JP4657401B2 - カルボキシル基含有樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体やディスプレイ分野で用いられるアルカリ現像性レジスト、カラーレジスト、保護膜剤、絶縁膜に好適に用いられるカルボキシル基含有樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
回路や画像形成用のレジストとして、カルボキシル基をもつ以下のようなアルカリ現像性樹脂が好適に用いられている。
(1)カルボキシル基を含有する一官能ビニル化合物(メタクリル酸など)の共重合体。
(2)酸無水物基を主鎖若しくは側鎖にもつ重合体にヒドロキシ化合物を付加させたカルボキシル基をもつ重合体。
(3)水酸基を側鎖にもつ重合体に酸無水物を付加したカルボキシル基をもつ重合体。
(4)ジオール化合物と酸二無水物とを反応させたカルボキシル基をもつ共重合体。
このなかで、(2)〜(4)はいずれも付加後にエステル基とカルボキシル基とが隣接しており、一般的にハーフエステルと称され、例えば特開平4-340965号公報、特開平4-355450号公報など多数例示されている。
【0003】
これらハーフエステルの合成手法としては、反応温度より高い沸点を持つ溶媒中で、4級アンモニウム塩や三級アミン、トリフェニルホスフィンなどの触媒共存下若しくは無触媒で80〜120℃で5〜30時間の加熱反応させている。特に、芳香族酸無水物を反応原料として用いるとき、一般的に反応溶媒への溶解性が低いために、比較的高い反応温度を用いていた(例えば、特開平4‐355450号公報)。
【0004】
ところが、このような従来の方法に従って製造した樹脂は、樹脂溶液粘度並びに分子量が製造ロット間の変位が大きく、また経時と共に変化し、安定するまでに3週間以上を要していた。従って、これを用いたアルカリ現像性レジスト材料は、塗布膜厚や現像プロセスマージンが変動して、ディスプレイや半導体の歩留まりを低下せしめていた。
一方、アルキド樹脂や不飽和ポリエステル樹脂では、酸無水物若しくは多塩基酸と多価ヒドロキシ化合物とを200〜250℃において縮合させて、かつ縮合水を溶媒とともに追い出す手法で製造されている。この場合、酸無水物基と水酸基とが反応した後に生成するカルボキシル基は、更に残存する水酸基と縮合反応してエステル結合を形成する。従って、200℃以上の反応温度では、本発明が目的とするハーフエステル構造を主体とするカルボキシル基含有樹脂の製造方法とはなり得ない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製造ロット間の変位が少なく、また経時安定性に優れたハーフエステル構造を有するカルボキシル基含有樹脂の製造法を提供するものである。
【0006】
【課題を達成するための手段】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、酸無水物とヒドロキシ化合物とからのハーフエステル生成反応がより低温で平衡的に優位であり、より高温になるとエステルとカルボキシル基とから酸無水物基が再生することを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、酸無水物とヒドロキシ化合物とを溶媒中で反応させてハーフエステル構造を有するカルボキシル基含有樹脂を製造する方法において、酸無水物が芳香族酸二無水物であり、ヒドロキシ化合物がジオール化合物から誘導したジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加化合物であり、酸無水物とヒドロキシ化合物の仕込み比が水酸基100モルに対し、酸無水物基が100モル未満となり、酸無水物とヒドロキシ化合物とを合わせた濃度が45〜75重量%となるように酸無水物、ヒドロキシ化合物及び溶媒を仕込み、まず100〜140℃において攪拌して仕込み原料を均一に溶解させると共に第1段の反応を行い、引き続いて40〜80℃において3〜15時間加熱して第2段の反応を行うことを特徴とするカルボキシル基含有樹脂の製造方法である。
【0008】
本発明の製造法は、酸無水物とヒドロキシ化合物との反応で得られる以下に例示した公知のハーフエステル構造を持つカルボキシル基含有樹脂の製造に利用することができる。
(1)一分子中に3個以上の酸無水物基を持つ樹脂に一官能ヒドロキシ化合物を付加させた樹脂、例えば無水マレイン酸とスチレン、プロピレン、イソブテン等ビニルモノマーとを共重合させたビニル共重合樹脂に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを付加させた樹脂、
