JP4644812B2 - ゼオライトを用いた抗菌剤 - Google Patents
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Description
かかる構成の抗菌剤によると、前記酸素活性化金属錯体の有する酸素活性化機能を利用して抗菌作用を発揮することができる。該抗菌剤は、前記酸素活性化金属錯体がゼオライトのユニットセルに内包されていることにより、周辺物質にダメージを与え難く、使い勝手が良い。また、前記光還元性金属錯体は、光エネルギーの供給を受けて自らは酸化される一方、電子(e-)を放出することができる。このため、酸素活性化金属錯体に加えて光還元性金属錯体を有する上記抗菌剤によると、より優れた抗菌性能が実現され得る。
なお、ここで「抗菌作用」とは、菌の発生、生育および増殖のうち少なくとも一つを防止または抑制する作用をいう。ここでいう「抗菌」の概念には、例えば、殺菌、滅菌、除菌、制菌等と称される一種または二種以上の機能が包含され得る。
なお、上記ゼオライトの含有する金属(以下、「ゼオライトに含まれる金属」ということもある。)は、典型的には、イオン交換可能な形態で(例えば、二次イオンとして)該ゼオライトに含まれている。したがって、例えば、ゼオライト骨格の形成に参加しているアルミニウム(換言すれば、ゼオライト骨格に組み込まれているアルミニウム)は、ここでいう「ゼオライトに含まれる金属」の概念には含まれない。一方、イオン交換可能な形態でゼオライトに含まれているアルミニウム(例えば、イオン交換等によって事後的にゼオライトに導入されたアルミニウムイオン)は、上記「ゼオライトに含まれる金属」であり得る。
ここに開示される抗菌剤を構成するゼオライトは、また、周期表の4〜12族(例えば10〜12族)に属する一種または二種以上の金属を含有する(典型的には、上述のようにイオン交換可能な陽イオンとして含有する)ものであり得る。上記「周期表の4〜12族に属する金属」としては、銀、銅、亜鉛、白金、パラジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、金、モリブデン、タングステン等が挙げられる。これらのうち、銀、銅、亜鉛、白金およびパラジウムからなる群から選択される一種または二種以上(例えば、これらのうちいずれか一種)の金属を含有するゼオライトを好ましく採用し得る。銀、銅および亜鉛からなる群から選択される一種または二種以上(例えば、これらのうちいずれか一種)の金属を含有するゼオライトの使用がより好ましい。該金属元素として銀を含有するか、あるいは銀と他の一種または二種以上の金属元素を含有するゼオライトが特に好ましい。なお、ここでいう周期表の族番号は、IUPACの定める1〜18の族番号表示によるものである。
なお、ここでいう「金属フタロシアニン錯体」は、該錯体を構成する配位子が置換基を有しないものに加えて、該配位子が置換基を有するものをも包含する概念であり、このことは他の金属錯体についても同様である。
上記式(1)に含まれる四つのR1は互いに同一であってもよく異なってもよい。R2,R3およびR4についても同様である。通常は、四つのR1、四つのR2、四つのR3、四つのR4がそれぞれ互いに同一である構造の金属フタロシアニン錯体が好ましい。また、R1とR4とが同一であり、かつR2とR3とが同一である構造の金属フタロシアニン錯体を好ましく採用することができる。上記式(1)中のR1〜R4の全てが同一である構造の金属フタロシアニン錯体であってもよい。かかる構造の金属フタロシアニン錯体は、高い対称性を有することから安定性のよいものであり得る。また、目的とする錯体を効率よく(例えば、精度よく)合成するのに適している。
