薬品の残留溶媒ガイドライン」の中で医薬品中の残留溶媒について毒性によってクラス1〜3に分類がなされており、本発明の接着性調整剤においても安全性の観点からその中に示されたクラス1、2に属さない有機溶媒を使用するのがより好ましい。また、これら非ハロゲン系有機溶媒の中でも、低沸点で揮発性を有するものは乾燥が早く取扱いが容易であることから、20〜150℃の沸点を有するものが特に好適である。このような観点から、上記した中でも酢酸エチル、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸プロピルが最も好適に使用できる。これら有機溶媒は単独で、もしくは数種類のものを混合して用いることができる。
さらに本発明の接着性調整剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般の歯科材料の成分として公知の他の成分が配合されていてもよい。このような成分としては、色素、顔料、染料、香料、抗菌剤、無機フィラー等が挙げられる。
本発明の接着性調整剤の製造方法は特に限定されず、代表的には、配合される所定量の共重合体を所定量の有機溶媒に溶解、均一になるまで混合することにより製造できる。このようにして製造した接着性調整剤は、使用時まで、用いた有機溶媒が揮発してなくなったりしないような気密性の容器に保存しておけばよい。
本発明の接着性調整剤は、(メタ)アクリル系義歯床に粘膜調整材を適用するに際し、その接着性を調整するために用いられる。当該(メタ)アクリル系義歯床としては、公知の(メタ)アクリル系義歯床であれば特に限定されない。一般的な(メタ)アクリル系義歯床は、ポリ(メチルメタクリレート)を主成分とし、一部エチルメタクリレートやスチレンなどが共重合していたり、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋剤により架橋していたりする。歯科用粘膜調整材も公知の如何なる歯科用粘膜調整材でもよい。前述したように一般的な粘膜調整材は、ポリ(エチルメタクリレート)もしくはその共重合体などの(メタ)アクリル系の重合体粉末からなる粉成分と、可塑剤とエタノールとを含む液成分とからなり、使用時に両者を混合して適度な粘度のペーストとして用いるものである。本発明の効果が顕著に得られる点で、上記可塑剤として、エチルフタレート、ブチルフタレート、オクチルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤やエチルセバケート、ブチルセバケート、オクチルセバケート等のセバシン酸エステル系可塑剤などの、義歯床に移行しやすい低分子(分子量約500未満程度)のカルボン酸エステル系可塑剤を含有する粘膜調整材を使用する際に適用することが特に好ましい。
本発明の接着性調整剤の使用方法としては、上記のような義歯床への粘膜調整材の築盛時に、該義歯床表面に接着性調整剤を塗布し、揮発成分を乾燥させ、ついで粘膜調整材の練和物を盛り付けて口腔内で保持させることで、粘膜調整材と義歯床とを接着させることが可能である。
上記接着性調整剤を塗布することにより粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床の一体化が抑制される機構は定かではないが、上記接着性調整剤を塗布することによって、(メタ)アクリル系義歯床表面に本接着性調整剤に含まれる共重合体のコーティング層が形成され、粘膜調整材由来の可塑剤に対する保護膜の役目を果たすものと推測される。
さらに上記接着性調整剤を用いることで、一体化を抑制しながらも粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床が適度に接着するのは、上記共重合体において(メタ)アクリル系義歯床の主成分であるメチル(メタ)アクリレート部分が義歯床と、炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレート部分が粘膜調整材とそれぞれ絡み合っているためであると推測される。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例、比較例における各種物性の評価方法は以下の通りである。
(1)初期接着性の測定(評価)方法
表面を800番の耐水研磨紙で注水研磨したアクリル板(アクロン/ジーシー社製)に予め調製した接着性調整剤を塗布、乾燥し、粉液比(重量)1.2で練和した練和物を、20×20×1mmのモールドを用いて上記のアクリル板上に盛り付けた。これを37℃で10分間静置した後、接着力を評価した。
アクリル板と粘膜調整材との界面からスパチュラで剥離させようとし、そのときの破壊の様子を観察し評価した。評価点は以下の判定に従い、AからCの3段階で評価した。
A:粘膜調整材側の凝集破壊(接着力強)
B:凝集破壊と界面破壊の混合破壊(接着力弱)
C:界面破壊(接着力なし)
(2)粘膜調整材除去性の評価方法
