JP4639574B2 - 固体酸化物型燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化物イオン伝導体からなる固体電解質層を空気極層と燃料極層との間に挟んだ積層構造の発電セルを持つ固体酸化物型燃料電池は、第三世代の発電用燃料電池として開発が進んでいる。発電セルでは、空気極側に酸化剤ガスとしての酸素(空気)が、燃料極側には燃料ガス(H2 、CH4 等)が供給される。空気極と燃料極は、酸素および燃料ガスが固体電解質との界面に到達することができるように、いずれも多孔質とされている。
【0003】
空気極側に供給された酸素は、空気極層内の気孔を通って固体電解質層との界面近傍に到達し、この部分で、空気極から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極の方向に向かって固体電解質層内を拡散移動する。燃料極との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で、燃料ガスと反応して反応生成物(H2 O 等)を生じ、燃料極に電子を放出する。この電子を外部に起電力として取り出すことができる。
【0004】
因みに、燃料に水素を用いた場合の電極反応は次のようになる。
空気極: 1/2 O2 + 2e- → O2-
燃料極: H2 + O2- → H2 O+2e-
全体 : H2 + 1/2 O2 → H2 O
【0005】
固体電解質層は、酸化物イオンの移動媒体であると同時に、燃料ガスと空気を直接接触させないための隔壁としても機能するので、ガス不透過性の緻密な構造となっている。この固体電解質層は、酸化物イオン伝導性が高く、空気極側の酸化性雰囲気から燃料極側の還元性雰囲気までの条件下で化学的に安定で、熱衝撃に強い材料から構成する必要があり、かかる要件を満たす材料として、イットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)が一般的に使用されている。
【0006】
一方、電極である空気極(カソード)層と燃料極(アノード)層はいずれも電子伝導性の高い材料から構成する必要がある。空気極材料は、少なくとも700℃前後の高温の酸化性雰囲気中で化学的に安定でなければならないため、金属は不適当であり、電子伝導性を持つペロブスカイト型酸化物材料、具体的にはLaMnO3 もしくはLaCoO3 、または、これらのLaの一部をSr、Ca等に置換した固溶体が一般に使用されている。また、燃料極材料は、Ni、Coなどの金属、或いはNi−YSZ、Co−YSZなどのサーメットが一般的である。
【0007】
固体酸化物型燃料電池には、1000℃前後の高温で作動させる高温作動型のものと、700℃前後の低温で作動させる低温作動型のものとがある。低温作動型の固体酸化物型燃料電池は、例えば電解質であるイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)の厚さを10μm程度まで薄膜化して、電解質の抵抗を低くして、低温でも燃料電池として発電するように改良された固体電解質層を使用する。
【0008】
高温の固体酸化物型燃料電池では、セパレータには、例えばランタンクロマイト(LaCrO3 )等の電子伝導性を有するセラミックスが用いられるが、低温作動型の固体酸化物型燃料電池では、ステンレス等の金属材料を使用することができる。
【0009】
また、固体酸化物型燃料電池の構造には、円筒型、モノリス型、及び平板積層型の3種類が提案されている。それらの構造のうち、低温作動型の固体酸化物型燃料電池には、金属のセパレータを使用できることから、金属のセパレータに形状付与しやすい平板積層型の構造が適している。
【0010】
平板積層型の固体酸化物型燃料電池のスタックは、発電セル、集電体、セパレータを交互に積層した構造を持つ。一対のセパレータが発電セルを両面から挟んで、一方は空気極集電体を介して空気極と、他方は燃料極集電体を介して燃料極と接している。燃料極集電体には、Ni基合金等のスポンジ状の多孔質体を使用することができ、空気極集電体には、Ag基合金等の同じくスポンジ状の多孔質体を使用することができる。スポンジ状多孔質体は、集電機能、ガス透過機能、均一ガス拡散機能、クッション機能、熱膨脹差吸収機能等を兼ね備えるので、多機能の集電体材料として適している。
【0011】
