JP4655862B2 - 黒液の処理方法 - Google Patents

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現在、製紙・紙パルプ製造業から排出される黒液処理については、黒液の性状が有害なものを多く含んでいるため、その対策に莫大な設備投資を行い、アルカリの回収と黒液の濃縮化を行い、エネルギー利用を含めた焼却処理を行っているが、多大なコストと大気汚染物質、悪臭物質を大気中に放出しているが、本発明はこの黒液処理の方法の提供に係るものである。
黒液は木質の蒸解(リグニンの除去)工程から排出される。黒液のもとは蒸解液であり、蒸解液は水にリグニンを溶けこませるためにカ性ソーダを使用し、更に硫化ナトリウムを脱リグニンを促進させるために使用しているので、黒液中にはリグニンの他、硫化ナトリウムの加水分解により生成した硫化水素・メチルメルカプタン・硫化ジメチル・二硫化ジメチルを含み、他に炭水化物・有機酸・樹脂類をも含んでいる有害なアルカリ性液状物である。
従来の黒液の処理方法は、これを濃縮して固形分濃度を高めるため規模の大きい多重効用真空蒸発缶法を用いて濃縮し、更に空気による酸化により濃縮度を高め、そしてこの黒液に硫化ナトリウムや硫酸塩廃液を加えた後、燃焼させ、その灰から無機薬品の炭酸ナトリウム、硫化ナトリウムを回収し、焼却のエネルギーはボイラーの給水加熱に利用されるが、その多くは大気放出されている。
そして炭酸ナトリウムを水に溶解させ、水酸化カルシウムをカ性ソーダに転化させ、カ性ソーダを再び蒸解液に使用しその循環利用を計っている。
しかしながら、従来技術での対策の設備費は大きく、悪臭物質が処理施設外にもれ、多くの水を使い、リグニンの大半は焼却され、排気ガスとして大気に放出させるのであり、これらに要する処理コストは、きわめて大きい。
我国の製紙・紙パルプ等の工場周辺にて独特の臭いが感じられるのは、硫化ジメチルのような硫黄化合物によるものであり、多くの水を使用し、使用後放流を行い、また排気ガスの排気量も極めて高いのでより環境にやさしい方法にて黒液処理がなされることが要望されている。
(1)製紙・紙パルプ製造業から排出されるアルカリ性の黒液を水で希釈した後、その液に酸を加えてpHを2.5〜3.5になるまで調整し、さらに僅かの凝集剤を加え、黒液中に含まれるリグニンを固形物となして沈降又は、沈降及び浮上させ、固形物のリグニンと上水に分離した後、同上水にオゾンガスをマイクロバブル(微小気泡)として供給し接触反応させ、オゾンの酸化力にて、上水中に含まれる未沈降のリグニン、木質に含まれる有機酸及び樹脂類、ヘミセルロースに含まれる可溶性炭水化物又はその他の硫黄化合物から選択されるいずれか1又は2以上の成分を酸化分解する黒液の処理方法であって、上記上水とオゾンガスとの接触反応は、オゾンガスと一部の上水とを高速攪拌機にて混合して行い、かつ高速攪拌機が、ステンレス製で、3000〜20000回転の高速にて回転する羽根型攪拌機の中に上水が導入され、かつオゾンが吹き込まれる構造であり、上水とオゾンが攪拌機の中にて混ざり合い、この時オゾンはマイクロバブルとなるものであり、その微小気泡と上水の混合液を反応槽に貯留している上水中に下から放出して長時間上水中に滞留させることを特徴とする黒液の処理方法。
この場合、加える酸の種類は、塩酸・硫酸・硝酸・蟻酸、フッ酸等であり、この処理により黒液の中に含まれる大半のリグニンは沈降し、容易にリグニンを分離することができる
(2)製紙・紙パルプ製造業から排出されるアルカリ性の黒液を水で希釈した後、その液に酸を加えてpHを2.5〜3.5になるまで調整し、さらに僅かの凝集剤を加え、黒液中に含まれるリグニンを固形物となして沈降又は、沈降及び浮上させ、固形物のリグニンと上水に分離して得られた上水を砂濾過した後に、砂濾過して得られた上水に対して上記(1)に記載の上水とオゾンガスとの接触反応を行うことを特徴とする黒液の処理方法。
記(1)又は(2)に記載の上水にオゾンガスを接触反応させる工程において、まずオゾンガスと一部の上水とを高速攪拌機にて混合して、オゾンガスのマイクロバブル混合液となし、そのマイクロバブル混合液を上水中に放出させる黒液の処理方法は、形物のリグニンと分離した上水に含まれる有機物、すなわち、リグニン、ヘミセルロースに含まれている可溶性の炭水化物、木質中の有機酸とその中和物、木質中に含まれる樹脂類とそのケン化したもの、トール油、硫化ジメチル、硫化水素、メチルメルカプタン、二硫化ジメチル等強力な酸化物質であるオゾンガスによって分解するものである。
