即ち、本発明の目的は、筒内Soot濃度センサを利用して過渡運転状態であっても燃焼室から排出されるSootの量を適切な値に制御することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
燃焼室内でSootが発生する反応過程では、先ずSootの生成反応が主として発生して筒内Soot濃度が増大し、その後、生成されたSootの酸化反応が主として発生して筒内Soot濃度が減少していくことが知られている。即ち、燃焼行程を含む所定の期間内では、筒内Soot濃度は、初めに増大しその後に減少する変化パターンを持って変化する。
他方、パイロットインターバル(パイロット噴射からメイン噴射までの間の期間)やスワール等を制御することでSootの生成反応の程度を調整でき、EGR率等を調整することでSootの酸化反応の程度を調整することができる。換言すれば、内燃機関の制御パラメータを制御することで、上記燃焼行程を含む所定の期間内における筒内Soot濃度の変化パターンを調整することができ、この結果、燃焼室から排出されるSootの量を調整することができる。
加えて、上記筒内Soot濃度センサを利用することで、燃焼室から排出されるSootの量が適切な値となる場合に対応する筒内Soot濃度の変化パターン(以下、「基準パターン」と称呼する。)を種々の運転状態(例えば、燃料噴射量、エンジン回転速度等)に対応させて予め取得しておくことができる。
以上のことから、筒内Soot濃度センサにより取得された筒内Soot濃度の変化パターンに基づいて内燃機関の制御パラメータを制御することで、筒内Soot濃度の変化パターンを上記基準パターンになるように調整して燃焼室から排出されるSootの量を適切な値に調整することができる。本発明は、係る原理に基づくものである。
即ち、本発明に係る制御装置は、内燃機関の燃焼室内におけるSootの濃度である筒内Soot濃度を直接検出する筒内Soot濃度センサを備えた内燃機関に適用され、燃焼行程を含む所定の期間内における前記検出された筒内Soot濃度の履歴を記憶する記憶手段と、前記記憶された前記筒内Soot濃度の履歴に基づいて前記燃焼室から排出されるSootの量を制御するために前記内燃機関の制御パラメータを制御する制御手段とを備えている。
より具体的には、前記制御手段は、前記記憶された前記筒内Soot濃度の履歴から得られる前記筒内Soot濃度の変化パターンが基準パターンになるように、前記筒内Soot濃度の履歴に基づいて前記内燃機関の制御パラメータを制御するように構成される。これによれば、過渡運転状態であっても、筒内Soot濃度の変化パターンが上記基準パターンになるように直ちに調整され得、この結果、燃焼室から排出されるSootの量を適切な値に調整することができる。
ここにおいて、前記所定の期間は、例えば、Sootに係わる反応の開始時点近傍から終了時点近傍までの間であり、より具体的には、燃料噴射開始時期から排気弁の開弁時期までの間等である。また、上述したように、前記制御パラメータは、例えば、パイロットインターバル、スワール、EGR率等であり、前記基準パターンは、現時点での内燃機関の運転状態(例えば、燃料噴射量、エンジン回転速度等)において燃焼室から排出されるSootの量が適切な値となる場合に対応する予め取得されている筒内Soot濃度の変化パターンである。
更に具体的には、上記本発明に係る制御装置においては、前記制御手段は、前記記憶された前記筒内Soot濃度の履歴のうち、前記燃焼室内でのSootの生成反応の程度を表す値となる第1時点での前記筒内Soot濃度と、前記燃焼室内で生成されたSootの酸化反応の程度を表す値となる前記第1時点より後の第2時点での前記筒内Soot濃度と、に基づいて前記内燃機関の制御パラメータを制御するように構成される。
上述したように、筒内Soot濃度の変化パターンは、燃焼室内でのSootの生成反応の程度と酸化反応の程度に大きく依存して決定される。従って、記憶されている筒内Soot濃度の履歴のうち、燃焼室内でのSootの生成反応の程度を表す値となる「第1時点での筒内Soot濃度」と、燃焼室内で生成されたSootの酸化反応の程度を表す値となる「第2時点での筒内Soot濃度」の2つの値のみから、筒内Soot濃度の変化パターンの特徴(特性)を或る程度正確に取得することができる。
上記構成は係る観点に基づくものである。これによれば、記憶されている筒内Soot濃度の履歴のうち上記「第1時点での筒内Soot濃度」の値と上記「第2時点での筒内Soot濃度」の値の2つの値のみを使用して制御パラメータを制御することで筒内Soot濃度の変化パターンを基準パターンになるように調整することができる。
ここで、燃焼室内でのSootの生成反応の程度は、記憶された筒内Soot濃度の履歴のうちの最大値に大きく依存すると考えられ、燃焼室内で生成されたSootの酸化反応の程度は、上記最大値を採った後に減少していく筒内Soot濃度の収束値に大きく依存すると考えられる。従って、前記第1時点としては、記憶された筒内Soot濃度の履歴のうちの最大値に対応する時点を使用し、前記第2時点として前記筒内Soot濃度が収束したと判定される時点以降の時点を使用するように構成されることが好適である。
前記「筒内Soot濃度が一定値に収束したと判定される時点以降の時点」としては、例えば、排気弁の開弁時点、筒内Soot濃度の変化速度(の絶対値)が所定の微小値以下となった時点、燃焼室内のガス温度がSootに係わる反応が実質的に終了する所定の温度以下となった時点等である。