セパレータは、発電セル間を電気接続すると共に、発電セルに対してガスを供給する機能を有するもので、燃料ガスをセパレータ外周面から導入してセパレータの燃料極層に対向する面から吐出させる燃料通路と、酸化剤ガスとしての空気をセパレータ外周面から導入してセパレータの空気極層に対向する面から吐出させる酸化剤通路とをそれぞれ有している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記平板積層型の固体酸化物型燃料電池にあっては、上記発電反応に伴い発生するジュール熱の放熱状態等の違いから、発電セルの積層方向に温度差が生じ易く、図3に示すように、燃料電池スタックの中央部の温度が最も高く、上下両端部の温度が低くなるという傾向がある。これに加えて、上下両端部についても、発電反応によって生成された高温ガスの排気方向によっては温度差が生じてしまう。
【0013】
一方、上記固体酸化物型燃料電池においては、各発電セルが直列に接続された状態となっているために、一番温度の低い発電セル(すなわち、低電流となる発電セル)によって発電性能が規定されてしまい、上記のように、発電セルの積層方向に温度差が生じると、全体として発電効率が低下してしまうという問題点があった。
【0014】
そこで、上記問題点を解決するために、例えば、燃料電池スタックの温度を全体的に高くして、相対温度の低いスタック両端部の温度を引き上げることにより、発電性能を向上させるという方法も考えられるが、その方法の場合、相対温度の高いスタック中央部の温度も上昇して、発電反応に適した温度を越えてしまい、却って上記発電効率が低下してしまう虞がある。
【0015】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、従来のものと比較して、各発電セルの温度の一層の均一化を図ることができ、これにより、全体としての発電効率を向上させることが可能な固体酸化物型燃料電池を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、発電セルとセパレータとを鉛直方向に交互に積層してなる燃料電池スタックと、この燃料電池スタックを収容する筐体と、この筐体の外部から上記燃料電池スタックの内部に燃料ガスと酸化剤ガスをそれぞれ供給する燃料ガス供給手段および酸化剤ガス供給手段と、上記燃料電池スタックから上記筐体内に排出された排出ガスを上記筐体外に導く排気手段とを備える固体酸化物型燃料電池において、上記排気手段は、上記筐体の上部から上記排出ガスを上記筐体外に排気する第一排気管と、上記筐体の下部から上記排出ガスを上記筐体外に排気する第二排気管と、これら第一排気管および第二排気管の排気流量を調整する排気流量調整バルブとを備え、上記燃料電池スタック内には、その上端部、中央部、下端部の温度を検出する第1〜第3温度センサがそれぞれ設置されるとともに、これら第1〜第3温度センサには、当該第1〜第3温度センサの検出信号に基づいて上記排気流量調整バルブを制御する第1制御手段が接続され、かつ上記第1制御手段は、上記第1温度センサの検出信号に基づいて、上記燃料電池スタック上部の温度が低下していることを検知した場合に、上記排気流量調整バルブを制御して上記第一排気管からの排気量を増加させる一方、上記第3温度センサの検出信号に基づいて、上記燃料電池スタック下部の温度が低下していることを検知した場合に、上記排気流量調整バルブを制御して上記第二排気管からの排気量を増加させ、さらに上記第1〜第3温度センサの検出信号に基づいて、上記燃料電池スタックの中央部の温度が上昇していることを検知した場合には、上記排気流量調整バルブを制御して第一排気管および第二排気管からの排気量をともに増加させる制御を行うようになっていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、燃料電池スタックの上端部、中央部、下端部の温度を検出する第1〜第3温度センサと、これら温度センサの検出信号に基づいて排気流量調整バルブを制御する第1制御手段とを備えるので、燃料電池スタックの上端部、中央部、下端部の温度を監視しつつ、筐体上部と下部から排気されるガスの流量を任意に調整することができ、燃料電池スタックの温度制御を容易に行うことができる。
【0021】
すなわち、第1温度センサの検出信号に基づいて、燃料電池スタックの上部の温度が低下していることを検知した場合に、排気流量調整バルブを制御して第一排気管からの排気量を増加させる一方、第3温度センサの検出信号に基づいて、燃料電池スタックの下部の温度が低下していることを検知した場合に、排気流量調整バルブを制御して第二排気管からの排気量を増加させる制御を行うようにすれば、燃料電池スタックの上部と下部の温度差をなくすことができる。また、第1〜第3温度センサの検出信号に基づいて、燃料電池スタックの中央部の温度が上昇していることを検知した場合に、排気流量調整バルブを制御して第一排気管および第二排気管からの排気量をともに増加させる制御を行うようにすれば、発電セルの積層方向(鉛直方向)における燃料電池スタック内の温度のバラツキを低減することができる。