JP4646090B2 - 梳鋏 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、理美容用の梳鋏に関する。
【0002】
【従来技術】
理美容用の梳鋏は、2枚の鋏片の刃の一方を、長手方向に間隔をおいて刃先が形成された櫛刃とし、他方を平刃としたものが多く使用されている。これらの梳鋏は、定期的に刃の研磨に出され、繰り返し使用される。このような梳鋏では、平刃は櫛刃の刃先と対向する部分のみが毛髪の切断に使用されるので、これ以外の部分はほとんど摩耗しない。従って、研磨に出される梳鋏の平刃は、約半分の部分が摩耗していないまま研磨されている。
【0003】
平刃を満遍なく使用して、研磨の周期を延長しようとした梳鋏として、例えば、実公平7−18369号公報に開示されたものがある。この梳鋏は、図9および図10に示すように、櫛刃の鋏片51と平刃の鋏片52をそれぞれ軸孔53、54で支軸55に枢着するとともに、鋏片52の軸孔54を長孔として支軸55との間に遊隙56を設け、この遊隙56に、支軸55に通して鋏片52に重ねられた偏心調整板57の偏心片58を嵌め込み、鋏片52の枢着位置を位置決めするものである。互いに重ねられた各鋏片51、52と偏心調整板57は、支軸55の軸端部に設けられたねじ部に螺着されたナット59で締め付けられている。
【0004】
図9(a)に示すように、遊隙56を支軸55の後端側に開けて偏心片58を嵌め込むと、図10(a)に示すように、各鋏片51、52の先端が合致し、図9(b)に示すように、偏心調整板57の前後を反転させ、遊隙56を支軸55の先端側に開けて偏心片58を嵌め込むと、図10(b)に示すように、平刃を有する鋏片52は、鋏片51の櫛刃のピッチ分だけ先端側にずらされる。従って、図10(a)と(b)の状態でそれぞれ使用される平刃の部分が櫛刃のピッチ分だけずれ、平刃の全長が交互に使用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の梳鋏では、両鋏片の相対的な位置を2段階にしか変えられないため、摩耗を分散させるためには、両鋏片を互いに櫛刃のピッチ分だけずれた各位置で精度よく係止する必要がある。一方、この梳鋏は、支軸の前後の遊隙に偏心片を嵌め込んで両鋏片の位置決めをする構造であるため、梳鋏が使用されて、偏心片が重ねられた方の鋏片の支軸を中心とした回動が繰り返されるにつれて、支軸と偏心片との間にがたが生じやすくなる。このがたにより、両鋏片の相対的な位置が所期の位置からわずかにずれ、平刃の全長のうち、図10(a)と(b)の状態で局所的に重複して使用される部分や、全く使用されない部分が生じることがある。
【0006】
すなわち、この梳鋏は、両鋏片の相対位置が2段階しかなく、がたが生じやすい構造であるため、平刃の摩耗を滑らかに分散させることができない問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、両鋏片の相対位置を多段に、かつ精度よく変更することができる梳鋏を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明は、把手を有する第1の鋏片と第2の鋏片とが、把手と刃との間に設けられた軸孔で支軸に枢着され、これらの両鋏片の刃の少なくとも一方が櫛刃とされた梳鋏において、前記第2の鋏片に前記支軸に通された係合片を重ね、前記第2の鋏片の軸孔を鋏片の長手方向に延びる長孔とし、この鋏片の前記係合片が重ねられる側の面に、その長孔の長手方向に沿う複数の所定の位置からそれぞれ等しい距離をおいて複数の穴を設け、この穴に係合する突起を前記係合片に設け、この突起を前記複数の穴の任意の一つに嵌め込んで、前記第2の鋏片を前記第1の鋏片に対して長手方向にスライドした複数の異なる位置で係止できる構成を採用したのである。
【0009】
すなわち、係合片に突起を設け、この突起に係合する複数の穴を第2の鋏片に設け、突起を係合させる穴を変更することにより、第2の鋏片を多段にスライドし、スライドした各位置で第2の鋏片を精度よく係止し、平刃の摩耗を滑らかに分散することができる。なお、係合片の突起に係合する穴を第2の鋏片の長孔の側方に設ける場合には、長孔の長手方向に沿う所定の位置のうちの任意の2つについて、いずれの位置からも等しい距離にある1つの穴を設け、この穴を兼用して第2の鋏片を2つの異なる位置で係止することができる。
【0010】
前記係合片をばね片とし、このばね片により第2の鋏片を第1の鋏片に押圧することにより、従来の梳鋏に取り付けられている各鋏片押圧用のばね片を利用して、前記スライド位置での係止を行うことができる。
