JP4655098B2 - 音声信号出力装置、音声信号出力方法およびプログラム - Google Patents
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Description
このため、仮に低域再生能力の高いアレースピーカ用のユニットが存在したり、低域専用のアレースピーカを用いても低域のサラウンド化には問題があった。すなわち、左右チャンネルに振り分けられた同じ信号を別々に制御すると、著しく定位及び明瞭度が損なわれたり、位相の異なる左右チャンネルの重ね合わせにより、音圧が減衰し低音感の喪失が起こる。
まず、遅延付与による指向性制御の原理について簡単に説明する。ひとつのスピーカユニットから出力された音声信号は空間を球面状に広がってゆく。複数のスピーカから同じ音声信号を出力すると、空間の各点で重ね合せが起こり、各出力の位相が一致する点、各出力の波面が揃う方向で音圧が大きくなる。ここで、各々のスピーカから出力する音声信号に予め定めた遅延を付与することで、各出力の位相が一致する点、方向を設定することができる。この結果、特定の方向に指向方向を持たせることができる。
本発明の一実施形態に係るアレースピーカ装置1(音声信号出力装置)の構成を説明する。
図1は、アレースピーカ装置1の外観(正面)を示す図である。同図に示すように、アレースピーカ装置1の筐体20の中央部には、アレースピーカ22が配置されている。アレースピーカ22は、複数のスピーカユニット23−1、23−2、…23−nからなる。向かって左側には、ウーハ21−1が、右側にはウーハ21−2(以下、互いに区別する必要がない場合は、ウーハ21と称する)が設けられている。
アレースピーカ装置1は、高い周波数帯域の音(高域成分)と低い周波数帯域の音(低域成分)とを別個に処理し、それぞれアレースピーカ22およびウーハ21から出力する。従って、以下では、高域成分および低域成分の処理に係る構成をそれぞれ説明する。
図2は、高域成分の処理に係るアレースピーカ装置1の構成を模式的に示した図である。
D/Aコンバータ12−1〜12−nは、受取ったデジタルデータをアナログ信号(音声信号)に変換する。D/Aコンバータ12−1〜12−nにおいて変換されたアナログ信号は、それぞれパワーアンプ19−1〜19−nに出力される。
パワーアンプ19−1〜19−nは、受取った信号を増幅し、対応して設けられたスピーカユニット23−1〜23−nに出力する。
スピーカユニット23−1〜23−nは、受取った信号に基づいて放音する。
以上が、各チャンネルの信号の高域成分の処理に係る構成である。
図4は、低域成分の処理に係るアレースピーカ装置1の構成を模式的に示した図である。
また、LPF31−4および31−5から出力された信号(FRおよびRRの低域成分)は、重畳部32−2において加算され、新たな信号(以下、右信号Rと呼ぶ)が生成され、信号分離回路33に入力される。
なお、LPF31−3から出力された信号(Cの低域成分)は、直接信号分離回路33に出力される。この信号を、以下ではセンター信号Cと呼ぶ。
音圧測定部331−1および331−2は左信号Lおよび右信号Rの瞬時音圧を測定する。すなわち、それぞれの信号の絶対値に変動時定数を付与する。
(数式1)
(数式2)
Cm=C+α×(L+R)
Lm=L−α×R
Rm=R−α×L
遅延回路34−3は、相関信号Cmを所定の時間遅延させる。この遅延付与は、聴取者に対して、非相関信号LmおよびRmとのタイミングを合わせるためのものである。
パワーアンプ36−1および36−2は、受取った信号を増幅し、それぞれウーハ21−1および21−2に出力する。
ウーハ21−1および21−2は、受取った信号に基づいて放音する。
以下では、本発明に係るアレースピーカ装置1における高域成分および低域成分の処理について説明する。
まず、高域成分のサラウンド再生の態様について簡潔に説明する。
