JP4641742B2 - 高耐久性エマルジョン及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐汚染性、柔軟性、耐水性、耐候性、耐久性、顔料分散性、光沢保持性、密着性、防錆性、耐透水性に優れた塗膜を形成し得る高耐久性アクリル系エマルジョンに関する。具体的には、塗料、建材の下地処理材または仕上げ材、接着剤、紙加工剤、または織布、不織布の仕上げ材として有用であり、特に、コンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリートなどの無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材などの各種下地に対する塗料または建築仕上げ材として、複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイントなどの合成樹脂エマルジョンペイントとして、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料として有用な高耐久性エマルジョンに関する。
乳化重合により得られる水性エマルジョンは、常温あるいは加熱下で乾燥形成した被膜が比較的良好な耐久性を示すことから、水性塗料用の樹脂として多く用いられているが、屋外や紫外線に長期間曝露された場合には、艶の低下、変色、膨れなど変質の問題がある。そのため長期の耐久性が必要とされる場合には、溶剤系アクリルシリコーン樹脂などの溶剤系塗料が使用されてきた(たとえば、特許文献1)。しかし最近の環境衛生性、作業安全性や低臭気などの重視から、これら溶剤系塗料に代わり得る高耐久性の水系塗料の出現が切望されるようになった。
本願発明者らは、先に、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に開示されたごとく、乳化剤にスルホン酸基、スルホネート基または硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体を用いて改良された耐水性を付与し、また特定のシリコーン構造を有する変性剤を用いてシリコーン変性した高耐久性のアクリル系エマルジョンを提案した。そしてこの新規なエマルジョンは、従来のアクリル系エマルジョンに比べて大幅に耐久性が改善されたものである。
しかし、より耐久性能を向上させるためには、アルコキシラン、ポリアルコキシシロキサン、アルコキシシリル基含有単量体等によるシリコーン変性量を増加させる技術があるが、ポリアルコキシシロキサンは、一般的に行われる乳化重合では水媒体中での安定性が不充分であり、乳化重合によりエマルジョン粒子中に導入することは困難であった。その解決法として例えば、特許文献5には、ポリジメチルシロキサンを含有した水溶液を高圧ホモジナイザーで乳化させ重合する方法を、また特許文献6ではポリアルコキシポリシロキサンを含む水溶液を高圧ホモジナイザーで乳化させて重合する方法が開示されている。
またエマルジョンの放置安定性及び塗膜の耐候性等を向上させるために、特許文献7ではポリアルコキシポリシロキサンを該ポリアルコキシポリシロキサンと反応可能な官能基を有する化合物と反応させてポリアルコキシポリシロキサン化合物を得てから、シリコーンオリゴマー及びラジカル重合性単量体と反応せしめて組成物を得る方法が開示されている。
また特許文献8ではオルガノシラン(加水分解性シラン)とラジカル重合性単量体を含有する混合物を、乳化状態で、加水分解・縮合反応及びラジカル重合する製造方法が開示され、特許文献9ではオルガノシラン(加水分解性シラン)とラジカル重合性単量体と加水分解触媒を混合して、乳化状態で、加水分解を進めたのち、エマルジョン粒子径を0.5μm以下に微細化して、ラジカル重合開始剤を加えてラジカル重合する製造方法が開示されている。
しかしながら、ラジカル重合性単量体に対し加水分解性シラン化合物、ポリアルコキシポリシロキサン等を多量に加えた系での重縮合は、加水分解性シラン化合物及びポリアルコキシポリシロキサンのアルコキシ基から多量のアルコールが副生され、乳化液が破壊されるあるいは破壊されやすい状態となる。このような状態の混合液を、水性媒体中へ導入し乳化重合する方法では、エマルジョン中に多くの凝集物を発生し易く、対策が必要とされた。そのため、一度加水分解性シラン化合物の重縮合を行った後にアルコールを除去するための蒸留処理を施し、さらにラジカル重合性単量体と重合せしめ目的とするエマルジョン樹脂を得るという複数の処理工程を重ねるなど、簡便なものではなかった。
またこれらのラジカル重合性単量体と加水分解性シラン化合物に加えて、加水分解性触媒を一括して乳化する方法では、加水分解が急速に進み、その際に生じる加水分解熱に対する冷却装置も必要となり、前記の副生アルコールの処理に加えて工業的設備の負荷が大きくなる。
また副生アルコール量及び発生する加水分解熱を低減できるポリアルコキシポリシロキサン及びその化合物にシリケートオリゴマーを反応せしめる方法では、シリコーン成分を増量できるものの、シリコーン成分がブロックポリマー化し、ミクロ的には不均一となる上、シリコーン成分の架橋度及び可撓性等の性能を付与することは困難である。
また副生アルコールの対策に加えて、加水分解性シラン化合物、ポリアルコキシポリシロキサン等を多量に加えた系での重縮合では、アルコキシ基が加水分解して生じるシラノール基が全て縮合せずに、その一部がラテックス粒子内および水相中に残存し、貯蔵安定性や機械的安定性を低下させるという問題があった。
特開平07−026155号公報 特開平08−003409号公報 国際公開第WO95−29196号パンフレット 特開平10−120724号公報 特開平05−194911号公報 特開2000−053919号公報 特開2001−172340号公報 特開2001−302920号公報 特開2002−226507号公報
本発明は、耐候性、耐汚染性、耐水性、耐クラック性に優れた塗膜を形成し、且つ重合安定性に優れた高耐久性エマルジョンの製造において、凝集物の発生を抑制でき、工業的な設備負荷が小さく処理工程の少ない製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記のような問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りのものである。
1.ラジカル重合性単量体〔A〕、シリコーンオリゴマー〔B〕及び乳化剤〔D〕からなるプレ乳化液に、加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕とを混合した後、水性媒体中において重合することを特徴とする高耐久性エマルジョンの製造方法。
2.プレ乳化液が、ラジカル重合性単量体〔A〕及びシリコーンオリゴマー〔B〕を混合溶解した溶解液、水性媒体及び乳化剤〔D〕とからなることを特徴とする上記1に記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
3.プレ乳化液に加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕とを連続的または間欠的に混合しながら、水性媒体中において重合することを特徴とする上記1又は2に記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
4.プレ乳化液に加水分解触媒〔E〕を混合した後の乳化液のpHが4.0以下であることを特徴とする上記1〜3のいずれか1つに記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
5.プレ乳化液の油滴粒子径が1.0μm以下であることを特徴とする上記1〜4のいずれか1つに記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
6.シリコーンオリゴマー〔B〕と加水分解性シラン化合物〔C〕の合計質量に対するシリコーンオリゴマー〔B〕の質量比率が、5%〜95%であることを特徴とする上記1〜5のいずれか1つに記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
7.ラジカル重合性単量体〔A〕の5質量%以上が、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体からなる群から選ばれる1種または2種以上の単量体であることを特徴とする上記1〜6のいずれか1つに記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
8.上記1〜7のいずれか1つに記載の製造方法によって得られることを特徴とする高耐
久性エマルジョン。
本発明のエマルジョン製造方法は、従来のシリコーン成分を増加させた際に重合安定性が低下し、安定に製造できなかった製造方法に対し、凝集物の発生を抑制し且つ簡便で工業的な設備負荷が小さい製造方法を提供できる。また本発明のエマルジョン製造方法は、耐候性、耐汚染性、耐水性、耐クラック性に優れた塗膜を形成できる水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
ラジカル重合性単量体〔A〕