したがって、従来のものと比較して、各発電セルの温度の一層の均一化を図ることができ、これにより、全体としての発電効率を向上させることが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態を示すもので、図中符号1は燃料電池(燃料電池モジュールとも呼ばれる)、2は筐体、3は積層方向を縦にして筐体2内に配置された燃料電池スタックである。この燃料電池スタック3は、固体電解質層4の両面に燃料極層5及び空気極層(酸化剤極層)6を配した発電セル(発電部)7と、燃料極層5の外側の燃料極集電体8と、空気極層6の外側の空気極集電体(酸化剤極集電体)9と、各集電体8、9の外側のセパレータ(最上層及び最下層のものは端板10a、10bである)10とを順番に積層した構造を持つ。
【0025】
ここで、固体電解質層4はイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)等で構成され、燃料極層5はNi、Co等の金属あるいはNi−YSZ、Co−YSZ等のサーメットで構成され、空気極層6はLaMnO3 、LaCoO3 等で構成され、燃料極集電体8はNi基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、空気極集電体9はAg基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、セパレータ10はステンレス等で構成されている。
【0026】
また、燃料電池スタック3の側方には、各セパレータ10の燃料通路(図示略)に接続管11を通して燃料ガスを供給する燃料用マニホールド13と、各セパレータ10の酸化剤通路(図示略)に接続管12を通して酸化剤ガスとしての空気を供給する酸化剤用マニホールド14とが、発電セル7の積層方向に延在して設けられている。また、上記マニホールド13、14の外周側には、各マニホールド13、14につながる燃料ガス予熱管15、酸化剤ガス予熱管16と、各予熱管15、16及び燃料電池スタック3を予熱するためのヒータ20が設けられている。ヒータ20及び予熱管15、16は、燃料電池1の筐体2の内部に収容されており、筐体2内の各予熱管15、16に対して、外部の燃料ガス供給管17、酸化剤ガス供給管18がそれぞれ接続されている。
【0027】
さらに、酸化剤ガス予熱管16には、冷却酸化剤ガス(室温の空気)を導入するための冷却管27が接続され、この冷却管27には、冷却酸化剤ガスの流量を調整するための冷却ガス流量調整バルブ28が設けられている。これら酸化剤ガス予熱管16、冷却管27、冷却ガス流量調整バルブ28、酸化剤用マニホールド14、酸化剤ガス供給管18等によって、筐体2の外部から燃料電池スタック3の内部に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段が構成され、燃料ガス予熱管15、燃料用マニホールド13、燃料ガス供給管17等によって、燃料電池スタック3の内部に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段が構成されている。
【0028】
また、筐体2には、燃料電池スタック3から筐体2内に排出された排出ガスを筐体内周の上部開口23aから取り入れて筐体外に排気する第一排気管22aと、筐体内周の下部開口23bから取り入れて筐体外に排気する第二排気管22bとが設けられている。そして、これら第一排気管22aおよび第二排気管22bには、各々の排気流量を調整可能な排気流量調整バルブ(図示省略)が設けられている。この排気流量調整バルブは、第一排気管22aと第二排気管22bの各々に設けるようにしても、或いは第一排気管22aのみに設けるようにしてもよい。すなわち、第一排気管22aにあっては、筐体2内の温度上昇により形成される上昇気流を利用して筐体2内の上記排気ガスを効率良く排気することができるので、第一排気管22aの排気流量を調整しさえすれば、結果として第二排気管22bの排気流量も調整することができる。このため、第二排気管22bに対しては、排気流量調整バルブを省略することが可能である。これら第一排気管22a、第二排気管22b、排気流量調整バルブ等によって、上記排出ガスを筐体2外に導く排気手段が構成されている。
【0029】
また、この燃料電池1では、発電セル7の外周部にガス漏れ防止シールを敢えて設けないシールレス構造としたことにより、運転時に、セパレータ10の略中心部から発電セル7に向けて供給する燃料ガス及び酸化剤ガス(空気)を、発電セル7の外周方向に拡散させながら燃料極層5及び空気極層6の全面に良好な分布で行き渡らせて発電反応を生じさせると共に、発電反応に消費されなかった残余のガスを、発電セル7の外周部から外に自由に放出するようになっている。つまり、燃料ガスと酸化剤ガスは、発電セル7の略中心部から外周方向に拡散するように流れながら、固体電解質層4との界面に到達して電気化学反応を起こし、発電に使用されなかった余剰ガスは、そのまま発電セル7の外周部から外へ放出されるようになっている。
