JP4650806B2 - スプレーヤ - Google Patents

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本発明はスプレーヤに関するものであり、特に、風胴の端部に形成された吐風口の開口面積を必要に応じて変更せしめるための制風板を有するスプレーヤに関するものである。
果樹園等において薬液等を広範囲にわたって効率的に散布するためのスプレーヤとして、走行機体に搭載された軸流送風機の風胴前端部の円弧状吐風口に沿って多数の噴霧ノズルを備えたスピードスプレーヤが知られている。該スピードスプレーヤによれば、前記噴霧ノズルから噴霧された噴霧粒子が、前記吐風口から前記機体の上方及び左右側方へと放射状に吐出せしめられる気流によって、広角に且つ遠方まで拡散散布せしめられる。
ところで、野菜や果物等の食用作物栽培の分野では、隣接して栽培されている作物群同士の間で、その一方の作物群へのみ特定種類の薬液を散布し、他方の作物群への前記特定種類の薬液の飛散を避けなければならない場合がある。例えば、前記一方の作物群には使用が許可されているが、前記他方の作物群には使用が禁止されている農薬を散布する場合や、前記一方の作物群は農薬使用を前提とした作物であるが、前記他方の作物群は、無農薬栽培の作物である場合等である。また、農地に隣接して住宅がある場合にも、住宅方向への薬液飛散を避けなければならない。
また、低木性果樹の防除の場合には、前記機体の上方への噴霧は、防除上あまり効果的でないばかりか、前記吐風口から上方へ向けて吐出される気流によって、すでに散布されて樹葉に付着している防除液が吹き飛ばされる等の問題もある。
そこで、前記スピードスプレーヤにおいて、前記吐風口の周方向の一部の角度範囲を開閉する風防カバーを、上方及び左右の各群ごとに散布を制御し得る複数の噴霧ノズル群のそれぞれに対応させて配設し、前記各風防カバーを、前記風胴の外表面に前後方向に延びるようにそれぞれ取着されたスライドレールに沿って前後にスライドさせることにより、前記吐風口の一部を閉じて、特定方向への噴霧及び送風を停止可能とせしめたものが提案されている(特許文献1参照)。
実開昭63−51673号公報
しかしながら、前記従来のものにおいては、前記スライドレール及び前記風防カバーが、常に前記機体の外部に突出している。このため、果樹園の樹木の枝下を縫うように前記機体を走行させる場合に、前記スライドレール及び前記風防カバーが樹木の枝や葉に引っ掛かり易く、樹木や果樹を傷つけ易い等の問題があった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、制風板が風胴の外部での邪魔にならず、良好な制風効果を奏し得るスプレーヤを提供しようとするものである。
前記課題を解決するため、本発明に係るスプレーヤは、風胴の端部に形成された吐風口に沿って噴霧ノズルを備え、前記風胴内に配設された動翼の回転により前記吐風口から気流を噴出せしめて前記噴霧ノズルからの噴霧粒子を拡散せしめるスプレーヤであって、前記風胴の軸線方向に沿って移動することにより前記吐風口の開口面積を可変とする制風板が、前記風胴の内周面を形成する内壁と、前記風胴の外周面を形成する外壁と、の間の空間部内に引き込み自在に配設されたことを特徴としている(請求項)。
本発明によれば、前記制風板が、前記風胴の軸線方向に沿って移動することにより、前記吐風口が開閉せしめられ、開口面積が変更される。そして、前記制風板は、前記空間部内に引き込み自在とされているので、前記風胴の外部で邪魔になることがなく、さらに、前記風胴の内部でも邪魔になることがない。
好適な実施の一形態として、前記制風板が、前記内壁の外表面に接触した状態で前記風胴の軸線方向に沿って摺動自在とされたものとすることもできる(請求項)。この場合、前記内壁の前記外表面が、前記制風板を案内することになり、該制風板の収納スペースが可及的に小さくできて、なお一層好適である。
他の実施の一形態として、前記制風板を駆動する駆動機構を備え、該駆動機構が前記空間部内に配設されたものとすることもできる(請求項)。このようにすれば、前記吐風口の開閉が動力的に行われ、且つ、前記駆動機構も前記風胴の外部及び内部で邪魔になることがなく、さらに好適である。