上記式(2)に含まれる二つのR5は互いに同一であってもよく異なってもよい。R6,R7およびR8についても同様である。通常は、二つのR5、二つのR6、二つのR7、二つのR8がそれぞれ互いに同一である金属サロフェン錯体が好ましい。このような金属サロフェン錯体は、目的とする錯体を効率よく(例えば、精度よく)合成するのに適している。
また、ユニットセルの有する細孔の入口部のサイズに対して、該入口部のサイズよりも大きなサイズの酸素活性化金属錯体が内包されていることが好ましい。すなわち、該酸素活性化金属錯体が、前記入口部を実質的に通過できない(該入口部を経由してユニットセルの細孔に出入りすることができない)サイズであることが好ましい。このようなサイズの関係を満たすゼオライトと酸素活性化金属錯体との組み合わせは、該錯体がユニットセルの内部(細孔内)に保持された状態を安定して維持するのに適している。例えば、該抗菌剤に施され得る種々の処理および/または該抗菌剤の種々の使用状況において、ユニットセルに内包された酸素活性化金属錯体が該ユニットセルの細孔から抜け出す(ユニットセルから失われる)事象が起こり難い。したがって、かかる抗菌剤は良好な耐久性を示すものであり得る。また、該抗菌剤が周辺材料にダメージを与える事象を、より高いレベルで防止することができる。
目的とする酸素活性化金属触媒の中心金属となり得る金属元素(例えばコバルト)が適当量担持されたゼオライトを用意する。この金属担持ゼオライトを1,2−ジシアノベンゼン(フタロニトリル)と混合する。該混合物を、例えば封管中で、例えば200〜300℃で3〜24時間(典型的には4〜12時間)加熱することにより、ユニットセル内に金属フタロシアニン錯体を生成させる(合成する)ことができる。このようにして、ユニットセルに金属フタロシアニン錯体が内包されたゼオライトを得ることができる。ここで、ユニットセルに内包させる金属フタロシアニン錯体の量は、例えば、ゼオライトに担持させておく金属元素(酸素活性化金属触媒の中心金属を構成する金属元素)の量を調節することによって制御することができる。上記金属担持ゼオライトと1,2−ジシアノベンゼンとの混合比は、該ゼオライトに担持されている金属(例えばコバルト)のイオン換算で、該金属イオンに対して4当量以上の1,2−ジシアノベンゼンを含む比率とすることが適当である。
また、金属フタロシアニン錯体以外の酸素活性化金属錯体についても、上記方法に準じた操作方法を適用することにより、該錯体をゼオライトのユニットセルに内包させることができる。例えば、無置換の金属サロフェン錯体をユニットセルに内包させる場合には、配位子前駆体としてサリチルアルデヒドおよびフェニレンジアミンを使用し、中心金属に対応する金属元素を担持したゼオライトと上記配位子前駆体とを含む混合物を封管中で加熱または加熱還流するとよい。これらの配位子前駆体は、フェニレンジアミン1モルに対してサリチルアルデヒドを概ね2モル(例えば、1.5〜2.5モル)の割合で使用することが好ましい。また、置換基を有する金属サロフェン錯体をユニットセルに内包させる場合には、対応する置換基を有するサリチルアルデヒドおよび/またはフェニレンジアミンを使用すればよい。
ここに開示される抗菌剤は、上記酸素活性化金属錯体の一種または二種以上をゼオライトのユニットセルに内包することに加えて、このような光還元性金属錯体の一種または二種以上がゼオライトに保持されたものであり得る。かかる構成の抗菌剤は、該抗菌剤に光エネルギーが供給されない状況または光エネルギーの供給が少ない状況においても、上記酸素活性化金属錯体の機能によって良好な抗菌性能を発揮するものであり得る。また、該抗菌剤に光エネルギーが供給される状況では、光還元性金属錯体および酸素活性化金属錯体の双方の機能を効果的に利用して、さらに高い抗菌性能を発揮するものであり得る。
上記式(3)に含まれる三つのビピリジン配位子は、互いに同一であってもよく異なってもよい。また、各ビピリジン配位子に含まれる二つのR21は互いに同一であってもよく異なってもよい。R22,R23およびR24についても同様である。例えば、上記式(3)に含まれる六つのR21、六つのR22、六つのR23、六つのR24がそれぞれ互いに同一である構造の金属トリスビピリジン錯体を好ましく採用し得る。