強力な酸化物質であるオゾンガスは、オゾン発生機により現在つくられているが、その90%近くはO2、N2、CO2、などを含み、10%程度がO3である。従ってこのO3を最大限その酸化力を生かすにはO3有機物の酸化分解をすすめやすくするための条件が必要であり、それは、黒液が酸によってpH3前後まで下げられた時、O3の酸化力が高まり、かつO3のガスの泡が小さければ小さい程反応面が大きくなるので、酸化力は飛躍的に高まることである。
3ガスの泡の粒子を、マイクロレベルまで小さくするため、例えば上水とO3を高速にて攪拌することにより、O3ガスの泡の大きさを極めて小さい泡とすることが可能となった。この小さい泡は上水の水面に達する迄に破壊・消滅するが、この破壊・消滅する瞬間では、泡の内部温度は数千度の高温となり、数千気圧の高圧となるといわれているが、このように酸の添加によるpH調整後O3ガスを小さなマイクロレベルの泡にして処理することが好ましい。この際、同時に超音波を照射すると破壊・消滅作用が促進されるので一層好ましい。
(3)前記(1)又は(2)で得られるオゾンで酸化処理された上水を、黒液の希釈水又は紙パルプ製造用の用水として利用することを特徴とする黒液の処理方法。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のオゾンガスの接触反応を行って得られた上水を中和処理した後、活性炭に接触させて吸着処理を施すことを特徴とする黒液の処理方法。
上水中に含まれる有機物は完全に分解されCO2やH2Oとなり、かつ最終的に活性炭により不純物を吸着除去して浄化水を得ることができ、得られたこの浄化水(上水)は希釈用としても利用でき、紙パルプ製造用の用水としても利用できる。
このように本願発明によれば、黒液中のリグニンの除去(分離)は、溶解しているリグニンをpH調整によって懸濁物(SS)化することにより容易に達成できるのである。
そして、常温常圧で行うことが可能であり、O3の使用に伴う電気代も酸とマイクロバブルの効果により飛躍的なコストダウンが可能となる。
一般にオゾン(O)の酸化分解力は、オゾンのもっている酸素原子の酸化力に基づくものであるが、酸の添加によって黒液中のpHを3前後まで下げ、酸がもっている水素原子とオゾン原子を結合させ、酸素原子以上の強い酸化力をもつ活性酸素を生成させる。この活性酸素の酸化力は、はるかに酸素原子の酸化力を上回る分解力を有することになるので、処理対象物の上水に酸を添加し、pH3前後としてオゾンを加えることにより飛躍的に分解力が向上する。
本発明によれば、黒液からリグニンやアルカリが効率的に分取でき、かつ処理済水は浄化水として、黒液の希釈水、紙パルプ製造用の用水等、種々の用途に利用できる。
本発明の実施の形態を実施例により説明する。
実施例1:
図1に示す実施例のシステム構成図にて示し、図2にそのフローチャートを示す。
まず、図1において、左方より1において黒液を貯留タンクに貯留する。
次いで、黒液と希釈水をpH調整槽2に入れ、塩酸、硫酸等の酸を添加し、また凝集剤を添加してゆっくり攪拌することにより、リグニンその他を沈降させる。この際酸としてフッ酸を微量添加することが好ましい。
次いで、脱水機3において、例えばフィルタープレスにてリグニンを固形物として取り出す。
フィルタープレスにてリグニンを除去した液を、オゾン反応槽4に導入し、オゾンをマイクロバブルとして、接触反応せしめる。
この段階で、強力な酸化物質であるオゾンガスは、最大限に酸化力が高まり、かつOのガスの泡が小さければ小さい程反応面が大きくなるので、酸化力は飛躍的に高まる。
ガスの泡の粒子を、マイクロレベルまで小さくするため、上水とOを高速にて攪拌することにより、Oガスの泡の大きさを極めて小さい泡とすることが可能となり、この泡が消滅する瞬間では、泡の内部温度は数千度の高温となり、数千気圧の高圧となるといわれ、反応が強力に進行する。
次いで、中和槽5において、アルカリ液を添加して中和し、次に活性炭塔6に導入して、不純物をすべて吸着除去して、浄化された処理済水とする。
