JP4666374B2 - 鉄筋コンクリート部材 - Google Patents

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本発明は鉄筋コンクリート部材に関し、より詳細には、高強度コンクリートを用いた鉄筋コンクリート部材に関する
コンクリートは、図7に示すように、硬化過程で自己収縮を伴う。図7は、コンクリート部材の寸法別のコンクリート硬化時の収縮量の推移を示している。特に、設計基準強度F=100N/mm程度以上の高強度コンクリートでは、自己収縮量が大きく、また、部材の断面の大きさが大きいほど収縮量が大きくなる。
そのため、鉄筋コンクリート部材では、自己収縮により縮もうとするコンクリートを鉄筋が拘束し、コンクリートに引張力が作用する結果、コンクリートにひび割れを生じる可能性が高くなる。
また、コンクリートが硬化する際には、熱を発する。特に、高強度コンクリートは発熱量が大きく、柱部材のような大きな断面サイズの部材内部では100℃近くにまで達する。ところが、部材表面は、外気に放熱するため、温度上昇が少なく、部材断面内で大きな温度勾配を生じ、温度応力を生じる。この結果、更にひび割れが発生しやすくなる。
そして、ひび割れは、意匠を損ない、防水性能や構造性能の機能低下を生じ、建物の価値・性能を低下させてしまう。
このような不具合は、プレキャスト鉄筋コンクリート部材の場合と現場打ちの鉄筋コンクリート部材の場合の双方で生じている。
収縮ひび割れを防止する一般的な方法として、現状では打設コンクリートに、膨張材や収縮低減剤を用いているが、大幅なコストアップとなっている。
鉄筋コンクリート柱を製造するに際して、コンクリートを打設することでその断面の外側部分をまず製造し、つぎに、この外側部分を型枠としてその内部にコンクリートを打設することで断面の内側部分を製造する方法が知られている(非特許文献1)。
しかしながら、この製造方法では、後打ちの内側部分が収縮することで、先打ちの外側部分との間に目開きが生じる可能性が大きくなる。
日本コンクリート工学協会発行、「コンクリート工学」、vol40、NO10、13頁〜20頁、2002年10月
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、コンクリート収縮時の鉄筋の拘束力を極力低減でき、また、コンクリート硬化時における部材の内部と表面との温度差が極力小さくでき、コストを低減しつつひび割れを防止する上で有利な鉄筋コンクリート部材を提供することにある。
前記目的を達成するため本発明は、コンクリート中に多数の鉄筋が埋設されて製造される断面の縦横の寸法よりも大きな寸法の軸方向長さを有する鉄筋コンクリート部材であって、前記鉄筋コンクリート部材は、前記断面の中央部を含む内側部分と、前記内側部分を覆う外側部分とで構成され、前記内側部分は前記外側部分よりも先にコンクリートが打設されて製造されており、前記外側部分は、前記製造後の前記内側部分の外側にコンクリートが打設されて製造されており、前記内側部分と前記外側部分は一体化され、前記コンクリートは、設計基準強度F が100N/mm 以上の高強度コンクリートであることを特徴とする。
本発明の鉄筋コンクリート部材によれば、ひび割れが防止でき、また、先打ちのコンクリート分との間で目開きがなく、内側部分と外側部分とが強固に一体化された鉄筋コンクリート部材を得る上で有利となる。


以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
図1(A)は鉄筋コンクリート柱部材の斜視図、(B)は同断面図である。
本実施の形態では、鉄筋コンクリート部材は、断面の縦横の寸法よりも大きな寸法の軸方向長さを有しコンクリート中Cに多数の鉄筋12が埋設されて製造された断面が矩形の鉄筋コンクリート柱部材10である。
なお、鉄筋コンクリート柱部材10は、現場打ちの鉄筋コンクリート柱部材の場合と、予め工場で製造するプレキャスト鉄筋コンクリート柱部材の場合の双方を含む。
用いるコンクリートCは、設計基準強度F=100N/mm程度以上の高強度コンクリートである。
鉄筋コンクリート柱部材10の断面の中央部を含む内側部分20は、この内側部分20を覆う外側部分30よりも先にコンクリートが打設されて製造されており、内側部分20と外側部分30は一体化されている。
本実施の形態では、鉄筋コンクリート柱部材10は1m角程度の矩形を呈し、内側部分20は30cm角〜40cm角程度の矩形を呈し、外側部分30は厚さが30cm程度の矩形枠状を呈している。
多数の鉄筋12は、鉄筋コンクリート柱部材10の軸方向に延在し軸方向力や曲げモーメントなどを負担する多数の主筋14と、主筋14に連結されて鉄筋コンクリート柱部材10の軸方向と直交する面上を延在しせん断力などを負担する帯筋16などを含んでいる。
多数の主筋14は、鉄筋コンクリート柱部材10の断面の外周部に位置するように配設されている。
このような構成からなる鉄筋コンクリート柱部材10では、内側部分20が外側部分30よりも先に製造され、内側部分20の断面は、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して小さい。
