JP4637801B2 - 浮上移動装置 - Google Patents
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Description
まず、図1および図2を用いて、本実施の形態の浮上移動装置の全体構成を説明する。この項目は、全体構成を説明するためのものであるため、各構成要素の詳細な構成および動作は後述される。
羽根部110は、図3〜図7に示されたような形状を有し、長さが65mmであり、かつ、幅が16mmである。羽根部110は、前縁部1102、羽面部1103、枠部1104、枝部1105、およびアクチュエータ接合部1106を有している。なお、羽面部1103とは、前縁部1102、枠部1104、枝部1105、およびアクチュエータ接合部1106以外の部分であって、細長板状部1107、1108、および1109とアラミドフィルム1114とからなる部分である。
る。具体的に言えば、羽根部110のアラミドフィルム1114以外の部分は、CFRPのシートから図5〜図7に示す3つの部分が切り抜かれ、その3つの部分が積層されることによって形成される。
変化すると考えられる。したがって、あらゆる方向に極力均等な剛性を有するように、異なる方向の繊維軸を有する多数のCFRP層を積層することによって形成されていることが望ましい。なお、前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、他の部分より剛性が高くなっている。これらの要件を満たす羽根部の製造方法は後述される。
前縁部1102は、図4に示されるように、羽根部110の長手方向に沿って延びる溝構造、すなわちコルゲーションと呼ばれる凹凸形状を有している。そのため、前縁部1102においては、長手方向を含む面内の曲げ変形に対する剛性が、長手方向を回転中心軸とする曲げ変形に対する剛性に比較して、高くなっている。なお、この前縁部1102の凹凸形状は、プリプレグと呼ばれるCFRP層の原材料のシートを、この凹凸形状に対応する金型に密着させた状態で加熱することによって容易に成形され得る。また、前縁部1102には荷重が大きくかかる。そのため、前縁部1102は、細長板状部が設けられていない構造、すなわち隙間がない密実構造であるので、羽面部1103より剛性が高くなっている。さらに、前縁部1102は、根元に近づくにしたがって、累積的に荷重が増加するため、根元が先端に比べ太くなっている。根元部分での前縁部1102の幅および高さは約2mmであり、先端部分での前縁部1102の幅および高さは約1mmである。ただし、図の記述精度の制約から、図4〜図7においては、根元部分における前縁部1102の幅と先端部分における前縁部1102の幅とは同じ幅で描かれている。
羽面部1103は、図4〜図7に示されるように、CFRP層の細長板状部1107、1108および1109、およびアラミドフィルム1114によって構成されている。羽根部110と同一の外形を有するアラミドフィルム1114が、CFRP層の細長板状部によって挟まれている。
ム1114を含む原材料を上述の金型上で焼結することによって、簡単に羽面部1103を製造することが可能である。
羽面部1103を構成するアラミドフィルム1114は、図4に示されるように、アクチュエータ接合部1106、前縁部1102、および枠部1104の間に張られている。そのため、アラミドフィルム1114の端部の破損が防止されている。本実施の形態では、枠部1104の幅は約0.5mmである。なお、枠部1104は、図4に示されるよう
に、羽面部1103を取り囲む形状であるため、それが延びる方向は位置によって異なる。枠部1104の繊維軸の方向は、それの延びる方向に一致している。
羽根部110が大きくなった場合には、羽根部110の先端部の回転半径も大きくなる。この場合、流体に対する相対速度が大きくなるため、羽根部110の先端部には大きな流体力が生じる。羽根部110の先端部に生じる流体力が大きくなっても、羽根部110の先端部の制御性を維持する必要がある。そのため、前縁部1102に接続され、前縁部1102から斜め方向に延びる枝部1105が設けられている。枝部1105の幅は約0.9mmである。枝部1105は、X軸方向の羽根部110の先端側を向く方向を0°とした場合に、−30°の方向に延びるように形成されている。
