JP2012173477A - 処理フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】処理液内および処理液外に配置した複数のガイドロールを介して、樹脂フィルムを処理液内に浸漬処理しながら搬送することで、前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法であって、スクラッチの発生等を低減することができる処理フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】処理液内および処理液外に配置した複数のガイドロールを介して、樹脂フィルムを、処理液内に浸漬処理しながら搬送する工程を少なくとも有する、前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において、前記ガイドロールの少なくも一つは、溝付き金属ガイドロールであって、前記溝付き金属ガイドロールの円周溝の断面積をS(m2)、前記プレーン幅をp(m)、前記抱き角をθ(°)、前記張力をT(N/m)、前記搬送速度をU(m/min)としたときに、下記式(1):U<0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21(1)の関係を満足する。
【選択図】図1
【解決手段】処理液内および処理液外に配置した複数のガイドロールを介して、樹脂フィルムを、処理液内に浸漬処理しながら搬送する工程を少なくとも有する、前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において、前記ガイドロールの少なくも一つは、溝付き金属ガイドロールであって、前記溝付き金属ガイドロールの円周溝の断面積をS(m2)、前記プレーン幅をp(m)、前記抱き角をθ(°)、前記張力をT(N/m)、前記搬送速度をU(m/min)としたときに、下記式(1):U<0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21(1)の関係を満足する。
【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法に関する。樹脂フィルムとしては、各種の分野で用いられているものを、処理対象に応じて適宜に選択することができる。なかでも処理フィルムに微細な傷がないことが要求される各種の処理フィルム、例えば、偏光子の製造にあたっては樹脂フィルムとして、例えばポリビニルアルコール系フィルム等が用いられ、偏光子の製造工程における、膨潤工程、染色工程、架橋工程、延伸工程、洗浄工程のいずれか少なくとも1つの処理工程で、本発明を適用することができる。また、偏光子の透明保護フィルムの処理にあたっては、樹脂フィルムとして、例えばセルロースエステル系樹脂等が用いられ、けん化工程、その後の水洗浄工程処理のいずれか少なくとも1つの処理工程で、本発明を適用することができる。
液晶表示装置は、パソコン、TV、モニター、携帯電話、PDA等に使用されている。従来、液晶表示装置等に用いる偏光子としては高透過率と高偏光度を兼ね備えていることから、染色処理されたポリビニルアルコール系フィルムが用いられている。当該偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、膨潤、染色、架橋、延伸等の各処理を各処理液中で施した後に、洗浄処理を施してから乾燥することにより製造される。また前記偏光子は、通常、その片面または両面に透明保護フィルムが接着剤を用いて貼合された偏光板として用いられている。透明保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロース系フィルム等のセルロースエステル系樹脂にけん化処理を施した後に、水洗浄処理を施してから乾燥したものが用いられる。
近年では、液晶表示装置の高性能化が進み、高い視認性が求められている。それに伴い、偏光板についても、高い透過率を有し、視認性が良好であることが非常に重要となっている。従って、偏光板については、偏光子およびその透明保護フィルムのいずれについても視認性を阻害しないことが求められる。また、偏光板にスクラッチがあると、製品検査で不良品となり、製品の歩留まりが低下する点でも好ましくない。また、偏光板は、偏光子と透明保護フィルムとの積層体であり、通常は、接着剤等により偏光子と透明保護フィルムを貼り合せているが、偏光子やその透明保護フィルムにスクラッチ(傷)があると、前記接着剤等による層間の密着性が不良になる。
偏光板において視認性が低下する一因として、偏光子やその透明保護フィルムにおけるスクラッチの発生が挙げられる。前記のとおり、偏光子はポリビニルアルコール系フィルム等を染色溶液中等に浸漬搬送させて製造され、一方、透明保護フィルムは、偏光子に貼り合せる前に、けん化処理や水洗浄処理浴中を搬送させられる。通常、これらの処理を施した場合には、生産速度の増加に伴い、これらに発生するスクラッチも増加する傾向にある。また、前記偏光子や透明保護フィルムのスクラッチは、処理液中でガイドロールを介して搬送させることにより、発生しやすいことが分かっている。
前記偏光子の製造方法において、ガイドロールとしては、プレーンロールが用いられてきた。このような偏光子の製造方法において、スクラッチ等の発生を抑制するために、ガイドロールとしてスパイラル溝を有するゴムロールを用いることが提案されている(特許文献1)。特許文献1は、スクラッチ等をある程度は抑制することができるが、さらなるスクラッチの発生を抑制することが望まれている。また、処理液中でゴムロールを用いた場合には、処理液がゴムロールに浸透してゴム組成物を経時的に劣化させるため、定期的なメンテナンスが必要であるなどの問題があった。また、メンテナンスに伴い発生するゴムロールの交換費用によるコストの悪化や、交換時間の確保に伴う設備稼働率が悪化する問題もあった。
