JP4651194B2 - 遅延パケット隠蔽方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、遅延パケットの隠蔽を改善するために遅延したパラメータを使用する、パケット通信網の遅延パケット隠蔽方法および装置に関する。
【0002】
(発明の背景)
ディジタル的に圧縮された音声信号は、受信端における復号器で音声フレームを再構築するための音声パラメータを含むパケットの形で送信されることがしばしばある。そのようなパケット通信網の典型的な例はIPおよびATM通信網である。パケットが遅延したり紛失したりすると、何らかの隠蔽方法が用いられて遅延または紛失した音声パラメータを補う(参照(1))。普通、そのような隠蔽方法では、前に受信されたパラメータから、遅延または紛失パケット用の音声パラメータを予測して、それらの予測パラメータを遅延または紛失パラメータの代わりに適用して復号処理が行なわれる。最初の遅延または紛失パケットのパラメータは通常は単純に前のパケットからコピーされる。もしも更に別のパケットが遅延または紛失すれば、引き続いて同じパラメータが使用されるが、出力信号は徐々に弱められる。これらの方法の特徴的な点は、遅延パケットと紛失パケットの両方に同じやり方が適用されることである。これらの方法の欠点は、遅延パケットの情報は、パラメータ予測に用いられたものよりも最新の情報であるにも拘わらず完全に無視されることである。
【0003】
遅延パケットと紛失パケットとを区別する方法については参照(2)に述べられている。この参考文献に述べられている方法では、遅延パケット中の音声パラメータは、遅延パケットが到着次第、予測パラメータに置き換わる。しかし、この方法の特徴は、復号器がディジタル・フィルタリングに基づいているという事実を考慮していないことである。復号器中のディジタル・フィルタは1つのフレームを復号した後で最終フィルタ状態に到達する。それらの最終フィルタ状態が(新しい音声パラメータを伴って)次のフレームの復号のための初期状態として使用される。もし復号された出力信号が、送信端の符号器での合成による分析プロセスで生成された最良信号と同じ信号となるためには、音声パラメータと初期フィルタ状態とが同じでなければならない。参照(2)に述べられている方法では、最終的に遅延パケットが到着した時点で、正しい音声パラメータのみが使用されることになろう。しかし、その間にフィルタ状態は予測フェーズでの先行フレームの最終状態からドリフトしてしまっており、その結果、遅延した音声パラメータが急に供給された場合に好ましくない急激な出力信号の変化が発生する。
【0004】
(発明の概要)
本発明の1つの目的は遅延パケット中の情報を使用する、遅延パケット隠蔽方法および装置を提供するが、その中では上記のような好ましくない急激な出力信号変化は最小に抑えるかあるいは解消される。
【0005】
この目的はここに開示する特許請求の範囲に従って達成される。
【0006】
要約すれば、本発明は遅延パケット中に受信する情報を用いて音声パラメータのみならず初期の復号器状態の更新も含む。遅延パケット隠蔽の間に、同じ音声パラメータで以って、1つはドリフトした復号器状態に基づくもの、他方は更新された復号器状態の基づくものの2つの復号出力信号が生成される。その後、これら2つの出力信号は重みを付けられ、最終の出力信号に組み合わされる。この手順は予測された音声パラメータから更新されたものへの遷移をより滑らかにする。
【0007】
本発明は、それのその他の目的および利点とともに、添付図面と一緒に以下の説明を参照することによって最も良く理解できよう。
【0008】
(好適な実施の形態の詳細な説明)
図1は典型的な音声復号器10のブロック図である。固定コードブック12は音声信号を再構築するために用いる励起ベクトルを含む。固定コードブック12から選ばれる励起ベクトルは利得因子Gで重み付けされる。この最終の励起ベクトルが長期の予測子(ディジタル・フィルタ)16へ送られる。長期予測子16からの出力信号は、復号された音声サンプルを出力する短期予測子(別のディジタル・フィルタ)18へ転送される。ここに記述される復号器は受信した音声パラメータによって制御される。それらのパラメータは2つのグループ、すなわち、励起パラメータ20とフィルタ係数22とに区分されよう。励起パラメータ20は固定コードブックのベクトル選択を制御し、利得因子Gを設定する。フィルタ係数22は長期および短期の予測子16,18の伝達関数を決定する。