(2)一分子中に3個以上の水酸基をもつ樹脂を多価ヒドロキシ化合物とし、これに酸一無水物を付加させたもの、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を持つモノマー又はこれと他のビニルモノマーとから得られるとするビニル(共)重合樹脂を多価ヒドロキシ化合物とし、これにテトラヒドロ無水フタル酸などの酸一無水物を付加させたもの、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂など一分子中に2個以上のエポキシ基を持つものに等当量のアクリル酸を付加した樹脂を多価ヒドロキシ化合物として、これにテトラヒドロ無水フタル酸などの酸一無水物を付加させたもの、
(3)一分子中に2個の水酸基をもったヒドロキシ化合物すなわちジオール化合物と、酸二無水物との共重合体、例えばフルオレン型エポキシ樹脂など一分子中に2個のエポキシ基をもつものに等当量のアクリル酸を付加したものとビフェニルテトラカルボン酸二無水物と付加(共重合)したもの、などである。特に、ジオール化合物中の2つの水酸基と酸二無水物中の2つの酸無水物基との反応性が等しくなる、例えば対称な分子構造を有するものに対して重合反応時の分子量増加の観点から本製造法は特に好ましい結果を与える。
【0009】
上記のハーフエステル構造を持つカルボキシル基含有樹脂の製造に用いられる酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸等の酸一無水物、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物や、エチレングリコールビストリメリレート酸二無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸二無水物等の酸二無水物、無水マレイン酸とスチレン等とを共重合させたビニル共重合樹脂等の多価酸無水物等が挙げられる。
【0010】
本発明におけるヒドロキシ化合物としては、酸無水物と反応してハーフエステル構造を形成する能力のある水酸基を有するものであればよいが、好適な一官能ヒドロキシ化合物としては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。
【0011】
ジオール化合物の好ましい具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水添ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、4,4'-ビフェノール等、又はこれらジオール化合物から誘導した各種ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加化合物、脂環系ジエポキシと(メタ)アクリル酸との付加物、前述のビスフェノール類を更にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシドとの付加物を例示することができる。特に、(メタ)アクリル酸付加物は酸二無水物との反応後に同一分子中に重合性不飽和基とアルカリ可溶性カルボキシル基を持つことになるために、露光感度の向上と高解像度化に対して好ましい。一方、前述したビスフェノール化合物からジグリシジルエーテルを誘導する際の副反応としてエポキシ基にフェノール性水酸基が付加することにより、分子量分布をもったエポキシ樹脂が得られるのが一般的であるが、すなわちエポキシ樹脂は両末端にエポキシ基を持ち、ビスフェノール残基を‐CH2CH(OH)CH2‐で結合した重合体を含む。この結合部の2級水酸基は、本発明の反応温度では酸無水物基との反応性は低いので、これら分子量分布をもったビスフェノール類並びにこれより得た各種ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加化合物は、本発明においてはジオール化合物となる。
【0012】
更に、多価ヒドロキシ化合物の好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を持つモノマー又はこれと他のビニルモノマーとから得られるビニル(共)重合樹脂、あるいはフェノール化合物とホルムアルデヒド若しくはパラキシリデングリコールとを縮合させた多価フェノール樹脂、更には、多価フェノール樹脂をグリシジルエーテル化した後に等当量のアクリル酸を付加させたエポキシアクリレート樹脂、等を例示することができる。
【0013】
本発明の製造方法によりカルボキシル基含有樹脂を製造する場合、仕込み酸無水物基の当量は仕込み水酸基の1当量に対して、等当量未満で行う。ここで言う当量とは、ハーフエステルの生成が主反応であるため、酸無水物基(-CO-O-CO-)1モルが1当量となる。また、ハーフエステルとは、反応後の酸無水物基から1つのエステル結合と1つのカルボキシル基を生じたものをいう。酸無水物基/水酸基の好ましい当量比又はモル比は、0.5〜0.95であるが、公知の所望するアルカリ現像特性から選択される。仕込みが等当量以上であると、得られた共重合体から調製した光重合層組成物は保存安定性に欠ける。
