JP5026683B2 - ガス分解剤 - Google Patents
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[1]金属と酸素活性化金属錯体とを含むゼオライトであるガス分解剤であって、
前記酸素活性化金属錯体は、前記ゼオライトが有するユニットセルに内包されていることを特徴とするガス分解剤。
[2]前記酸素活性化金属錯体は、フタロシアニン金属錯体、ビス(サリチリデン)−オルトーフェニレンジアミジナト金属錯体および環状テトラピロール化合物を配位子とする金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種である[1]に記載のガス分解剤。
[3]前記ゼオライトは、ユニットセル内に0.1〜35質量%の酸素活性化金属錯体を内包する、[1]または[2]に記載のガス分解剤。
[4]前記ゼオライトがX型ゼオライトまたはY型ゼオライトである[1]〜[3]のいずれかに記載のガス分解剤。
[5]前記ゼオライトに含まれる金属は、銀、銅、亜鉛、白金、およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のガス分解剤。
[6]前記酸素活性化金属錯体に含まれる金属が、コバルト、鉄、マンガン、ルテニウム、チタン、バナジウム、ニッケル、銅およびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である[1]〜[5]のいずれかに記載のガス分解剤。
本発明のガス分解剤であるゼオライトは、金属と酸素活性化金属錯体とを含むゼオライトであって、前記酸素活性化金属錯体は、前記ゼオライトが有するユニットセルに内包されていることを特徴とする。
ゼオライトは、イオン交換可能な陽イオンを含む、多孔質の結晶性アルミノケイ酸塩である。なお、本発明におけるゼオライトには、従来より知られている結晶性アルミノケイ酸塩のほか、同様な結晶構造を有するメタロケイ酸塩、リン酸塩系多孔質結晶も含まれる。これら類似結晶構造を有する化学物質については2000年7月発行の書籍「ゼオライトの科学と工学」(小野嘉夫、八嶋建明著、講談社刊)に詳細な説明がされている。
ユニットセル内に酸素活性化金属錯体を含む前記ゼオライトには、一定の金属結合状態にある酸素活性化金属触媒が一定量存在している。これにより、目的ガスに対する高い活性状態を維持することができ、非常に高いガス分解性能を得ることができる。
元素分析により、ユニットセルに酸素活性化金属錯体を内包するゼオライトの炭素量および窒素量を測定すると、酸素活性化金属触媒の理論的な炭素/窒素のモル比と同程度のモル比が算出される。これにより、ゼオライトに酸素活性化金属錯体が含まれることを確認することができる。また、ゼオライト中の酸素活性化金属錯体の内包量は、元素分析によって測定された、酸素活性化金属錯体を構成する窒素量および炭素量と、酸素活性化金属錯体内包ゼオライト量から算出することができる。
ゼオライトのユニットセルの大きさは、0.3〜1.8nm程度であり、このサイズは空気中の酸素分子の大きさ(約0.3nm)や窒素分子の大きさ(約0.4nm)と同程度である。よって、ある条件下で、ユニットセル内に酸素活性化金属錯体を内含しないゼオライトに酸素分子または窒素分子を吸着させると、ゼオライトの表面だけではなく、ユニットセル内部にも酸素分子または窒素分子が吸着され、その吸着量から、ゼオライトの比表面積(単位質量当たりの表面積:単位m3/g)を算出することができる。なお、ここでの表面積とは、ゼオライトの表面だけでなく、ユニットセル内の表面も含む。この測定法によって、同じ条件で、酸素活性化金属錯体を内包しないゼオライトと内含するゼオライトの比表面積を測定すると、酸素活性化金属錯体を内包しないゼオライトでは、ユニットセル内の表面を含む値となる。一方、酸素活性化金属錯体を内包するゼオライトは、ユニットセル内に酸素活性化金属錯体が存在するため、酸素分子が入れず、吸着量がその分少なくなる。この差異によって、ゼオライトのユニットセル内に酸素活性化金属錯体が内包されていることを確認することができる。
特に、ゼオライト骨格内部のガスを分解しやすい位置に酸素活性化金属錯体が内包されたゼオライトを容易に合成できるという観点からは、X、Y型ゼオライトが好ましい。
以下に、上記一般式中のR1〜R4がすべて水素であるフタロシアニン金属錯体を使用する場合を例に取り、ゼオライトのユニットセル内にフタロシアニン金属錯体を内包させる方法を説明する。
