以下、本発明を詳細に説明する。
<静電荷像現像用トナー用樹脂微粒子分散液>
本発明の静電荷像現像用トナー用樹脂微粒子分散液(以下、「樹脂微粒子分散液」という場合がある)は、少なくとも重縮合性単量体として多価カルボン酸とポリオールとを含み、親水性基を有するラジカル重合性単量体としてアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルを少なくとも含み、且つ親水性基を有さないラジカル重合性単量体としてスチレン(以下、両方のラジカル重合性単量体を併せて単に「ラジカル重合性単量体」と称す場合がある)を含む単量体を水系媒体中で混合して乳化または分散した後、触媒としてドデシルベンゼンスルフォン酸を用いて該混合した単量体を重縮合及びラジカル重合して得られる樹脂微粒子が分散してなる静電荷像現像用トナー用樹脂微粒子分散液であって、樹脂微粒子の最表面における前記重縮合性単量体を重合して得られる樹脂を構成する単量体の分子数比率が10〜95%の範囲であり、前記親水性基を有するラジカル重合性単量体及び親水性基を有さないラジカル重合性単量体を重合して得られる樹脂を構成する単量体の分子数比率が5〜90%の範囲であることを特徴とする。
本発明者等は、ある限定された表面構造、特性を有す樹脂微粒子が水系媒体中に分散した樹脂微粒子分散液を、水系分散液中で単量体を重縮合およびラジカル重合させることにより得、これを静電荷像現像用トナーの製造に使用することで、トナーの製造時に省エネルギー、低環境負荷を達成し、トナー製造効率が向上するとともに、該トナーを用いた場合に高画質を実現することを見出した。また、これらのトナーを用いると、低温での定着が可能で、いわゆるオフセットなどの定着時の問題がおこりにくいことも確認された。
すなわち、低温定着化のためには結着樹脂として結晶性ポリエステルなどの重縮合により得られる樹脂を用いることが好ましいが、このような重縮合により得られる樹脂を樹脂微粒子として分散した樹脂微粒子分散液では、樹脂微粒子の凝集力が十分でないため、乳化重合凝集法により均一なトナー粒子を得ることが難しい。したがって、トナー粒子作製の原材料となる樹脂微粒子分散液では、樹脂微粒子の表面に、樹脂微粒子同士の凝集力を誘発させるような材料を混在させることが好ましい。
本発明においては、重縮合性単量体とラジカル重合性単量体とを水系媒体中で混合して重縮合及びラジカル重合して得られる樹脂微粒子において、通常では水系媒体に親和性を有する重縮合性単量体を重合して得られる樹脂(以下、「重縮合樹脂」という場合がある)のみにより覆われる表面に、後述する手法によりラジカル重合性単量体を重合して得られる樹脂(以下、「ラジカル重合樹脂」という場合がある)を混在させることにより、乳化重合凝集法等のトナーの製造に適した本発明の静電荷像現像用トナー用樹脂微粒子分散液を完成させた。
具体的には、本発明において樹脂微粒子の最表面は、少なくとも前記重縮合性単量体及びラジカル重合性単量体より得られる重縮合樹脂及びラジカル重合樹脂の少なくとも両者を含む。そしてこの場合、樹脂微粒子の最表面における重縮合樹脂を構成する単量体の分子比率が10〜95%の範囲であり、ラジカル重合樹脂を構成する単量体の分子比率が5〜90%の範囲であることが必要とされる。
前記重縮合樹脂を構成する単量体の分子比率は15〜90%の範囲であることが好ましい。また、ラジカル重合樹脂を構成する単量体の分子比率は10〜85%の範囲であることが好ましい。
重縮合樹脂を構成する単量体の分子比率が95%を超える(ラジカル重合樹脂を構成する単量体の分子比率が5%に満たない)と、樹脂微粒子の最表面に重縮合樹脂が過剰に存在することとなり、その後のトナー製造の際の樹脂微粒子の凝集が困難になり、トナー製造に時間がかかるだけでなく、樹脂微粒子の凝集力が十分でないために、樹脂微粒子の粒子径分布が広くなったり、粒径の小さいトナー粉体が発生したりする。
一方、樹脂微粒子の最表面における重縮合樹脂を構成する単量体の分子比率が10%に満たない(ラジカル重合樹脂を構成する単量体の分子比率が90%を超える)と、樹脂微粒子の最表面にラジカル重合樹脂が過剰に存在し、粒子表面に存在する重縮合性単量体分子の割合が少なくなるため、重縮合性単量体が重縮合触媒の寄与を得ることが困難になる。つまり、重縮合が十分に進行しなくなる。また、前記分子比率が上記の範囲を外れると、適当な帯電が得られず、画質に影響が出ることがある。
この樹脂微粒子最表面の重縮合樹脂を構成する単量体の分子比率、ラジカル重合樹脂を構成する単量体の分子比率は、XPS(X線光電子分光法)を用いて測定することができる。したがって、本発明における「樹脂微粒子の最表面」とは、樹脂微粒子表面にX線を照射した際に発生する光電子の脱出深さに相当する、樹脂微粒子表面から数nmから十数nmの深さを意味する。なお、測定方法の詳細については、後述する。
前記樹脂微粒子の最表面構造の制御メカニズムは解明されていないが、本発明における反応系に存在する、重縮合性単量体、親水性基を有するラジカル重合性単量体及び親水性基を有さないラジカル重合性単量体の親疎水性の差によるものと推定される。すなわち、単量体の乳化操作直後は、主に単量体より構成される油相滴中に上記三種類の単量体が混在しているが、重合の進行に伴い、油相滴と水相との界面には親水性成分が存在し、疎水性成分は樹脂微粒子内部に存在するように成分の偏在が起こり始める。これにより、ラジカル重合性単量体よりなるオリゴマーの親水性部分および重縮合性単量体よりなるオリゴマーが、選択的に油水界面に存在し、ラジカル重合性単量体よりなるオリゴマーの疎水性部分が、樹脂粒子内部に拡散していくと考えられる。ラジカル重合性単量体よりなるオリゴマーの親水性部分とは、つまり、親水基を有するラジカル重合性単量体よりなる、または親水基を有するラジカル重合性単量体を主に含む単量体よりなると考えられる。
このような仮説に基づくと、後述する本発明において配合されるラジカル性単量体と重縮合性単量体との種類、配合量、および配合量の比率は、表面を適切に制御できる範囲であれば特に限定されないが、特に、各単量体の親疎水性の組み合わせを考慮して選択されることが好ましい。
まず、本発明の樹脂微粒子分散液を得るためのプロセスについて概略を説明する。
本発明の樹脂微粒子分散液の製造では、水中で単量体を重縮合およびラジカル重合する工程が含まれる。この場合、予め単量体を機械的な強せん断力、超音波などを用いて、必要により少量の界面活性剤、共界面活性剤、重合開始剤などを溶解した水系媒体中に分散した後、加熱し、重合を行う。また、必要に応じ、事前に単量体を他の媒体に溶解せしめ、更に必要であれば、界面活性剤、共界面活性剤等を溶解した油相を形成し、上記と同様の手法で、水系媒体中に分散し、重合を行う。
この場合の重合方法としては、水系媒体中での粒子の重合方法として一般的な、懸濁重合法、ミニエマルジョン法、マイクロエマルジョン法、ミクロエマルジョン法、多段膨潤法やシード重合を含む乳化重合法、ウレタン等の樹脂を用いた伸長反応法など通常の水系媒体中での不均一系重合形態を利用する事が可能である。これらの重合方法の中で、均一な粒子径を得、粒子径分布が揃いやすいという点から、マイクロエマルジョン法、ミニエマルジョン重合法、ミクロエマルジョン法が好ましく用いられ、最も好適にはミニエマルジョン重合法が選択される。
(重縮合性単量体)
本発明に用いることができる重縮合性単量体は、上述した各種重合法に用いられるものが挙げられるが、少なくとも多価カルボン酸とポリオールとが用いられる。
本発明に用いることができる重縮合性単量体としては、脂肪族、脂環族、芳香族の多価カルボン酸、それらのアルキルエステルと多価アルコール、それらのエステル化合物、多価アミンなどを用いたものが挙げられ、それらを用いて直接エステル化反応、エステル交換反応などにより重合を行うことができる。
前記多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、2価のカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマール酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等を挙げることができる。
また、2価のカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
本発明において、重縮合によりポリエステルを製造する場合には、上記の多価カルボン酸のうち、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、 1,12−ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を用いることが好ましい。これらの多価カルボン酸は水に難溶あるいは不溶であるため、多価カルボン酸が水に分散した油滴中で重縮合反応が進行する。
本発明に用いる重縮合性単量体としての多価アルコールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、2価のポリオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール等を挙げることができる。
また、2価のポリオール以外のポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。
本発明において、重縮合によりポリエステルを製造する場合には、上記のポリオールのうち、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の2価のポリオールを用いることが好ましい。
これらのポリオールは水に難溶あるいは不溶であるため、ポリオールが水に分散した懸濁液中で重縮合反応が進行する。
また、一分子中にカルボン酸と水酸基を含有する物質を使用し、重縮合を実施することもできる。例えば、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシトリデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これらの重縮合性単量体の組み合わせにより、非結晶樹脂や結晶性樹脂(重縮合樹脂)を容易に得ることができる。これらとしては、結晶性ポリエステルまたは結晶性ポリアミドが好ましく、結晶性ポリエステルがさらに好ましい。
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4,ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等も挙げることができる。
また、結晶性ポリアミドを得るために使用されるジアミンとしては、好ましくはエチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,4−ブテンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジメタチルアミン等を挙げることができる。
結晶性ポリエステルや結晶性ポリアミドを得るために使用されるジカルボン酸としては、好ましくはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいは酸塩化物を挙げることができる。
特に好ましい結晶性樹脂としては、1、9−ノナンジオールと1,10−デカメチレンカルボン酸、またはシクロヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができる。
これらの中でも特に1、9−ノナンジオールと1,10−デカメチレンカルボン酸及び1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応させて得られるポリエステルがさらに好ましい。
上記のようにして得られる結晶性樹脂は、その融点が50〜150℃の範囲であること、特に55〜110℃の範囲であることが好ましい。用いる結晶性樹脂の融点が50℃未満の場合には得られるトナーの耐ブロッキング性が不良となり、また150℃を超える場合にはトナーの低温における溶融流動性が低下して定着性が悪くなるおそれがある。
なお、結晶性樹脂の融点はビニル系重合体と結合されていない状態における融点であるが、後述する樹脂微粒子の融点として検出することができる。
