JP4666742B2 - 光吸収材とその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は新規な光吸収材に関するものであり、とりわけ、ヒドラゾン誘導体又はそのヒドラゾン誘導体を配位子とする金属錯体のいずれかを含んでなる光吸収材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マルチメディア時代の到来に伴い、CD−R(コンパクトディスクを利用する追記型メモリ)やDVD−R(デジタルビデオディスクを利用する追記型メモリ)などの光記録媒体が脚光を浴びている。光記録媒体は、テルル、セレン、ロジウム、炭素、硫化水素などの無機物を用いて記録層を構成する無機系光記録媒体と、有機色素化合物を主体とする光吸収材により記録層を構成する有機系光記録媒体に大別することができる。
【0003】
このうち、有機系光記録媒体は、通常、ポリメチン色素を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(以下、「TFP」と略記する。)などの有機溶剤に溶解し、溶液をポリカーボネートの基板へ塗布し、乾燥して記録層を形成した後、金、銀、銅などの金属による反射層及び紫外線硬化樹脂などによる保護層を順次密着させて形成することによって作製される。有機系光記録媒体は、無機系のものと比較して、読取光や自然光などの環境光によって記録層が変化し易いという欠点はあるものの、光吸収材を溶液にして直接基板へ塗布することによって記録層を構成し得ることから、光記録媒体を低廉に作製できる利点がある。加えて、有機系光記録媒体は、有機物を主体に構成されるので、湿気や海水にさらされる環境下でも腐食し難い利点があることと、有機系光記録媒体の1種である熱変形型光記録媒体の出現によって、所定のフォーマットで光記録媒体へ記録された情報を市販の読取専用装置を用いて読み取れるようになったことから、今や廉価な光記録媒体の主流になりつつある。
【0004】
有機系光記録媒体における緊急の課題は、マルチメディア時代に対応するためのさらなる高密度化である。現在、斯界において鋭意推進されている高密度化の研究は、主として、書込光の波長を現行の635乃至650nmから450nm以下に短波長化することによって、DVD−Rにおける片面当りの記録容量を4.7GBから15GB以上に増大することを目指している。斯かる高密度光記録媒体は、通常のテレビジョン並の画質の動画であれば6時間分、高品位テレビジョン並の高画質であっても2時間分の記録が可能となる。しかしながら、現行の光記録媒体に用いられている有機色素化合物は、そのほとんどが波長450nm以下のレーザー光に適応しないことから、現状のままでは各方面で希求されている高密度化の要請に応じられないこととなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、短波長の可視領域に吸収極大を有する光吸収材とその用途を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者が鋭意研究し、検索したところ、特定のヒドラゾン誘導体及びそのヒドラゾン誘導体を配位子とする金属錯体は短波長の可視領域に吸収極大を有し、斯かる領域の光を実質的に吸収することを見出した。また、斯かるヒドラゾン誘導体及び金属錯体のうちでも、薄膜状態において波長450nm以下の可視光を実質的に吸収するものは、光記録媒体において、波長450nm以下のレーザー光を照射することによって、基板上に極めて微小なピットを高密度に形成することを確認した。この発明は、短波長の可視領域に吸収極大を有する新規な光吸収材の創製と、その産業上有用な諸特性の発見に基づくものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明は、一般式1で表されるヒドラゾン誘導体又はそのヒドラゾン誘導体を配位子とする金属錯体のいずれかを含んでなる光吸収材に関するものである。
【0008】
【化2】
Figure 0004666742
【0009】
一般式1において、φ1及びφ2は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、それらの芳香族炭化水素基及び複素環基は置換基を1又は複数有していてもよい。個々の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられ、また、複素環基としては、例えば、ピロリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、キノリル基、フタラジニル基、カルバゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ナフトチアゾリル基、チエニル基、フリル基などの環内に窒素原子、酸素原子、硫黄原子及び/又はセレン原子を1又は複数含んでなるものが挙げられる。
【0010】
斯かる芳香族炭化水素基及び複素環基に結合する置換基としては、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基などのエーテル基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペラジノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基などのアミノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ブチルフェニル基などの芳香族炭化水素基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、さらには、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基や、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの、通常、炭素数6までの脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基が挙げられる。置換基が水素原子を有する場合、その水素原子の1又は複数は、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基か、あるいは、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペラジノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基などの第二級又は第三級アミノ基によって置換されていてもよい。なお、後記する金属錯体の配位子となるヒドラゾン誘導体としては、φ1及びφ2が、例えば、ピリジル基、ピペラジニル基、キノリル基、フタラジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ナフトチアゾリル基などの含窒素複素環基であるものが望ましく、とりわけ、2−ピリジル基、2−キノリル基、2−ベンゾチアゾリル基などのように、ヒドラゾン残基が複素環基における窒素原子に隣接する炭素原子へ結合しているものが望ましい。