イオン交換によって所望の金属を担持させたゼオライト、または、イオン交換前のゼオライトを、1,2−ジシアノベンゼンと混合した後に、例えば封管中で、例えば200〜300℃で4〜12時間加熱することによって、ユニットセル内にフタロシアニン金属錯体を内包したゼオライトを得ることができる。ここで、ゼオライトのユニットセルに内包されるフタロシアニン金属錯体の量は、ゼオライトと1,2−ジシアノベンゼンの混合比率を調整することにより制御することができる。また、封管中に所望のカチオンを存在させることにより(例えば、所望のカチオンを担持した原料ゼオライトを用いることにより)、所望の金属を含有するフタロシアニン金属錯体をユニットセル内に形成することができる。
金属担持ゼオライトと1,2−ジシアノベンゼンの混合比(質量比)は、ゼオライト:1,2−ジシアノベンゼン=1:0.7〜1:1.8であることが好ましい。好ましい反応条件は、200℃で4〜7時間であり、特に好ましくは200℃で4〜6時間である。なお、1,2−ジシアノベンゼンは、市販品として入手可能である。
なお、先に示した一般式中のR1〜R4のすべてが水素であるフタロシアニン金属錯体以外のフタロシアニン金属錯体を、ゼオライトのユニットセルに内包させる場合は、対応する置換基を有する置換ジシアノベンゼンを使用して、上記と同様の操作を行えばよい。
以上の説明では、ゼオライトのユニットセルに、酸素活性化金属触媒としてフタロシアニン金属錯体を内包する場合を例にとり説明したが、フタロシアニン金属錯体以外の酸素活性化金属触媒を使用する場合でも、上記方法に準じてユニットセル内に触媒を内包させることができる。
[実施例1]
ガス分解剤(フタロシアニン金属錯体内包ゼオライト(Na担持型))の調製
コバルトを1質量%担持したゼオライト100gを250℃で3時間乾燥させ、1,2−ジシアノベンゼン100gを混合した後に、ガラスチューブに封管し、200℃で6時間加熱した。放冷後、得られた固体をアセトンにより48時間、メタノールにより48時間、ピリジンにより120時間、アセトンにより24時間、ソックスレー抽出器で洗浄して、未反応の1,2−ジシアノベンゼンや、副生成物と空孔外に形成されたコバルト−フタロシアニン金属錯体を除去した。洗浄した固体を5質量%硝酸ナトリウム水溶液に入れ、12時間室温で攪拌することで、ゼオライト骨格中にフタロシアニン金属錯体とならずに残留したコバルトをナトリウムイオンで交換して取り除き、100℃で一晩乾燥させて、コバルト−フタロシアニン金属錯体内包Na担持ゼオライトを得た。上記ゼオライトのナトリウム担持量を蛍光X線測定によって確認したところ、1質量%であった。フタロシアニン金属錯体中のコバルトの量を蛍光X線測定により確認したところ、1.3質量%であった。
ガス分解剤(フタロシアニン金属錯体内包ゼオライト(Ag担持型))の調製
実施例1で得たコバルト−フタロシアニン金属錯体内包ゼオライト10gを硝酸銀0.30gを水100mlに溶解した液に入れ、一晩攪拌した。固体を濾別し、水100ml、アセトン20mlでロート上で洗浄後、100℃で一晩乾燥させてコバルト−フタロシアニン金属錯体内包ゼオライトの1質量%銀イオン交換体を得た。ゼオライトの銀イオン担持量は、蛍光X線測定によって確認した。フタロシアニン金属錯体中のコバルトの量を蛍光X線測定により確認したところ、0.9質量%であった。
ガス分解剤(フタロシアニン金属錯体内包ゼオライト(Cu担持型))の調製
実施例1で得たコバルト−フタロシアニン金属錯体内包ゼオライト10gを硝酸銅(II)(4水和物)0.28gを水100mlに溶解した液に入れ、一晩攪拌した。固体を濾別し、水100ml、アセトン20mlでロート上で洗浄後、100℃で一晩乾燥させてコバルト−フタロシアニン金属錯体内包ゼオライトの1質量%銅イオン交換体を得た。ゼオライトの銅イオン担持量は、蛍光X線測定によって確認した。フタロシアニン金属錯体中のコバルトの量を蛍光X線測定により確認したところ、1.0質量%であった。
ガス分解剤(フタロシアニン金属錯体内包ゼオライト(Zn担持型))の調製
実施例1で得たコバルト−フタロシアニン金属錯体内包ゼオライト10gを硝酸亜鉛(6水和物)0.32gを水100mlに溶解した液に入れ、一晩攪拌した。固体を濾別し、水100ml、アセトン20mlでロート上で洗浄後、100℃で一晩乾燥させてコバルト−フタロシアニン金属錯体内包ゼオライトの1質量%亜鉛イオン交換体を得た。ゼオライトの亜鉛イオン担持量は、蛍光X線測定によって確認した。フタロシアニン金属錯体中のコバルトの量を蛍光X線測定により確認したところ、1.0質量%であった。
コバルト−フタロシアニン金属錯体の調製
1,2−ジシアノベンゼン100gを、ガラスチューブに封管し、200℃で6時間加熱した。放冷後、得られた固体をアセトンで48時間、メタノールで48時間、ピリジンで120時間、アセトンで24時間ソックスレー抽出器で洗浄して未反応の1,2−ジシアノベンゼンや副生成物を取り除き、コバルト−フタロシアニン金属錯体を得た。