本発明におけるラジカル重合性単量体〔A〕には、(メタ)アクリル酸エステル(本願において、アクリル酸およびメタアクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸と標記する)に代表される(メタ)アクリレート単量体を含む必要がある。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートなどがある。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどが挙げられる。(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられる。(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコールなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。又、(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなどが挙げられる。また、上記以外の具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリレート単量体は、ラジカル重合性単量体〔A〕の質量に対して好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90質量%〜100質量%用いることが好ましい。さらに本発明において、ラジカル重合性単量体〔A〕として(メタ)アクリレート単量体と混合して使用できる単量体には、アクリルアミド単量体、メタクリルアミド単量体、ビニル単量体から選ばれる、(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な少なくとも1種のコモノマーが挙げられる。
アクリルアミド単量体またはメタクリルアミド単量体としては、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、ビニル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトンなどがあり、又、シアン化ビニル単量体の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
さらにラジカル重合性単量体〔A〕として(メタ)アクリレート単量体と混合して使用できる単量体としては、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル、ブタジエン、エチレンなども挙げられる。
本発明においては、ラジカル重合性単量体〔A〕としてシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体を含むことが、特に耐久性に優れるため好ましい。シクロアルキル基の水素原子の一部が炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はエポキシ基に置換されていても良い。ラジカル重合性単量体〔A〕の5質量%以上、より好ましくは5質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上80質量%以下が、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体、或いはそれらの混合物であることが好ましい。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体、或いはそれらの混合物がラジカル重合性単量体〔A〕の5質量%以上で耐久性に優れ、80質量%以下で成膜性が良い。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体としては、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、炭素数5〜12のシクロアルキル基のエステルが好ましく、該シクロアルキルエステルは、シクロアルキル基の水素原子の一部が炭素数1〜6のアルキル基、水酸基又はエポキシ基に置換されていても良い。シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体の例として下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004641742
(式中、R1 は水素原子またはメチル基であり、R2 はシクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロドデシル基であり、これらシクロアルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基またはエポキシ基を置換基として有してもよい。)その具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3シクロヘキセンオキサイドなどを挙げることができる。
シリコーンオリゴマー〔B〕
本発明で用いるシリコーンオリゴマー〔B〕は、下記式(a)で示される加水分解性シランの縮合物であれば特に限定されない。
(R1 n −Si−(R2 4-n ・・・(a)
(式中、nは0〜3の整数であり、各R1 はそれぞれ、独立して水素、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、フェニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基又は炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれ、各R2 はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基、エチレンオキサイド基又はハロゲン原子から選ばれ、少なくとも1つはアルコキシ基である。)
本発明で用いるシリコーンオリゴマー〔B〕のより好ましいものは、下記式(1)、(2)及び(3)で表されるものである。
Figure 0004641742
Figure 0004641742
Figure 0004641742
(式中、各R1 はそれぞれ、独立して水素、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基又は炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれ、各R2 はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基又はエチレンオキサイド基から選ばれ、少なくとも1つはアルコキシ基である。mは1〜999の正の整数を表す。)
またこのシリコーンオリゴマーは、直鎖状でも、分岐を持つ構造のものでもよく、好ましいmは水相中での分散性が上がる2〜50であり、さらに好ましくは2〜20である。該シリコーンオリゴマーのアルコキシ基量は2〜50%が好ましく、より好ましくは2〜30%で、50%以上では副生するアルコールが多量に発生し、重合安定性が損なわれ、2%以下ではシリコーン成分の架橋度が低下し、耐候性向上への寄与が低下する。該シリコーンオリゴマーは市販されているものを用いてもよく、もしくは加水分解性シラン化合物を加水分解縮合して得られる化合物を用いてもよいが、その際は重合安定性を阻害するアルコールの除去処理が必要となる。
シリコーンオリゴマーの具体的な市販品としては例えば、KC−89、KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250等のメチルメトキシ基系、KR−217等のフェニルメトキシ基系、KR−9218、KR213、KR510、X−40−9227、X−40−9247等のメチル/フェニルメトキシ系(以上信越化学製 製品名) やMSE−100等のメチルメトキシ系(シリコーンワッカー社製 製品名)等があげられ、これらのシリコーンオリゴマーは単独で用いても、複数用いることもできる。
本発明の製造方法において、ラジカル重合性単量体〔A〕、シリコーンオリゴマー〔B〕及び 乳化剤〔D〕からなるプレ乳化液に加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕とを混合した後、水性媒体中において重合することにより高耐久性エマルジョンを得ることができる。
重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルション重合が挙げられるが、平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルジョンを安定的に製造する方法としては、乳化重合が好ましい。
さらに本発明の製造方法において、ラジカル重合性単量体〔A〕とシリコーンオリゴマー〔B〕を乳化する前に混合溶解した溶解液とする方法は肝要である。単にラジカル重合性単量体〔A〕とシリコーンオリゴマー〔B〕、乳化剤〔D〕及び水性媒体とを混合し、ホモミキサー等により乳化した場合は、ラジカル重合性単量体濃度が高いモノマー油滴とシリコーンオリゴマー濃度が高く、粒子径が20μm以上の油滴を生じるため、結果としてミクロ的に不均一な組成のエマルジョン粒子を形成し、さらには、成膜して得られる塗膜もミクロ的に不均一な構造となる。またシリコーンオリゴマーの分子量が大きい場合、または添加量が多い場合には、組成の不均一化がより大きく、重合中に多量の凝集物を発生することとなる。このラジカル重合性単量体〔A〕とシリコーンオリゴマー〔B〕とのミクロ的な不均一化を抑制し、均一構造とするため、本発明の製造方法においては、ラジカル重合性単量体〔A〕とシリコーンオリゴマー〔B〕を乳化する前に混合溶解した溶解液を得ることが肝要である。この溶解液中において、シリコーンオリゴマー〔B〕はラジカル重合性単量体〔A〕と均一に相溶としており、また加水分解は進行していない。この該溶解液と水性媒体及び乳化剤〔D〕を加えてホモミキサー等により乳化し、プレ乳化液を得る。しかるに、本発明において用いるシリコーンオリゴマー〔B〕としては、ラジカル重合性単量体〔A〕に溶解するメチルアルコキシ系オリゴマーや、メチルフェニルアルコキシ系オリゴマーが好ましく、相溶性の高いメチルフェニルアルコキシ系オリゴマーがより好ましい。得られるプレ乳化液は、加水分解触媒〔E〕を含まないため、中性であり、シリコーンオリゴマー〔B〕の加水分解は殆ど進行していない。従って、副生アルコールの発生量を抑制できるため、プレ乳化液の安定性を確保でき、これによって重合安定性を向上することができる。
