JP4647755B2 - 静電容量センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁体からなるギャップ部材を挟んで2つの電極を対向して配置した構成を有する静電容量センサであって、例えば紙幣などの所定の検査物体に摺動接触して前記2つの電極間の静電容量の変化を利用した所定の検出を行なう静電容量センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば紙幣等の書類の偽造を防止する手段として、その紙に、金属等の導電性の物質を含ませたスレッドを漉き込んでおき、上記の静電容量センサをその書類に対して摺動接触させ、同センサの静電容量の変化によって上記スレッドの有無を検出して書類の真偽を判断する技術がある。
【0003】
このような用途に用いられる静電容量センサの従来例の構造と製造工程の概略を図7に基づいて説明する。図7において、コンデンサ部を構成する電極1,2とギャップ部材6はそれぞれ独立した部品であり、センサの製造工程では、まずこの電極1,2間にギャップ部材6を挟んで互いに位置決めして接着固定し、上記書類との摺動接触面となる図中上面を同一面に加工する。
【0004】
電極1,2の材質は鉄や黄銅等の金属を採用することが可能であり、これにより電極1,2とギャップ部材6の上面を同一面に加工し易く、電極1,2とギャップ部材6の段差は発生しづらい。
【0005】
ギャップ部材6の材質は、センサの静電容量変化を大きくするため、比較的高い誘電率のものを選定する。また電極1,2間のギャップ巾の精度により、静電容量変化のバラツキが左右されるため、ギャップ部材6の寸法精度と、電極1,2の位置決め精度が必要となる。
【0006】
電極1,2とギャップ部材6からなるコンデンサ部は絶縁体からなる保持部材3に対して位置決めされて接着固定される。そして、リード線7の一端が電極1に半田付けされ、他端が保持部材3に圧入された端子9にからげて半田付けされる。また、リード線8の一端が電極2に半田付けされ、他端が保持部材3に圧入された端子10にからげて半田付けされる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の静電容量センサの構造では以下のような欠点があった。
【0008】
(1)電極1,2の厚みが0.3〜0.5mmと薄いため、電極1,2のギャップ部材6に対する位置決めと接着の作業が煩雑で生産性が悪い。また、ギャップ幅を精度よく出すために特別な設備や治工具が必要となる。また、接着材の硬化後、電極1,2とギャップ部材6の接着面積が小さいため、電極1,2とギャップ部材6が剥がれやすい。
【0009】
(2)電極1,2とギャップ部材6からなるコンデンサ部を保持部材3に対して位置決めするのに光学的に行なうため、作業工数が多い。
【0010】
(3)電極1,2とリード線7,8の半田付け作業は、電極1,2の半田面積が広いため、半田の熱が伝わりにくく、生産性が悪い。また、外部から衝撃が加わると電極1,2からリード線7,8が剥がれるという問題があった。
【0011】
(4)電極1,2とギャップ部材6が直接に検査物体に摺動接触するので、電極1,2とギャップ部材6が偏摩耗しやすい。
【0012】
(5)電極(材質は鉄や銅系)1,2は、金属であるため錆やすく、この錆などを介して電極1,2やギャップ部材6に塵等が付着すると、センサの静電容量の変化にバラツキが発生する原因となり、書類の真偽判別のシステムエラーが発生する。
【0013】
そこで本発明の課題は、この種の静電容量センサにおいて、製造工程で電極の位置決めを簡単に高精度に行なえ、ギャップ幅の精度を向上できるとともに、製造工程を簡略化して製造コストを低減でき、さらに耐久性を向上できるようにすることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明によれば、
絶縁体からなるギャップ部材を挟んで2つの電極を対向して配置し、絶縁体からなる保持部材により保持した構成を有し、所定の検査物体に対して摺動接触して前記2つの電極間の静電容量の変化を利用した所定の検出を行なう静電容量センサにおいて、
前記保持部材の上面に前記ギャップ部材として機能する突出部が形成され、前記2つの電極を前記突出部の両側面に当接させて位置決めするようにした構造を採用した。
【0015】
さらに、前記保持部材の上面において前記突出部の両側に2つの溝が形成され、該溝のそれぞれに前記2つの電極を嵌合することにより、前記2つの電極が前記突出部の両側面に当接して保持されるようにした構造を採用した。
【0016】
さらに、前記2つの電極の上面と前記保持部材の突出部の上面を覆う絶縁体からなる耐摩耗部材を設けた構造を採用した。