【0009】
本発明を説明するために、まず図2を参照しながらディジタル・フィルタのいくつかの特徴について議論することにしよう。
【0010】
図2はFIRフィルタのブロック図である。この種のフィルタは短期予測子18に使用されよう。このフィルタは数珠繋ぎになった遅延要素Dを含む(図面には3個の遅延要素しか示されていないが、より多くの要素がもちろん可能である)。1組の乗算器M0、M1、M2、M3が入力信号X(N)および遅延信号X(N−1)、X(N−2)、X(N−3)を取り出して、これらの信号にそれぞれフィルタ係数C0、C1、C2、C3を乗ずる。最後に、それら乗算された信号が加算器A1−A3で加算されて、このフィルタの出力信号Y(N)が得られる。これらの信号X(N)、X(N−1)、X(N−2)、X(N−3)の組がフィルタ状態を構成する。この説明から明らかなように、フィルタ出力信号Y(N)はフィルタ係数のみならず初期フィルタ状態にも依存する。フィルタは“記憶”を持つ、と言われる。この記憶が、従来技術の復号器でフィルタ係数のみを更新した場合に発生する急激な信号変化の原因である。FIRフィルタの場合、誤りを含むフィルタ状態の影響はフィルタの長さに依存しよう。フィルタからのタップが少ないほど、記憶は短期間となる。反対に、長期予測子16に用いられることが多いFIRフィルタの場合、記憶は永久的である。
【0011】
図1の実施の形態で、復号器10は、長期予測子16をディジタル・フィルタとして実現することによって実施されている。別の実施の形態は、図3に示すように、長期予測子を適応コードブックとして実施する復号器である。適応コードブックは長期予測子と同じ機能を実行するが、ディジタル・フィルタと正確に同じように実現されるものではない。その代わり、適応コードブック16は、復号処理が進行するにつれて、帰還ライン15によって連続的に更新される音声サンプルの長いバッファである。この長いバッファの特定の部分を位置決めすることによってベクトルの選択が行なわれる。この実施の形態で、励起パラメータは、選ばれた適応コードブックのベクトル用の利得因子GAへのそのようなポインタを含むであろう。適応コードブックは、復号処理の進行とともに新しいサンプルで以て更新されるため、フレームの復号された音声サンプルは適応コードブックの初期状態に依存することになる。このように、適応コードブックもディジタル・フィルタと同様に“記憶”を持つ。両方の実施の形態に当てはまるように、“初期復号器状態”という用語を使用することにしよう。
【0012】
図4は従来技術の遅延パケット隠蔽方法を示すタイミング図である。復号器を含む受信機がパケット1−9を受信する。復号に間に合って受信されたパケットから音声パラメータP1−P3およびP7−P9が抽出され、他方、遅延パケット4−6は単に無視される。抽出されたパラメータP1−P3は復号器へ転送され、対応する初期復号器状態S1−S3と一緒にフレーム1−3に関する音声信号を生成することになる。初期復号器状態間、例えば初期復号器状態S2とS3との間の破線は、指示された音声パラメータ(この例ではP2)を復号のために使用する場合、後の初期復号器状態が前の初期復号器状態から得られることを示している。パケット4は遅延するため、フレーム4に関する音声パラメータは利用できない。従って、それらの音声パラメータは前の音声パラメータP3から予測される。しばしば利用される1つの予測法は、単に前のフレームと同じ音声パラメータを使用するものである。フレーム4に関して予測される音声パラメータをこの図ではP4Pと表記する。こうして、フレーム4は正しい初期復号器状態S4と、予測された音声パラメータP4Pとで以って復号されることになろう。パケット5も遅延するので、フレーム5に関しても音声パラメータを予測しなければならない。しかし、パケット5は無視されてしまったので、新しい予測値P5Pは前の予測値P4Pに基づくことになる。しばしば使用される1つの予測法は、これも前のフレームからの音声パラメータを使用するものであるが、出力信号のエネルギーは減らされる。更に、フレーム4は予測された音声パラメータP4Pで以って復号されたので、フレーム5に関する初期復号器状態は正しい初期復号器状態S5ではなく、誤りを含む初期復号器状態S5Eである。