またせん断力の高い高圧/超音波ホモジナイザー等を用いて、さらに粒子径が1μm以下の微細な油滴に乳化することで、ミクロ的な濃度均一化を促進することがより好ましい。
加水分解性シラン化合物〔C〕
本発明においては、シリコーン構造の架橋密度及び可撓性を付与するために加水分解性シラン化合物を用いることが好ましい。加水分解性シラン化合物〔C〕は、下記式(a)で表される、シリコーン構造を有するシラン(I)の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
(R1 n −Si−(R2 4-n ・・・(a)
(式中、nは0〜3の整数であり、各R1 はそれぞれ、独立して水素、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、フェニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基又は炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれ、各R2 はそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基、エチレンオキサイド基又はハロゲン原子から選ばれ、少なくとも1つはアルコキシ基である。)
特に、加水分解性シラン化合物〔C〕には、式(a)においてn=1とおいたシラン(II)の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。シラン(II)のR1 としてはメチル基、フェニル基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基が好ましく、R2 はそれぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、水酸基が好ましい。シラン(II)の好ましい具体例としては、メチルトリメトシキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を含んでいてもよい。
また、本発明において、加水分解性シラン化合物〔C〕は、環状シラン及び式(a)においてn=2とおいて得られるシラン(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これは、上記シラン(III)及び/又は環状シランを用いることにより、該シラン化合物〔C〕が形成するシリコーン重合体の架橋密度を低くし、重合体の構造が複雑になるのを防ぐことができ、これによって、高耐久性エマルジョンから提供される塗膜に可撓性を付与することができるためである。シラン(III)の具体例として、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。また環状シランとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなども用いることができる。
加水分解性シラン化合物〔C〕において、シラン(II)単独では、塗膜柔軟性に問題があるときは、上記の環状シラン類及びシラン(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種を併用することが好ましい。その量は、上記の環状シラン類及びシラン(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種に対するシラン(II)のモル比が100/1〜10/100であることが好ましく、100/1〜35/100であることがより好ましい。シラン(II)が10/100以上でシランの重合性に問題が無く、シランの低分子量物の残留は実質的に問題ない。
さらに、加水分解性シラン化合物〔C〕には、式(a)においてn=0または3とおいて得られるシラン(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでも良い。加水分解性シラン化合物〔C〕において、シラン(II)単独では、塗膜柔軟性に問題があるときは、シラン(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種を併用することが好ましい。その量は、シラン(II)の上記のシラン(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種に対するモル比が100/1〜10/100であることが好ましく、100/1〜35/100であることがより好ましい。シラン(II)が10/100以上でシランの重合性に問題が無く、シランの低分子量物の残留は実質的に問題ない。
シラン(IV)の具体例として、フェニルトリエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられる。シラン(III)またはシラン(IV)において、R1 としてはメチル基、フェニル基が特に好ましく、R2 としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、水酸基が特に好ましい。
加水分解性シラン化合物〔C〕は、上記したシラン(III)又はシラン(IV)から選ばれる少なくとも1種の化合物に加え、クロロシラン、例えばメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、ビニルクロルシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジクロロメチルシランを含むことができる。
本発明は、加水分解性シラン化合物〔C〕を用いることによって、高耐久性エマルジョンより得られるフィルムの屋外などに長期曝露における光沢保持性を改善し、始めて高度な耐候性を示すフィルムを得ることができる。上記したシラン縮合物の存在は、29SiNMR(29Si核磁気共鳴スペクトル)または1 HNMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)によって知ることができる。例えば、シラン(II)の縮合物は、29SiNMRのケミカルシフトが−40〜−80PPMにピークを示すことで同定することができる。また、シラン(IV)あるいは環状シランの縮合物は29SiNMRのケミカルシフトが−16〜−26PPMにピークを示すことで同定することができる。
本発明におけるラジカル重合性単量体〔A〕、シリコーンオリゴマー〔B〕、加水分解性シラン化合物化合物〔C〕及び加水分解触媒〔E〕の好ましい使用量は、ラジカル重合性単量体〔A〕成分と加水分解触媒〔E〕成分の合計100質量部に対し、シリコーンオリゴマー〔B〕は5〜200質量部で、5質量部以上では耐候性が向上し、200質量部以下で重合安定性が良く、また得られる塗膜の伸度が充分でクラックが生じ難く、より好ましくは5〜100質量部である。加水分解性シラン化合物〔C〕は好ましくは1〜200質量部で、1質量部以上では耐候性が向上し、200質量部以下で重合安定性が良く、より好ましくは1〜100質量部で、さらに好ましくは5〜50質量部である。50質量部以下では、副生メタノールの発生による重合安定性の低下が少ない。
さらに重合安定性を確保し、且つエマルジョンから得られる樹脂の最低造膜温度、架橋度及び可撓性を付与し、耐候性に優れ、クラックが生じ難くする上で、シリコーンオリゴマー〔B〕、及び加水分解性シラン化合物〔C〕を組み合わせて用いる場合、シリコーンオリゴマー〔B〕と加水分解性シラン化合物〔C〕の合計質量に対するシリコーンオリゴマー〔B〕質量比率が、5%から95%であることが好ましく、5%以上では加水分解性シラン化合物〔C〕による架橋度及び可撓性の付与が容易で、95%以下では重合安定性に優れ、より好ましくは5〜80%である。
乳化剤〔D〕
本発明において、乳化重合に用いる乳化剤〔D〕には、スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体のうち、少なくともいずれか一を含むことが、高度な耐水性を達成するために好ましい。ここにいうスルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつフリーのスルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。たとえば、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6または10のアリール基およびコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物であるか、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基に結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が好ましい。
本発明におけるスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸化合物の具体例として、アリルスルホコハク酸塩、たとえば、下記式(5)、(6)、(7)、(8)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004641742
