JP4642985B2 - 田植機植付部の安全クラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、設定トルク以上の負荷がかかると動力の伝達を断絶するための安全クラッチの構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、安全クラッチは動力伝達経路の途中に配設されて、設定以上のトルクがかかると動力の伝達を断ち、大きな負荷により部品が破損することを防止するようにしている。該安全クラッチはトルクリミッタ等が使用され、クラッチ爪とクラッチ爪が咬合して、一方のクラッチ爪をバネで付勢して、設定以上の力がかかると、バネの付勢力に抗してクラッチ爪が離れて動力の伝達ができないようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば田植機の植付装置等においては、石を噛んだりしてメカロックした場合等にギア等の破損を防止するため、一定以上の負荷が掛かると伝動が自動的に切れるよう構成した安全クラッチが伝動機構の適所に設けられているが、例えば植付チェンケース内のクラッチ軸上に、複数のカラーや止め輪、クラッチ爪等よりなる比較的大容量の安全クラッチを配置している。ところが、近年小型軽量の植付装置が望まれるようになり、安全クラッチは安価で、組立性が良好であって、小型でコンパクトなものであることが望まれるのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
田植機の植付部(15)に設定トルク以上の負荷が掛かると、動力の伝達を断絶するための田植機用植付部の安全クラッチ(S)において、該安全クラッチ(S)をベベルギア(50)、固定側クラッチ爪(39)、摺動側クラッチ爪(43)及びバネ(44)で構成し、該固定側クラッチ爪(39)を円筒状に構成し、該円筒状の外周部をベアリング(42)を介して、植付伝動フレーム(20)を構成する伝動パイプ(55)に対して回転自在に支持し、該ベアリング(42)に嵌合した状態の固定側クラッチ爪(39)の、クラッチ爪の部分とは逆の軸部(39a)が、前記ベベルギア(50)の側に突出した部分の外周部にスプラインを形成し、該スプラインに、該ベベルギア(50)の内周部に形成したスプラインボス(50a)を嵌装し、該円筒状に構成した固定側クラッチ爪(39)の内周部に、植付伝動フレーム(20)内に配置した植付駆動軸(92)の端部の、小径の取付部(92b)を嵌装し、該植付駆動軸(92)の大径の取付部(92a)の外周部のスプライン部には、該摺動側クラッチ爪(43)の円筒状の軸部(43a)をスプライン嵌合し、前記大径の取付部(92a)の外周部のスプライン部には、バネ(44)のバネ押さえ(45)を嵌装し、該バネ押さえ(45)と摺動側クラッチ爪(43)の間の植付駆動軸(92)上に該バネ(44)を嵌装し、該バネ(44)により摺動側クラッチ爪(43)を他方の固定側クラッチ爪(39)との咬合側へ付勢し、前記植付駆動軸(92)の取付部(92b)の端部を、円筒状の固定側クラッチ爪(39)の内周部に遊嵌し、該取付部(92b)の端部が、固定側クラッチ爪(39)の軸部(39a)から突出した部分に、前記押圧バネ(44)の弾性力を受動する部材であるピン(37)を係合嵌入し、該ピン(37)の長さは、前記ベベルギア(50)のスプライン加工されたスプラインボス(50a)の内周径よりも小さく、平面視において該ベベルギア(50)とピン(37)は少なくとも一部(H)を重複すべく構成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0007】
図1は本発明に係る田植機の全体的な構成を示した側面図であり、図2は同じく駆動系を示す平面図である。
【0008】
図3は本発明に係る田植機の植付伝動フレームの平面図であり、図4は同じく平面断面図である。
【0009】
図5は植付伝動フレーム右前部を示す平面断面図であり、図6は植付伝動フレーム左前部を示す平面断面図でであり、図7は植付伝動軸に設けられた安全クラッチを示す図である。
