JP4655747B2 - ゴム積層体及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、積層体及びそれを用いた空気入りタイヤに関し、更に詳しくはポリアミド樹脂層と未加硫ゴム組成物層とを臭素化ブチルゴムを含むセメントを用いて積層して加硫させた積層体に関する。本発明は、また、前記セメントを用いて積層した積層体を、接着層を用いることなく、例えばタイヤ用インナーライナー並びにカーカス層及び/又はタイゴム層として用いた空気入りタイヤに関する。
熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーフィルムを空気入りタイヤのインナーライナー(空気透過防止層)に利用する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。このフィルムはカーカス層及びタイゴム層(カーカス層とインナーライナーとの間の緩衝材)との接着性が十分でなく、そのため粘接着剤を塗布もしくはフィルムと共押出することで、接着性を確保することが提案されている(例えば特許文献2及び3参照)。
特開平10−25375号公報 日本特許第3320420号明細書 特開平11−240108号公報
従って、本発明は、ポリアミド樹脂にエラストマーを分散させた熱可塑性樹脂層(A)とゴム層(B)とを、接着層を用いることなく、加硫により一体化でき、そして空気入りタイヤのインナーライナーとカーカス層及び/又はタイゴム層として使用することができる積層体を提供することを目的とする。
本発明に従えば、(i)臭素化ブチルゴム又は(ii)臭素化ブチルゴム及び少なくとも1種のジエン系ゴムを含むゴム組成物を溶剤に溶解又は分散させたセメントを用いて、ポリアミド樹脂の連続相にエラストマーが分散した少なくとも1層の熱可塑性樹脂層(A)と少なくとも1層のゴム層(B)とを、部分的に又は全体的に、張り合わせ、得られた積層物を加硫時に一体化させてなる積層体並びにそれを用いた空気入りタイヤが提供される。
本発明によれば、臭素化ブチルゴムを含むゴム組成物を溶剤に溶解又は分散させたセメントを用いて、ポリアミド樹脂の連続相にエラストマーを分散させた熱可塑性樹脂層(A)とゴム層(B)とを張り合わせて積層させ、そして加硫することにより、両層間の所望の接着性を得ることができるので、接着層の使用を省くことができ、積層体及び空気入りタイヤの製造工程の簡略化がはかれ、経済的にも有利である。
本発明においては、ナイロンなどのポリアミド樹脂の連続相に、エラストマーを、分散相として、分散させたフィルム(熱可塑性樹脂層(A))とゴム層(B)との接着性を改良するために、臭素化ブチルゴム(又は臭素化ブチルゴムとジエン系ゴム)を含むゴム組成物に、任意的な成分として、フィラーと加硫系配合剤を溶剤に溶解又は分散させたセメントを用いて積層させる。
本発明において使用するセメントは、前述の如く、臭素化ブチルゴムを主成分として含み、ゴム分としては、場合によってはジエン系ゴム(例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムなど)をゴム成分の60重量%以下の量で配合することができる。セメント全重量に対するゴム分の量には特に限定はないが、5〜25重量%であるのが好ましい。
本発明において使用するセメントには、必要に応じて他の成分としては、例えばカーボンブラックなどのフィラー、加硫系(汎用の硫黄などの加硫剤及び加硫促進剤)などを配合することができ、これらを適当な溶剤(例えばトルエン、キシレン、n−ヘキサン、イソヘキサン、アセトン、MEK、メタノール、エタノール、ジエチルエーテルなどの溶媒、市販のゴム用溶媒、また、これらを任意の割合で混合した溶剤)に溶解又は分散させる。このセメントの固形分濃度には特に限定はないが、例えば5〜25重量%が好ましい。
本発明に係る積層体は、ポリアミド樹脂の連続相にエラストマーが分散相として分散した熱可塑性エラストマー組成物の熱可塑性樹脂層又はフィルム(A)と未加硫ジエン系ゴム組成物(B)とを前記セメントを用いて貼り合わせて積層物とし、これをジエン系ゴム組成物(B)の加硫時に一体化させたもので、フィルム又は層(A)は、空気透過係数が25×10-12cc・cm/cm2・sec・cmHg以下でヤング率が1〜500MPaを有することが好ましい。かかる層(A)は、例えば少なくとも一種のポリアミド系樹脂(例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などの市販品)の連続相(マトリックス)に、ジエン系ゴム及びその水添物、オレフィン系ゴム、含ハロゲン系ゴム、シリコンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴム並びに熱可塑性エラストマー、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体及びそのハロゲン化物などの少なくとも一種のエラストマー又はその少なくとも部分的に動的加硫したエラストマーが分散した熱可塑性エラストマーを押出成形などにより得ることができる。具体的には予めポリアミド樹脂と未加硫ゴムとを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続層を形成する熱可塑性樹脂中にエラストマー成分を分散させることにより、得ることができる。エラストマー成分を加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマー成分を少なくとも部分的に動的加硫させることもできる。また、ポリアミド樹脂及び/又はエラストマー成分への各種配合剤(加硫剤を除く)は、混練前又は混練中に添加することができる。ポリアミド樹脂とエラストマー成分との混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリーミキサー、2軸混練押出機等が挙げられるが、中でも2軸混練押出機を使用するのが好ましい。なお、ポリアミド樹脂層(A)の製造方法、その他については、特開平8−258506号公報などに更に詳しく記載されており、本発明でもこれらに記載された方法によることができる。
