PDP(プラズマディスプレイパネル)を用いたプラズマディスプレイ装置は、薄型化および大画面化が可能であるという利点を有する。このプラズマディスプレイ装置では、ガス放電の際の発光を利用することにより画像を表示している。
(A)AC型PDPの放電セル
図9は、AC型PDPにおける放電セルの駆動方法を説明するための図である。図9に示すように、AC型PDPの放電セルにおいては、対向する電極301,302の表面がそれぞれ誘電体層303,304で覆われている。
図9(a)に示すように、電極301,302間に放電開始電圧よりも低い電圧を印加した場合には、放電が起こらない。
図9(b)に示すように、電極301,302間に放電開始電圧よりも高いパルス状の電圧(書き込みパルス)を印加すると、放電が発生する。放電が発生すると、負電荷は電極301の方向に進んで誘電体層303の壁面に蓄積され、正電荷は電極302の方向に進んで誘電体層304の壁面に蓄積される。誘電体層303,304の壁面に蓄積された電荷を壁電荷と呼ぶ。また、この壁電荷により誘起された電圧を壁電圧と呼ぶ。
図9(c)に示すように、誘電体層303の壁面には負の壁電荷が蓄積され、誘電体層304の壁面には正の壁電荷が蓄積される。この場合、壁電圧の極性は、外部印加電圧の極性と逆向きであるため、放電の進行に従って放電空間内における実効電圧が低下し、放電は自動的に停止する。
図9(d)に示すように、外部印加電圧の極性を反転させると、壁電圧の極性が外部印加電圧の極性と同じ向きになるため、放電空間内における実効電圧が高くなる。実効電圧が放電開始電圧を超えると、逆極性の放電が発生する。それにより、正電荷が電極301の方向に進み、すでに誘電体層303に蓄積されている負の壁電荷を中和し、負電荷が電極302の方向に進み、すでに誘電体層304に蓄積されている正の壁電荷を中和する。
そして、図9(e)に示すように、誘電体層303,304の壁面にそれぞれ正および負の壁電荷が蓄積される。この場合、壁電圧の極性が外部印加電圧の極性と逆向きであるため、放電の進行に従って放電空間内における実効電圧が低下し、放電が停止する。
さらに、図9(f)に示すように、外部印加電圧の極性を反転させると、逆極性の放電が発生し、負電荷は電極301の方向に進み、正電荷は電極302の方向に進み、図9(c)の状態に戻る。
図9(g)に示すように、電極301,302間に壁電圧と逆極性の消去波形を印加することにより誘電体層303,304の壁面に蓄積された壁電荷を消滅させて放電を終了させることができる。この消去波形のパルス幅は、残留壁電荷を打ち消すことができかつ新たに逆極性の壁電荷を蓄積することができないように狭く設定される。一旦壁電荷が消滅すると、図9(h)に示すように、次の維持パルスを印加しても放電は発生しない。
このように、放電開始電圧よりも高い書き込みパルスを印加することにより一旦放電が開始された後は、壁電荷の働きにより放電開始電圧よりも低い外部印加電圧(維持パルス)の極性を反転させることにより放電を持続させることができる。書き込みパルスを印加することにより放電を開始させることをアドレス放電と呼び、アドレス放電を行う期間をアドレス期間と呼び、交互に反転する維持パルスを印加することにより放電を持続させることを維持放電と呼び、維持放電を行う期間を維持期間と呼び、消去波形を印加する期間を消去期間と呼ぶ。
(B)PDPの構成
図10は、従来のプラズマディスプレイ装置の主としてPDP(プラズマディスプレイパネル)の構成を示す模式図である。
図10に示すように、PDP7は、複数のアドレス電極11、複数のスキャン電極(走査電極)12および複数のサステイン電極(維持電極)13を含む。複数のアドレス電極11は画面の垂直方向に配列され、複数のスキャン電極12および複数のサステイン電極13は画面の水平方向に配列されている。複数のサステイン電極13は共通に接続されている。
アドレス電極11、スキャン電極12およびサステイン電極13の各交点に放電セルが形成されている。各放電セルが画面上の画素を構成する。
データドライバ4は、画像データに応じて複数のアドレス電極11を駆動する。スキャンドライバ5は、複数のスキャン電極12を順に駆動する。サステインドライバ6は、複数のサステイン電極13を共通に駆動する。
(C)3電極面放電セル
図11は、AC型PDPにおける3電極面放電セルの模式的断面図である。
図11に示す放電セル200においては、表面ガラス基板201上に対になるスキャン電極12およびサステイン電極13が画面の水平方向に形成され、それらのスキャン電極12およびサステイン電極13は、透明誘電体層202および保護層203で覆われている。一方、表面ガラス基板201に対向する裏面ガラス基板204上にはアドレス電極11が画面の垂直方向に形成され、アドレス電極11上には透明誘電体層205が形成されている。透明誘電体層205上には蛍光体206が塗布されている。
この放電セル200では、アドレス電極11とスキャン電極12との間に書き込みパルスを印加することによりアドレス電極11とスキャン電極12との間でアドレス放電が発生した後、スキャン電極12とサステイン電極13との間に交互に反転する周期的な維持パルスを印加することによりスキャン電極12とサステイン電極13との間で維持放電が行われる。
(D)階調表示駆動方式
AC型PDPにおける階調表示駆動方式としては、アドレス放電を行うアドレス期間と維持放電を行う維持期間とを分離して放電セルを放電させるADS(Address and Display−period Separated;アドレス・表示期間分離)方式が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
図12は、ADS方式を説明するための図である。図12の縦軸は第1ラインから第mラインまでのスキャン電極の走査方向(垂直走査方向)を示し、横軸は時間を示す。