【0010】
まず、本発明に係る安全クラッチを適用した田植機の全体構成について図1乃至図4を用いて説明する。なお、本実施例において本発明に係る安全クラッチを具備するのは乗用田植機であるが、これに限定されるものではなく、歩行式の田植機やその他の安全クラッチを具備する機械にも適応することができる。
【0011】
図1に示す如く、乗用田植機は走行部1の後部に昇降リンク機構27を介して植付部15が配置され、該走行部1は機体フレーム3前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にフロントアクスルケース5を介して前輪6を支持させると共に、後部にリアアクスルケース7を介して後輪8を支持している。そして、前記エンジン2はボンネット9に覆われ、該ボンネット9の両側には予備苗載台30が配設され、該ボンネット9上部には燃料タンク4が設けられて、該燃料タンク4の後部には操向ハンドル14が配置されている。該操向ハンドル14の下部左右両側方に主変速レバー、副変速レバー、アクセルレバー及び操作パネル等が具備される操作部11が集中配置されている。また、走行部1の機体フレーム3を覆う機体カバー12は、ボンネット9後部から座席13前部に渡ってメインステップ10を形成し、該メインステップ10後部では高く盛り上がってその上に座席13が設けられている。前記メインステップ10の前方であってボンネット9の左右両側に、前部ステップ9aがボンネット9と一体的に形成されていて、該前部ステップ9aとメインステップ10の間にはクラッチペダル32及びブレーキレペダル33等が配設されている。
【0012】
また、前記植付部15は、苗載台16や植付爪17・17・・やセンターフロート34やサイドフロート35等から構成されており、前記苗載台16は前高後低に配設して、苗載台16の下部は下ガイドレール18、前面の上部は上ガイドレール19によって左右往復摺動自在に支持し、該下ガイドレール18および上ガイドレール19は植付伝動フレーム20でフレーム等を介して支持されている。そして、植付伝動フレーム20では伝動軸91より植付駆動軸92L・92Rを後方へ突出して、該植付駆動軸92L・92R後部に植付アーム軸93・93を左右方向に設け、該植付アーム軸93・93を中心として一方向に回転する回転ケース22・22・・を植付アーム軸93・93の左右両側に一つずつ配置し、該回転ケース22・22夫々に植付爪17・17・・・を二つずつ配置している。また、前記植付伝動フレーム20の前部にローリング支点軸23を介してヒッチ24を設け、トップリンク25及びロワーリンク26を含む昇降リンク機構27を介して走行部1後部に前記ヒッチ24を連結し、前記昇降リンク機構27を昇降駆動させる昇降シリンダ28をロワーリンク26に連結したリフトアーム87に連結して、植付部15を昇降できるようにしている。そして、前記前輪6・6及び後輪8・8を走行駆動して移動すると同時に、左右に往復摺動可能な苗載台16から一株分の苗を植付爪17・17・・によって取り出し、連続的に苗植え作業を行うように構成している。
【0013】
前記ミッションケースMは、機体フレーム3の前後中央部下部より機体フレーム3後端部の後下方まで延出して前後方向に長く形成され、側面視において前高後低に配されている。また、前記ミッションケースM前部に走行変速機構を内装して変速部51が形成され、該変速部51の左右側面にフロントアクスルケース5・5が固設され、該フロントアクスルケース5・5の左右端部より下方に向かって車軸ケース53・53が固設され、該車軸ケース53・53の下端部に前輪6・6を固設する車軸54が軸支されている。前記ミッションケースM後端部には、軸芯を左右方向に持つ筒状のリアアクスルケース7・7が形成され、該リアアクスルケース7・7内に車軸56・56が軸支され、該車軸56・56の左右端部に後輪8・8が固設され、従来の伝動ケースをなくした構成としている。よって、前後のフロントアクスルケース5・5とリアアクスルケース7・7とを同一のミッションケースMに一体的に形成され、ミッションケースMが各車輪6・6・8・8を支持するフレーム部材の一部を構成している。