【0017】
さらに、絶縁体からなるギャップ部材を挟んで2つの電極を対向して配置し、絶縁体からなる保持部材により保持した構成を有し、所定の検査物体に対して摺動接触して前記2つの電極間の静電容量の変化を利用した所定の検出を行なう静電容量センサにおいて、
前記2つの電極の上面を覆う絶縁体からなる耐摩耗部材が設けられ、該耐摩耗部材の下面には前記ギャップ部材として機能する突出部が形成され、前記2つの電極を前記突出部の両側面に当接させて位置決めするようにした構造を採用した。
【0018】
さらに、前記耐摩耗部材において前記検査物体の摺動方向に沿って検査物体の進入側及び退出側となる側縁部のそれぞれに10度〜40度の面取り加工を施した構造を採用した。
【0019】
さらに、前記2つの電極のそれぞれに一体に端子部を形成した構造を採用した。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、実施形態の静電容量センサは、例えば前述した紙幣などの書類の真偽の判断に用いられるものとする。
【0021】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を図1〜5により説明する。まず図1は、第1の実施形態における静電容量センサの構造を示す断面図である。
【0022】
図1において、1,2はコンデンサ部を構成する電極、3は電極を保持する保持部材、4は外部ノイズのシールドを行なうシールドケース、5は不図示の検査対象の書類との摺動接触によるセンサの磨耗を防ぐための耐摩耗部材である。以下、それぞれについて説明する。
【0023】
電極1,2は、アルミニウム,黄銅,ステンレス等の非磁性の金属からなり、図2(a),(b)に示すように、細長い長方形の平板状に形成され、一端に端子部11,21が一体に形成されている。端子部11,21は、電極1,2から検出信号を取り出すためのもので、この静電容量センサを使用する不図示の装置の回路基板に接続される。端子部11,21は、それぞれ電極1,2を曲げ加工によりL字状に折曲して形成される。なお、電極1,2は同一部品であり、後述する保持部材3への取り付け時に互いに180度異なる向きで使用する。
【0024】
保持部材3は、例えばPPS(ポリフェニレンスルフィド)などの絶縁体のモールド材で比誘電率が2.5〜4.0程度のものから図3に示す形状に一体成形される。すなわち、保持部材3は全体として細長い直方形に形成され、上面に2つの浅い溝31,32が保持部材3の長手方向に沿って形成されており、その溝31,32の間に前記長手方向に沿って一直線状に延びる突出部30が形成されている。溝31,32の幅と長さの寸法は、それぞれ電極1,2の幅と長さの寸法よりごく僅かに大きくされている。また、突出部30は、対向して配置される電極1,2間のギャップを形成するギャップ部材として機能し、その長手方向に直交する方向の幅Aがギャップ幅となる。なお、保持部材3は、モールド材で型で成形されるから、ギャップ幅Aのバラツキを抑えることができる。
【0025】
また、溝31,32のそれぞれの外側縁の中間部には、短い突出部33,34が前記の外側縁に沿って一直線状に伸びて形成されており、それぞれの内側面には小さな半球形状の突起331,341が2つずつ形成されている。また、溝31,32において保持部材3の長手方向に対向する側縁の端面の一方のそれぞれにも小さな半球形状の突起311,321が形成されている。突起331と、これに対向する突出部30の側面30aとの間隔、及び突起341と、これに対向する突出部30の側面30bとの間隔の寸法は、それぞれ電極1,2の幅寸法より僅かに小さく設定されている。また、突起311とこれに対向する溝31の側縁の端面31aとの間隔、及び突起321とこれに対向する溝32の側縁の端面32aとの間隔の寸法は、それぞれ電極1,2の長さ寸法より僅かに小さく設定されている。この寸法関係により、後述のように電極1,2を保持部材3の溝31,32に嵌合するときは圧入での嵌合になる。
【0026】
さらに、保持部材3の長手方向に沿う両側面のそれぞれには、電極1,2の端子部11,21を挿通させるための切り欠き部35,36が溝31,32に連通して形成されている。
【0027】
シールドケース4は、パーマロイ等からなり、後述する図5の(c)に示すように保持部材3に対応した細長い長方形の角筒状に形成される。
【0028】
耐摩耗部材5は、比誘電率が7.0以上のセラミック材からなり、図5の(e)に示すように、シールドケース4に対して幅が同じで長さが若干短い長方形の平板状に形成されている。また図4に示すように、耐摩耗部材5の幅方向(センサに対する検査対象の書類の摺動方向に相当する)の両側の側縁部5a,5b、すなわち検査対象の書類の進入側及び退出側となる側縁部のそれぞれは角度C(10度〜40度)で面取り加工が施されている。これにより、前記の書類がセンサに対して進入し易くしている。