この結晶性樹脂(樹脂微粒子)の融点の測定には、示差走査熱量測定法(DSC)に従い、例えば「DSC50」(島津製作所製)によって測定でき、具体的には、試料約10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で加熱し、ベースラインと吸熱ピークから融点を求めた。
ここで、樹脂における結晶性の有無については、上記方法により測定された熱吸収曲線が JIS K7121:87の融解温度の定義に従い、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と融解ピーク(吸熱ピーク)の低温側の曲線に勾配が最大になる点で引いた接線の交点(融解開始温度)と高温側のベースラインを低温側に延長した直線と融解ピーク(吸熱ピーク)の高温側の曲線に勾配が最大になる点で引いた接線の交点(融解終了温度)の温度差が50℃以内であって、その曲線の形態が同じくJIS K7121:87で示される階段状形状を示さない場合を結晶性を有すると判断した。
本発明における重縮合触媒としては、界面活性剤型触媒と金属触媒、加水分解酵素型触媒等を挙げることができるが、少なくともドデシルベンゼンスルフォン酸が用いられる。
界面活性剤型触媒としては、界面活性効果を有する強酸を例示でき、例えば上記ドデシルベンゼンスルホン酸の他、イソプロピルベンゼンスルホン酸、ケリルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸、などのアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルジスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アルキルナフタリンスルホン酸、アルキルテトラリンスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸、高級アルコールエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルスルホン酸、モノブチルフェニルフェノール硫酸、ジブチルフェニルフェノール硫酸、ドデシル硫酸などの高級脂肪酸硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールエーテル硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキロール硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキル化硫酸エステル、ナフテニルアルコール硫酸、硫酸化脂肪、スルホ琥珀酸エステル、各種脂肪酸、スルホン化高級脂肪酸、高級アルキルリン酸エステル、樹脂酸、樹脂酸アルコール硫酸、ナフテン酸、ニオブ酸、およびこれらすべての塩化合物、例えば、次に記す希土類金属との塩化合物などが使用できるが、これに限定されない。これらは、必要に応じて複数を組み合わせても良い。
これらのうち、好ましく使用される界面活性剤型触媒としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸等を挙げることができる。
前記金属触媒としては以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物、希土類金属触媒を挙げることができる。
希土類含有触媒としては、ランタノイド元素として、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などを含むものが有効である。これらは、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、トリフラート構造を有するものが有効である。
前記金属トリフラートとしては、構造式では、X(OSO2CF3)3Xで示される化合物が好ましい。なお前記式中、Xは希土類元素であり、これらの中でも、前記金属トリフラートとしては、Xがスカンジウム(Sc),イットリウム(Y),イッテルビウム(Yb),サマリウム(Sm)などである。
また、希土類含有触媒としては、ランタノイドトリフラートなども好ましい。ランタノイドトリフラートについては、有機合成化学協会誌、第53巻第5号、p44−54)に詳しい。
前記加水分解酵素型触媒(酵素触媒)としては、エステル合成反応を触媒するものであれば特に制限はない。加水分解酵素としては、例えば、カルボキシエステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、タンナーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、ラクトナーゼ、リポプロテインリパーゼ等のEC(酵素番号)3.1群(丸尾・田宮監修「酵素ハンドブック」朝倉書店 (1982) 等参照)に分類されるエステラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、キシロシダーゼ等のグリコシル化合物に作用するEC3.2群に分類される加水分解酵素、エポキシドヒドラーゼ等のEC3.3群に分類される加水分解酵素、アミノペプチダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、プラスミン、ズブチリシン等のペプチド結合に作用するEC3.4群に分類される加水分解酵素、フロレチンヒドラーゼ等のEC3.7群に分類される加水分解酵素等を挙げることができる。
上記のエステラーゼのうち、グリセロールエステルを加水分解し脂肪酸を遊離する酵素を特にリパーゼと呼ぶが、リパーゼは有機溶媒中での安定性が高く、収率良くエステル合成反応を触媒し、さらに安価に入手できることなどの利点がある。したがって、本発明における重縮合樹脂の製造においても、収率やコストの面からリパーゼを用いることが望ましい。
上記リパーゼには種々の起源のものを使用できるが、好ましいものとして、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属等の微生物から得られるリパーゼ、植物種子から得られるリパーゼ、動物組織から得られるリパーゼ、さらに、パンクレアチン、ステアプシン等を挙げることができる。このうち、シュードモナス属、カンジダ属、アスペルギルス属の微生物由来のリパーゼを用いることが望ましい。
上記触媒において、より低温度での重縮合を達成するためには、前記界面活性剤型触媒、希土類元素触媒、酵素触媒が有効である。希土類金属触媒としては、特にY、Sc、Yb、Smなどをその構成成分とする触媒の使用が望ましい。この場合、注意する点としては触媒が重合中の重縮合性単量体エマルジョンまたは粒子と水系媒体とに分配されることを念頭に、より疎水性または分子量の大きな前記触媒化合物、さらには、界面活性剤型触媒を選択することが好ましい。
このときの、触媒の添加量としては、重縮合性単量体に対して0.1〜10000ppmの割合で1種類または複数添加することができる。
重縮合性単量体を重合して得られる樹脂の重量平均分子量は、1500〜50000の範囲であることが好ましく、3000〜40000の範囲であることがより好ましい。分子量がこの範囲にある場合には、トナーの耐オフセット性及び樹脂製造における重縮合効率が良好となる。
なお、上記重縮合性単量体を重合して得られる樹脂の分子量は、本発明においては、後述するように単量体混合系において重縮合性単量体の重縮合を先行して進行させることができるため、重縮合性単量体を重合してなる樹脂単独の分子量として検出することができる。
また、上記の方法により製造される重縮合樹脂がポリエステルの場合、その酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。この第一の理由は、高画質トナーとして実用に供するためには、水系媒体中でのトナーの粒子径、分布の制御が必要不可欠であるが、酸価が1mgKOH/gより小さい場合、十分な粒子径および分布が達成されず、その画質上およびその製造上大きな問題となる。さらにトナーの帯電性においても、1mgKOH/gより小さいと、十分な帯電性を得ることができない場合がある。また重縮合されるポリエステルの酸価が50mgKOH/gより大きいと、重縮合の際トナーとして画質強度を得るための十分な分子量を得ることができず、またトナーの高湿度下での帯電性の環境依存も大きく画像信頼性を大きく損なう場合がある。
(ラジカル重合性単量体)
次に、本発明に使用されるラジカル重合性単量体としては、以下に例示されるラジカル重合性単量体を使用することができるが、少なくとも親水性基を有するラジカル重合性単量体としてアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルが用いられ、且つ親水性基を有さないラジカル重合性単量体としてスチレンが用いられる。
本発明におけるラジカル重合性単量体としては、ビニル系単量体、オレフィン系単量体などを好ましく用いることができる。
前記ビニル系単量体としては具体的には、例えば、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン等のビニル芳香族類;(メタ)アクリル酸(なお、ここで「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味するものとし、以下も同様とする。)、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類;(メタ)アクリルアルデヒド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸誘導体類;N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物類;N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メチロールマレインアミド酸、N−メチロールマレインアミド酸エステル、N−メチロールマレイミド、N−エチロールマレイミド等のN−置換不飽和アミド類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン等の多官能ビニル化合物類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート類;等が挙げられる。
なお、これらの中で、N−置換不飽和アミド類、共役ジエン類、多官能ビニル化合物類、及び多官能アクリレート類等は、生成された重合体に架橋反応を生起させることもできる。
前記オレフィン系単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。また、ジオレフィン系単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
上記ラジカル重合性単量体の中で好適に使用されるものとしては、ビニル芳香族系、およびカルボン酸エステル類である。
本発明におけるラジカル重合性単量体には、親水性基を含有するラジカル重合性単量体が含まれる。これにより、最終的に得られる樹脂微粒子の最表面に親水性基を存在させることができる。
前記親水性基としての極性基としてはカルボキシル基、スルホン基、燐酸基、ホルミル基等の酸性基;アミノ基等の塩基性基;アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基等の中性基;等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。この中で、特にトナーに好ましく用いられるのは酸性基である。この酸性基を有するラジカル重合性単量体が、樹脂粒子表面にある特定の範囲で存在することにより、樹脂微粒子に凝集性を付与し、樹脂微粒子のトナー化が可能となり、さらにトナーに十分な帯電性を与えることができる。