【0014】
また、前記ミッションケースMの変速部51より側方に入力軸60が突出され、該入力軸60に固設するプーリ61に前記ベルト48を介して動力が伝達され、エンジン2の動力を伝達するベルト48と、ミッションケースMとが略直線上に配され、各車輪6・6・8・8に動力を伝達している。また、前記ミッションケースMの後部からPTO軸31が突出し、該PTO軸31の駆動がPTO伝動軸62及びユニバーサルジョイント部90を介して植付部15の入力軸を兼ねた入力ベベルギア49に伝達されている。なお、前記ユニバーサルジョイント部90は、前後端部にユニバーサルジョイントが形成されているので、PTO伝動軸62に対して植付部15への入力軸を兼ねた入力ベベルギア49の軸芯が右側にずれ、さらに昇降リンク機構27の昇降駆動によって植付部15が上下又は平行に移動されても、動力を伝達することができる。
【0015】
次に、植付部15の植付伝動フレーム20の構成について説明する。図3及び図4に示す如く、本実施例において植付部15を四条植え式としており、従って回転ケースと二本の植付爪からなるロータリ植付装置21・21・・を四組備え、計八本の植付爪17・17・・を有している。前記植付爪17・17・・を回転駆動させる機構を備えた回転ケース22に動力を伝達する植付駆動軸92L・92Rを内装する伝動パイプ55L・55Rが左右に一本ずつ配設されている。該伝動パイプ55L・55R前部が十字管継手40・41を介して連結パイプ57で連結され、平面視門型の植付伝動フレーム20が形成されている。そして、該植付伝動フレーム20の門型の開放側を後方に向け、左右の開放側端部の左右両側にロータリ植付装置21・21・・が配されている。この伝動パイプ55L・55Rと連結パイプ57の内部には伝動軸等が軸支される。
【0016】
また、前記植付伝動フレーム20の、伝動パイプ55L・55Rと連結パイプ57は棒状のパイプ体で形成されており、伝動パイプ55L・55Rと連結パイプ57とは、十字管継手40・41によって連結される。該十字管継手40・41は、バルジ加工により横パイプ40a・41aと縦パイプ40b・41bで形成されている。即ち、前記伝動パイプ55L・55Rの前後端部に十字管継手40・41を連結し、前部に配した十字管継手40・41の内で一側40(本実施例において右側)は、縦パイプ40bが前後方向に配され、縦パイプ40bに伝動パイプ55R前部が同芯的に挿入され、横パイプ40aに連結パイプ57の一側が挿入されている。前部に配した十字管継手40・41のうちで他側(左側)の十字管継手41は、該十字管継手41の横パイプ41a内に連結パイプ57が同芯的に挿入され、縦パイプ41b内に左側の伝動パイプ55L前部が挿入されている。
【0017】
更に、左右の伝動パイプ55L・55R後部にも夫々十字管継手96・96を連結し、該十字管継手96・96の横パイプにロータリ植付装置21・21・・の植付アーム軸93・93が貫いて、伝動パイプ55L・55R内の植付駆動軸92R・92Lに固設のベベルギア70・70より、ベベルギア76・76を介して方向を変換されて該植付アーム軸93・93に動力を伝達し、更に、十字管継手96・96の横パイプの両側に配するロータリ植付装置21・21・・に動力を伝達するようにしている。即ち、伝動パイプ55L・55Rの後部に配した十字管継手96・96にはロータリ植付装置21・21・・を駆動する入力軸が貫入して、回転ケース22へ動力を伝達し、植付爪17・17・・を駆動している。なお、前記植付駆動軸92R・92L後端のベベルギア70・70は減速部となっており、該ベベルギア70・70とベベルギア76・76の歯数を調整して、ロータリ植付装置21・21・・・の植付アーム軸93・93の回転速度を調整すべく構成されている。
【0018】