より具体的には、前記制御手段は、前記第1時点での前記筒内Soot濃度と前記第2時点での前記筒内Soot濃度とに基づいて前記筒内Soot濃度の変化パターンの特性を表す値である特性指標値を取得し、前記特性指標値に基づいて前記内燃機関の制御パラメータを制御するように構成されることが好ましい。前記特性指標値としては、例えば、前記第1時点での前記筒内Soot濃度に対する前記第2時点での前記筒内Soot濃度の割合等が挙げられる。
このように、前記特性指標値として、前記第1時点での前記筒内Soot濃度に対する前記第2時点での前記筒内Soot濃度の割合が使用される場合、前記制御手段は、前記割合が前記基準パターンに対応する所定値よりも小さいとき、Sootの生成反応を抑制するために前記制御パラメータを制御するように構成されることが好適である。この場合、具体的には、例えば、パイロット噴射からメイン噴射までの間の期間であるパイロットインターバルが長くなるように制御される。
上記割合が前記基準パターンに対応する所定値よりも小さいことは、基準パターンに比してSootの生成反応が過剰であることを意味し得る。従って、上記構成によれば、Sootの生成反応が過剰である場合、Sootの生成反応が抑制され得、この結果、筒内Soot濃度の変化パターンを基準パターンになるように調整することができる。
一方、前記制御手段は、前記割合が前記基準パターンに対応する所定値以上のとき、Sootの酸化反応を促進するために前記制御パラメータを制御するように構成されることが好適である。この場合、具体的には、例えば、EGR率を小さくするように制御される。
上記割合が前記基準パターンに対応する所定値以上であることは、基準パターンに比して生成されたSootの酸化反応が不足していることを意味し得る。従って、上記構成によれば、Sootの酸化反応が不足している場合、Sootの酸化反応が促進され得、この結果、筒内Soot濃度の変化パターンを基準パターンになるように調整することができる。
なお、前記基準パターンは運転状態(燃料噴射量、エンジン回転速度等)によって変化するから、前記基準パターンに対応する所定値も運転状態(燃料噴射量、エンジン回転速度等)に応じて変更されるように構成されることが好ましい。
上記本発明に係る制御装置においては、前記制御手段は、前記筒内Soot濃度が収束したと判定される時点以降の時点(例えば、上記第2時点)での前記筒内Soot濃度が同時点での前記基準パターンに対応する値以下のとき、前記制御パラメータの制御を行わないように構成されることが好適である。
筒内Soot濃度が収束したと判定される時点以降の時点での筒内Soot濃度が同時点での前記基準パターンに対応する値以下の場合、燃焼室から排出されるSootの量が上記基準パターンに対応する上記適切な値以下となる。従って、この場合、制御パラメータを制御して筒内Soot濃度の変化パターンを調整する必要がないと考えることができる。上記構成は係る知見に基づくものである。これによれば、不必要に制御パラメータを制御することを抑制することができる。
或いは、前記制御手段は、前記筒内Soot濃度が収束したと判定される時点以降の時点での前記筒内Soot濃度が同時点での前記基準パターンに対応する値以下のとき、EGR率を大きくするように構成されてもよい。
Soot(従って、PM)の発生量とNOxの発生量は、一方が増加すると他方が減少する関係にある。従って、燃焼室から排出されるSootの量が上記基準パターンに対応する上記適切な値以下である場合、NOxの量を減少させるためにSootの量を増大させる余地があると考えることができる。
上記構成は係る観点に基づくものである。これによれば、EGR率を大きくすることでSootの量を増大してNOxの量を減少させることができ、この結果、燃焼室から排出されるSootの量を上記適切な値以下(或いは、近傍)に抑えつつ、燃焼室から排出されるNOxの量を減少させることができる。
以下、本発明による内燃機関(ディーゼル機関)の制御装置(Soot排出量制御装置)の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関の制御装置を4気筒内燃機関(ディーゼル機関)10に適用したシステム全体の概略構成を示している。このシステムは、燃料供給系統を含むエンジン本体20、エンジン本体20の各気筒の燃焼室(筒内)にガスを導入するための吸気系統30、エンジン本体20からの排ガスを放出するための排気系統40、排気還流を行うためのEGR装置50、及び電気制御装置60を含んでいる。
エンジン本体20の各気筒の上部には燃料噴射弁(噴射弁、インジェクタ)21が配設されている。各燃料噴射弁21は、図示しない燃料タンクと接続された燃料噴射用ポンプ22に燃料配管23を介して接続されている。燃料噴射用ポンプ22は、電気制御装置60と電気的に接続されていて、電気制御装置60からの駆動信号(後述する燃料噴射圧力Pcrに応じた指令信号)により燃料の実際の噴射圧力(吐出圧力)が燃料噴射圧力Pcrになるように同燃料を昇圧するようになっている。
これにより、燃料噴射弁21には、燃料噴射用ポンプ22から前記燃料噴射圧力Pcrまで昇圧された燃料が供給されるようになっている。また、燃料噴射弁21は、電気制御装置60と電気的に接続されていて、同電気制御装置60からの駆動信号(指令パイロット燃料噴射量(質量)Qp、指令メイン燃料噴射量(質量)Qmに応じた指令信号)により開弁する。これにより、前記燃料噴射圧力Pcrにまで昇圧された燃料が直接燃焼室内に、先ずは前記指令パイロット燃料噴射量Qpだけパイロット噴射され、その後、前記指令メイン燃料噴射量Qmだけメイン噴射されるようになっている。
