JP4639458B2 - 建物のロック装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基礎との間の相対変位を許容する免震装置が備えられた建物において、適宜上記相対変位を阻止するためのロック装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オフィスビルや高層の集合住宅等の大型の建築物のみならず、一般の木造住宅や軽量建物においても、地震に対して当該建物の安全性を確保するために、基礎部分等に免震装置を介装することにより、地震等によって地盤から建物に伝播しようとする振動を減衰させて、建物の躯体に生じる応力や変形を少なくする免震構造が採用されつつある。
従来、このような免震構造に使用される免震装置としては、大別して積層ゴム等を用いた弾性支承系のものと、すべり支承系または転がり支承系のものとが知られている。
【0003】
このうち、すべり支承系または転がり支承系の免震装置は、建物と基礎との間に介装されたすべり部材や転がり部材によって、地震時に建物と基礎との間の相対変位を許容することにより、地震力が直接建物に作用することを抑制するものである。
ところで、このような免震装置を、特に木造住宅などの軽量建物に用いた場合には、強風時に、上記建物が基礎に対して相対変位してしまうおそれがある。そこで、従来より、このような強風時における建物のずれを防止するために、建物を基礎側にロック可能なロック装置を設ける場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のロック装置は、建物管理者等の手動によってロックおよびロック解除される構成となっており、建物側と基礎側との間に複数備えられていた。
しかしながら、上記従来のロック装置を設けた場合に、建物管理者等は、強風時あるいは強風が発生すると予想される時に、ロック装置を1つずつ手動によってロック操作し、またその後には、ロック装置を1つずつ手動によってロック解除操作しなければならなかった。このような手動による操作はきわめて面倒であり、またその操作を忘れるおそれもあった。さらに、建物管理者等が不在あるいは就寝中のときには、このような対応ができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の建物のロック装置が有する課題を有効に解決すべくなされたもので、風の強さに対応して、自動的に建物と基礎との間における相対変位のロックおよび当該ロックの解除が可能な建物のロック装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明にかかる建物のロック装置は、基礎との間に相対変位を許容する免震装置が備えられた建物の上記相対変位を阻止するロック装置であって、建物側と基礎側との間のロックおよびロック解除が可能なロック手段と、建物が受ける風力が所定の強さ以下のときにロック手段のロックを解除し、かつ風力が上記所定の強さを超えたときにロック手段をロックさせる制御手段とを備えてなり、上記制御手段は、上記建物が受ける風力に応じてシャフトを回転させる風力器と、上記シャフトの回転に伴う遠心力によって重りが外方に変位することを利用して上記シャフトの回転速度を制限する遠心調速機と、上記シャフトの下端部に相対回転自在かつ上下動自在に連結されるとともにリンクを介して上記重りが外方に変位した際に上昇し、上記重りが内方に変位した際に降下するロッドとを備え、上記ロック手段は、上記基礎側の定位置に設けられたロック孔と、上記建物側に上下動自在に設けられたロックピンとを備え、かつ上記ロックピンは、連動機構部を介して、上記ロッドが上昇した際に下動することによって上記ロック孔に落とし込まれ、かつ上記ロッドが降下した際に上動することによって上記ロック孔から抜け出るように設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、建物1および免震装置10と、本実施形態のロック装置20との位置関係を説明するための概略側面図、図2は、それらの概略平面図である。
免震装置10は、すべり支承による免震装置であり、基礎側に設置されたステンレス製等のすべり板11上に、建物1側に設けられたテフロン製等のすべり材12を移動可能に載置して、建物1と基礎との間の相対変位を許容する構成となっている。そして、この免震装置10は、建物1と基礎との間の複数箇所(図では4箇所)に備えられている。
【0010】