ADS方式では、1フィールド(1/60秒=16.67ms)を複数のサブフィールドに時間的に分割する。例えば、8ビットで256階調表示を行う場合には、1フィールドを8つのサブフィールドに分割する。また、各サブフィールドは、点灯セル選択のためのアドレス放電が行われるアドレス期間と、表示のための維持放電が行われる維持期間(発光期間)とに分割される。
図12の例では、1フィールドが4つのサブフィールドSF1,SF2,SF3およびSF4に時間的に分割されている。サブフィールドSF1はアドレス期間AD1と維持期間SUS1とに分離され、サブフィールドSF2はアドレス期間AD2と維持期間SUS2とに分離され、サブフィールドSF3はアドレス期間AD3と維持期間SUS3とに分離され、サブフィールドSF4はアドレス期間AD4と維持期間SUS4とに分離されている。
ADS方式では、各サブフィールドで第1ラインから第mラインまでPDPの全面にアドレス放電による走査が行われ、PDPの全面のアドレス放電の終了時に維持放電が行われる。
このADS方式では、PDPの放電セルを点灯させる維持期間を選択することにより階調表示を行うことができる。
(E)各電極の駆動電圧
図13は、プラズマディスプレイ装置の各電極に印加される駆動電圧の一例を示すタイミングチャートである。
図13のタイミングチャートは、PDP7の垂直方向に配列された1本のアドレス電極11の駆動電圧、そのアドレス電極11と交差する1本のスキャン電極12の駆動電圧および1本のサステイン電極13の駆動電圧を示している。
各フィールドは、複数のサブフィールドに分割される。例えば、1フィールドが第1〜第8のサブフィールドに分割されている。図13の例では、1フィールドの第1および第2のサブフィールドが示されている。
各サブフィールドは、スキャン電極12に初期化波形を印加して全ての放電セルの壁電荷を均一に調整するための初期化動作(セットアップ動作)を行う初期化期間、アドレス電極11およびスキャン電極12に書き込みパルスを印加してアドレス放電を行うアドレス期間、スキャン電極12およびサステイン電極13に交互に維持パルスを印加して維持放電を行う維持期間、ならびにスキャン電極12とサステイン電極13とに消去波形を印加して放電を停止させる消去期間により構成される。
図13に示すように、最初に、第1のサブフィールドの初期化期間において、データドライバ4によりアドレス電極11が0Vに保持され、スキャンドライバ5によりスキャン電極12に初期化波形Setupが印加される。この場合、サステインドライバ6によりサステイン電極13が0Vに保持される。
スキャン電極12の電圧が放電開始電圧を超えるレベルまで上昇すると、スキャン電極12とアドレス電極11との間およびスキャン電極12とサステイン電極13との間でそれぞれ1回目の微弱な初期化放電が起こり、スキャン電極12に負の壁電荷が蓄積されるとともに、アドレス電極11およびサステイン電極13に正の壁電荷が蓄積される。
次に、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧がVmまで降下される。さらに、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧が徐々に降下され、サステインドライバ6によりサステイン電極13の電圧がVeまで上昇される。
上記により、再びサステイン電極13とスキャン電極12との間で2回目の微弱な初期化放電が起こり、スキャン電極12の負の壁電荷およびサステイン電極13の正の壁電荷が減少する。
この場合、スキャン電極12とアドレス電極11との間にも同時に放電が起こり、スキャン電極12の負の壁電荷およびアドレス電極11の正の壁電荷が減少する。
その結果、初期化期間後の放電セルにおいては、アドレス電極11に所定量の正の壁電荷が蓄積され、スキャン電極12に所定量の負の壁電荷が蓄積され、サステイン電極13に所定量の正の壁電荷が蓄積される。以上により、全ての放電セルの壁電荷の量が均一に調整され、初期化期間が終了する。
次に、第1のサブフィールドのアドレス期間において、映像信号に応じて正極性の書き込みパルスPwがデータドライバ4により点灯させるべき放電セルに対応するアドレス電極11に印加される。なお、点灯させない放電セルに対応するアドレス電極11には書き込みパルスPwは印加されない。
書き込みパルスPwに同期してスキャンドライバ5によりスキャン電極12に負極性の書き込みパルスPsが印加される。
この場合、点灯させるべき放電セルに対応するアドレス電極11とスキャン電極12との間の実効電圧は、書き込みパルスPwと書き込みパルスPsとの間の電位差に、初期化期間にスキャン電極12およびアドレス電極11の各々に蓄積された壁電荷による壁電圧を加算した値となる。それにより、アドレス電極11とスキャン電極12との間の実効電圧が放電開始電圧を超えるため、アドレス電極11とスキャン電極12との間でアドレス放電が発生し、スキャン電極12とサステイン電極13との間で放電が発生する。その結果、スキャン電極12に正の壁電荷が蓄積され、アドレス電極11に負の壁電荷が蓄積される。また、サステイン電極13に負の壁電荷が蓄積される。
一方、アドレス期間でアドレス電極11に書き込みパルスPwが印加されない場合には、アドレス電極11とスキャン電極12との間の実効電圧が放電開始電圧を超えないため、アドレス電極11とスキャン電極12との交点の放電セルではアドレス放電が発生しない。
続く第1のサブフィールドの維持期間においては、スキャン電極12に一定周期で維持パルスPiが印加され、サステイン電極13に一定周期で維持パルスPjが印加される。スキャン電極12に印加される維持パルスPiの位相は、サステイン電極13に印加される維持パルスPjの位相に対して180度ずれている。例えば、スキャンドライバ5により電圧Vmの維持パルスPiがスキャン電極12に印加されたときに、サステインドライバ6によりサステイン電極13の電圧は接地電位0Vにされる。サステインドライバ6により電圧Vmの維持パルスPjがサステイン電極13に印加されたときに、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧は接地電位0Vにされる。