アクチュエータ接合部1106は、実際には、羽根部110を駆動するアクチュエータとの適合性に応じて、その形状が決定される。本実施の形態のアクチュエータ接合部1106は、図4に示される形状であるものとする。また、羽ばたき運動により生じる流体力に起因する変形を防止するため、アクチュエータ接合部1106の材料としては、細長板状部を有しない、すなわち隙間がない密実な構造のCFRP層が用いられる。さらに、アクチュエータ接合部1106の前方端には溝構造が設けられている。このアクチュエータ接合部1106の溝構造と前縁部1102の溝構造とは連続するように設けられている。
CFRPの比重が1.6g/cm3であるものとして、表1に前述の羽根部110の各
部位の質量が示されている。表1に示されるように、羽根部110の質量は、約26.5mgである。また、アクチュエータ接合部1106の質量は約10.8mgである。
次に、図8〜図14を用いて、本発明のアクチュエータとしての上部超音波モータ120および下部超音波モータ130を説明する。
まず、上部超音波モータ120および下部超音波モータ130の構成を説明する。
次に、図9〜図14を用いて、上部超音波モータ120の駆動原理を説明する。
次に、図14を用いて、接触部1215から上部ロータ122へ予圧を与える機構を説明する。
図8に示す上部磁気エンコーダ126には、パターン周期の1/4の間隔を置いてA相およびB相のための2つの検出部が設けられている。この構成によって、一般的なエンコーダと同様に、上部ロータ122の回転方向に応じてA相およびB相の位相が異なるため、たとえば、A相のアップエッジをカウンタのトリガとして、B相のレベルの1/0をアップカウント/ダウンカウントの機能選択に割り当てれば、上部ロータ122の回転角θ1を検出することが可能である。この回転角θ1の算出は、中央演算装置151において行なわれる。
なお、図8〜図14において示された超音波モータは、一般的なアクチュエータの一例であり、本発明における浮上移動装置のアクチュエータは、前述のような構造の超音波モータに限定されない。たとえば、アクチュエータとして、電磁モータまたは内燃機関が用いられてもよい。また、回転角検出のための装置は、羽ばたき飛行を阻害するものでなければ、いかなるものであってもよい。たとえば、前述の磁気エンコーダを用いる手法の替わりに、光学式エンコーダを用いる手法が採用されてもよい。
次に、図15〜図18を用いて羽根駆動メカニズムについて説明する。
また、捻り角(回転角β)は、羽根部110の羽根軸(前縁部1102)の軸周りの回転角であるため、次の式(2)によって示されるβの余弦値から算出される。
ただし、L3に関しては、次の式(3)が成り立つ。
ここで、sqrt()は()内の値の正の平方根である。
したがって、βが1つの値に決定される。
cos(θ1−θ2)=[R1×R1+R2×R2−L3×L3]/2×R1×R2・・・(6)
ただし、L3に関しては、次の式(7)が成立する。
なお、L3の符号が、正であるか、または、負であるかは、実際の羽根部110の挙動を考慮することによって、容易に決定される。
<動作の基本>
本実施の形態における浮上移動装置100は、羽根部110の羽ばたき運動が生み出す浮上力の作用点より下側の質量が大きいため、自動的に、図1に示される姿勢になる。すなわち、X軸周りの回転およびY軸周りの回転を制御する必要はない。一方、X軸、Y軸、およびZ軸のそれぞれに沿った並進加速度、ならびにZ軸周りの回転加速度(以下、「角加速度」とも言う)は、羽ばたき方によって変更される。尚、羽ばたき運動により生じる力は羽根部の運動に伴って変化するが、ここでは、羽ばたき運動の1周期平均の力を羽ばたき運動により生じる力とする。
本実施の形態における浮上移動装置100においては、トルク補助機構が適正に機能するためには、上部超音波モータ120の回転角θ1すなわちストローク角αの振幅は固定されている必要がある。そこで、浮上移動装置100の動作を制御するために、下部超音波モータ130の回転角θ2が変更される。すなわち、浮上移動装置100は、捻り角βの変更によって、流体の流れを変化させ、それにより、姿勢を変化させる。
先述の非特許文献2において、Dickinsonらによって明らかにされているように、図22に示すように、(1)羽ばたき運動の切り返し動作の中間のタイミングよりも先、すなわち切り返しの前半に羽根部110を捻る(捻り先行切り返し)と、浮上力は増加し、一方、図23に示すように、(2)羽ばたき運動の切り返し動作の中間のタイミングよりも後、すなわち切り返しの後半に羽根部110を捻る(捻り遅れ切り返し)と、浮上力は減少する、という現象が起きる。
