<レーザプリンタの全体構成>
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1はレーザプリンタ1の構成を示す断面図である。
ここで、以下の説明において方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって左側を「前」側、紙面に向かって右側を「後」側とし、紙面に向かって手前側を「右」側、紙面に向かって奥側を「左」側とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下」方向とする。
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Pを給紙するための給紙部3と、露光装置4と、用紙P上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙Pに転写されたトナー像を熱定着させる定着装置6とを主に備えている。本体筐体2の前側には、開閉自在なフロントカバー21が設けられており、フロントカバー21を開いたときにできる開口からプロセスカートリッジ5が着脱可能に装着される。また、本体筐体2の上面には、本体筐体2の外部に排出された用紙Pが蓄積される排紙トレイ22が設けられている。
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、本体筐体2に対して着脱可能に装着される給紙トレイ31と、給紙トレイ31の下部において前方が持ち上がるように揺動自在に設けられた用紙押圧板32と、用紙押圧板32を下方から持ち上げるリフトレバー33とを備えている。また、給紙トレイ31の前寄り上方には、給紙トレイ31から用紙Pを搬送するピックアップローラ34と、給紙ローラ35と、給紙パッド36と、ピンチローラ37と、レジストローラ38とが設けられている。
給紙トレイ31内の用紙Pは、リフトレバー33および用紙押圧板32によって持ち上げられてピックアップローラ34側に寄せられ、ピックアップローラ34によって送り出される。送り出された用紙Pは、給紙ローラ35および給紙パッド36によって一枚ずつ分離され、ピンチローラ37およびレジストローラ38を通った後、プロセスカートリッジ5に搬送される。
露光装置4は、本体筐体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部と、回転駆動されるポリゴンミラー41と、レンズ42,43と、反射鏡44,45とを主に備えている。レーザ発光部から発光される画像データに基づくレーザ光は、鎖線で示すように、ポリゴンミラー41、レンズ42、反射鏡44、レンズ43、反射鏡45の順に反射または通過して、プロセスカートリッジ5の感光体ドラム52の表面上に高速走査にて照射される。
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に設けられ、本体筐体2に対して着脱自在に装着される。このプロセスカートリッジ5は、外枠を構成する中空のケーシング51内に、感光体ドラム52と、帯電器53と、現像ローラ54と、供給ローラ55と、層厚規制ブレード56と、トナー収容部57と、転写ローラ58とを主に備えている。
プロセスカートリッジ5では、感光体ドラム52の表面が、帯電器53により一様に帯
電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、画像データに基づく静電潜像が形成される。
このとき、トナー収容部57内のトナー(図示せず)は、アジテータ57Aの回転により供給ローラ55に供給され、供給ローラ55と現像ローラ54の回転により、供給ローラ55と現像ローラ54が摺接することで、現像ローラ54上に供給される。現像ローラ54上に供給されたトナーは、現像ローラ54の回転により、層厚規制ブレード56と現像ローラ54との間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ54上に担持される。
現像ローラ54上に担持されたトナーは、現像ローラ54と感光体ドラム52とが対向して接触するときに感光体ドラム52上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム52上にトナー像が形成される。そして、感光体ドラム52と転写ローラ58との間を用紙Pが搬送されることで感光体ドラム52上のトナー像が用紙Pに転写される。
定着装置6は、プロセスカートリッジ5の後方(用紙Pの搬送方向下流側)に設けられ、加熱部材の一例としての加熱ローラ61と、加熱ローラ61に対向して配置され、加熱ローラ61との間で用紙Pを挟持する加圧部材の一例としての加圧ローラ62とを主に備えている。定着装置6の詳細な構成については後述する。
