JP4661501B2 - スクリーン紗用モノフィラメント - Google Patents

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本発明は、印刷スクリーン紗用芯鞘複合モノフィラメントに関する。更に詳しくは、電子回路印刷等の高精密プリント印刷分野において感光、露光工程でのハレーション防止に優れ、寸法安定性も兼ね備えたスクリーン紗用芯鞘複合モノフィラメントに関する。
最近の電子回路印刷等の高精密プリント分野では、より精密な印刷精度に対する要求がますます厳しくなってきている。通常、スクリーン紗の製版は、モノフィラメントをメッシュ織物とした後、フレーム枠に紗張りし、感光樹脂を塗布、乾燥させその面にポジフィルムを密着させ、これを紫外線で露光すると露光部は光化学反応を起こし、水不溶性に変化するが、これを水洗すると、ポジフィルムの不透明部分に相当する未反応の感光膜が洗い流され、スクリーンが現像し、その織目からインクが押し流されて印刷されるといった工程をたどる。
スクリーン紗製造工程では、紫外線露光工程の制御は非常に重要で、露光量が少ないと感光膜の硬化が不十分で現像時に脱落するといった問題や、逆に多すぎると現像時に感光樹脂の抜けが悪くなり、織目が埋まるといった問題があった。また、紫外線がメッシュ織物表面で乱反射し、露光不要な部分まで感光させて硬化する、いわゆるハレーションが発生する問題があり、印刷設計や精度が大きく狂ってしまう。ハレーションを防止する為に、紫外線の影響を少なくするため、メッシュ織物に染色を施す方法があるが、性能は充分ではない。
これらの問題を解決するべく、鞘成分にポリアミドすなわちナイロン6、ナイロン66等を使用し、その鞘成分に黄色顔料を混入したモノフィラメントからなる印捺スクリーン用メッシュ織物が提案されている(特許文献1参照)が、メッシュ織物を構成するモノフィラメントの鞘成分がポリアミドの場合、モノフィラメントが持つ破断強度が低く、寸法安定性に欠けるといった問題や製織時に目ずれが生じ、寸法安定性が悪くなり印刷精度が低下するといった問題があった。また、芯成分にポリエステル、鞘成分にポリアミドを使用した場合には複合界面での剥離現象が発生し、メッシュ織物の品位が低下するといった問題もあった。
一方、優れた寸法安定性を持ち、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物を使用した、紫外線反射が少ないスクリーン用モノフィラメントが提案されている(特許文献2参照)が、高精度印刷用メッシュ織物に加工した場合に感光・露光の際のハレーション防止効果は得られるものの高精密プリント印刷分野における性能は十分ではなく、スクリーン上に焼き付けた印刷パターンには、ぼけ・かぶりなどが生じるといった問題があった。
特開平01−47591号公報(第2項左欄18行〜右欄14行) 特開2004−262007号公報(第2項25行〜第3項5行)
本発明は上記問題を解決し、印刷スクリーン用メッシュ織物に加工する際、感光、露光工程でのハレーション防止に優れ、かつ寸法安定性が良好で、印刷精度に優れたスクリーン紗用芯鞘複合モノフィラメントを提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)複合形態が芯鞘構造を形成するスクリーン紗用モノフィラメントにおいて、芯鞘いずれの成分もポリエステルからなり、鞘成分に有機系顔料であるアンスラキノンイエローを含み、波長300〜500nmの光に対する反射率が5.0%以下であり、かつ初期弾性率が100〜125cN/dtexである、スクリーン紗用芯鞘複合モノフィラメント。
)芯鞘成分の複合比率が容積比率で70:30〜90:10からなり、破断強度が5.9〜7.0cN/dtexであることを特徴とする前記(1)記載のスクリーン紗用芯鞘複合モノフィラメント。
本発明におけるスクリーン紗用芯鞘複合モノフィラメントは、高精度印刷プリント分野において、感光、露光工程でのハレーション防止に優れ、かつ寸法安定性が良好であり印刷精度に優れた特性を持つことから高精度プリント印刷スクリーン紗用原糸として適した素材となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の芯鞘複合モノフィラメントは、写真製版法で300〜500nmにピークを有する波長の光に対する反射率が5.0%以下である。反射率が10%を超えると高精度印刷プリント分野において十分なハレーション防止効果が得られないことから、より好ましくは反射率が限りなく0%に近いほうが良い。