吸気系統30は、エンジン本体20の各気筒の燃焼室にそれぞれ接続された吸気マニホールド31、吸気マニホールド31の上流側集合部に接続され同吸気マニホールド31とともに吸気通路を構成する吸気管32、吸気管32内に回動可能に保持されたスロットル弁33、電気制御装置60からの駆動信号に応答してスロットル弁33を回転駆動するスロットル弁アクチュエータ33a、スロットル弁33の上流において吸気管32に順に介装されたインタクーラー34と過給機35のコンプレッサ35a、及び吸気管32の先端部に配設されたエアクリーナ36とを含んでいる。
排気系統40は、エンジン本体20の各気筒にそれぞれ接続された排気マニホールド41、排気マニホールド41の下流側集合部に接続された排気管42、排気管42に配設された過給機35のタービン35b、及び排気管42に介装されたディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPNR」と称呼する。)43を含んでいる。排気マニホールド41及び排気管42は排気通路を構成している。
EGR装置50は、排気ガスを還流させる通路(EGR通路)を構成する排気還流管51と、排気還流管51に介装されたEGR制御弁52と、EGRクーラー53とを備えている。排気還流管51はタービン35bの上流側排気通路(排気マニホールド41)とスロットル弁33の下流側吸気通路(吸気マニホールド31)を連通している。EGR制御弁52は電気制御装置60からの駆動信号に応答し、再循環される排気ガス量(排気還流量、EGRガス流量)を変更し得るようになっている。
電気制御装置60は、互いにバスで接続されたCPU61、CPU61が実行するプログラム、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、及び定数等を予め記憶したROM62、CPU61が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM63、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM64、並びにADコンバータを含むインターフェース65等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース65は、吸気管32に配置された熱線式エアフローメータ71、スロットル弁33の下流であって排気還流管51が接続された部位よりも下流の吸気通路に設けられた吸気温センサ72、スロットル弁33の下流であって排気還流管51が接続された部位よりも下流の吸気通路に配設された吸気管圧力センサ73、クランクポジションセンサ74、アクセル開度センサ75、及び各気筒の側壁面に配設された筒内Soot濃度センサ76(図2を参照)と接続されていて、これらのセンサからの信号をCPU61に供給するようになっている。
また、インターフェース65は、燃料噴射弁21、燃料噴射用ポンプ22、スロットル弁アクチュエータ33a、及びEGR制御弁52と接続されていて、CPU61の指示に応じてこれらに駆動信号を送出するようになっている。
熱線式エアフローメータ71は、吸気通路内を通過する吸入空気の質量流量(単位時間当りの吸入空気量、単位時間あたりの新気量)を計測し、同質量流量Ga(空気流量Ga)を表す信号を発生するようになっている。吸気温センサ72は、エンジン10のシリンダ(即ち、燃焼室、筒内)に吸入されるガスの温度(即ち、吸気温度)を検出し、同吸気温度Tbを表す信号を発生するようになっている。吸気管圧力センサ73は、エンジン10のシリンダに吸入されるガスの圧力(即ち、吸気管圧力)を検出し、同吸気管圧力Pbを表す信号を発生するようになっている。
クランクポジションセンサ74は、各気筒の絶対クランク角度を検出し、実クランク角度CAactを表すとともにエンジン10の回転速度であるエンジン回転速度NEをも表す信号を発生するようになっている。アクセル開度センサ75は、アクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセル操作量Accpを表す信号を発生するようになっている。筒内Soot濃度センサ76は、燃焼室内におけるSoot濃度を検出し、実筒内Soot濃度CSootactを表す信号を発生するようになっている。
(燃焼室周りのガスの流れの概要)
図2は、或る一つの気筒のシリンダ内(筒内、燃焼室内)に吸気マニホールド31からガスが吸入され、燃焼室内に吸入されたガスが排気マニホールド41へ排出される様子を模式的に示した図である。図2に示したように、燃焼室内に吸入されるガス(従って、筒内ガス)には、吸気管32の先端部からスロットル弁33を介して吸入された新気と、排気還流管51からEGR制御弁52を介して吸入されたEGRガスが含まれる。
吸入される新気量(質量)と吸入されるEGRガス量(質量)の和に対するEGRガス量の割合(即ち、EGR率)は、運転状態に応じて電気制御装置60(CPU61)により適宜制御されるスロットル弁33の開度、及びEGR制御弁52の開度に応じて変化する。
かかる新気、及びEGRガスは、吸気行程において開弁している吸気弁Vinを介してピストンの下降に伴って燃焼室内に吸入されて筒内ガスとなる。筒内ガスは、ピストンが圧縮下死点に達する時点近傍で吸気弁Vinが閉弁することにより燃焼室内に密閉され、その後の圧縮行程においてピストンの上昇に伴って圧縮される。
そして、所定時期(パイロット燃料噴射開始時期CAinjp)になると、上述したように、先ずはパイロット噴射が行われる。パイロット噴射された(液体の)燃料は、圧縮により高温になっている筒内ガスから受ける熱により直ちに燃料蒸気になる。そして、時間の経過に伴って同筒内ガスを取り込みながら混合気となって燃焼室内において円錐状に拡散していき、所定のタイミングで自着火に起因して拡散燃焼していく。