本発明に係る積層体のゴム層(B)を構成するゴム成分、特に未加硫ジエン系ゴム組成物はジエン系ゴムを含み、この組成物は、例えばシート状にし、前記セメントを用いて前記層(A)と付着積層させ、ジエン系ゴムを加硫させることにより(例えば140〜190℃×5〜60分)、フィルム(A)及びゴム層(B)は、接着層を用いることなく、一体化させた積層体とすることができる。この積層体は空気入りタイヤのカーカス層やタイゴム層として従来のタイヤ製造工程にそのまま使用することができる。
本発明のジエン系ゴム層(B)に配合するジエン系ゴムは、例えばタイヤ用などに使用することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、具体的には各種天然ゴム(NR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、各種ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどのジエン系ゴムやブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴムなどをあげることができ、これらは単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
積層体の層A及びBを構成する組成物には、前記した必須成分に加えて、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混合して組成物として使用することができる。これらの添加剤の配合量は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
セメントサンプルの製造
表Iに示した配合の未加硫臭素化ブチルゴムコンパウンド10gにゴム用溶媒(新日本石油化学(株)製LAゴム揮発油(G))100gを加え、24時間静置した。その後強制攪拌機で20分間攪拌し、セメントサンプルを作成した。得られたセメントサンプルを厚さ100μmのナイロンマトリックスTPR、ナイロンを連続相とし、ブチル系ゴムの動的加硫物を分散相としたフィルム)に塗り、これに厚さ2mmの(1)臭素化ブチルゴム(Japan Butyl Co.Ltd製Bromobutyl 2255)又は(2)ジエン系ゴム(日本ゼオン(株)製Nipol 1502とSIR−20のブレンドコンパウンド)のシートを貼り合わせて、180℃でプレス加硫しゴムシートを作成した。このようにして得られた積層体は実用上問題のない優れたタックを示した。セメントを塗ったフィルムはタックが著しく増大した。
Figure 0004655747
表I脚注
*1:Japan Butyl Co.Ltd製臭素化ブチルゴムBromobutyl 2255
*2:SIR−20
*3:新日化カーボン(株)製HTC#G
*4:日本油脂(株)製ビーズステアリン酸YR
*5:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
*6:昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S
*7:鶴見化学工業(株)製油処理硫黄
*8:三新化学工業(株)製サンサラーDM
その後得られた積層体を2号ダンベル片に切断し、そのナイロンマトリックスTPRフィルムの中央部に軸方向にカット(5mm)傷を入れ、このサンプルを上島製鉄所(株)製デマッチャクラック試験機にてチャック間60mmでストローク10mmの連続的な引張り歪みを70℃雰囲気下に50万回繰り返した。フィルム剥がれを以下の判定基準に基づいて、判定した結果、以下の通りであった。
判定基準
◎:フィルムの剥がれが全く無いもの
○:カット傷から微小な剥がれが見られるものの、ゴムの材料破壊であるもの
×:カット傷からフィルム/ゴム間での界面剥離となっているもの
試験結果
臭素化ブチルゴム:◎
対ジエン系ゴム :○
本発明によれば、臭素化ブチルゴムを含むセメントを用いて、熱可塑性樹脂層(A)とゴム層(B)を、改めて接着層を用いることなく積層させ、加硫によって一体化させるので、積層体及び空気入りタイヤの製造工程の簡略化と経済化に有利である。このように、セメント使用することによってタイヤ成型時に必要なタックを付与することができ、しかも接着性をもたせたセメントがゴムとして臭素化ブチルゴム系コンパウンドを用いるので例えばインナーライナーのバリア性の向上も期待できる。

Claims (5)

  1. (i)臭素化ブチルゴム又は(ii)臭素化ブチルゴム及び少なくとも1種のジエン系ゴムを含むゴム組成物を溶剤に溶解又は分散させたセメントを用いて、ポリアミド樹脂の連続相にエラストマーが分散した、少なくとも1層の熱可塑性樹脂層(A)と、少なくとも1層のゴム層(B)とを、部分的に又は全体的に、張り合わせ、得られた積層物を加硫時に一体化させてなる積層体。
  2. 熱可塑性樹脂層(A)がポリアミド樹脂を連続相、エラストマーを少なくとも部分的に動的加硫させた動的加硫物を分散相とした熱可塑性エラストマーから構成される層である請求項1に記載の積層体。
  3. 熱可塑性樹脂層(A)のエラストマーが少なくとも部分的に動的加硫されたイソブチレン−パラメチルスチレン共重合体のハロゲン化物である請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記セメントがゴム合計量100重量部のうち臭素化ブチルゴム30重量部以上を含むゴム組成物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体を用いた空気入りタイヤ。
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