JP4655389B2 - フィルム製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエンドレスベルトまたはドラムを支持体として使用する、ポリマー溶液流延フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリマー溶液をドラムやエンドレスベルトなどの支持体上に流延する溶液流延製膜法において、光学用途に使用されるようなフィルムはその平滑性が重要となる。
【0003】
これらの平滑な面を有するフィルムを得るためには、支持体が平滑である必要があり表面硬度が高く、耐食性に優れ、かつ鏡面加工されたものが望ましく、一般的には硬質クロムメッキを施したものや、耐食性・加工性にすぐれたステンレス鋼が使用される。
【0004】
表面が平滑な支持体を得るには、不純物の少ない材料を異物等が極力除外された清浄な環境下で充分に研磨して鏡面とする。例えば、特開2000−84960号に記載されているように支持体表面の中心線平均粗さRaを1〜3nmとすることで、フィルム表面の荒れやフィルム曇り度(ヘイズ値)が上がらないようにしている。
【0005】
これらの溶液流延製膜法にて成形したフィルムの平滑性は、支持体表面の異物や凹凸が少ないほど良好となる。
【0006】
しかしながら、成形されたフィルムの平滑性には支持体表面の平坦度以外に、エンドレスベルトまたはドラムから剥離する際の剥離性が影響する。ドラムからのフィルムの剥離性が悪い場合、剥離後のフィルム表面に、幅方向にほぼ直線状のフィルム変形が、搬送方向にほぼ等間隔に連続して起こることがある。このフィルム表面の変形は平坦に研磨された支持体を使用している初期段階では発生しないが、製膜を繰り返していると経時と共に発生してくる傾向があり、フィルムからの析出物や支持体表面の化学反応などで生成した物質が徐々に蓄積することにより表面凹凸となって剥離性を悪化させていると考えられている。
【0007】
繰り返し製膜することで蓄積するような析出物等は支持体表面が鏡面に近いほど少なくなるが、逆に鏡面に近くなると流延されたフィルムとの密着性が高くなることによって剥離性が悪くなることがある。
【0008】
従って、一旦全面を充分な鏡面に加工した後で、マット状の凹凸を形成することによって剥離性を向上させることも行われているが、表面にマット状の凹凸を形成することによって析出物が蓄積しやすくなり、そのために頻繁に支持体表面の清掃や再加工が必要となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれらの課題に鑑みて考案されたものであり、ポリマー溶液を支持体上に流延して成形するフィルムの製造方法において、良好な剥離性を維持しながら支持体表面への析出物等の蓄積を抑え、平滑なフィルムを長期間安定に製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記(1)〜(5)の手段によって達成された。
(1)ポリマー溶液を支持体上に流延して成形するフィルムの製造方法において、
該支持体表面に幅方向に連続した螺旋状の溝を設け、
前記連続した螺旋状の溝において、隣接した溝との支持体幅方向の間隔(ピッチ)が10mm以下であり、
前記支持体表面に、幅方向に連続して形成した前記螺旋状の溝が、搬送方向に複数形成されており、搬送方向にずらした位置に形成した溝同士が少なくとも互いに共有領域を有し、かつ、支持体表面の連続した螺旋状の溝の深さが1〜5nmであることを特徴とするフィルム製造方法。
(2)支持体表面に形成した螺旋の最大径が500mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載のフィルム製造方法。
(3)支持体がエンドレスベルトであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のフィルム製造方法。
(4)支持体がドラムであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のフィルム製造方法。
(5)ポリマー溶液がセルロースエステル溶液であり、成形したセルロースエステルフィルムの膜厚が20〜200μmであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
尚、以下1〜9については参考とされる手段である。
【0011】
1.ポリマー溶液を支持体上に流延して成形するフィルムの製造方法において、支持体表面に連続した螺旋状の溝を設けたことを特徴とするフィルム製造方法。
【0012】
2.支持体がエンドレスベルトであることを特徴とする前記1に記載のフィルム製造方法。
【0013】
3.支持体がドラムであることを特徴とする前記1に記載のフィルム製造方法。
【0014】
4.支持体表面に形成した螺旋の最大径が500mm以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【0015】
5.支持体表面に形成した連続した螺旋状の溝において、隣接した溝との支持体幅方向の間隔(ピッチ)が10mm以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【0016】
