JP4633885B2 - 始動抵抗値の計測器 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本件の発明は,電圧出力端子間の出力電圧が,該端子間に接続される抵抗の抵抗値により状態変化するような電圧発生装置の,電圧が状態変化する抵抗値を測定する計測器に関する。
そのような電圧発生装置には,例えば交流アーク溶接機の電撃防止装置がある。
【0002】
交流アーク溶接機は,2次側端子すなわち溶接端子に接続されたリード線の片方で溶接しようとする金属をクリップし,もう一方のリード線で溶接棒をクリップして溶接棒を溶接個所に当てると,短絡電流が流れて,アークにより,溶接棒が溶け,ふたつの金属が溶着される。アーク溶接時の電流は例えば50Aから500Aの電流である。溶接時に溶接棒を金属から離して無負荷にすると,2次側端子に接続されたリード線間には,例えば85V程度の高い電圧が生じる。以下この電圧を溶接時の無負荷電圧という。この溶接機の無負荷電圧に作業員が不用意に触れると感電死亡事故が発生する。そこで,溶接しないときは低い電圧でかつパワーの無い回路に切り替える装置すなわち電撃防止装置が溶接機に付加され,電撃防止装置付き溶接機として販売されている。溶接しないときに,低電圧で小パワーの回路に切り替える機能を,電撃防止機能という。
【0003】
電撃防止装置付き溶接機を使用すれば,単なる溶接機の場合よりも感電死亡の危険性は少なくなるが,電撃防止装置付き溶接機の電撃防止機能が壊れておれば,感電死亡の危険性が高くなる。電撃防止機能があると,溶接金属にサビが生じていたりして導通が悪い場合には,溶接開始時,無負荷電圧になりにくくなり,溶接を開始しにくくなる。そこで作業者からしてみると,作業の効率化を邪魔する装置のようにみえるらしく,故意に電撃防止機能を停止させて感電に至った例もある。監督者が作業の安全を確保するためには,電撃防止装置付きの溶接機で作業している事の確認だけでは不十分で,作業している電撃防止装置付きの溶接機の電撃防止機能が正常である事を確認しなければならない。
【0004】
次に,電撃防止装置の機能の詳細について説明する。
電撃防止装置は,溶接機の2次側出力電圧を2次側出力電流の状態で高低に切り替える装置で,2次側出力電流を変流器で計測し,2次側出力電流がないときは2次側出力電圧を低い電圧(安全電圧といい一例として30V以下)に設定している。その状態から溶接棒を被溶接物に接触させると,接触抵抗により2次側に電流が発生する。その電流は,前記接触抵抗によって定まり,電流がある値以上すなわち接触抵抗がある値(電撃防止装置の始動感度抵抗:始動抵抗値という)以下となると2次側出力電圧を高い値(無負荷電圧約85V)に切り替えて,溶接棒と被溶接物の間にアークを発生させる。溶接作業が終了して,溶接棒を被溶接物から離すとアークの発生が止まり,2次側出力電流もなくなるが,その後規定の時間(遅動時間といい1.5秒以内)で2次側電圧を安全電圧側に切り替えるよう働く。
規則では定期的に,以上のような交流アーク溶接機の電撃防止装置の始動感度(始動抵抗値),安全電圧,遅動時間を検査することになっている。特に始動抵抗値については,溶接作業の安全性と作業性を決定づける重要な管理項目である。
【0005】
また,前記測定項目にはそれぞれ合格判定基準が定められており,合否のみのチェックでもよいこととなっている。
本件の発明は,以上のような装置の始動感度(始動抵抗値)や,安全電圧,遅動時間を測定・判定するチェッカーに関するものであるが,交流アーク溶接機の電撃防止装置のみに関わらず,同様の機能を有する電圧発生装置であれば使用可能なものである。
【0006】
【従来の技術】
以上のような測定をするにあたり,従来の方法では,溶接機の2次側出力端子に可変抵抗を接続し,手動で抵抗値を高い方から低い方へ可変させて電圧計測器で2次側出力端子の電圧変化を読みながら,電圧が変化したときの抵抗値を抵抗計で測定するか,または,2次側出力電流を電流計で読みながら前期の方法で電圧が変化したときの電圧と電流値から抵抗値を求めるかしていた。また,近年は手動で可変抵抗を操作しながら,自動で電圧と抵抗値を測定するような計測器も市販されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,従来の方法では,特に始動感度の測定において正確に始動抵抗値を測定することは,次の理由により困難であった。