【0029】
次に、上記の1〜5の各部材から構成される本実施形態の静電容量センサの製造工程について、図5を用いて説明する。
【0030】
<工程1>
まず、電極1,2について曲げ加工により端子部11,21の部分をL字状に折曲する。なお、前述のように電極1,2は同一部品であり、互いに180度異なる向きで使用するだけである。
【0031】
<工程2>
次に、図5(a)に示すように、電極1の端子部11を保持部材3の切り欠き部35に挿通させて、電極1を保持部材3の溝31に嵌合し、電極1の下面1cを溝31の底面に当接させ、密着させる。ここで前述のように前記の嵌合は圧入での嵌合になるため、図3に示した保持部材3の突起331及び311が電極1を押圧し、これにより、電極1の長手方向に沿った内側縁の端面1aと、長手方向に対向する側縁の一方の側縁の端面1bが保持部材3の突出部30の一方の側面30aと溝31の一方の側縁の端面31a(それぞれ図3参照)のそれぞれに当接して密着する。これにより電極1が保持部材3に対して位置決めされて保持(仮止め)される。
【0032】
また、同様に図5(b)に示すように、電極2の端子部21を保持部材3の切り欠き部36に挿通させて、電極2を保持部材3の溝32に嵌合し、電極2の下面2cを溝32の底面に当接させ、密着させる。ここで図3に示した突起341及び321が電極2を押圧することにより、電極2の長手方向に沿った内側縁の端面2aと、長手方向に対向する側縁の一方の側縁の端面2bが保持部材3の突出部30の一方の側面30bと溝32の一方の側縁の端面32a(それぞれ図3参照)のそれぞれに当接して密着する。これにより電極2が保持部材3に対して位置決めされて保持される。
【0033】
<工程3>
次に、保持部材3の電極1,2を仮止めした溝31,32中の隙間の部分に不図示の樹脂を流し込み、さらにこの樹脂を硬化させて電極1,2を固定する。
【0034】
<工程4>
次に図5(c)に示すように、電極1,2を固定した保持部材3をシールドケース4に嵌合し、シールドケース4内に不図示の樹脂を流し込み、さらにこの樹脂を硬化させ、シールドケース4内に保持部材3を固定する。
【0035】
<工程5>
次に、図5(d)に示すように、電極1,2、保持部材3、シールドケース4のそれぞれの上面を同一のB面となるように研削する。
【0036】
<工程6>
次に、図5(e)に示すように、同一面Bとなった電極1,2、保持部材3、シールドケース4の上面に対しこれを覆うように耐摩耗部材5を当接させ、当接部5cに不図示の樹脂を流し込み、さらにこの樹脂を硬化させて耐摩耗部材5を固定する。以上の工程で本実施形態の静電容量センサが完成する。
【0037】
このような本実施形態の静電容量センサによれば、電極1,2の位置決めは、電極1,2を保持部材3の溝31,32に嵌合(圧入)するだけで簡単に高精度に行なえ、位置決めのために特別な治具や設備などは不要である。従って製造コストを低減できる。また、保持部材3のギャップ部材としての突出部30に対して電極1,2を高精度に位置決めできるので、ギャップ幅の管理も精度良くでき、安定したセンサの性能が得られる。
【0038】
また、電極1,2に一体に端子部11,21を形成することで、製造工程で熟練を有するリード線の半田付け作業が無くなり、確実に導通をとることができる。また、外部からの振動や衝撃による接続の外れを防止でき、耐久性を向上できる。さらに部品点数を削減してセンサを安価にすることができる。
【0039】
さらに耐摩耗部材5を設けることにより、電極1,2とギャップ部の品質が半永久的に維持される為、耐久性が向上し、安定した出力を得ることができる。
【0040】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
【0041】
第2の実施形態では、保持部材3にギャップ部材としての突出部30を設けず、その代わりに、図6に示すように耐摩耗部材5の下面にギャップ部材として機能する突出部50を耐摩耗部材5と一体に形成する。突出部50は耐摩耗部材5の下面5dの幅方向の中央部において耐摩耗部材5の長手方向に沿って一直線状に伸びるように形成し、その幅Aがギャップ幅となる。
なお、保持部材3の電極1、2を嵌合する溝は、突出部30を設けないことにより、1つの連続した溝となる。
【0042】