好ましく用いられる酸性基としては、カルボキシル基、スルホン基である。この酸性基を有する単量体としては、例えば、カルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和化合物及びスルホン基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。上記カルボキシル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステルを挙げることができる。上記スルホン基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物としては、例えば、スルホン化エチレン、そのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチルを挙げることができる。好ましくは、カルボキシル基を有するα、β−エチレン性不飽和化合物が使用される。これらのモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
上記酸性基を有するラジカル重合性単量体は、ラジカル重合性単量体(親水性基を有するラジカル重合性単量体及び親水性基を有さないラジカル重合性単量体)中に0.1〜40質量%の範囲で含有されることが好ましい。更に好ましくは0.5〜30質量%の範囲で含有される。酸性基を有するラジカル重合性単量体含有量が40質量%を超えると、樹脂微粒子表面のラジカル重合樹脂が過剰になりすぎる場合があり、また、極性基を有するラジカル重合性単量体含有量が0.1質量%に満たないと、樹脂粒子表面のラジカル重合樹脂の占有率が少なくなることがある。その結果、トナー製造工程において、微粉が発生しやすい、トナーの帯電が不十分になるなどの悪影響が出ることがある。酸性基を有するラジカル重合性単量体、共存する親水性基を有さないラジカル重合性単量体、さらに重縮合性単量体の種類と配合量とを適切に選択することで、樹脂微粒子最表面のラジカル重合樹脂と重縮合樹脂との分布構造を制御することができる。
これらラジカル重合性単量体は、その重合法としてラジカル重合開始剤を用いる方法、熱による自己重合、紫外線照射を用いる方法など、既知の重合方法を用いることができる。
前記ラジカル開始剤を用いる方法においては、ラジカル開始剤は、油溶性、水溶性のものがあるがどちらの開始剤を使用しても構わない。
具体的には、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、2,2’−アゾビス−〔2−メチルプロピオンアミド〕−ジハイドロクロライド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシ−α−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t―ブチルパーオキシ)シラン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジンジハイドロクロライド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノワレリックアシド)等が挙げられる。
ラジカル重合樹脂の重量平均分子量は、5000〜60000の範囲であることが好ましく、より好ましくは7000〜40000の範囲である。重量平均分子量が5000を下回ると、トナー結着樹脂としての凝集力が低下しやすくなり、ホットオフセット性が低下する場合があり、60000を超えると、ホットオフセット性は良いものの最低定着温度が上昇する場合がある。
ラジカル重合体と重縮合性単量体を重合して得られる樹脂の分子量は、その分子量分布域の相違によって通常分離することができる。さらに、紫外可視検出器(例えば東ソー社製UV−8220等)により、分離することも可能である。
また、ラジカル重合樹脂のガラス転移点(Tg)は40〜100℃の範囲であることが好ましい。Tgが40℃を下回ると、高温度域での結着樹脂自体の凝集力が低下するため、定着の際にホットオフセットが生じやすくなり、100℃を超えると十分な溶融が得られず、最低定着温度が上昇する。ガラス転移温度は、さらに好ましくは50〜80℃の範囲、最も好適には50〜70℃の範囲が望ましい。
本発明においては、前記重縮合性単量体、ラジカル重合性単量体に加え、樹脂微粒子分散液、トナー及び画像等の、使用目的に必要な特性を損なわない範囲で、水中で重合可能なその他の重合性単量体を加えることもできる。例えば、重付加性単量体、開環重合性単量体等である。
前記重付加性単量体としては、ジイソシアネート類とジイソシアネート反応性多活性水素化合物に代表される単量体を用いることができる。
ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、脂環式炭化水素ジイソシアネート類、ビフェニルジイソシアネート類、ジ−あるいはトリフェニルアルカン(アルカンの炭素数5以下)ジイソシアネート類等が例示される。
脂肪族ジイソシアネート類としては、エタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、チオジエチルジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、β−メチルブタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ω,ω’−ジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコール−ジプロピルエーテル−ω,ω’−ジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。
環状基を有する脂肪族ジイソシアネートとしては、ω,ω’−1,3−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω’−1,2−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω’−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω’−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω’−1,4−ジエチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω’−1,4−ジメチルナフタリンジイソシアネート、ω,ω’−1,5−ジメチルナフタリンジイソシアネート、3,5−ジメチルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネート、ω,ω’−n−プロピル−ビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネート類としては、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−3,5−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアネート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート等が挙げられる。
また、ナフタリンジイソシアネート類としては、ナフタリン−1,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ナフタリン−2,6−ジイソシアネート、ナフタリン−2,7−ジイソシアネート、1,1’−ジナフチル−2,2’−ジイソシアネート等が挙げられる。ビフェニルジイソシアネート類としては、ビフェニル−2,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2−ニトロビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
ジ−あるいはトリフェニルアルカンジイソシアネート類としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,5,2’,5’−テトラメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジメトキシフェニル−3,3’−ジイソシアネート、4,4’−ジエトキシフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチル−5,5’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3−ジクロロジフェニルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−3,3’−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−2,4−ジイソシアネート、3−ニトロトリフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4−ニトロトリフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられる。
また、上記の芳香族環含有ジイソシアネートにあって、芳香族環が水添処理された脂環式炭化水素ジイソシアネート類も好ましく例示され、芳香族環含有ジイソシアネートに比して耐光性に優れるトナーを与える。
なお、上記単量体の重付加反応では、重付加性反応基を有するポリマーを反応に用いてもよい。詳細には、該ポリマーには、イソシアネート基や、水酸基カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基等が包含される。好ましい反応基はイソシアネート基である。
また、前記多活性水素化合物としては、好ましくはジオール類、またはジアミン類等が例示される。ジオール類としては、上述の重縮合性単量体に記載した物質を使用することができる。例えばビスフェノール類のアルキレノキサイド付加物が好ましく挙げられ、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を単独で、もしくは両者を混合して使用できる。さらには、エチレンオキサイド基あるいはプロピレンオキサイド基の繰り返し単位数が異なる化合物を2種以上混合して用いてもよい。
また、多活性水素化合物として、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル類と共に酸性基を有する多活性水素化合物を併用すると、特に、低温定着性、高温での耐オフセット性、定着強度を向上することができる。ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルと併用される酸性基を有する多活性水素化合物としては、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、2,4−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸、2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等が例示される。上記の化合物はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩であってもよく、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩である。
また、上述した多活性水素化合物によるトナーとしての性状を損なわない範囲で、他の多活性水素化合物、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(カプロラクトンポリオール)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート等を添加してもよい。
また、ジアミン類としては、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等が例示される。
アミン類としては、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、およびこれらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。ジアミン類としては、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどに代表される芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどに代表される脂環式ジアミン、およびエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどに代表される脂肪族ジアミンを挙げることができる。