上記(1)の試験と同様にして粘膜調整材を盛り付けて製造した試験片に対して、荷重負荷試験機「サーボパルサー(SHIMADZU社製)」を用いて咬合圧に相当する圧力(0.30MPa)を37℃で連続的に100,000回負荷させた。なお、サーボパルサーによる試験条件は、疲労試験プログラムで最大荷重14N、最小荷重0.1N、周波数1.2Hz、正弦波に基づく荷重負荷であった。荷重負荷後の試験片の粘膜調整材の除去を行い、その除去方法によって除去の容易さを評価した。評価点は以下の判定に従い、AとBの2段階で評価した。
A:機械研削が不必要(引き剥がし、スパチュラ等で簡単に除去可能)
B:機械研削が必要(歯科用研削器具を用いないと除去不可能)
(3)接着性調整剤に配合する重合体
各実施例、比較例で用いた重合体は下記表1の通りである。なお、製造例11〜13で製造したP(MMA/EMA)、PMMA及びPBMAは、本発明の接着性調整剤に配合される必須成分である、「メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位、及び炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートに基づく単量体単位の双方を有する重合体」には相当しない。
Figure 0004667897
上記表1及び以下に述べる製造例において、モノマー(重合性単量体)の略号は次の通りである。
MMA;メチルメタクリレート
BMA;n−ブチルメタクリレート
EHMA;2−エチルヘキシルメタクリレート
i−BMA;i−ブチルメタクリレート
OMA;n−オクチルメタクリレート
ODMA;n−オクタデシルメタクリレート
BA;n−ブチルアクリレート
EMA;エチルメタクリレート
製造例1
平均分子量18万のMMAとBMA(モル比30:70)共重合体{P(MMA/BMA)-1}の合成;三つ口にMMA3.0g(30mmol)、BMA10.0g(70mmol)、AIBN0.02g、及びトルエン10mlを加え、窒素ガスを5ml/分の割合で2時間流しつづけた。窒素ガスを止めた後、オイルバスを取り付け、バス温度70℃で6時間攪拌を続けた。反応物を10倍量のメタノールに入れ、生じた沈殿を回収し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿物をベンゼンに溶解した後凍結乾燥を行い、8.6gの残留物を回収した(収率66%)。GPC測定したところ重量平均分子量が180,000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=2.10であった。
製造例2
平均分子量18万のMMAとBMA(モル比50:50)共重合体{P(MMA/BMA)-2}の合成;MMA5.0g(50mmol)、BMA6.4g(50mmol)を用いた以外は製造例1と同様の方法で合成を行った。その結果7.4gの共重合体を得た(収率65%)。GPC測定したところ重量平均分子量が180,000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=2.15であった。
製造例3
平均分子量18万のMMAとBMA(モル比70:30)共重合体{P(MMA/BMA)-3}の合成;MMA7.0g(70mmol)、BMA3.8g(30mmol)を加えた以外は製造例1と同様の方法で合成を行った。その結果7.1gの共重合体を得た(収率66%)。GPC測定したところ重量平均分子量が180,000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=2.12であった。
製造例4
平均分子量50万のMMAとBMA(モル比30:70)共重合体{P(MMA/BMA)-4}の合成;四つ口フラスコにMMA3.0g(30mmol)、BMA10.0g(70mmol)、AIBN0.01g、水15ml、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.14gとラウリルアミン酢酸塩0.14gを加え、窒素ガスを5ml/分の割合で2時間流しつづけた。窒素ガスを止めた後、オイルバスを取り付け、バス温度70℃で6時間攪拌を続けた。反応後エマルジョンを凍結してポリマーを遊離させた後、得られたポリマーを10倍量のメタノールに入れ、生じた沈殿を回収し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿物をベンゼンに溶解した後凍結乾燥を行い、8.6gの残留物を回収した(収率66%)。
GPC測定したところ重量平均分子量が500,000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.65であった。
製造例5〜9
製造例1と同様にして、MMAと他のモノマーとを仕込みモル比30:70で共重合させて表1に示す共重合体を得た。
製造例10