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(式中、R1 は水素またはメチル基、R2 は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜19のアラルキル基等の炭化水素基、又はその一部が水酸基、カルボン酸基等で置換されたもの、もしくはポリオキシエチレンアルキルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、およびアルキレン部分の炭素が2〜4)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル基(アルキル部分の炭素数が0〜20、およびアルキレン部分の炭素数が2〜4)等のアルキレンオキサイド化合物を含む有機基であり、Aは炭素数2〜4個のアルキレン基または一部が置換されたアルキレン基であり、nは0〜200の整数であり、Mはアンモニウム、ナトリウムまたはカリウムである。)
上記式(5)及び(6)を含むものとして、例えば、エレミノールJS−2、JS−5(製品名、三洋化成(株)製)があり、上記式(7)及び(8)を含むものとして、例えば、ラテムルS−120、S−180A、S−180(製品名、花王(株)製)がある。
また、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の例として、下記式(9)〜(11)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004641742
(式中、R1 は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基であり、R2 は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはアラルキル基、R3 は水素またはプロペニル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜200の整数、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
Figure 0004641742
(式中、R1 は水素またはメチル基、R2 は炭素数8〜24のアルキル基またアシル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは0〜50の整数、mは0〜20の整数、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
Figure 0004641742
(式中、R1 は炭素数8〜30のアルキル基、R2 は水素またはメチル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、もしくは置換アルキレン基、nは0または、1〜200の整数であり、Mはアンモニウム、ナトリウム、カリウムもしくはアルカノールアミン残基である。)
上記式(9)で表されるアルキルフェノールエーテル系化合物として、例えばアクアロンHS−10(製品名、第一工業製薬(株)製)等があり、上記式(10)で表される化合物として、例えばアデカリアソープSE−1025A、SR−10N、SR−20N(製品名、旭電化工業(株)製)、上記式(11)で表される化合物として、例えばアクアロンKH−10,KH−05がある。
その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p−スチレンスルホン酸アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。スルホネート基により一部が置換されたアルキル基を有する化合物の具体例として、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミドのアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、アクリル酸スルホアルキルエステルのアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩、メタアクリル酸スルホアルキルエステルのアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。
また上記以外のスルホネート基を有する化合物の具体例として、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物が挙げられる。
硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体とは、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基を有する化合物をいう。これらのうち、硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基および炭素数6または10のアリール基からなる群より選ばれる基を有する化合物が好ましい。硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基または炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の例としては、例えば上記式(9)と(10)で表される、スルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物がある。
これらの乳化剤〔D〕として用いられるエチレン性不飽和単量体は、エマルジョン中に、エマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物として存在するか、未反応物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在するか、または、水溶性単量体との共重合物あるいは乳化剤として用いられるエチレン性不飽和単量体どうしの共重合物としてエマルジョン粒子へ吸着、あるいはエマルジョン水相中に存在している。とくにエマルジョン粒子にラジカル重合した共重合物の状態で存在する比率を高めることによって、エマルジョンより得られるフィルムの耐水性を高度なものとすることができる。
乳化剤として用いられるエチレン性不飽和単量体は、エマルジョンより得られるフィルムの熱分解ガスクロマトグラム質量分析(Py−GC−MS)により、各物質を同定することができる。他の方法として、エマルジョンの水相成分を分離した後、高速原子衝撃質量分析(FABマススペクトル)によって同定することも可能である。
本発明において、乳化剤〔D〕は、ラジカル重合性単量体〔A〕の質量に対して0.05質量%〜10質量%用いられ、好ましくは0.1質量%〜5質量%用いる。
本発明では、スルホン酸基またはスルホネート基、あるいは硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体を含む乳化剤〔D〕以外に、通常の界面活性剤を併用することもできる。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどの非反応性ノニオン型界面活性剤、アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40(製品名、旭電化工業(株)製)などのα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン、またはアクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50(製品名、第一工業製薬(株)製)などのポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルなどの反応性ノニオン型界面活性剤といわれる、エチレン性不飽和単量体と共重合可能なノニオン型界面活性剤などを併用することができる。
上記の界面活性剤の使用量は、ラジカル重合性単量体〔A〕の質量に対して、アニオン型界面活性剤については好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下であり、非反応性ノニオン型界面活性剤および反応性ノニオン型界面活性剤については、2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。この範囲で使用すると、耐水性良好なフィルムが形成される。
加水分解触媒〔E〕
さらに本発明において、加水分解触媒〔E〕としては、ラジカル重合性カルボン酸単量体から選ばれる、(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な少なくとも1種のコモノマーが挙げられる。これらラジカル重合性カルボン酸単量体は、加水分解性シランの加水分解反応および縮合反応を促進させる触媒として作用し、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそのモノエステル、フマル酸およびそのモノエステル、並びにマレイン酸およびそのモノエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
本発明において、エマルジョン製造中の凝集物を少なく抑えるための乳化方法として、以下の2つの方法を挙げることができるが、ただしこれらに限定されるものではない。
第1の乳化方法として、ラジカル重合性単量体〔A〕、及びシリコーンオリゴマー〔B〕とを混合溶解した溶解液とし、該溶解液、水性媒体及び乳化剤〔D〕とからなる混合液がホモミキサー等によりプレ乳化液(a)とすることが好ましい。また任意にさらに水、重合開始剤を加えてプレ乳化液(a)とすることができる。