用紙Pに転写されたトナー像は、用紙Pが加熱ローラ61と加圧ローラ62との間を挟持されて搬送されながら熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Pは、定着装置6から排出経路23に搬送され、排出経路23から排出ローラ24によって本体筐体2の外部に排出されて排紙トレイ22上に蓄積される。
定着装置6による用紙カールを抑えるため、加圧ローラ62は、加熱ローラ61に対し用紙の搬送方向においてそれぞれ異なる角度の少なくとも2以上の加圧位置に変位可能に設けられている。具体的には、加圧ローラ62は、以下に詳述するように加熱ローラ61の周方向に変位可能に設けられている。
<定着装置の構成>
次に、定着装置6の詳細な構成について説明する。図2において、記録用の用紙が搬送される左斜め上から右斜め下へ向かう方向を「前後」方向とし、用紙の幅方向を「左右」方向とする。
図2、図3に示すように、定着装置6は、加熱ローラ61と、加圧ローラ62と、遮断部材の一例としてのサーモスタット63と、加熱ローラ61、加圧ローラ62およびサーモスタット63を支持するフレーム65とを主に備えている。
フレーム65は、本発明の第一のフレームの一例としての上フレーム71と、本発明の第二のフレームの一例としての下フレーム72とを有する。上フレーム71は、加熱ローラ61の回転軸線方向両端に位置する一対の側壁716と、その一対の側壁716間を加熱ローラ61の回転軸線方向に延びて連結する連結部717とを有する。
連結部717は、加熱ローラ61を挟んで加圧ローラ62とはほぼ反対側に位置し、その上面からは、加熱ローラ61の回転軸線方向に対向する一対のサーモスタット保持ガイド641を突出させている。サーモスタット保持ガイド641は、後述するサーモスタット保持部材64の両端を摺動可能に支持するためのものである。
加熱ローラ61は、金属から形成された円筒状の回転体611と、回転体611の回転中心61Cに配置された本発明の熱源の一例としてのハロゲンヒータ612とから主に構成され、ハロゲンヒータ612の発熱によって回転体611の表面(外周面)が定着温度に加熱される。また、図3に示すように、加熱ローラ61(回転体611)は、両端が軸受66を介して上フレーム71の一対の側壁716に、回転中心軸線のまわりに回転可能に支持されている。軸受66は、加熱ローラ61(回転体611)の表面温度が、定着温度を大きく超えた場合(所定値以上となった場合)に溶融する樹脂(または軟化して変形する樹脂)によって形成されている。
図3に示すように、加圧ローラ62は、回転軸621を両端に突出させた芯金622と、芯金622の周囲を被覆する弾性層623とから主に構成され、回転軸621が下フレーム72の一対の側壁724に軸受624を介して、回転中心軸線のまわりに回転可能に支持されている(図4参照)。下フレーム72は、その一対の側壁724と、その一対の側壁724間を連結し加圧ローラ62の回転軸線方向に延びる連結部725とを有している。連結部725には、加圧ローラ62の回転軸方向において、その縁の部分を除いて開口部が形成されており、該開口部を通じて用紙Pが搬送される。
サーモスタット63は、図示しないバイメタルを利用した公知のサーモスタットであり、所定値以上の温度を検知すると通電を遮断するように構成されている。なお、サーモスタット63は、所定値以上の温度を検知して通電が遮断されると、少なくとも人為的手段によらない限り通電が回復しない種類のサーモスタットである。
サーモスタット63は、図2、図3に示すように、上フレーム71の連結部717上に支持された本発明の保持部材の一例としてのサーモスタット保持部材64に保持されており、可撓性を有するケーブル631を介して図示しない通電用回路に接続されている。サーモスタット保持ガイド641は、連結部717との間に、加熱ローラ61の回転軸線を中心とする円弧状の隙間部715を有している。
サーモスタット保持部材64は、その隙間部715に、両端を摺動可能に挿入され、加熱ローラ61の回転軸線を中心として所定角度範囲内で変位可能に構成される。サーモスタット63はそのサーモスタット保持部材64上から、連結部717に上記変位方向に形成した開口部713をとおして加熱ローラ61の外表面と対向し、加熱ローラ61の周方向の外縁に沿い、加熱ローラ61の外周と一定間隔を保って変位可能である。なお、隙間部715においてサーモスタット保持部材64と接する少なくとも一つの面は、本発明の「ガイド部材」を構成する。
また、サーモスタット保持部材64は、その一部に凹部645を有し、その凹部645に向かって下フレーム72の連結部725から延びた腕部726の先端の係合部723が係合されている。詳細には、凹部645と係合部723とは、両ローラ61,62の回転中心61C,62Cを結ぶ方向と平行な方向において嵌合離脱可能に係合しており、後述する、加圧ローラ62が加熱ローラ61の周方向に変位する方向には、下フレーム72の変位に同期してサーモスタット保持部材64も変位させることができる。