また、前記偏光子の製造方法において、膜厚を均一化するために、ガイドロールとしてステンレススチール製研磨ロールを用いることが提案されている(特許文献2)。特許文献2では、ステンレススチール製研磨ロールにより幅方向にフィルムをスリップさせており、これにより幅方向の張力が一定になるようにフィルムを搬送させてフィルムの幅方向の張力を均一化させている。このように、特許文献2では、フィルムの幅方向にスリップさせることで膜厚を均一化させているが、この場合には、フィルムの流れ方向にもスリップが発生する。そのため、ガイドロールとしてステンレススチール製研磨ロールを用いたとしても、スクラッチを回避することはできない。
本発明は、処理液内および処理液外に配置した複数のガイドロールを介して、樹脂フィルムを処理液内に浸漬処理しながら搬送することで、前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法であって、スクラッチの発生等を低減することができる処理フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す処理フィルムの製造方法により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
処理液内および処理液外に配置した複数のガイドロールを介して、樹脂フィルムを、処理液内に浸漬処理しながら搬送する工程を少なくとも有する、前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において、
前記ガイドロールの少なくも一つは、
当該ガイドロールの円周に沿って形成された円周溝を複数本有する、溝付き金属ガイドロールであって、
かつ、前記円周溝の断面積は0.01×10−6〜0.2×10−6m2、前記複数の円周溝の間のプレーン幅は1.0×10−4〜3.3×10−3mを満足するものであり、
かつ、前記樹脂フィルムの搬送を、
前記溝付き金属ガイドロールと前記樹脂フィルムの抱き角が30〜180°であり、
前記溝付き金属ガイドロールの手前の前記樹脂フィルムの張力が40〜200N/mであり、
前記溝付き金属ガイドロールの手前の前記樹脂フィルムの搬送速度が5〜50m/minである範囲で行い、
かつ、前記断面積をS(m2)、前記プレーン幅をp(m)、前記抱き角をθ(°)、前記張力をT(N/m)、前記搬送速度をU(m/min)としたときに、下記式(1):
U<0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21 (1)
の関係を満足することを特徴とする処理フィルムの製造方法、に関する。
処理液内および処理液外に配置した複数のガイドロールを介して、樹脂フィルムを、処理液内に浸漬処理しながら搬送する工程を少なくとも有する、前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において、
前記ガイドロールの少なくも一つは、
当該ガイドロールの円周に沿って形成された円周溝を複数本有する、溝付き金属ガイドロールであって、
かつ、前記円周溝の断面積は0.01×10−6〜0.2×10−6m2、前記複数の円周溝の間のプレーン幅は1.0×10−4〜3.3×10−3mを満足するものであり、
かつ、前記樹脂フィルムの搬送を、
前記溝付き金属ガイドロールと前記樹脂フィルムの抱き角が30〜180°であり、
前記溝付き金属ガイドロールの手前の前記樹脂フィルムの張力が40〜200N/mであり、
前記溝付き金属ガイドロールの手前の前記樹脂フィルムの搬送速度が5〜50m/minである範囲で行い、
かつ、前記断面積をS(m2)、前記プレーン幅をp(m)、前記抱き角をθ(°)、前記張力をT(N/m)、前記搬送速度をU(m/min)としたときに、下記式(1):
U<0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21 (1)
の関係を満足することを特徴とする処理フィルムの製造方法、に関する。
前記製造方法により得られる処理フィルムは、表面粗さ(Ra)が0.4μm以下であることが好ましい。
前記処理フィルムの製造方法は、前記樹脂フィルムとしては、偏光子用の透明保護フィルムを用いる場合に適用することができる。特に、前記処理フィルムの製造方法は、前記偏光子用の透明保護フィルムが、けん化処理したセルロースエステル系樹脂フィルムであり、当該けん化処理したセルロースエステル系樹脂フィルムを、水洗浄処理する場合に好適である。
また前記処理フィルムの製造方法は、前記樹脂フィルムが、ポリビニルアルコール系フィルムであり、処理フィルムである偏光子を製造する場合に適用することができる。
前記処理フィルムの製造方法において、前記溝付き金属ガイドロールは、ハードクロムメッキを施した表面を有する溝付き金属ガイドロールが好適である。
ガイドロールを介して搬送される樹脂フィルムにスクラッチが発生するのは、当該樹脂フィルムと、ガイドロールとの間に流体(空気中の搬送であれば空気、処理液中を搬送した後であれば液体)が侵入するために、樹脂フィルムとガイドロールが接触しなくなって、ガイドロールを回転させることができなくなり、ガイドロールが停止した状態になることが原因とされている。そして、その停止状態で、樹脂フィルムとガイドロールの間に、微細な異物が侵入し、樹脂フィルムを引っ掻くことでスクラッチが発生する。
以上から、本発明の処理フィルムの製造方法では、樹脂フィルムとガイドロールの間に流体を侵入させないようにすること、または、流体が侵入したとしても、樹脂フィルムとガイドロールが同じ速度で回転するように、ガイドロールの構造とガイドロールにおける樹脂フィルムの抱き角、樹脂フィルムの搬送速度の制御を行なうことで、樹脂フィルムにスクラッチが発生するのを抑えている。即ち、本発明の処理フィルムの製造方法では、ガイドロールとして所定構造の円周溝を有する溝付き金属ガイドロールを用い、当該ガイドロールにおいて樹脂フィルムを所定の抱き角になるように、かつ、前記所定の円周溝を有する溝付き金属ガイドロール、前記抱き角と、樹脂フィルムの搬送速度が、所定の関係になるように搬送させることで、樹脂フィルムにスクラッチが発生するのを抑えている。