3価以上のポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。また、これらのアミノ基をブロックしたものとしては、前記アミン類と、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類のうち好ましいものは、ジアミン類およびジアミン類と少量の3価以上のポリアミンの混合物である。
重付加反応に際して、触媒は必ずしも必要ではないが、例えばジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、オクチル酸スズ、トリフェニルアンモニウムジクロライド、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズビス(メルカプト酸エステル)等を添加してもよい。その場合の添加量としては、単量体中に10〜1000ppmが好ましい。
さらに、必要により伸長停止剤を用いることもできる。伸長停止剤としては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等のモノアミン、およびケチミン化合物等のそれらをブロックしたものを挙げることができる。
前記開環重合性単量体としては、ラクトンを好ましく例示することができる。ラクトンとは、環内にエステル基をもつ環状化合物であり、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが例示される。もっとも好適には、ε−カプロラクトンを使用できる。これらの、開環重合性単量体は、重合工程を経ることで結晶性の高い脂肪族ポリエステル樹脂となる。
ラクトンの開環重合には、開環重合触媒として、例えば、金属酸化物、有機金属化合物などを用いることができる。開始剤として、グリコールを用いると、末端にヒドロキシル基を有するポリエステルが得られる。例えば、ε−カプロラクトンの開環重合体は、通常、ε−カプロラクトンとエチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオールを触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。
開環重合の触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物等が好ましい。その場合の添加量としては、単量体中に0.1〜5000ppmが好ましく用いられる。
また、開環重合体の分子量は、数平均分子量が10,000〜200,000の範囲ものである。この開環重合体の融点は、通常、40〜150℃の範囲、好ましくは50〜100℃の範囲程度である。
さらに本発明においては、後述する単量体を重合する工程(重縮合を含む)として、上記単量体と予め作製しておいたプレポリマーとの重合反応とを含むこともできる。プレポリマーは、上記単量体に溶融または均一混合できるポリマーであれば限定されない。
またさらには、上述した単量体の単独重合体、上述した単量体を含む単量体を2種以上組み合せた共重合体、又はそれらの混合物、グラフト重合体等を含むことができる。
次に、本発明の静電荷像現像用トナー用樹脂微粒子分散液を製造する方法について説明する。
前述のように、本発明の樹脂微粒子分散液の製造は、樹脂微粒子原料として、ポリエステル単量体及びビニル系単量体を水系媒体中で混合し乳化または分散させる乳化または分散工程と、これらの単量体の重合反応(ポリエステル単量体の重縮合及びビニル系単量体のラジカル重合)を行い樹脂微粒子を形成する重合工程と、を経て行われる。この方法では、重縮合単量体の重縮合反応をラジカル重合性単量体の存在下に行なうことが可能で、ラジカル重合性単量体は最終的にはラジカル重合により重合して樹脂微粒子を与える。
本発明において、重縮合性単量体とラジカル重合性単量体とを重合せしめる場合、水中での重合工程において、ラジカル重合性単量体を予め重縮合単量体と混合し、最終的に重縮合およびラジカル重合を経てそれらポリマーのハイブリッド粒子とすることも可能である。さらに上述したように重縮合工程においても、予め塊状重合法や溶液重合法などにより低分子量の重合体を形成させそれらを水系媒体中に乳化または分散し、さらに重縮合反応を行い最終分子量に到達させることも可能であり、この場合にもラジカル重合性単量体を、低分子量ポリエステルと、または低分子量ポリエステルおよび重縮合性単量体と混合した後乳化分散させることができる。
本発明における水系媒体での重縮合においては、重合ポリマーの酸価が最終分子量やまたは重合速度に影響を与える事は前述したが、より容易に速い重合速度、高分子量を調整するためには、最終ポリマーの酸価を上記で述べた様に規定すると共に、水への溶解度の低いラジカル重合性のビニルモノマーなどを重縮合中に共存させる手法、さらには 予め重縮合性単量体を乳化分散に支障がない程度の低分子量体(または中分子量体)を調製し、酸価をより低い状態に調整した上で、水系媒対中で最終的な高分子量体を得る方法、またはこれら両法の併用、即ちラジカル重合性単量体と重縮合性単量体の予備重合法とを併用する手法を用いることが製造上好ましい。
同様に、本発明における重合工程においては、異なる重合を同時、または逐次実施させることができる。例えば、重合を行うモノマー成分として、ラジカル重合性単量体を重縮合単量体と共に混合し、ラジカル重合と重縮合反応とを同時に実施、または、重縮合の後にラジカル重合を行う、または、その反対でラジカル重合の後に重縮合を実施することができる。このとき、重縮合触媒を単量体成分中に混合しておくことが可能であり、更にラジカル重合触媒に関しては、モノマー混合物または水系媒体中にラジカル開始剤を、重縮合前または重縮合中、重縮合を行った後に添加することが可能である。
このように、ラジカル重合性単量体の存在下での重縮合性単量体の重縮合反応を良好に行わせるためには、前記乳化または分散工程において、重縮合性単量体をラジカル重合性単量体中に溶解または分散した後、当該ラジカル重合性単量体を水中で乳化または分散させることが好ましい。
ここで、水系媒体中での重合に際し、重合前の単量体成分に加え、後述する着色剤、離型剤等を予め混合しておくことも可能である。こうすることにより、着色剤や離型剤(ワックス)を取り込んだ形で樹脂微粒子を作製することが可能となる。
また、乳化または分散工程においては、単量体(重縮合性単量体及びラジカル重合性単量体)を含有する油相の平均粒子径を特定の範囲に保つために、共界面活性剤を併用することができる。この共界面活性剤は、所謂ミニエマルジョン重合において、オストワルト熟成を減少させるために添加される。
本発明においては、前記混合した単量体に対し共界面活性剤の含有量を0.1〜40質量%の範囲とすることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲とすることがより好ましく、0.1〜20質量%の範囲とすることがさらに好ましい。共界面活性剤の含有量が0.1質量%を下回ると、分散液への共界面活性剤配合効果が低減し、分散液中の安定性が保持できず、分散滴径が時間の経過に伴い変化する結果、ラテックス粒子径が大きくなり、その粒子径分布が広くなるばかりか、重合が十分に進まず、得られる樹脂分子量が低くなったり、樹脂分子量分布が広くなってしまう場合がある。また、含有量が40質量%を超えると、分散液中の粘度の制御が困難になったり、単量体の重合機構に影響を与え、目的とする単量体の重縮合やその他の重合が十分に進行しない場合がある。更には、該粒子分散液を使用して製造したトナーにおいて、その定着性や帯電性に悪影響を与えることがある。
共界面活性剤としては、一般にミニエマルジョン法の共界面活性剤として公知のものを使用できる。例えば、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の炭素数8〜30のアルカン類;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数8〜30のアルキルアルコール類;ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等の炭素数8〜30のアルキルチオール類;及び、その他、アクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類とこれらのポリマー、ポリスチレン、ポリエステル等のポリマー又はポリアダクト類、カルボン酸類、ケトン類、アミン類等が挙げられるが、これらに限定されない。
前記アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル類としては、アクリル酸、又はメタクリル酸とエステル結合を有するアルキル基の炭素数が5以上であることが好ましい。例えば、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等を例示することができるが、これに限定されない。また、これらのポリマーの単独重合体、または、これらを含む共重合体も挙げることができるが、これに限定はされない。またこれらのポリマーの重量平均分子量は100000未満であることが好ましい。
共界面活性剤がポリエステルである場合は、一般的に使用されるポリエステルを使用することができるが、好ましくは、炭素数がそれぞれ3個以上のアルコールと多価カルボン酸の縮合物が使用できる。またこの場合の分子量は、重量平均分子量2000〜100000の範囲であることが好ましい。
また、共界面活性剤がポリスチレンの場合は、重量平均分子量が100000以下であることが好ましい。
以上に例示した共界面活性剤のうち、好ましく使用されるものとしては、ヘキサデカン、セチルアルコール、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル 、ポリエステル、ポリスチレンである。特に、揮発性有機物質の発生を回避する目的では、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル 、ポリエステル、ポリスチレンがさらに好ましい。
また、上記共界面活性剤として使用できる、重合体、重合体を含む組成物には、例えば他の単量体との共重合体、ブロック共重合体、混合物等を含むことができる。また、複数の共界面活性剤を併用することもできる。
本発明においては、樹脂微粒子分散液中の樹脂微粒子の体積平均粒径は0.05〜2.0μmの範囲であることが好ましく、0.1〜1.5μmの範囲がより好ましく、0.1〜1.0μmの範囲がさらに好ましい。そして上記粒径の樹脂微粒子を得るためには、前記混合した単量体を上記粒径範囲となるように分散することが好ましい。
さらに適切な共界面活性剤、界面活性剤との組み合わせ、水相油相比率、攪拌速度等により達成することができる。
粒子径が小さすぎると粒子化の際の凝集性が悪化し、遊離の樹脂粒子の発生が生じやすく、また系の粘度も上昇しやすくなって粒径の制御が困難になる。大きすぎると、粒子化の際、粗粉の発生が生じやすくなり粒度分布が悪化するとともにワックスなどの離型剤が遊離しやすくなるために、定着時の剥離性やオフセットの発生温度が低下したりする。
また、樹脂微粒子分散液中においては、超微粉や超粗粉の発生がないことも重要であり、体積平均粒径が0.01〜5.0μmの範囲の粒子の比率は10個数%以下であることが望ましく、5個数%以下であることがさらに望ましい。
なお、樹脂微粒子の体積平均粒径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて測定することができる。