この場合、点灯させるべき放電セルに対応するスキャン電極12とサステイン電極13との間の実効電圧は、維持パルスPiと維持パルスPjとの間の電位差に、アドレス期間にスキャン電極12およびサステイン電極13の各々に蓄積された壁電荷による壁電圧を加算した値となる。
まず、スキャン電極12に維持パルスPiが印加され、サステイン電極13が接地電位0Vにされる。それにより、スキャン電極12とサステイン電極13との間の実効電圧が放電開始電圧を超えるため、維持パルスPiの立ち上がりでスキャン電極12とサステイン電極13との間で維持放電が発生する。その結果、スキャン電極12に負の壁電荷が蓄積され、サステイン電極13に正の壁電荷が蓄積される。
次に、スキャン電極12が0Vにされ、サステイン電極13に維持パルスPjが印加される。それにより、維持パルスPjの立ち上がりでスキャン電極12およびサステイン電極13との間で維持放電が発生する。その結果、スキャン電極12に正の壁電荷が蓄積され、サステイン電極13に負の壁電荷が蓄積される。
第1のサブフィールドの終了時には、スキャン電極12に正の壁電荷が蓄積され、サステイン電極13に負の壁電荷が蓄積されている。また、アドレス電極11には正の壁電荷が蓄積されている。
一方、書き込みパルスPwが印加されないためにアドレス放電を起こさなかった放電セルにおけるスキャン電極12とサステイン電極13との間の実効電圧は、放電開始電圧を超えない。そのため、スキャン電極12とサステイン電極13との間で維持放電が発生しない。
次いで、第1のサブフィールドの消去期間において、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧が0VからVmに上昇される。そして、ほぼ同時にサステインドライバ6によりサステイン電極13の電圧が接地電位0VからVeに上昇される。その結果、スキャン電極12とサステイン電極13との間に微弱な消去放電が起こる。それにより、スキャン電極12の壁電荷およびサステイン電極13の壁電荷は、維持放電後より減少し、スキャン電極12にわずかな負の壁電荷およびサステイン電極13にわずかな正の壁電荷が残存して維持放電が停止する。
一方、維持放電を起こさなかった放電セルにおいては、電荷量が変化することなく次のサブフィールドの書き込み状態に移行する。
同様にして、第2〜第8のサブフィールドにおいて、初期化期間で初期化動作が行われ、アドレス期間でアドレス放電が行われ、維持期間で維持放電が行われ、消去期間で消去放電が行われる。
このようにして、書き込みパルスにより選択された放電セルが点灯し、非選択の放電セルが点灯しない。それにより、PDP7に画像が表示される。
(F)サステイン電極の駆動電圧の改良
上記のアドレス放電をトリガとして発生するスキャン電極12とサステイン電極13との間の放電を起こりやすくするために、例えば非特許文献1のプラズマディスプレイ装置では、図14に示すように、アドレス期間において電圧Veに電圧VΔxをさらに加えた電圧をサステイン電極13に印加している。それによ
り、駆動電圧のばらつきにより選択された放電セルが点灯しない状態が発生することが防止される。
特開2000−214823号公報
K.Sakita:SID(Society for Information Display)DIGEST pp.1022-1025(2001)
以下の実施の形態では、本発明を表示装置の一例としてPDP(プラズマディスプレイパネル)を有するプラズマディスプレイ装置に適用した場合を説明する。
(1)プラズマディスプレイ装置の全体構成
図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマディスプレイ装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すプラズマディスプレイ装置は、A/Dコンバータ(アナログ・デジタル変換器)1、映像信号−サブフィールド対応付け器2、サブフィールド処理器3、データドライバ4、スキャンドライバ5、サステインドライバ6、電圧上昇回路6a、PDP(プラズマディスプレイパネル)7および電圧上昇制御器8を備える。
A/Dコンバータ1には、映像信号VDが入力される。A/Dコンバータ1は、アナログの映像信号VDをデジタルの画像データに変換し、映像信号−サブフィールド対応付け器2へ出力する。
映像信号−サブフィールド対応付け器2は、1フィールドを複数のサブフィールドに分割して表示するため、1フィールドの画像データから各サブフィールドの画像データSPを作成し、サブフィールド処理器3へ出力する。
サブフィールド処理器3は、サブフィールドごとの画像データSPからデータドライバ駆動制御信号DS、スキャンドライバ駆動制御信号CS、サステインドライバ駆動制御信号SS1〜SS4,SS5a,SS5bおよび電圧上昇制御器駆動制御信号VSを作成し、それぞれデータドライバ4、スキャンドライバ5、サステインドライバ6および電圧上昇制御器8へ出力する。なお、電圧上昇制御器駆動制御信号VSは、分割されたサブフィールドのうち現在のサブフィールドの番号を示す信号である。電圧上昇制御器8は、電圧上昇制御器駆動制御信号VSに基づいて制御信号SS6,SS7を電圧上昇回路6aに与える。
以下、例えば第1のサブフィールド〜第3のサブフィールドを低サブフィールドと呼び、上記低サブフィールド以外のサブフィールドを中高サブフィールドと呼ぶ。後述するように、サステインドライバ6および電圧上昇回路6aは、低サブフィールドと中高サブフィールドとで異なる動作を行う。