前記植付伝動フレーム20前部には、上部支持フレーム98や苗載台16の横送り機構を支持する支持部が設けられている。連結パイプ57の右端前部には、前上方向きに横送り軸支持アーム65が突出し、左側の伝動パイプ55L前部に固設の十字管継手41の左端には横送り変換ケース支持アーム64が前記横送り軸支持アーム65と平行状に突出し、更に、連結パイプ57の左右中央部より前方にローリング支点軸23を嵌合する筒体67が固設されている。また、連結パイプ57両端の十字管継手41・40に、上部支持フレーム98が固設されるブラケット66・66が固設されている。
【0019】
そして、前記上部支持フレーム98は、後述する横送り軸47の前方を通過し上方に延出し、上部支持フレーム98上部を用いて前述した上ガイドレール19が支持され、植付伝動フレーム20と上部支持フレーム98とが一体的に連結され、植付部15を支持する剛性の高いフレームを構成している。また、前記横送り変換ケース支持アーム64の外側側面には横送り変換ケース46が固設され、該横送り変換ケース支持アーム64前部と横送り軸支持アーム65前部に夫々ベアリングを介して回動自在に横送り軸47が軸支され、該横送り軸47左端部は横送り変換ケース46内に挿入されて、ここに伝動軸91左端に固設のギア133と噛合するギア134が固設されている。そして、前記横送り軸47は連結パイプ57と平行状に配されている。
【0020】
次に、植付伝動フレーム20への動力伝達構成について説明する。前述の如く、植付伝動フレーム20内部には、伝動軸等が軸支されている。右側の伝動パイプ55Rの前方に固設された十字管継手40内で植付部15への入力軸を兼ねた入力ベベルギア49が回動自在に支承され、左右の伝動パイプ55L・55Rには夫々植付駆動軸92L・92Rが貫入して該植付駆動軸92L・92R前端のベベルギア50・50が十字管継手41・40内でベアリングを介して回動自在に支承されている。そして、連結パイプ57には伝動軸91が貫入し、該伝動軸91の左右両端に固設のベベルギア74・72が連結パイプ57左右両端に固設の十字管継手41・40内でベアリングを介して回動自在に支承されている。また、左右の伝動パイプ55L・55R後部の十字管継手96・96には植付アーム軸93・93が左右方向に貫入されている。
【0021】
前記入力ベベルギア49は、ユニバーサルジョイント部90及びPTO伝動軸62を介してPTO軸31の一端が連結され、前述したPTO軸31の動力が伝達される。そして、入力ベベルギア49に伝動軸91右端に固設するベベルギア72が噛合され、該伝動軸91を駆動している。さらに、植付駆動軸92Rの前部にはベベルギア50が固設され、連結パイプ57の伝動軸91右端に固設するベベルギア72に噛合され、植付駆動軸92Rに動力を伝達している。
【0022】
また、前記伝動軸91左端部にもベベルギア74が固設され、左側の伝動パイプ55L内の植付駆動軸92L前部に固設するベベルギア50に噛合して、伝動軸91から植付駆動軸92Lに動力が伝達される。そして、前記連結パイプ57内の伝動軸91の左端は十字管継手41より側方に突出され、横送り変換ケース46内に挿入され、伝動軸91左端部にギア133が固設されている。前記横送り変換ケース46に挿入された横送り軸47の左端にもギア134が固設され、該ギア134とギア133が噛合して、横送り軸47に動力を伝達する苗載台駆動機構が構成される。また、前記横送り軸47には滑り子摺動用の溝47aが穿設されており、横送り軸47の外周面上に滑り子受け137が遊嵌され、該滑り子受け137内に付設されている滑り子138が溝47aに嵌入され、横送り軸47の回動に伴われて滑り子138が溝47a内を摺動し、滑り子受け137が横送り軸47上を左右に往復動する。該滑り子受け137後部には図示せぬ連結部を介して苗載台16が連結され、横送り軸47の回動によって苗載台16が左右往復動される。
【0023】
上述の如く左右の植付駆動軸92L・92Rに伝達された動力は、左右の伝動パイプ55L・55R後部に固設された十字管継手96・96内で、植付駆動軸92L・92R後端部に固設するベベルギア70・70及びこれに噛合するベベルギア76・76を介して植付アーム軸93・93に動力が伝達され、十字管継手96・96側部に配するロータリ植付装置21・21・・・21・・を駆動し、植付爪17・17・・を回転し、苗の植付けを行っている。