好適な実施の一形態として、前記制風板が、前記吐風口への突出状態において、前記噴霧ノズルより内側に位置しているものとすることもできる(請求項)。このようにすれば、前記制風板が前記吐風口へ突出した状態で前記噴霧ノズルからの噴霧を開始した場合でも、前記制風板が噴霧を直接受けてしまうようなことがない。また、前記制風板の前記吐風口への突出量を調整することで、前記吐風口の開口面積、すなわち、吐風量を調整し、前記噴霧ノズルからの噴霧粒子の拡散距離を制御して散布パターンを変更することも可能となり、好適である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。以下の実施の形態は、果樹園等で防除液等の大規模散布を効率的に行うのに適した、走行式の噴霧装置(スプレーヤ)であるスピードスプレーヤについて、本発明を適用したものである。
図1は、本発明の実施の一形態に係るスピードスプレーヤを左斜め後方から見た斜視図、図2は、左側面要部の拡大縦断面図である。
図1において、スピードスプレーヤ1の機体2は、左右一対の操向前輪3,3と、左右一対の駆動後輪4,4と、で走行自在に支持されている。前記スピードスプレーヤ1には、その前部から後部へ向けて、ステアリングハンドル5や図示しない各種の操作レバー及び運転席6等を含む操縦部7と、薬液等の散布液を収容する大容量の液体タンク8と、走行駆動源としての内燃エンジン9等を含む駆動部10と、送風噴霧部11と、が、順に前記機体2に対して固定的に装備されている。
該送風噴霧部11は、前記駆動部10の後面との間に前記機体2の進行方向Fに向かって見て円弧状に形成された吐風口12と、該吐風口12に沿って前記スピードスプレーヤ1の上方及び左右側方へ向けて多数配設された噴霧ノズル13と、該噴霧ノズル13から噴霧された噴霧粒子を前記吐風口12から上方及び左右側方へ向けて放射状に拡散せしめるための気流を創出する手段としての軸流送風機14と、を備えている。
図2に示すように、前記軸流送風機14は、前記機体2の前後方向F−Bに沿って延びる軸線Xを有する風胴15と、該風胴15内に回転自在に支持された動翼(羽根車)16と、前記風胴15内において前記動翼16の送風風下側となる前方に固定された整流用の固定翼17と、を備えている。該固定翼17と前記吐風口12との間には、該吐風口12へ向けて気流を前記軸線Xに直角な方向へと円滑に案内するベルマウス状のエアガイド18,19が所定数配設されている。前記動翼16の回転軸20は、前記機体2の前方Fへ向かって延び出し、前記固定翼17のハブ21の中央開口部を貫通して、例えば、前記内燃エンジン9に駆動上連結されている。前記風胴15の後部に大きく開口した吸気口22は、安全用の吸気口グリッド23で覆われ、該吸気口グリッド23の内面(前面)中央部には、その開口部24を前記動翼16のハブ25側へ向けてた椀状の固定式スピンナー26が固着されている。該固定式スピンナー26の外径は、前記動翼16の前記ハブ25の外径と、ほぼ同一とされている。
前記軸流送風機14において、前記内燃エンジン9によって前記動翼16が回転駆動されると、前記吸気口22から前記風胴15内に空気が吸い込まれる。この空気は、前記固定翼17で整流され、且つ、前記エアガイド18,19に案内されながら、前記風胴15の端部(前端部)15fに形成された前記吐風口12から高速気流となって、前記スピードスプレーヤ1の上方及び左右側方へと放射状に吐出される。このため、前記各噴霧ノズル13から上方および前記スピードスプレーヤ1の左右側方へ向けて噴霧された噴霧粒子が、樹木の葉等へ向けて、より広範囲に、且つより遠くへと拡散せしめられる。
図1に示すように、前記送風噴霧部11には、本発明の実施の一形態に係る制風装置27が配設されている。該制風装置27は、予め定められた一定の開口面積を有する前記吐風口12の一部を制風板28によって必要に応じて閉塞する等して開口面積を減少せしめ、噴霧粒子が遠くまで飛散して欲しくない方向への気流の噴出を抑制せしめるためのものである。
本実施の形態では、前記噴霧ノズル13を多数有するノズル管が、前記吐風口12の上部に沿って左右方向に延びる上部ノズル管29と、前記吐風口12の左部に沿って上下方向に延びる左側ノズル管30と、前記吐風口12の右部に沿って上下方向に延びる右側ノズル管31と、に三分割され、それぞれが前記噴霧ノズル13を複数有する各分割ノズル管29,30,31ごとに、前記操縦部7より、散布液の供給が制御可能とされている。