図3は、図1および図2におけるロック装置20の側面図である。ロック装置20は、建物1を基礎側にロックおよびロック解除可能なロック機構(ロック手段)Aと、そのロック機構Aを建物1の外部の風力に応じて制御するための制御機構(制御手段)Bとによって概略構成されている。
【0011】
上記ロック機構Aにおいて、図中符号21は、基礎側の定位置に設けられたロック孔である。また、符号22は、ロック孔21と対向する建物1側の低位置に設けられたガイド体であり、このガイド体22には、ロック孔21内に出入り可能なロックピン23が上下動自在に備えられている。このロックピン23は、ロック孔21内に入り込むことにより、建物1を基礎に拘束するロック状態となるように設けられている。そして、このロック機構Aは、免震装置10の近傍に合計4組み備えられている。
【0012】
また、上記制御機構Bにおいて、図中符号24は建物1に設置された風力器であり、風力に応じた回転力がシャフト25に作用する構成となっている。この風力器24は、風杯26によって風を受ける椀形に形成されている。また、シャフト25には、遠心調速機(ガバナ機構)27が備えられている。この調速機27は、シャフト25の外周部に複数の重り28を吊り下げた構成となっており、シャフト25の回転に伴う遠心力によって、重り28が図3中点線で示すように外方に変位することを利用して、シャフト25の回転速度を一定に保つようになっている。
【0013】
また、図中符号29は連動機構部であり、重り28の開き量に応じてロックピン23を上下動させる。この連動機構部29において、符号30は中空ロッドであり、シャフト25の下端部に相対回転自在かつ上下動自在に連結されている。このロッド30と重り28は、リンク31によって連結されており、重り28の開き量に応じてロッド30が上下動するようになっている。また、ロッド30の下端とロックピン23は、てこ32によって連結されている。てこ32の支点Pは建物1側の部材33に設定されており、ロッド30が下動したときにロックピン23が上動し、ロッド30が上動したときにロックピン23が下動するように設けられている。ここで、てこ32の一端とロッド30との連結部、および、てこ32の他端とロックピン23との連結部のそれぞれは、例えば、長孔とピンとの組み合わせ等の遊嵌構造とされている。そして、4つのてこ32によって、4つのロックピン23のそれぞれがロッド30に連結されている。
【0014】
次に、以上の構成からなる建物のロック装置における作用について説明する。
先ず、風力器24が風を受けずに回転しないときは、図3中に実線で示すように、調速機27の重り28の開き量が最小量となり、ロッド30が最下位置に維持される。このとき、ロックピン23は、図3中に実線で示すように、ロック孔21から最も上方に離間する最上位置に保たれる。したがって、このときは、ロック機構Aがロックの解除状態に保たれて、建物1と基礎との間のすべりによる相対変位が免震装置10によって許容される。
【0015】
また、風力器24が所定以下の強さの風を受けて回転した際には、調速機27における重り28の開き量が所定量以内にあり、ロッド30は最下位置から所定範囲内において上動する。これに連動して、ロックピン23は、最上位置から所定範囲内において下動するものの、その所定範囲内の下動によっては未だロック孔21内に入り込まない。したがって、このときは、ロック機構Aが依然としてロックの解除状態に保たれて、建物1と基礎との間のすべりが免震装置10によって許容される。
【0016】
次いで、風力器24が所定の強さを超えた風を受けて回転すると、調速機27における重り28が遠心力によりさらに外方に変位して、その開き量が所定量を超えた量となり、ロッド30が所定範囲を超えて上動する。これに連動して、ロックピン23は、所定範囲を超えて下動してロック孔21内に落とし込まれる。したがって、この際には、ロック機構Aがロック状態となり、建物1と基礎との間のすべりによる相対変位が阻止される。その後、風力器24の受ける風の強さが所定以下に弱まったときは、調速機27における重り28の開き量が再び所定量以内に戻り、ロッド30が所定範囲内の上動位置に戻る。これに連動して、ロックピン23は、所定範囲内の下動位置に戻ってロック孔21内から上方に抜け出る。したがって、ロック機構Aがロックの解除状態に復帰されて、再び、建物1と基礎との間のすべりによる相対変位が免震装置10によって許容される。
【0017】