【0030】
また、燃料電池スタック3には、その上端部、中央部、下端部の温度を検出する第1〜第3温度センサ30a、30b、30cがそれぞれ設置されている。すなわち、燃料電池スタック3の上端に位置する端板10aに第1温度センサ30aが、下端に位置する端板10bに第3温度センサ30cが、燃料電池スタック3のほぼ中央に位置するセパレータ10に第2温度センサ30bがそれぞれ取り付けられている。また、酸化剤用マニホールド14には、その内部温度を検出する第4温度センサ30dが設置されている。
【0031】
そして、これら温度センサ30a、30b、30c、30dの検出信号は、図示省略のコントローラに出力されるようになっている。このコントローラは、CPU、RAM、記憶装置、入力装置等を有し、記憶装置には、各温度センサ30a、30b、30c、30dから取得した温度データや、後述の温度制御処理に使用する各種判定データ等を格納する記憶領域が設けられている。このコントローラは、本発明に係る第1制御手段および第2制御手段を構成しており、第1〜第3温度センサ30a、30b、30cからの検出信号に基づいて上記排気流量調整バルブを制御するとともに、第1〜第4温度センサ30a、30b、30c、30dからの検出信号に基づいて冷却ガス流量調整バルブ28を制御するようになっている。
【0032】
次に、上記構成からなる固体酸化物型燃料電池の温度制御方法の一実施形態を説明する。
先ず、第1ステップでは、入力装置からの指示入力に基づいて、或いは所定時間毎に発生する割込信号等に基づいて、各温度センサ30a、30b、30cからの検出信号を入力し、これら検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の各部(上端部、中央部、下端部)間の温度差を演算により導き出し、その演算結果が予め設定された温度差の許容範囲(例えば、±25℃以内)に収まるか否かを判定する。
【0033】
上記判定の結果、上記許容範囲に収まる場合には、次の第2ステップに移行し、上記許容範囲に収まらない場合には、上記排気流量調整バルブを制御して、第一排気管22a、第二排気管22bの排気流量を調整する。具体的には、第1温度センサ30aの検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の上部の温度が低下していることを検知した場合に、上記排気流量調整バルブを制御して第一排気管22aからの排気量を増加させる一方、第3温度センサ30cの検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の下部の温度が低下していることを検知した場合には、上記排気流量調整バルブを制御して第二排気管22bからの排気量を増加させる制御を行う。また、各温度センサ30a、30b、30cの検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の中央部の温度が上昇していることを検知した場合には、上記排気流量調整バルブを制御して第一排気管22aおよび第二排気管22bからの排気量をともに増加させる制御を行う。
【0034】
そして、一定時間経過後、各温度センサ30a、30b、30cからの検出信号を再び入力し、これら検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の各部の温度差が上記許容範囲に収まるか否かを判定し、この判定の結果、上記許容範囲に収まらない場合には、上述した第1ステップの制御を繰り返し、上記許容範囲に収まる場合には、第2ステップに移行する。
【0035】
第2ステップでは、第1〜第3温度センサ30a、30b、30cからの検出信号を入力し、これら検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の各部(上端部、中央部、下端部)の温度が、図2に示すように、発電反応に適した所定の温度範囲(例えば、700〜750℃)内に収まるか否かを判定する。
【0036】