PDP7は、複数のアドレス電極(データ電極)11、複数のスキャン電極(走査電極)12および複数のサステイン電極(維持電極)13を含む。複数のアドレス電極11は、画面の垂直方向に配列され、複数のスキャン電極12および複数のサステイン電極13は、画面の水平方向に配列されている。また、複数のサステイン電極13は、共通に接続されている。アドレス電極11、スキャン電極12およびサステイン電極13の各交点には、放電セル14が形成され、各放電セル14が画面上の画素を構成する。
データドライバ4は、PDP7の複数のアドレス電極11に接続されている。スキャンドライバ5は、スキャン電極12ごとに設けられた駆動回路を内部に備え、各駆動回路がPDP7の対応するスキャン電極12に接続されている。また、サステインドライバ6は、PDP7の複数のサステイン電極13に接続されている。
データドライバ4は、データドライバ駆動制御信号DSに従い、アドレス期間において、画像データSPに応じてPDP7の該当するアドレス電極11に書き込みパルスを印加する。
スキャンドライバ5は、スキャンドライバ駆動制御信号CSに従い、アドレス期間において、シフトパルスを垂直走査方向にシフトしつつPDP7の複数のスキャン電極12に書き込みパルスを順に印加する。これにより、該当する放電セル14においてアドレス放電が行われる。
また、スキャンドライバ5は、スキャンドライバ駆動制御信号CSに従い、維持期間において、周期的な維持パルスPiをPDP7の複数のスキャン電極12に印加する。
一方、サステインドライバ6は、サステインドライバ駆動制御信号SS1〜SS4,SS5a,SS5bに従い、維持期間において、PDP7の複数のサステイン電極13に、スキャン電極12の維持パルスPiに対して180°位相のずれた維持パルスPjを同時に印加する。これにより、該当する放電セル14において維持放電が行われる。
(2)サブフィールドの説明
図1に示すプラズマディスプレイ装置では、階調表示駆動方式として、ADS(Address Display−Period Separation :アドレス・表示期間分離)方式が用いられている。
図2は、図1に示すプラズマディスプレイ装置に適用されるADS方式を説明するための図である。なお、図2には、1本のサステイン電極13、n本のスキャン電極12および1本のアドレス電極11に印加される駆動電圧が簡略的に示されている。また、図2では、駆動波形の立ち下がり時に放電を行う負極性のパルスの例を示しているが、立ち上がり時に放電を行う正極性のパルスの場合でも基本的な動作は以下と同様である。
ADS方式では、1フィールド(1/60秒=16.67ms)を複数のサブフィールドに時間的に分割する。例えば、1フィールドを第1〜第11のサブフィールドSF1〜SF11に分割する。図2には、第1〜第8のサブフィールドのみが示される。
各サブフィールドSF1〜SF11は、初期化期間P1、アドレス期間P2および維持期間P3に分離され、初期化期間P1において各サブフィールドの初期化動作が行われ、アドレス期間P2において点灯される放電セル14を選択するためのアドレス放電が行われ、維持期間P3において表示のための維持放電が行われる。初期化期間P1およびアドレス期間P2の詳細については後述する。
第1〜第11のサブフィールドSF1〜SF11はそれぞれ重み付けされている。維持期間P3においては、各サブフィールドSF1〜SF11の重み付け量に応じた維持パルスPj,Piがサステイン電極13およびスキャン電極12へ出力される。例えば、第1のサブフィールドSF1では、サステイン電極13に維持パルスPjが1回印加され、スキャン電極12に維持パルスPiが1回印加され、アドレス期間P2において選択された放電セル14が2回維持放電を行う。また、第2のサブフィールドSF2では、サステイン電極13に維持パルスPjが2回印加され、スキャン電極12に維持パルスPiが2回印加され、アドレス期間P2において選択された放電セル14が4回維持放電を行う。
すなわち、維持期間P3は、アドレス期間P2で選択された放電セル14が重み付け量に応じた回数で放電する期間である。
これらの第1〜第11のサブフィールドSF1〜SF11を組み合わせることにより、輝度のレベルを調整することができる。なお、サブフィールドの分割数および重み付け量等は、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能であり、例えば、動画疑似輪郭を低減するために、第8のサブフィールドSF8を二つに分割して二つのサブフィールドの重み付け量を64に設定してもよい。
次に、本実施の形態に用いられるサブフィールドの具体例について説明する。
図3は、図1のプラズマディスプレイ装置に用いられる階調表示例を示す図である。なお、図3の第1行の「1」〜「11」は第1〜第11のサブフィールドSF1〜SF11を示し、第2行はそれぞれ第1〜第11のサブフィールドSF1〜SF11の重み付け量を示す。また、左端の列は階調レベルを示す。また、図3では、各階調レベルにおける各サブフィールド欄の「1」は、発光状態のサブフィールドを示しており、「0」は、非発光状態のサブフィールドを示している。
図3に示すように、第1のサブフィールドSF1〜第11のサブフィールドSF11の重み付け量は、それぞれ1,2,4,6,12,22,36,60,88,120,160であり、各サブフィールドの重み付け量は、当該サブフィールドが発光したときの輝度に対応する。
例えば、7の階調レベルを表示するには、第1のサブフィールドSF1、第2のサブフィールドSF2および第3のサブフィールドSF3がそれぞれ発光状態となる。
(3)サステインドライバおよび電圧上昇回路の構成
次に、図1のサステインドライバ6および電圧上昇回路6aについて詳細に説明する。
図4は、図1のサステインドライバ6および電圧上昇回路6aの構成を示す回路図である。以下の説明では、駆動波形の立ち上がり時に放電を行う正極性のパルスの例を示しているが、立ち下がり時に放電を行う負極性のパルスを用いてもよい。