パケット6もまた遅延するので、フレーム5と同じ処理(前のフレームから音声パラメータをコピーして、エネルギーを減らし、誤りを含む初期復号器状態に基づく復号のベースとなる)がフレーム6に関しても繰り返される。パケット7は時間通りに到着するので、それの音声パラメータP7はフレーム7の復号に使用できる。しかし、前の複数フレームは予測された音声パラメータで以って復号されてきたので、初期復号器状態S7Eは誤っているであろう。この状況と、正しく受信された音声パラメータによる急激な振幅の増大とが加わって、復号音声信号に急激な変化がもたらされるかもしれない。フレーム7の復号後、復号器中の“記憶”の影響は無視し得る(いくつかのタイプの復号器でそうであり、その他のタイプでは“記憶”はより長期的であるかもしれない)。従って、もしパケット8が時間通りに到着すればフレーム8は正しく復号されよう。
【0013】
図5は参照(2)に述べられる別の従来技術の遅延パケット隠蔽方法を示すタイミング図である。前と同じように、パケット1−3は時間通りに到着し、通常のように復号される。フレーム4に関する音声パラメータは、パケット4が遅延するため予測される。それらの予測された音声パラメータを用いてフレーム4の復号が始まる。しかし、パケット4が到着した時には、それは図4のようには無視されない。代わりに、音声パラメータP4は抽出されて復号のために直ちに使用される。その場合、まだ出力されていない予測された音声サンプルは、正しい音声パラメータP4と誤りを含む初期復号器状態SE4に基づく音声サンプルによって置き換えられる。しかし、これによって好ましくない急激な出力信号変化が発生する。パケット5もまた遅延すると仮定すると、音声パラメータP5Pは音声パラメータP4から予測される。それらの予測されたパラメータP5Pおよび誤りを含む初期復号器状態S5Eを用いてフレーム5が復号される。一旦パケット5が到着すれば、まだ出力されていない予測された音声サンプルは、後から到着した音声パラメータP5および誤りを含む初期復号器状態S5E(S5Eと名づけたこれらの2つの状態は同じものである必要はない。それらが誤りがあることを表しているだけである)に基づいて復号された音声サンプルで置き換えられよう。これによって、パケット6が時間通りに到着してフレーム6の復号に使用される場合に、別の急激な信号変化が発生する。パケット7−9は時間通りに到着するので、その後は再び通常の復号が行なわれる。
【0014】
図6は本発明に従う遅延パケット隠蔽方法を示すタイミング図である。最初の3つの正常なフレームは図4および5と同じように処理される。フレーム4は第1復号器中で図4と同じように予測される。しかし、このフレームが復号される前に、初期復号器状態S4がコピーされて、そのコピーが後で使用するために保存される。遅延パケット4が到着するや否や、それの音声パラメータP4が抽出され、第2復号器中で初期復号器状態を正しい状態S5に更新するために用いられる。そのような復号が生成するであろう実際の音声サンプルは無視される。この第2の復号の目的は単に初期復号器状態を更新するためだけのものである。パケット5もまた遅延し、それの音声パラメータも予測しなければならない。しかし、より最新の音声パラメータP4は知られていないため、それらのパラメータを使用してパラメータP5Pが予測されよう。更に、フレーム5について2つの復号、すなわち、1つは予測された音声パラメータP5Pおよび誤りの恐れのある初期復号器状態S5Eに基づくもの、もう1つは同じ音声パラメータおよび修正された初期復号器状態S5に基づくものが実行されよう。復号の後でこれら2つの音声サンプルのフレームを組み合わせて最終的な出力信号が得られる。
【0015】
図6の一番下に示すように、2つの復号された信号は重み付けされ、その後で重み付けされた信号が加算される。重み付けは次のように行われる。復号器1からの信号1には高い初期重みおよび低い最終重み(実線)を、また復号器2からの信号2には低い初期重みおよび高い最終重み(破線)が付けられる。例えば次の式に従って信号が組み合わされる:
【0016】
【数1】
Figure 0004651194
【0017】
ここで、nはフレーム中のサンプル番号、y1(n)は信号1の復号されたサンプルnを表し、y2(n)は信号2の復号されたサンプルnを表し、またk(n)は重み関数で、例えば次のように定義される。
【0018】
【数2】
Figure 0004651194
【0019】