その後、所定時期(メイン燃料噴射開始時期CAinjm)が到来すると、メイン噴射が行われる。メイン噴射された燃料もパイロット噴射された燃料と同様、混合気となって燃焼室内において円錐状に拡散していき、所定のタイミングで自着火に起因して拡散燃焼していく。そして、燃焼により発生した排気ガスは、排気行程において開弁する排気弁Voutを介してピストンの上降に伴って排気通路に排出されていく。
(Sootの排出量の制御方法の概要)
次に、上記のように構成されている本発明の実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「本装置」と称呼する。)による、燃焼室から排出されるSootの量を制御する方法の概要について説明する。
図3は、クランク角度CAに対する燃焼室内での筒内Soot濃度CSootの変化の一例を示したグラフである。CAinjpは上述したパイロット燃料噴射開始時期であり、CAevoは排気弁の開弁時期である。パイロット燃料噴射開始時期CAinjpから排気弁開弁時期CAevoまでの期間は、前記「燃焼行程を含む所定の期間」に相当する。
図3に示すように、筒内Soot濃度CSootは、パイロット燃料噴射開始時期CAinjp以降、初めに増大し、或る時点で最大値(以下、「ピーク値Y」と称呼する。)となり、その後に減少して排気弁開弁時期CAevoの前で或る値(以下、「最終値X」と称呼する。)に収束する、という変化パターンを持って変化する。この最終値Xは、燃焼室から排出されるSootの量を表す値となる。
筒内Soot濃度CSootが初めに増大するのは、パイロット噴射燃料(及び、その後のメイン噴射燃料)の反応(燃焼)に起因してSootの生成反応が主として発生し燃焼室内のSoot量が増大していくことに基づく。一方、筒内Soot濃度CSootがピーク値Yを採った後に減少していくのは、生成されたSootの酸化反応が主として発生し燃焼室内のSoot量が減少していくことに基づく。その後、減少していた筒内Soot濃度CSootが最終値Xに収束するのは、燃焼室内のガス温度の低下等に起因してSoot量の減少をもたらすSootの酸化反応が実質的に終了し燃焼室内のSoot量が一定に維持されることに基づく。
即ち、ピーク値Y(前記第1時点での筒内Soot濃度に対応する)は、燃焼室内でのSootの生成反応の程度に大きく依存し、Sootの生成反応の程度を表す値となる。最終値X(前記第2時点での筒内Soot濃度に対応する)(或いは、値「Y−X」)は、燃焼室内で生成されたSootの酸化反応の程度に大きく依存し、Sootの酸化反応の程度を表す値となる。
燃焼室内でのSootの生成反応の程度は、例えば、パイロットインターバル(パイロット燃料噴射開始時期CAinjpからメイン燃料噴射開始時期CAinjmまでの期間)に依存し、パイロットインターバルが長いほど抑制される。これは、パイロットインターバルが長いほど、パイロット噴射燃料の燃料蒸気と燃焼室内の酸素とが係わり合う期間が長くなってこれらが係わり合う程度が増大することに基づく。
他方、燃焼室内で生成されたSootの酸化反応の程度は、例えば、EGR率に依存し、EGR率が小さいほど促進される。これは、EGR率が小さいほど、燃焼室内の酸素濃度が大きくなることに基づく。
以上のことから、上述したパイロットインターバルやEGR率(前記制御パラメータに対応する)を制御することで、ピーク値Y及び最終値Xを調整することができる。即ち、筒内Soot濃度CSootの変化パターンを調整することができる。
ところで、上記筒内Soot濃度センサ76のようなセンサを使用すれば、或る定常運転状態(指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE)において総合的な観点からみて燃焼状態が最適な状態となる場合に対応する筒内Soot濃度CSootの変化パターン(以下、「定常適合パターン」と称呼する。前記基準パターンに相当する。)を、種々の運転状態(指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE)について予め取得しておくことができる。
そして、筒内Soot濃度CSootの変化パターンが現時点での運転状態(指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE)に対応する定常適合パターンに一致していれば、燃焼室から排出されるSootの量は、上記定常適合パターンに対応する適切な値となる。
しかしながら、過渡運転状態では、筒内Soot濃度CSootの変化パターンが定常適合パターンに一致するとは限らず、この結果、燃焼室から排出されるSootの量が上記定常適合パターンに対応する適切な値よりも大きくなる場合が発生し得る。以下、このことを図4、図5を参照しながら説明する。
図4は、定常適合パターン(破線を参照)に対してSootの生成反応が過剰である場合における筒内Soot濃度CSootの変化パターン(実線を参照)の例を示したグラフである。図4において、XTAは定常適合パターンに対応する最終値、YTAは定常適合パターンに対応するピーク値である(図5においても同様)。
この例では、Sootの生成反応が過剰であるために、ピーク値Yが定常適合パターンに対応するピーク値YTAよりも大きい値となり、この結果、最終値Xが定常適合パターンに対応する最終値XTAよりも大きい値となっている(即ち、燃焼室から排出されるSootの量が定常適合パターンに対応する適切な値よりも大きくなっている)。