以下に図面を参照しながら、本発明の処理フィルムの製造方法を説明する。図1は、本発明の処理フィルムの製造方法における、樹脂フィルムWと、ガイドロールRと処理液Xとの関係を示す概念図である。本発明のガイドロールRは、処理液X内外のいずれかに配置されていればよく、内外の両者に配置されていてもよい。図1では、浴槽Y内に処理液Xを有し、当該処理液Xの内外に配置したガイドロールR1乃至R5を介して、このガイドロールの順に樹脂フィルムWを、処理液X内に浸漬処理しながら搬送している。前記樹脂フィルムWは、処理液X内を通過することで、処理液Xに処理されて、樹脂フィルムの処理フィルムW´として、得られる。図1は、ガイドロールR1、R3およびR5は処理液X外にあり、ガイドロールR2およびR4は処理液X内に配置されている場合である。
本発明の処理フィルムの製造方法では、複数のガイドロールRが用いられるが、複数のガイドロールRのいずれか少なくとも1つは、所定の円周溝mを有する溝付き金属ガイドロールMRが用いられる。図1では、具体的に示していないが、前記ガイドロールR1乃至R5の少なくも一つは、図2に示すような、所定の円周溝mを有する、溝付き金属ガイドロールMRが用いられている。図1のガイドロールR1乃至R5は全てを溝付き金属ガイドロールMRとすることができる。なお、図1の態様においては、ガイドロールR2およびR4は処理液X内に配置されており、処理液Xが付着した状態の樹脂フィルムWが処理液X外のガイドロールR3およびR5に搬送される。そのため、樹脂フィルムWとガイドロールR3およびR5の界面に、樹脂フィルムWに付着した処理液が液膜として侵入しやすいため、少なくとも処理液X外のガイドロールR3、R5を溝付き金属ガイドロールMRとすることが好ましく、さらにガイドロールR2、R4も溝付き金属ガイドロールMRとすることが好ましい。
図2は、本発明の溝付き金属ガイドロールMRの一例を示す斜視図である。ガイドロールMGは、円周に沿って形成された円周溝mを複数本有する。溝付き金属ガイドロールMRの長さは、搬送される樹脂フィルムの幅よりも長いものであり、通常は、200〜4000mmであり、250〜2000mmであるのが好ましい。ガイドロールMGは円周に沿って形成された円周溝mの本数を複数本有する。円周溝mの本数は、通常、20〜1200本であるのが好ましく、さらには50〜600本であるのが好ましい。図2では、円周溝mが複数本図示されている。溝付き金属ガイドロールMRの直径は、通常、50〜150mmであり、70〜110mmであるのが、たわみ抑制と省スペースの点から好ましい。
図3は、前記溝付き金属ガイドロールMRの表面の一例を示す断面図である。図3では、前記円周溝mの間の幅が、プレーン幅pとして表されている。プレーン幅pは同じ幅であってもよく、異なっていてもよいが、設計コストや加工コストの観点から、同じ幅で設けられているのが好ましい。プレーン幅pは、1.0×10−4〜3.3×10−3mである。プレーン幅pは、1.4×10−4〜3.3×10−3mであるのが好ましく、さらには、1.4×10−4〜2.5×10−3mであるのが好ましく、さらには1.4×10−4〜1.5×10−3mであるのが好ましい。なお、プレーン幅pが異なる場合は、プレーン幅pはいずれの値も上記範囲に入ることが好ましい。プレーン幅pが1.0×10−4m未満では、溝付き金属ガイドロールの表面の加工が困難になる場合があり、一方、3.3×10−3mを超える場合には、上記式を満足したとしても、樹脂フィルムにスリップが生じスクラッチが発生するおそれがある。
また図3では円周溝mの断面として、三角形の形状をしている場合を例示している。円周溝mの断面積の形状は、特に制限されず、台形、半円、長方形、正方形、楕円等の形状であってもよい。前記円周溝mの1本の断面積Sは0.01×10−6〜0.2×10−6m2である。前記断面積Sは、各円周溝において同じであってもよく、異なっていてもよいが、設計コストや加工コストの観点から、各円周溝の断面積は同じあるのが好ましい。断面積Sは、0.022×10−6〜0.17×10−6m2であるのが好ましく、さらには、0.1×10−6〜0.17×10−6m2であるのが好ましく、さらには、0.15×10−6〜0.17×10−6m2であるのが好ましい。なお、各円周溝の断面積Sが異なる場合は、断面積Sはいずれの値も上記範囲に入ることが好ましい。断面積Sが、0.01×10−6未満では超える場合には、溝付き金属ガイドロールの表面の加工が困難になる場合があり、一方、0.2×10−6m2、を超える場合には、円周溝mに倣って透明樹脂フィルムWに折れが発生し好ましくない。
なお、溝付き金属ガイドロールMRの表面の各円周溝mは、レーザー加工、切削加工、エッチング加工、メッキ加工等により形成することができる。なお、円周溝mの縦横比、即ち、平均溝幅L(断面積Sに係る溝付き金属ガイドロールの表面の仮想線)/平均溝深さD(断面積Sに係る溝付き金属ガイドロールの深さ仮想線)は、例えば、レーザー加工時のレーザースミアの除去や、切削加工時の切削刃の侵入させやすさ、エッチング加工時やメッキ加工時の溝内の液交換の容易さなどの観点から、円周溝mの縦横比(L/D)は、1〜5であるのが好ましく、さらには1.5〜2.5であるのが好ましい。
また、前記溝付き金属ガイドロールには、例えば、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS310S等が用いられる。溝付き金属ガイドロールは、ゴムロールのようにゴム材料を用いることによるコストの悪化や、交換時間の確保に伴う設備稼働率の低下の問題がない。また、本発明の溝付き金属ガイドロールは、所定構造の微細加工された円周溝を形成するうえで好ましい。ゴムロールでは、本発明の所定構造の微細加工された円周溝を形成することは困難であり、本発明においてガイドロールの材質が金属であることは、樹脂フィルムにスクラッチが発生するのを抑えるうえでも好ましい。但し、金属ガイドロールの表面がステンレススチール等の場合には、処理液(例えば、偏光子の製造製法ではヨウ素等、透明保護フィルムのけん化処理では水酸化ナトリウム等の強アルカリ等の腐食性の高い液体)により金属ガイドロール表面に錆が発生するおそれがあるため、溝付き金属ガイドロールとしては、ハードクロムメッキを施した表面を有する溝付き金属ガイドロールを用いるのが好ましい。