また、乳化・分散工程においては、微粒子エマルジョンを形成することとなるが、微粒子エマルジョンをなすには、例えば、共界面活性剤を加えた単量体溶液と、界面活性剤の水溶液とを、ピストンホモジナイザー、マイクロ流動化装置(例えば、マイクロフルー、ディックス社製「マイクロフルーダイザー」)、超音波分散機等の剪断混合装置によって均一に混合し、乳化させることができる。その際、水に対する単量体の仕込み量は、水との合計量に対して0.1〜50質量%程度とし、界面活性剤の使用量は、形成されるエマルジョンの存在下において臨界ミセル濃度(CMC)未満とすることが好ましく、また共界面活性剤の使用量は、前述の通り、単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜40質量部の範囲、更に好ましくは0.1〜20質量部の範囲とする。
なお、臨界ミセル濃度(CMC)未満の界面活性剤量及び共界面活性剤の併用による単量体エマルジョンの重合開始剤の存在下での該単量体の重合は、例えば、P.L.Tang,E.D.Sudol,C.A.Silebi,M.S.El−Aasser;J.Appl.Polym.Sci.,第43巻,1059頁(1991)等に記載されている、所謂“ミニエマルジョン重合”として知られており、臨界ミセル濃度(CMC)以上の界面活性剤量の存在下での、数μ程度の粒径の単量体粒子の水性エマルジョンを水溶性重合開始剤を用いて重合させる従来の乳化重合が、界面活性剤ミセル内で重合を開始し、単量体粒子からの単量体の拡散による供給を受けて重合体粒子が成長し形成されるのに対して、“ミニエマルジョン重合”では、単量体微粒子内で単量体が重合することから均一な重合体微粒子が形成され、また更に、本発明のようなポリエステル/ビニル複合重合体の“ミニエマルジョン重合”では、重合過程において単量体の拡散が不要なことから、ポリエステルはそのまま重合体微粒子内に存在し得る利点を有する。
また、例えば、J.S.Guo,M.S.El−Aasser,J.W.Vanderhoff;J.Polym.Sci.:Polym.Chem.Ed.,第27巻,691頁(1989)等に記載されている、粒子径5〜50nmの微粒子の所謂“マイクロエマルジョン重合”は、本発明における“ミニエマルジョン重合”と同様の分散構造及び重合機構を有するものであるが、“マイクロエマルジョン重合”では、臨界ミセル濃度(CMC)以上の界面活性剤を多量に使用するものであり、得られる重合体微粒子中に多量の界面活性剤が混入するとか、或いは、その除去のために水洗浄、酸洗浄、或いはアルカリ洗浄等の工程に多大な時間を要する等の問題が存在する。
本発明における重合工程は、上記のようにして乳化または分散させた単量体粒子の分散液に対し、加熱を行うことにより実施する。この場合、系において重縮合性単量体の重縮合とラジカル重合性単量体の重合とがともに起こり得るが、前述の各種重合触媒を使い分けることにより、例えば重縮合性単量体の重縮合を先に行い、次いでラジカル重合性単量体のラジカル重合を行うこともできる。
なお、前記のように本発明における重縮合は従来より低温で行うことが可能であり、重合温度は45〜120℃の範囲で行うことが好ましく、好ましくは50〜100℃の範囲である。
前述のように、発明において製造される樹脂微粒子には、定着温度域および定着性の観点から融点が50〜150℃の範囲である物質が好ましく使用される。該融点はさらに好ましくは55〜110℃の範囲である。例えば、樹脂微粒子に含まれる結晶性ポリエステルの融点が50℃未満であると、得られるトナーの耐ブロッキング性が不良となる場合があり、また150℃を超えると、トナーの低温における溶融流動性が低下して定着性が悪くなるおそれがある。
<静電荷像現像用トナー>
本発明の静電荷像現像用トナーは、上記本発明の静電荷像現像用トナー用樹脂微粒子分散液中の樹脂微粒子を、少なくとも着色剤粒子(着色剤が前記重合工程において樹脂中に予め添加されている場合は、それ自体が着色粒子)と共に凝集(会合)させ、この凝集粒子を融合させることにより作製することができる。
好適には、乳化重合凝集法におけるトナー粒子の調整が用いられる。詳細には、本発明により調製した樹脂微粒子分散液を、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液と混合し、さらに凝集剤を添加しヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、樹脂微粒子のガラス転移点以上または融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合・合一し、洗浄、乾燥することにより得られる。この製法では、加熱温度条件を選択することでトナー形状を不定形から球形まで制御できる。
前記凝集工程においては、本発明以外の方法で作製された樹脂微粒子分散液(例えば、通常の乳化重合法)と本発明により作製された樹脂微粒子分散液とを混合し、凝集以降の工程を実施することも可能である。その際、本発明における樹脂微粒子を予め凝集し第一の凝集粒子形成後、さらに本発明の樹脂微粒子分散液または別の樹脂微粒子分散液を添加し第一の粒子表面に第2のシェル層を形成する等、粒子を多層化することも可能である。また、当然前記例と逆の順序で多層粒子を作製することも可能である。
凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御およびトナー帯電性などの特性において好ましい。凝集に用いる金属塩化合物としては、一般の無機金属化合物又はその重合体を樹脂微粒子分散液中に溶解して得られるが、無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族に属する2価以上の電荷を有するものであり、樹脂微粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。
好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシム等の無機金属塩重合体などである。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上で、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。
本発明のトナーに用いる着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料が挙げられる。
具体的には、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラロゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレート、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などの種々の顔料などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併せて使用することができる。
本発明においては、必要に応じて、本発明の結果に影響を与えない範囲で公知の添加剤を、1種または複数を組み合わせて配合することができる。例えば、難燃剤、難燃助剤、光沢剤、防水剤、撥水剤、無機充填剤(表面改質剤)、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、滑剤、充填剤、体質顔料、結着剤、帯電制御剤、抗菌剤等である。これらの添加物は、塗布剤を製造するいずれにおいても配合することができる。
内添剤としては、帯電制御剤として4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物など通常使用される種々の帯電制御剤を使用することもできるが、製造時の安定性と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
離型剤の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類やエステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。
これらのワックス類は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により微粒子化し、1ミクロン以下の粒子の分散液を作成することができる。
難燃剤、難燃助剤としては、すでに汎用されている臭素系難燃剤や、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムを例示できるがこれに限定されるものではない。
また通常のトナーと同様に乾燥後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂微粒子を乾燥状態でせんだんをかけて表面へ添加して流動性助剤やクリーニング助剤として用いることもできる。
なお、例えば顔料の分散、樹脂微粒子の分散、離型剤の分散、凝集、凝集粒子の安定化などに界面活性剤を用いることができる。具体的には硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものを使用できる。
前記製造方法により得られる本発明の静電荷現像用トナーの体積平均粒径D50は3〜20μmの範囲、好ましくは3.0〜9.0μmの範囲が適当である。D50が3.0μmを下回ると、付着力が高くなり、現像性が低下することがある。また、20μmを超えると画像の解像性が低下することがある。
また、得られるトナーの体積平均粒度分布指標GSDvは1.4以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。GSDvが1.4を超えると解像性が低下し、トナー飛散やカブリ等の画像欠陥の原因となることがある。
ここで、体積平均粒径D50や平均粒度分布指標は、コールターカウンターTAII(ベックマン−コールター社製)で測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、累積50%となる粒径を体積D50v、累積84%となる粒径を体積D84vと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16V)1/2として算出される。
得られたトナーの形状係数SF1は、画像形成性の点より100〜140の範囲、好ましくは110〜135の範囲が適当である。形状係数SF1は次のようにして求められる。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて周囲長(ML)と投影面積(A)を測定し、(周囲長の2乗/投影面積=ML2/A)を求めこれを平均したものをトナーの形状係数SF1とした。
また、本発明のトナーには、流動性付与やクリーニング性向上の目的で通常のトナーと同様に乾燥した後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂微粒子を乾燥状態でせん断をかけながらトナー粒子表面に添加して使用することができる。
また、水系媒体中にてトナー表面に付着せしめる場合、無機粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど通常トナー表面の外添剤として使うすべてのものをイオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基で分散することにより使用することができる。
以上説明した本発明の静電荷現像用トナーは、静電荷現像剤として使用される。この現像剤は、この静電荷像現像用トナーを含有することの外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。静電荷像現像用トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
キャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアを使用することができる。
なお、静電荷像現像剤における、トナーと、キャリアとの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記静電荷現像剤(静電荷現像用トナー)は、通常の静電荷現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用することができる。上記画像形成方法は、具体的には、例えば、静電潜像形成工程、トナー画像形成工程、転写工程、定着工程及びクリーニング工程を含む。前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、下記の実施例及び比較例によって本発明が限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