上記判定の結果、上記所定の温度範囲に収まる場合には、当該温度制御処理を終了する。一方、上記所定の温度範囲に収まらない場合には、燃料電池スタック3の上端部、中央部、下端部の温度、酸化剤用マニホールド14内の温度を監視しつつ、冷却酸化剤ガスの供給流量、すなわち燃料電池スタック3に供給する酸化剤ガスの温度を調整する。具体的には、第1〜第3温度センサ30a、30b、30cからの検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の何れかの部位の温度が、上記所定の温度範囲の下限T1を下回っていることを検知した場合には、第4温度センサ30dからの検出信号に基づき冷却ガス流量調整バルブ28の開度を調整して、冷却管27から酸化剤ガス予熱管16に供給する冷却酸化剤ガスの流量を低下させる制御を行う。これとは反対に、燃料電池スタック3の何れかの部位の温度が、上記所定の温度範囲の上限T2を超過していることを検知した場合には、第4温度センサ30dからの検出信号に基づき冷却ガス流量調整バルブ28の開度を調整して、冷却管27から酸化剤ガス予熱管16に供給する冷却酸化剤ガスの流量を増加させる制御を行う。
【0037】
そして、一定時間経過後、各温度センサ30a、30b、30cからの検出信号を再び入力し、これら検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の各部の温度が、上記所定の温度範囲に収まるか否かを判定し、この判定の結果、上記所定の温度範囲に収まらない場合には、上述した第2ステップの制御を繰り返し、上記所定の温度範囲に収まる場合には、当該温度制御処理を終了する。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、燃料電池スタック3の上端部、中央部、下端部の温度を検出する第1〜第3温度センサ30a、30b、30cと、これら温度センサ30a、30b、30cの検出信号に基づいて排気流量調整バルブを制御するコントローラ(第1制御手段)とを備えたことにより、燃料電池スタック3の上端部、中央部、下端部の温度を監視しつつ、筐体2の上部と下部から排気されるガスの流量を任意に調整することができ、燃料電池スタック3の温度制御を容易に行うことができる。
【0039】
すなわち、第1温度センサ30aの検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の上部の温度が低下していることを検知した場合に、排気流量調整バルブを制御して第一排気管22aからの排気量を増加させる一方、第3温度センサ30cの検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の下部の温度が低下していることを検知した場合に、排気流量調整バルブを制御して第二排気管22bからの排気量を増加させる制御を行うようにしたので、燃料電池スタック3の上部と下部の温度差をなくすことができる。また、第1〜第3温度センサ30a、30b、30cの検出信号に基づいて、燃料電池スタック3の中央部の温度が上昇していることを検知した場合には、排気流量調整バルブを制御して第一排気管22aおよび第二排気管22bからの排気量をともに増加させる制御を行うようにしたので、発電セル7の積層方向(鉛直方向)における燃料電池スタック3内の温度のバラツキを低減することができる。
【0040】
したがって、従来のものと比較して、各発電セル7の温度の一層の均一化を図ることができ、これにより、全体としての発電効率を向上させることが可能となる。なお、実際に、燃料電池スタックの温度分布を測定したところ、従来の固体酸化物型燃料電池では、図3に示すように、スタック内の温度差が最大で90℃あったのに対して、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1では、図2に示すように、スタック内の温度差が最大で40℃しかなく、各発電セル7の温度のバラツキ幅を従来の1/2以下に改善できることが確認された。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、酸化剤用マニホールド14内の温度を検出する第4温度センサ30dと、第1〜第4温度センサ30a、30b、30c、30dからの検出信号に基づいて冷却ガス流量調整バルブ28を制御するコントローラ(第2制御手段)とを備えたことにより、燃料電池スタック3の上端部、中央部、下端部の温度、酸化剤用マニホールド14内の温度を監視しつつ、冷却酸化剤ガスの供給流量、すなわち燃料電池スタック3に供給する酸化剤ガスの温度を任意に調整することができる。
【0042】