第一に,電撃防止装置自体に,抵抗を長く接続すると始動感度の測定値が高くなる傾向があった。手動では,可変抵抗を回転させる速度が一定とならず,その傾向が強くなる。第二に電源電圧の変化などの原因で測定値が変化する場合があり,測定値が安定しなかった。第三に可変抵抗は,回転角度に対して厳密にいうと抵抗値は比例せず,抵抗値が低い側に回転させても微小な領域では抵抗値は逆に高くなったり,放置しておくと抵抗値が変化することもあった。第四に従来の方法は抵抗値を手動で回転させるので,回転のさせかたで正しい抵抗値が測定できない場合もあった。特にデジタルマルチメータを用いた場合,測定の完了に時間がかかるため,その間可変抵抗を廻しすぎたりすることもあった。第五に電撃防止装置が始動したときに可変抵抗の回転を停止できず,廻しすぎることもあった。
【0008】
また,従来の方法では,可変抵抗の形状寸法が大きくなり,計測装置の小型化が困難であった。可変抵抗に定格以上の電力を長時間消費させると,発熱により断線にいたる。印加時間が短ければ,定格の小さい可変抵抗を使用することができるが,従来の手動による方法では,廻し方の個人差があり,印加時間を短く想定して設計し,小型の可変抵抗を用いることはできなかった。
【0009】
さらに,専用の計測器を使用しない場合は,可変抵抗装置と,電圧計と,抵抗計,場合によっては抵抗計に替えて電流計を必要に応じて配線しなければならず,測定作業が煩わしいものとなっていた。
その上,前述の遅動時間を手動で測定することは,不可能に近かった。そこで,本件の発明は,第一に,交流アーク溶接機の電撃防止装置のような電圧発生装置の始動抵抗値の測定や合否判定を精度良く行える計測器を提供すること,第二に電圧出力端子間に接続する抵抗を小型にできて,計測器自体を可能な限り小型に構成でき,測定の際の配線も最低限の作業で行えて持ち運びと測定作業の容易な計測器を構成すること,第三に始動抵抗値のみならず,安全電圧や遅動時間も測定・判定でき,さらには電圧計としても使用可能な計測器を構成することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用】
削除
【0011】
請求項1では,電圧出力端子間の出力電圧が,該端子間に接続される抵抗の抵抗値により閾値Aを境として変化するような交流アーク溶接機の始動抵抗値(閾値A)を測定する計測器において,該計測器は,電圧出力端子間の電圧検知手段と,複数の固定抵抗と複数のリレーからなり,前記固定抵抗の夫々と並列に接続されるリレーと,全ての固定抵抗と直列に接続されたリレーを備え該複数のリレー接点を個別に入切制御することにより両端の抵抗値をデジタル的に可変とした抵抗回路と,前記複数のリレーを個別に制御するリレー制御手段と,計測結果を表示もしくは出力する表示出力手段と,抵抗回路の両端の抵抗値測定手段および計測スタート手段からなり,前記抵抗回路は電圧出力端子間に接続され,リレー制御手段は,計測スタート手段で計測を始めた後,前記抵抗回路の両端の抵抗値を初期値としての最大値から段階的に低くなるよう切り替えるとともに,前記全ての固定抵抗と直列に接続されたリレーを制御して,所望の抵抗値に切り替える前には抵抗回路の抵抗値が無限大に切り替わるよう抵抗回路のリレーを制御し,抵抗値測定手段は,電圧検知手段で基準電圧と比較したとき,電圧出力端子間の電圧が所定状態に変化した際の抵抗回路の抵抗値を測定し,表示出力手段は,測定した抵抗値情報を表示出力手段に出力して,表示出力手段は前記抵抗値情報を,前記電圧発生装置の始動抵抗値(閾値A)情報として表示出力する,始動抵抗値の計測器を提供したものである。
【0012】
請求項2では,電圧出力端子間の出力電圧が,該端子間に接続される抵抗の抵抗値により閾値Aを境として変化するような電圧発生装置の始動抵抗値(閾値A)を測定する計測器において,
該計測器は,
電圧出力端子間の電圧検知手段と,
複数の固定抵抗と複数のリレーからなり,前記固定抵抗の夫々と並列に接続されるリレーと,全ての固定抵抗と直列に接続されたリレーを備え該複数のリレー接点を個別に入切制御することにより両端の抵抗値をデジタル的に可変とした抵抗回路と,
前記複数のリレーを個別に制御するリレー制御手段と,
計測結果を表示もしくは出力する表示出力手段と,計測スタート手段からなり,
前記抵抗回路は電圧出力端子間に接続されれ,リレー制御手段は,計測スタート手段で計測を始めた後,
リレー制御手段は,前記抵抗回路の両端の抵抗値を初期値としての最大値から段階的に低くなるよう切り替えるとともに,前記全ての固定抵抗と直列に接続されたリレーを制御して,所望の抵抗値に切り替える前には抵抗回路の抵抗値が無限大に切り替わるよう抵抗回路のリレーを制御し,
電圧検知手段で基準電圧と比較したとき,電圧出力端子間の電圧が所定状態に変化した際のリレー制御手段の制御指示抵抗値情報を表示出力手段に出力して,
表示出力手段は,前記抵抗値情報を,前記電圧発生装置の始動抵抗値(閾値A)情報として表示出力する,始動抵抗値の計測器を提供したものである。