【0014】
本発明のカルボキシル基含有樹脂の製造方法は、前記の多価ヒドロキシ化合物と酸無水物とを溶媒中で加熱、撹拌して行う。使用する溶媒は、酸無水物基との反応が生じる官能基、例えば水酸基やアミノ基を持たないものが適している。また、耐圧反応容器等を用いる必要がないことから反応温度より高い沸点を有するのが適している。例えば、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンなどの、エーテル系、エステル系、ケトン系の溶媒が好んで用いられる。また、カルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の反応性単量体を溶媒として用いることもできる。
【0015】
本発明においては、原料溶液中に反応を促進する目的で触媒を使用してもよい。この際の触媒の使用量は、多価ヒドロキシ化合物に対して0.001〜2重量%の範囲であることが好ましい。この触媒の例としては、テトラエチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩や3級アミンなど公知のものを使用することができる。また、重合性不飽和基の熱安定性を確保する目的で、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエンなどの重合禁止剤を樹脂成分に対して0.1重量%以下の範囲で加えてもよい。
【0016】
反応溶液中の酸無水物と多価ヒドロキシ化合物とを合わせた原料濃度は、40〜75重量%の範囲内であることが必要であり、好ましくは45〜70重量%である。この濃度が40重量%を下回るとハーフエステル生成反応が遅くなって、反応終了後の樹脂溶液の安定性、すなわち粘度や分子量分布の安定に時間を要する。一方、75重量%を超えるとヒドロキシ化合物及び/又は酸無水物によっては溶解が十分でなく、また反応溶液の粘度が高くなり、均一反応が困難になる。
【0017】
本発明においては、上記のように調製した原料溶液を、まず90〜140℃の温度で均一に溶解させる。この工程においては、原料の溶解と共にエステル化反応が進行する一方、後述の作用機構で示すように逆反応で酸無水物が再生して、十分な反応率若しくは分子量には達しない。溶解時間は、特に制限はなく、通常1〜2時間である。溶解時の温度が140℃、特に160℃を超えるとゲル物の発生が懸念され、またカルボン酸と水酸基との縮合反応も増大して得られる樹脂中のカルボキシル基含有量が安定しないことが懸念される。一方、80℃を下回ると未溶解のヒドロキシ化合物や酸無水物の残存や、これによる反応終了後の経時安定性が低下する。なお、酸無水物が酸二無水物であるときはその溶解性の低さから、好ましくは100℃以上の温度で溶解させることがよい。
【0018】
この溶解工程においては、溶解だけでなく反応も進行するので、第1段の反応ともいうが、ここでの反応は温度が高いため、可逆反応が生じて反応率や分子量の増加が十分に見込めない。従って、溶解完了後は分子量や反応率がほとんど変化しなくなったところで第2段の反応に移るのが最適になるが、その目安は1〜2時間である。
【0019】
前記反応原料の溶解工程後、引き続き40〜80℃、好ましくは50〜70℃の温度において3〜15時間の加熱を行い、第2段の反応を行う。この反応では低温であるほど加熱に要する時間を長く必要とし、実質生産性を考慮して15時間以内とすることがよい。40℃を下回ると、反応速度が遅く、所望の経時安定性を達成するには15時間を超えても目的を達成することができない。一方、80℃を超えると第2段の反応による経時安定性への効果は見られない。なお、この加熱工程は、反応溶液の熟成を行うとも言えるので、熟成工程ともいう。
【0020】
また、本発明においては、加熱時に撹拌を行うことが好ましい。特に第一段階の溶解工程では原料の溶解速度を速めるとともに、偏熱による局所的なゲル化を抑制するために効果的である。また、第二段階の熟成工程においても反応系の粘度が高くなるために反応速度を速くし、均一に反応を行う上で有効である。
【0021】
この様にして得られたカルボキシル基含有樹脂は、室温で10日以内に粘度、分子量、現像特性が安定する。一方、第1段の高温での反応を行わずに未反応の酸無水物が残存した場合は、ゲル化物の発生やレジストなどの感光性樹脂溶液の濾過時にフィルター寿命の短命化を招く。また、第2段の低温での反応を行わないと、熟成が進まず、粘度や分子量など安定するまでに1ヶ月以上を要する。
【0022】