すなわち、第1〜第3温度センサ30a、30b、30cからの検出信号に基づいて、燃料電池スタック3内部の温度が、発電反応に適した所定の温度範囲の下限T1を下回っていることを検知した場合に、第4温度センサ30dからの検出信号に基づき冷却ガス流量調整バルブ28を制御して、冷却管27からの冷却酸化剤ガスの供給流量を低下させる一方、燃料電池スタック3内部の温度が、上記所定の温度範囲の上限T2を上回っていることを検知した場合に、第4温度センサ30dからの検出信号に基づき冷却ガス流量調整バルブ28を制御して、冷却管27からの冷却酸化剤ガスの供給流量を増加させる制御を行うようにしたので、燃料電池スタック3全体の温度を発電反応に適した所定の温度範囲内に維持することができ、当該温度範囲から外れることによる発電効率の低下を回避することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、燃料電池スタック3の上端部、中央部、下端部の温度を検出する温度センサとして、温度センサ30a、30b、30cを例示するとともに、酸化剤用マニホールド14の内部温度を検出する温度センサとして、温度センサ30dを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各温度センサの取付位置や数量は、発電セル7の積層数や断面積等に応じて適宜に変更することが可能である。例えば、すべてのセパレータ10に温度センサを設けるようにしたり、各セパレータ10や酸化剤用マニホールド14に複数の温度センサを設けるようにしてもよい。また、第一排気管22a、第二排気管22bの設置数も一つに限られるものではなく、各々を複数ずつ設けるようにしてもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、各発電セルの温度の一層の均一化を図ることができ、しかも各発電セルの温度を発電反応に適した所望の温度範囲内に保持することができるので、全体として発電効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る固体酸化物型燃料電池の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の燃料電池スタックの温度分布を示すグラフである。
【図3】従来の固体酸化物型燃料電池に備わる燃料電池スタックの温度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 固体酸化物型燃料電池
2 筐体
3 燃料電池スタック
7 発電セル
10 セパレータ
13 燃料用マニホールド(燃料ガス供給手段)
14 酸化剤用マニホールド(酸化剤ガス供給手段)
15 燃料ガス予熱管(燃料ガス供給手段)
16 酸化剤ガス予熱管(酸化剤ガス供給手段)
17 燃料ガス供給管(燃料ガス供給手段)
18 酸化剤ガス供給管(酸化剤ガス供給手段)
22a 第一排気管(排気手段)
22b 第二排気管(排気手段)
27 冷却管(酸化剤ガス供給手段)
28 冷却ガス流量調整バルブ
30a、30b、30c、30d(第1〜第4温度センサ)
Claims (1)
- 発電セルとセパレータとを鉛直方向に交互に積層してなる燃料電池スタックと、この燃料電池スタックを収容する筐体と、この筐体の外部から上記燃料電池スタックの内部に燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給する燃料ガス供給手段および酸化剤ガス供給手段と、上記燃料電池スタックから上記筐体内に排出された排出ガスを上記筐体外に導く排気手段とを備える固体酸化物型燃料電池において、
上記排気手段は、上記筐体の上部から上記排出ガスを上記筐体外に排気する第一排気管と、上記筐体の下部から上記排出ガスを上記筐体外に排気する第二排気管と、これら第一排気管および第二排気管の排気流量を調整する排気流量調整バルブとを備え、
上記燃料電池スタック内には、その上端部、中央部、下端部の温度を検出する第1〜第3温度センサがそれぞれ設置されるとともに、これら第1〜第3温度センサには、当該第1〜第3温度センサの検出信号に基づいて上記排気流量調整バルブを制御する第1制御手段が接続され、
かつ上記第1制御手段は、上記第1温度センサの検出信号に基づいて、上記燃料電池スタック上部の温度が低下していることを検知した場合に、上記排気流量調整バルブを制御して上記第一排気管からの排気量を増加させる一方、上記第3温度センサの検出信号に基づいて、上記燃料電池スタック下部の温度が低下していることを検知した場合に、上記排気流量調整バルブを制御して上記第二排気管からの排気量を増加させ、さらに上記第1〜第3温度センサの検出信号に基づいて、上記燃料電池スタックの中央部の温度が上昇していることを検知した場合には、上記排気流量調整バルブを制御して第一排気管および第二排気管からの排気量をともに増加させる制御を行うようになっていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003126207A JP4639574B2 (ja) | 2003-05-01 | 2003-05-01 | 固体酸化物型燃料電池 |
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