6.支持体表面に、幅方向に連続して形成した螺旋状の溝が搬送方向に複数形成されており、搬送方向にずらした位置に形成した溝同士が少なくとも互いに共有領域を有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【0017】
7.支持体表面の連続した螺旋状の溝の深さが1〜5nmであることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【0018】
8.ポリマー溶液がセルロースエステル溶液であり、成形したセルロースエステルフィルムの膜厚が20〜200μmであることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
【0019】
9.前記8のフィルム製造方法により成形したセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする偏光板用保護フィルム。
【0020】
ポリマー溶液を金属支持体(ベルト又はドラム)上にキャスティングしてフィルム成形を行うフィルムの製造においてはポリマー溶液(ドープと呼ぶことがある)を金属支持体(ベルト又はドラム)上に流延(キャスティング)する工程、金属支持体上での乾燥工程及びウェブを金属支持体から剥離する剥離工程からなる。金属支持体の表面は通常鏡面となっており、流延工程は、ドープを例えば加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移行する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの金属支持体上に加圧ダイからドープを流延する工程である。
【0021】
本発明においては、フィルム成形に用いるベルト又はドラムの表面状態(凹凸)を前記のような異物等が極力除外された平坦に研磨した鏡面ではなく、表面にある大きさのピッチで変化する一定の表面特性を与えることによって、金属支持体表面への析出物等の蓄積による表面の凹凸を減少させ(頻繁に支持体表面の清掃や再加工を行う必要が減少する)、又流延されたフィルムの剥離性が良好で、平滑性に優れたフィルムが長期間安定に得られるフィルム成形方法を得ることが出来ることを見いだした。
【0022】
本発明においては流延法によるフィルム成形に用いる金属支持体(エンドレスベルトやドラム等)の表面に、成形されたフィルム表面特性(光学特性)に影響を与えないほどの一定のピッチの傷(ある深さをもった溝)を単位面積あたり一定の密度で与えることによって達成される。
【0023】
前記の如く表面をマット状態にした場合、剥離性はよくなるが、表面に微小な凹凸を形成することによって析出物の蓄積が起こりやすくなり、又、逆に完全に平滑な鏡面に近づけるほど成形したフィルムの剥離性に問題が生じたり、又、製膜を繰り返すうちに析出物も発生し易くなってくる等の問題が発生する。
【0024】
これらのベルト又はドラムの表面に与える前記の一定のピッチの傷(ある深さをもった溝)は、溝の深さをフィルムの光学特性に影響を与えない程度にコントロールする限り、形状は本来問わないし、又、その単位面積あたりの数についても前記析出物の蓄積による表面状態の悪化が顕著にならない範囲であれば限定されないが、これらベルト又はドラムの表面にこれらの一定の表面状態をランダムに与える加工性のよい方法を考えると、前記連続した螺旋状(コイル状)の溝を用いるのが好ましい。
【0025】
従って、本発明においては、ポリマー溶液を支持体上に流延して成形するフィルムの製造方法において、該支持体表面に連続した螺旋状の溝を設けることで、長期間安定した剥離性が得られるというものである。
【0026】
以下、前記連続した螺旋状の溝及び該溝の形成の仕方について詳しく述べる。
通常、フィルム流延用の支持体(エンドレスベルトやドラム)の表面加工(研磨)には、研磨用パッドが回転することによって研磨を行うポリッシャーを用いている。本発明においては該ポリッシャーを用い研磨用のパッド及び研磨剤をコントロールして用いることにより、これらのドラムやエンドレスベルトを鏡面加工する代わりに本発明に係わる一定のランダムな連続した螺旋(コイル)状の溝を流延(キャスティング)用のエンドレスベルトまたはドラムに与えることが出来ることを見いだしたものである。以下に、これらベルト又はドラムの表面に前記の一定のピッチの溝と該溝を面積あたりほぼ一定の数(密度で)加工する方法について説明する。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は、前述した剥離性が悪い場合にフィルム表面に発生する表面微小変形(凹凸)の様子を模式的に示した図である。搬送方向とはほぼ直交するようにいくつものスジ状の変形(図ではフィルム幅手方向のいくつもの直線で表している)がフィルム巾全体に亘って発生していることがわかる。従来、剥離性をあげるため表面を適度にマット加工する等の方法が行われているが、流延(キャスティング)用の支持体(エンドレスベルトやドラム)表面全面に亘って微小な凹凸が生じるために異物の析出が多くなり、剥離性、異物の析出両者共満足する条件はなかなか見いだしにくいのが現状である。
【0028】