【0013】
以上の請求項1,請求項2に示す始動抵抗値の計測器は,第一に始動感度の測定に手動の可変抵抗器を用いず,リレー制御手段によりデジタル的に抵抗値が変化する抵抗回路を用いたので,それにより,高速で一定の間隔で確実に抵抗値を変化させることが可能となり,始動抵抗値の測定が安定して行える。また,第二に切替え時間を最適に選定することで必要最低限の短時間で測定可能となることから,使用する抵抗器も小型のもので済んで,計測器を小型に構成できる。第三に,電圧発生装置への接続は,計測器のリード線を電圧出力端子間に接続するだけでおこなえ,従来のように抵抗と電圧計,さらには電流計などを別々に配線する必要がないという作用を有する。
【0014】
請求項3では,前記電圧検知手段は電圧値を計測できるものであり,
前記計測スタート手段で計測を始めた直後の電圧検知手段の検知電圧が基準値外の場合,リレー制御手段は,抵抗回路のリレーの制御を開始せず,
表示出力手段は,電圧検知手段の計測電圧値情報を表示出力する一方,
前記計測スタート手段で計測を始めた直後の電圧検知手段で計測した電圧出力端子間の電圧が基準値内の場合は,前記リレー制御手段が抵抗回路のリレー制御を開始し,
電圧検知手段により測定された計測電圧値情報が表示出力手段に出力されて,
表示出力手段は前記始動抵抗値情報と計測電圧値情報を表示出力する,請求項1または請求項2の始動抵抗値の計測器を提供したものである。
【0015】
それにより,基準値を適当に選んで構成すれば,計測器を電圧発生手段の電圧出力端子間に接続して計測をスタートした際,電圧発生手段の出力電圧が基準値外の場合はリレー制御手段が働かず,電圧検知手段で測定した電圧情報のみが表示出力手段に現れるので,電圧発生手段が異常であることが容易に分かる。また,計測器を電圧発生装置に接続しておらず,電圧が基準値外(電圧がないか,電圧が基準値以下か基準値以上)の場合も同様に電圧検知手段で測定した電圧情報のみが表示出力手段に現れるので,そのまま電圧計として使用できるという作用を有する。
【0016】
削除
【0017】
また,状態変化前の電圧が基準値内にあるか,また始動抵抗値はいくらかといった,電圧と始動抵抗の情報を一度に得ることができる。
【0018】
削除
【0019】
請求項4では,前記始動抵抗値の計測器は,時間計測手段を備え,リレー制御手段または抵抗値測定手段は,始動動抵抗値情報を表示出力手段に出力し,その後,リレー制御手段は抵抗回路の抵抗値を遅動時間測定用抵抗値に設定した抵抗を電圧出力端子間に接続し,電圧発生装置が再始動後,抵抗回路を電圧出力端子から切り離して,時間計測手段の時間計測を開始させ,電圧検知手段の検知電圧が,基準値と比較して指定された状態に戻り状態が変化しなくなるまでの時間を計測して表示出力手段に時間情報を出力し,表示出力手段は時間情報も合わせて表示出力することを特徴とする請求項3の始動抵抗値の計測器を提供している。
【0020】
請求項4により,電撃防止装置の遅動時間が測定できて,電圧情報と始動抵抗値の情報も計測できる計測器を得ることができる。
【0021】
削除
【0022】
また,請求項1、請求項2においては,リレー制御回路が抵抗回路を段階的に制御する際に,抵抗回路の両端の抵抗値が一時的にでも所望の抵抗値より低い値になることを防止することができ,始動抵抗値を精度よく測定できるとともに,溶接機の計測器の場合は,溶接棒が被溶接物から離れた状態から,接触する場合の抵抗変化の状況により近づけることができ,実際に近い始動抵抗値の測定が可能となる。さらに,抵抗回路の抵抗値を段階的に変化させる間に抵抗値が高いまたは無限大の状態があることで,抵抗を流れる電流を一時的に少なくまたは無くすることができて,発熱した抵抗器の温度を冷却することができるから,使用する抵抗器の定格損失の小さいものを選定できて,計測器を小型にできる。抵抗器に可変抵抗を用いるとこのような測定はできない。
【0023】
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【0024】
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【0025】
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【0026】
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【0027】
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【0028】