前記制風板28は、前記各分割ノズル管29,30,31に対応して、前記吐風口12の上部と、左部と、右部とに、それぞれ配設されており、それぞれが独立して前記風胴15の前後軸線方向F−Bに沿って移動することにより、円弧状の前記吐風口12の周方向における所定の角度範囲を開閉する。前記各制風板28は、前記吐風口12の扇形湾曲形状に対応して、適宜湾曲せしめられている。前記各制風板28としては、薄い鋼板や、耐薬品性及び耐摩耗性に優れたプラスチック板等を採用することができる。
前記各制風板28の配設構造及び駆動方法は、前記吐風口12の上部、左部及び右部において、互いに同一である。そこで、以下、図2を参照して、前記吐風口12の上部の制風板28について、詳細に説明する。
前記制風板28は、前記吐風口12を閉じる(開口面積を減じる)使用時状態でも、前記吐風口12を全開放する収納時状態でも、常に前記風胴15の外周面32より内側に位置するように、前記風胴15の内周面33を形成する内壁34と、前記風胴15の前記外周面32を形成する外壁35と、の間の空間部S内に配設されている。前記制風板28は、前記収納時状態においては、前記風胴15の前記空間部S内にその全体が収納されて前記風胴15の外部からは全く見えなくなり、前記使用時状態においてのみ、前記風胴15の前記外周面32より内側位置で、前記吐風口12を閉じる方向に延在する。よって、前記スピードスプレーヤ1が、丈の低い樹木の中を縫うように走行する場合でも、前記制風板28によって枝葉が損傷してしまう等の問題がない。また、前記制風板28は、前記風胴15の内部においても、送風の邪魔になるようなこともない。
本実施の形態では、前記制風板28が、前記風胴15の前記内壁34の外表面36に接触した状態で、前記風胴15の前後軸線方向F−Bに沿って摺動自在とされている。したがって、前記制風板28の前後移動が前記外表面36をガイドとして円滑且つ確実に行われるほか、前記制風板28の収納スペースが可及的に小さくできる。前記風胴28の前記内壁34の前記外表面36には、例えば、前記制風板28の摺動方向F−Bの左右両縁を摺動自在且つ離脱不能に保持する左右一対のガイドレール37,37等を配設しておくこともできる。
前記制風板28は、前記吐風口12への突出状態において、前記噴霧ノズル13より前記機体2の内側寄りに位置する。よって、前記制風板28を前記吐風口12内へと突出させた状態で、誤って、前記噴霧ノズル13からの噴霧を開始させてしまった場合でも、前記制風板28が前記噴霧ノズル13からの高圧噴射を直接受けてしまうことによる、内部風路の汚損等の心配がない。
前記各制風板28は、手動開閉式とすることもできるが、本実施の形態では、動力駆動式とされている。すなわち、前記各制風板28を駆動するアクチュエータとして、電動式の直線動アクチュエータ38を採用し、該各直線動アクチュエータ38を、前記操縦部7に配設された操作盤39(図1参照)上の操作スイッチ等の適宜の操作手段によって、遠隔操作できるようになっている。
前記制風板28の駆動機構を構成する前記直線動アクチュエータ38も、常に前記風胴15の前記外周面32より内側に位置するように、前記空間部S内に配設されている。具体的には、前記直線動アクチュエータ38は、前記空間部S内に、前記機体2の前後方向F−Bに延びるようにして配設されている。前記直線動アクチュエータ38の出入ロッド40の先端部(前端部)40aは、前記制風板28の左右幅方向の中央部の前端部にピン41で連結され、前記直線動アクチュエータ38のシリンダ部42の基端部(後端部)42aは、前記風胴15の前記内壁34の前記外表面36にピン43で連結されている。
図2において、符号44は、前記風胴15の前記外周面32の一部にその周方向に沿って延びるように形成された、散布液補給用ホースHの巻き掛け溝である。