本発明の芯鞘複合モノフィラメントは、高精密プリント印刷に適した高強力モノフィラメントであり、製織性の低下や紗伸びなどの発生を抑え、高い寸法安定性を維持するには、初期弾性率は100〜125cN/dtexである。ここでいう初期弾性率とは、初期長20cmのモノフィラメントを歪速度100%/分にて引っ張り試験を行い、図1のSS曲線を得た後に、第一降伏点Y1までの直線関係にあたる点Aと点Bの傾きから、以下の方法で計算したものである。
初期弾性率(cN/dtex)=
(点Aの強度−点Bの強度)/{(点Aの伸度−点Bの伸度)/100}
初期弾性率が100cN/dtex未満であると、必要十分な寸法安定性が得られず、印刷精度が低下する。また、初期弾性率が125cN/dtexを超えるとメッシュ織物製造における整経・製織工程で削れやスカムが生じ易くなり、メッシュ織物の品位が低下する。より好ましくは100〜120cN/dtexである。
本発明で使用する芯鞘複合モノフィラメントの芯、および鞘成分は、いずれの成分もポリエステルからなるものであることが好ましい。該芯、および鞘成分を構成するポリエステルは、モノフィラメントを製織後、加工段階での熱セットにおける寸法安定性を確実なものにするために、一般的に用いられるエチレングリコールをテレフタル酸で重合し、添加剤として酸化チタンを0.1〜0.5重量%添加したポリエチレンテレフタレートを使用するのが好ましく、なかでも酸化チタン添加量が0.2〜0.4重量%のエチレンテレフタレートが好ましい。
本発明の芯鞘複合モノフィラメントに、ハレーション防止効果を付与するためには芯鞘複合を形成する鞘成分のポリエステルに、有機系顔料を混入して原液着色することが好ましい。この方法は、複合芯鞘モノフィラメントの鞘成分に顔料を混入するだけでメッシュ織物の製造後に染色する必要がなく、安定したハレーション防止効果を得ることができる。また、繊維表面に異物が付着したり、メッシュ織物に熱収縮が生じたりすることなく、スクリーン版を製造できるため、高密度で微細なパターンをも精度良くスクリーン版に製造できるものとなる。
本発明で用いる有機系顔料は、波長300〜500nmの光に対する反射率が低く、出来るだけ均一に原液着色し、かつモノフィラメントを加工する際の工程を削れなく通過させるうえでは、黄色顔料、例えばColor Index Y193、化審法化学物質番号(5)−1259に示されるアンスラキノンイエロー等が好ましい。また、芯鞘複合を形成する鞘成分のポリエステルに混入する顔料濃度は、溶融紡糸する際の適当な粘性保持や、顔料を均一に混練するうえで4〜15%が好ましい。
本発明において、鞘成分のポリエステルに顔料を混入する方法は特に規定されるものではないが、ブレンダーを用いてペレットの状態でベースポリマーと混練した後、溶融する方法や、もしくは鞘成分のポリエステルと顔料をそれぞれ溶融させ、溶融ポリマー状態で混練機器を通過させて混練する方法が均一な混練性を得るために好ましい。
本発明において、芯鞘複合モノフィラメントの芯鞘構造を形成する芯成分と鞘成分の比率は容量比率で70:30〜90:10が好ましく、特に75:25〜85:15であるのが良い。鞘成分が少なすぎると、鞘の被膜が薄くなりすぎて、紡糸時に厚み斑が生じ易くなったり、製織時、紗張り時または、印刷時に外部応力を受けて被膜が破れ易くなったりすることがある。逆に芯成分が少なすぎると、これらの欠点は生じないが、引張応力に対する抵抗が小となり、スクリーンとしての寸法安定性に欠けることとなる。
本発明における芯鞘複合モノフィラメントの形態は、繊維横断面の全周にわたって鞘成分が連続で存在し、芯成分が露出していないことが重要である。繊維の横断面の形状は、通常の丸断面形状でよく、また芯成分の配置および形状は特に限定されず、単芯、多芯、異型断面、同心、偏心いずれも可能である。しかし、寸法安定性を保証するためには、応力が分散しない丸断面の同心円単芯配置又は丸断面の多芯配置が好ましい。
本発明の芯鞘複合モノフィラメントは、高精密プリント印刷に適した高強力モノフィラメントであり、製織性の低下や紗伸びなどの発生を抑え、高い寸法安定性を維持するには破断強度が5.9〜7.0cN/dtexのものが好ましい。
本発明の芯鞘複合モノフィラメントの繊度は8.0〜18dtexの範囲であれば、高精度印刷プリント分野において、寸法安定性や印刷精度に優れた本発明の効果を最大限得られる。
本発明における芯鞘複合モノフィラメントは、2種以上の溶融部を有する紡糸機において、290℃で芯鞘複合を形成するようなオリフィス孔を有する紡糸部材で溶融紡糸し、冷却固化させた後、給油させ、引取速度1000m/分で一旦巻き取る。巻き取った未延伸糸をホットローラー延伸機にて、予備加熱温度90℃、延伸倍率4.0倍で延伸した後、温度130℃で熱セットして900m/分巻き取ることで得られる。