図5は、定常適合パターン(破線を参照)に対してSootの酸化反応が不足している場合における筒内Soot濃度CSootの変化パターン(実線を参照)の例を示したグラフである。
この例では、Sootの酸化反応が不足しているために、筒内Soot濃度CSootがピーク値Y(=YTA)から減少していく程度が小さくなり、この結果、最終値Xが定常適合パターンに対応する最終値XTAよりも大きい値となっている(即ち、燃焼室から排出されるSootの量が定常適合パターンに対応する適切な値よりも大きくなっている)。
ここで、筒内Soot濃度CSootの変化パターンの特性を表す値(前記特性指標値)として値X/Yを導入し、定常適合パターンに対応する最終値/最大値(=XTA/YTA)を値Cとすると、図4に示したようにSootの生成反応が過剰である場合、値X/Yは値Cよりも小さくなる傾向がある。従って、値X/Yが値Cよりも小さい場合、Sootの生成反応を抑制すれば、筒内Soot濃度CSootの変化パターンを定常適合パターンに近づける(一致させる)ことができ、この結果、過渡運転状態であっても燃焼室から排出されるSootの量を定常適合パターンに対応する適切な値に直ちに近づけることができる。なお、値X/Yは、前記「第1時点での筒内Soot濃度に対する第2時点での筒内Soot濃度の割合」に対応する。
一方、図5に示したようにSootの酸化反応が不足している場合、値X/Yは値Cよりも大きくなる傾向がある。従って、値X/Yが値Cよりも大きい場合、Sootの酸化反応を促進すれば、筒内Soot濃度CSootの変化パターンを定常適合パターンに近づける(一致させる)ことができ、この結果、過渡運転状態であっても燃焼室から排出されるSootの量を定常適合パターンに対応する適切な値に直ちに近づけることができる。
そこで、本装置は、前回の燃焼サイクルにおいて筒内Soot濃度センサ76から得られる実筒内Soot濃度CSootactの履歴から上記最終値Xと上記ピーク値Yとを特定し、値X/Yが値Cよりも小さい場合、Sootの生成反応を抑制するために今回の燃料噴射時におけるパイロットインターバルを長くする。一方、本装置は、前回の燃焼サイクルにおける上記値X/Yが値Cよりも大きい場合、Sootの酸化反応を促進するためにEGR率を小さくする。
このように、本装置は、筒内Soot濃度センサ76から得られる実筒内Soot濃度CSootactの履歴に基づいて制御パラメータを制御して、燃焼室から排出されるSootの量を定常適合パターンに対応する適切な値に近づけるように制御する。以上が、Sootの排出量の制御方法の概要である。
(実際の作動)
次に、上記のように構成された内燃機関の制御装置の実際の作動について説明する。CPU61は、図6及び図7にフローチャートにより示した値X/Yの制御を行うための一連のルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ600から処理を開始し、ステップ605に進んで吸気弁Vinが開状態から閉状態へと変化したか否か(吸気弁閉弁時(IVC時)が到来したか否か)を判定し、「No」と判定する場合、ステップ695に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
いま、吸気弁閉弁時が到来したものとすると、CPU61はステップ605に進んだとき「Yes」と判定してステップ610に進み、IVC時クランク角度CAivcをクランクポジションセンサ74から取得される現時点での実クランク角度CAactの値に設定し、IVC時筒内ガス圧力Pgivcを吸気管圧力センサ73から得られる現時点での吸気管圧力Pbの値に設定し、IVC時筒内ガス温度Tgivcを吸気温センサ72から得られる現時点での吸気温度Tbの値に設定する。
続いて、CPU61はステップ615に進んで、上記設定されたIVC時筒内ガス圧力Pgivcと、上記設定されたIVC時筒内ガス温度Tgivcと、IVC時筒内容積Vg(CAivc)と、気体の状態方程式に基づくステップ615内に記載の式とに基づいて筒内ガスの全質量Gcylを求める。IVC時筒内容積Vg(CAivc)は、設計諸元等から得られるクランク角度CAの関数である筒内容積Vg(CA)においてCA=CAivcとしたときの値である。Rは気体定数(本例では、定数)である。この計算は、IVC時では、筒内ガスの圧力及び温度はそれぞれ、上記設定されたIVC時筒内ガス圧力Pgivc及び上記設定されたIVC時筒内ガス温度Tgivcに近い値になっているとの事実に基づく。
次いで、CPU61はステップ620に進み、エアフローメータ71から得られる現時点での空気流量Gaと、クランクポジションセンサ74の出力に基づいて得られる現時点でのエンジン回転速度NEと、Ga,NEを引数とする関数funcとを利用して、今回の吸気行程で燃焼室内に吸入された新気の質量Gnを求める。
続いて、CPU61はステップ625に進んで、上記求めた筒内ガスの全質量Gcylと、上記求めた新気の質量Gnと、ステップ625内に記載の式とに基づいて今回の吸気行程における実EGR率Regractを求める。
次いで、CPU61はステップ630に進み、アクセル開度センサ75により得られる現時点でのアクセル開度Accp、クランクポジションセンサ74から取得される現時点でのエンジン回転速度NE、及び図10に示したテーブル(マップ)MapQfinから指令燃料噴射量Qfin(=指令パイロット燃料噴射量Qp+指令メイン燃料噴射量Qm)を求める。テーブルMapQfinは、アクセル開度Accp及びエンジン回転速度NEと、指令燃料噴射量Qfin(=Qp+Qm)との関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