また、ユニットセルの有する細孔の入口部のサイズに対して、該入口部のサイズよりも大きなサイズの光還元性金属錯体が該ユニットセルに内包されていることが好ましい。すなわち、該光還元性金属錯体が、前記入口部を実質的に通過できない(該入口部を経由してユニットセルの細孔に出入りすることができない)サイズであることが好ましい。このようなサイズの関係を満たすゼオライトと光還元性金属錯体との組み合わせは、該錯体がユニットセルの内部(細孔内)に保持された状態を安定して維持するのに適している。例えば、該抗菌剤に施され得る種々の処理および/または該抗菌剤の種々の使用状況において、ユニットセルに内包された光還元性金属錯体が該ユニットセルの細孔から抜け出す(ユニットセルから失われる)事象が起こり難い。したがって、かかる構成の抗菌剤は、より耐久性に優れたものであり得る。
このように一つのユニットセルに一分子の光還元性金属錯体を内包するのに適したゼオライトと、該ゼオライトのユニットセルの形状(細孔の入口部および/または内部のサイズ)に応じたサイズの光還元性金属錯体とを組み合わせた構成の抗菌剤が好ましい。例えば、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、EMT、SAPO−37およびベリロリン酸塩Xからなる群から選択されるゼオライトと、上記一般式(3)においてピリジン環に結合している基(R21〜R24)がそれぞれHおよびFから選択されるいずれかである(例えば、該式中に含まれる全てのR21〜R24がHである、すなわち無置換の)金属トリスビピリジン錯体との組み合わせが好ましい。
上記イオン交換に使用する溶液としては、例えば、上記所望の金属の硝酸塩、過塩素酸塩、塩酸塩等から選択される一種または二種以上が水に溶解してなる水溶液を好ましく採用することができる。この溶液における金属塩の濃度は、目標とする担持量に応じて適宜設定され得るが、通常は概ね0.1〜5質量%(例えば、概ね0.5質量%)程度の濃度とすることが適当である。かかる溶液にゼオライトを分散させて、室温で数時間(例えば3時間)程度攪拌することにより、該ゼオライト中の陽イオンと溶液中の金属イオンとのイオン交換を行うことができる。その後、得られた固体を適当な溶媒(例えば水およびアセトン)で洗浄し、常法により乾燥する(例えば100℃程度の温度で乾燥する)ことにより、該ゼオライトに所望の金属を含ませる(担持させる)ことができる。
ここに開示される抗菌剤の他の好ましい一態様では、該抗菌剤の有するユニットセルの個数のうち凡そ1/30〜1/2(より好ましくは、凡そ1/20〜1/4)個の割合で、該ユニットセルに酸素活性化金属錯体が内包されている。また、該抗菌剤の有するユニットセルの個数のうち凡そ1/30〜1/2(より好ましくは、凡そ1/20〜1/4)個の割合で、該ユニットセルに光還元性金属錯体が内包されている抗菌剤が好ましい。
該抗菌剤に含まれる酸素活性化金属錯体と光還元性金属錯体とのモル比は、例例えば、酸素活性化金属錯体1モルに対する光還元性金属錯体の含有量が凡そ0.1〜10モル(より好ましくは凡そ0.2〜3モル、さらに好ましくは凡そ0.5〜1.5モル)となる比率であり得る。
このような割合でゼオライト、酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体を含有する抗菌剤によると、より高い抗菌性能が実現され得る。