【0011】
この発明で用いる金属錯体は、一般式1で表されるヒドラゾン誘導体が金属(中心原子)へ1又は複数配位してなるものである。中心原子となる金属としては、通常、周期律表における3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族及び12族の金属元素であって、例えば、酢酸塩、無水酢酸塩などの有機酸塩や、弗化物、塩化物、臭化物、沃化物などの無機酸塩、さらには、酸化物、硫化物、窒化物、硼化物、原子の形態にあるものが挙げられる。個々の金属元素としては、例えば、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀などが挙げられるが、コストと入手の容易さから、通常、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、亜鉛などが頻用される。
【0012】
望ましいのは2価の金属(M)を中心原子とする金属錯体であって、とりわけ、一般式2で表される錯体である。一般式2において、mはMへ配位する配位子(Hz)としてのヒドラゾン誘導体の数を表し、通常、1又は2である。mが2である場合、この発明の目的を逸脱しないかぎり、Hzは互いに異なるものであってもよい。Xは適宜対イオンを表し、nは金属錯体における電荷の均衡を保つためのXの数である。この発明で用いる金属錯体は、通常、−2価、0価又は1価の電荷をとるが、電荷が0価であるときのnは零であり、したがって、Xは存在しないこととなる。対イオンXとしては、例えば、六弗化燐酸イオン、弗素酸イオン、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、臭素酸イオン、沃素酸イオン、燐酸イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオン、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオンなどの陰イオンや、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオンなどの陽イオンが挙げられる。なお、以下の説明においては、一般式1で表されるヒドラゾン誘導体とそのヒドラゾン誘導体を配位子とする金属錯体とを、説明の都合上、一括して「ヒドラゾン化合物」と呼称することがある。そのヒドラゾン化合物において、構造上、シス/トランス異性体及び/又は互変異性体が存在する場合には、特に断らないかぎり、いずれもこの発明に包含されるものとする。
【0013】
一般式2:
Hzm・M・Xn
【0014】
この発明は、上記したごとき構造を有し、かつ、短波長の可視領域に吸収極大を有するヒドラゾン化合物を含んでなる光吸収材を対象とするものである。斯かるヒドラゾン化合物の具体例としては、例えば、化学式1乃至化学式36で表されるヒドラゾン誘導体、さらには、それらを配位子とする金属錯体が挙げられる。これらの多くは短波長の可視領域、通常、波長500nm以下、詳細には、330乃至480nmに吸収極大を有するので、斯かる領域の光を吸収する化合物が必要とされる諸分野において多種多様の用途を有する。これらのうちでも、薄膜状態において波長450nm以下の可視光を実質的に吸収するヒドラゾン化合物、とりわけ、吸収極大の長波長側で斯かる可視光を実質的に吸収するヒドラゾン化合物は、書込光として波長450nm以下のレーザー光を用いる、例えば、DVD−Rなどの高密度光記録媒体の記録層を構成する材料として極めて有用である。
【0015】
【化3】
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【0016】
【化4】
Figure 0004666742
【0017】
【化5】
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【0018】
【化6】
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【0019】
【化7】
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【0020】
【化8】
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【0021】
【化9】
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【0022】
【化10】
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【0023】
【化11】
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【0024】
【化12】
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【0025】
【化13】
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【0026】
【化14】
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【0027】
【化15】
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【0028】
【化16】
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【0029】
【化17】
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【0030】
【化18】
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【0031】
【化19】
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【0032】
【化20】
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【0033】
【化21】
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【0034】
【化22】
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【0035】
【化23】
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【0036】
【化24】
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【0037】
【化25】
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【0038】
【化26】