<各種特性の測定方法>
まず、実施例、比較例で用いたトナー等の物性測定方法について説明する。
(トナー粒度及び粒度分布測定方法)
本発明におけるトナー粒度及び粒度分布測定は、測定装置としてはコールターカウンターTA−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100〜150ml中に添加した。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターカウンターTA−II型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して、前述のようにして体積平均粒径、GSDv、GSDpを求めた。測定する粒子数は50000であった。
(樹脂の分子量、分子量分布測定方法)
本発明における重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnの値は、下記の測定法によって求めたものである。すなわち、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)によって、以下に記す条件で重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを測定した。
温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を毎分1.2mlの流速で流し、濃度0.2g/20mlのテトラヒドロフラン試料溶液を試料質量として3mg注入し測定を行った。試料の分子量測定にあたっては、当該試料の有する分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作製された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択する。
なお、測定結果の信頼性は、上述の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン標準試料が、重量平均分子量Mw=28.8×104、数平均分子量Mn=13.7×104となることにより確認することができる。また、用いるGPCのカラムとしては、前記条件を満足するものであるならばいかなるカラムを採用してもよい。具体的には、例えばTSK−GEL、GMH(東洋曹達社製)等を用いることができる。また、溶媒および測定温度は記載した条件に限定されるものではなく適当な条件に変更してもよい。
(樹脂微粒子、着色剤粒子等の体積平均粒径)
樹脂微粒子、着色剤粒子等の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
(樹脂の融点、ガラス転移温度の測定方法)
非晶性樹脂のガラス転移点(Tg)及び結晶性樹脂の融点(Tm)は、示差走査熱量計(島津製作所製:DSC50)を用い、室温から150℃まで昇温速度10℃/分の条件下で測定することにより求めた。なお、ガラス転移点は吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度とし、融点は吸熱ピークの頂点の温度とした。
点(Tg)を示した。
<実施例1>
(油相1の調製)
・1,9−ノナンジオール 10.0部
・ドデカンジオニック酸 14.0部
・スチレン 20部
・アクリル酸ブチル 2.5部
・メタクリル酸ステアリル 2.5部
・アクリル酸 2.5部
・ドデカンチオール 0.75部
上記各成分を130℃で加熱溶解させ均一な油相1を調製した。
(水相1の調製)
・ドデシルベンゼンスルフォン酸 1.66部
・水 200部
上記を混合して均一な水層1を調製した。
(樹脂微粒子分散液1の作製)
前記調製した水相1を75℃恒温槽中で1時間攪拌した。この水相1を1リットルの容器に入れ、ウルトラタラックス(IKA社製)を用いて8000rpmで1分間攪拌した後、油層1を加えさらに8000rpmで3分間攪拌し乳化物を得た。次いで、攪拌機を備えた1リットルのリアクターに上記乳化物を投入し、窒素雰囲気下、70℃で24時間重縮合を実施した。この反応物を少量取り出し、NMR分析を実施したところ、この時点の重合体はほぼポリエステルであることが分った。作製したポリエステルの物性は以下の通りである。
・GPCによるポリエステル重量平均分子量:4600
なお、前記NMRの測定は、重水素クロロホルムを使用し、プロトンNMR(バリアン社製、300MHz)により行った。M.Barrere,K.Landfester/Polymer 44(2003)2833−2841のp2836に記載に従い、NMRのケミカルシフト4.05ppmと3.6ppmとの面積強度を比較することにより、ポリエステルピークを確認し、重縮合の進行を判断した。
上記で得られた樹脂分散液に、0.8部の過硫酸アンモニウムを10部のイオン交換水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行ったところ、体積平均粒径が0.4μmの安定な樹脂微粒子分散液1を得た。同様に樹脂微粒子を少量とり、ポリエステル/ビニル複合重合体(重縮合樹脂/ラジカル重合樹脂)の物性を測定した。
・GPCによるビニル系重合体の重量平均分子量:42000
・GPCによるポリエステルの重量平均分子量:4700
・ポリエステルの融点:71℃
・ビニル系重合体のガラス転移点:62℃
上記のようにして得られた樹脂微粒子は、ポリエステル/ビニル系重合体の複合粒子であることが確認された。
得られた樹脂微粒子を風乾し、XPS(X線光電子分光法)により樹脂微粒子最表面を定量することにより、ポリエステル(重縮合樹脂)構成単量体分子比率、ビニル系重合体(ラジカル重合樹脂)構成単量体分子比率の占有割合を算出したところ、前者は82.5%、後者は17.5%であった。なお、粒子表面の定性分析においては、炭素、酸素以外の原子は検出されなかった。
上記XPS(X線光電子分光法)による粒子最表面の定量は、具体的には次のように実施した。
作製した樹脂微粒子分散液をサンプル皿に約5ml採り、24時間静置して樹脂微粒子サンプルを作製した。その樹脂微粒子の最表面の酸素原子1s、炭素原子1sスペクトルを下記条件で測定した。
(XPS測定条件)
・X線光電子分光装置:日本電子社製 JPS−9000MX
・光電子励起:MgKα線(10kV、30mA)
・光電子エネルギーアナライザーのパスエネルギー:30V
得られた酸素、炭素原子スペクトルの面積強度を比較することにより、表面の酸素/炭素原子の占有割合を算出した。さらに、当該組成から重合され得る重縮合樹脂の構造式を用い、理論酸素/炭素原子の含有率を算出した。同様に、ラジカル重合性単量体のホモポリマーの構造式より、理論酸素/炭素原子の含有率を算出した。樹脂微粒子の最表面における前記単量体の分子比率は、2種の樹脂の理論酸素原子/炭素原子含有率と、その解となる実測値を連立方程式として解くことによって、算出できる。
<実施例2>
(油相2の調製)
・1,9−ノナンジオール 10.0部
・ドデカンジオニック酸 14.0部
・スチレン 8.0部
・アクリル酸ブチル 1.0部
・メタクリル酸ラウリル 2.5部
・アクリル酸 16.0部
・ドデカンチオール 0.75部
上記各成分を130℃で加熱溶解させ均一な油相2を調製した。
(水相2の調製)
・ドデシルベンゼンスルフォン酸 1.66部
・水 200部
上記を混合して均一な水層2を調製した。
(樹脂微粒子分散液2の作製)
実施例1の樹脂微粒子分散液1の作製において、油層1及び水層1の代わりに油層2及び水層2を用いた以外は同様の方法で反応を行った。24時間重縮合後の反応物を少量取り出し、NMR分析を実施したところ、この時点の重合体はほぼポリエステルであることがわかった。作製したポリエステルの物性は以下である。
・GPCによるポリエステル重量平均分子量:2200
上記で得られた樹脂分散液に、0.8部の過硫酸アンモニウムを10部のイオン交換水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行ったところ、体積平均粒径が0.4μmの安定な樹脂微粒子分散液2を得た。同様に樹脂微粒子を少量とり、ポリエステル/ビニル複合重合体(重縮合樹脂/ラジカル重合樹脂)の物性を測定した。
・GPCによるビニル系重合体の重量平均分子量:59000
・GPCによるポリエステルの重量平均分子量:2200
・ポリエステルの融点:68℃
・ビニル系重合体のガラス転移点:64℃
上記のようにして得られた樹脂微粒子は、ポリエステル/ビニル系重合体の複合粒子であることが確認された。
得られた樹脂微粒子を風乾し、XPS(X線光電子分光法)により樹脂微粒子最表面を定量することにより、ポリエステル(重縮合樹脂)構成単量体分子比率、ビニル系重合体(ラジカル重合樹脂)構成単量体分子比率の占有割合を算出したところ、前者は31.3%、後者は68.7%であった。なお、粒子表面の定性分析においては、炭素、酸素以外の原子は検出されなかった。
<実施例3>
(油相3の調製)
・1,9−ノナンジオール 10.0部
・ドデカンジオニック酸 14.0部
・スチレン 20部
・アクリル酸ブチル 2.5部
・メタクリル酸ステアリル 2.5部
・メタクリル酸 2.5部
・ドデカンチオール 0.75部
上記各成分を130℃で加熱溶解させ均一な油相3を調製した。
(水相3の調製)
・ドデシルベンゼンスルフォン酸 1.66部
・水 200部
上記を混合して均一な水層3を調製した。
(樹脂微粒子分散液3の作製)
前記調製した水相3を75℃恒温槽中で1時間攪拌した。この水相3を1リットルの容器に入れ、ウルトラタラックス(IKA社製)を用いて1000rpmで1分間攪拌した後、油層3を加えさらに1000rpmで1分間攪拌し乳化物を得た。次いで、攪拌機を備えた1リットルのリアクターに上記乳化物を投入し、窒素雰囲気下、70℃で24時間重縮合を実施した。この反応物を少量取り出し、NMR分析を実施したところ、この時点の重合体はほぼポリエステルであることが分った。作製したポリエステルの物性は以下の通りである。
・GPCによるポリエステル重量平均分子量:2500
上記で得られた樹脂分散液に、0.8部の過硫酸アンモニウムを10部のイオン交換水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行ったところ、体積平均粒径が4.6μmの樹脂微粒子分散液3を得た。同様に樹脂微粒子を少量とり、ポリエステル/ビニル複合重合体(重縮合樹脂/ラジカル重合樹脂)の物性を測定した。
・GPCによるビニル系重合体の重量平均分子量:66000
・GPCによるポリエステルの重量平均分子量:2600
・ポリエステルの融点:69℃
・ビニル系重合体のガラス転移点:64℃
上記のようにして得られた樹脂微粒子は、ポリエステル/ビニル系重合体の複合粒子であることが確認された。
得られた樹脂微粒子を風乾し、XPS(X線光電子分光法)により樹脂微粒子最表面を定量することにより、ポリエステル(重縮合樹脂)構成単量体分子比率、ビニル系重合体(ラジカル重合樹脂)構成単量体分子比率の占有割合を算出したところ、前者は88.9%、後者は11.1%であった。なお、粒子表面の定性分析においては、炭素、酸素以外の原子は検出されなかった。
<実施例4>
(油相4の調製)
・1,9−ノナンジオール 8.0部
・ドデカンジオニック酸 12.0部
・スチレン 5.0部
・アクリル酸ブチル 0.6部
・メタクリル酸ステアリル 20.0部
・アクリル酸 2.5部
・ドデカンチオール 0.75部
上記各成分を130℃で加熱溶解させ均一な油相4を調製した。
(水相4の調製)
・ドデシルベンゼンスルフォン酸 1.66部
・水 200部
上記を混合して均一な水層4を調製した。
(樹脂微粒子分散液4の作製)