一方、加圧ローラ62が加熱ローラ61を押す方向には、サーモスタット保持部材64を上フレーム71上に静止させたまま、下フレーム72を移動させ、凹部645から係合部723を離脱または離脱することなくその方向に移動させる。なお、通常の定着動作を行う状態で加圧ローラ62が加熱ローラ61に接触しているとき、凹部645と係合部723とが嵌合した状態で、係合部723と凹部645の底部との間に所定長さの空間が設けられている。
また、図4に示すように、サーモスタット63は加熱ローラ61の上方において加熱ローラ61と対向して配置されている。詳細には、サーモスタット63は、加熱ローラ61を挟んで、加圧ローラ62が配置された側とは反対側であって、加熱ローラ61の回転中心61Cと第1加圧位置にある加圧ローラ62の回転中心62Cとを結ぶ面S1(図3参照)上に配置されている。この配置は、加圧ローラ62が加熱ローラ61を押圧する方向のほぼ延長線上である。
次に、加圧ローラ62を加熱ローラ61に対して押圧するための構成、加圧ローラ62を加熱ローラ61の周囲に変位させるための構成について説明する。図5に示すように、フレーム65は、前述した上フレーム71および下フレーム72のほか、位置決め部材73と、押圧部材74と、解除部材75とを有している。
上フレーム71の一対の側壁716の前側下部に、それぞれ、押圧部材74を回動可能に支持する押圧部材支持部711が設けられている。また、各側壁の後部には、引きバネ712の一端部が取り付けられている。なお、引きバネ712の他端部は、押圧部材74の後端に取り付けられている。
下フレーム72は、押圧部材74に、加熱ローラ61の周方向に移動可能でかつ加熱ローラ61向け押圧可能に支持されている。この下フレーム72の一対の側壁724には、それぞれ、加圧ローラ62の回転軸線方向外側に向かって突出し、後述する位置決め部材73をスライド移動可能に支持する突出部721,722(図8参照)が複数設けられている。
位置決め部材73は、下フレーム72の各側壁に対し、加圧ローラ62の回転軸線方向外側から対向する本体部731と、本体部731の下端中央付近から加圧ローラ62の回転軸線方向内側に向かって延びる操作部732とを主に有する略L形状に形成されている。
本体部731には、下フレーム72に設けられた突出部721,722に対応する箇所に加熱ローラ61と加圧ローラ62の対向方向に延びる長穴733(図9も参照)が設けられ、この長穴733に突出部721,722が挿入されている。このような構成により、位置決め部材73は、下フレーム72に対して、加熱ローラ61と加圧ローラ62の対向方向にスライド移動可能となっている。
また、本体部731の下端縁(操作部732の前方部分および後方部分)は、加熱ローラ61の回転軸線を中心とする略円弧状に形成され、その前後方向に複数の位置決め凹部734が設けられている。
位置決め部材73は、下フレーム72に固定された図示しない板バネによって、常時略
下方に向けて付勢されており、操作部732を板バネの付勢力に抗して略上方(加圧ローラ62側)へ押圧することで、位置決め部材73が上方にスライド移動する。
押圧部材74は、下フレーム72および位置決め部材73に対し、加圧ローラ62の軸方向外側から対向するように配置されている。この押圧部材74は、前記したように、前端が上フレーム71の押圧部材支持部711に回動可能に支持され、後端に引きバネ712の他端部が取り付けられている。これにより、押圧部材74(の後端)は、上フレーム71に近接・離間する方向に揺動可能であるとともに、引きバネ712の作用により上フレーム71に近接する方向に付勢されている。
また、押圧部材74には、下方に向かって延びる2つの延出部(符号省略)が形成され、この延出部の前端には、下フレーム72及び位置決め部材73の位置決め凹部734の下において加圧ローラ62の回転軸線方向内側に向かって延びる係合片741が形成されている。この係合片741は、位置決め部材73が板バネによって略下方に向けて付勢された状態において位置決め凹部734と係合する。これにより、位置決め部材73を介して、下フレーム72の上フレーム71に対する加熱ローラ61の周方向への移動が規制され、下フレーム72に支持されている加圧ローラ62の位置が固定される。
また、係合片741は、下フレーム72の側壁の下端に当接し、引きバネ712の作用により、下フレーム72を上フレーム71に近接する方向に付勢する。これにより、下フレーム72に支持されている加圧ローラ62が、上フレーム71に支持されている加熱ローラ61に向けて押圧される。