【0011】
前記第1の鋏片と第2の鋏片の刃をいずれも櫛刃とすることにより、両櫛刃の刃先のかみ合わせ量を変え、毛髪の梳き量を多段に調整することができ、梳き量の異なる梳鋏の使い分けを不要とすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図8に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1乃至図4は第1の実施形態を示す。この梳鋏は、図1に示すように、櫛刃1aを有する鋏片1と平刃2aを有する鋏片2とが、それぞれの把手1b、2bと刃1a、2aとの間に設けられた軸孔3、4で支軸部材5に枢着されている。鋏片1の櫛刃1aは、その刃先幅と等しい間隔で等ピッチに形成されている。
【0013】
図2に示すように、鋏片2には板ばね6が重ねられ、各鋏片1、2の軸孔3、4に通された支軸部材5の軸5aが、板ばね6の孔7にも通されて、互いに重ねられた各鋏片1、2と板ばね6が、軸5aの先端部に設けられたねじに螺着されたナット8で締め付けられている。支軸部材5の頭部5bは、長円形で、軸5a側に向けて細くなるテーパ状に形成され、同じ形状に形成された鋏片1の軸孔3に嵌め込まれて回り止めされている。
【0014】
前記鋏片2の軸孔4は鋏片2の長手方向に延びる長孔になっており、鋏片2の板ばね6が重ねられる側の面には、その長手方向に後述する所定の間隔をおいて3つの穴9a、9b、9cが設けられている。板ばね6の一端には、各穴9a、9b、9cに係合する突起10が設けられ、ねじを緩めて鋏片2を長手方向にスライドさせ、突起10を各穴9a、9b、9cのいずれかに嵌め込むのみで鋏片1に対する鋏片2の長手方向位置が位置決めできるようになっている。
【0015】
従って、両鋏片1、2の長手方向相対位置を3段階に変更することができ、かつ、この位置決めが軸5aとの摺動がない部分で行われるので、梳鋏の使用によって鋏片2が繰り返し回動されてもがたが生じにくく、鋏片2をスライドした各位置で精度よく係止することができる。
【0016】
前記鋏片2の各穴9a、9b、9cは、軸孔4の長手方向に沿って予め設定した支軸部材5の軸5aが通される3つの位置からそれぞれ等距離の位置に設けられており、その間隔は、軸5aが通される3つの位置の間隔と等しく、櫛刃1aの刃先幅の2/3の長さになっている。このため、図3(a)に示すように、板ばね6の突起10を鋏片2の軸孔4に最も近い穴9aに嵌め込むと、図4(a)に示すように、各鋏片1、2の先端が合致し、図3(b)、(c)に示すように、突起10を中央の穴9b、または軸孔4から最も遠い穴9cに嵌め込むと、それぞれ図4(b)、(c)に示すように、鋏片2の平刃2aは、櫛刃1aの刃先幅の2/3の長さずつ先端側にずらされる。
【0017】
従って、各スライド位置で毛髪の切断に使用される平刃2aの部分は、隣接するスライド位置で使用される部分とある程度の幅をもって重なり合い、局所的に重複して使用される部分や、全く使用されない部分が生じることなく、摩耗が平刃2a全体に滑らかに分散される。
【0018】
図5および図6は第2の実施形態を示す。この梳鋏は、両鋏片11、12が、いずれも櫛刃11a、12aを有するものである。櫛刃11aと12aの形状は同じであり、それぞれ刃先幅と等しい間隔で等ピッチに形成されている。鋏片12の各穴13a、13b、13cの間隔は櫛刃11aの刃先幅の1/3の長さに形成されており、その他の部分の構成は第1の実施形態の梳鋏と同じである。
【0019】
図5(a)に示すように、板ばね14の突起15を鋏片12の穴13aに嵌め込んだときに、図6(a)に示すように、両櫛刃11a、12aの刃先が全幅にわたって互いにかみ合わされる。図5(b)に示すように、突起15を穴13bに嵌め込むと、図6(b)に示すように、鋏片12の櫛刃12aは刃先幅の1/3の長さだけ先端側にずらされて、両櫛刃11a、12aのかみ合わせ量が刃先幅の2/3となる。また、図5(c)に示すように、突起15を穴13cに嵌め込むと、図6(c)に示すように、鋏片12の櫛刃12aは刃先幅の2/3の長さだけ先端側にずらされて、両櫛刃11a、12aのかみ合わせ量が刃先幅の1/3となる。
【0020】
従って、鋏片12のスライド位置を変えるのみで、両櫛刃11a、12aの刃先のかみ合わせ量を3段階に変えて、毛髪の梳き量を調整することができ、梳き量の異なる梳鋏を使い分ける必要がない。
【0021】