【0024】
ここで、本発明に係る安全クラッチSについて図5乃至図7を用いて説明する。前記安全クラッチSは、図5及び図6に示す如く、左右の植付駆動軸92L・92Rに夫々同一のものが設けられている。従って、ここではそのうち片方の安全クラッチSについて詳細に説明する。本実施例に係る安全クラッチSは、植付伝動フレーム20に入力され、植付駆動軸92L・92Rに伝達された動力によってロータリ植付装置21・21が駆動されるときに、該植付駆動軸92L・92Rに異常な負荷が掛かったときに自動的に植付駆動軸92L・92Rへの動力の伝達を断絶するものである。
【0025】
安全クラッチSは植付伝動軸92L・92R前端のべベルギア50・50の背面に位置し、植付伝動フレーム20の前部左右の十字管継手内40・41にその一部が貫入した状態に設けられている。該安全クラッチSは固定側クラッチ爪39、及び該摺動側クラッチ爪43を付勢するための摺動側クラッチ爪押圧弾性部材であるバネ44等で構成されており、複数のカラーや止め輪、クラッチ爪等よりなる比較的大容量の、従来機の安全クラッチと比して大幅に部品点数が削減されている。そして、植付伝動軸92L・92R前端のべベルギア50・50の背面に位置することで更なるコンパクト化を実現している。
【0026】
図5及び図7に示す如く、植付駆動軸92R(92L)の前端には、ベベルギア等を嵌装するための大径と小径の取付部(92a・92b)が延設されていて、該取付大径部92aはその外周にスプラインが加工されている。前記取付大径部92aに摺動側クラッチ爪43の円筒状の軸部43aが摺動自在、かつ、相対回転不能にスプライン嵌合されて、植付駆動軸92R(92L)及び摺動側クラッチ爪43は一体となって同期して回動する。そして、同じく植付駆動軸92R(92L)の取付大径部92a上であって摺動側クラッチ爪43の後方(小径取付部92bと反対側)にバネ押さえ45が嵌装されている。該バネ押さえ45と前記摺動側クラッチ爪43の間の植付駆動軸92R(92L)上にはバネ44が嵌装されていて、摺動側クラッチ爪43は前方(咬合側)へ付勢されている。
【0027】
また、ベベルギア50内周部にはスプラインボス50aが成形加工されており、固定側クラッチ爪39の円筒状の軸部39aにスプラインを形成してベベルギア50がスプライン嵌合され、これらは一体となって回動する。従って、ベベルギア50と固定側クラッチ爪39は、ベベルギア50と固定側クラッチ爪39を連結する部材を設けたり、溶接加工したりせずとも、スプライン嵌合することでこれらを連結できたので、連結部材の部品点数を削減し組立工程を単純化している。前記固定側クラッチ爪39は、該固定側クラッチ爪39の軸部の外周上においてベアリング42を介して伝動パイプ55R(55L)に回動自在に支持されている。従って、重量物である安全クラッチSを備えた植付駆動軸92R(92L)が高速回転しても、該植付駆動軸92R(92L)の振れを前記ベアリング42及び伝動パイプ55R(55L)により抑制することができるので、植付駆動軸92R(92L)はぶれることなく滑らかに回転できるのである。
【0028】
そして、ベベルギア50を嵌装した固定側クラッチ爪39の軸芯部39aに植付駆動軸92R(92L)の取付小径部92bが回転自在に遊嵌して、固定側クラッチ爪39と摺動側クラッチ爪43が咬合した状態で、該植付駆動軸92L・92Rの取付小径部92bの先端にピン37が嵌装され、固定側クラッチ爪39上にベベルギア50を外嵌する。前記ピン37の長さは、ベベルギア50のスプライン加工された軸芯部50aの径よりも小さく、平面視においてベベルギア50とピン37が一部重複するよう構成されている(H)。従って、ピン37の抜け止めの役割を果たす別部材を設けずとも、ベベルギア50がその役割を果たして、ここでも安全クラッチSの部品点数の削減に寄与している。
【0029】