本発明の製造法は、特に酸二無水物とジオール化合物との反応に見られる難溶性の酸無水物を使用して重量平均分子量5000を超える共重合体を得ようとする際に有効であり、ジオール化合物中の2つの水酸基と酸二無水物中の2つの酸無水物基との反応性が等しくなる、例えば対称な分子構造を有するものに対して重合反応時の分子量増加の観点から本製造法は特に好ましい結果を与える。本発明の製造方法はアルカリ現像性のネガレジストの構成成分となるカルボキシル基含有樹脂で酸価が50〜170mgKOH/gであるものの製造に好適である。すなわち、第1段目で140℃以下の温度で加熱するのでカルボキシル基と水酸基の縮合を抑制し、露光部のゲル物突起の生成や未露光部の溶解遅延を防止することができる。また、第2段目で熟成を行うことで、カルボキシル基含有樹脂の分子量や酸価の変動による現像マージンの変化を抑制することが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の作用機構は明確ではないが、次のようであると解される。第1段の140℃以下の反応温度で、比較的速い反応速度でハーフエステル化反応とこれらの逆反応を含む反応が進行し、第2段の80℃以下の低温での反応で、ハーフエステルが増加し、未反応原料等が減少し、組成的に安定したものになると推察される。
【0024】
本発明で得られたカルボキシル基含有樹脂は、用途に応じて光重合性モノマー、光重合開始剤、溶媒、顔料等と混合され、カラーフィルター用インキ、保護膜剤、半導体向けのエッチングレジストや層間絶縁膜などに好適に用いられ安定した現像特性や塗布膜厚を与える感光性樹脂組成物とすることができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例並びに比較例により詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例に於けるカルボキシル基含有樹脂の評価は、ことわりのない限り以下の通りである。
【0026】
[固形分濃度]得られた樹脂溶液約1g強をガラスフィルターW0(g)に含浸させて秤量W1(g)し、160℃にて2時間加熱した後の重量W2(g)から次式により求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0)
[酸価]得られた樹脂溶液をジオキサン-エタノール等容混合溶液にいれ、フェノールフタレインを指示薬として1/10N-KOHエタノール(50%)水溶液で滴定して求めた。
[分子量]テトラヒドロフランを展開溶媒としてRI(屈折率)検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。求めた分子量は、未反応原料を除いたカルボキシル基含有共重合体部分のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
[粘度]得られた樹脂溶液を恒温水槽中25℃に保持し、粘度をBH型粘度計を用いて測定した。
【0027】
[安定性]得られた樹脂溶液を25±2℃の室内に保存し、粘度並びにGPCによる分子量測定を行い、経時の変化を調べた。特に、経時初期に粘度並びに分子量の増加が見られ、以下のように判定した。
【0028】
・粘度;2ヶ月後の粘度aを基準とし、その9割の粘度、すなわち0.9a以上となるに要する日数を以下のように評定した。
10日以内・・・○
11日〜20日以内・・・△
21日以上・・・×
【0029】
・分子量(実施例1〜5、比較例1〜5):GPC分析クロマトグラフ中の生成物面積(すなわち未反応原料ピークを除いた面積)を100%として、ポリスチレン換算で重量平均分子量4300以上となる保持時間をもつ高分子量体のGPC面積%の経時変化を測定した。2ヶ月後の高分子量体に起因するGPC面積%bを基準にして、その9割の面積%0.9b以上となる日数を以下のように評定した。
10日以内・・・○
11日〜20日以内・・・△
21日以上・・・×
・分子量(実施例6、比較例6):GPC分析クロマトグラフ中の生成物面積が、未反応原料を含めたGPC分析クロマトグラフ全面積の9割以上となる日数を以下のように評定した。
10日以内・・・○
11日〜20日以内・・・△
21日以上・・・×
【0030】
実施例1
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にて、フルオレンビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに1モル(当量)のアクリル酸を付加させたエポキシアクリレート(フルオレンビスフェノール型エポキシ樹脂のジヒドロキシプロピルアクリレート:ASF400 新日鐵化学(株)製)104.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略号PGMEA)107.1gに溶解し、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学(株)製、略号BPDA)31.2g、テトラエチルアンモニウムブロマイド(略号TEABr)0.31gを加え、まず123〜126℃に加熱下に2時間撹拌し、未溶解の固体がないことを確認した。更に、59〜62℃にて8時間の加熱撹拌を行って、淡黄色透明の粘調なカルボキシル基含有の樹脂溶液A-1を得た。この溶液の樹脂固形分濃度は56%、溶液酸価は51.2mgKOH/gであった。