図7および図8は第3の実施形態を示す。この梳鋏は、図7に示すように、第2の鋏片2の軸孔4の後端側に、千鳥状に3つの孔16a、16b、16cが設けられている。これらの各孔16a、16b、16cの位置は、図8に示すように、軸孔4の長手方向に沿って予め設定した支軸部材5の軸5aが通される3つの位置から、それぞれ異なる方向に、板ばね6の孔7の中心から突起10までの長さに等しい距離Lをおいた位置となっている。軸5aが通される3つの位置およびその他の部分の構成は第1の実施形態の梳鋏と同じである。なお、各孔16a、16b、16cは、加工のしやすさを考慮して鋏片2を貫通する孔としたが、第1および第2の実施形態の梳鋏と同様に、板ばね6に重ねられる側から形成され、鋏片2を貫通しない穴としてもよい。
【0022】
上述した各実施形態では、第2の鋏片を長手方向にスライドした3つの異なる位置で係止するようにしたが、係止する位置は2つもしくは4つ以上としてもよく、係止する位置の間隔も必ずしも等間隔でなくてもよい。また、櫛刃は、その刃先幅と等しい間隔で等ピッチに形成されたものとしたが、刃先幅や刃先間の間隔が長手方向に変化するものでもよい。さらに、櫛刃の刃先形状もフラットに限らず、凹状であってもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、この発明は、一方の鋏片に重ねた係合片に突起を設け、この突起に係合する複数の穴を一方の鋏片に設け、突起を係合する穴を変更することにより、一方の鋏片を他方の鋏片に対して多段にスライドし、スライドした各位置で一方の鋏片を精度よく係止することができるようにしたので、平刃の摩耗を滑らかに分散させて、研磨周期を延長することができる。
【0024】
前記係合片をばね片とし、このばね片により一方の鋏片を他方の鋏片に押圧することにより、従来の梳鋏に取り付けられている各鋏片押圧用のばね片を利用して、各スライド位置での係止を行うことができる。
【0025】
また、鋏片をいずれも櫛刃とすることにより、両櫛刃の刃先のかみ合わせ量を変えて毛髪の梳き量を多段に調整することができ、梳き量の異なる梳鋏の使い分けを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の梳鋏を示す正面図
【図2】図1の梳鋏の要部の構造を示す分解斜視図
【図3】a、b、cは、それぞれ図1の梳鋏の両鋏片の相対位置変更方法を説明する要部拡大断面図
【図4】a、b、cは、それぞれ図1の梳鋏の平刃の使用状態の変化を示す要部拡大正面図
【図5】a、b、cは、それぞれ第2の実施形態の梳鋏の両鋏片の相対位置変更方法を説明する要部拡大断面図
【図6】a、b、cは、それぞれ図5の梳鋏の両櫛刃のかみ合わせ量の変化を示す要部拡大正面図
【図7】第3の実施形態の梳鋏の要部の構造を示す分解斜視図
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った矢視図
【図9】a、bは、それぞれ従来の梳鋏の両鋏片の相対位置変更方法を説明する要部拡大断面図
【図10】a、bは、それぞれ図9の梳鋏の平刃の使用状態の変化を示す要部拡大正面図
【符号の説明】
1 鋏片
1a 櫛刃
1b 把手
2 鋏片
2a 平刃
2b 把手
3、4 軸孔
5 支軸部材
5a 軸
5b 頭部
6 板ばね
7 孔
8 ナット
9a、9b、9c 穴
10 突起
11 鋏片
11a 櫛刃
12 鋏片
12a 櫛刃
13a、13b、13c 穴
14 板ばね
15 突起
16a、16b、16c 孔
51、52 鋏片
53、54 軸孔
55 支軸
56 遊隙
57 偏心調整板
58 偏心片
59 ナット
Claims (2)
- 把手を有する第1の鋏片と第2の鋏片とが、把手と刃との間に設けられた軸孔で支軸に枢着され、これらの両鋏片の刃の少なくとも一方が櫛刃とされた梳鋏において、前記第2の鋏片に前記支軸に通されたばね片を重ね、このばね片により第2の鋏片を第1の鋏片に押圧するようにし、前記第2の鋏片の軸孔を鋏片の長手方向に延びる長孔とし、この鋏片の前記ばね片が重ねられる側の面に、その長孔の長手方向に沿う複数の所定の位置からそれぞれ等しい距離をおいて複数の穴を設け、この穴に係合する突起を前記ばね片に設け、この突起を前記複数の穴の任意の一つに嵌め込んで、前記第2の鋏片を前記第1の鋏片に対して長手方向にスライドした複数の異なる位置で係止できるようにしたことを特徴とする梳鋏。
- 前記第1の鋏片と第2の鋏片の刃がいずれも梳刃とされた請求項1に記載の梳鋏。
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