上述の固定側クラッチ爪39と摺動側クラッチ爪43とが噛合することにより、入力ベベルギア49から伝動軸91端に固設のベベルギア72を介して植付駆動軸92Rのベベルギア50が回動し、植付駆動軸92Rに動力が伝達される。或いは、入力ベベルギア49と噛合する伝動軸91端に固設のベベルギア72が回動し、そして、該伝動軸91他端に固設のベベルギア74と噛合する植付駆動軸92L前端のベベルギア50が回動して、植付駆動軸92Lに動力が伝達される。そして、ロータリ植付装置21に異常が発生して植付駆動軸92L・92Rに設定値以上の負荷が掛かった場合には、安全クラッチSがOFFの状態となって植付駆動軸92L・92Rに動力が伝達されない状態となる。
【0030】
即ち、安全クラッチSは、固定側クラッチ爪39を植付駆動軸92L・92Rに回転自在に遊嵌させるとともに、該固定側クラッチ爪39に対向して摺動側クラッチ爪43を植付駆動軸92L・92Rにスプライン嵌合して、固定側クラッチ爪39に摺動側クラッチ爪43を押しつけた状態となっていて、伝動トルクが一定以下の場合は、両クラッチ爪39・43が噛合して植付駆動軸92L・92Rへ動力が伝達される。しかし、摺動側クラッチ爪43は夫々の傾斜面で動力を授受するようになっており、伝動トルクが一定以上になると、バネ44の弾性力に抗して摺動側クラッチ爪43が後方へ移動され、植付駆動軸92L・92Rへ動力が伝達されなくなる。従って、ロータリ植付装置21に異常が発生した場合は自動的に植付駆動軸92L・92Rへの動力の伝達が断絶され、異常な状態でロータリ植付装置21を駆動することを防止できるのである。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
【0032】
請求項1に記載の如く、田植機の植付部(15)に設定トルク以上の負荷が掛かると、動力の伝達を断絶するための田植機用植付部の安全クラッチ(S)において、該安全クラッチ(S)をベベルギア(50)、固定側クラッチ爪(39)、摺動側クラッチ爪(43)及びバネ(44)で構成し、該固定側クラッチ爪(39)を円筒状に構成し、該円筒状の外周部をベアリング(42)を介して、植付伝動フレーム(20)を構成する伝動パイプ(55)に対して回転自在に支持し、該ベアリング(42)に嵌合した状態の固定側クラッチ爪(39)の、クラッチ爪の部分とは逆の軸部(39a)が、前記ベベルギア(50)の側に突出した部分の外周部にスプラインを形成し、該スプラインに、該ベベルギア(50)の内周部に形成したスプラインボス(50a)を嵌装し、該円筒状に構成した固定側クラッチ爪(39)の内周部に、植付伝動フレーム(20)内に配置した植付駆動軸(92)の端部の、小径の取付部(92b)を嵌装し、該植付駆動軸(92)の大径の取付部(92a)の外周部のスプライン部には、該摺動側クラッチ爪(43)の円筒状の軸部(43a)をスプライン嵌合し、前記大径の取付部(92a)の外周部のスプライン部には、バネ(44)のバネ押さえ(45)を嵌装し、該バネ押さえ(45)と摺動側クラッチ爪(43)の間の植付駆動軸(92)上に該バネ(44)を嵌装し、該バネ(44)により摺動側クラッチ爪(43)を他方の固定側クラッチ爪(39)との咬合側へ付勢し、前記植付駆動軸(92)の取付部(92b)の端部を、円筒状の固定側クラッチ爪(39)の内周部に遊嵌し、該取付部(92b)の端部が、固定側クラッチ爪(39)の軸部(39a)から突出した部分に、前記押圧バネ(44)の弾性力を受動する部材であるピン(37)を係合嵌入し、該ピン(37)の長さは、前記ベベルギア(50)のスプライン加工されたスプラインボス(50a)の内周径よりも小さく、平面視において該ベベルギア(50)とピン(37)は少なくとも一部(H)を重複すべく構成したので、従来に比べて構成部品点数を少なく、コンパクトに構成することができ、コストダウンに寄与しているのである。
【0033】