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【0039】
【化27】
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【0040】
【化28】
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【0041】
【化29】
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【0042】
【化30】
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【0043】
【化31】
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【0044】
【化32】
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【0045】
【化33】
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【0046】
【化34】
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【0047】
【化35】
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【0048】
【化36】
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【0049】
【化37】
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【0050】
【化38】
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【0051】
この発明で用いるヒドラゾン化合物は種々の方法で調製することができる。経済性を重視するのであれば、ヒドラジン誘導体とアルデヒド化合物とを反応させる工程を経由する方法が好適であり、この方法によるときには、例えば、一般式1に対応するφ1を有する一般式3で表されるヒドラジン誘導体に、一般式1に対応するφ2を有する一般式4で表されるアルデヒド化合物を反応させることによって、この発明で用いるヒドラゾン誘導体が好収量で得られる。
【0052】
【化39】
Figure 0004666742
【0053】
【化40】
Figure 0004666742
【0054】
具体的には、例えば、反応容器に一般式3で表されるヒドラジン誘導体と一般式4で表されるアルデヒド化合物をそれぞれ適量とり(通常等モル前後)、必要に応じて、適宜溶剤に溶解し、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ピロリジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−メチルピロリドンなどの塩基性化合物、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロスルホン酸などの酸性化合物、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、四塩化錫、四塩化チタンなどのルイス酸性化合物を適量加えた後、加熱還流などにより加熱・攪拌しながら周囲温度か周囲温度を上回る温度で反応させる。
【0055】
溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのエーテル類、フルフラール、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸、無水酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、酢酸エチル、炭酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミド、燐酸トリメチルなどの酸及び酸誘導体、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫化合物、水などが挙げられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて用いられる。
【0056】
溶剤を用いる場合、一般に、溶剤の量が多くなると反応の効率が低下し、反対に、少なくなると、均一に加熱・攪拌するのが困難になったり、副反応が起り易くなる。したがって、溶剤の量を重量比で原料化合物全体の100倍まで、通常、5乃至50倍の範囲にするのが望ましい。原料化合物の種類や反応条件にもよるけれども、反応は10時間以内、通常、0.5乃至5時間で完結する。反応の進行は、例えば、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの汎用の方法によってモニターすることができる。化学式1乃至化学式36で表されるヒドラゾン誘導体は、いずれも、上記した方法によって所望量を容易に得ることができる。ちなみに、一般式3及び一般式4で表されるヒドラジン誘導体及びアルデヒド化合物は、いずれも、類縁化合物を調製するための汎用の方法に準じて得ることができる。
【0057】
一般式1で表されるヒドラゾン誘導体を配位子とする金属錯体を調製するには、一般式1で表されるヒドラゾン誘導体を中間体として用い、これに適宜金属塩を反応させる工程を経由する方法が有利である。具体的には、例えば、一般式1で表されるヒドラゾン誘導体をメタノール、エタノール、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非水溶剤かそれらの混液に溶解し、必要に応じて、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ピロリジン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−メチルピロリドンなどの塩基性化合物を加えた後、適宜金属塩を少量の水又は水と非水溶剤との混液に溶解し、攪拌しながらヒドラゾン誘導体の溶液へ滴々加えて反応させる。目的とする金属錯体の構造にもよるけれども、通常、室温を越え、100℃を下回る温度で反応させると、10時間以内に反応が完結する。金属塩としては、通常、前述のごとき金属の有機酸塩、無機酸塩、酸化物、硫化物、窒化物、硼化物、金属原子などが用いられ、このうち有機酸塩及び無機酸塩としては、例えば、酢酸ニッケル・四水和物、無水酢酸銅、塩化ニッケル・六水和物、塩化第二銅・二水和物、塩化コバルト・六水和物、無水塩化第一鉄、過塩素酸ニッケル・六水和物、過塩素酸銅・六水和物などが挙げられる。化学式1乃至化学式36で表されるヒドラゾン誘導体は、いずれも、この方法によって容易に金属錯体へ変換し得る。ちなみに、ニッケルを中心原子とし、φ1又はφ2が窒素原子を有するヒドラゾン誘導体を配位子とする金属錯体は、例えば、化学式22で表されるヒドラゾン誘導体の場合、化学式37で表される構造を有すると考えられる。なお、化学式37において、ニッケル原子と窒素原子とを結ぶ実線は共有結合を、また、破線は配位結合を表す。