解除部材75は、側面視略L形状に形成され、支持軸751を介して押圧部材74の後端に回動可能に取り付けられている。図5に示す状態では、解除部材75と上フレーム71との間に所定の間隔があるので、加圧ローラ62は、引きバネ712の作用により押圧部材74および下フレーム72を介して、加熱ローラ61に向けて押圧され接触した状態となっている。
図6に示すように、解除部材75の操作部752が後方へ回動されると、端部753が上フレーム71に当接することで、押圧部材74(の後端)が引きバネ712の付勢力に抗して押し下げられる。これにより、加圧ローラ62が加熱ローラ61から離間して、加圧ローラ62の押圧が解除される。
ここで、加圧ローラ62を第1加圧位置から第2加圧位置へ変位する場合の操作(フレーム65の作用)について説明する。なお、説明の便宜のため、加圧ローラ62の位置について、第1加圧位置から押圧を解除した位置を第1解除位置といい、シート搬送方向(図1参照)において第一加圧位置と異なる角度であって第2加圧位置から押圧を解除した位置を第2解除位置という。
まず、図6に示すように、解除部材75の操作部752を後方へ回動させると、押圧部材74を介して下フレーム72が上フレーム71から離間する方向に移動する。このとき、下フレーム72の係合部723と凹部645の底部との間に形成された空間728は、下フレーム72が移動した分だけ減少する。この動作によって加圧ローラ62は押圧が解除されて第1解除位置へ移動する。
次に、図7に示すように、位置決め部材73の操作部732が板バネの付勢力に抗して略上方(加圧ローラ62側)へ押し上げられることで、位置決め部材73が上方にスライド移動し、押圧部材74の係合片741と位置決め凹部734との係合が解除される。
これにより、下フレーム72の上フレーム71に対する加熱ローラ61の周方向への移動が可能となるので、図8に示すように、下フレーム72を後方へ移動させることで、加
圧ローラ62が第1解除位置から第2解除位置へ移動する。
そして、図9に示すように、操作部732の押圧を解除することで、板バネの作用によって位置決め部材73が略下方に移動して、押圧部材74の係合片741と位置決め凹部734とが係合する。これにより、位置決め部材73を介して、下フレーム72の上フレーム71に対する加熱ローラ61の周方向への移動が規制されるので、下フレーム72に支持されている加圧ローラ62が第2解除位置に固定される。
次いで、図10に示すように、解除部材75の操作部752を前方へ回動することで、引きバネ712の作用により、押圧部材74を介して、下フレーム72が上フレーム71に近接する方向に移動する。これにより、加圧ローラ62が加熱ローラ61に向けて押圧され接触する第2加圧位置へ移動する。
なお、加圧ローラ62を第2加圧位置から第1加圧位置へ変位する場合は、上記と逆の操作によって行うことができる。
上記のような作用によって、加圧ローラ62の位置を第一加圧位置から第二加圧位置に変位することができる。次に、加圧ローラ62が第一加圧位置から第二加圧位置に変位する場合のサーモスタット63を保持するサーモスタット保持部材64の作用について説明する。
加圧ローラ62が図5の第一加圧位置にあるとき、係合部723は凹部645の底部に空間を形成しているから、第一位置から図6に示した第二解除位置へ移動する際に係合部723は下フレーム72と一緒に同方向へと移動する。加圧ローラ62が図5の第一加圧位置から図6の第一解除位置へ移動した後、加圧ローラ62を第二解除位置へ変位させると、サーモスタット保持部材64は、隙間部715に沿って図3から図11に示すように反時計回りに変位する。これによって、図11に示すようにサーモスタット63は、第二加圧位置にある加圧ローラ62が配置された側とは反対側であって、加熱ローラ61の回転中心61Cと第二加圧位置にある加圧ローラ62の回転中心62Cとを結ぶ面S2上に位置する。加圧ローラ62を第二加圧位置に移動させてもその状態は維持される。
なお、上述のように、隙間部715が加熱ローラ61の回転軸線を中心とする円弧状に形成されている。そのため、サーモスタット保持部材64はサーモスタット保持ガイド641に沿い、サーモスタット63が加熱ローラ61の周方向の外縁と常に一定の間隔を保って変位することが可能となる。これによって、サーモスタット63が変位するにあたってサーモスタット63が加熱ローラ61と接触し、加熱ローラ61を傷つけることがない。さらに、変位前と同じ条件でハロゲンヒータ612への通電を遮断することが可能となる。
また、この加圧ローラ62が第一加圧位置から第二加圧位置まで変位する過程で、ケーブル631は通電用回路とサーモスタット63を接続したまま撓んで変位する。ケーブル631は可撓性を有しているため、サーモスタット63の変位に合わせてスムーズに変位することができる。そのため、サーモスタット63が変位するに際して変位の邪魔になることがない。