表面にコバルト−フタロシアニン錯塩を吸着したゼオライトの調製
ゼオライトを、フタロシアニンのアルコール溶液に浸漬し、これを100℃で乾燥させた後、更に0.5Nの塩化コバルトの溶液(アルコール+水)に再び浸漬した後に、150℃で乾燥させ、コバルト−フタロシアニン金属錯体を表面に吸着したゼオライトを調製した。
(1)ガス吸着法
柴田化学器械工業製BET式比表面積測定装置P−700を使用して、実施例1〜4および比較例2で調製したゼオライト、ならびに、X型ゼオライト(未処理品)の酸素ガス吸着量から比表面積を算出した。結果を表1に示す。
実施例1で得られたゼオライトについて、パーキンエルマー社製元素分析装置2400−IIにて、炭素量と窒素量のモル単位の割合を測定したところ、炭素が2.30%、窒素が0.57%であった。フタロシアニンの理論的な炭素/窒素のモル比が4.0に対して、測定値から計算した比率は、実施例1で得られたゼオライトでは、4.03であった。これにより、実施例1で得られたゼオライトにフタロシアニン金属錯体が含まれていることが確認できた。実施例2〜4で得られたゼオライトについても、同様の方法で、ゼオライトにフタロシアニン金属錯体が含まれていることを確認した。また、元素分析の測定値から、実施例1〜4で得られたゼオライト中のフタロシアニン金属錯体内包量を算出したところ、いずれも3.3質量%であった。
インドール20g/l、ノネナール10g/lのエタノール溶液を調製し、それぞれ70μlをガス調製容器に添加し、7lの初期ガスを用意した。このガスを2時間放置した後、6lのテドラーバックに試料1gとともに充填し、3時間後のガス濃度をガスクロマトグラフ/マススペクトル測定装置によって測定し、ピーク面積により、初期ガスの濃度に対する減少率を算出した。100%とは、対象ガスが検出されず、すべて分解されたことを意味する。
表2および表3からわかるように、実施例1〜4のゼオライトは、比較例1(フタロシアニン金属錯体)および比較例2(フタロシアニン金属錯体が表面に吸着されたゼオライト)と比べて、顕著に優れたガス分解能を有していた。
ガス分解剤(ビス(サリチリデン)−オルト−フェニレンジアミナト金属錯体内包ゼオライト(Ag担持型))の調製
コバルトを1質量%担持したゼオライト100gを250℃で3時間乾燥させた後、オルト−フェニレンジアミン50gを溶解させた乾燥エタノール1Lに加え、1時間、加熱・還流した。一旦加熱を中止し、サリチルアルデヒド110gを懸濁液に加えた後、再び加熱して2時間還流した。懸濁液を濾過して得られた固体をジクロロメタンにより48時間、アセトンにより24時間、ソックスレー抽出器で洗浄して、未反応のオルト−フェニレンジアミンやサリチルアルデヒド、空孔外に形成されたコバルト−ビス(サリチリデン)−オルト−フェニレンジアミナト錯体を除去した。洗浄した固体を5質量%硝酸ナトリウム水溶液に入れ、12時間室温で攪拌することで、ゼオライト骨格内にビス(サリチリデン)−オルト−フェニレンジアミナト錯体とならずに残留したコバルトイオンをナトリウムイオンで交換して取り除き、100℃で一晩乾燥させて、コバルト−ビス(サリチリデン)−オルト−フェニレンジアミナト錯体内包Na担持ゼオライトを得た。
Claims (6)
- 金属と酸素活性化金属錯体とを含むゼオライトであるガス分解剤であって、
前記酸素活性化金属錯体は、前記ゼオライトが有するユニットセルに内包されていることを特徴とするガス分解剤。 - 前記酸素活性化金属錯体は、フタロシアニン金属錯体、ビス(サリチリデン)−オルトーフェニレンジアミジナト金属錯体および環状テトラピロール化合物を配位子とする金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のガス分解剤。
- 前記ゼオライトは、ユニットセル内に0.1〜35質量%の酸素活性化金属錯体を内包する、請求項1または2に記載のガス分解剤。
- 前記ゼオライトがX型ゼオライトまたはY型ゼオライトである請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分解剤。
- 前記ゼオライトに含まれる金属は、銀、銅、亜鉛、白金、およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス分解剤。
- 前記酸素活性化金属錯体に含まれる金属が、コバルト、鉄、マンガン、ルテニウム、チタン、バナジウム、ニッケル、銅およびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス分解剤。
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