さらに本発明者らは、図22に示す前述の(1)の動作によれば、切り返し動作前の羽進行方向に沿った抗力が増大し、図23に示す前述の(2)の動作によれば、その抗力が減少することを見出した。打ち上げ時に生じる前後方向の抗力と、打ち下ろし時に生じる前後方向の抗力とは、互いに逆向きである。そのため、打ち上げ動作と打ち下ろし動作とが前後方向に垂直な平面に対して鏡面対称であれば、それらの動作による抗力は相殺され、推進力はゼロとなる。このため、浮上移動装置は、上下方向のみにおける移動を行なうことができる。
逆に、打ち上げ時の切り返しと打ち下ろし時の切り返しとにおいて、図22に示す前述の(1)の動作と図23に示す前述の(2)の動作とが異なれば、その2つ動作による前後方向の抗力同士の間に差異が生じ、前方または後方のいずれかに推進力が生じる。より具体的には、図24に示されるように、打ち下ろしの後半では、遅れ切り返しによって、前方への加速度が得られ、また、打ち上げの後半では、先行切り返しによって、前方への加速度が得られる。一方、同様に、図24に示されるように、打ち下ろしの後半では、先行切り返しによって、後方への加速度が得られ、また、打ち上げの後半では、遅れ切り返しによって、後方への加速度が得られる。
尚、前方への加速度が得られる動作および後方への加速度が得られる動作のいずれが実行されるときにおいても、上方への加速度の変化と下方向への加速度の変化とを相殺することは可能である。このため、水平方向における加速度のみを得ることが可能である。
以上の説明のように、左および右の羽根部110のそれぞれのストローク角α、すなわちθ1の振幅が固定されていても、θ2の時刻歴のみ変更し、打ち上げにおける羽根部110の切り返しのタイミングと打ち下ろしにおける切り返しのタイミングとを異ならせることにより、羽根部110に上下方向および前後方向における加速度を生じさせることができる。また、左の羽根部110に生じる加速度と右の羽根部110に生じる加速度とを異ならせることによって、浮上移動装置100の姿勢を左または右に傾けること、ならびに、浮上移動装置100が左方向または右方向へ旋回することが可能になる。
以下、図22に示す前述の(1)に記載の羽ばたき方を捻り先行切り返し(以下、単に、「先行切り返し」という。)と言い、図23に示す前述の(2)に記載の羽ばたき方を捻り遅れ切り返し(以下、単に、「遅れ切り返し」という。)と言い、図21に示すホバリング時の羽ばたき方を中央切り返しと言うものとする。
図21には、ホバリング時の羽ばたき方が示されている。図21においては、回転角θ1およびθ2の時刻歴が、羽根部110の断面の時刻歴とともに示されている。このときの浮上力は自重と釣り合っており、前後方向への推進力はゼロである。
図22には、Z軸に沿った上方への移動、すなわち上昇のための羽ばたき方が示されている。図23には、Z軸に沿った下方への移動、すなわち下降のための羽ばたき方が示されている。図22および図23においては、回転角θ1およびθ2の時刻歴が、羽根部110の断面の時刻歴とともに示されている。なお、左右の羽根部110は、YZ平面を対称面とする鏡面対称の動作を行なう。
図25および図27には、前方へ移動するための羽ばたき方が示され、図26および図28には、後方へ移動するための羽ばたき方が示されている。なお、左右の羽根部110は、YZ平面を対称面として、鏡面対称の動作を行なう。
Z軸周りに正方向の回転、すなわち左への旋回を行なうためには、左の羽根部110が後退のための羽ばたき方で動作し、右の羽根部110が前進のための羽ばたき方で動作すればよい。
左方への移動を行なうためには、右の羽根部110が上昇のための動作をし、左の羽根部110が下降のための動作をすればよい。これにより、浮上移動装置1は、左の羽根部110が右の羽根部110よりも下側に位置するように姿勢を変更し、それにより、浮上力のベクトルの先端が鉛直上方向きの状態から右側に傾く。これにより、浮上移動装置100を左方へ移動させる力が生じる。
以上により、切り返しのタイミングが異なる3種類の羽ばたき方、すなわち、先行切り返し、遅れ切り返し、および中央切り返しを使い分けることで、浮上移動装置100は空間を自在に移動することができる。
上記のように、θ1=0°の位相において羽ばたき方の変更を行なうのであれば、羽ばたき方の状態を示す表現方法として、打ち下ろし、打ち上げ、およびそれぞれの終端での切り返し、という区分を行なうことは適切ではない。打ち下ろし後半および打ち下ろし後の切り返しおよび打ち上げの前半を前方羽ばたき運動とし、打ち上げ後半および打ち上げ後の切り返しおよび打ち下ろしの前半を後方羽ばたき運動として、羽ばたき方を二つに区分することが合理的である。