次に、CPU61はステップ635に進み、指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE、及び図11に示したテーブルMapCAinjから、パイロット燃料噴射開始時期(クランク角度)CAinjp及びメイン燃料噴射開始時期(クランク角度)CAinjmを決定する。テーブルMapCAinjは、指令燃料噴射量Qfin及びエンジン回転速度NEと、パイロット燃料噴射開始時期CAinjp及びメイン燃料噴射開始時期CAinjmとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
続いて、CPU61はステップ640に進んで、指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE、及び図12に示したテーブルMapPcrから燃料噴射圧力Pcrを決定する。テーブルMapPcrは、指令燃料噴射量Qfin及びエンジン回転速度NEと、燃料噴射圧力Pcrとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
次に、CPU61はステップ645に進み、指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE、及びテーブルMapRegrtから目標EGR率Regrtを決定する。テーブルMapRegrtは、指令燃料噴射量Qfin及びエンジン回転速度NEと、目標EGR率Regrtとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。なお、この目標EGR率Regrtは、現時点での運転状態(指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE)で定常運転状態にある場合において総合的な観点からみて燃焼状態が最適な状態となる場合に対応するEGR率であり、予め実験等を通して適合された定常適合値である。
次いで、CPU61はステップ650に進み、指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE、及びテーブルMapCSootTAから上述した定常適合パターンに対応する最終値CSootTA(図4、図5における値XTAに対応する)を決定する。テーブルMapCSootTAは、指令燃料噴射量Qfin及びエンジン回転速度NEと、定常適合パターンに対応する最終値CSootTAとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
続いて、CPU61はステップ655に進み、指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE、及びテーブルMapCから上述した値C(図4、図5における値(XTA/YTA)に対応する)を決定する。テーブルMapCは、指令燃料噴射量Qfin及びエンジン回転速度NEと、値Cとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
次に、CPU61は図7のステップ705に進み、後述するルーチンにより取得されている前回の燃焼サイクルにおける最終値X(図3〜図5を参照)が定常適合パターンに対応する最終値CSootTAの前回値CSootTAbよりも大きいか否かを判定する。前回値CSootTAbとしては、前回の本ルーチン実行時において後述するステップ730にて更新されている値が使用される。
先ず、ステップ705の判定にて「Yes」と判定される場合について説明する。この場合、CPU61はステップ710に進み、後述するルーチンにより取得されている前回の燃焼サイクルにおける最終値X及びピーク値Yから得られる前回の燃焼サイクルにおける値X/Yが先のステップ655にて決定した値Cよりも小さいか否かを判定し、「Yes」と判定する場合(即ち、Sootの生成反応が過剰である場合)、ステップ715に進んで、パイロットインターバルが先のステップ635にて決定されているパイロット燃料噴射開始時期CAinjpとメイン燃料噴射開始時期CAinjmから得られる値よりも所定値ΔCA(一定)だけ長くなるようにパイロット燃料噴射開始時期CAinjpとメイン燃料噴射開始時期CAinjmを修正し、ステップ725に進む。
ステップ710にて「No」と判定する場合(即ち、Sootの酸化反応が不足している場合)、CPU61はステップ720に進んで、目標EGR率Regrtを先のステップ645にて決定した値から所定値ΔR(一定)だけ小さい値に再決定し、ステップ725に進む。
CPU61はステップ725に進むと、先のステップ625にて求めた実EGR率Regractが目標EGR率RegrtとなるようにEGR弁52に制御指示を行う。具体的には、例えば、実EGR率Regractと目標EGR率Regrtの差をPID処理した値に基づいて実EGR率Regractが目標EGR率RegrtになるようにEGR弁52の開度がフィードバック制御される。
そして、CPU61はステップ730に進み、定常適合パターンに対応する最終値CSootTAの前回値CSootTAbを先のステップ650にて求めた定常適合パターンに対応する最終値CSootTA(今回値)に設定した後、本ルーチンを一旦終了する。
これにより、前回の燃焼サイクルにおいてSootの生成反応が過剰である場合、今回の燃料噴射時におけるパイロットインターバルが長くされ、この結果、今回の燃焼サイクルにおいてSootの生成反応が抑制される。一方、前回の燃焼サイクルにおいてSootの酸化反応が不足している場合、EGR率が小さくされ、この結果、今回の燃焼サイクルにおいてSootの酸化反応が促進される。