以下実施例より本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何等限定されるものではない。なお、実施例中の各特性値は以下の方法を用いて測定した。
1.反射率(%)
芯鞘複合モノフィラメントから得られた経・緯密度350メッシュ(350本/2.54cm)のメッシュ織物について、JISZ8722(色の測定方法−反射及び透過物体色)記載の方法で反射率(%)を測定した。
2.初期弾性率(cN/dtex)
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、歪速度100%/分、初荷重1/30cN/dtexとして破断するまで引っ張り試験を実施し、初期弾性率は上述した方法で算出した。
3.破断強度(cN/dtex)
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、歪速度100%/分、初荷重1/30cN/dtexとして破断するまで引っ張り試験を実施し、破断したときの強度を求めた。
4.ハレーション防止効果
芯鞘複合モノフィラメントから得られた経・緯密度350メッシュ(350本/2.54cm)のメッシュ織物に微細パターンを焼き付けて電子顕微鏡で観察した。
◎…ハレーション防止効果大。
○…ハレーション防止効果有り。
△…ハレーション防止効果少ない。
×…ハレーション発生。
6.メッシュ織物への微細パターン焼き付け状態
芯鞘複合モノフィラメントから得られた経・緯密度350メッシュ(350本/2.54cm)のメッシュ織物に微細パターンを焼き付けて電子顕微鏡で観察した。
◎…接着力が良く、パターンがより鮮明である。
○…接着力が良く、パターンのエッジも良い。
△…接着力に劣り、パターンのエッジが悪い。
×…接着力がなく、パターンを形成しない。
実施例1
極限粘度(η)0.50のポリエチレンテレフタレートを鞘、極限粘度(η)0.80のポリエチレンテレフタレートを芯とし、ペレット状の鞘成分のポリエチレンテレフタレートに顔料濃度10%の割合でペレット状の黄色顔料(C.I.PIGイエローNo.193)を添加し、芯:鞘の複合比率が容積比率で80:20の円形同心複合フィラメントになるよう、紡糸温度290℃、巻き取り速度1000m/分で製造し、このフィラメントを延伸倍率4.4倍、延伸温度91℃、熱セット温度を130℃で延伸し、繊度13dtexの芯鞘複合モノフィラメントを得た。
得られた芯鞘複合モノフィラメントをスルーザー型織機に掛け、経・緯密度350メッシュ(350本/2.54cm)、回転数250rpmでメッシュ織物を製織した後、反射率を測定した。その後、微細パターンを焼き付けて顕微鏡で観察した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は4.5%であった。また、ハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、鮮明であった。初期弾性率は110cN/dtex、破断強度は6.0cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。
実施例2
芯:鞘の複合比率を70:30に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は3.0%であった。また、ハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、実施例1と同様に鮮明であった。初期弾性率は100cN/dtex、破断強度は5.9cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。
実施例3
芯:鞘の複合比率を90:10に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は5.0%であった。また、ハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、実施例1、2と同様に鮮明であった。初期弾性率は118、破断強度は6.2cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。
実施例4
延伸倍率を4.6倍に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は4.8%であった。また、ハレーション防止効果が高く、微細パターンの接着力が良く、実施例1〜3と同様に鮮明であった。初期弾性率は125cN/dtex、破断強度は7.0cN/dtexであり、実使用上特に問題のないレベルが得られた。
比較例1