また、前記安全クラッチを構成する固定側クラッチ爪をベアリングを介して植付伝動フレームに支持されるべく構成したので、安全クラッチを具備した植付駆動軸が高速回転したとしても、ベアリング及び植付伝動フレームで支持されているため振れが抑制されて、該植付駆動軸はぶれることなく滑らかな回転駆動を維持するのである。
【0034】
また、前記安全クラッチを具備する田植機の植付部において、該安全クラッチを構成するベベルギアに固定側クラッチ爪に形成したスプラインとスプライン嵌合するためのスプラインを成形加工したので、これらの部材を連結するために用いられるキー等の連結部材を必要とせず、その結果、部品点数を削減できるので組立が単純となり、また、コストダウンにも寄与するのである。
【0035】
また、前記安全クラッチを構成する摺動側クラッチ爪押圧弾性部材の弾性力を受動するピンが、平面視においてベベルギアと少なくとも一部重複すべく構成したので、ベベルギアによって前記摺動側クラッチ爪押圧弾性部材の弾性力を受動するピンの抜け止めの役割を果たすことができ、別部材を設ける必要が無いのである。
従って、ここでも安全クラッチの部品点数を削減することができ、コストダウンにも寄与するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る田植機の全体的な構成を示した側面図である。
【図2】 同じく駆動系を示す平面図である。
【図3】 本発明に係る田植機の植付伝動フレームの平面図である。
【図4】 同じく平面断面図である。
【図5】 植付伝動フレーム右前部を示す平面断面図である。
【図6】 植付伝動フレーム左前部を示す平面断面図である。
【図7】 植付伝動軸に設けられた安全クラッチを示す図である。
【符号の説明】
S 安全クラッチ
15 植付部
20 植付伝動フレーム
21 ロータリ植付装置
37 ピン
39 固定側クラッチ爪
43 摺動側クラッチ爪
42 ベアリング
44 バネ
50 ベベルギア
91 伝動軸
92L・92R 植付駆動軸
93 植付アーム軸
Claims (1)
- 田植機の植付部(15)に設定トルク以上の負荷が掛かると、動力の伝達を断絶するための田植機用植付部の安全クラッチ(S)において、該安全クラッチ(S)をベベルギア(50)、固定側クラッチ爪(39)、摺動側クラッチ爪(43)及びバネ(44)で構成し、該固定側クラッチ爪(39)を円筒状に構成し、該円筒状の外周部をベアリング(42)を介して、植付伝動フレーム(20)を構成する伝動パイプ(55)に対して回転自在に支持し、該ベアリング(42)に嵌合した状態の固定側クラッチ爪(39)の、クラッチ爪の部分とは逆の軸部(39a)が、前記ベベルギア(50)の側に突出した部分の外周部にスプラインを形成し、該スプラインに、該ベベルギア(50)の内周部に形成したスプラインボス(50a)を嵌装し、該円筒状に構成した固定側クラッチ爪(39)の内周部に、植付伝動フレーム(20)内に配置した植付駆動軸(92)の端部の、小径の取付部(92b)を嵌装し、該植付駆動軸(92)の大径の取付部(92a)の外周部のスプライン部には、該摺動側クラッチ爪(43)の円筒状の軸部(43a)をスプライン嵌合し、前記大径の取付部(92a)の外周部のスプライン部には、バネ(44)のバネ押さえ(45)を嵌装し、該バネ押さえ(45)と摺動側クラッチ爪(43)の間の植付駆動軸(92)上に該バネ(44)を嵌装し、該バネ(44)により摺動側クラッチ爪(43)を他方の固定側クラッチ爪(39)との咬合側へ付勢し、前記植付駆動軸(92)の取付部(92b)の端部を、円筒状の固定側クラッチ爪(39)の内周部に遊嵌し、該取付部(92b)の端部が、固定側クラッチ爪(39)の軸部(39a)から突出した部分に、前記押圧バネ(44)の弾性力を受動する部材であるピン(37)を係合嵌入し、該ピン(37)の長さは、前記ベベルギア(50)のスプライン加工されたスプラインボス(50a)の内周径よりも小さく、平面視において該ベベルギア(50)とピン(37)は少なくとも一部(H)を重複すべく構成したことを特徴とする田植機植付部の安全クラッチ。
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