本発明においては、従って、これら流延用ベルトやドラム等支持体の表面を、適度の間隔をもったある深さの溝を、ほぼ均一にベルトやドラムの全面に、発生させることで、前記剥離性と、異物の析出の両者を同時に満たすフィルムの成形方法を得ようとするものである。
【0029】
これらの溝はある深さで、ベルト全表面に亘って、適度なランダムさをもってある密度で存在することがよい効果をもたらす。
【0030】
例えば、必ずしも一定の形態を有するものでなくともよく、例えば、矩形或いはその他の形態の適度な大きさを有する傷或いは適度な長さの直線や曲線等をエンドレスベルト全面に亘ってランダムに形成してもよいし、又、互いに交差するような2セットの直線群により全面に規則的な傷を与えてもよい。しかしながら、ベルト全面に亘って、上記の様なある周期の傷から成る紋様を効率よく発生させるのは難しく、適度な周期をもって、適度な深さの傷を流延用のエンドレスベルト全面に亘って形成するには、本発明に係わる方法の如く、連続した螺旋状の溝であることが、ベルト表面加工の容易さや、その効果の確実さから好ましい。
【0031】
本発明においては、通常、これらの流延に用いるベルトやドラム等を鏡面加工する際に用いる研磨用の研磨パッドを回転させるタイプのポリッシャーを用いることで効率よく適度な周期をもって、適度な深さの傷を与え粗面化する。
【0032】
図2は本発明の方法により、支持体がエンドレスベルトの場合に支持体表面に連続した螺旋状の溝を施した支持体の一例を示している。フィルムの幅手方向に当たるベルトの幅手方向に周期的(正確に一定周期でなくともよい)に、あるピッチ(図2においてPで表される)をもって連続した螺旋(コイル)状の溝がきられている。螺旋の大きさもまた各周期とも正確に同じ大きさのループである必要性はないが、螺旋のループの大きさ(図でDで表される)の最大径は500mmであり、好ましくは300〜500mmであり、更に好ましくは200〜300mmの範囲である。これ以上だと剥離性が悪化し、鏡面の特性に近くなる。支持体表面に形成した螺旋状の溝の最大径を500mm以下にすることにより、全面にて均一な剥離性が得られる。又、余りに小さな径を有する螺旋状の溝は剥離性が悪化し、剥離性をよいレベルに保ち、ドラムへの析出物の沈積を少なくするには100mm以上は必要である。好ましくは200〜300mmの範囲である。
【0033】
前記螺旋の周期も各周期とも正確に一致している必要はないが、螺旋の隣接した溝の間隔(ピッチ(P))は10mm以下にすべきである。連続した螺旋状の溝の間隔(ピッチ)を10mm以内にすることにより、剥離力の部分的なばらつきを無くし均一な剥離性が得られる。又、余りに小さくなりすぎると殆ど連続した溝となり本発明の効果が得られないので、下限としては0.2mm程度であり、好ましくは0.3mm以上である。
【0034】
該溝の深さについては、1〜5nmの範囲にあることが好ましく、これにより剥離性を維持したまま長期間析出物等の蓄積を抑制することができる。溝の深さがこれより深いと逆に剥離性が悪化し、析出物等の蓄積も増加し、製膜したフィルム上に明らかに段ムラとして観測されるようになり、又、光学的な性質も悪化する。又これより浅いと本発明の効果が得られない。
【0035】
これらの、支持体の幅手方向に切られた各複数の連続した螺旋(コイル)状の溝は搬送方向に複数設けられていることが好ましく、これら支持体の幅手方向に切られた各複数の連続した螺旋(コイル)状の溝はそれぞれの幅手方向での溝の間隔(ピッチ)が前記の距離以下であるほか、搬送方向において互いに重なり合っていることが必要である。即ち、幅手方向に形成された各螺旋状の連続した溝は螺旋状の連続した溝とこれを搬送方向にずらした位置に形成された別の溝と少なくとも図2中のCで表される様な共有領域を有することが好ましい。重なりは大きすぎても実質的に溝と溝の間が近くなりすぎることによって、成形したフィルムの剥離性が悪化することとなり、又、間隔が空く程、鏡面部分が多くなるので、本発明の効果が得らない。重なりの大きさは、重なり部分の搬送方向の長さCの前記螺旋の径Dに対する比率(C/D)で20%以下が好ましい。
【0036】
この様に幅方向に連続して形成された一連の螺旋状の溝群が互いに搬送方向にずれた位置で少なくとも互いに共有領域を有するようにすることで、全面で均一な剥離性が得られる。
【0037】
前記溝の深さは、金属例えばステンレスのエンドレスベルトやドラム等を用いて製膜したフィルムサンプルから測ることが出来る。即ち、流延成形したフィルムサンプルのベルト(ドラム)接触面を走査型プローブ顕微鏡例えば、セイコーインスツルメント株式会社製SPI3800N等を用いて測定する。
【0038】
次いで流延用のステンレス製のエンドレスベルト或いはドラム等の支持体上に、各幅手方向に亘って螺旋状に切られた連続した溝を形成する方法について具体的に説明する。
【0039】