上記除去対象物質は、例えば、揮発性有機化合物(VOC)や、硫化水素、トリメチルアミン、酢酸、ホルムアルデヒド、ノネナール、イソ吉草酸、インドール、メルカプタン類、チオエーテル等のような悪臭物質または環境上好ましからざる(例えば有害性のある)物質から選択される一種または二種以上であり得る。上記VOCとしては、シックハウス症候群、シックスクール症候群などの影響を及ぼす可能性が高いとされている化合物、例えばホルムアルデヒド、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレンモノマー、パラジクロロベンゼン等が例示される。ここに開示される抗菌剤は、このような除去対象物質を効率よく除去(分解)するものであり得る。したがって、該抗菌剤は、例えば、抗菌性能と悪臭成分を分解する性能との双方を有する「抗菌消臭剤」として有効に機能し得る。したがって、ここに開示される抗菌剤は、他の観点として、このような抗菌消臭剤としても把握され得る。かかる抗菌剤(抗菌消臭剤)の好ましい一つの態様では、該除去対象物質を持続的に(より好ましくは常温で)効率よく分解することができる。
以下のようにして、銀イオンを含むゼオライトのユニットセルにサロフェンコバルト錯体とトリスビピリジンルテニウム錯体とが内包された構成を備える抗菌剤を製造した。
上記ルテニウム担持ゼオライトを、ルテニウムイオン換算で3当量以上(例えば3〜15当量)の2,2’−ビピリジンまたはその誘導体(本実施例では、3.5当量の2,2’−ビピリジンを使用した。)と混合して封管し、100〜200℃の温度で3〜24時間(ここでは、190℃で24時間)加熱した。得られた固体に含まれる未反応の配位子等を除去するため、ソックスレー抽出器を用いて該固体をエタノールで洗浄し、真空乾燥した。これを濃硝酸ナトリウム水溶液に懸濁して50℃前後の温度で一晩攪拌することにより、未反応の(錯体を構成しない)ルテニウムイオンをナトリウムイオンと交換することで除去した。次いで、得られた固体を水およびアセトンで洗浄し、100℃で乾燥した。このようにして、ユニットセル(ゼオライトスーパーケージ内)にトリスビピリジンルテニウム錯体が内包されたゼオライト(以下、これを「サンプルa1」ということもある。)を得た。
上記コバルト担持ゼオライトを、コバルトイオン換算で3当量以上(例えば3〜15当量)のサリチルアルデヒドまたはその誘導体(本実施例では、3.2当量の5−クロロ−2−ヒドロキシベンズアルデヒドを使用した。)を適量のエタノールに溶解させた溶液に混合した。この懸濁液を還流しながら、コバルトイオン換算で1.5当量以上(例えば1.5〜10当量)のフェニレンジアミンまたはその誘導体(本実施例では、1.6当量のフェニレンジアミンを使用した。)をエタノールに溶解した溶液を徐々に滴下し、滴下完了後さらに3時間以上(ここでは3時間)還流した。その後、得られた固体に含まれる未反応の配位子等を除去するため、ソックスレー抽出器を用いて該固体をアセトンまたはt−ブタノール(ここではt−ブタノールを使用した。)で洗浄し、真空乾燥した。これを濃硝酸ナトリウム水溶液に懸濁して50℃前後の温度で一晩攪拌することにより、未反応の(錯体を構成しない)コバルトイオンをナトリウムイオンと交換することで除去した。次いで、得られた固体を水およびアセトンで洗浄し、100℃で乾燥した。このようにして、サロフェンコバルト錯体およびトリスビピリジンルテニウム錯体がユニットセルに内包されたゼオライト(以下、これを「サンプルa2」ということもある。)を得た。
このようにして、ゼオライトのユニットセルにサロフェンコバルト錯体(上記一般式(2)におけるMがコバルト(Co)であり、R5およびR7〜R13がいずれも水素原子(H)であり、R6が塩素原子(Cl)である金属錯体)およびトリスビピリジンルテニウム錯体(上記一般式(3)におけるMがルテニウム(Ru)であり、R21〜R24がいずれも水素原子(H)である金属錯体)が内包され、かつ該ゼオライトに銀(Ag)が担持された構成の抗菌剤(以下、これを「サンプルA」ということもある。)を得た。このサンプルAの銀含有量は1質量%であった。