【0058】
【化41】
Figure 0004666742
【0059】
斯くして得られるヒドラゾン化合物は、用途によっては反応混合物のまま用いられることもあるが、通常、使用に先立って、例えば、溶解、抽出、分液、傾斜、濾過、濃縮、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、蒸留、結晶化、昇華などの類縁化合物を精製するための汎用の方法により精製され、必要に応じて、これらの精製方法は組合せて適用される。この発明のヒドラゾン化合物をDVD−Rなどの光記録媒体や色素レーザーに用いる場合には、使用に先立って、蒸留、結晶化及び/又は昇華などの方法によって精製しておくのが望ましい。
【0060】
さて、この発明でいう光吸収材とは、斯かるヒドラゾン化合物の1又は複数を含有し、かつ、それらのヒドラゾン化合物が可視領域に吸収極大を有し、可視光を実質的に吸収するという性質を利用する光吸収材全般を包含するものであって、光吸収材の組成や理化学的形態は問わない。したがって、この発明の光吸収材はヒドラゾン化合物からなるものであっても、ヒドラゾン化合物とともに、用途に応じたそれ以外の成分を1又は複数含有するものであってもよい。この発明の光吸収材を有利に用い得る分野の一つは光記録媒体の分野であって、斯かる分野において、この発明の光吸収材は、有機系光記録媒体、とりわけ、書込光として波長450nm以下のレーザー光を用いる高密度光記録媒体の記録層を構成するための材料として好適である。この発明の光吸収材を光記録媒体に用いる場合には、この発明の目的を逸脱しない範囲で、ヒドラゾン化合物とともに、必要に応じて、例えば、可視光に感度を有する他の有機色素化合物、さらには、耐光性改善剤、バインダー、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、熱干渉防止剤、可塑剤、発色剤、顕色剤、溶解剤などの光記録媒体に汎用される材料を1又は複数含有せしめてもよい。
【0061】
そこで、この発明の光吸収材の用途につき、有機系光記録媒体(有機熱変形型光記録媒体)を例にとって説明すると、この発明の光吸収材は光記録媒体に用いるに際して特殊な処理や操作を必要としないことから、この発明による光記録媒体は通常の光記録媒体に準じて作製することができる。例えば、この発明の光吸収材へ、記録層における反射率や光吸収率を調節すべく、必要に応じて、可視光に感度を有する他の有機色素化合物他を1又は複数含有せしめ、さらに、汎用の耐光性改善剤、バインダー、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、熱干渉防止剤、可塑剤などを1又は複数添加したうえで有機溶剤に溶解し、溶液を噴霧法、浸漬法、ローラー塗布法、回転塗布法などにより基板の片面へ均一に塗布し、乾燥させることによって記録層となる光吸収材による薄膜を形成した後、必要に応じて、書き込んだ情報の読取が可能な、例えば、反射率20%以上、望ましくは、30%以上になるように真空蒸着法、化学蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより金、銀、銅、白金、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケル、鉄、クロムなどの金属か、あるいは、汎用の有機系反射層用材による記録層に密着する反射層を形成したり、傷、埃、汚れなどから記録層を保護する目的で、難燃剤、安定剤、帯電防止剤などを含有せしめた紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂などを塗布し、光照射するか加熱して硬化させることによって反射層へ密着する保護層を形成する。その後、必要に応じて、上述のようにして記録層、反射層及び保護層を形成した一対の基板を、例えば、接着剤、粘着シートなどにより保護層同士を対向させて貼合せるか、あるいは、保護層に対して基板におけると同様の材料、形状の保護板を貼り付ける。なお、記録層を構成する方法は、この発明の光吸収材を溶液にして塗布する方法に限定されてはならず、昇華性のあるものについては、それ以外の、例えば、真空蒸着法、化学蒸着法、原子層エピタクシー法などの方法により、光吸収材の薄膜を基板上に直接形成してもよい。
【0062】
この発明によるヒドラゾン化合物と組合せて用いる他の有機色素化合物としては、それが可視光に感度を有し、この発明によるヒドラゾン誘導体と併用することによって光記録媒体における記録層の光反射率や光吸収率を調節し得るものであるかぎり、特に制限がない。斯かる有機色素化合物としては、置換基を1又は複数有することあるモノメチン鎖又はジメチン鎖、トリメチン鎖、テトラメチン鎖、ペンタメチン鎖、ヘキサメチン鎖、ヘプタメチン鎖などのポリメチン鎖の両端に置換基を1又は複数有することある、互いに同じか異なるイミダゾリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、α−ナフトイミダゾール環、β−ナフトイミダゾール環、インドール環、イソインドール環、インドレニン環、イソインドレニン環、ベンゾインドレニン環、ピリジノインドレニン環、オキサゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピリジノオキサゾール環、α−ナフトオキサゾール環、β−ナフトオキサゾール環、セレナゾリン環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、α−ナフトセレナゾール環、β−ナフトセレナゾール環、チアゾリン環、チアゾール環、イソチアゾール環、テルラゾリン環、テルラゾール環、ベンゾテルラゾール環、α−ナフトテルラゾール環、β−ナフトテルラゾール環、さらには、アクリジン環、アントラセン環、イソキノリン環、イソピロール環、イミダノキサリン環、インダンジオン環、インダゾール環、インダリン環、オキサジアゾール環、カルバゾール環、キサンテン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、クロマン環、シクロヘキサンジオン環、シクロペンタンジオン環、シンノリン環、チオジアゾール環、チオオキサゾリドン環、チオフェン環、チオナフテン環、チオバルビツール酸環、チオヒダントイン環、テトラゾール環、トリアジン環、ナフタレン環、ナフチリジン環、ピペラジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、ピラゾロン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピリリウム環、ピロリジン環、ピロリン環、ピロール環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントレン環、フェナントロリン環、フタラジン環、プテリジン環、