なお、本項目においては、最も簡便に位置制御を実現する手法の一例が記載されているが、本発明の羽ばたき方は本項目の羽ばたき方に限定されるものではない。たとえば、本実施の形態においては、回転角θ1およびθ2の角速度は、切り返しの期間を除いて略一定であるものとされている。つまり、羽根部110の往復運動は、図36に示すように、角速度が一定である打ち上げおよび打ち下ろしの運動と、これに連続する、角速度が変化する切り返しの運動、すなわち往復運動の運動方向を反転させるための運動とからなるものである。切り返しの運動の角速度は、打ち上げの運動の角速度および打ち下ろしの運動の角速度のそれぞれに連続するように変化する。この切り返しの運動としては、例えば1変数の三角関数等が挙げられる。しかしながら、回転角θ1およびθ2の角速度を変化させることによって、周囲流体から受ける反作用を変化させて、浮上移動装置100を移動させる手法が用いられてもよい。
位置検出センサ160は、本体101に固定されている。そのため、位置検出センサ160によって計測された位置および姿勢は、浮上移動装置100の位置および姿勢そのものとなる。位置検出センサ160は、図29に示すように、計測された位置および姿勢のデータを後述する中央演算装置151に与える。このような機能を実現するためのセンサは、技術の進展により変化するものであり、本発明の本質に関わるものではないため、いかなるものであってもよい。また、前述の姿勢を検出するためのセンサの一例としては、磁気と加速度との組み合せで、0.5°程度の姿勢の変化を検出することができるものが市販されている。また、位置の検出のためには、例えばGPS(Global Positioning System)のようなセンサを用いることができる。
制御回路150は、図29および図30に示すように、中央演算装置151(Central Processing Unit)、中央演算装置151の指令により上および下部超音波モータ120および130を駆動するドライバ152、ならびに、ドライバ152に高電圧を供給する昇圧回路153等を有している。
制御回路150には、オペレータ210が操作するコントローラ200から通信装置170を介して運動指令が与えられる。運転指令は、一時記憶装置(以後、「RAM(Random Access Memory)」と言う)155に格納される。中央演算装置151は、RAM155に記憶された運動指令に基づいて、羽ばたき方のデータを固定記憶装置(以後、「ROM(Read Only Memory)」と言う)154から得る。その後、中央演算装置151は、その羽ばたき方のデータをドライバ152に与える。それにより、浮上移動装置100は、前述の前後左右上下方向の並進移動または鉛直を回転軸とする回転のいずれかを行なう。
中央演算装置151は、前述の運動指令、ROM154およびRAM155の情報を用いて、ドライバ152にPWM(Pulse Width Modulation)信号および回転方向制御信号を出力する。これにより、コントローラ200を介してオペレータ210が与えた運動指令に応じて超音波モータ120おび130が動作する。その結果、運転指令に対応する羽ばたき方が実現される。なお、羽ばたきの往復運動の周期は、反復タイマ156を用いて決定される。
中央演算装置151は、図29および図30に示すように、反復タイマ156を内蔵している。反復タイマ156は、羽ばたき運動の位相ψとして、−0.5〜0.5の値を50Hzの繰り返し周期で、中央演算装置151に出力する。ただし、羽ばたき運動の位相ψが、−0.5からカウントアップされ、0.5になると、再度、位相ψの値が−0.5からカウントアップされるものとする。この反復タイマ156の1周期に対応して、羽根部110が往復運動の中央位置よりも前方に位置する前方羽ばたき運動、および、羽根部110が往復運動の中央位置よりも後方に位置する後方羽ばたき運動のそれぞれが行なわれる。すなわち、反復タイマ156の1周期が羽ばたき運動の周期の2倍に対応する。本実施の形態においては、位相ψが正であれば、浮上移動装置100は後方羽ばたき運動を行ない、位相ψが負であれば浮上移動装置100は前方羽ばたき運動を行なうものとする。近年、機器制御に用いられているマイクロコントローラの多くには、本項で説明されている反復タイマとほぼ同様の、オートリロードタイマと呼ばれる機能が含まれており、これを用いることで、最も簡便に本項の反復タイマの機能を実現することができる。