<暴走時における通電の遮断>
次に、ハロゲンヒータ612が軸受66を溶融するまで過熱された暴走時における定着装置6の作用について説明する。ここでは、第一加圧位置にて暴走が起こったとする。
図13、図14に示すように、加熱ローラ61の温度が所定の温度よりも上昇すると、樹脂製の軸受66が溶融する。すると、加圧ローラ62を押圧方向に付勢していた引きバネ712の力によって加熱ローラ61がさらに上方へ押圧される。すると、軸受66が溶融したことによって加熱ローラ61が上方、すなわち加圧ローラ62による加熱ローラ61への押圧方向の延長方向へ移動し、加熱ローラ61がサーモスタット63に接近する。サーモスタット63が所定値以上の温度を感知すると通電が遮断され、ハロゲンヒータ612の加熱が停止される。
このとき、図13に示すように、サーモスタット保持部材64と係合していた係合部723が、下フレーム72の上方への移動に伴って上方へ移動し、凹部645との係合が解除される。これによって、暴走時に加圧ローラ62が下フレーム72ごと上方へ移動しても、サーモスタット63は静止位置にあり、加熱ローラ61が上記の移動によってサーモスタット63に接近することとなる。
なお、サーモスタット63は、第一及び第二の加圧位置で、加熱ローラ61の回転中心61Cと加圧ローラ62の回転中心62Cとを結ぶ面、すなわち加圧ローラ62による加熱ローラ61への押圧方向の延長線上に位置しているが、押圧部材74から加圧ローラ62への押圧方向や、その方向と両ローラの回転中心との位置関係などで、加熱ローラ61が前記面または前記延長線上からずれて移動することがあり得る。したがって、サーモスタット63は、それに対応して、前記面または前記延長線上からずれて配置しても良い。
また、上記実施形態において、下フレーム72の連結部725及び腕部726からなる部分がそれぞれ異なる部品として前記押圧方向に移動可能に連結し、一方の部品を下フレーム72の側壁724に、他方の部品をサーモスタット保持部材64にそれぞれ固定することもできる。これにより、下フレーム72の側壁724の前記第一及び第二の加圧位置間での変位に対しては、それぞれの部品は一体的に動作し、サーモスタット63もそれに連動して前述のように変位する。下フレーム72の側壁724の前記押圧方向の移動は、同方向で2部品間の相対移動により、サーモスタット63を静止位置に維持する。
<その他の変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であり、ここではその他の変形例について説明する。なお、ここでは先述した定着装置6と同じ部分について同一の符号を付す。
図16(a),(b)に示すように、下フレーム72は、加熱ローラ61の回転軸線を中心として回転可能に上フレーム71の側壁716に支持されている。下フレーム72の連結部725は、上フレーム71の連結部717の上面と平行に延出してサーモスタット保持部材として機能し、サーモスタット63を保持している。サーモスタット63は、連結部717に設けられた開口部713を通って加熱ローラ61と対向している。
下フレーム72を回転可能に支持している上フレーム71の円筒部718は、サーモスタット63を加熱ローラ61の外縁に沿うようにガイドするガイド部材として機能し、後述する加圧ローラ62の各加圧位置で、サーモスタット63を加熱ローラ61から一定の距離に保持している。
また、下フレーム72のうち加圧ローラ62の回転軸621が挿通される部分には加圧ローラ62の加圧方向に長い形状の回転軸用長穴727が設けられている。それによって、加圧ローラ62は、加熱ローラ61の回転中心61Cと加圧ローラ62の回転中心62Cとを結ぶ方向には下フレーム72とは独立して移動可能であるが、加熱ローラ61の周方向には下フレーム72と一体に変位可能である。そして、回転軸用長穴727から突出した回転軸621は、引きバネ712によって加熱ローラ61の方向に付勢された押圧部材74に支持されている。押圧部材74は、下フレーム72の側壁724に押圧部材支持部711にて回転可能に支持されている。
下フレーム72を加熱ローラの61の回転軸線を中心として所定の角度範囲で回転操作することで、図16(b)に実線と鎖線とで示すように、加圧ローラ62を、加熱ローラ61に対してその周方向に第一加圧位置と第二加圧位置とに選択的に変位させることができる。下フレーム72上に押圧部材74も支持されているから、各加圧位置において加圧ローラ62は加熱ローラ61に同等の圧力で接触している。また、各加圧位置において、図示しない係止部材により、下フレーム72の位置を固定しておくことが望ましい。