実施例1の樹脂微粒子分散液1の作製において、油層1及び水層1の代わりに油層4及び水層4を用いた以外は同様の方法で反応を行った。24時間重縮合後の反応物を少量取り出し、NMR分析を実施したところ、この時点の重合体はほぼポリエステルであることがわかった。作製したポリエステルの物性は以下である。
・GPCによるポリエステル重量平均分子量:3900
上記で得られた樹脂分散液に、0.8部の過硫酸アンモニウムを10部のイオン交換水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行ったところ、体積平均粒径が0.7μmの安定な樹脂微粒子分散液4を得た。同様に樹脂微粒子を少量とり、ポリエステル/ビニル複合重合体(重縮合樹脂/ラジカル重合樹脂)の物性を測定した。
・GPCによるビニル系重合体の重量平均分子量:58000
・GPCによるポリエステルの重量平均分子量:3900
・ポリエステルの融点:70℃
・ビニル系重合体のガラス転移点:64℃
上記のようにして得られた樹脂微粒子は、ポリエステル/ビニル系重合体の複合粒子であることが確認された。
得られた樹脂微粒子を風乾し、XPS(X線光電子分光法)により樹脂微粒子最表面を定量することにより、ポリエステル(重縮合樹脂)構成単量体分子比率、ビニル系重合体(ラジカル重合樹脂)構成単量体分子比率の占有割合を算出したところ、前者は87.3%、後者は12.7%であった。なお、粒子表面の定性分析においては、炭素、酸素以外の原子は検出されなかった。
<実施例5>
(油相5の調製)
・1,9−ノナンジオール 10.0部
・ドデカンジオニック酸 14.0部
・スチレン 20.0部
・アクリル酸ブチル 2.5部
・アクリル酸 2.5部
・ドデカンチオール 0.75部
上記各成分を130℃で加熱溶解させ均一な油相5を調製した。
(水相5の調製)
・ドデシルベンゼンスルフォン酸 1.66部
・水 200部
上記を混合して均一な水層5を調製した。
(樹脂微粒子分散液5の作製)
実施例1の樹脂微粒子分散液1の作製において、油層1及び水層1の代わりに油層5及び水層5を用いた以外は同様の方法で反応を行った。24時間重縮合後の反応物を少量取り出し、NMR分析を実施したところ、この時点の重合体はほぼポリエステルであることがわかった。作製したポリエステルの物性は以下である。
・GPCによるポリエステル重量平均分子量:2700
上記で得られた樹脂分散液に、0.8部の過硫酸アンモニウムを10部のイオン交換水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行ったところ、体積平均粒径が5.6μmの安定な樹脂微粒子分散液5を得た。同様に樹脂微粒子を少量とり、ポリエステル/ビニル複合重合体(重縮合樹脂/ラジカル重合樹脂)の物性を測定した。
・GPCによるビニル系重合体の重量平均分子量:60000
・GPCによるポリエステルの重量平均分子量:2700
・ポリエステルの融点:69℃
・ビニル系重合体のガラス転移点:64℃
上記のようにして得られた樹脂微粒子は、ポリエステル/ビニル系重合体の複合粒子であることが確認された。
得られた樹脂微粒子を風乾し、XPS(X線光電子分光法)により樹脂微粒子最表面を定量することにより、ポリエステル(重縮合樹脂)構成単量体分子比率、ビニル系重合体(ラジカル重合樹脂)構成単量体分子比率の占有割合を算出したところ、前者は85.4%、後者は14.6%であった。なお、粒子表面の定性分析においては、炭素、酸素以外の原子は検出されなかった。
<実施例6>
(油相6の調製)
・1,4−ブタンジオール 10.0部
・アゼライン酸 14.0部
・スチレン 25部
・アクリル酸ブチル 2.5部
・アクリル酸 2.5部
・ヘキサデカン 2.5部
・ドデカンチオール 0.75部
上記各成分を130℃で加熱溶解させ均一な油相6を調製した。
(水相6の調製)
・ドデシルベンゼンスルフォン酸 1.66部
・水 200部
上記を混合して均一な水層6を調製した。
(樹脂微粒子分散液6の作製)
実施例1の樹脂微粒子分散液1の作製において、油層1及び水層1の代わりに油層6及び水層6を用いた以外は同様の方法で反応を行った。24時間重縮合後の反応物を少量取り出し、NMR分析を実施したところ、この時点の重合体はほぼポリエステルであることがわかった。作製したポリエステルの物性は以下である。
・GPCによる重量平均分子量:3700
上記で得られた樹脂分散液に、0.8部の過硫酸アンモニウムを10部のイオン交換水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行ったところ、体積平均粒径が0.4μmの安定な樹脂微粒子分散液6を得た。同様に樹脂微粒子を少量とり、ポリエステル/ビニル複合重合体(重縮合樹脂/ラジカル重合樹脂)の物性を測定した。
・GPCによるビニル系重合体の重量平均分子量:54000
・GPCによるポリエステルの重量平均分子量:3900
・ポリエステルの融点:46℃
・ビニル系重合体のガラス転移点:63℃
上記のようにして得られた樹脂微粒子は、ポリエステル/ビニル系重合体の複合粒子であることが確認された。
得られた樹脂微粒子を風乾し、XPS(X線光電子分光法)により樹脂微粒子最表面を定量することにより、ポリエステル(重縮合樹脂)構成単量体分子比率、ビニル系重合体(ラジカル重合樹脂)構成単量体分子比率の占有割合を算出したところ、前者は84.2%、後者は15.8%であった。なお、粒子表面の定性分析においては、炭素、酸素以外の原子は検出されなかった。
<比較例1>
(油相7の調製)
・1,9−ノナンジオール 10.0部
・ドデカンジオニック酸 14.0部
・スチレン 20部
・アクリル酸ブチル 2.5部
・ドデカンチオール 0.75部
上記各成分を130℃で加熱溶解させ均一な油相7を調製した。
(水相7の調製)
・ドデシルベンゼンスルフォン酸 1.66部
・水 200部
上記を混合して均一な水層7を調製した。
(樹脂微粒子分散液7の作製)
実施例1の樹脂微粒子分散液1の作製において、油層1及び水層1の代わりに油層7及び水層7を用いた以外は同様の方法で反応を行った。24時間重縮合後の反応物を少量取り出し、NMR分析を実施したところ、この時点の重合体はほぼポリエステルであることがわかった。作製したポリエステルの物性は以下である。
・GPCによるポリエステル重量平均分子量:19000
上記で得られた樹脂分散液に、0.8部の過硫酸アンモニウムを10部のイオン交換水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行ったところ、体積平均粒径が6.2μmの安定な樹脂微粒子分散液7を得た。同様に樹脂微粒子を少量とり、ポリエステル/ビニル複合重合体(重縮合樹脂/ラジカル重合樹脂)の物性を測定した。
・GPCによるビニル系重合体の重量平均分子量:51000
・GPCによるポリエステルの重量平均分子量:2000
・ポリエステルの融点:67℃
・ビニル系重合体のガラス転移点:62℃
上記のようにして得られた樹脂微粒子は、ポリエステル/ビニル系重合体の複合粒子であることが確認された。
得られた樹脂微粒子を風乾し、XPS(X線光電子分光法)により樹脂微粒子最表面を定量することにより、ポリエステル(重縮合樹脂)構成単量体分子比率、ビニル系重合体(ラジカル重合樹脂)構成単量体分子比率の占有割合を算出したところ、前者が100%であった。なお、粒子表面の定性分析においては、炭素、酸素以外の原子は検出されなかった。
<比較例2>
(油相8の調製)
・1,9−ノナンジオール 10.0部
・ドデカンジオニック酸 14.0部
・スチレン 22部
・アクリル酸ブチル 2.5部
・ポリスチレン(シグマアルドリッチ社製、Mw:9000) 2.5部
・アクリル酸 0.05部
・ドデカンチオール 0.75部
上記各成分を130℃で加熱溶解させ均一な油相8を調製した。
(水相8の調製)
・ドデシルベンゼンスルフォン酸 1.66部
・水 200部
上記を混合して均一な水層8を調製した。
(樹脂微粒子分散液8の作製)
実施例1の樹脂微粒子分散液1の作製において、油層1及び水層1の代わりに油層8及び水層8を用いた以外は同様の方法で反応を行った。24時間重縮合後の反応物を少量取り出し、NMR分析を実施したところ、この時点の重合体はほぼポリエステルであることがわかった。作製したポリエステルの物性は以下である。
・GPCによるポリエステル重量平均分子量:4300
上記で得られた樹脂分散液に、0.8部の過硫酸アンモニウムを10部のイオン交換水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行ったところ、体積平均粒径が0.5μmの安定な樹脂微粒子分散液2を得た。同様に樹脂微粒子を少量とり、ポリエステル/ビニル複合重合体(重縮合樹脂/ラジカル重合樹脂)の物性を測定した。
・GPCによるビニル系重合体の重量平均分子量:45000
・GPCによるポリエステルの重量平均分子量:4400
・ポリエステルの融点:70℃
・ビニル系重合体のガラス転移点:64℃
上記のようにして得られた樹脂微粒子は、ポリエステル/ビニル系重合体の複合粒子であることが確認された。
得られた樹脂微粒子を風乾し、XPS(X線光電子分光法)により樹脂微粒子最表面を定量することにより、ポリエステル(重縮合樹脂)構成単量体分子比率、ビニル系重合体(ラジカル重合樹脂)構成単量体分子比率の占有割合を算出したところ、前者は97.4%、後者は2.6%であった。なお、粒子表面の定性分析においては、炭素、酸素以外の原子は検出されなかった。
実施例1〜6、比較例1〜2の配合、各樹脂微粒子の特性を表1にまとめて示す。
<実施例7>
(ブラックトナー(トナーK1)の作製)
−離型剤微粒子分散液(W1)の調製−
・ポリエチレンワックス (東洋ペトロライト社製、Polywax725、融点:103℃) 30部
・カチオン性界面活性剤(花王社製、サニゾールB50) 3部
・イオン交換水 67部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で95℃に加熱しながら十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザー)で分散処理し、離型剤微粒子分散液(W1)を調製した。得られた分散液中の離型剤微粒子の個数平均粒子径D50nは310nmであった。その後イオン交換水を加えて、分散液の固形分濃度を30%に調整した。
−マゼンタ顔料分散液(M1)の調製−
・マゼンタ顔料(大日精化工業社製、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドン)) 20部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2部
・イオン交換水 78部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、3000rpmで2分間、顔料を水になじませ、さらに5000回転で10分間分散後、通常の攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで約1時間分散させてマゼンタ顔料分散液(MN1)を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは106nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を15%に調整した。
−シアン顔料分散液(C1)の調製−
・シアン顔料(大日精化工業社製、C.I.ピグメントブルー15:3)20部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2部
・イオン交換水 78部
上記成分を、マゼンタ顔料分散液(M1)と同様にして調整し、シアン顔料分散液を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは121nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を15%に調整した。
−イエロー顔料分散液(Y1)の調製−
・イエロー顔料(クラリアントジャパン社製、C.I.ピグメントイエロー74) 20部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2部