ROM154は、羽ばたき方のデータを格納している。羽ばたき方のデータは、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比の時刻歴のデータである。なお、超音波モータ120および130には、周波数が250KHzでありデューティ比が50%に固定された駆動電圧が印加される。一方、図31に示すように、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比とは、デューティ比が50%に固定された250KHzの駆動電圧のON期間とOFF期間との和に対するON期間の比率である。
中央演算装置151は、位相ψの符号に基づいて、現在の羽ばたき方が前方羽ばたき運動であるか、または、後方羽ばたき運動であるかを判断する。その後、中央演算装置151は、ROM154に格納されている表2に示すデータに基づいて、羽ばたき方の状態を判断するとともに、通信装置170によって得られたRAM155に格納されている運動指令に応じて、前述のMODEの値を判断する。
ドライバ152は、中央演算装置151から与えられたPWM制御信号のON/OFFおよび回転方向制御信号に応じて、超音波モータ120を回転/停止、および、正転/反転させる。
:Label
if(PWM=ON) then
if(回転方向=正方向) then
φA=1
φB=1
φA=0
φB=0
end if
if(回転方向=逆方向) then
φB=1
φA=1
φB=0
φA=0
end if
end if
goto Label
但し、これらは簡易に前者回路の動作を表現するための一例であり、実際のプログラムにおいては、φAおよびφBのそれぞれが250kHzの矩形波となるようなタイミング調整が行なわれるため、ダミーの実行文の挿入等が必要になる。
昇圧回路153は、電源190の電圧(3V)を、超音波モータの駆動のために必要な+30Vの電圧に変更して、+30Vの電圧をドライバ152に印加する。昇圧回路153としては、一般的なDC(Direct Current)−DCコンバータが用いられ、その一例と
して、3mm×3mm×0.85mmという小型パッケージが市販されている。昇圧回路153の質量は約25mgである。
前述の制御の体系のブロック図が図29に示されている。なお、4つの超音波モータの駆動方法は同一であるため、図29には左の羽根部110を駆動する上部超音波モータ120の制御体系のみが示され、他の制御体系は省略されている。また、図30は、後述する図35のフローチャートにおけるデータ処理の流れを説明するための機能ブロック図である。
次に、図35を用いて、浮上移動装置の制御のためのフローチャートの一例を説明する。なお、このフローチャートは、一例であり、浮上移動装置100のアプリケーションによって変更され得るものである。
コントローラ200から送信されたオペレータ210の運動指令が、通信装置170を介して、RAM155に格納される。
中央演算装置151は、反復タイマ156から送信されてきた位相ψの値のデータに基づいて、浮上移動装置100の現時刻での羽ばたき方の状態を認識する。具体的には、中央演算装置151は、位相ψの値が正であれば、浮上移動装置100が後方羽ばたき運動を行なっていると判断し、位相ψが負であれば、浮上移動装置100が前方羽ばたき運動を行なっていると判断する。
中央演算装置151は、上記運動指令に応じて表2の行成分を選択し、また、上記羽ばたき方の状態に応じて表2の列成分を選択する。それにより、中央演算装置151は、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しの中からいずれか1の羽ばたきモード、すなわちMODEの値を選択する。選択された羽ばたきモードのデータは、RAM155に格納される。
中央演算装置151は、前述の羽ばたきモードのデータに基づいて、ROM154に格納されたDuty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)のデータの中からドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比を選択する。