第1の乳化方法と比較して、ラジカル重合性単量体〔A〕、シリコーンオリゴマー〔B〕、水性媒体及び乳化剤〔D〕とを同時に、または逐次添加して混合した後に乳化する場合は、ホモミキサー等による乳化では、特にシリコーンオリゴマー〔B〕の分散性が低く、エマルジョン製造中に多量の凝集物を生じてしまう。本発明の技術の特徴であるラジカル重合性単量体〔A〕、及びシリコーンオリゴマー〔B〕とを混合溶解した溶解液とした後、該溶解液、水性媒体及び乳化剤〔D〕とからなる混合液を乳化することで、シリコーンオリゴマー〔B〕の分散性を飛躍的に向上することが可能となり、エマルジョン製造中の凝集物を少なく抑えることができる。
第2の乳化方法として、ラジカル重合性単量体〔A〕、及びシリコーンオリゴマー〔B〕とを混合溶解した溶解液とし、該溶解液、水性媒体及び乳化剤〔D〕とからなる混合液を、高圧ホモジナイザーまたは超音波ホモジナイザー等の高せん断力のかかる撹拌機によりプレ乳化液(a)とするのが好ましい。また任意にさらに水、重合開始剤を加えてプレ乳化液(a)とすることができる。
第1の方法に加えてさらに高せん断力のかかる撹拌機による乳化のため、乳化液滴径は1μm以下となり、ラジカル重合性単量体〔A〕、及びシリコーンオリゴマー〔B〕をより均一に分散することができ、エマルジョン製造中の凝集物を少なく抑えることができる。
高圧ホモジナイザーとしては、EmulsiFlex(製品名、AVESTIN 製)、H3シリーズ、HC3 シリーズ、HC5 シリーズ(製品名、三丸機械工業(株)製)等が挙げられ、超音波ホモジナイザーとしては、SONIFEIRシリーズ(製品名、BRANSON 製)、USシリーズ、RUS シリーズ(製品名、日本精機製作所(株)製)等が挙げられる。
この第1及び第2の乳化方法では、ラジカル重合性単量体〔A〕、及びシリコーンオリゴマー〔B〕とを混合溶解した溶解液とし、該溶解液、水性媒体及び乳化剤〔D〕からなる混合液が、ホモミキサーまたは高せん断力のかかる撹拌機により乳化して得られるプレ乳化液(a)は、加水分解触媒〔E〕が存在していないため、中性であり、この時点でシリコーンオリゴマー〔B〕の加水分解は殆ど進行していない。よってアルコールの副生も殆ど生じないため、プレ乳化液(a)の安定性は損なわれず、かつ発生する加水分解熱量もないためプレ乳化液(a)の昇温対策も不要となる。
本発明において、エマルジョン製造中の凝集物を少なく抑え、且つ重合安定性に優れたエマルジョンを得るためのプレ乳化液(a)と加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕の水性媒体中で重合されている反応系への添加方法として、以下の2つの方法を挙げることができるが、ただしこれらに限定されるものではない。
第1の添加方法として、加水分解性シラン〔C〕は、第1及び第2の乳化方法により得られるプレ乳化液(a)とは別に、加水分解性シラン〔C〕と水性媒体及び乳化剤〔D〕の一部とを使用し、ホモミキサー等の撹拌機により乳化したプレ乳化液(b)とすることができる。プレ乳化液(b)は中性であるため、加水分解性シラン化合物〔C〕が加水分解を起こし難く、副生アルコールは生じないが、加水分解性シラン化合物自体が乳化状態を破壊するため、1時間程度この乳化液状態を保つのが難しい。
従ってプレ乳化液(b)は、反応系への導入の直前に乳化しながら、反応系へ導入する方法が挙げられる。
また加水分解触媒〔E〕は、水性媒体と乳化剤〔D〕の一部とを使用し、ホモミキサー等の撹拌機により乳化したプレ乳化液(c)とすることができる。もしくは加水分解触媒〔E〕と水性媒体の一部とを使用し、加水分解触媒水溶液(d)とすることもできる。
これらのプレ乳化液(b)とプレ乳化液(c)または加水分解触媒水溶液(d)とを混合すると加水分解が進行し、副生アルコールを生じ、乳化状態を破壊するため、1時間程度この乳化液状態を保つのが難しい。従ってプレ乳化液(a)、(b)及び(c)または加水分解触媒水溶液(d)の反応系への導入方法は特に限定されないが、水性媒体中において重合している反応系へ添加する直前に乳化及び混合することが好ましく、水性媒体中において重合している反応系へ連続的または間欠的に、逐次添加することがさらに好ましい。
第2の添加方法として、第1及び第2の乳化方法により得られるプレ乳化液(a)と加水分解性シラン化合物〔C〕と、プレ乳化液(c)または加水分解触媒〔E〕と水性媒体の一部とを使用した加水分解触媒水溶液(d)を混合した後の添加方法は特に限定されないが、水性媒体中において、重合されている反応系へ連続的または間欠的に逐次添加することが好ましい。
加水分解性シラン化合物〔C〕を別の位置からプレ乳化液(a)とは混合せずに、水性媒体中で重合されている反応系へ導入された場合、加水分解性シラン化合物〔C〕は重合中の高分子化されたエマルジョンへ直接作用し、エマルジョンの一部を凝集させてしまい、多量の凝集物を発生させてしまう。プレ乳化液(a)と加水分解性シラン化合物〔C〕と、プレ乳化液(c)または加水分解触媒水溶液(d)とを反応系へ導入する直前に混合した後、水性媒体中で重合されている反応系へ導入すると、加水分解性シラン化合物〔C〕がプレ乳化液(a)とプレ乳化液(c)または加水分解触媒水溶液(d)ともに反応系へ拡散し、加水分解も混合後から開始し、副生アルコールの発生も平行して生じるため、水性媒体中での急激なアルコールの増加は起こらないため、エマルジョン中に凝集物を発生させないと考えられる。
本発明において、エマルジョン製造中の凝集物を少なく抑え、且つ重合安定性に優れたエマルジョンを得るためのプレ乳化液(a)と加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕の混合方法として、以下の方法を挙げることができるが、ただしこれらに限定されるものではない。
第1及び第2の乳化方法により得られるプレ乳化液(a)と加水分解性シラン〔C〕またはプレ乳化液(b)と、プレ乳化液(c)または加水分解触媒水溶液(d)の混合方法としては、混合時、激しく攪拌すると、加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕とが同一液滴粒子化し、さらに均一組成の液滴粒子化することで、加水分解性シラン〔C〕が急激に加水分解し、アルコール等の発生によりプレ乳化液(a)の乳化状態が破壊されてしまう。また加水分解性シラン〔C〕も乳化液の表面張力を低下させ、乳化状態を破壊してしまう。
従って混合時、プレ乳化液(a)と加水分解性シラン〔C〕とプレ乳化液(c)または加水分解触媒水溶液(d)の混合方法としては緩やかな攪拌とすることが好ましく、具体的には加水分解性シラン〔C〕は、平均粒径で10μm以上の乳化状態が好ましく、さらに好ましくは加水分解性シラン〔C〕の平均粒径で100μm以上の乳化状態に留めることがさらに好ましい。
本発明においてプレ乳化液(a)と加水分解性シラン〔C〕とプレ乳化液(c)または加水分解触媒水溶液(d)の具体的な混合方法としては、スタティックミキサー、連続密閉式分散・乳化機等が挙げられ、またY字管の出口末端へ金属網を通過させて混合してもよい。例えばスタティックミキサーとしては、スタティックミキサーN10シリーズ、N16シリーズ、N60シリーズ(製品名、ノリタケ(株)製)等が挙げられ、連続密閉式分散・乳化機としては、125L、275L(製品名、Silverson Machines,Inc. 製)、T.K.パイプラインホモミキサー(製品名、特殊機化工業(株)製)、T.K.ホモミックラインミキサー(製品名、特殊機化工業(株)製)等が挙げられ、これらを利用する場合は、撹拌回転数をできるだけ抑えて使用することも可能である。またその他混合方法としては、他Y字管の出口末端へ金属網、ラシヒリングあるいは沸石等を充填する方法が挙げられる。混合方法としては連続密閉式分散・乳化機、Y字管の出口末端へ金属網、ラシヒリングあるいは沸石等を充填する方法が好ましい。混合時の温度としては60℃以下、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。前記条件を満たさない場合には、ラジカル重合性単量体乳化液の酸性あるいは塩基性によって多くの加水分解性シラン化合物が加水分解を起こし、乳化液を破壊し、乳化液は単量体層部と水層部とに分離を生じてしまう。その結果、重合中の反応系では多くの凝集物を発生してしまう。
本発明のエマルジョンは、例えば、乳化重合、すなわちラジカル重合性単量体のラジカル重合による乳化重合と、加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合反応による乳化重合を同時に水性媒体中で行うことにより得られる。ここにいう水性媒体としては、反応系へ導入されるものであって、主に水が用いられるが、炭素数1〜3の低級アルコールまたはアセトンなどの水に可溶な溶媒を水に添加したものも含む。この際添加する水以外の溶媒の量はエマルジョン中に20質量%以下であることが好ましい。ここでは乳化液へ使用する水性媒体は、水に可溶な溶媒量は好ましくは水性媒体の5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは水だけである。この量を超えると、プレ乳化液(a)の乳化状態が破壊され、重合安定が不良となってしまう。
本発明において、第1及び第2の乳化方法により得られるプレ乳化液(a)と加水分解性シラン〔C〕またはプレ乳化液(b)と、プレ乳化液(c)または加水分解触媒水溶液(d)とを混合した後の反応系のpHは限定されるものでないがpH4.0以下で重合を実施することにより、加水分解性シランの縮合反応が速やかに起こり、乳化重合後に縮合反応が進むことを抑制できるため、製品としての貯蔵安定性が良く、反応系のpHが4.0以下であることが好ましく、より好ましくはpH1.5以上3.0以下で実施される。