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【0029】
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【0030】
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【0031】
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【0032】
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【0033】
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【0034】
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【0035】
【実施例の説明】
図1は,本発明の第一の一実施例による計測器のブロック構成図である。図において,T1とT2は電圧発生装置の電圧出力端子に接続される端子である。1は電圧検知手段で,T1,T2間の電圧を検出し基準電圧と比較する。2は抵抗回路で,複数の固定抵抗器とリレー接点より成り,より詳しくは図2のようであって両端を電圧検知手段1とともにT1,T2に接続される。3はリレー制御手段で,抵抗回路2の複数のリレー接点(図2においてRY0〜RY7)を個別に入切制御することで,T1,T2間の抵抗値を制御する。5は時間計測手段で,請求項6または7に記載の要件である。4は表示出力手段で,電圧検知手段1,リレー制御手段3,時間計測手段5から必要な情報を得て,表示または外部に情報を出力する。6は,計測器の計測スタートを指示する計測スタート手段である。なお,1,3,4,5,6は適宜マイコンとデジタル回路で構成するのが最も一般的であるが,マイコンで構成する範囲については,全体を一つのマイコンとしてもよいし,個々に一つずつのマイコンで構成してもよいし,全体を二つのマイコンで構成するなど自由である。また計測スタート手段は,マイコンのプログラムをスタートできればどのようなものでもよい。
【0036】
図1に示す計測器は次のように働く。T1,T2を前述の電圧発生装置の電圧出力端子,具体例として電撃防止装置付交流アーク溶接機の2次側出力端子に接続する。該交流アーク溶接機の電源を入れて,溶接機を待機状態とする。このとき電撃防止装置が正常に働いていれば,溶接機の2次側出力電圧端子には,安全電圧である実効値30V以下の電圧が発生している。
【0037】
次に計測器の計測スタート手段を手動でスタートさせる(具体的にはスタートボタンを押すなど)。計測スタート前の抵抗回路2は回路中のリレー接点によりT1,T2間の抵抗値は無限大となっている。するとまず,電圧検知手段1のみが働き,他の回路は休止状態となる。電圧検知手段1はT1,T2間の電圧を検出する。検出は交流の正負の半波ごとにおこなうが,スタート直後の短い時間は無視して,完全な正弦の半波で検出し,その電圧が基準値(たとえば一般的な電撃防止装置付溶接機の安全電圧の想定範囲5V〜30V)内であるかどうかを判定する。
【0038】
もしも,検知電圧が基準値内でない場合,電圧検知手段1は表示出力手段4へ検出した電圧の情報を出力し,表示出力手段4は電圧情報を外部に表示または出力する。以後,その動作を継続し,リレー制御手段3は抵抗回路2の抵抗値を制御することがない。なお,電圧検知手段1は,ただ単に検出した電圧が基準値内であるかどうかを比較判定するのみの機能のものと,電圧測定機能を有して,電圧値を計測し計測した電圧値を基準値と比較判定する機能のものの両方が考えられる。前者の場合は,電圧検知手段1が出力する電圧情報は基準を満たしていないという情報のみとなり,後者の場合は,基準を満たしていないという情報と計測した電圧値の情報とすることができる。したがって,電圧検知手段1に後者の機能のものを使用すれば,計測器は電圧測定器として機能することとなり,溶接機の1次側電圧を測定したいときなどはなはだ都合がよい測定器とすることができる。すなわち,T1とT2を溶接機の1次側の電源に接続しておいて計測スタート手段6で計測をスタートさせると,通常溶接機の1次側の電圧は100Vとか200Vであるので,リレー制御手段3は作動せず,表示出力手段4は測定電圧値を表示して1次側電圧が何Vであるかどうか,正常な電圧であるかどうかを簡単に測定できる。
【0039】