図4のサステインドライバ6は、nチャネルFET(電界効果型トランジスタ;以下トランジスタと略記する)QS1〜QS4,QS5aおよびpチャネルFET(電界効果型トランジスタ;以下トランジスタと略記する)QS5b、回収コンデンサC1、回収コイルL1、電源端子V1,V2およびダイオードD1,D2,D3を含む。
電圧上昇回路6aは、nチャネルFET(電界効果型トランジスタ;以下トランジスタと略記する)QS6,QS7、コンデンサC2および電源端子V3を含む。
サステインドライバ6のトランジスタQS1は、電源端子V1とノードN1との間に接続され、ゲートには制御信号SS1が入力される。電源端子V1には、電圧Vsusが印加される。トランジスタQS2は、ノードN1と接地端子との間に接続され、ゲートには制御信号SS2が入力される。
回収コンデンサC1は、ノードN3と接地端子との間に接続される。トランジスタQS3およびダイオードD1は、ノードN3とノードN2との間に直列に接続される。ダイオードD2およびトランジスタQS4は、ノードN2とノードN3との間に直列に接続される。トランジスタQS3のゲートには、制御信号SS3が入力され、トランジスタQS4のゲートには制御信号SS4が入力される。回収コイルL1は、ノードN1とノードN2との間に接続される。
ダイオードD3は、電源端子V2とノードN4との間に接続され、電源端子V2には、電圧Veが印加される。
トランジスタQS5aおよびトランジスタQS5bは、ノードN4とノードN1との間に直列に接続される。トランジスタQS5aおよびトランジスタQS5bのゲートにはそれぞれ制御信号SS5aおよび制御信号SS5bが入力される。
一方、電圧上昇回路6aのトランジスタQS6は、電源端子V3とノードN5との間に接続され、ゲートには制御信号SS6が入力される。電源端子V3には、電圧Ve2が印加される。トランジスタQS7は、ノードN5と接地端子との間に接続され、ゲートには制御信号SS7が入力される。
コンデンサC2は、ノードN4とノードN5との間に接続される。また、ノードN1は、複数本に分岐した図1のサステイン電極13に接続されている。
(4)低サブフィールドの駆動電圧および制御信号
図5は、図1のPDP7の各電極に印加される駆動電圧および制御信号SS1〜SS7の一例を示すタイミングチャートである。なお、以下の説明においては、1フィールドが第1〜第11のサブフィールドSF1〜SF11に分割された例について説明する。また、図5の例では、第1のサブフィールドSF1におけるタイミングチャートが示されている。
(4−1)低サブフィールドの駆動電圧
図5のタイミングチャートは、PDP7の垂直方向に配列された1本のアドレス電極11の駆動電圧、そのアドレス電極11と交差する1本のスキャン電極12の駆動電圧および1本のサステイン電極13の駆動電圧を示している。
第1のサブフィールドSF1は、スキャン電極12に第1の初期化波形を印加して全ての放電セルの壁電荷を均一に調整するための全セル初期化動作を行う全セル初期化期間、アドレス電極11およびスキャン電極12に書き込みパルスを印加してアドレス放電を行うアドレス期間、スキャン電極12およびサステイン電極13に交互に維持パルスを印加して放電を維持させる維持期間およびスキャン電極12とサステイン電極13とに消去波形を印加して放電を停止させる消去期間により構成される。
第1〜第11のサブフィールドの維持期間の維持パルス数はそれぞれ異なる。第1〜第11のサブフィールドのうち維持期間で放電セルを点灯させるべきサブフィールドを選択し組み合わせることにより階調表示を行うことができる。
例えば、放電セルの輝度を最も低くしたい場合、最も維持期間の短いサブフィールドにおいてアドレス放電を行った後に維持パルスを放電セルに印加して発光を維持させ、放電セルの輝度を最も高くしたい場合、第1〜第11のサブフィールドの全てにおいてアドレス放電を行った後に放電セルに維持パルスを印加して発光を維持させる。それにより、1フィールドにおける放電セルの発光回数または発光時間を調整し、階調表示を行うことができる。
図5に示すように、最初に、第1のサブフィールドSF1の全セル初期化期間において、データドライバ4によりアドレス電極11の電圧が0Vに保持され、スキャンドライバ5によりスキャン電極12に初期化波形Setup1が印加される。この場合、サステインドライバ6によりサステイン電極13の電圧が0Vに保持される。
スキャン電極12の電圧がVmを超えた後、放電開始電圧を超える電圧Vsetまで上昇すると、スキャン電極12とアドレス電極11との間およびスキャン電極12とサステイン電極13との間でそれぞれ1回目の微弱な初期化放電が起こり、スキャン電極12に負の壁電荷が蓄積されるとともに、アドレス電極11およびサステイン電極13に正の壁電荷が蓄積される。
次に、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧がVmまで降下される。さらに、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧が徐々に降下され、サステインドライバ6によりサステイン電極13の電圧がVeまで上昇される。なお、電圧Veは、例えば150〜160Vである。
上記により、再びサステイン電極13とスキャン電極12との間で2回目の微弱な初期化放電が起こり、スキャン電極12の負の壁電荷およびサステイン電極13の正の壁電荷が減少する。
この場合、スキャン電極12とアドレス電極11との間にも同時に放電が起こり、スキャン電極12の負の壁電荷およびアドレス電極11の正の壁電荷が減少する。
その結果、全セル初期化期間後の全ての放電セルにおいては、アドレス電極11に所定量の正の壁電荷が蓄積され、スキャン電極12に所定量の負の壁電荷が蓄積され、サステイン電極13に所定量の正の壁電荷が蓄積される。以上により、全ての放電セルの壁電荷の量が均一に調整され、初期化期間が終了する。また、このような初期化によりプライミング効果が発生する。なお、上記のプライミング効果とは、放電セル14内に荷電粒子が存在すると、より低い電圧で放電を開始させることが可能となる現象をいう。