そして、センサの製造工程では、図6に示すように、耐摩耗部材5の突出部50の長手方向に沿う両側面50a,50bのそれぞれに対し、電極1,2のそれぞれの長手方向に沿う内側縁の端面1a,2aを当接、密着させるとともに、耐摩耗部材5の下面5dに対して電極1,2の上面1d,2dを当接、密着させることにより、耐摩耗部材5に対して電極1,2を位置決めし、接着により固定する。この他は第1の実施形態と同様とする。
【0043】
このような第2の実施形態によれば、第1の実施形態ほどではないが、従来より電極1,2の位置決めを簡単に高精度に行なうことができる。また、ギャップ部材としての突出部50は、耐摩耗部材5の一部として誘電率の高いセラミックからなるので、センサの静電容量の変化を大きくすることができる。また、センサの製造工程において、電極1,2とギャップ部材の上面を同一面に仕上げる加工を省くことができる。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の静電容量センサによれば、製造工程において特別な治具や設備を用いずに2つの電極の位置決めを簡単に高精度に行なうことができ、製造コストを低減できるとともに、ギャップ幅の管理も精度良く行なえ、安定したセンサの性能が得られる。また、電極に一体に端子部を形成することで、製造工程で熟練を有するリード線の半田付け作業が無くなり、確実に導通をとることができる。また、外部からの振動や衝撃による接続の外れを防止でき、耐久性を向上できる。さらに部品点数を削減してセンサを安価にすることができる。さらに耐摩耗部材を設けることにより、耐久性が向上し、安定した出力を得ることができる等の優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における静電容量センサの構造を示す断面図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ同センサの電極の構造を示す斜視図である。
【図3】同センサの保持部材の構造を示す斜視図である。
【図4】同センサの耐摩耗部材の断面図である。
【図5】(a)〜(e)はそれぞれ同センサの製造工程を説明する説明図である。
【図6】第2の実施形態で耐摩耗部材に対して電極を位置決めして固定した状態を示す断面図である。
【図7】従来の静電容量センサの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,2 電極
3 保持部材
4 シールドケース
5 耐摩耗部材
11,21 電極の端子部
30 保持部材のギャップ部材としての突出部
31,32 保持部材の電極嵌合用の溝
311,321,331,341 保持部材の突起
50 耐摩耗部材のギャップ部材としての突出部
Claims (6)
- 絶縁体からなるギャップ部材を挟んで2つの電極を対向して配置し、絶縁体からなる保持部材により保持した構成を有し、所定の検査物体に対して摺動接触して前記2つの電極間の静電容量の変化を利用した所定の検出を行なう静電容量センサにおいて、
前記保持部材の上面に前記ギャップ部材として機能する突出部が形成され、前記2つの電極を前記突出部の両側面に当接させて位置決めするようにしたことを特徴とする静電容量センサ。 - 前記保持部材の上面において前記突出部の両側に2つの溝が形成され、該溝のそれぞれに前記2つの電極を嵌合することにより、前記2つの電極が前記突出部の両側面に当接して保持されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の静電容量センサ。
- 前記2つの電極の上面と前記保持部材の突出部の上面を覆う絶縁体からなる耐摩耗部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量センサ。
- 絶縁体からなるギャップ部材を挟んで2つの電極を対向して配置し、絶縁体からなる保持部材により保持した構成を有し、所定の検査物体に対して摺動接触して前記2つの電極間の静電容量の変化を利用した所定の検出を行なう静電容量センサにおいて、
前記2つの電極の上面を覆う絶縁体からなる耐摩耗部材が設けられ、該耐摩耗部材の下面には前記ギャップ部材として機能する突出部が形成され、前記2つの電極を前記突出部の両側面に当接させて位置決めするようにしたことを特徴とする静電容量センサ。 - 前記耐摩耗部材において前記検査物体の摺動方向に沿って検査物体の進入側及び退出側となる側縁部のそれぞれに10度〜40度の面取り加工を施したことを特徴とする請求項3または4に記載の静電容量センサ。
- 前記2つの電極のそれぞれに一体に端子部を形成したことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の静電容量センサ。
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