ここでNはフレームのサイズを示す。重み付け因子k(n)はもちろん、別のやり方で計算してもよい。ここに与えた例は図6に示すように指数関数的に減少する曲線である。こうすれば、信号1から、より正確な信号2へ滑らかな遷移が起こる。
【0020】
図6に戻ると、パケット5は遅延するので、正しい初期復号器状態S5がコピーされて、後にパケット5が到着した時点で復号器2による更新のために保存される。更に、信号2はフレーム5の終わりに強調されるので(重み付けのために)、フレーム6の復号のために使用される復号器1の初期復号器状態S6Eは、フレーム5の復号後の復号器2から引き継がれる。パケット6もまた遅延するので、フレーム6の復号のためには、パケット5から予測された音声パラメータP6Pと、誤りを含む初期復号器状態S6Eおよび修正された初期復号器状態S6がそれぞれ用いられる。その後、2つの出力信号が重み付けされ、組み合わされる。パケット6も遅延するので、正しい初期復号器状態S6がコピーされ、後でパケット6が到着した時点で復号器2による更新のために保存される。前のフレームと同じように、フレーム7の復号のために使用される復号器1の初期復号器状態S7Eは、フレーム6の復号後の復号器2から引き継がれる。パケット7は時間通りに到着するので、復号のために予測は必要でなく、音声パラメータP7が使用されよう。その後、2つの出力信号が重み付けされ、組み合わされる。パケット8および9は時間通りであるので、復号器2は最早必要でなく、復号作業は通常のように復号器1で進行する。フレーム8では、復号器2からの初期復号器状態S8が正しいことが保証されるため、それが用いられる。
【0021】
図7は本発明に従う遅延パケット隠蔽方法を示す別のタイミング図である。この図は図6と類似しているが、別のケースを示しており、パケット4が1フレームよりも長く遅延している。この場合は先のケースとは異なり、フレーム4および5の両方で従来の隠蔽方法を使用しなければならず、またパケット4の到着が非常に遅いためフレーム5中で2度、初期復号器状態が更新される。その後は図6と同じ工程が実行される。
【0022】
図8は本発明に従う遅延パケット隠蔽装置のブロック図である。音声パラメータが2つの復号器30および32へそれぞれ転送される。これらの復号器からの出力信号が加算器34で組み合わされて、実際の音声サンプルが生成される。復号器30と32の間には、更新すべき初期復号器状態のコピーを記憶しておくための追加のメモリ・セグメント36が提供されている。
【0023】
図9は図8の遅延パケット隠蔽装置を実施するために適した復号器の好適な実施の形態である。この実施の形態は図1に関して説明した原理に従って復号器を実現する。すなわち、短期予測子および長期予測子の両方においてディジタル・フィルタで実現される。復号器2は遅延パケットが存在する場合にだけ使用されるので、ハードウエア的には、実際には2個の別々の復号器を用意する必要は無く、ほとんどの時間、それらの一方だけが使用される。従って本発明の1つの好適な実施の形態では、復号器は、復号器1および復号器2の両方を異なる時点で実現するマイクロ/信号プロセッサの組合せ40に基づいている。プロセッサ40は利得G、固定コードブック12、励起パラメータ20およびフィルタ係数22を含むメモリ・セグメントへつながっている。予測されるフィルタ係数22を記憶したり取り出したりするためにメモリ・セグメント42が設けられる。復号器1および復号器2に関する現在の復号器フィルタ状態がメモリ・セグメント44および46にそれぞれ記憶される。パケットが遅延する時には、メモリ・セグメント36は正しい初期フィルタ状態のコピーを記憶する。復号器1から復号される音声はバッファ48に記憶され、また復号器2から復号される音声はバッファ50に記憶される。各バッファからの音声サンプルは、加算器34で加算される前に、ブロック52および54でそれぞれ重み付けされる。プロセッサ40からの制御信号C1およびC2によって制御される2つのスイッチSW1およびSW2は、プロセッサ40が現時点でどの復号器を実現するかを決定する。もしスイッチが図に示す位置にあれば、復号器1が実現される。他方の位置にあれば復号器2が実現する。メモリ・セグメント46と44との間のラインは、図6でフレーム5および6の最初で示したように、復号器2から復号器1への初期フィルタ状態の転送を意味する。この動作は、メモリ・セグメント44からメモリ・セグメント36へのフィルタ状態の転送と、メモリ・セグメント46からメモリ・セグメント36へのフィルタ状態の転送およびその逆とともに、プロセッサ4によって制御されるが、図面を分かり易くするために対応する制御信号は省略してある。