中央演算装置151は、上記PWM制御信号のデューティ比の正または負に応じて、回転方向制御信号をドライバ152に出力するとともに、そのデューティ比のPWM信号をドライバ152に出力する。すなわち、ABS(A)をAの絶対値とし、SIGN(A)をAの符号とすると、回転方向制御信号はSIGN(Duty)であり、デューティ比はABS(Duty)である。なお、ここで、Dutyは、上部および下部超音波モータ120および130に応じた、Duty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)を意味する。
ドライバ152は、上記回転方向制御信号に応じて、振幅が30Vであり、かつ、周波数が250kHzである矩形波の電圧を表面電極1216および裏面電極1217に印加する。これらの2つの矩形波は、±90°位相が異なっている。具体的には、ドライバ152は、超音波振動子121の表面電極1216に矩形波の電位φBを与え、また、超音波振動子121の裏面電極1217に矩形波の電位φAを与える。この矩形波の電位φAの位相と矩形波の電位φBの位相とが±90°ずれている。
ψ=0またはψ=−0.5の場合には、羽ばたき方の状態が変更されたことを意味するため、再びステップS1の処理が実行され、運動指令の変更も含め、羽ばたきモードが更新される。ψ=0またはψ=−0.5以外の場合には、羽ばたきモードは更新されず、ス
テップS4の処理が実行され、新たな位相ψが設定される。
なお、上記指令の形態はあくまで説明のための一例であり、これに限定されない。たとえば、速度指令が電圧値としてアナログ信号で与えられることにより、量子化誤差のない滑らかな速度指令が得られる手法が用いられてもよい。また、超音波モータの駆動に必要な電圧は、技術の進歩によって変化し得るものである。たとえば、現行の主なTTL(Transistor Transistor Logic)−IC(Integration Circuit)やCPU(Central Processing Unit)の駆動電圧である3V以下で駆動し得る超音波モータが実現されれば、昇圧回路153は不要となる。
<<単独性>>
本実施の形態における羽ばたき浮上移動装置100の制御は、表2に示されるように、全て、羽ばたき運動の両端における羽根部の捻り動作のタイミングの選択によって行なわれる。これは、胴体の姿勢に拘束されないため、単独性が確保される。
前述の羽根部110の捻り、すなわち切り返しの動作は、羽ばたき運動における羽根部110の往復運動の始点または終点を含む特定期間においてのみ異なり、いずれの羽ばたき方においても、羽ばたき運動の往復運動の中心位置を含む所定期間においては、羽根部110の運動は同一である。つまり、複数種類の羽ばたき運動は、往復運動の中心位置を含むタイミングにおいて、共通の動作をする。このため、羽ばたき運動中に羽ばたき方の変更がなされても、その羽ばたき方の変更が共通の動作をするタイミングにおいてなされるのであれば、1の羽ばたき方から他の羽ばたき方への変化における羽根部110の挙動は、連続的なものである。つまり、羽ばたき方の変更はスムーズに行なわれる。
また、2つの特定期間は、互いに1/2周期ずれていてもよい。これによれば、1の特定期間と他の特定期間とが時間的に最も大きくずれて繰り返される。そのため、一方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流が、他の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流に及ぼす影響が最も小さくなる。そのため、羽ばたき運動の変更における「独立性」が確保される。
また、2つの特定期間の一方の期間における羽ばたき運動により生じる流体力のうちの一の方向成分と、2つの特定期間の他方の期間における羽ばたき運動により生じる流体力のうちの一の方向成分とが、相殺される。これによれば、羽ばたき運動の変更に起因する浮上移動装置の姿勢の変化の態様が単純になる。そのため、浮上移動装置を所望の姿勢にするための制御が容易になる。したがって、羽ばたき運動の変更における「単純性」が確保される。
位置計測センサ161としては、光や超音波によって、センサと目標となる物体との距離計測を行なう距離センサが市販されている。