ナイロン6を鞘成分に使用し、紡糸温度を290℃、延伸温度85℃、延伸熱セット温度を180℃とした以外は実施例1と同様に実施した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は4.5%であったが、初期弾性率は90cN/dtex、破断強度は5.7cN/dtexであり、実使用上必要な強度が得られず、寸法安定性が悪く、更には整経・製織工程で界面剥離してスカムが多発してメッシュ織物の目詰まりが起こり、ハレーション防止効果は得られるものの、微細パターンの接着力が悪く、鮮明なパターンが得られなかった。
比較例2
鞘成分に、平均分子量が600のポリエチレングリコールをポリエステル中に4.8重量%共重合させた共重合ポリエステルを鞘成分として使用し、また顔料はベンゾトリアゾール使用した以外は実施例1と同様に実施した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は10.0%であった。初期弾性率は92cN/dtex、破断強度は5.7cN/dtexであり、実使用上必要な強度が得られず、寸法安定性が悪かった。また、ハレーション防止効果はあまり得られず、微細パターンの接着力が悪く、鮮明なパターンが得られなかった。
比較例3
延伸倍率を4.8倍とした以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は4.7%であったが、初期弾性率は130cN/dtex、破断強度は7.5cN/dtexと高く、メッシュ織物を製造する際に削れが発生してスカムがメッシュ織物の目に詰まり、ハレーション防止効果は得られるものの、微細パターンの接着力が悪く、鮮明なパターンが得られなかった。
比較例4
有機系顔料を混練せず、白色の芯鞘複合モノフィラメントとし、製織工程で得られたメッシュ織物を0.2%の中性洗剤で洗浄、乾燥させた後、PVA−酢酸ビニル系感光性樹脂NK−14(ヘキスト社製)を塗布、乾燥し、塗り重ねによって膜厚を10〜12μmとした以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は9.5%であった。初期弾性率は110cN/dtex、破断強度は6.0cN/dtexと高く、整経・製織工程での糸削れの影響により、メッシュ織物中にごく僅かな粉末状の汚れが織り込まれていたことから、感光性樹脂NK−14を塗布した際、膜厚にバラツキが生じ、微細パターンの接着力、鮮明さはやや劣り、ハレーション防止効果もあまり見られなかった。
比較例5
芯鞘複合比率を60:40にした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。
得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は5.0%であった。初期弾性率は85cN/dtex、強度は5.5cN/dtexであり、寸法安定性を維持するのに必要な強度が得られなかった。製織工程では糸削れが発生し易くなり、糸削れの影響により、メッシュ織物中にごく僅かな粉末状の汚れが織り込まれていたことから、微細パターンの接着力、鮮明さは劣るものの、ハレーション防止効果は見られた。
比較例6
芯鞘複合比率を95:5にした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた芯鞘複合モノフィラメントを整経・製織したメッシュ織物の反射率は7.0%であった。初期弾性率は110cN/dtex、強度は6.0cN/dtexであり、寸法安定性を維持するのに必要な強度が得られたが、有機顔料を含む鞘成分の重量配分が少なく、整経・製織工程で芯鞘成分の界面剥離が発生したことから、メッシュ織物中にヒゲ状の汚れが織り込まれていたことから、ハレーション防止効果は満足できるものではなく、微細パターンの接着力、鮮明さも劣るものであった。
結果をまとめて表1に示す。
Figure 0004661501
初期弾性率の算出方法を説明するSS曲線図
符号の説明
Y1:第一降伏点

Claims (2)

  1. 複合形態が芯鞘構造を形成するスクリーン紗用モノフィラメントにおいて、芯鞘いずれの成分もポリエステルからなり、鞘成分に有機系顔料であるアンスラキノンイエローを含み、波長300〜500nmの光に対する反射率が5.0%以下であり、かつ初期弾性率が100〜125cN/dtexである、スクリーン紗用芯鞘複合モノフィラメント。
  2. 芯鞘成分の複合比率が容積比率で70:30〜90:10からなり、破断強度が5.9〜7.0cN/dtexである請求項1記載のスクリーン紗用芯鞘複合モノフィラメント。
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