また前記溝付き金属ガイドロールとしては、テンデンシー構造、シャフト構造のロールを採用することができる。本発明では、処理液が溝付き金属ガイドロールの内部構造(シャフト内)に侵入した場合にも回転バランスが良好なことから、テンデンシー構造を有する溝付き金属ガイドロールを用いることが好ましい。
処理液Xは、本発明の製造方法により得られる処理フィルムにより適宜に選択されるが、処理液Xの粘度は、0.2〜2mPa・sの範囲に制御したものを用いるのが好ましく、さらには、0.3〜1.5mPa・sであるのが好ましい。前記範囲の粘度の処理液Xは、樹脂フィルムWと溝付き金属ガイドロールMRとの間に、処理液Xは流体として侵入することを抑制しやすく、樹脂フィルムWにスクラッチの発生を抑えるうえで好ましい。なお、粘度の測定は22℃において、回転型粘度計で測定したものであるが、測定時のせん断速度は10(1/s)である。
本発明の処理フィルムの製造方法では複数のガイドロールRが用いられるが、前記複数のガイドロールの少なくとも1つは、前記溝付き金属ガイドロールMRを用いる。また、当該溝付き金属ガイドロールMRと前記樹脂フィルムWの抱き角θ(°)、当該溝付き金属ガイドロールMRの手前の前記樹脂フィルムWの張力T(N/m)、前記樹脂フィルムWの搬送速度をU(m/min)が、下記式:(1)
U<0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21 (1)
を満足するように制御する。上記関係を満足することで、樹脂フィルムにスクラッチが発生するのを抑えることができる。Z=0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21とする場合に、ZとUの差は5以上であるのが好ましく、さらには10以上であることが好ましく、さらには20以上であるのが好ましい。
U<0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21 (1)
を満足するように制御する。上記関係を満足することで、樹脂フィルムにスクラッチが発生するのを抑えることができる。Z=0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21とする場合に、ZとUの差は5以上であるのが好ましく、さらには10以上であることが好ましく、さらには20以上であるのが好ましい。
図4は、溝付き金属ガイドロールMRと樹脂フィルムWが形成する抱き角θ(°)、を示す概略図である。抱き角θは図4に示すとおり、溝付き金属ガイドロールMRを介して搬送される透明樹脂フィルムWが、溝付き金属ガイドロールMRを通過する前後において、溝付き金属ガイドロールMRを介して形成される角度である。具体的には、溝付き金属ガイドロールMRの中心点を基準点として、透明樹脂フィルムWが溝付き金属ガイドロールMRと接している最始点と最終点により形成される角度である。前記抱き角θは30〜180°の範囲に設定される。前記抱き角θは60〜120°であるのが好ましい。抱き角θが30°未満では、樹脂フィルムが蛇行する原因になったり、処理浴の長さが長くなったりして好ましくない。一方、抱き各θが180°を超える場合に、樹脂フィルムにシワが入る原因になったり、ロールが密集した配置となるために処理開始時の通紙作業性やメンテナンス作業性が悪化するおそれがあり好ましくない。
張力Tは、溝付き金属ガイドロールMRの手前の前記樹脂フィルムWの単位幅あたりの張力である。張力Tは、40〜200N/mである。張力Tは60〜200N/mであるのが好ましく、さらには80〜180N/mであるのが好ましい。張力Tが40N/m未満では、張力が安定せず、樹脂フィルムWを安定走行することが困難である。一方、張力Tが200N/mを超える場合には、樹脂フィルムWが塑性変形して最終的には破断するようになるため好ましくない。
搬送速度Uは、溝付き金属ガイドロールMRの手前の前記樹脂フィルムWの搬送速度である。搬送速度Uは5〜80m/minである。搬送速度Uは10〜60m/minであるのが好ましく、さらには25〜50m/minであるのが好ましい。搬送速度Uが5m/min未満では生産効率が低くなる。一方、搬送速度Uが80m/minを超える場合には、従来の設備では搬送速度が早く、処理フィルムW´を製造した後の乾燥工程が不十分になるおそれがある。
前記溝付き金属ガイドロールRMのロール速度をU1とする場合には、前記樹脂フィルムWの搬送速度Uとロール速度をU1が、下記式(2)
{(U1−U)/U}×100(%)≦0.3 (2)
を満足することが、スクラッチの発生を抑えるうえで好ましい。
{(U1−U)/U}×100(%)≦0.3 (2)
を満足することが、スクラッチの発生を抑えるうえで好ましい。
本発明の処理フィルムの製造方法に用いられる樹脂フィルムとしては、各種の樹脂材料を用いることができる。樹脂材料は、各種用途に応じて適宜に選択して用いられる。樹脂材料としては、可視光領域において透光性を有するものが光学フィルム等の用途において好適に用いることができる。