このように、上記ロック装置によれば、風力器24が所定の強さを越えた強風を受けた時に、ロック機構Aが自動的にロック状態となり、その後、風力器24が受ける風が所定の強さ以下に弱まった時に、ロック機構Aが自動的にロック解除状態に復帰する。したがって、平常時における免震装置10の免震機能を確保した上、強風時には、建物1がすべって移動することを確実に防止することができる。
【0018】
また、ロック機構Aがロック状態となるときの風の強さは、風力器24における風受部の大きさ、調速機27における重り28の重さ、重り28の腕部の長さなどに応じて、最適な強さに調整することができる。また、風力器24は、建物1における頂部等の種々の位置に設置する他、建物1の外部に設置することも可能である。
さらに、本実施形態のロック装置によれば、1つの風力器24によって、同時に4箇所に設けたロックピン23によるロックおよび当該ロックの解除を行うことができる。
【0019】
なお、上記実施の形態においては、免震装置10として滑り支承によるものを適用した場合についてのみ説明したが、これに限るものではなく、転がり支承による免震装置を用いた場合にも同様に適用することができる。
また、本実施形態においては、1つの風力器24によって、4箇所のロックピン23を操作するようにしたが、これに限定されるものではなく、1つの風力器24によって、1〜3箇所に設けたロックピン23を操作したり、あるいは4箇所を超える複数箇所に設けたロックピン23を、同時に操作するようにしてもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、建物が所定の強さを超えた強風を受けたときに、建物側と基礎側との間を自動的にロックすることにより、建物管理者等に負担を掛けることなく、建物が受ける風の強さに応じて、建物側と基礎側との間を自動的にロックおよびロック解除させることができる。この結果、建物管理者等が不在あるいは就寝中のときにも、強風によって建物がすべって移動することを確実に防止することができる。
【0021】
また、風力に応じて回転するシャフトに遠心調速機を備え、その遠心調速機における重りの開き量に応じて、建物側と基礎側との間を自動的にロックおよびロック解除させることにより、その遠心調速機における重りの重さ等に応じて、建物側と基礎側との間をロックするときの風力を最適な強さに調整することができる。
さらに、建物側と基礎側との間をロックするときに、建物側のロックピンを基礎側のロック孔内に落とし込むことにより、ロックピンの自重を利用して、建物側と基礎側との間を確実にロックすることができ、その応答性を高めることができるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるロック装置と建物との関係を説明するための概略側面図である。
【図2】図1のロック装置と建物との関係を説明するための概略平面図である。
【図3】図1のロック装置の側面図である。
【符号の説明】
1 建物
10 すべり支承による免震装置
20 ロック装置
21 ロック孔
22 ガイド体
23 ロックピン
24 風力器
25 シャフト
26 風杯
27 遠心調速機(ガバナ機構)
28 重り
29 連動機構部
30 中空ロッド
31 リンク
32 てこ
A ロック機構(ロック手段)
B 制御機構(制御手段)
Claims (1)
- 基礎との間に相対変位を許容する免震装置が備えられた建物の上記相対変位を阻止するロック装置であって、
上記建物側と上記基礎側との間のロックおよびロック解除が可能なロック手段と、上記建物が受ける風力が所定の強さ以下のときに上記ロック手段のロックを解除し、かつ上記風力が上記所定の強さを超えたときに上記ロック手段をロックさせる制御手段とを備えてなり、
上記制御手段は、上記建物が受ける風力に応じてシャフトを回転させる風力器と、上記シャフトの回転に伴う遠心力によって重りが外方に変位することを利用して上記シャフトの回転速度を制限する遠心調速機と、上記シャフトの下端部に相対回転自在かつ上下動自在に連結されるとともにリンクを介して上記重りが外方に変位した際に上昇し、上記重りが内方に変位した際に降下するロッドとを備え、
上記ロック手段は、上記基礎側の定位置に設けられたロック孔と、上記建物側に上下動自在に設けられたロックピンとを備え、かつ上記ロックピンは、連動機構部を介して、上記ロッドが上昇した際に下動することによって上記ロック孔に落とし込まれ、かつ上記ロッドが降下した際に上動することによって上記ロック孔から抜け出るように設けられていることを特徴とする建物のロック装置。
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