ステンレス製の予め鏡面研磨されたベルト表面を先ず、2〜3%の硝酸水溶液にベンガラ(酸化第二鉄の粉)を少量(例えば3g/l)溶き分散させた溶液にポリッシャーの先端に付けた研磨用のパッドを浸して、ベルト上をポリッシャーにて一定の圧力で押し付けながら(研磨用の布を回転させつつ)ベルトの幅手方向に移動させることにより、酸によるステンレスの腐食効果とベンガラ粒子による研磨によって、ベルト表面に螺旋状の溝を形成することが出来る。ポリッシャーの回転径、移動の速度、研磨剤としてのベンガラ粒子の濃度を変え最適な溝が出来るようにこれらを調整する。余り研磨剤が多いと、全体が一様に研磨され、本発明の効果が得られないので、研磨剤の量は前記硝酸に対して例えば、0.1〜0.3%程度の量を用いる。尚、溝の深さについても、該ポリッシャーの押し付け圧、硝酸濃度、又ポリッシャー使用時の流水の有無や、ここではベンガラを用いたが、使用する粒子の種類(硬度)により調整可能である。
【0040】
表1は、ステンレス支持体(この場合エンドレスベルト)表面に、前記の方法により形成した螺旋の大きさが約200mm、螺旋のピッチが約6mmの螺旋状の連続した溝を、ポリッシャーの押し付け圧、硝酸濃度を変えることにより、深さを変えて形成して、30時間セルロースエステルドープ液のキャスティングを繰り返した後、剥離時の剥離性と表面に付着した析出物の量を分析した結果を示す表である。
【0041】
表1において、剥離性は支持体からフィルムを剥離する時にスムーズに剥離できたことを○で示した。又、析出物量については、以下の基準で評価したものである。
【0042】
多 300μg/m2以上
中 100μg/m2以上〜300μg/m2未満
少 100μg/m2未満
【0043】
【表1】
Figure 0004655389
【0044】
表1からわかるように、一定期間製膜した後では、螺旋状の溝の深さが15nm以上になると剥離性が悪化すると共に表面に付着した析出物の量も多く検出された。他の2種については剥離性に差が見られなかったが表面に付着した析出物の量は溝が深いほど多くなっていることがわかった。
【0045】
また、螺旋状の溝を深く加工したものは一部、剥離性悪化による表面変形が発生しており、このフィルムサンプルの表面(ベルトと密着する面)を走査型プローブ顕微鏡(セイコーインスツルメント株式会社製SPI3800N)で観察した結果、表面にベルト上の突起状の析出物が付着したことに起因する凹みが存在し、とりわけ溝に沿った大きな凹みが顕著に確認された。
【0046】
本発明において、フィルムとしてはセルロースエステルフィルムであることが好ましい。セルロースエステルフィルムを製造するには、先ず、セルロースエステルを有機溶媒に溶解してセルロースエステル溶液(ドープ)を形成し、前記の支持体上に流延し成形する。
【0047】
本発明に使用するセルロースエステルは、リンターパルプ、ウッドパルプ及びケナフパルプから選ばれるセルロースを用い、それらに無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸を常法により反応して得られるもので、セルロースの水酸基に対する全アシル基の置換度が2.5〜3.0のセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートである。本発明に係るセルロースエステルのアセチル基の置換度は少なくとも1.5以上であることが好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。これらのセルロースエステルの分子量は数平均分子量として、70,000〜300,000の範囲が、フィルムに成形した場合の機械的強度が強く好ましい。更に80,000〜200,000が好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後において、フレーク状となり、その形状で使用されるが、粒子サイズは粒径を0.05〜2.0mmの範囲とすることにより溶解性を早めることが出来好ましい。
【0048】
セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%程度である。
【0049】
セルロースエステルに対する良溶媒としての有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、メチレンクロライド、ブロモプロパン等を挙げることが出来、酢酸メチル及びメチレンクロライドが好ましく用いられる。しかし最近の環境問題から非塩素系の有機溶媒の方が好ましい傾向にある。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減出来るので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。
【0050】
ドープ中に、フタル酸エステル、リン酸エステルなどの可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることにより、セルロースエステルフィルムに起因するハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置の性能を向上させることが出来る。
【0051】