透光性樹脂としては、例えば、透光性の水溶性樹脂があげられる。透光性の水溶性樹脂を用いた樹脂フィルムは、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムが偏光子の製造に好適に用いられる。ポリビニルアルコール系フィルムには、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等があげられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものがあげられる。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜10000程度が好ましく、1000〜10000がより好ましい。けん化度は80〜100モル%程度のものが一般に用いられる。
上記の他、ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分けん化フィルム等の親水性高分子フィルム、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
前記ポリビニルアルコール系フィルム中には、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を含有することもできる。可塑剤としては、ポリオールおよびその縮合物等が挙げられ、たとえばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。可塑剤等の使用量は、特に制限されないがポリビニルアルコール系フィルム中20重量%以下とするのが好適である。
また透光性の水溶性樹脂としては、例えばポリビニルピロリドン系樹脂、アミロース系樹脂等があげられる。
また、透光性樹脂としては、前記以外の各種の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂およびこれらの混合物等が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂を用いた樹脂フィルムは、例えば、偏光子の透明保護フィルムとして好適に用いることができる。偏光子の透明保護フィルムとしては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
前記樹脂フィルムの厚さは、用途に応じて適宜に決定しうる。例えば、偏光子の製造に用いられるポリビニルアルコール系フィルムの厚さは、通常、10〜300μm程度のものが用いられ、好ましくは20〜100μmである。また偏光子の透明保護フィルムに用いられる樹脂フィルムの厚さは、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。また、樹脂フィルムの原反の幅は、通常、100〜5000mm程度である。
前記樹脂フィルムとしては、予め、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等の表面処理層を有するものを用いることができる。
図5は、本発明の処理フィルムの製造方法に係わる、偏光子の製造方法の一例を示す概念図である。図5では、原反ロールから繰り出される樹脂フィルム(ポリビニルアルコール系フィルム)Wに、順次に、膨潤工程A、染色工程B、架橋工程C、延伸工程D、洗浄工程Eが順次に施されて、偏光子が製造される場合である。図5において、膨潤工程A、染色工程B、架橋工程C、延伸工程D、洗浄工程Eにおける浴槽Yには各工程に応じた処理液Xが用いられる。図5においては、処理液X内にガイドロールRが用いられているが、これらガイドロールのいずれか少なくとも一つに本発明の溝付き金属ガイドロールMRが用いられる。従って、本発明の処理フィルムの製造方法は、図5で示す、膨潤工程A、染色工程B、架橋工程C、延伸工程D、洗浄工程Eからなる偏光子の製造方法において、いずれかの工程において適用されていてもよく、2つ以上の工程、さらには全工程において適用されていてもよい。
染色工程Bは、上記ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素または二色性染料を吸着・配向させることにより行う。染色工程Bは、延伸工程Dとともに行うことができる。染色は、通常、上記フィルムを染色溶液(処理液)に浸漬することにより一般に行われる。染色溶液としてはヨウ素溶液が一般的である。ヨウ素溶液として用いられるヨウ素水溶液は、ヨウ素および溶解助剤であるヨウ化化合物によりヨウ素イオンを含有させた水溶液などが用いられる。ヨウ化化合物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が用いられる。ヨウ化化合物としては、ヨウ化カリウムが好適である。本発明で用いるヨウ化化合物は、他の工程で用いる場合についても、上記同様である。
ヨウ素溶液中のヨウ素濃度は0.01〜1重量%程度、好ましくは0.02〜0.5重量%である。ヨウ化化合物濃度は0.1〜10重量%程度、さらには0.2〜8重量%で用いるのが好ましい。ヨウ素染色にあたり、ヨウ素溶液の温度は、通常20〜50℃程度、好ましくは25〜40℃である。浸漬時間は通常10〜300秒間程度、好ましくは20〜240秒間の範囲である。
架橋工程Cは、架橋剤として、通常、ホウ素化合物を用いて行う。架橋工程Cの順序は特に制限されない。架橋工程Cは、延伸工程Dとともに行うことができる。架橋工程Cは複数回行うことができる。ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ砂等が挙げられる。ホウ素化合物を用いた処理液は、水溶液または水−有機溶媒混合溶液の形態で一般に用いられる。通常は、ホウ酸水溶液が用いられる。ホウ酸水溶液のホウ酸濃度は、2〜15重量%程度、好ましくは3〜13重量%である。架橋度により耐熱性を付与するには、前記ホウ酸濃度とするのが好ましい。ホウ酸水溶液等には、ヨウ化カリウム等のヨウ化化合物を含有させることができる。ホウ酸水溶液にヨウ化化合物を含有させる場合、ヨウ化化合物濃度は0.1〜10重量%程度、さらには0.2〜5重量%で用いるのが好ましい。
架橋工程Cは、前記ポリビニルアルコール系フィルムをホウ酸水溶液等の処理液へ浸漬することにより行うことができる。架橋工程Cにおける処理温度は、通常、25℃以上、好ましくは30〜85℃、さらには30〜60℃の範囲である。処理時間は、通常、5〜800秒間、好ましくは8〜500秒間程度である。