フラザン環、フラン環、プリン環、ベンゼン環、ベンゾオキサジン環、ベンゾピラン環、モルホリン環、ロダニン環などの環状核が結合してなるシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、アズレニウム色素、スチリル色素、スクアリリウム色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、フェナントレン色素などのポリメチン系色素に加えて、アクリジン系、アザアヌレン系、アゾ系、アゾ金属錯体系、アントラキノン系、インジゴ系、インダンスレン系、オキサジン系、キサンテン系、ジオキサジン系、チアジン系、チオインジゴ系、テトラピラポルフィラジン系、トリフェニルメタン系、トリフェニルチアジン系、ナフトキノン系、ピロメテン系、フタロシアニン系、ベンゾキノン系、ベンゾピラン系、ベンゾフラノン系、ポルフィリン系、ローダミン系の色素が挙げられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて用いられる。なお、この発明のヒドラゾン誘導体と組合せて用いる有機色素化合物としては、薄膜状態において可視領域、とりわけ、波長400乃至850nmに吸収極大を有するものが望ましく、例えば、同じ特許出願人による特願平11−343211号明細書(名称「スチリル色素」)に開示されたスチリル色素は特に好適である。
【0063】
耐光性改善剤としては、例えば、ニトロソジフェニルアミン、ニトロソアニリン、ニトロソフェノール、ニトロソナフトールなどのニトロソ化合物や、テトラシアノキノジメタン化合物、ジインモニウム塩、ビス[2´−クロロ−3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)ジチオベンジル]ニッケル(商品名『NKX−1199』、株式会社林原生物化学研究所製造)をはじめとするジチオラート系有機金属錯体、ホルマザン金属錯体などの金属錯体が用いられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて用いられる。望ましい耐光性改善剤はニトロソ化合物やホルマザン金属錯体を含んでなるものであり、特に望ましいのは同じ特許出願人による特願平11−163036号明細書(発明の名称「ホルマザン金属錯体」)に開示されたホルマザン骨格における5位の位置にピリジン環を有し、かつ、3位の位置へピリジン環若しくはフラン環が結合してなるホルマザン化合物又はその互変異性体の1又は複数を配位子とする、例えば、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、銅、パラジウムなどとの金属錯体を含んでなるものである。斯かる耐光性改善剤と併用するときには、この発明の光吸収材の有機溶剤における溶解性を低下させたり、望ましい光特性を実質的に損なうことなく、読取光や自然光などの環境光への露光によるヒドラゾン化合物の劣化、退色、変色、変性などの望ましくない変化を効果的に抑制することができる。配合比としては、通常、ヒドラゾン化合物1モルに対して、耐光性改善剤を0.01乃至5モル、望ましくは、0.1乃至1モルの範囲で加減しながら含有せしめる。
【0064】
この発明で用いるヒドラゾン化合物は諸種の有機溶剤において実用上支障のない溶解性を発揮するので、この発明の光吸収材を基板へ塗布するための有機溶剤にも特に制限がない。したがって、この発明による光記録媒体の作製にあっては、例えば、光記録媒体の作製に頻用されるTFPか、あるいは、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジアセトンアルコールなどのアルコール類及びフェノール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのエーテル類、フルフラール、アセトン、1,3−ジアセチルアセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、燐酸トリメチルなどのエステル類、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミドなどのアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物、エチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリドンなどのアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫化合物をはじめとするTFP以外の汎用の有機溶剤から選択し、必要に応じて、これらを適宜組合せて用いる。
【0065】
とりわけ、この発明で用いるヒドラゾン化合物は、例えば、TFPやメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジアセトンアルコールなどの蒸発し易い有機溶剤における溶解度が大きいので、斯かる溶剤にこの発明の光吸収材を溶解し基板へ塗布しても、乾燥後、色素の結晶が出現したり、記録層の膜厚や表面が不均一になることがない。また、この発明で用いるヒドラゾン化合物の多くは、非ハロゲン溶剤である、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、エチルメチルケトンなどのケトン類において良好な溶解性を発揮する。この発明の光吸収材を斯かる非ハロゲン溶剤に溶解して基板へ塗布するときには、溶剤によって基板を傷めたり、環境を汚染し難い実益がある。
【0066】
基板も汎用のものでよく、通常、圧出成形法、射出成形法、圧出射出成形法、フォトポリマー法(2P法)、熱硬化一体成形法、光硬化一体成形法などにより適宜の材料を最終用途に応じて、例えば、直径12cm、厚さ0.1mm又は1.2mmのディスク状に形成し、これを単板で用いるか、あるいは、粘着シートや接着剤などにより適宜貼合せて用いる。基板の材料としては、実質的に透明で、波長350乃至800nmの範囲で80%以上、望ましくは、90%以上の光透過率を有するものであれば、原理上、材質は問わない。個々の材料としては、例えば、ガラス、セラミックのほかに、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン(スチレン共重合物)、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート・ポリスチレン−アロイ、ポリエステルカーボネート、ポリフタレートカーボネート、ポリカーボネートアクリレート、非晶性ポリオレフィン、メタクリレート共重合物、ジアリルカーボネートジエチレングリコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの合成樹脂が用いられ、通常、ポリカーボネート系やアクリル系のものが頻用される。プラスチック製基板の場合、同期信号並びにトラック及びセクターの番地を表示する凹部は、通常、成形の際にトラック内周へ転写される。その凹部は、形状については特に制限はないものの、平均幅が0.3乃至0.8μmの範囲になるように、また、深さが50乃至150nmの範囲になるようにするのが望ましい。