【0024】
パケットが間違った順序で到着することがときに発生するかもしれない。そのような場合には復号器の種類に依存して、初期フィルタ状態を記憶するためにいくつかのメモリ・セグメント36が必要となる。初期フィルタ状態を記憶するために必要なメモリ・セグメント数は音声フレームのサイズのほかに復号器のメモリにも依存する。このメモリは、パラメータが出力に対して影響を及ぼす期間、もちろんそれは符号化の方法に依存するが、その期間に最終的に受信したパラメータとともに、復号器状態の履歴を記憶できるべきである。しかし、前方予測法を利用して短期間の振る舞いを予測する音声復号器と、20msのフレーム・サイズに対しては、200msの音声をカバーする約10セグメントのメモリが適当であろう。
【0025】
図10は本発明の遅延パケット隠蔽方法を示すフローチャートである。工程S1で、次に到着予定のパケットが遅延しているかどうかが判定される。もしそうでなければ、次のフレームは工程S2において復号器1で通常通りに復号され、その後ルーチンは工程S1へ戻る。もしパケットが遅延していれば、最後の正しいフィルタ状態が後での更新のために工程S3で保存される。パケットが遅延したので、復号器1は工程S4およびS5でそれぞれ音声パラメータを予測し、その遅延を補う音声フレームを生成することによって従来からの隠蔽を実行する。工程S6では到着予定のパケットが尚も遅延しているかどうかが判定される(図7のように)。もしそうであれば、工程S4−S6が繰り返される。もしそうでなければ、ルーチンは工程S7およびS8へ進んで、今や到着したパケットを用いて音声パラメータおよび保存されているフィルタ状態が更新される。工程S9は次のパケットもまた遅延しているかどうかを判定する。もしそのパケットが遅延していれば、復号器2のフィルタ状態のコピーが将来の更新に備えて工程S10で保存される。工程S11では、音声パラメータが前のフレームから予測され、工程S12およびS13でそれぞれ復号器1および2から出力信号を発生させるために使用される。工程S14では、それらの出力信号が組み合わされて(好ましくは重み付けの後で)、最終的な音声フレームとなる。工程S15では復号器2の最終フィルタ状態が復号器1へ転送される(図6のフレーム5と同じように)。その後、ルーチンは工程S7およびS8へ戻る。パケットが最終的に再び時間通りになれば、工程S9での判定によってルーチンはS16およびS17へ戻り、そこでは正しい音声パラメータに基づく出力信号がそれぞれ復号器1および2で生成される。工程S18で、それらの信号が組み合わされる(好ましくは重み付けの後で)。ここで、すべては正常に戻り、ルーチンは工程S1へ進む。
【0026】
本発明は音声信号および対応する音声パラメータに関連して説明してきた。しかし、実際にはこれらのパラメータは音声のみを代表する必要がないことを理解されよう。例えば音楽や背景音も同じように表されるわけであるから、もっと正確な表現は可聴パラメータであろう。更に同じ原理は、復号のためにディジタル・フィルタを必要とするその他のパッケージ信号、例えばビデオ信号にも適用されよう。このように音声や可聴パラメータよりも一般的な用語はフレーム・パラメータであり、特許請求の範囲ではこれを使用する。以上のように、本発明の隠蔽方法は、予測可能な実時間データがパッケージ・モードで転送される環境、およびパケットが予測できない遅延を起こす環境に適用可能であることを理解されよう。
【0027】
当業者は特許請求の範囲によって定義される本発明の精神およびスコープから外れることなしに、本発明に対して各種の修正および変更が可能であることを理解されるであろう。
【0028】
(参照)
(1) K.Cluver(クルベール),“ロスト・セルの再構築を改善するATM音声コーデック(An ATM Speech Codec with Improved Reconstruction of Lost Cells)”,Proceedings Eusipco,1996年
(2) 米国特許第5,615,214号(モトローラ社)
【図面の簡単な説明】
【図1】 典型的な音声復号器のブロック図。