延伸工程Dは、通常、一軸延伸を施すことにより行う。この延伸方法は、染色工程B、架橋工程Cとともに施すことができる。延伸方法は、湿潤式延伸方法を用いる。湿潤式延伸方法としては、例えば、染色工程Bを施した後、延伸を行うことが一般的である。また架橋工程Cとともに延伸を行うことができる。
湿潤式延伸方法に用いる処理液にヨウ化化合物を含有させることができる。当該処理液にヨウ化化合物を含有させる場合、ヨウ化化合物濃度は0.1〜10重量%程度、さらには0.2〜5重量%で用いるのが好ましい。湿潤式延伸方法における処理温度は、通常、25℃以上、好ましくは30〜85℃、さらには30〜60℃の範囲である。浸漬時間は、通常、10〜800秒間、好ましくは30〜500秒間程度である。
延伸工程Dでは、総延伸倍率が、ポリビニルアルコール系フィルムの元長に対して、総延伸倍率で3〜17倍の範囲になるように行う。好ましくは4〜10倍、さらに好ましくは4〜8倍である。すなわち、前記総延伸倍率は、延伸工程D以外の、後述の膨潤工程A等において延伸を伴う場合には、それらの工程における延伸を含めた累積の延伸倍率をいう。総延伸倍率は、膨潤工程A等における延伸倍率を考慮して適宜に決定される。総延伸倍率が低いと、配向が不足して、高い光学特性(偏光度)の偏光子が得られにくい。一方、総延伸倍率が高すぎると延伸切れが生じ易くなり、また偏光子が薄くなりすぎて、続く工程での加工性が低下するおそれがある。
偏光子の製造方法では、通常、染色工程B、架橋工程Cおよび延伸工程Dを少なくとも施すが、前記染色工程Bを施す前に、膨潤工程Aを施すことができる。膨潤工程Aにより、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができる他に、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。
膨潤工程Aにおいて用いられる処理液としては、通常、水、蒸留水、純水が用いられる。当該処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。また、当該処理液にはヨウ化化合物を含有させる場合、ヨウ化化合物濃度は0.1〜10重量%程度、さらには0.2〜5重量%で用いるのが好ましい。
膨潤工程Aにおける処理温度は、通常、20〜45℃程度に調整するのが好ましい。さらには、25〜40℃であるのが好ましい。なお、膨潤ムラがあるとその部分が染色工程において染色のムラになるため膨潤ムラは発生させないようにする。浸漬時間は通常10〜300秒間程度、好ましくは20〜240秒間の範囲である。
膨潤工程Aでは、適宜に延伸することができる。前記延伸倍率は、ポリビニルアルコール系フィルムの元長に対して、通常、6.5倍以下とされる。好ましくは、光学特性の点から、前記延伸倍率は、1.2〜6.5倍、さらには2〜4倍、さらには2〜3倍にするのが好ましい。膨潤工程Aにおいて、延伸を施すことにより、膨潤工程A後に施される延伸工程Dでの延伸を小さく制御することができ、フィルムの延伸破断が生じないように制御できる。一方、膨潤工程Aでの、延伸倍率が大きくなると、延伸工程での延伸倍率が小さくなり過ぎ、特に、架橋工程Cの後に延伸工程Dを施す場合には光学特性の点で好ましくない。
偏光子の製造方法では、上記以外工程の他に、金属イオン処理を施すことができる。金属イオン処理は、金属塩を含む水溶液(処理液)に、ポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行う。金属イオン処理により、種々の金属イオンをポリビニルアルコール系フィルム中に含有させることができる。
偏光子の製造方法では、前記工程を施した後に、洗浄工程Eを施すことができる。洗浄工程Eは、ヨウ化カリウム溶液(処理液)により行うことができる。前記ヨウ化カリウム溶液におけるヨウ化カリウム濃度は、通常、0.5〜10重量%程度、さらには0.5〜8重量%、さらには1〜6重量%の範囲である。
ヨウ化カリウム溶液による洗浄工程にあたり、その処理温度は、通常15〜60℃程度、好ましくは25〜40℃である。浸漬時間は通常1〜120秒程度、好ましくは3〜90秒間の範囲である。ヨウ化カリウム溶液による洗浄工程の段階は、乾燥工程前であれば特に制限はない。
また、洗浄工程Eとしては、水洗浄工程を施すことができる。水洗浄工程は、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行う。水洗浄温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃、さらに好ましくは15〜40℃の範囲である。浸漬時間は、通常、10〜300秒間、好ましくは20〜240秒間程度である。
前記水洗浄工程は、ヨウ化カリウム溶液による洗浄工程と水洗浄工程を組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。
前記各工程を施した後には、最終的に、乾燥工程を施して、偏光子を製造する。
図6は、本発明の処理フィルムの製造方法に係わる、けん化した透明保護フィルムの製造方法を示す概念図の一例である。図6では、原反ロールから繰り出される、樹脂フィルム(透明保護フィルム)Wに、順次に、けん化工程F、水洗浄工程Gが順次に施されて、けん化した透明保護フィルムが製造される場合である。図6において、けん化工程F、水洗浄工程Gにおける浴槽Yには各工程に応じた処理液Xが用いられる。図6においては、処理液内にガイドロールRが用いられているが、これらガイドロールのいずれか少なくとも一つに本発明の溝付き金属ガイドロールMRが用いられる。従って、本発明の処理フィルムの製造方法は、図6で示すけん化工程F、水洗浄工程Gからなる透明保護フィルムの製造方法において、いずれかの工程において適用されているもよく、全工程において適用されていてもよい。