浮上移動装置100に搭載された本発明の流体センサ180は、浮上移動装置100の動作に支障をきたさない程度の重量、大きさ、および消費電力を有している。本実施の形態の流体センサとしては、例えば、特開2003−156461号公報に示されているような方式の可燃性ガスセンサを用いることが可能である。ただし、本発明の浮上移動装置における流体センサとしては、可燃性ガスを測定対象流体とするものに限らず、種々の目的に応じて、各種の対象を測定するものを使用することができる。すなわち、本発明における流体センサの測定対象は、可燃性ガスに限定されず、たとえば、ガス、温度、湿度、圧力、風速、ホコリまたは花粉等であってもよい。換言すれば、本発明における流体センサは、可燃性ガスセンサ以外のガスセンサ、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、風速センサ、煙センサ、ホコリセンサまたは花粉センサ等であってもよい。本発明の浮上移動装置100は、これらのうちから選択された流体センサが設けられていることにより、各種の測定、調査、または情報収集等を行なうことができる。また、本発明の浮上移動装置100は、これらのうちの複数種の流体センサを備えていてもよい。
図44のステップS11<初期動作>
まず、オペレータ210が、外部コントローラ200を操作して、羽ばたき動作を行なうための制御信号を浮上移動装置100に送信する。それにより、浮上移動装置100は、浮上のための羽ばたき動作を開始する。次に、オペレータ210は、水平方向に移動する羽ばたき動作を行なうための制御信号を浮上移動装置100へ送信する。それによって、浮上移動装置100が測定対象流体(たとえば、配管から噴出している有毒ガス等)の位置に接近する。なお、浮上移動装置100は、距離検出センサ161によって、前方に存在する測定対象流体の位置と自身との間の距離を常にモニタリングしている。したがって、浮上移動装置100は、前方に存在する障害物または測定対象流体の位置と浮上移動装置100との間の距離が、所定の閾値以下になった場合に、外部コントローラ200から送信された前方に進行するという制御信号には従うことなく、その場でホバリング動作を行なう。また、本実施の形態においては、浮上移動装置100と配管などから噴出される測定対象流体との間の距離が、所定の距離より小さくなった場合には、オペレータによって外部のコントローラ200から浮上移動装置100へ、自動接近制御のための指令が送信される。測定流体の位置への接近経路は、上述の流速分布マップを用いて決定される。このとき、制御回路150は、左の羽根部110の前後方向の回動の中心位置と右の羽根部110の前後方向の回動の中心位置とを結ぶ線分を垂直に二等分する平面に沿って移動するための制御を実行する。ただし、浮上移動装置100のはばたき動作の開始および障害物および測定対象物へ接近するための羽ばたき動作として、前述以外の手法が用いられてもよい。
次に、オペレータ210は、外部コントローラ200から測定動作を行なうための制御信号を浮上移動装置100に送信する。それにより、測定対象流体に関する情報の測定が開始される。ただし、測定開始の方法については、上述以外の手法が用いられてもよい。
中央演算処理装置151は、測定対象流体の濃度が、オペレータ210によって予め定められた閾値以上になっているか否かを判定する。
測定対象流体の濃度が、オペレータ210によって予め定められた閾値以上になった場合には、浮上移動装置100に搭載された発光素子172の発光色が変化し、ブザー173から警報音が発せられる。さらに、浮上移動装置の羽ばたき方が変化する。それにより、浮上移動装置100は、オペレータによって外部コントローラ200から発信される制御信号に関わらず、あらかじめ定められた告知用の羽ばたき動作によって、周囲の人への告知を行なう。告知用の羽ばたき動作のためのデータは、前述のようにROM154に格納されている。中央演算装置151は、測定結果が予め定められた閾値を超えた場合には、ROM154から告知用の羽ばたき動作のためのデータを呼び出す。告知用の羽ばたき動作としては、例えば、ホバリングしながら旋回する動作(位置の変更を伴わずに姿勢のみを所定の回転中心軸まわりに変更する動作)、または、羽ばたき動作を止めて落下する動作等が挙げられる。なお、告知用羽ばたき動作は、上述の羽ばたき方以外の羽ばたき方であってもよい。
通信装置170は、外部のコントローラ200から、浮上移動装置100に必要とされる加速度の情報を受信し、その情報を制御回路150の中央演算装置151に与える。
本発明の駆動エネルギー源としての電源190は、必要とされる電力を供給できる放電特性を有し、かつ、浮上を妨げない質量を有するものであれば、いかなるものであってもよい。
本体101は、底部プレート102、上部プレート103、底部プレート102と上部プレート103とを連結するフレーム部104、および、底部プレート102に設けられた脚105からなる。