本発明において、紫外線吸収剤および/または光安定剤をエマルジョン中に含有させることは、高耐候性を付与する上で好ましく、エマルジョンに含有させる方法としては、紫外線吸収剤及び/または光安定剤を乳化重合時に存在させることが好ましい。紫外線吸収剤および/または光安定剤を成膜助剤などと混合して後添加した場合、分散性に劣り、得られた塗膜の粒子界面に集中して存在するため、降雨などにより溶出し、長期の耐久性の向上が認められない。紫外線吸収剤および/または光安定剤は、ラジカル重合性単量体〔A〕の質量に対して0.1質量%〜5質量%用いることが好ましい。又、紫外線吸収剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のもの、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のものを用いることもできる。また、紫外線吸収剤と光安定剤を併用すると、その高耐久性エマルジョンを用いて皮膜を形成した際に、皮膜が特に耐候性に優れるため好ましい。
本発明における紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系から選ばれる少なくとも1種、光安定剤として、ヒンダードアミン系から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。耐久性の優れたシリコーン変性アクリル系エマルジョンと紫外線吸収能が高い、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤と組み合わせることで、相乗効果により卓越した耐久性を示す。ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどがある。ラジカル重合性ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤として具体的には、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−トリエトキシ)ベンゾフェノンなどがある。本発明において使用できるベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN1130)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN900)などがある。ラジカル重合性ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、製品名:RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2’’−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:CGL−104)などがある。
本発明において使用できるトリアジン系紫外線吸収剤として具体的には、TINUVIN400(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。本発明において使用できるヒンダードアミン系光安定剤としては、塩基性が低いものが好ましく、具体的には塩基定数(pKb)が8以上のものが好ましい。具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、TINUVIN123(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。ラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤として具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどがある。
本発明における乳化重合は、ラジカル重合触媒として、熱または還元性物質などによってラジカル分解してエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こさせることができ、水溶性または油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを有利に使用することができる。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)など挙げることができるが、加水分解性シランの加水分解反応および縮合反応を促進させるための触媒としても効果のある過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。ラジカル重合触媒の量としては、ラジカル重合性単量体〔A〕の質量に対して通常0.05質量%〜1質量%を用いることができる。
通常、重合反応は常圧下、65〜90℃の重合温度で行うことが好ましいが、モノマーの重合温度における蒸気圧などの特性に合わせ、高圧下でも実施することができる。重合時間としては、導入時間と、導入後の熟成(cooking)時間がある。導入時間は、各種原料を反応系へ同時に導入する場合は通常数分であり、各種原料を反応系へ逐次導入する場合は重合による発熱が除熱可能な範囲で反応系へ逐次導入するため、最終的に得られるエマルジョン中の重合体濃度によっても異なるが、通常10分以上である。導入後の熟成(cooking)時間としては、少なくとも10分以上であることが好ましい。この重合時間以下では、各原料がそのまま残留したり、加水分解性シランが縮合せずに加水分解物のまま残留してしまう恐れがある。なお、重合速度の促進、および70℃以下での低温での重合が望まれるときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。さらに、分子量を調整するために、ドデシルメルカプタンなどの連鎖移動剤を任意に添加することも可能である。
本発明におけるシリコーン変性では、乳化重合終了後、成膜時の硬化触媒として、例えばジブチルすずジラウレート、ジオクチルすずジラウレート、ジブチルすずジアセテート、オクチル酸すず、ラウリン酸すず、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、テトラブチルチタネートなどの有機酸の金属塩、n−ヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどのアミン化合物を、本発明の高耐久性エマルジョンへ添加することができる。
なおこれらの硬化用触媒が水溶性でない場合には、その使用に際して、界面活性剤と水を用いてエマルジョン化しておくことが好ましい。本発明の高耐久性エマルジョンは、エマルジョンの長期の分散安定性を保つため、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を用いてpH5〜10の範囲に調整することが好ましい。
本発明によって製造されるアクリル系エマルジョンは、分散質の平均粒子径として、10〜1000nmであることが好ましい。得られたエマルジョン中の分散質(固形分)と分散媒としての水性媒体との質量比は70/30以下、好ましくは30/70以上65/35以下である。
本発明の高耐久性エマルジョンは、塗料、建材の下地処理材または仕上げ材、接着剤、紙加工剤、または織布、不織布の仕上げ材として有用であり、とくに塗料用、建材の仕上げ材として具体的には、コンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリートなどの無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材などの各種下地に対する塗料または建築仕上げ材として、複層仕上げ塗材用の主材およびトップコート、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上げ材、グロスペイントなどの合成樹脂エマルジョンペイント、金属用塗料、木部塗料、瓦用塗料として有用である。
本発明の高耐久性エマルジョンには、通常水系塗料などに添加配合される成分、例えば成膜助剤、増粘剤、消泡剤、顔料、分散剤、染料、防腐剤などを任意に配合することができる。
本発明の好ましい1つの実施態様は、ラジカル重合性単量体〔A〕がアクリル酸エステル系単量体を含みかつ互いに同じか異なった〔A1〕および〔A2〕よりなり、シリコーンオリゴマー〔B〕が、2〜30%のアルコキシ基量を有し、かつ互いに同じか異なった〔B1〕および〔B2〕からなり、乳化剤〔D〕が、スルホン酸基またはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体およびそれらの混合物よりなる群から選ばれかつ互いに同じか異なった乳化剤〔D1〕および〔D2〕よりなり、上記乳化重合をステップ〔1〕、ステップ〔2〕の順で行い、ステップ〔1〕においてはラジカル重合性単量体〔A1〕とシリコーンオリゴマー〔B1〕及び乳化剤〔D1〕と、必要に応じて水性媒体とからなる乳化液を、水性媒体中において乳化重合に付すことにより、ステップ〔1〕エマルジョンを得、ステップ〔2〕においては、水性媒体中、ラジカル重合性単量体〔A2〕、シリコーンオリゴマー〔B2〕および乳化剤〔D2〕と、および必要に応じて水性媒体とからなる乳化液と、加水分解性シラン化合物〔C〕とを混合しながら、ステップ〔1〕エマルジョンに添加することによって、乳化重合を行い最終的な所望エマルジョンを得、また紫外線吸収剤および/または光安定剤を乳化重合中に存在させることも可能である。上記ステップ〔1〕において、ラジカル重合性単量体〔A1〕に対し、加水分解触媒〔E〕は2.5質量%以上〜20質量%以下であり、上記ステップ〔2〕において、ラジカル重合性単量体〔A2〕に対し、加水分解触媒〔E〕は添加しないか又は添加しても2.5質量%未満であることが好ましい。