【0067】
この発明による光吸収材は、粘度を勘案しながら、前述のごとき有機溶剤における濃度0.5乃至5%(w/w)の溶液にして、乾燥後の記録層の厚みが10乃至1,000nm、望ましくは、50乃至300nmになるように基板へ均一に塗布される。溶液の塗布に先立って、必要に応じて、基板の保護や接着性の改善などを目的に下引層を設けてもよく、下引層の材料としては、例えば、イオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、シリコン、液状ゴムなどの高分子物質が挙げられる。バインダーを用いる場合には、ニトロセルロース、燐酸セルロース、硫酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、パルミチン酸セルロース、酢酸・プロピオン酸セルロースなどのセルロースエステル類、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロースなどのセルロースエーテル類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのビニル樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、無水マレイン酸共重合体などの共重合樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類をはじめとするポリマーが単独又は組合せて、重量比で、光吸収材の0.01乃至10倍用いられる。
【0068】
この発明による光記録媒体の使用方法について説明すると、この発明によるDVD−Rなどの高密度光記録媒体は、例えば、青色域又は青紫色域で発振するInN系、GaN系、InGaN系、InAlGaN系、InGaNAs系、BInN系、InGaNP系、InP系、GaP系、GaAsP系、SiC系の半導体レーザー素子か、あるいは、赤色域で発振する、例えば、AlGaAs系の半導体レーザー素子へ第二高調波発生機構を設けてなる分布帰還型レーザーなどによる波長450nm以下のレーザー光、とりわけ、波長350乃至450nmのレーザー光を用いて諸種の情報を高密度に書き込むことができる。読取には、書込におけると同様の波長か、あるいは、書込光よりやや長波長又は短波長のレーザー光を用いる。書込、読取の際のレーザー出力について言えば、この発明の光吸収材と組合せて用いる耐光性改善剤の種類と配合量、さらには、書込速度にもよるけれども、この発明による光記録媒体においては、情報を書き込むときのレーザー出力は、ピットが形成されるエネルギーの閾値を越えて比較的強めに、一方、書き込まれた情報を読み取るときの出力は、その閾値を下回って比較的弱めに設定するのが望ましい。一般的には、5mWを上回る出力、通常、10乃至50mWの範囲で書き込み、読取は5mW以下の出力、通常、0.1乃至5mWの範囲で加減する。記録された情報は、光ピックアップにより、光記録媒体の記録面におけるピットとピットが形成されていない部分の反射光量又は透過光量の変化を検出することによって読み取る。
【0069】
斯くして、この発明による光記録媒体においては、発振波長450nm以下のレーザー素子を用いることによって、現行のDVD−Rにおける0.74μmを下回るトラックピッチで、0.4μm/ピットを下回るピット長の極めて微小なピットを高密度に形成することができる。したがって、例えば、直径12cmの基板を用いる場合には、現行のDVD−Rでは容易に達成できない、片面当りの記録容量が4.7GBを優に越え、画像情報及び音声情報を高品位テレビジョン並の高画質で約2時間分記録できる極めて高密度の光記録媒体を実現できることとなる。
【0070】
この発明による光記録媒体は、文字情報、画像情報、音声情報及びその他のデジタル情報を極めて高密度に書き込めるので、文書、データ、コンピュータープログラムなどを記録・保管するための民生用及び業務用記録媒体として極めて有用である。この発明による光記録媒体を用い得る個々の業種と情報の形態としては、例えば、建設・土木における建築・土木図面、地図、道路・河川台帳、アパチュアカード、建築物見取図、災害防止資料、配線図、配置図、新聞・雑誌情報、地域情報、工事報告書など、製造における設計図、成分表、処方、商品仕様書、商品価格表、パーツリスト、メンテナンス情報、事故・故障事例集、苦情処理事例集、製造工程表、技術資料、デッサン、ディテール、自社作品集、技術報告書、検査報告書など、販売における顧客情報、取引先情報、会社情報、契約書、新聞・雑誌情報、営業報告書、企業信用調査、在庫一覧など、金融における会社情報、株価記録、統計資料、新聞・雑誌情報、契約書、顧客リスト、各種申請・届出・免許・許認可書類、業務報告書など、不動産・運輸における物件情報、建築物見取図、地図、地域情報、新聞・雑誌情報、リース契約書、会社情報、在庫一覧、交通情報、取引先情報など、電力・ガスにおける配線・配管図、災害防止資料、作業基準表、調査資料、技術報告書など、医療におけるカルテ、病歴・症例ファイル、医療関係図など、塾・予備校におけるテキスト、問題集、教育用資料、統計資料など、大学・研究所における学術論文、学会記録、研究月報、研究データ、文献及び文献のインデックスなど、情報における調査データ、論文、特許公報、天気図、データ解析記録、顧客ファイルなど、法律における判例など、各種団体における会員名簿、過去帳、作品記録、対戦記録、大会記録など、観光における観光情報、交通情報、マスコミ・出版における自社出版物のインデックス、新聞・雑誌情報、人物ファイル、スポーツ記録、テロップファイル、放送台本など、官庁関係における地図、道路・河川台帳、指紋ファイル、住民票、各種申請・届出・免許・許認可書類、統計資料、公共資料などが挙げられる。とりわけ、1回のみ書き込みできるこの発明の光記録媒体は、記録情報が改竄されたり消去されてはならない、例えば、カルテや公文書などの記録保存に加えて、美術館、図書館、博物館、放送局などの電子ライブラリーとして極めて有用である。
【0071】
この発明による光記録媒体のやや特殊な用途としては、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、レーザーディスク、MD(光磁気ディスクを用いる情報記録システム)、CDV(コンパクトディスクを利用するレーザーディスク)、DAT(磁気テープを利用する情報記録システム)、CD−ROM(コンパクトディスクを利用する読取専用メモリ)、DVD−ROM(デジタルビデオディスクを利用する読取専用メモリ)、DVD−RAM(デジタルビデオディスクを利用する書込可能な読取メモリ)、デジタル写真、映画、ビデオソフト、オーディオソフト、コンピューターグラフィック、出版物、放送番組、コマーシャルメッセージ、コンピュータープログラム、ゲームソフトなどの編集、校正、さらには、大型コンピューター、カーナビゲーション用の外部プログラム記録手段としての用途が挙げられる。