けん化工程Fに係る処理が施される透明保護フィルムとしては、例えば、セルロースエステル系樹脂が好適に用いられる。
けん化工程Fは、透明保護フィルムを、アルカリ水溶液(処理液)中に浸漬することにより行う。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリの水溶液が用いられる。アルカリ水溶液の濃度は、通常、1〜20重量%程度、好ましくは5〜15重量%である。また、けん化工程Fの処理温度(アルカリ溶液の調整温度)は、通常、30〜95℃程度、好ましくは、45〜80℃である。また、アルカリ溶液への浸漬時間は、通常、10秒間〜20分間程度、好ましくは15秒間〜5分間である。
また、水洗浄工程Gは、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行う。水洗浄温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃、さらに好ましくは15〜40℃の範囲である。浸漬時間は、通常、10〜300秒間、好ましくは20〜240秒間程度である。
前記各工程を施した後には、最終的に、乾燥工程を施して、けん化処理された透明保護フィルムを製造する。
以下に本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。
実施例1〜18および比較例1〜20
図7に示すような装置により、2種類のトリアセチルセルロースフィルムの水洗浄を行った。処理液Xには、22℃の純水(粘度は1mPa・s)を用いた。前記水洗浄の後には、図7におけるガイドロールR12として、表1に示すガイドロール(幅300mm、直径110mm)を用いた。表1にはガイドロールの表面材質、円周溝の構造(断面積S,プレーン幅p)を示す。なお、断面積Sの形状は三角形である。
図7に示すような装置により、2種類のトリアセチルセルロースフィルムの水洗浄を行った。処理液Xには、22℃の純水(粘度は1mPa・s)を用いた。前記水洗浄の後には、図7におけるガイドロールR12として、表1に示すガイドロール(幅300mm、直径110mm)を用いた。表1にはガイドロールの表面材質、円周溝の構造(断面積S,プレーン幅p)を示す。なお、断面積Sの形状は三角形である。
円周溝の本数は、ロール幅(300mm)を溝ピッチで割ることで算出される。但し、ロールの両端には円周溝はないので、算出値から1を引いた値になる。なお、溝ピッチは、プレーン幅p+円周溝の幅L、である。
プレーン幅p(m)が、0.14×10−3、1.3×10−3、1.5×10−3、の場合の溝ピッチ(m)は2×10−3であり、円周溝の本数は149本である。
プレーン幅p(m)が、3.3×10−3、の場合の溝ピッチ(m)は4×10−3であり、円周溝の本数は74本である。
プレーン幅p(m)が、5.0×10−3、の場合の溝ピッチ(m)は6.0×10−3であり、円周溝の本数は49本である。
表1における、溝付きガイドロールの断面積S、プレーン幅pは、ガイドロールにレプリカ樹脂を用いてかたどりをして、キーエンス社製のVK−950レーザー顕微表で形状測定した結果である。
プレーン幅p(m)が、0.14×10−3、1.3×10−3、1.5×10−3、の場合の溝ピッチ(m)は2×10−3であり、円周溝の本数は149本である。
プレーン幅p(m)が、3.3×10−3、の場合の溝ピッチ(m)は4×10−3であり、円周溝の本数は74本である。
プレーン幅p(m)が、5.0×10−3、の場合の溝ピッチ(m)は6.0×10−3であり、円周溝の本数は49本である。
表1における、溝付きガイドロールの断面積S、プレーン幅pは、ガイドロールにレプリカ樹脂を用いてかたどりをして、キーエンス社製のVK−950レーザー顕微表で形状測定した結果である。
また、表1に示すように、ガイドロールR12における抱き角θ、前記ガイドロールR12の手前のフィルムの張力T、搬送速度Uをそれぞれ制御した。なお、フィルムの張力Tの測定は、大気中に配置されたR11の上流のロールをテンションピックアップロールP1にし、その値を一定値に制御するようにR15の下流のピンチロールP2の速度を制御することにより行なった。また、フィルムの搬送速度Uの測定は、アクト電子株式会社製のレーザドップラ速度センサ150Sを2台用いて、ガイドロールR12のロール速度U1とともに同時に測定した。
トリアセチルセルロースフィルムとして2種類のフィルム1、2を用いた。
フィルム1は、厚さ80μm、幅250mmのトリアセチルセルロースフィルムを65℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬の条件でのけん化処理して作製したものである。処理液により、けん化処理したフィルム1の水洗浄を行った。
フィルム2は、厚さ80μm、幅250mmのトリアセチルセルロースフィルムをそのまま用いた。処理液により、フィルム2のパーティクルを除去するために、水洗浄を行った。
フィルム1は、厚さ80μm、幅250mmのトリアセチルセルロースフィルムを65℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬の条件でのけん化処理して作製したものである。処理液により、けん化処理したフィルム1の水洗浄を行った。
フィルム2は、厚さ80μm、幅250mmのトリアセチルセルロースフィルムをそのまま用いた。処理液により、フィルム2のパーティクルを除去するために、水洗浄を行った。
上記結果を、Z=0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p−021、の式に代入して、Zを導いた。結果を表1に示す。
上記実施例および比較例で得られた、フィルム1、2について下記の評価を行なった。結果を表1に示す。
<スリップ>
上記実施例および比較例において、ガイドロールR12において、スリップが発生しているか否かを、ロール速度とフィルム速度を比較して、フィルム速度が一定の割合以上に遅れていないか否かで判断した。