製造例1と同様にして、MMA、BMA及びi−BMAを仕込みモル比20:40:40で共重合させて表1に示す共重合体を得た。
製造例11
製造例1と同様にして、MMAとEMAとを仕込みモル比30:70で共重合させて表1に示す共重合体を得た。
製造例12、13
MMA又はBMAを単独で用いた以外は、実施例1と同様にして表1に示す単独重合体を得た。
(4)粘膜調整材
各実施例及び比較例で用いた粘膜調整材は、以下の表2に示す液材と粉材に分けて調製しておき、使用時に粉材/液材=1.2で混合、均一になるまで練和して用いた。
Figure 0004667897
なお上記表2において、粉材に配合される成分の略号は以下の通りである。また可塑剤は全て東京化成品を、エタノールは和光純薬品を用いた。
・PMMA;ポリメチルメタクリレート;重量平均分子量500,000(根上工業社製「D−250」)
・PEMA;ポリエチルメタクリレート;重量平均分子量500,000。(根上工業社製「EMA−35」)
・P(MMA−EMA);ポリ(メチルメタクリレート−エチルメタクリレート)共重合体;重量平均分子量250,000(積水化成社製「MBE70−55L」)
・PBMA;ポリn−ブチルメタクリレート;重量平均分子量260,000。(根上工業社製「M6003」)
実施例1
共重合体として5質量部のP(MMA/BMA)-1を95質量部の酢酸エチル(和光純薬)に溶解し、5質量%の共重合体溶液を調製した。この溶液を接着性調整剤とし、粘膜調整材aを用いて評価を行った。結果は表3に示すように、初期接着性、除去性共に評価Aであり、優れていた。
Figure 0004667897
実施例2〜10、比較例1〜3
接着性調整剤の組成を表3に示したように変化させ、実施例1と同様に粘膜調整材aを用いて評価を行った。結果は表3に示した。
比較例4
接着性調整剤を全く用いずに、粘膜調整剤aを盛り付け、その初期接着性及び除去性を評価した。結果は表3に示した。
上記表3に示されているように、「メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位、及び炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートに基づく単量体単位の双方を有する重合体」の有機溶媒溶液を塗布した後に、粘膜調整材を盛り付けた場合には、初期接着性試験においては裏装直後に凝集破壊を示しており、初期接着性に問題ないことがわかった。また、除去性評価においても大部分が手で引き剥がすことが可能で歯科用切削器具を用いることなく粘膜調整材を容易に除去でき、大部分の粘膜調整材を歯科用切削器具を用いて機械的に除去する必要のあった従来公知の手法(比較例4)に比べると、除去性に優れていることがわかる。一方、メチルメタクリレートの単独重合体を用いた場合(比較例2)や、メチルメタクリレートとエチルメタクリレート(炭素数2のアルコールのエステル)との共重合体(比較例1)では、なんら接着性調整材を用いない場合と変わらず、さらに、ブチルメタクリレートの単独重合体(比較例3)では、初期接着性が低下しており、これらの対比から、本発明の接着性調整剤に配合する重合体としては、上記のようなものである必要性が理解できる。
実施例11〜21
接着性調整剤に配合する共重合体としてP(MMA/BMA)-1を用い、濃度や溶媒の種類、あるいは用いる粘膜調整材を表4に示すように変化させて評価を行った。結果を併せて表4に示すが、いずれの場合にも良好な評価結果が得られた。なお表4中、IPAはイソプロピルアルコール(和光純薬)を示す。
Figure 0004667897
比較例4
P(MMA/BMA)-1の濃度を、本発明で規定する下限を下回る0.1質量%とした以外は実施例1と同様に評価した。その結果、該濃度の溶液では接着性調整剤を全く用いない場合と同等の評価結果にしかならなかった。
比較例5
P(MMA/BMA)-1の濃度を、本発明で規定する上限を上回る40質量%とした以外は実施例1と同様に評価しようと試みた。しかし、該濃度では酢酸エチルには、完全には溶解しなかった。また溶解した部分も、非常に粘性の高いものであり、アクリル板に塗布することができず、評価できなかった。

Claims (3)

  1. メチル(メタ)アクリレートに基づく単量体単位、及び炭素数3以上のアルコール類の(メタ)アクリレートに基づく単量体単位の双方を有する重合体を0.5〜30質量%含む有機溶媒溶液からなる、歯科用粘膜調整材と(メタ)アクリル系義歯床との接着性調整剤。
  2. 歯科用粘膜調整材が、分子量500未満の可塑剤を含むものであることを特徴とする請求項1記載の接着性調整剤。
  3. 歯科用粘膜調整材が、フタル酸エステル系及び/又はセバシン酸エステル系の可塑剤を含むものであることを特徴とする請求項1又は2記載の接着性調整剤。
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