次に、第1のサブフィールドSF1のアドレス期間において、映像信号に応じて正極性の例えば70Vの書き込みパルスPwがデータドライバ4により点灯させるべき放電セルに対応するアドレス電極11に印加される。なお、点灯させない放電セルに対応するアドレス電極11には書き込みパルスPwは印加されない。
書き込みパルスPwに同期してスキャンドライバ5によりスキャン電極12に負極性の電圧Vadの書き込みパルスPsが印加される。なお、電圧Vadは、例えば−100Vである。
この場合、点灯させるべき放電セルに対応するアドレス電極11とスキャン電極12との間の実効電圧は、書き込みパルスPwと書き込みパルスPsとの間の電位差に、初期化期間にスキャン電極12およびアドレス電極11の各々に蓄積された壁電荷による壁電圧を加算した値となる。それにより、アドレス電極11とスキャン電極12との間の実効電圧が放電開始電圧を超えるため、アドレス電極11とスキャン電極12との間でアドレス放電が発生し、スキャン電極12とサステイン電極13との間で放電が発生する。その結果、スキャン電極12に正の壁電荷が蓄積され、アドレス電極11に負の壁電荷が蓄積される。また、サステイン電極13に負の壁電荷が蓄積される。
一方、アドレス期間でアドレス電極11に書き込みパルスPwが印加されない場合には、アドレス電極11とスキャン電極12との間の実効電圧が放電開始電圧を超えないため、アドレス電極11とスキャン電極12との交点の放電セルではアドレス放電が発生しない。
続いて、第1のサブフィールドの維持期間においては、スキャン電極12に維持パルスPiが印加され、サステイン電極13に維持パルスPjが印加される。スキャン電極12に印加される維持パルスPiの位相は、サステイン電極13に印加される維持パルスPjの位相に対して180度ずれている。例えば、スキャンドライバ5により電圧Vmの維持パルスPiがスキャン電極12に印加されたときに、サステインドライバ6によりサステイン電極13の電圧は接地電位0Vにされる。サステインドライバ6により電圧Vmの維持パルスPjがサステイン電極13に印加されたときに、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧は接地電位0Vにされる。
この場合、点灯させるべき放電セルに対応するスキャン電極12とサステイン電極13との間の実効電圧は、維持パルスPiと維持パルスPjとの間の電位差に、アドレス期間にスキャン電極12およびサステイン電極13の各々に蓄積された壁電荷による壁電圧を加算した値となる。
まず、スキャン電極12に維持パルスPiが印加され、サステイン電極13が接地電位0Vにされる。それにより、スキャン電極12とサステイン電極13との間の実効電圧が放電開始電圧を超えるため、維持パルスPiの立ち上がりでスキャン電極12とサステイン電極13との間で維持放電が発生する。その結果、スキャン電極12に負の壁電荷が蓄積され、サステイン電極13に正の壁電荷が蓄積される。
次に、スキャン電極12が0Vにされ、サステイン電極13に維持パルスPjが印加される。それにより、維持パルスPjの立ち上がりでスキャン電極12およびサステイン電極13との間で維持放電が発生する。その結果、スキャン電極12に正の壁電荷が蓄積され、サステイン電極13に負の壁電荷が蓄積される。
第1のサブフィールドの終了時には、スキャン電極12に正の壁電荷が蓄積され、サステイン電極13に負の壁電荷が蓄積されている。また、アドレス電極11には正の壁電荷が蓄積されている。
一方、書き込みパルスPwが印加されないためにアドレス放電を起こさなかった放電セルにおけるスキャン電極12とサステイン電極13との間の実効電圧は、放電開始電圧を超えない。そのため、スキャン電極12とサステイン電極13との間で維持放電が発生しない。
次いで、第1のサブフィールドの消去期間において、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧が0VからVmに上昇される。そして、ほぼ同時にサステインドライバ6によりサステイン電極13の電圧が接地電位0VからVeに上昇される。その結果、スキャン電極12とサステイン電極13との間に微弱な消去放電が起こる。それにより、スキャン電極12の壁電荷およびサステイン電極13の壁電荷は、維持放電後より減少し、スキャン電極12にわずかな負の壁電荷およびサステイン電極13にわずかな正の壁電荷が残存して維持放電が停止する。
一方、維持放電を起こさなかった放電セルにおいては、電荷量が変化することなく次のサブフィールドの書き込み状態に移行する。
同様にして、第3〜第11のサブフィールドにおいて、初期化期間で初期化動作が行われ、アドレス期間でアドレス放電が行われ、維持期間で維持放電が行われ、消去期間で消去放電が行われる。
(4−2)低サブフィールドの制御動作
次に、図5に示す制御信号SS1〜SS7のタイミングチャートを参照しながら図3のサステインドライバ6および電圧上昇回路6aの動作について説明する。
初期化期間の開始時点において、サステインドライバ6では、制御信号SS1,SS3,SS4,SS5aがそれぞれローレベルとなっており、制御信号SS5bがハイレベルとなっており、電圧上昇回路6aでは、制御信号SS6がローレベルとなっている。それにより、トランジスタQS1,QS3,QS4,QS5a,QS5b,QS6はそれぞれオフしている。
また、初期化期間の開始時点において、サステインドライバ6では、制御信号SS2がハイレベルとなっており、電圧上昇回路6aでは、制御信号SS7がハイレベルとなっている。それにより、トランジスタQS2,QS7はそれぞれオンしている。したがって、ノードN1およびノードN5の電圧は0Vとなっている。