セルロースエステルフィルム中に用いることの出来る可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系(トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等)、フタル酸エステル系(ジエチルフタレートジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等)、グリコール酸エステル系(トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート)等を挙げることが出来る。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。可塑剤のセルロースエステルに対する添加量としては、0.5〜30質量%が好ましく、特に2〜15質量%が好ましい。
【0052】
また、セルロースエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が10%以下である必要があり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。しかしこれらには限定されない用いる事が出来る。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対し0.5〜20質量%の範囲で添加することが出来、0.6〜5.0質量%が好ましく、特に好ましくは0.6〜2.0質量%である。更に、セルロースエステルフィルム中には、酸化防止剤を含有させることが好ましく、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。またセルロースエステルフィルム中に、微粒子のマット剤を含有するのが好ましく、微粒子のマット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。これらの添加剤は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0053】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法は、膜厚が20〜200μmのセルロースエステルフィルムに適用出来、特に薄手の20〜100μmのものには好ましく適用出来る。
【0054】
次に、ドープを金属支持体(エンドレスベルト又はドラム)上に流延する工程、金属支持体上での乾燥工程及びウェブを金属支持体から剥離する剥離工程について述べる。流延工程は、成形するポリマー(例えば前記セルロースエステル)の溶液(ドープ)を加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移行するエンドレスの金属ベルトあるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上に加圧ダイからドープを流延する工程である。
【0055】
加圧ダイのスリットのドープの出るところを口金と呼ぶが、口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、金属支持体の速度等をコントロールするのがよい。本発明において、口金部分から流延されるドープ膜を流延膜という。
【0056】
金属支持体上での乾燥工程は、ウェブ(以下、流延膜が金属支持体上で乾燥されている以降の膜をウェブと呼ぶ)を支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側及び支持体裏側から加熱風を吹かせる方法、支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。また、ウェブの膜厚が薄ければ乾燥が早い。金属支持体の温度は全体が同じでも、位置によって異なっていてもよい。剥離工程は、無限移行するエンドレスの金属支持体上で有機溶媒を蒸発させて、金属支持体が一周する前にウェブを剥離する工程で、その後ウェブは乾燥工程に送られる。金属支持体からウェブを剥離する位置のことを剥離点といい、また剥離を助けるロールを剥離ロールという。ウェブの厚さにもよるが、剥離点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりすることがある。通常、残留溶媒量が20〜150質量%でウェブの剥離が行われる。製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒量が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。その方法としては、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来る。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力による横段、ツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで残留溶媒量を決められる。本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
【0057】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMの状態のものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0058】