【0072】
以上においては、この発明による光吸収材の光記録媒体の分野における用途として、書込光として波長450nm以下のレーザー光を用いる有機系光記録媒体への適用例を中心に説明してきた。しかしながら、光記録媒体の分野において、この発明の光吸収材の用途は斯かる高密度光記録媒体だけではなく、CD−RやDVD−Rなどの現行の光記録媒体において、例えば、波長635乃至650nm又は775乃至795nmのレーザー光に感度を有する他の有機色素化合物の1又は複数と組合せることによって、それらの光記録媒体における光吸収率や光反射率を調節したり補正するための材料としても有利に用いることができる。また、書込光として波長450nm以下のレーザー光を用いる有機系光記録媒体へ適用する場合であっても、当該ヒドラゾン化合物をして基板上へ直接ピットを形成せしめるのではなく、より長波長の、例えば、波長635乃至650nm又は775乃至795nmのレーザー光に感度を有する他の有機色素化合物の1又は複数と組合せることによって、波長450nm以下のレーザー光による励起エネルギーを当該ヒドラゾン化合物を介してこれらの有機色素化合物へ移動させ、もって、後者の化合物を分解し、間接的にピットを形成してもよい。さらに言えば、この発明でいう光記録媒体とは、特定のヒドラゾン化合物が短波長の可視領域に吸収極大を有し、斯かる領域の光を実質的に吸収するという性質を利用する記録媒体全般を意味するものであって、有機系のもの以外に、例えば、有機色素化合物の光吸収に伴う発熱による発色剤と顕色剤との化学反応を利用する感熱発色方式や、基板の表面に設けられた周期的な凹凸パターンが斯かる発熱によって平坦化される現象を利用する、いわゆる、「蛾の目方式」のものであってもよい。
【0073】
さらに、この発明で用いるヒドラゾン化合物は可視光に感度を有し、これを実質的に吸収することから、斯かるヒドラゾン化合物を含んでなるこの発明の光吸収材は、光記録媒体における用途に加えて、例えば、重合性化合物を可視光に露光させることによって重合させるための材料、太陽電池を増感させるための材料、リソグラフィーにおける光吸収材料、青色域又は青紫色領域で発振する色素レーザーにおけるレーザー作用物質、さらには、諸種の衣料を染色するための光吸収材としても極めて有用である。また、この発明の光吸収材を、必要に応じて、紫外領域、可視領域及び/又は赤外領域の光を吸収する他の光吸収材の1又は複数とともに、衣料一般や、衣料以外の、例えば、ドレープ、レース、ケースメント、プリント、ベネシャンブラインド、ロールスクリーン、シャッター、のれん、毛布、布団、布団側地、布団カバー、布団綿、シーツ、座布団、枕、枕カバー、クッション、マット、カーペット、寝袋、テント、自動車の内装材、ウインドガラス、窓ガラスなどの建寝装用品、紙おむつ、おむつカバー、眼鏡、モノクル、ローネットなどの保健用品、靴の中敷、靴の内張地、鞄地、風呂敷、傘地、パラソル、ぬいぐるみ及び照明装置や、例えば、ブラウン管ディスプレー、液晶ディスプレー、電界発光ディスプレー、プラズマディスプレーなどを用いるテレビジョン受像機やパーソナルコンピューターなどの情報表示装置用のフィルター類、パネル類及びスクリーン類、サングラス、サンルーフ、サンバイザー、PETボトル、貯蔵庫、ビニールハウス、寒冷紗、光ファイバー、プリペイドカード、電子レンジ、オーブンなどの覗き窓、さらには、これらの物品を包装、充填又は収納するための包装用材、充填用材、容器などに用いるときには、生物や物品における自然光や人工光などの環境光による障害や不都合を防止したり低減することができるだけではなく、物品の色彩、色調、風合などを整えたり、物品から反射したり透過する光を所望の色バランスに整えることができる実益がある。
【0074】
以下、この発明の実施の形態につき、実施例に基づいて説明する。
【0075】
【実施例1】
〈ヒドラゾン誘導体〉
反応容器にメタノール120mlをとり、ヒドラジン誘導体として2−ヒドラジノピリジン10gを加えた後、室温下で攪拌しながら、アルデヒド化合物としてのピリジン−2−アルデヒド10gを滴々加え、55℃で2時間加熱・攪拌した。次いで、反応混合物へ水240mlを滴々加え、同じ温度で暫時攪拌した後、反応容器を氷浴上へ移し、攪拌を続けた。析出した結晶を濾取し、乾燥したところ、化学式12で表されるヒドラゾン誘導体の白黄色結晶が15.05g得られた。
【0076】
光特性に優れた本例のヒドラゾン誘導体は、光吸収材として、光記録媒体をはじめとする多種多様な用途へ供することができる。
【0077】
【実施例2】
〈ヒドラゾン誘導体〉
反応容器にメタノール20mlをとり、ヒドラジン誘導体として2−ヒドラジノベンゾチアゾール5gを加えた後、室温下で攪拌しながら、アルデヒド化合物としてのピリジン−2−アルデヒド1.32gを滴々加え、50℃で1時間加熱・攪拌した。加熱を停止し、反応容器を氷浴上へ移し、暫時攪拌した後、析出した結晶を濾取し、乾燥したところ、化学式25で表されるヒドラゾン誘導体の白色結晶が2.6g得られた。
【0078】
光特性に優れた本例のヒドラゾン誘導体は、光吸収材として、光記録媒体をはじめとする多種多様な用途へ供することができる。
【0079】
【実施例3】
〈ヒドラゾン誘導体〉
反応容器にメタノール9mlをとり、ヒドラジン誘導体としてフェニルヒドラジン塩酸塩1gを加えた後、室温下で攪拌しながらトリエチルアミン1.06mlを加えた。次いで、アルデヒド化合物としてのピリジン−2−アルデヒド0.756gを滴々加え、攪拌しながら反応させた後、反応容器を氷浴上へ移し、暫時攪拌を続けた。析出した粗結晶を濾取し、これを水から再結晶し、乾燥したところ、化学式1で表されるヒドラゾン誘導体の白黄色結晶が0.43g得られた。
【0080】
光特性に優れた本例のヒドラゾン誘導体は、光吸収材として、光記録媒体をはじめとする多種多様な用途へ供することができる。
【0081】
【実施例4】
〈金属錯体〉
反応容器にメタノール10mlをとり、ヒドラゾン誘導体として実施例1の方法により得た化学式12で表されるヒドラゾン誘導体1gを加えた後、50℃で加熱・攪拌して溶解させた。次いで、反応容器へトリエチルアミン2.12mlを加え、さらに、メタノール10mlに溶解した酢酸ニッケル(II)・四水和物0.6gを滴々加えた後、同じ温度でさらに30分間加熱・攪拌した。加熱を停止し、反応容器へ水30mlを滴々加えた後、反応容器を氷浴上へ移し、暫時攪拌した。析出した結晶を濾取し、乾燥したところ、化学式12で表されるヒドラゾン誘導体を配位子とするニッケル錯体の茶褐色結晶が0.88g得られた。
【0082】
光特性に優れた本例の金属錯体は、光吸収材として、光記録媒体をはじめとする多種多様な用途へ供することができる。
【0083】
【実施例5】
〈金属錯体〉