以下のようにして、銀イオンを含むゼオライトのユニットセルにフタロシアニンコバルト錯体とトリスビピリジンルテニウム錯体とが内包された構成の抗菌剤を製造した。
上記コバルト担持ゼオライトを、コバルトイオン換算で4当量以上(例えば4〜20当量)のフタロニトリルまたはその誘導体(本実施例では、8当量のフタロニトリルを使用した。)と混合して封管し、200〜300℃の温度で3〜24時間(ここでは、220℃で5時間)加熱した。得られた固体に含まれる未反応の配位子やゼオライト粒の外部に生成したフタロシアニン等を除去するため、ソックスレー抽出器を用いて該固体をアセトン、メタノール、ピリジン等の溶媒により洗浄し、真空乾燥した。これを濃硝酸ナトリウム水溶液中に懸濁させて50℃前後の温度で一晩攪拌することにより、未反応の(錯体を構成しない)コバルトイオンをナトリウムイオンと交換することで除去した。次いで、得られた固体を水およびアセトンで洗浄し、100℃で乾燥した。このようにして、ユニットセル(ゼオライトスーパーケージ内)にフタロシアニンコバルト錯体が内包されたゼオライト(以下、これを「サンプルb1」ということもある。)を得た。
上記ルテニウム担持ゼオライトを、ルテニウムイオン換算で3当量以上(例えば3〜15当量)の2,2’−ビピリジンまたはその誘導体(本実施例では、3.5当量の2,2’−ビピリジンを使用した。)と混合して封管し、100〜200℃の温度で3〜24時間(ここでは、190℃で24時間)加熱した。得られた固体に含まれる未反応の配位子等を除去するため、ソックスレー抽出器を用いて該固体をエタノールで洗浄し、真空乾燥した。これを濃硝酸ナトリウム水溶液に懸濁して50℃前後の温度で一晩攪拌することにより、未反応の(錯体を構成しない)ルテニウムイオンをナトリウムイオンと交換することで除去した。次いで、得られた固体を水およびアセトンで洗浄し、100℃で乾燥した。このようにして、フタロシアニンコバルト錯体およびトリスビピリジンルテニウム錯体がユニットセルに内包されたゼオライト(以下、これを「サンプルb2」ということもある。)を得た。
実施例2におけるフタロシアニンコバルト錯体の合成において、フタロニトリルに代えて同量(コバルトイオン換算で8当量)のパーフルオロフタロニトリルを使用し、その他の点については実施例2と同様にして、ユニットセルにパーフルオロフタロシアニンコバルト錯体(上記一般式(1)におけるR1〜R4がいずれもフッ素原子(F)である金属錯体)が内包されたゼオライト(以下、これを「サンプルc1」ということもある。)を得た。このサンプルc1を用いた点以外は実施例2と同様にして、ユニットセルに上記パーフルオロフタロシアニンコバルト錯体とトリスビピリジンルテニウム錯体(上記一般式(3)におけるMがルテニウム(Ru)であり、R21〜R24がいずれも水素原子(H)である金属錯体)とが内包されたゼオライト(以下、「サンプルc2」ということもある。)を得た。そして、上記で得られたサンプルc2に実施例2と同様のイオン交換処理を施した。このようにして、ゼオライトのユニットセルに上記パーフルオロフタロシアニンコバルト錯体とトリスビピリジンルテニウム錯体(上記一般式(3)におけるMがルテニウム(Ru)であり、R21〜R24がいずれも水素原子(H)である金属錯体)とが内包され、かつ該ゼオライトに銀(Ag)が担持された構成の抗菌剤(以下、「サンプルC」ということもある。)を得た。
実施例1〜3により得られた抗菌剤(サンプルA,B,C)、該抗菌剤の製造過程で得られた錯体内包ゼオライトであって酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体を内包するが金属元素(ここでは銀)が担持されていないゼオライト(サンプルa2,b2,c2)、および、実施例1〜3において出発原料として使用したX型ゼオライト粉末(すなわち、未処理のゼオライト粉末。以下、これを「サンプルX」という。)に関し、以下の手法により抗菌性を評価した。