前記構成において、例えば、前記機体2の上方への防除液の噴霧が樹木の丈との関係で効果を奏しにくい低木性果樹の防除を行う場合等、前記機体2の上方へは噴霧を及ぼしたくないような事情がある場合には、運転者は、給液経路制御操作によって、前記上部ノズル管29への散布液の供給のみを停止せしめる。併せて、運転者は、前記操作盤39の前記操作スイッチを操作し、前記直線動アクチュエータ38を伸長方向へと駆動せしめて、前記吐風口12の上部を前記制風板28で左右側方への散布に悪影響を与えない適度の範囲を覆う様に、位置を保持せしめる。これにより、前記吐風口12の上部からの気流の噴出が抑制せしめられる。このため、前記機体2の上方への不要な送風により、すでに散布されて樹葉に付着している防除液が吹き飛ばされる等の問題がない。
同様に、例えば、噴霧作業現場に隣接して民家がある場合等、前記機体2の左方又は右方へは噴霧を及ぼしたくないような事情がある場合には、運転者は、給液経路制御操作によって、前記左側ノズル管30又は前記右側ノズル管31への散布液の供給のみを停止せしめる。併せて、運転者は、左側制風板28を駆動する直線動アクチュエータ38の操作スイッチ又は右側制風板28を駆動する直線動アクチュエータ38の操作スイッチを操作し、前記吐風口12の左部又は右部を前記制風板28で覆う。これにより、前記吐風口12の左部又は右部からの気流の噴出が抑制せしめられる。このため、前記上部ノズル管29の前記噴霧ノズル13からの噴霧が、前記機体2の左方又は右方への不要な送風により、噴霧を及ぼしたくない前記機体2の左方又は右方へと飛散せしめられることが防止される。
なお、前記制風装置27によれば、前記運転席6で前記操作盤39を操作することで、前記機体2の前後方向F−Bにおける前記吐風口12の実効開口幅(面積)の調整が可能であり、したがって、前記制風板28により、前記吐風口12からの吐風量を調整することもできる。よって、前記制風板28の外側に位置する前記噴霧ノズル13からの噴霧を継続した状態で、該噴霧ノズル13に対応する位置にある前記制風板28の前記吐風口12への突出量を調整することで、噴霧粒子の飛散距離を自在に制御することが可能となる。
本実施の形態では、前記制風板28を、前記吐風口12の上部、左部及び右部に合計三枚配設しているが、これには限定されず、その配設数及び前記吐風口12における配設角度位置は、適宜に変更することができる。
また、前記制風板28の前端部に、前記吐風口12や前記エアガイド18のベルマウス形状に合わせたカバー(図示せず)を配設せしめれば、送風性状を乱すことがなく、また、前記吐風口12を全開(前記制風板28を前記空間部S内に完全に引き込んだ)時には、前記空間部Sを効果的にシールでき、一層好適である。
本発明の実施の一形態に係る制風装置を備えたスピードスプレーヤを左斜め後方から見た斜視図である。 左側面要部の拡大縦断面図である。
符号の説明
1 スプレーヤ(スピードスプレーヤ)
12 吐風口
13 噴霧ノズル
15 風胴
15f 風胴の端部(前端部)
16 動翼
28 制風板
32 風胴の外周面
33 風胴の内周面
34 風胴の内壁
35 風胴の外壁
36 内壁の外表面
38 駆動機構(直線動アクチュエータ)
F−B 風胴の(前後)軸線方向
S 風胴の内外壁間の空間部

Claims (4)

  1. 風胴(15)の端部(15f)に形成された吐風口(12)に沿って噴霧ノズル(13)を備え、前記風胴(15)内に配設された動翼(16)の回転により前記吐風口(12)から気流を噴出せしめて前記噴霧ノズル(13)からの噴霧粒子を拡散せしめるスプレーヤ(1)であって、前記風胴(15)の軸線方向(F−B)に沿って移動することにより前記吐風口(12)の開口面積を可変とする制風板(28)が、前記風胴(15)の内周面(33)を形成する内壁(34)と、前記風胴(15)の外周面(32)を形成する外壁(35)と、の間の空間部(S)内に引き込み自在に配設されている、スプレーヤ。
  2. 前記制風板(28)が、前記内壁(34)の外表面(36)に接触した状態で前記風胴(15)の軸線方向(F−B)に沿って摺動自在とされている、請求項1に記載のスプレーヤ。
  3. 前記制風板(28)を駆動する駆動機構(38)を備え、該駆動機構(38)が前記空間部(S)内に配設されている、請求項1又は2に記載のスプレーヤ。
  4. 前記制風板(28)が、前記吐風口(12)への突出状態において、前記噴霧ノズル(13)より内側に位置している、請求項1,2又は3に記載のスプレーヤ。
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