、フレーム部104は厚さ35μmのステンレスからなる。脚105は、肉厚40μm、長さ10mm、かつ直径0.5mmのCFRPの中空パイプからなる。
<質量>
本発明者らの計算によれば、羽根部1枚が生み出す浮上力は1.21gfである。よって、羽根部2枚が生み出す浮上力は2.42gfである。また、各構成要素の質量が表3に示されている。表3に示されるように、浮上移動装置100の総質量は2.17gfであり、この値は、前述の浮上力2.42gfよりも小さいため、浮上移動装置100は、浮上することができる。
本発明者らの計算によれば、浮上移動装置100の羽根部が1.2gfの浮上力を生ずるに要求される機械的パワーは上および下部超音波モータ120および130共に最大40mWである。各超音波モータのエネルギー変換効率は33%である。したがって、浮上のために要求される最大電力は超音波モータ1つにつき約120mWであり、それらの電力の合計は480mWである。ドライバ152および昇圧回路153の総合効率は約85%であるため、4つの超音波モータの駆動のために必要な電力は最大565mWである。
。したがって、浮上移動装置100は、内蔵された電源190から供給された電力のみを用いて浮上することができる。したがって、浮上移動装置100は、外部から電力の供給を受けることなく、独立して羽ばたき飛行することができるスタンドアロンタイプのロボットになり得るものである。
Claims (4)
- 流体が存在する空間を羽ばたくための左羽根部および右羽根部と、
前記左羽根部および右羽根部をそれぞれ駆動する左駆動部および右駆動部と、
前記左駆動部および前記右駆動部を制御する制御部と、
前記左駆動部、前記右駆動部、および前記制御部が搭載された本体と、
前記本体上において前記左羽根部の前後方向の回動の中心位置と前記右羽根部の前後方向の回動の中心位置との間の位置に設けられ、前記流体中においてガス、温度、湿度、圧力、風速、煙、塵埃、および花粉からなる群から選択された1以上の流体に関する特性を測定する流体センサとを備え、
前記制御部は、前記流体センサによる測定が実行されるときに、前記左羽根部の前後方向の回動の中心位置と前記右羽根部の前後方向の回動の中心位置とを結ぶ線分を垂直に二等分する平面に沿って移動するための制御を実行する、浮上移動装置。 - 流体が存在する空間を羽ばたくための左羽根部および右羽根部と、
前記左羽根部および右羽根部をそれぞれ駆動する左駆動部および右駆動部と、
前記左駆動部および前記右駆動部を制御する制御部と、
前記左駆動部、前記右駆動部、および前記制御部が搭載された本体と、
前記本体上において前記左羽根部の前後方向の回動の中心位置と前記右羽根部の前後方向の回動の中心位置との間の位置に設けられ、前記流体中においてガス、温度、湿度、圧力、風速、煙、塵埃、および花粉からなる群から選択された1以上の流体に関する特性を測定する流体センサとを備え、
前記流体センサの測定結果が所定の基準値を超えた場合に、前記制御部は、前記左駆動部および前記右駆動部のそれぞれの駆動態様を変更して、前記左羽根部および前記右羽根部にその旨を告知するための予め定められた羽ばたき運動をさせる制御を実行する、浮上移動装置。 - 流体が存在する空間を羽ばたくための左羽根部および右羽根部と、
前記左羽根部および右羽根部をそれぞれ駆動する左駆動部および右駆動部と、
前記左駆動部および前記右駆動部を制御する制御部と、
前記左駆動部、前記右駆動部、および前記制御部が搭載された本体と、
前記本体上において前記左羽根部の前後方向の回動の中心位置と前記右羽根部の前後方向の回動の中心位置との間の位置に設けられ、前記流体中においてガス、温度、湿度、圧力、風速、煙、塵埃、および花粉からなる群から選択された1以上の流体に関する特性を測定する流体センサとを備え、
前記制御部は、
前記左羽根部および前記右羽根部のそれぞれの羽ばたき運動により生じる前記流体の速度の分布のデータが格納された流速分布マップを含み、
外部から測定対象流体の位置に関する情報を受信した後においては、前記羽ばたき運動によって前記測定対象流体の位置に生じる前記流体の速度がより小さくなるように前記流速分布マップを参照しながら当該浮上移動装置の姿勢を変更する制御を実行する、浮上移動装置。 - 前記流速分布マップは、前記左羽根部および前記右羽根部のそれぞれが前記流体センサに最も接近したときにおいて前記羽ばたき運動により周囲に生じる前記流体の速度のデータを含む、請求項3に記載の浮上移動装置。
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