前記樹脂フィルムWの搬送速度Uとロール速度をU1に関する、下記式(2)
{(U1−U)/U}×100(%)≦0.3 (2)
について、式(2)を満足する場合をスリップしない、満足しない場合をスリップする、とした。
上記実施例および比較例において、ガイドロールR12において、スリップが発生しているか否かを、ロール速度とフィルム速度を比較して、フィルム速度が一定の割合以上に遅れていないか否かで判断した。
前記樹脂フィルムWの搬送速度Uとロール速度をU1に関する、下記式(2)
{(U1−U)/U}×100(%)≦0.3 (2)
について、式(2)を満足する場合をスリップしない、満足しない場合をスリップする、とした。
<表面粗さ>
キーエンス社製のVK−950のレーザー顕微鏡で、フィルム1、2の表面形状を測定して、表面粗さ(Ra:μm)を求めた。
キーエンス社製のVK−950のレーザー顕微鏡で、フィルム1、2の表面形状を測定して、表面粗さ(Ra:μm)を求めた。
<平行光線透過率>
スガ試験株式会社製のダブルビームへーズコンピュータHZ−2により、フィルム1、2の平行光線透過率(Tp)を測定した。
スガ試験株式会社製のダブルビームへーズコンピュータHZ−2により、フィルム1、2の平行光線透過率(Tp)を測定した。
表1から、式(1)を満足する実施例ではスリップの発生が認められないのに対して、式(1)を満足しない比較例ではスリップの発生が認められる。また実施例では比較例に比べて、処理が施された樹脂フィルムの表面粗さRaが小さく、スクラッチの発生を抑えられることが分かる。また実施例では比較例に比べて、処理が施された樹脂フィルムの平行光線透過率が高く、視認性が良好であることが分かる。なお、比較例3では、ゴムロールを用いているため、フィルム折れ、ゴム劣化が生じた。
R ガイドロール
MR 溝付き金属ガイドロール
m 円周溝
p プレーン幅
S 円周溝の断面積
W 樹脂フィルム
T 樹脂フィルムの張力
θ 抱き角
X 処理液
Y 浴槽
MR 溝付き金属ガイドロール
m 円周溝
p プレーン幅
S 円周溝の断面積
W 樹脂フィルム
T 樹脂フィルムの張力
θ 抱き角
X 処理液
Y 浴槽
Claims (6)
- 処理液内および処理液外に配置した複数のガイドロールを介して、樹脂フィルムを、処理液内に浸漬処理しながら搬送する工程を少なくとも有する、前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において、
前記ガイドロールの少なくとも一つは、
当該ガイドロールの円周に沿って形成された円周溝を複数本有する、溝付き金属ガイドロールであって、
かつ、前記円周溝の断面積は0.01×10−6〜0.2×10−6m2、前記複数の円周溝の間のプレーン幅は1.0×10−4〜3.3×10−3mを満足するものであり、
かつ、前記樹脂フィルムの搬送を、
前記溝付き金属ガイドロールと前記樹脂フィルムの抱き角が30〜180°であり、
前記溝付き金属ガイドロールの手前の前記樹脂フィルムの張力が40〜200N/mであり、
前記溝付き金属ガイドロールの手前の前記樹脂フィルムの搬送速度が5〜50m/minである範囲で行い、
かつ、前記断面積をS(m2)、前記プレーン幅をp(m)、前記抱き角をθ(°)、前記張力をT(N/m)、前記搬送速度をU(m/min)としたときに、下記式(1):
U<0.51×θ0.25×T0.54×S0.01×p―0.21 (1)
の関係を満足することを特徴とする処理フィルムの製造方法。 - 前記処理フィルムの表面粗さ(Ra)が0.4μm以下であることを特徴とする請求項1記載の処理フィルムの製造方法。
- 前記樹脂フィルムが、偏光子用の透明保護フィルムであることを特徴とする請求項1または2記載の処理フィルムの製造方法。
- 前記偏光子用の透明保護フィルムが、けん化処理したセルロースエステル系樹脂フィルムであり、
当該けん化処理したセルロースエステル系樹脂フィルムを、水洗浄処理することを特徴とする請求項3記載の処理フィルムの製造方法。 - 前記樹脂フィルムが、ポリビニルアルコール系フィルムであり、
処理フィルムである偏光子を製造することを特徴とする請求項1または2記載の処理フィルムの製造方法。 - 前記溝付き金属ガイドロールが、ハードクロムメッキを施した表面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の処理フィルムの製造方法。
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---|---|---|---|---|
WO2016009855A1 (ja) * | 2014-07-15 | 2016-01-21 | 住友化学株式会社 | 偏光フィルムの製造方法 |
JP2020034673A (ja) * | 2018-08-29 | 2020-03-05 | 日東電工株式会社 | 位相差フィルム、位相差層付き偏光板、および位相差フィルムの製造方法 |
KR20220027021A (ko) | 2020-08-26 | 2022-03-07 | 스미또모 가가꾸 가부시키가이샤 | 편광 필름의 제조 방법 및 편광 필름의 제조 장치 |
-
2011
- 2011-02-21 JP JP2011034740A patent/JP2012173477A/ja not_active Withdrawn
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JP2016021003A (ja) * | 2014-07-15 | 2016-02-04 | 住友化学株式会社 | 偏光フィルムの製造方法 |
KR20170031701A (ko) * | 2014-07-15 | 2017-03-21 | 스미또모 가가꾸 가부시키가이샤 | 편광 필름의 제조 방법 |
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