図2に示すように、5チャンネルの信号(RL、FL、C、FRおよびRR)は、HPF11−1〜11−5により高域抽出され、指向性制御部17−1〜17−5で遅延を付与されて、それぞれ全てのアレースピーカユニット23−1〜23−nに供給される。このとき指向性制御部17−1〜17−5はそれぞれ、各スピーカユニットからの出力が空間の所定の位置で同相となるような所定の遅延時間を付与する。その結果、アレースピーカ22から出力された各チャンネルの音声は、それぞれ所定の方向にビーム化される。
次に、低域成分のサラウンド化の態様について説明する。
図4に示すように、5チャンネルの信号(RL、FL、C、FRおよびRR)は、LPF31−1〜31−5および重畳部32−1および32−2により、低域の右信号L、左信号R、センター信号Cとして再生成され、さらに信号分離回路33により、非相関信号LmおよびRm、および相関信号Cmとして再生成される。
同様に、非相関信号Rmは、遅延回路34−4および34−5により所定の遅延を付与されてウーハ21−1および21−2に供給される。
相関信号Cmは、遅延回路34−3により所定の遅延を付与され、ウーハ21−1および21−2に同相で供給される。
同様に、非相関信号Rmは右方向に主指向方向を持ち、その結果右方向に音場の広がりを感じられる。
一方、中央に音像定位すべき相関信号Cは、ウーハ21−1および21−2から同相出力されるため、正面中央に音像定位する。
このようにして、相関成分の中央の定位を損なわずに、左右の低域信号がサラウンド化される。
低域信号は、左右チャンネルに同じ音声が割付けられることも多く、その場合に指向性制御を行うと、低音感が損なわれたり定位が曖昧になるなど弊害が大きいため、相関成分と非相関成分の分離が必要である。そのための一実施形態を、図5、数式1および数式2で示した。
図5において、音圧測定部331−1および331−2は左信号Lおよび右信号Rの音圧を測定し、これを比較部332で比較し、音圧差が大きければ0に近くなり、音圧差が小さければ1に近くなるマトリクス係数αを算出し、相関成分をそれぞれα×L、α×Rとしている。すなわち、音圧の比較をもって相関性を決定している。
これは非常に単純な方法であるが、それゆえ非常に小さな処理リソースで実現することができる一方で、処理対象となる信号は周波数帯域が狭いため、比較的良好な相関・非相関分離回路として動作し、実用的である。
適応フィルタ52−1および52−2は従来知られているFIRフィルタである。適応フィルタ52−1は、設定されている係数に従って、入力された右信号Rを変形し、模擬左信号L´を出力する。差分算出部53−1は、目標信号である左信号Lと模擬左信号L´の差分である誤差信号を算出する。該誤差信号は適応フィルタ52−1の係数にフィードバックされ、係数は誤差信号を小さくするように再設定される。この処理により、適応フィルタの出力である模擬左信号L´は左信号Lと右信号Rの相関成分として抽出される。同時に、誤差信号が非相関成分となり、非相関信号Lmとして出力される。右信号Rを目標信号として、左信号Lを入力とする、適応フィルタ52−2および差分算出部53−2も同様の処理により、相関成分である模擬右信号R´および非相関信号Rmを出力する。
相関成分である、模擬左信号L´および模擬右信号R´は、加算器54で、センター信号Cに重畳され、相関信号Cmとして出力される。遅延回路51−1〜51−3は、群遅延が発生する適応フィルタと、他の経路の遅延を同期させるための回路である。
なお、適応フィルタの係数算出方法は、標準的なLMSアルゴリズムやRMSアルゴリズムなどいずれの方法によっても良い。
以上のように、アレースピーカ装置1においては、各チャンネルの信号の高域成分と低域成分とでそれぞれ異なる再生がなされる。高域成分については、各チャンネルの音がビーム化されて出力されることにより、従来知られているサラウンド再生がなされる。一方、低域信号は以下のように処理される。すなわち、低域信号は、相関信号Cmと非相関信号LmおよびRmに分離される。相関信号Cmは二つのウーハから同相出力され、正面中央に確固たる音像を生成する。一方、非相関信号LmおよびRmは左右方向に指向性制御されることにより、相対的に左右からの反響音が大きくなるため、聴取者には音場の広がりが感じられる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。