一方、ステップ705の判定にて「No」と判定される場合、CPU61はステップ725に直ちに進む。即ち、この場合、パイロットインターバル、及びEGR率の調整が行われない。これは、ステップ705の判定にて「No」と判定される場合、燃焼室から排出されるSootの量が定常適合パターンに対応する適切な値以下となっているから筒内Soot濃度CSootの変化パターンを調整する必要がないことに基づく。これにより、不必要にパイロットインターバルやEGR率等の制御パラメータを制御することが抑制される。
また、CPU61は、図8にフローチャートにより示した燃料噴射制御を行うためのルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで実クランク角度CAactが先のステップ635、或いはステップ715にて決定されているパイロット燃料噴射開始時期CAinjpに一致したか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ815に進んで実クランク角度CAactが先のステップ635、或いはステップ715にて決定されているメイン燃料噴射開始時期CAinjmに一致したか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ895に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
いま、実クランク角度CAactが上記パイロット燃料噴射開始時期CAinjpに一致したものとすると、CPU61はステップ805に進んだとき「Yes」と判定してステップ810に進んで、対応する燃料噴射弁21に対してステップ630にて決定されている指令パイロット燃料噴射量Qpの燃料の噴射指示を行い、続くステップ815にて「No」と判定した後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、指令パイロット燃料噴射量Qpの燃料が上述した燃料噴射圧力Pcrをもって噴射される。
その後、実クランク角度CAactが上記メイン燃料噴射開始時期CAinjmに一致したものとすると、CPU61はステップ805にて「No」と判定しステップ815に進んだとき「Yes」と判定してステップ820に進み、対応する燃料噴射弁21に対してステップ630にて決定されている指令メイン燃料噴射量Qmの燃料の噴射指示を行った後、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、指令メイン燃料噴射量Qmの燃料が上述した燃料噴射圧力Pcrをもって噴射される。
また、CPU61は、図9にフローチャートにより示した値X/Yの計算を行うためのルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ900から処理を開始し、ステップ905に進んで、実クランク角度CAactが先のステップ635、或いはステップ715にて決定されているパイロット燃料噴射開始時期CAinjpと排気弁開弁時期CAevoの間にあるか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ995に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
いま、実クランク角度CAactが上記パイロット燃料噴射開始時期CAinjpに一致したものとすると、CPU61はステップ905にて「Yes」と判定してステップ910に進み、筒内Soot濃度センサ76から得られる現時点での実筒内Soot濃度CSootactを取得する。
次いで、CPU61はステップ915に進み、ステップ910にて取得した現時点での実筒内Soot濃度CSootactを現時点での実クランク角度CAactに対応させてRAM63の所定の領域に記憶する。
続いて、CPU61はステップ920に進んで、現時点での実クランク角度CAactが排気弁開弁時期CAevoに一致したか否かを判定する。現時点は、実クランク角度CAactが上記パイロット燃料噴射開始時期CAinjpに一致した直後である。従って、CPU61はステップ920にて「No」と判定してステップ995に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
係る一連の処理(ステップ905、910、915、920)は、実クランク角度CAactが排気弁開弁時期CAevoに一致するまで繰り返し実行される。これにより、パイロット燃料噴射開始時期CAinjpから排気弁開弁時期CAevoまでの間の実筒内Soot濃度CSootactの履歴が実クランク角度CAactに対応させて順次RAM63に記憶されていく。
そして、実クランク角度CAactが排気弁開弁時期CAevoに一致すると、CPU61はステップ920に進んだとき「Yes」と判定してステップ925に進み、最終値Xを現時点での実筒内Soot濃度CSootactの値(即ち、排気弁開弁時期CAevoでの実筒内Soot濃度CSootactの値)に決定する。
続いて、CPU61はステップ930に進み、RAM63内に記憶されているパイロット燃料噴射開始時期CAinjpから排気弁開弁時期CAevoまでの間の実筒内Soot濃度CSootactの履歴データの中から最大値を特定し、ピーク値Yをその最大値に設定した後、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