【図2】 FIRフィルタのブロック図。
【図3】 別の典型的な音声復号器のブロック図。
【図4】 従来技術の遅延パケット隠蔽方法を示すタイミング図。
【図5】 別の従来技術の遅延パケット隠蔽方法を示すタイミング図。
【図6】 本発明に従う、遅延パケット隠蔽方法を示すタイミング図。
【図7】 本発明に従う、遅延パケット隠蔽方法を示す別のタイミング図。
【図8】 本発明に従う、遅延パケット隠蔽装置のブロック図。
【図9】 図8の遅延パケット隠蔽装置を実施するのに適した復号器の好適な実施の形態。
【図10】 本発明の遅延パケット隠蔽方法を示すフローチャート。

Claims (15)

  1. 遅延パケットの隠蔽を改善するために遅延フレーム・パラメータを使用する、パケット通信網での遅延パケット隠蔽方法であって、パケットが遅延した時に、
    最後の遅延しないパケットを復号した後に存在する初期復号器状態のコピーを保存する工程と、
    予測されたフレーム・パラメータおよび前記初期復号器状態を使用して復号およびパケット遅延の隠蔽を行ない、それによって誤りを含む初期復号器状態を生成する工程と、
    前記遅延パケットから更新されたフレーム・パラメータおよび前記保存されている初期復号器状態を使用して復号を行い、それによって修正された初期復号器状態を生成する工程と、
    1組のフレーム・パラメータおよび前記誤りを含む初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって第1の出力信号と更に別の誤りを含む初期復号器状態を生成する工程と、
    前記フレーム・パラメータ組および前記修正された初期復号器状態を用いて復号を行ない、それによって第2の出力信号を生成する工程と、
    前記第1および第2の出力信号を組み合わせる工程と
    を実行することを特徴とする方法。
  2. 請求項1記載の方法であって、前記フレーム・パラメータ組が遅延しないパケットから得られることを特徴とする方法。
  3. 請求項1記載の方法であって、更に別のパケットが遅延する場合に、前記フレーム・パラメータ組が前のパケットから予測されることを特徴とする方法。
  4. 請求項3記載の方法であって、
    前記修正された初期復号器状態のコピーを保存する工程と、
    前記更に別の遅延パケットから更新されたフレーム・パラメータおよび前記保存されている修正された初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって更に別の修正された初期復号器状態を生成する工程と、
    フレーム・パラメータの更に別の1組および前記更に別の誤りを含む初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって第3の出力信号を生成する工程と、
    フレーム・パラメータの前記更に別の1組および前記更に別の修正された初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって第4の出力信号を生成する工程と、
    前記第3および第4の出力信号を組み合わせる工程と
    を含むことを特徴とする方法。
  5. 請求項4記載の方法であって、フレーム・パラメータの前記更に別の1組が遅延しないパケットから得られることを特徴とする方法。
  6. 請求項4記載の方法であって、更に別のパケットが遅延する場合に、フレーム・パラメータの前記更に別の1組が前のパケットから予測されることを特徴とする方法。
  7. 遅延パケットの隠蔽を改善するために遅延フレームのパラメータを使用する、パケット通信網での復号方法であって、
    パケット遅延の場合に、正しい初期復号器状態のコピーを保存する工程と、
    少なくとも1つの遅延したパケットの隠蔽から得られる誤りを含む初期復号器状態および1組のフレーム・パラメータを使用して第1の復号された出力信号を生成する工程と、
    前記保存されている初期復号器状態を更新するために、前記保存されている初期復号器状態を使用して遅延パケットを復号する工程と、
    前記更新された初期復号器状態および前記フレーム・パラメータ組に基づいて第2の復号された出力信号を生成する工程と、
    前記第1および第2の復号された出力信号を組み合わせる工程と
    を含むことを特徴とする方法。