反応容器にN,N−ジメチルホルムアミド20mlをとり、ヒドラゾン誘導体として実施例2の方法により得た化学式25で表されるヒドラゾン誘導体1gを加えた後、50℃で加熱・攪拌して溶解させた。次いで、反応容器へトリエチルアミン1.66mlを加え、さらに、メタノール10mlに溶解した酢酸ニッケル(II)・四水和物0.47gを滴々加えた後、同じ温度でさらに30分間加熱・攪拌した。加熱を停止し、反応容器へ水を30ml滴々加えた後、反応容器を氷浴上へ移し、暫時攪拌した。析出した結晶を濾取し、乾燥したところ、化学式25で表されるヒドラゾン誘導体を配位子とするニッケル錯体の茶褐色結晶が1.06g得られた。
【0084】
光特性に優れた本例の金属錯体は、光吸収材として、光記録媒体をはじめとする多種多様な用途へ供することができる。
【0085】
なお、この発明で用いるヒドラゾン化合物は、構造によって仕込条件や収率に若干の違いはあるものの、化学式1乃至化学式36で表されるものを含めて、いずれも、ヒドラジン誘導体にアルデヒド化合物を反応させる工程を経由する実施例1乃至実施例5の方法によるか、あるいは、それらの方法に準じて所望量を調製することができる。
【0086】
【実施例6】
〈ヒドラゾン化合物の光吸収特性〉
表1に示すヒドラゾン化合物につき、常法にしたがって、メタノールに溶解したときの可視吸収スペクトルと、ガラス板上へ製膜したときの可視吸収スペクトルをそれぞれ測定した。結果を表1に纏めるとともに、化学式25で表されるヒドラゾン誘導体及びそのヒドラゾン誘導体を配位子とするニッケル錯体につき、溶液状態及び薄膜状態における可視吸収スペクトルをそれぞれ図1及び図2に示す。
【0087】
【表1】
Figure 0004666742
【0088】
図1及び図2並びに表1の結果に見られるとおり、試験へ供したヒドラゾン化合物は、溶液状態においても薄膜状態においても波長500nm以下、詳細には、波長330乃至480nmに吸収極大を有していた。また、試験へ供したヒドラゾン化合物の多くは、溶液状態においても薄膜状態においても波長350乃至400nmに吸収極大を有し、薄膜状態における長波長側の吸収端は450nm付近まで延展していた。このことは、この発明で用いるヒドラゾン化合物が短波長の可視領域に吸収極大を有し、斯かる領域の光を実質的に吸収すること、さらには、その多くが吸収極大の長波長側で波長450nm以下の可視光を実質的に吸収することを裏付けている。
【0089】
【実施例7】
〈光記録媒体〉
TFPに光吸収材として化学式1、化学式12又は化学式25で表されるヒドラゾン誘導体を濃度3.0%(w/w)になるように加え、さらに、耐光性改善剤として化学式38で表されるニトロソ化合物を濃度0.35%(w/w)になるように添加し、暫時加熱した後、超音波を印加して溶解した。常法にしたがって、この溶液を膜濾過した後、トラック内周へ同期信号並びにトラック及びセクターの番地を表示する凹部を射出成形により転写しておいたポリカーボネート製のディスク状基板(直径12cm)の片面へ回転塗布し、乾燥して厚さ200nmの記録層を形成した。その後、基板へアルミニウムを100nmの厚さになるように蒸着して記録層へ密着する反射層を形成し、さらに、その反射層へ公知の紫外線硬化樹脂(商品名『ダイキュアクリアSD1700』、大日本インキ化学工業株式会社製造)を均一に回転塗布した後、光照射して反射層へ密着する保護層を形成して3種類の光記録媒体を作製した。
【0090】
【化42】
Figure 0004666742
【0091】
本例の光記録媒体は、いずれも、15GB以上の記録容量を有し、発振波長450nm以下のレーザー素子を用いることによって大量の文書情報、画像情報、音声情報及びその他のデジタル情報を高密度に書き込むことができる。発振波長400nmのGaN系半導体レーザー素子を用い、情報を試験的に書き込んだ本例の光記録媒体につき、その記録面を電子顕微鏡により観察したところ、0.4μm/ピットを下回る極めて微小なピットが規則正しく、高密度に形成されていた。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明はヒドラゾン化合物を含んでなる新規な光吸収材の創製と、その産業上有用な特性の発見に基づくものである。この発明の光吸収材は短波長の可視領域に吸収極大を有し、斯かる領域の光を実質的に吸収することから、光吸収材として、斯かる性質を具備する有機色素化合物を必要とする、例えば、光記録媒体、光化学的重合、色素レーザー、太陽電池、リソグラフィー及び染色をはじめとする諸分野において多種多様の用途を有する。とりわけ、薄膜状態において波長450nm以下のレーザー光に感度を有するヒドラゾン化合物は、DVD−Rなどの高密度光記録媒体の記録層を構成する光吸収材として極めて有用である。
【0093】
斯かる光吸収材を含んでなり、書込光として波長450nm以下のレーザー光を用いるこの発明の光記録媒体は、光吸収材としてポリメチン色素を用い、波長635nm又は650nmのレーザー光を書込光とする現行のDVD−Rと比較して、光記録媒体の限られた記録面により微小なピットをより小さなトラックピッチで高密度に形成することができる。したがって、この発明の光記録媒体を用いるときには、1枚の光記録媒体に文字情報、画像情報、音声情報及びその他のデジタル情報を著しく高密度且つ大量に記録できることとなり、その結果として、情報記録に要する1ビット当りの価格を大幅に下げたり、静止画はもとより、大記録容量を必要とする動画を長時間記録できる実益がある。
【0094】
斯くも顕著な効果を奏するこの発明は、斯界に貢献すること誠に多大な、意義のある発明であると言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明で用いるヒドラゾン誘導体の溶液状態及び薄膜状態における可視吸収スペクトルである。
【図2】この発明で用いる金属錯体の溶液状態及び薄膜状態における可視吸収スペクトルである。

Claims (7)

  1. 一般式1で表されるヒドラゾン誘導体配位子(Hz)とする金属錯体含んでなる光記録媒体であって、金属錯体が一般式2で表されることを特徴とする光記録媒体
    Figure 0004666742
    一般式1において、φ 芳香族炭化水素基又は複素環基を、φ は複素環基を表し、それらの芳香族炭化水素基及び複素環基は置換基を有していてもよい。
    一般式2:
    Hzm・M・Xn
    一般式2において、Mは2価の金属を表し、mはMへ配位するHzの数を表す。Xは金属錯体の対イオンを表し、nは金属錯体において、電荷の均衡を保つためのXの数である。
  2. Mがニッケルである請求項に記載の光記録媒体
  3. 属錯体が波長500nm以下に吸収極大を有する請求項1又は2に記載の光記録媒体
  4. さらに、可視光に感度を有する他の有機色素化合物を1又は複数含んでなる請求項1、2又は3に記載の光記録媒体
  5. さらに、適宜の耐光性改善剤を1又は複数含んでなる請求項1、2、3又は4に記載の光記録媒体
  6. 薄膜状態において波長450nm以下の可視光に感度を有する請求項1、2、3、4又は5に記載の光記録媒体
  7. 書込光として波長450nm以下のレーザー光を用いる請求項に記載の光記録媒体。
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