処理済水は処理済水貯留槽8に蓄えられ、それから(1)希釈水としてpH調整槽2へ、又は(2)その他の工業用水用等として使用される。
なお、図2のフローチャートにおいては、より具体的な説明が文字を加えてなされている。
実施例2:
図3に示すフローチャートにしたがって黒液の処理を行った。
まず、黒液の原液(固形分20%含有)10tに希釈用水50tを加えて計60tの被処理液とし、これに塩酸900kgを加え、さらに攪拌しながら高分子凝集剤1.8kgを加えたた後、放置して、液分と固形分に分離した。
得られた液分48tを砂濾過し、砂濾過して得られた濾過水にマイクロバブル状のオゾンガスを導入して酸化処理した後、苛性ソーダ液300kgを添加して中和処理した。次いで、その中和処理済み水を活性炭カラムに通し、不純物の吸着処理を行って、浄化水を得た。
この浄化水は、前記希釈水として、又は紙パルプ製造用水として利用される。
一方、上記固液分離工程で得られた固形分12tはフィルタープレスにかけられて濾別され、脱離液11,610kgと脱水ケーキ(含水率78%)390kgとに分離された。なお、濾別時には濾布洗浄水1tと凝集剤3kgが使用された。
上記脱離液と濾布洗浄水は砂濾過前の液分に加えられた。
また、上記脱水ケーキには生石灰39kgが添加混合され、パサパサした粗粒状の処理物429kgが得られた。この処理物は、リグニンを多く含むもので、取り扱いが容易であり、かつ水には不溶の組成物となっていた。
なお、表1に黒液の原液と各工程における処理液の分析値を示した。
該表に示す数値に見られるとおり、最終的に得られた処理水(浄化水)水質は、BOD、COD、SS等が全て優良な値であって、優れた水質の浄化水であることが解った。
Figure 0004655862
製紙分野、紙パルプ製造分野におけるリグニンを含む黒液の有効な処理法として採用できる。
本発明の実施例のシステム構成図 本発明の実施例のフローチャート 本発明の実施例のフローチャート
符号の説明
1:黒液貯留タンク
2:pH調整槽
3:脱水機
4:オゾン反応槽
5:中和槽
6:活性炭塔
7:処理済水貯留槽

Claims (4)

  1. 製紙・紙パルプ製造業から排出されるアルカリ性の黒液を水で希釈した後、その液に酸を加えてpHを2.5〜3.5になるまで調整し、さらに僅かの凝集剤を加え、黒液中に含まれるリグニンを固形物となして沈降又は、沈降及び浮上させ、固形物のリグニンと上水に分離した後、同上水にオゾンガスをマイクロバブル(微小気泡)として供給し接触反応させ、オゾンの酸化力にて、上水中に含まれる未沈降のリグニン、木質に含まれる有機酸及び樹脂類、ヘミセルロースに含まれる可溶性炭水化物又はその他の硫黄化合物から選択されるいずれか1又は2以上の成分を酸化分解する黒液の処理方法であって、上記上水とオゾンガスとの接触反応は、オゾンガスと一部の上水とを高速攪拌機にて混合して行い、かつ高速攪拌機が、ステンレス製で、3000〜20000回転の高速にて回転する羽根型攪拌機の中に上水が導入され、かつオゾンが吹き込まれる構造であり、上水とオゾンが攪拌機の中にて混ざり合い、この時オゾンはマイクロバブルとなるものであり、その微小気泡と上水の混合液を反応槽に貯留している上水中に下から放出して長時間上水中に滞留させることを特徴とする黒液の処理方法。
  2. 製紙・紙パルプ製造業から排出されるアルカリ性の黒液を水で希釈した後、その液に酸を加えてpHを2.5〜3.5になるまで調整し、さらに僅かの凝集剤を加え、黒液中に含まれるリグニンを固形物となして沈降又は、沈降及び浮上させ、固形物のリグニンと上水に分離して得られた上水を砂濾過した後に、砂濾過して得られた上水に対して上記請求項1に記載の上水とオゾンガスとの接触反応を行うことを特徴とする黒液の処理方法。
  3. 前記請求項1又は2で得られるオゾンで酸化処理された上水を、黒液の希釈水又は紙パルプ製造用の用水として利用することを特徴とする黒液の処理方法。
  4. 上記請求項1〜3のいずれか1項に記載のオゾンガスの接触反応を行って得られた上水を中和処理した後、活性炭に接触させて吸着処理を施すことを特徴とする黒液の処理方法。
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