初期化期間の時点t1において、制御信号SS2がローレベルになりトランジスタQS2がオフし、制御信号SS5aがハイレベルになりトランジスタQS5aがオンし、制御信号SS5bがローレベルとなりトランジスタQS5bがオンする。それにより、電源端子V2からノードN1に電流が流れ、サステイン電極13の電圧(ノードN1の電圧)がVeまで上昇する。
次に、維持期間の時点t2において、制御信号SS4がハイレベルになりトランジスタQS4がオンし、制御信号SS5aがローレベルになりトランジスタQS5aがオフし、制御信号SS5bがハイレベルとなりトランジスタQS5bがオフする。したがって、ノードN1から回収コンデンサC1に電流が流れ、サステイン電極13の電圧が降下する。このとき、パネル容量に蓄えられた電荷は、回収コイルL1、ダイオードD2およびトランジスタQS4を介して回収コンデンサC1に蓄えられ、電荷が回収される。
続いて、維持期間の時点t3において、制御信号SS2がハイレベルになりトランジスタQS2がオンし、制御信号SS4がローレベルになりトランジスタQS4がオフする。それにより、ノードN1が接地端子に接続され、サステイン電極13の電圧が接地電位に固定される。
次に、維持期間の時点t4において、制御信号SS2がローレベルになりトランジスタQS2がオフし、制御信号SS3がハイレベルになりトランジスタQS3がオンする。それにより、回収コンデンサC1からサステイン電極13に電流が流れ、サステイン電極13の電圧が上昇する。
続いて、維持期間の時点t5において、制御信号SS1がハイレベルになりトランジスタQS1がオンし、制御信号SS3がローレベルになりトランジスタQS3がオフする。それにより、サステイン電極13の電圧がVsusに固定され、電源端子V1から供給される放電電流により維持放電が1回発生する。
次に、維持期間の時点t6において、制御信号SS1がローレベルになりトランジスタQS1がオフし、制御信号SS4がハイレベルになりトランジスタQS4がオンする。それにより、サステイン電極13から回収コイルL1、ダイオードD2およびトランジスタQS4を介して回収コンデンサC1に電流が流れ、サステイン電極13の電圧が降下する。
続いて、維持期間の時点t7において、制御信号SS2がハイレベルになりトランジスタQS2がオンし、制御信号SS4がローレベルになりトランジスタQS4がオフする。それにより、ノードN1が接地端子に接続され、サステイン電極13の電圧が接地電位に固定される。
上記の動作を維持期間において繰り返し行うことにより、複数のサステイン電極13に維持パルスPjが印加され、維持パルスPjの立ち上がり時に放電セルが放電し、維持放電が行われる。
このように、第1のサブフィールドSF1のアドレス期間において、サステイン電極13の電圧がVeに保たれる。同様に、第2および第3のサブフィールドSF2,SF3のアドレス期間においても、サステイン電極13の電圧がVeに保たれる。
(4−3)トランジスタQS5a,QS5bの機能
ここで、上述の図4に示すように、ノードN4とノードN1との間に2つのトランジスタQS5a,QS5bを直列に接続している理由を以下に説明する。
一般的に、トランジスタQS5aは寄生ダイオードD4を有し、トランジスタQS5bは寄生ダイオードD5を有する。
図4において、ノードN4とノードN1との間に、例えばトランジスタQS5aのみを接続した場合において、トランジスタQS1がオンしたとき、電源端子V1からトランジスタQS5aの寄生ダイオードD4を通って電流が流れ、コンデンサC2が電圧Vsusに充電される。
この状態で、トランジスタQS5aをオンすると、サステイン電極13には電圧Veではなく、コンデンサC2の電圧Vsusが印加されてしまう。
そこで、本実施の形態のように、トランジスタQS5aに直列にトランジスタQS5bを直列に接続することにより、トランジスタQS5bの寄生ダイオードD5がトランジスタQS5aの寄生ダイオードD4とは逆向きに接続される。それにより、寄生ダイオードD4,D5に電流が流れない。そのため、トランジスタQS1がオンしたときに、トランジスタQS5bの寄生ダイオードD5により電源端子V1からの電流がコンデンサC2の方向へ流れることが阻止される。それにより、トランジスタQS5a,QS5bをオンした場合に、サステイン電極13に電圧Veが印加される。
(5)中高サブフィールドの駆動電圧および制御信号
図6は、図1のPDP7の各電極に印加される駆動電圧および制御信号SS1〜SS7の一例を示すタイミングチャートである。なお、図6の例では、第4のサブフィールドSF4におけるタイミングチャートが示されている。
(5−1)中高サブフィールドの駆動電圧
図6のタイミングチャートが上述の図5のタイミングチャートと異なる点は、以下の点である。
第4のサブフィールドSF4は、前のサブフィールドにおいて維持放電した放電セル14に微弱な放電を発生させて壁電荷を均一に調整するための選択型初期化期間、アドレス電極11およびスキャン電極12に書き込みパルスを印加してアドレス放電を行うアドレス期間、スキャン電極12およびサステイン電極13に交互に維持パルスを印加して放電を維持させる維持期間およびスキャン電極12とサステイン電極13とに消去波形を印加して放電を停止させる消去期間により構成される。
選択型初期化期間の選択型初期化波形Setup2の形状は図5の全セル初期化期間の全セル型初期化波形Setup1の形状と異なる。
スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧がVmまで上昇され、サステインドライバ6によりサステイン電極13の電圧がVeまで上昇される。
次に、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧が降下される。さらに、スキャンドライバ5によりスキャン電極12の電圧が徐々に降下されると、前のサブフィールドの維持期間で維持放電した放電セルにおいてサステイン電極13とスキャン電極12との間で微弱な選択型初期化放電が起こり、スキャン電極12の負の壁電荷およびサステイン電極13の正の壁電荷が減少する。