【0031】
実施例2〜4
表1に示したように反応温度並びに加熱時間をかえて、若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの仕込量を変えた他は実施例1と同様にして樹脂溶液A-2〜A-4を調製した。
【0032】
比較例1〜3
表1に示したように反応温度を一段階とするか、二段階としたときは本発明の範囲外の温度で行った他は実施例1と同様にしてカルボキシル基含有の樹脂溶液a-1〜a-3を調製した。
【0033】
比較例4
表1に示したようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの仕込量を変えて、原料濃度を35重量%とした他は実施例1と同様にして樹脂溶液a-4を調製した。
【0034】
実施例1〜4においては粘度並びに分子量が10日以内に安定した。一方、比較例1〜2、比較例4では安定までに1ヶ月以上を要し、また、比較例3では不溶のビフェニルテトラカルボン酸二無水物が残存していて、経時でも消失は見られなかった。
【0035】
実施例5
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にて、フルオレン型エポキシ樹脂に当量のアクリル酸を付加させたエポキシアクリレート(新日鐵化学(株)製ASF400)104.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート107.1gに溶解し、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物23.3g、テトラヒドロ無水フタル酸(略号THPA)12.0g,テトラエチルアンモニウムブロマイド0.31gを加え、まず123〜126℃に加熱下に2時間撹拌し、未溶解の固体がないことを確認した。更に、59〜62℃にて8時間の加熱撹拌を行って、淡黄色透明の粘調なカルボキシル基含有の樹脂溶液B-1を得た。この溶液の樹脂固形分濃度は56.5%、溶液酸価は54.5mgKOH/gであった。
【0036】
比較例5
表1に示したように反応温度を一段とした他は実施例1と同様にしてカルボキシル基含有の樹脂溶液b-1を調製した。
実施例5においては粘度並びに分子量が10日以内に安定した。一方、比較例5では粘度の安定までに1ヶ月を要した。
【0037】
実施例6
エポキシ当量が217で、かつ1分子中に5〜7のフェノール核残基とエポキシ基とを合わせ持つクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製EOCN-102S)を1当量と等当量のアクリル酸とを反応させて得られる反応物(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のジヒドロキシプロピルアクリレート:A−NOVO)100gと無水テトラヒドロフタル酸35.8gとを、還流冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート105gに溶解し、テトラエチルアンモニウムブロマイド0.31gを加え、まず95〜100℃に加熱下に2時間撹拌し、未溶解の固体がないことを確認した。更に、59〜62℃にて8時間の加熱撹拌を行って、淡黄色透明の粘調なカルボキシル基含有の樹脂溶液B-2を得た。この溶液の樹脂固形分濃度は56.2%、溶液酸価は56.0mgKOH/gであった。
【0038】
比較例6
表1に示したように反応温度を一段とした他は実施例6と同様にして樹脂溶液b-2を調製した。
実施例6においては目的物である酸付加体の面積%が10日以内に安定したが、比較例6では未反応原料の面積%が減少しての酸付加体の面積%の安定までに1ヶ月を要した。
【0039】
実施例7
実施例1で調製したカルボキシル基含有樹脂溶液を用いて、以下の手順でブラックインキを調製した。
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート72.7gとシクロヘキサノン68.5gの混合溶液にイルガキュア907(チバ社製、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロペン-1-オン)1.28g、TAZ-110(ミドリ化学株式会社製、2,4-トリクロロメチル-(4'-メトキシスチリル)-6-トリアジン)2.14g、EAB-F(保土ヶ谷化学社製、N,N,N',N'-テトラエチル-4,4'-ジアミノビフェニル)0.42gとカルボキシル基含有樹脂溶液60g、カヤラッドDPHA(日本化薬社製、ジペンタエリストールヘキサアクリレートとジペンタエリストールペンタアクリレートとの混合物)12.8gとを加えて撹拌し、均一溶液を調製した。更にこの均一溶液20.0gにカーボンブラック分散体TCR(御国色素社製、カーボンブラック濃度20重量%)を混合し、約30分間撹拌してブラックインキを調製した。