上述した実施形態においては、低域信号を二つのウーハから出力したが、三つ以上のウーハを使用しても良い。その場合も、非相関信号に付与する遅延時間をそれぞれ設定し、所定の指向性を付与すれば良い。
また、7.1チャンネルなど、他のマルチチャンネル方式にも適用できる。この場合は、図4における重畳部にて、適切な右信号R、左信号Lおよびセンター信号Cを生成すればよい。
Claims (6)
- 複数のチャンネルの信号を受取る受取手段と、
前記受取手段が受取った複数のチャンネルの信号の各々について、所定の周波数よりも低い低域信号を生成する帯域分割手段と、
前記帯域分割手段により生成された前記複数のチャンネルの低域信号から、所定のチャンネル間における相関成分と非相関成分とを分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された各チャンネルの信号の非相関成分に、指向中心を正面方向に対して右または左方向とするための第1の指向性を付与して出力する非相関成分出力手段と、
前記分離手段により分離された各チャンネルの信号の相関成分に、前記正面方向に音像定位するための第2の指向性を付与して出力する相関成分出力手段と
を有することを特徴とする音声信号出力装置。 - 前記所定のチャンネルの低域信号の瞬時音圧を測定する瞬時音圧測定手段を更に有し、
前記分離手段は、前記瞬時音圧測定手段により測定された瞬時音圧に基づいて、前記複数のチャンネルの低域信号から前記相関成分と前記非相関成分とを分離することを特徴とする請求項1に記載の音声信号出力装置。 - 前記複数のチャンネルの低域信号に含まれる所定の信号を、他の前記複数のチャンネルの低域信号を目標信号とする適応フィルタで処理し模擬信号を生成するフィルタ手段を有し、
前記分離手段は、前記フィルタ手段により生成された模擬信号を元に前記相関成分と前記非相関成分とを分離する
ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号出力装置。 - 前記帯域分割手段は、前記受取手段が受取った複数のチャンネルの信号の各々について、所定の周波数よりも高い高域信号を更に生成し、
前記帯域分割手段により生成された、前記複数のチャンネルの信号の高域信号を、サラウンド再生する高域サラウンド出力手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の音声信号出力装置。 - 複数のチャンネルの信号を受取る受取段階と、
前記受取段階において受取られた複数のチャンネルの信号の各々について、所定の周波数よりも低い低域信号を生成する帯域分割段階と、
前記帯域分割段階において生成された前記複数のチャンネルの低域信号から、所定のチャンネル間における相関成分と非相関成分とを分離する分離段階と、
前記分離段階において分離された各チャンネルの信号の非相関成分に、指向中心を正面方向に対して右または左方向とするための第1の指向性を付与して出力する非相関成分出力段階と、
前記分離段階において分離された各チャンネルの信号の相関成分に、前記正面方向に音像定位するための第2の指向性を付与して出力する相関成分出力段階と
を有することを特徴とする音声信号出力方法。 - コンピュータを、
複数のチャンネルの信号を受取る受取手段と、
前記受取手段が受取った複数のチャンネルの信号の各々について、所定の周波数よりも低い低域信号を生成する帯域分割手段と、
前記帯域分割手段により生成された前記複数のチャンネルの低域信号から、所定のチャンネル間における相関成分と非相関成分とを分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された各チャンネルの信号の非相関成分に、指向中心を正面方向に対して右または左方向とするための第1の指向性を付与して出力する非相関成分出力手段と、
前記分離手段により分離された各チャンネルの信号の相関成分に、前記正面方向に音像定位するための第2の指向性を付与して出力する相関成分出力手段
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