通常、金属支持体がステンレスベルトの場合、ステンレスベルトは二つのドラム(一つはステンレスベルトを移送させるドライブ用ドラム、もう一つはステンレスベルトの移送方向を微妙にコントロールし、張力を掛けているテンションドラム)に支えられ張られている。またステンレスベルトの裏側には該ステンレスベルトを弛まない程度に支える数本のバックロールを有してもよい。また、ドープを流延する位置(流延膜がステンレスベルトに接触する位置)はステンレスベルトのどの位置で流延するかは通常決められていないが、ドライブ用ドラムの上または該ドラムから若干下流に離れた位置の場合が多い。図3及び図4にフィルム流延用の加圧ダイ4及びドライブ用第1ドラム2とテンション用第2ドラム3の2個のドラムによって張られているエンドレスのステンレスベルト(金属支持体)1、及び該ステンレスベルトの張力を調整するためのベルト位置調整機構5を備えたフィルム流延成形用の装置の上面及び側面からみた概略図を示した。
【0059】
以上の製造方法により製膜されたセルロースエステルフィルムは剥離性がよく、横段ムラがなく又、優れた生産性を示し、本発明のセルロースエステルフィルムを偏光板用保護フィルムとして偏光膜と貼り合わせることによって優れた光学特性を示す液晶表示装置に有用な偏光板を得ることが出来る。
【0060】
偏光板用保護フィルムとして用いるには、偏光膜と貼り合わせることが出来るように例えばセルロースエステルフィルムの少なくとも片面を処理加工する。処理加工としてはアルカリ液で表面を鹸化する加工、接着層の塗設加工等が挙げられるがアルカリによる表面鹸化加工が好ましい。
【0061】
本発明の偏光板用保護フィルムとしての表面鹸化加工について、セルロースエステルフィルムの鹸化処理条件の1例を示すと、40〜60℃の2mol/lのNaOH水溶液に、約30〜150秒浸漬後、常温水で約30〜60秒水洗し、更に1〜5質量%HClで約30〜60秒中和し、その後常温水で約30〜60秒水洗して、約80℃で乾燥する条件であるが、これらに限定されない。
【0062】
液晶表示装置の偏光板に用いる偏光膜は、例えばポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系ポリマーの水溶液を製膜し、これを一軸延伸させてヨウ素や二色性色素で染色したものを更に一軸延伸してから、ホウ素化合物のような架橋剤で耐水性処理を行ったものである。
【0063】
偏光板は上記偏光膜の少なくとも片面に、アルカリ鹸化処理した偏光板用保護フィルムを、接着剤液を塗布して、貼り合わせて形成する。接着剤液としては、ポリビニルアルコール水溶液、ポリビニルブチラール溶液等のポリビニルアルコール系の接着剤液やブチルアクリレートなどのビニル重合系ラテックス等を挙げることが出来るが、好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液である。
【0064】
この様にして作製したポリマーフィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる事で、液晶表示装置に有用な偏光板を得ることが出来、液晶表示装置等の画像表示装置に好ましく使用出来る。
【0065】
【発明の効果】
良好な剥離性を維持しながら支持体表面への析出物等の蓄積を極力抑え、平滑なフィルムを長期間安定に製造する方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】剥離性が悪い場合にフィルム表面に発生する表面微小変形(凹凸)の様子を模式的に示した図。
【図2】支持体表面に連続した螺旋状の溝を施した支持体の一例を示す図。
【図3】フィルム流延成形用の装置の概略図。
【図4】フィルム流延成形用の装置の概略図。
【符号の説明】
1 ステンレスベルト(金属支持体)
2 ドライブ用第1ドラム
3 テンション用第2ドラム
4 加圧ダイ
5 ベルト位置調整機構

Claims (5)

  1. ポリマー溶液を支持体上に流延して成形するフィルムの製造方法において、
    支持体表面に幅方向に連続した螺旋状の溝を設け
    前記連続した螺旋状の溝において、隣接した溝との支持体幅方向の間隔(ピッチ)が10mm以下であり、
    前記支持体表面に、幅方向に連続して形成した前記螺旋状の溝が、搬送方向に複数形成されており、搬送方向にずらした位置に形成した溝同士が少なくとも互いに共有領域を有し、かつ、支持体表面の連続した螺旋状の溝の深さが1〜5nmであることを特徴とするフィルム製造方法。
  2. 支持体表面に形成した螺旋の最大径が500mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム製造方法。
  3. 支持体がエンドレスベルトであることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム製造方法。
  4. 支持体がドラムであることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム製造方法。
  5. ポリマー溶液がセルロースエステル溶液であり、成形したセルロースエステルフィルムの膜厚が20〜200μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
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