これにより、最終値Xとピーク値Yが取得されるから、値X/Yが計算できる。この最終値X、及び値X/Yは、次回の図7に示したルーチン実行時においてステップ705、ステップ710にてそれぞれ使用される。
以上、ステップ915は記憶手段に相当し、ステップ715、ステップ720は制御手段に相当している。
以上、説明したように、本発明による制御装置の実施形態によれば、筒内Soot濃度センサ76から検出・記憶されているパイロット燃料噴射開始時期CAinpから排気弁開弁時期CAevoまでの間の実筒内Soot濃度CSootactの履歴からピーク値Yと最終値Xを特定する。前回の燃焼サイクルにおいて、筒内Soot濃度CSootの変化パターンの特性を表す値となる値X/Yが定常適合パターンに対応する最終値/最大値(=XTA/YTA)(=C)よりも小さい場合、前回の燃焼サイクルにおいてSootの生成反応が過剰であると判定して、今回の燃料噴射時におけるパイロットインターバルが長くされる。この結果、今回の燃焼サイクルにおいてSootの生成反応が抑制される。
一方、前回の燃焼サイクルにおいて、値X/Yが値Cよりも大きい場合、前回の燃焼サイクルにおいてSootの酸化反応が不足していると判定して、EGR率が小さくされる。この結果、今回の燃焼サイクルにおいてSootの酸化反応が促進される。これにより、過渡運転状態であっても筒内Soot濃度CSootの変化パターンが定常適合パターンに近づくように直ちに調整され得、この結果、燃焼室から排出されるSootの量を定常適合パターンに対応する適切な値に直ちに近づけることができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、図7のステップ705の判定にて「No」と判定される場合、CPU61はステップ725に直ちに進んでパイロットインターバルやEGR率等の制御パラメータの制御を行わないように構成されているが、目標EGR率Regrtを大きくしてもよい。
これは、図7のステップ705の判定にて「No」と判定される場合、燃焼室から排出されるSootの量が定常適合パターンに対応する適切な値以下となるからNOxの量を減少させるためにSootの量を増大させる余地があることに基づく。この構成が適用される場合、図7に示したルーチンに代えて図7のルーチンに対してステップ1305が追加された図13に示したルーチンが実行される。これによれば、Sootの量を増大させる一方でNOxの量を減少させることができ、この結果、燃焼室から排出されるSootの量を上記適切な値以下(或いは、近傍)に抑えつつ、燃焼室から排出されるNOxの量を減少させることができる。
また、上記実施形態においては、値X/Yが値Cより小さいか否かでパイロットインターバルを長くするかEGR率を小さくするかを選択するように構成されているが、値X/Yが値C1より小さいときにパイロットインターバルを長くし、値X/Yが値C1よりも大きい値C2よりも大きいときにEGR率を小さくしてもよい。
また、上記実施形態においては、値X/Yと比較される対象である上記値Cを運転状態に応じて可変としているが(ステップ655を参照)、一定としてもよい。
また、上記実施形態においては、値X/Yが値Cより小さい場合、Sootの生成反応を抑制するためにパイロットインターバルを長くしているが、Sootの生成反応を抑制するためにスワールの強さを変更してもよい。これは以下の理由に基づく。
即ち、スワールの強さ(スワール率)を調整することでメイン噴射燃料の燃料蒸気がパイロット噴射燃料に基づく燃焼後の混合気と係わりあう程度を変更することができ、この結果、メイン噴射燃料の燃料蒸気と燃焼室内の酸素とが係わり合う程度を変更することができる。従って、スワールの強さ(スワール率)を調整しても、Sootの生成反応を抑制することができる。
また、上記実施形態においては、前記基準パターンとして定常適合パターンを使用し、値X/Yと比較される対象である上記値Cを定常適合パターンに対応する最終値/最大値(=XTA/YTA)に設定しているが(ステップ655を参照)、前記基準パターンとして定常適合パターンとは異なる他のパターンを使用し、上記値Cを前記他のパターンに対応する最終値/最大値に設定してもよい。
また、上記実施形態においては、目標EGR率RegrとしてEGR率の定常適合値を使用しているが(ステップ645を参照)、目標EGR率Regrtとして定常適合値以外の他の値を使用してもよい。
また、上記実施形態においては、前記第2時点として排気弁開弁時期CAevoを使用しているが、前記第2時点として、実筒内Soot濃度CSootactの変化速度(の絶対値)が所定の微小値以下となった時点、或いは、燃焼室内のガス温度がSootに係わる反応が実質的に終了する所定の温度以下となった時点を使用してもよい。
また、上記実施形態においては、筒内Soot濃度CSootの変化パターンの特性を表す値(前記特性指標値)として値X/Yが使用されているが、前記特性指標値として値(Y−X)/Yが使用されてもよい。
加えて、上記実施形態においては、パイロットインターバルを長くする量を所定値ΔCA(一定値)に設定しているが(ステップ715を参照)、パイロットインターバルを長くする量を値X/Yと値Cの相違の程度(例えば、差、比等)に応じて変更してもよい。同様に、上記実施形態においては、EGR率を小さくする量を所定値ΔR(一定値)に設定しているが(ステップ720を参照)、EGR率を小さくする量を値X/Yと値Cの相違の程度(例えば、差、比)に応じて変更してもよい。
21…燃料噴射弁、52…EGR制御弁、60…電気制御装置、61…CPU、72…吸気温センサ、73…吸気管圧力センサ、74…クランクポジションセンサ、76…筒内Soot濃度センサ