  8. 遅延パケットの隠蔽を改善するために遅延フレームのパラメータを使用する、パケット通信網での遅延パケット隠蔽装置であって、
    最後の遅延しないパケットを復号した後に存在する初期復号器状態のコピーを保存するための手段(36)と、
    予測されたフレーム・パラメータおよび前記初期復号器状態を使用して復号およびパケット遅延の隠蔽を行ない、それによって誤りを含む初期復号器状態を生成するための手段(30)と、
    前記遅延パケットから更新されたフレーム・パラメータおよび前記保存されている初期復号器状態を使用して復号を行い、それによって修正された初期復号器状態を生成するための手段(32)と、
    1組のフレーム・パラメータおよび前記誤りを含む初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって第1の出力信号および更に別の誤りを含む初期復号器状態を生成するための手段(30)と、
    前記フレーム・パラメータ組および前記修正された初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって第2の出力信号を生成するための手段(32)と、
    前記第1および第2の出力信号を組み合わせるための手段(34)と
    を含むことを特徴とする装置。
  9. 請求項8記載の装置であって、遅延しないパケットから前記フレーム・パラメータ組を抽出するための手段(40)を含むことを特徴とする装置。
  10. 請求項8記載の装置であって、更に別のパケットが遅延する場合に、前のパケットから前記フレーム・パラメータ組を予測するための手段(40)を含むことを特徴とする装置。
  11. 請求項9記載の装置であって、
    前記修正された初期復号器状態のコピーを保存するための手段(36)と、
    前記更に別の遅延パケットから更新されたフレーム・パラメータおよび前記保存されている修正された初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって更に別の修正された初期復号器状態を生成するための手段(32)と、
    更に別のフレーム・パラメータ組および前記更に別の誤りを含む初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって第3の出力信号を生成するための手段(30)と、
    前記更に別のフレーム・パラメータ組および前記更に別の修正された初期復号器状態を使用して復号を行ない、それによって第4の出力信号を生成するための手段(32)と、
    前記第3および第4の出力信号を組み合わせるための手段(34)と
    を含むことを特徴とする装置。
  12. 請求項11記載の装置であって、遅延しないパケットから前記更に別のフレーム・パラメータ組を抽出するための手段(40)を含むことを特徴とする装置。
  13. 請求項11記載の装置であって、更に別のパケットが遅延する場合に、前のパケットから前記更に別のフレーム・パラメータ組を予測するための手段(40)を含むことを特徴とする装置。
  14. 遅延パケットの隠蔽を改善するために遅延フレーム・パラメータを使用する、パケット通信網中での復号器であって、
    パケット遅延の場合に、正しい初期復号器状態のコピーを保存するためのメモリ(36)と、
    少なくとも1つの遅延パケットの隠蔽から得られる誤りを含む初期復号器状態および1組のフレーム・パラメータを使用して第1の復号された出力信号を生成するための第1の復号器部(30)と、
    前記保存されている初期復号器状態を更新するために保存されている前記初期復号器状態を使用して遅延パケットを復号し、また、前記更新された初期復号器状態および前記フレーム・パラメータ組に基づいて第2の復号された出力信号を生成するために使用される第2の復号器部(32)と、
    前記復号された第1および第2の出力信号を組み合わせるための手段(34)と
    を含むことを特徴とする復号器。
  15. 請求項14記載の復号器であって、前記複数の復号器部が、第1の時間間隔に前記第1の復号器部(30)を、また第2の時間間隔に前記第2の復号器部を実現するマイクロ/信号プロセッサ組合せ(40)を使用して実現されることを特徴とする復号器。
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