そのため、内側部分20は、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して硬化過程での収縮量が小さく、したがって、自己収縮により縮もうとするコンクリートCへの鉄筋12の拘束力が小さく、内側部分20のひび割れを防止する上で有利となる。
また、内側部分20は、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して硬化過程での発生熱量も小さく、また、その外周面から効果的に放熱されるため、内側部分20の断面の温度勾配を小さく抑制でき、内側部分20のひび割れを防止する上で有利となる。
特に、設計基準強度F=100N/mm程度以上の高強度コンクリートCでは自己収縮量が大きく、また、硬化初期における発熱量が大きいので、内側部分20のひび割れを防止する上でより有利となる。
また、外側部分30の製造時、コンクリートCは、硬化過程で自己収縮するので、外側部分30の内面が内側部分20の外面に密着し、内側部分20と外側部分30とを強固に一体化する上で有利となり、従来のように、先打ちのコンクリート分との間に目開きが生じる不具合もない。
また、外側部分30の断面は、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して小さい。
そのため、外側部分30も、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して硬化過程での収縮量が小さく、したがって、自己収縮により縮もうとするコンクリートへの鉄筋の拘束力が小さく、外側部分30のひび割れを防止する上で有利となる。
また、外側部分30は、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して硬化過程での発生熱量も小さく、また、その外周面から効果的に放熱されるため、外側部分30の断面の温度勾配を小さく抑制でき、外側部分30のひび割れを防止する上で有利となる。
特に、設計基準強度F=100N/mm程度以上の高強度コンクリートCでは自己収縮量が大きく、また、硬化初期における発熱量が大きいので、外側部分30のひび割れを防止する上でより有利となる。
なお、配筋量が多く 外側部分30に収縮ひび割れを生じる可能性がある場合には、外側部分30のみに膨張材や収縮低減剤を入れたコンクリートを打設すればよく、したがって、コストアップを最低限に抑えることが可能となる。
次に、上述の鉄筋コンクリート柱部材10の製造方法について説明する。
図2は内側部材の製造時の型枠と鉄筋との関係を示す斜視図、図3は製造された内側部材の外側に外側部材を製造する際の型枠と鉄筋との関係を示す斜視図を示す。
なお、製造方法の場合も、現場打ちの鉄筋コンクリート柱部材の場合と、予め工場で製造するプレキャスト鉄筋コンクリート柱部材の場合の双方を含む。
まず、図2に示すように、第1の型枠K1内に、複数の主筋14、帯筋16を含む鉄筋12を配筋する。なお、主筋14の下端には、機械式継手Tを連結しておく。
次に、第1の型枠K1内に高強度コンクリートCを打設する。
そして、所定の養生期間の後、第1の型枠K1を外し、図3に示す内側部分20を得る。
養生は自己収縮の進行が緩やかになるまでおこない、養生期間は標準期で5から7日程
度である。
なお、図4に示すように、内側部分20を外側部分30により強固に一体化させるため、内側部分20の外面に、目荒らし、コッターなどの凹凸部2002を設け、後打ちする外側部分30との付着を高めるようにしてもよい。
次に、第2の型枠K2内に、内側部分20を収容し、その周囲に主筋14や帯筋16などを含む鉄筋12を配筋する。なお、主筋14の下端には、機械式継手Tを連結しておく。
次に、図5に示すように、第2の型枠K2内に高強度コンクリートCを打設していく。
そして、所定の養生期間の後、第2の型枠K2を外し、図1に示す内側部分20に外側部分30が一体化された鉄筋コンクリート柱部材10を得る。
養生は自己収縮の進行が緩やかになるまでおこない、養生期間は標準期で5から7日程
度である。
上述の製造方法は、鉄筋コンクリート柱部材10が現場打ちの鉄筋コンクリート柱部材である場合とプレキャスト鉄筋コンクリート柱部材の双方に適用可能であり、プレキャスト工法の場合には、柱全体を横に寝かせた状態で打設することも可能である。
本実施の形態の製造方法によれば、内側部分20の製造時に、内側部分20の断面は、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して小さい。
そのため、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して硬化過程での収縮量が小さく、したがって、自己収縮により縮もうとするコンクリートへの鉄筋の拘束力が小さく、内側部分20のひび割れを防止する上で有利となる。
また、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して硬化過程での発生熱量も小さく、また、その外周面から効果的に放熱されるため、内側部分20の断面の温度勾配を小さく抑制でき、内側部分20のひび割れを防止する上で有利となる。
特に、設計基準強度F=100N/mm程度以上の高強度コンクリートCでは自己収縮量が大きく、また、硬化初期における発熱量が大きいので、内側部分20のひび割れを防止する上でより有利となる。