この場合、スキャン電極12とアドレス電極11との間にも同時に放電が起こり、スキャン電極12の負の壁電荷およびアドレス電極11の正の壁電荷が減少する。
ここで、第4のサブフィールドSF4の選択型初期化放電は、第1のサブフィールドSF1の全セル初期化放電に比べて弱い。そのため、第4のサブフィールドSF4におけるプライミング効果は、第1のサブフィールドSF1におけるプライミング効果よりも小さくなる。
(5−2)中高サブフィールドの制御動作
第4のサブフィールドのアドレス期間の時点t1aから維持期間の時点t2までの間、電圧上昇回路6aにおける制御信号SS6がハイレベルになりトランジスタQS6がオンし、制御信号SS7がローレベルになりトランジスタQS7がオフする。それにより、電源端子V3からノードN5に電流が流れ、サステイン電極13の電圧Veに対して、さらに電源端子V3の電圧Ve2が加えられる。なお、電圧Ve2は、例えば5Vである。
このように、第4のサブフィールドSF4のアドレス期間において、サステイン電極13の電圧は第1のサブフィールドSF1のアドレス期間の電圧VeよりもVe2だけ高く保たれる。同様に、第5〜第11のサブフィールドSF5〜SF11の中高サブフィールドのアドレス期間においても、サステイン電極13の電圧は第1のサブフィールドSF1のアドレス期間の電圧VeよりもVe2だけ高く保たれる。
上記のように、本実施の形態において、アドレス期間におけるサステイン電極13の電圧Veにさらに電圧Ve2を加える動作は電圧上昇回路6aにより行われる。
(6)安定放電領域(駆動マージン)
図7は、維持電圧とアドレス期間放電電圧との関係を示す簡単な説明図である。なお、図7の維持電圧とは、維持放電のために各スキャン電極と各サステイン電極との間に印加される電圧をいい、図5の維持パルスPiの電圧とサステイン電極13の電圧との差および図5の維持パルスPjの電圧とスキャン電極12との電圧との差である。
また、図7のアドレス期間放電電圧とは、アドレス放電後の選択されたスキャン電極12とサステイン電極13との間に印加される電圧をいい、図5の書き込みパルスPsの電圧Vadと図5のサステイン電極13の電圧Veまたは電圧(Ve+Ve2)との差である。
図1のPDP7上の放電セル14を安定して放電させるために許容される上記維持電圧およびアドレス期間放電電圧の範囲を安定放電領域(駆動マージン)と呼ぶ。
図7に示すように、安定放電領域は三角形状により表される。ここで、アドレス期間においてサステイン電極13の電圧Veに電圧Ve2を加えない場合には、放電セル14を安定して放電させるために最低限必要な維持電圧ごとのアドレス期間放電電圧が線分L1から線分L2に移動する。その結果、放電セル14の安定放電領域が小さくなる。
(7)本実施の形態の効果
本実施の形態においては、全セル初期化期間のプライミング効果が大きい低サブフィールドのアドレス期間においてのみ、サステイン電極13の電圧Veに電圧Ve2を加えない。それにより、低サブフィールドでは、選択された放電セル14が非点灯となる現象を防止することができるとともに、誤放電(非選択の放電セル14が点灯する現象)の発生を防止することができる。
一方、中高サブフィールドでは、サステイン電極13の電圧が(Ve+Ve2)まで上昇するので、放電セル14の安定放電領域が大きくなる。それにより、選択された放電セル14が非点灯となる現象が発生しない。この場合、中高サブフィールドでは、初期化期間におけるプライミング効果が小さいため、誤放電も発生しない。
(8)誤放電開始電圧
図8は、誤放電が開始する図5の電圧Ve2(以下、誤放電開始電圧と呼ぶ)と階調レベルとの関係を示す図である。なお、図8においては、0から50までの範囲の低階調レベルにおける誤放電開始電圧が示されている。また、誤放電開始電圧は、PDP7の全ての放電セル14において誤放電が開始する電圧Ve2をいう。
図8に示すように、各階調レベルにおいて誤放電開始電圧は異なり、階調レベルが高くなるにつれ、一部を除いて誤放電開始電圧は上昇する傾向がある。
図8の結果から、電圧Ve2が例えば5Vに設定されている場合、中高サブフィールドでは、誤放電が発生せず、低サブフィールドでは、この電圧Ve2を印加しないことにより、図8中の階調レベル5および階調レベル20における誤放電が発生しないことがわかる。
(9)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応
本実施の形態においては、アドレス電極11がアドレス電極に相当し、スキャン電極12がスキャン電極に相当し、サステイン電極13がサステイン電極に相当し、映像信号−サブフィールド対応付け器2がサブフィールド分割手段に相当し、プラズマディスプレイパネル7が表示手段に相当し、電圧上昇回路6aが電圧印加手段に相当する。
(10)他の実施の形態
上記実施の形態では、第1〜第3のサブフィールドSF1〜SF3を低サブフィールドとし、第4〜第11のサブフィールドSF4〜SF11を中高サブフィールドとしているが、これに限定されるものではなく、例えば第1〜第4のサブフィールドSF1〜SF4を低サブフィールドとしてもよい。
また、サステイン電極13の電圧上昇値である電圧Ve2を5Vとしているが、これに限定されるものではなく、5V以上10V未満の任意の電圧としてもよい。
また、中高サブフィールドにおいては、上記の選択型初期化動作が行われることとしているが、これに限定されるものではなく、中高サブフィールドにおいて全セル初期化動作が行われてもよい。
さらに、低サブフィールドおよび中高サブフィールドにおける各初期化波形の形状および各初期化波形に含まれる電圧においても、上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。