・イオン交換水 78部
上記成分を、マゼンタ顔料分散液(MN1)と同様にして調製し、イエロー顔料分散液を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは118nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を15%に調整した。
(ブラック顔料分散液(K1)の調製)
・カーボンブラック(キャボット社製、リーガル330) 20部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2部
・イオン交換水 78部
上記成分を、マゼンタ顔料分散液(MN1)と同様にして調製し、ブラック顔料分散液を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは120nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を15%に調整した。
−ブラックトナー(トナーK1)の作製−
・樹脂微粒子分散液1 160部
・離型剤微粒子分散液(W1) 33部(トナーに対して10%)
・ブラック顔料分散液(K1) 60部(トナーに対して9%)
・ポリ塩化アルミニウム10%水溶液(浅田化学社製、PAC100W)15部
・1%硝酸水溶液 3部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中で、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて5000rpmで3分間分散した後、前記フラスコに磁力シールを有した攪拌装置、温度計とpH計を具備した蓋をしてから、加熱用マントルヒーターをセットし、フラスコ中の分散液全体が攪拌される最低の回転数に適宜調節して攪拌しながら、57℃まで1℃/1minで加熱し、57℃で30分間保持し、凝集粒子の粒径をコールターカウンター(ベックマン−コールター社製、TA II)で確認した。
必要に応じこの温度を保持または数度昇温し、粒子径が目的とする粒径近傍であることを確認した後、昇温を停止した。
昇温停止後、直ちに樹脂微粒子分散液1を50部追加し、30分間保持したのち、系内のpHが6.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えてから、1℃/1minで97℃まで加熱した。昇温後、硝酸水溶液を加えて系内のpHを5.0にして、10時間保持して凝集粒子を加熱融合した。この後、系内を50℃まで降温し、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12.0に調節して10分間保持した。その後フラスコから取り出し、イオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄した後、さらに固形分量が10%となるようにイオン交換水中に分散し、硝酸を加えてpH3.0で10分間攪拌した後、再びイオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄して得られたスラリーを凍結乾燥してブラックトナー粒子を得た。
前記ブラックトナー粒子に、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO2)微粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物微粒子とを、それぞれ1%づつ添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、ブラックトナー(トナーK1)を作製した。
このようにして作製したトナーの体積平均粒径D50は5.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.19であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数SF1は125〜135のポテト形状域であることを確認した。
(キャリアの作製)
体積平均粒子径40μmのCu−Znフェライト微粒子100部に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.1部を含有するメタノール溶液を添加し、ニーダーで被覆した後、メタノールを留去し、さらに120℃で2時間加熱して上記シラン化合物を完全に硬化させた。この粒子に、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体(共重合比40:60)をトルエンに溶解させたものを添加し、真空減圧型ニーダーを使用してパーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体のコーティング量が0.5%となるように樹脂被覆型キャリアを製造した。
(現像剤の作製)
ブラックトナーK1を4部を、得られた樹脂被覆型キャリア100部に混合して、ブラック色現像用の静電荷像現像剤を作製した。
(評価)
−定着特性−
画像形成装置としてDocu Centre Color500CP(富士ゼロックス社製)を用い、現像剤として前記現像剤を搭載して画像形成を行い定着特性を評価した。すなわち、前記画像形成装置の定着装置を取り外し、画像形成後、未定着画像として排出できるようにした。この未定着画像を用いて定着テストを行ない、下記の方法により最低定着温度(定着可能な加熱ローラの最低温度)、オフセット発生温度(オフセット現象が生ずる最低温度)を測定した。
・最低定着温度
上記画像形成装置にて、64g/m2の転写紙に未定着画像を作成した後、表層がテフロン(登録商標)で形成された直径30mmの熱ローラと、表層がシリコーンゴムで形成された圧着ローラとよりなる定着器により、トナー像を線速度70mm/秒、線圧0.8kg/cm、ニップ幅4.9mmで定着せしめる操作を、熱ローラの設定温度を80〜240℃の範囲内で5℃づつ段階的に高くして各温度において繰り返し、形成された定着画像に対してキムワイプ摺擦を施し、十分な耐摺擦性を示す定着画像となる最低の設定温度をもって最低定着温度とした。なお、ここに用いた定着器はシリコーンオイル供給機構を有さないものである。
・オフセット発生温度
オフセット発生温度の測定は、最低定着温度の測定に準ずるが、上記画像形成装置にて未定着画像を作成した後、トナー像を転写して上述の定着器により定着処理を行い、次いで白紙の転写紙を同様の条件下で定着器に送ってこれにトナー汚れが生ずるか否かを目視観察する操作を、前記定着器の熱ローラの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた最低の設定温度をもってオフセット発生温度とした。
上記のようにして決定される最低定着温度、オフセット発生温度について、以下の基準により評価した。なお、○を合格とした。
・最低定着温度120℃以下、かつオフセット発生温度が230℃以上・・・○
・最低定着温度が120℃を超え130℃以下、かつオフセット発生温度が210℃以上230℃未満・・・△
・最低定着温度が130℃を超え150℃以下、かつオフセット発生温度が180℃以上210℃未満・・・×
−画質−
画質特性は細線を定着した画質の細線再現性と非定着部分のかぶり(目視)をルーペで測定し、以下のように判定した。
・細線にむらがなく、かぶりもまったくない・・・◎
・画質を注意深く観察した場合に、わずかなむらやかぶりが見られる・・・○
・画質にわずかにむらがある・・・△
・画質にむらがある・・・×
結果をまとめて表2に示す。
<実施例8>
前記ブラックトナー粒子の作製において、マゼンタ顔料分散液(K1)をシアン顔料分散液(C1)に変えた以外は同様にしてシアントナー粒子を得た。シアントナー粒子の体積平均粒径D50Vは6.0μmであった。このトナー粒子の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤が狙い通り融合されており、穴や凹凸などは見られず、顔料の分散状態も良好であった。また、このトナーの形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ、SF1は125〜135のポテト形状であった
本トナー粒子にブラックトナーと同様に外添剤を外添しシアントナー(トナーC1)を得た。このトナーC1を用いて実施例7と同様に現像剤を作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
<実施例9>
前記ブラックトナー粒子の作製において、ブラック顔料分散液(K1)をイエロー顔料分散液(Y1)に変えた以外は同様にしてイエロートナー粒子を得た。イエロートナー粒子の体積平均粒径D50Vは5.7μmであった。このトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤が狙い通り融合されており、穴や凹凸などは見られず、顔料の分散状態も良好であった。また、このトナーの形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ125〜135であった。
本トナー粒子にブラックトナーと同様に外添剤を外添しイエロトナー(トナーY1)を得た。このトナーY1を用いて実施例7と同様に現像剤を作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
<実施例10>
前記ブラックトナー粒子の作製において、ブラック顔料分散液(K1)をマゼンタ顔料分散液(M1)に変えた以外は同様にしてマゼンタトナー粒子を得た。このマゼンタトナー粒子の体積平均粒径D50Vは6.0μmであった。このトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤が狙い通り融合されており、穴や凹凸などは見られず、顔料の分散状態も良好であった。また、このトナー粒子の形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ125〜135のポテト形状であった。
本トナー粒子にブラックトナーと同様に外添剤を外添しマゼンタトナー(トナーM1)を得た。このトナーM1を用いて実施例7と同様に現像剤を作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
<実施例11〜14>
実施例7において、樹脂微粒子分散液1を各々表2に示すように変更した以外は同様にしてブラックトナーK2〜K5を作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
<実施例15>
実施例7において、樹脂微粒子分散液1を樹脂微粒子分散液6に変更し、さらに凝集温度を42℃、合一温度を85℃に変更した以外は同様にしてブラックトナーK6を作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
<比較例3>
実施例7において、樹脂微粒子分散液1を樹脂微粒子分散液7に変更した以外は同様にしてブラックトナーK7を作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
<比較例4〜6>
比較例3において、顔料分散液を各々シアン顔料分散液(C1)、イエロー顔料分散液(Y1)、マゼンタ顔料分散液(M1)に変更した以外は同様にしてトナーC7、トナーY7、トナーM7を作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
<比較例7>
実施例7において、樹脂微粒子分散液1を樹脂微粒子分散液8に変更した以外は同様にしてブラックトナーK8を作製し、同様の評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
以上の結果より、実施例に示した本発明の樹脂微粒子分散液では、その樹脂微粒子の最表面構造を限定することによって、その樹脂粒子分散液を用いて作製するトナーの製造性を高め、高画質な画像を提供できることがわかった。一方、比較例の樹脂微粒子分散液では、トナーの製造に時間がかかるだけでなく、得られたトナーの定着特性や画質に劣るものであった。