すなわち、常法に従って肉汁寒天培地を入れたペトリ皿を用意し、ここに各サンプルをそれぞれ約0.01gづつ散布した。それらのペトリ皿を開放状態で約24時間屋外(日陰)に放置した後、36℃で5日間培養した。その後、培地の表面を400倍の顕微鏡で観察し、サンプルXを散布したペトリ皿における菌(バクテリア等)の増殖状態を基準として、他のペトリ皿における菌の増殖の程度を評価した。その結果、サンプルXを散布したペトリ皿では顕著な菌の増殖がみられたのに対し、サンプルA,B,Cを散布したペトリ皿では菌の増殖が大幅に抑えられていた。また、金属元素担持前のサンプルa2,b2,c2についても、サンプルA,B,Cには劣るものの、サンプルXに比べて明らかに菌の増殖を抑制する効果が認められた。以上より、これらサンプルA,B,Cおよびサンプルa2,b2,c2が抗菌剤として有効に機能すること、および、サンプルA,B,Cではより高い抗菌性能が実現されることを確認した。
さらに、上記サンプルA〜C,サンプルa2〜c2およびサンプルXに関し、以下の手法によりガス浄化性能を評価した。
すなわち、同質量の各サンプルをそれぞれ同形のガラス瓶に入れ、インドールおよびノネナールを混入した空気(被処理ガス)を各ガラス瓶に導入して瓶を密閉した。それらのガラス瓶を、外光の入る室内(ただし直射日光は当たらない。)に1時間放置した。その後、各瓶の蓋を開けてその臭いを嗅ぎ、サンプルXを入れたガラス瓶の臭気を基準として、他のサンプルを入れたガラス瓶の臭気の相対的な強さを官能評価した。その結果、ゼオライトのユニットセルに酸素活性化金属錯体および光還元性金属錯体を内包し、かつ銀イオンが担持されたサンプルA,BまたはCを入れたガラス瓶については、いずれも優れた臭気低減効果が認められた。また、銀が担持されていないサンプルa2,b2,c2についても、サンプルA,B,Cには劣るものの、明らかな臭気低減効果が認められた。以上より、これらサンプルA,B,Cおよびサンプルa2,b2,c2が抗菌消臭剤として有効に機能すること、および、サンプルA,B,Cではより高い抗菌消臭性能が実現されることを確認した。
Claims (8)
- 銀、銅および亜鉛からなる群から選択される一種または二種以上の金属を含むゼオライトと、
該ゼオライトのユニットセルに内包されている酸素活性化金属錯体と、
該ゼオライトに保持されている光還元性金属錯体と、
を有し、
ここで、前記酸素活性化金属錯体はコバルト錯体であり、前記光還元性金属錯体はルテニウム錯体である、ゼオライトを用いた抗菌剤。 - 前記酸素活性化金属錯体は:
金属フタロシアニン錯体;
ビス(サリチリデン)−オルト−フェニレンジアミナト金属錯体;および、
環状テトラピロール化合物を配位子とする金属錯体;
からなる群から選択される一種または二種以上である、請求項1に記載の抗菌剤。 - 前記酸素活性化金属錯体を構成する配位子が一または二以上のフッ素置換基を有する、請求項1または2に記載の抗菌剤。
- 前記光還元性金属錯体は前記ゼオライトのユニットセルに内包されている、請求項1から3のいずれかに記載の抗菌剤。
- 前記光還元性金属錯体は、ビピリジン骨格を有する少なくとも一つの化合物を配位子とするビピリジン金属錯体である、請求項1から4のいずれかに記載の抗菌剤。
- 前記酸素活性化金属錯体1モルに対して前記光還元性金属錯体を0.1〜10モルの割合で含む、請求項1から5のいずれかに記載の抗菌剤。
- 前記ゼオライトはX型ゼオライトまたはY型ゼオライトである、請求項1から6のいずれかに記載の抗菌剤。
- 前記ユニットセルの入口部よりもサイズの大きな前記酸素活性化金属錯体が該ユニットセルに内包されている、請求項1から7のいずれかに記載の抗菌剤。
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