【0040】
このように調製したブラックインキを5インチ角ガラス基板上にスピンコートし、ホットプレート上60℃で1分間乾燥し、ネガマスクを当てて500mJ/cm2(365nm光線基準)の露光を行った。更に、塗膜を0.08重量%Na2CO3水溶液中23℃で所定時間の現像を行い、次いで純水でリンスを行って未露光部分の残存インキを除去した。現像を進めるに従い、ネガパターンが形成されたのち、線が細り始め、更には基板より剥離する。ネガパターンは、20μm幅格子(抜かれる窓は80μm角)であり、線幅が20±1μmとなる現像時間の最短時間と最長時間を現像マージンとした。ここで用いたカルボキシル基含有樹脂溶液は実施例1で調製したものを室温にて4日、7日、14日と保存したものを用いて、それぞれのブラックインキの現像マージンを測定しところ、いずれも40〜70秒と広い現像マージンを持ち、且ついずれも安定していた。
【0041】
比較例7
比較例2で調製したカルボキシル基含有樹脂溶液を室温にて7日、14日、28日と保存したものを用いて、実施例7と同様にブラックインキをそれぞれ調製し、現像マージンを評価した。現像マージンはそれぞれ40〜45秒、40〜50秒、45秒〜60秒であり、マージンも狭く、また経時の変化も大きかった。
【0042】
実施例1〜6及び比較例1〜6の条件及び結果を表1に示した。表1において、略号は本文中に記載したとおりである。実施例ではいずれも粘度ならびに分子量は10日以内に安定した。一方、比較例では粘度及び/又は分子量が安定するまでに10日を越える日数を要した。
【0043】
更に、実施例1で得られた樹脂溶液A-1の室温保存時の分子量経時変化を表2に、樹脂溶液A-1を室温にて10日間保持した後、表3に示す再加熱温度で36時間保持したときの分子量分布を表3に示す。表2及び表3において、高分子量成分はポリスチレン換算で分子量4300を越える樹脂成分であり、中高分子量成分はポリスチレン換算で分子量1500〜4200の樹脂成分であり、1:1付加物はASF400とBPDA1分子同士の付加物である。
【0044】
表3から再加熱温度70℃以下ではほとんど分子量の低下は見られないが、一方、再加熱温度80℃以上では分子量の低下が認められる。そして、80℃での分子量分布は1日室温保持後とほぼ同等の分子量分布となる。更に、分子量の低下した100℃再加熱品を室温で10日間保持して分子量分布を観測したところ(表3中の100+室温)、再度分子量の増加が見られた。
【0045】
以上の結果から、高温になるとエステル基とカルボキシル基から酸無水物基と水酸基が再生されることが示唆された。従って、本作用機構から考えて、本発明のように酸無水物の溶解後に40〜80℃における熟成するが分子量の安定化に有効であることが判明した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、製造ロット間の変位が少なく、また経時安定性に優れたハーフエステル基をもつカルボキシル基含有樹脂を製造することができ、これによりこれを用いたアルカリ現像性レジスト材料は、塗布膜厚や現像プロセスマージンが安定して、ディスプレイや半導体の製造歩留まりを向上させる。
Claims (2)
- 酸無水物とヒドロキシ化合物とを溶媒中で反応させてハーフエステル構造を有するカルボキシル基含有樹脂を製造する方法において、酸無水物が芳香族酸二無水物であり、ヒドロキシ化合物がジオール化合物から誘導したジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加化合物であり、酸無水物とヒドロキシ化合物の仕込み比が水酸基100モルに対し、酸無水物基が100モル未満となり、酸無水物とヒドロキシ化合物とを合わせた濃度が45〜75重量%となるように酸無水物、ヒドロキシ化合物及び溶媒を仕込み、まず100〜140℃において攪拌して仕込み原料を均一に溶解させると共に第1段の反応を行い、引き続いて40〜80℃において3〜15時間加熱して第2段の反応を行うことを特徴とするカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
- カルボキシル基含有樹脂の酸価が50〜170mgKOH/gである請求項1記載のカルボキシル基含有樹脂の製造方法。
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