この構成によって、加圧ローラ62が第一加圧位置から第二加圧位置に変位すると、それに同期してサーモスタット63が開口部713の領域を加熱ローラ61の周方向に変位し、加熱ローラ61の回転中心61Cと加圧ローラ62の回転中心62Cとを結ぶ面上に位置する。
また、加熱ローラ61が所定の温度以上に加熱されて軸受66が溶融すると、引きバネ712の押圧力によって回転軸621が回転軸用長穴727中を押圧方向に持ち上げられて移動する。このとき、下フレーム72は引きバネ712の作用を受けない。
したがって、加圧ローラ62の移動に対してサーモスタット63は静止したままである。さらに、加圧位置の変位前と変位後でサーモスタット63と加圧ローラ62の相対的な位置関係は変わらないので、常に同条件で加熱ローラ61をサーモスタット63に接近させて通電の遮断が可能である。
図16の実施形態では、下フレーム72に支持した加圧ローラ62とサーモスタット63のうち、加圧ローラ62を移動可能にしたが、下フレーム72の側壁724において前記押圧方向に長く形成された長孔を設け、サーモスタット63を保持する連結部725の両端が長孔に沿って移動可能に支持されるように構成してもよい。この場合、前記実施形態の隙間部715のようなガイド部を用いて、下フレーム72の連結部725が上フレーム71の連結部717の円弧状面に沿ってスライド移動可能に変位する。
また、図16の実施形態において、下フレーム72の側壁724は前記押圧方向に移動可能に、例えばピンなどで連結された2部品で構成し、側壁724の一方に加圧ローラ62を支持し、側壁724の他方を下フレーム72の連結部725に連結することもできる。これにより、加圧ローラ62の前記第一及び第二の加圧位置間での変位に対しては、2部品は一体的に動作し、サーモスタット63もそれに連動して前述のように変位する。加圧ローラ62の前記押圧方向の移動は、同方向での2部品間の相対移動により、サーモスタット63を静止位置に維持する。
さらに、図16の実施形態において、下フレーム72の側壁724は、加圧ローラ62を支持する部分と、サーモスタット63を保持する部分との間の箇所を、前記押圧方向に可撓性を有し、加熱ローラ61の回転軸線のまわりに回転する方向に対しては剛性を有する材料で構成することもできる。たとえば、側壁724を弾性のある樹脂等の材料で形成し、前記箇所を前記押圧方向に伸縮可能な蛇腹状にする。これにより、加圧ローラ62の前記第一及び第二の加圧位置間での変位に対しては、サーモスタット63もそれに連動して前述のように変位する。加圧ローラ62の前記押圧方向の移動は、材料の撓みにより、サーモスタット63を静止位置に維持する。
なお、前記した実施形態では、遮断部材の一例としてのサーモスタット63を採用した例を示したが、本発明の遮断部材はこれに限定されず、例えば、所定値以上の温度に達すると溶断して通電を遮断する温度ヒューズなどを採用してもよい。
前記した実施形態では、加熱ローラ61の軸受66は所定温度以上で溶融または変形する樹脂によって形成したが、軸受66をそのような溶融または変形する樹脂でない材料で形成し、その軸受66を上フレーム72対して所定温度以上で溶融または変形する材料を介して取り付けてもよい。
前記した実施形態では、加圧ローラ62が2つの加圧位置の間を変位可能に構成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、加圧ローラ(加圧部材)が3以上の加圧位置の間を変位可能に構成されていてもよい。
前記した実施形態では、サーモスタットの配置は、加熱ローラ61の回転中心61Cと加圧ローラ62の回転中心62Cとを結ぶ面上に存在していたが、実施例に示した配置に限定されず、上記した面に対して所定の角度をもつようにして配置されてもよい。
前記した実施形態では、加熱部材の一例として加熱ローラ62を、加圧部材の一例として加圧ローラ62を採用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、加熱部材の他の例としてフィルム状の加熱部材などを、加圧部材の他の例としてベルト状の加圧部材などを採用してもよい。
前記した実施形態では、熱源の一例としてハロゲンヒータ612を採用した例を示したが、熱源はこれに限定されず、例えば、セラミックヒータなどを採用してもよい。
前記した実施形態では、フレームは樹脂製としたが、金属などの剛性の高い材料で形成されても良い。
前記した実施形態では、定着装置6を画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1に使用した例を示したが、本発明の定着装置が使用される画像形成装置はこれに限定されるものではない。例えば、LEDプリンタ、複写機、複合機などに使用してもよいし、カラー画像を形成可能なプリンタ、複写機、複合機などに使用してもよい。