また、外側部分30の製造時、コンクリートCは、硬化過程で自己収縮するので、外側部分30の内面が内側部分20の外面に密着し、内側部分20と外側部分30とを強固に一体化する上で有利となり、従来のように、先打ちのコンクリート分との間に目開きが生じる不具合もない。
また、外側部分30の断面は、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して小さい。
そのため、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して硬化過程での収縮量が小さく、したがって、自己収縮により縮もうとするコンクリートへの鉄筋の拘束力が小さく、外側部分30のひび割れを防止する上で有利となる。
また、従来の全断面を一度にコンクリート打設する場合に比較して硬化過程での発生熱量も小さく、また、その外周面から効果的に放熱されるため、外側部分30の断面の温度勾配を小さく抑制でき、外側部分30のひび割れを防止する上で有利となる。
特に、設計基準強度F=100N/mm程度以上の高強度コンクリートCでは自己収縮量が大きく、また、硬化初期における発熱量が大きいので、外側部分30のひび割れを防止する上でより有利となる。
なお、配筋量が多く 外側部分30に収縮ひび割れを生じる可能性がある場合には、外側部分30のみに膨張材や収縮低減剤を入れたコンクリートを打設すればよく、したがって、膨張材や収縮低減剤の使用量を低減でき、コストアップを最低限に抑えることが可能となる。
次に本実施の形態の他の例について説明する。
図6(A)乃至(E)は、鉄筋コンクリート柱部材10の他の例の説明図で、それぞれ断面を示している。
図6(A)に示す鉄筋コンクリート柱部材10Aは、内側部材20に鉄筋12が配筋されていない点が実施の形態の鉄筋コンクリート柱10と異なっている。
図6(B)に示す鉄筋コンクリート柱部材10Bは、内側部材20の断面が正八角形である点が実施の形態の鉄筋コンクリート柱10と異なっている。
図6(C)に示す鉄筋コンクリート柱部材10Bは、内側部材20の断面が円形である点が実施の形態の鉄筋コンクリート柱10と異なっている。
図6(D)に示す鉄筋コンクリート柱部材10Dは、帯筋16の形状が実施の形態の鉄筋コンクリート柱10と一部異なっている。
図6(E)に示す鉄筋コンクリート柱部材10Eは、内側部材20の断面が実施の形態の鉄筋コンクリート柱10よりも小さく、かつ、帯筋16の形状が実施の形態の鉄筋コンクリート柱10と一部異なっている。
すなわち、本発明の鉄筋コンクリート柱部材10は、実施の形態の形状に限定されず、従来公知の様々な構造に適用可能である。
なお、本実施の形態では、鉄筋コンクリート部材が鉄筋コンクリート柱である場合について説明したが、本発明における鉄筋コンクリート部材は、鉄筋コンクリート梁などのその他の部材にも無論適用可能である。
また、内側部材には鉄筋(芯鉄筋)に変えて鉄骨(芯鉄骨)が用いられる場合もあり、このような場合にも本発明は無論適用可能であり、したがって、本発明において、内側部材に設けられる鉄筋は鉄骨を含むものである。
(A)は鉄筋コンクリート柱部材の斜視図、(B)は同断面図である。 内側部材の製造時の型枠と鉄筋との関係を示す斜視図である。 製造された内側部材の外側に外側部材を製造する際の型枠と鉄筋との関係を示す斜視図である。 内側部材の斜視図である。 第2の型枠内にコンクリートを打設する際の説明図である。 (A)乃至(E)は鉄筋コンクリート柱部材10の他の例の説明図である。 コンクリート部材の寸法別のコンクリート硬化時の収縮量の推移を示す図である。
符号の説明
10……鉄筋コンクリート柱部材、12……鉄筋、14……主筋、16……帯筋、20……内側部材、30……外側部材。

Claims (5)

  1. コンクリート中に多数の鉄筋が埋設されて製造される断面の縦横の寸法よりも大きな寸法の軸方向長さを有する鉄筋コンクリート部材であって、
    前記鉄筋コンクリート部材は、前記断面の中央部を含む内側部分と、前記内側部分を覆う外側部分とで構成され、
    前記内側部分は前記外側部分よりも先にコンクリートが打設されて製造されており、
    前記外側部分は、前記製造後の前記内側部分の外側にコンクリートが打設されて製造されており、
    前記内側部分と前記外側部分は一体化され、
    前記コンクリートは、設計基準強度F が100N/mm 以上の高強度コンクリートである、
    ことを特徴とする鉄筋コンクリート部材。
  2. 前記鉄筋は、前記内側部分と前記外側部分の双方に配設されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート部材。
  3. 前記鉄筋は、前記外側部分のみに配設されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート部材。
  4. 前記鉄筋コンクリート部材は鉄筋コンクリート柱部材であることを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート部材。
  5. 前記内側部分または外側部分の一方のみに膨張材または収縮低減剤が混入されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート部材。
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