また、本発明の好ましいもう1つの実施態様によれば、ラジカル重合性単量体〔A〕がアクリル酸エステル系単量体を含みかつ互いに同じか異なった〔A1〕、〔A2〕および〔A3〕よりなり、シリコーンオリゴマー〔B〕が、2〜30%のアルコキシ基量を有し、かつ互いに同じか異なった〔B1〕および〔B3〕からなり、乳化剤〔D〕が、スルホン酸基またはスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体およびそれらの混合物よりなる群から選ばれかつ互いに同じか異なった乳化剤〔D1〕、〔D2〕および〔D3〕よりなり、上記乳化重合をステップ〔1〕、ステップ〔2〕、ステップ〔3〕の順で行い、ステップ〔1〕においてはラジカル重合性単量体〔A1〕とシリコーンオリゴマー〔B1〕及び乳化剤〔D1〕とを必要に応じてを水性媒体とからなるプレ乳化液を、水性媒体中において乳化重合に付すことにより、ステップ〔1〕エマルジョンを得、ステップ〔2〕においては、ラジカル重合性単量体〔A2〕と、シリコーンオリゴマー〔B2〕及び乳化剤〔D2〕と水性媒体とからなるプレ乳化液を水性媒体中においてステップ〔1〕エマルジョンに添加することによって、乳化重合を行いステップ〔2〕エマルジョンを得、ステップ〔3〕においては、ラジカル重合性単量体〔A3〕、シリコーンオリゴマー〔B3〕および乳化剤〔D3〕を、必要に応じて水性媒体とからなる乳化液を、ステップ〔2〕エマルジョンに添加することによって、乳化重合を行い最終的な所望エマルジョンを得、および必要に応じて該乳化液と加水分解性シラン化合物〔C〕を混合しながら乳化重合中にシリコーン変性し、また紫外線吸収剤および/または光安定剤を乳化重合中に存在させてなる高耐久性エマルジョンが提供される。
上記ステップ〔1〕、ステップ〔2〕および/またはステップ〔3〕における乳化液と加水分解性シラン化合物〔C〕を混合しながら、乳化重合中にシリコーン変性を行うことができる。
また、上記ステップ〔1〕において、ラジカル重合性単量体〔A1〕に対し、上記ステップ〔2〕において、ラジカル重合性単量体〔A2〕に対し、加水分解触媒〔E2〕は2.5質量%以上〜20質量%以下であり、上記ステップ〔3〕において、ラジカル重合性単量体〔A3〕に対し、加水分解触媒〔E3〕を添加しないか又は添加しても2.5質量%未満であることが好ましい。
実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものでない。尚、実施例及び比較例中の部及び%はそれぞれ質量部、及び質量%を表す。重合安定性の評価及び得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンの物性試験については、該エマルジョンを用いて下記に示す評価及び試験方法に従って実施した。
<重合安定性の評価>
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを100メッシュの濾布で濾過し、その濾過残渣質量を水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョン質量で割り、残渣率とした。
(判断基準) ◎ :残渣率が20ppm未満
○ :残渣率が20ppm以上100ppm未満
△ :残渣率が100ppm以上
× :多量の凝集物が発生
<ろ過性の評価>
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを100メッシュの濾布で濾過し、濾過が終了するまでに要する時間で評価した。
(判断基準) ○ :濾過時間が30秒未満
△ :濾過時間が30秒以上60秒未満
× :濾過時間が60秒以上
<粒子径の測定>
得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンの平均粒子径を、リーズ&ノースラップ社製のマイクロトラック粒度分布計にて測定した。
<耐候性の評価>
乳化重合後に得られた水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンに対して下記に示す配合組成でエナメル塗料を調整し、サンシャインウェザーメーターで2500時間照射試験を実施し、塗膜の外観(クラック、はがれなど)を目視にて観察した。また同時に光沢保持率の評価も行った。
(判断基準) ○ :外観に変化無し
× :クラック、はがれあり
エナメル塗料配合物の調整
各実施例のエマルジョン(固形分40%換算) 250部
エチレングリコールモノブチルエーテル 20部
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル 40部
酸化チタン 130部
増粘剤 0.1部
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水340部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラムテルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液5部を入れ、温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を10部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル88部、メタクリル酸シクロヘキシル50部及びアクリル酸ブチル110部と、メチルフェニルメトキシシリコーンオリゴマー(製品名:KR510、信越化学(株)製)135部とを溶解させ、次にラテムルS−180Aの20%水溶液30部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液15部、水313部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、プレ乳化液1を得た。
得られたプレ乳化液1とγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、ジメチルジメトキシシラン67部、メチルトリメトキシシラン17部の混合液とメタクリル酸の10%水溶液30部とを、Y字管〔Y字管の出口には100メッシュの金網を詰め3つ滴下槽の液が混じり合うところまで、モレキュラシーブス3A(製品名:和光純薬(株)製)を充填し、ラジカル重合性単量体とシリコーンオリゴマーを含むプレ乳化液1と加水分解性シラン化合物の緩やかな混合ができるように調整した。〕を介して反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。この際、Y字管の混合部における加水分解性シラン化合物の加水分解による発熱は認められなかった。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして30分保った。
次に水70部、メタクリル酸メチル65部、メタクリル酸シクロヘキシル20部及びアクリル酸ブチル15部、メタクリル酸2部、ラテムルS−180Aの20%水溶液6部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液5部の混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液2を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして30分保った。
次にメタクリル酸メチル65部、メタクリル酸シクロヘキシル30部及びアクリル酸ブチル53部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(製品名TINUVIN384、日本チバガイギー(株)製)5部、ヒンダードアミン系光安定剤(製品名TINUVIN123、日本チバガイギー(株)製)2.5部、KR510:67部とを溶解させ、次にラテムルS−180Aの20%水溶液10部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液8部、水173部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液3とγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、ジメチルジメトキシシラン33部、メチルトリメトキシシラン8部の混合液とメタクリル酸の10%水溶液30部とを、Y字管内の金属メッシュで混合しながら反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。この際、Y字管の混合部における加水分解性シラン化合物の加水分解による発熱は認められなかった。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして120分保った。室温まで冷却した後、水素イオン濃度を測定したところpH2.9であった。
上記の混合液に25%アンモニア水溶液を添加してpH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。
ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して18ppmとわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。
得られたエマルジョンの固形分は40.3%、平均粒子径109nmであった。
このエマルジョンの性状の結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1のプレ乳化液1及びプレ乳化液3について、さらに超音波ホモジナイザー(製品名:SONIFEIR450、BRANSON 製)にて10分間乳化処理を施し、プレ乳化液1及びプレ乳化液3を冷却した後、過硫酸アンモニウムを添加した以外は、実施例1と同一の処理を実施した。この際、プレ乳化液1及びプレ乳化液3と加水分解性シラン化合物との混合におけるY字管混合部での発熱は認められなかった。
ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して10ppm未満と非常にわずかで、また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。 得られたエマルジョンの固形分は40.2%、平均粒子径107nmであった。
このエマルジョンの性状の結果を表1に示す。
[比較例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水340部、エチレン性不飽和単量体と共重合可能な二重結合を分子中に持つスルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(製品名:ラムテルS−180A、花王(株)製)の20%水溶液5部を入れ、温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液を10部添加した。
その5分後に、メタクリル酸メチル88部、メタクリル酸シクロヘキシル50部及びアクリル酸ブチル110部、メタクリル酸3部と、メチルフェニルメトキシシリコーンオリゴマー(製品名:KR510、信越化学(株)製)135部とを溶解させ、次にラテムルS−180Aの20%水溶液30部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液15部、水313部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、プレ乳化液1を得た。得られたプレ乳化液1とγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3.3部、ジメチルジメトキシシラン67部、メチルトリメトキシシラン17部の混合液とを、Y字管〔Y字管の出口には100メッシュの金網を詰め3つ滴下槽の液が混じり合うところまで、モレキュラシーブス3A〔製品名:和光純薬(株)製)を充填し、ラジカル重合性単量体とシリコーンオリゴマーを含むプレ乳化液1と加水分解性シラン化合物の緩やかな混合ができるように調整した。〕を介して反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。この際、プレ乳化液と加水分解性シラン化合物との混合におけるY字管混合部でのY字管の混合部における発熱は認められなかった。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして30分保った。
次に水70部、メタクリル酸メチル65部、メタクリル酸シクロヘキシル20部及びアクリル酸ブチル15部、メタクリル酸2部、ラテムルS−180Aの20%水溶液6部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液5部の混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液2を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして30分保った。
次にメタクリル酸メチル65部、メタクリル酸シクロヘキシル30部及びアクリル酸ブチル53部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(製品名TINUVIN384、日本チバガイギー(株)製)5部、ヒンダードアミン系光安定剤(製品名TINUVIN123、日本チバガイギー(株)製)2.5部、KR510:67部とを溶解させ、次にラテムルS−180Aの20%水溶液10部、メタクリル酸3部、過硫酸アンモニウムの2%水溶液8部、水173部の混合液を作製し、該混合液をホモミキサーにより乳化し、得られたプレ乳化液3とγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.7部、ジメチルジメトキシシラン33部、メチルトリメトキシシラン8部の混合液とを、Y字管内の金属メッシュで混合しながら反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。この際、Y字管の混合部における加水分解性シラン化合物の加水分解による発熱は認められなかった。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入が終了してから反応容器中の温度を80℃にして120分保った。室温まで冷却した後、水素イオン濃度を測定したところpH2.9であった。
上記の混合液に25%アンモニア水溶液を添加してpH8に調整してから100メッシュの金網でろ過した。
ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して80ppmであった。また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物もわずかであった。
得られたエマルジョンの固形分は40.1%、平均粒子径109nmであった。
このエマルジョンの性状の結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例1のプレ乳化液1及びプレ乳化液3について、さらに超音波ホモジナイザー(製品名:SONIFEIR450、BRANSON 製)にて10分間乳化処理を施し、プレ乳化液1及びプレ乳化液3を冷却した後、過硫酸アンモニウムを添加した以外は、比較例1と同一の処理を実施した。この際、プレ乳化液1及びプレ乳化液3と加水分解性シラン化合物との混合におけるY字管混合部での発熱は認められなかった。
ろ過された凝集物の乾燥質量は得られた固形分質量に対して40ppmであった。また反応容器内壁及び攪拌羽根への付着物はわずかであった。
得られたエマルジョンの固形分は40.2%、平均粒子径105nmであった。
このエマルジョンの性状の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、比較例1及び2に対し、実施例の方がいずれも重合残渣が少ない結果となった。
これは加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕(メタクリル酸)の混合が上記プレ乳化液に対し、乳化重合の直前に行われることにより、加水分解性シランの加水分解反応が緩やかに進行し、副生アルコールの生成も緩やかに生じるため、初期の重合の場におけるアルコール濃度を低減でき、初期の重合中の安定性が向上したものと思われる。
また実施例1及び2、比較例1及び2の耐候性試験の結果では、いずれも高い光沢保持率を維持し、且つクラックも発生していない。従って本発明の製造方法により、極めて重合安定性に優れた高耐久エマルジョンを提供することができる。
Figure 0004641742
本発明のエマルジョン製造方法は、従来のシリコーン成分を増加させた際に重合安定性が低下し、安定に製造できなかった製造方法に対し、凝集物の発生を抑制し且つ簡便で工業的な設備負荷が小さい製造方法を提供できる。また本発明のエマルジョン製造方法は、耐候性、耐汚染性、耐水性、耐クラック性に優れた塗膜を形成できる水性シリコーン変性アクリレート重合体エマルジョンを提供できる。

Claims (8)

  1. ラジカル重合性単量体〔A〕、シリコーンオリゴマー〔B〕及び乳化剤〔D〕からなるプレ乳化液に、加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕とを混合した後、水性媒体中において重合することを特徴とする高耐久性エマルジョンの製造方法。
  2. プレ乳化液が、ラジカル重合性単量体〔A〕及びシリコーンオリゴマー〔B〕を混合溶解した溶解液、水性媒体及び乳化剤〔D〕とからなることを特徴とする請求項1に記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
  3. プレ乳化液に加水分解性シラン〔C〕と加水分解触媒〔E〕とを連続的または間欠的に混合しながら、水性媒体中において重合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
  4. プレ乳化液に加水分解触媒〔E〕を混合した後の乳化液のpHが4.0以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
  5. プレ乳化液の油滴粒子径が1.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
  6. シリコーンオリゴマー〔B〕と加水分解性シラン化合物〔C〕の合計質量に対するシリコーンオリゴマー〔B〕の質量比率が、5%〜95%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
  7. ラジカル重合性単量体〔A〕の5質量%以上が、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート系単量体からなる群から選ばれる1種または2種以上の単量体であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の高耐久性エマルジョンの製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法によって得られることを特徴とする高耐久性エマルジョン。
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