電圧検知手段1で検出した電圧が基準値(5V〜30V)内であれば,電圧検知手段1は表示出力手段4に電圧情報を出力するとともに,リレー制御手段3を起動する。リレー制御手段3は抵抗回路2のリレー接点を所定の順序にしたがって開閉し,T1とT2間の抵抗値を高いほうから低い方へ段階的に変化させる。リレー制御手段3が抵抗回路2の抵抗値を変化させている間,電圧検知手段1は,T1とT2間の電圧を交流半波ごとに検出しつづけ,検出した電圧が常に基準値内(30V以下)かどうかを比較している。検出した電圧が基準内である状態が継続する限り,リレー制御手段3は抵抗回路2の抵抗値の段階的制御を継続するが,電圧が基準値(30V)を超えたときは,その時点で抵抗値の段階的制御を停止し,その時点の抵抗制御指示値情報を表示出力手段4に出力すると同時に抵抗回路2をT1とT2間から切り離す。リレー制御手段3が抵抗回路2をT1とT2から切り離すと,時間計測手段5が0から時間をカウント開始する。電圧検知手段1はその間も電圧検出を継続しており,検出した電圧が常に基準値(30V)以下かどうかを比較している。検出した電圧が基準値以下になったとき時間計測手段5は時間のカウントを停止して結果を計測時間情報として表示出力手段に出力する。表示出力手段4は,以上の検知電圧情報,抵抗制御指示値情報,計測時間情報から,検知電圧情報を安全電圧情報,抵抗制御指示値情報を始動抵抗値情報,計測時間情報を遅動時間情報として外部に表示または出力するが,表示・出力の内容は,各計測値とするか,基準を満足しているかどうかの判定結果とするか,またはその両方とするかは任意である。なお,各測定値が基準を満足しているかどうかの判定は,表示出力手段4がおこなってもよいし,それぞれリレー制御手段3,電圧検知手段1,時間計測手段5がおこなってもよい。また,専用の判定回路を別途に設けるなど自由である。
【0040】
また,別の方法として,前述の始動抵抗値は,リレー制御手段3の制御指示抵抗値でなく,図示しない抵抗値測定回路で抵抗回路2の両端の抵抗値を計測して表示出力手段4に出力してもよい。さらに,前述の遅動時間の測定は,電圧検知手段1で検出した電圧が基準値を超えたことでリレー制御手段3がT1とT2の端子から抵抗回路2を切り離してから時間計測回路5が時間をカウントし始めるのではなく,電圧検知手段1で検出した電圧が基準値を超えると,リレー制御手段3はT1とT2の端子から抵抗回路2を切り離して,今度は抵抗回路2の抵抗値を確実に電圧が基準値を超える値に設定しなおして再度T1とT2に接続し,電圧が基準値を超えてからT1とT2の端子から抵抗回路2を切り離し,その時点から時間計測回路5が時間を計測するようにしてもよい。実験の結果から,このような構成にすると遅動時間の測定が安定して行えた。
【0041】
次に,抵抗回路2の詳細について図2で説明する。図2は,電撃防止装置の始動抵抗値を計測することを目的としており,T1とT2間の抵抗値は最低150Ω〜最大785Ωまでの範囲を5Ωステップで可変できるものであるが,最低値,最大値,ステップの間隔は,任意にできる。
【0042】
図2において,RY7は抵抗回路2全体のT1とT2への接続をオン/オフするリレー接点である。R0からR6とRY0からRY6は個々の抵抗とリレー接点を並列に接続し,さらに個々の抵抗とリレー接点の並列回路を直列に組み合わせたもので,R1の抵抗値はR0の2倍,R2の抵抗値はR1の2倍という具合にR6まで設定してある。
R7は,リレー接点RY0からRY6が全部オンとなったときに抵抗回路2の最低値の抵抗となる。
【0043】
図2における抵抗回路2のリレー接点RY0からRY7とT1,T2間の抵抗値の対応を図3に示す。図3では,抵抗値は785Ωから順次150Ωまで5Ωずつ段階的に低減されているが,実際のマイコン回路とリレーの組み合わせでは,このようにはいかず,図6のように,たとえば,310Ωから305Ωに移行する際,間に必ず一旦R7の抵抗値(150Ω)になる瞬間が存在する。
【0044】
すなわち,リレーは,通常のa接点品の場合,コイルに電圧を印加して,接点オフからオンになるまでの時間より,コイルの電圧印加を止めて,接点オンからオフになるまでの時間のほうが長くかかる習性があり,リレー制御手段3がリレー接点の切り替え制御を図6の310Ωから305ΩになるようRY0からRY7のリレーコイルを同時に制御した場合,RY5のリレーはオフからオンに,RY0からRY4までのリレーはオンからオフに同時にコイル電圧を制御される。しかし,RY0からRY4までのリレー接点がオンからオフに切替わるよりも,RY5のリレー接点がオフからオンに切替わるほうが早く切替わり,次にRY0からRY4のリレーがオンからオフに切替わる。したがって図6の310Ωから305Ωに抵抗値が切替わる間に()内に示すような接点状態になる瞬間が存在することとなり,310Ωから305Ωに抵抗値が切替わる間に150Ωとなる瞬間が発生する。もしも,電撃防止装置が瞬間的な150Ωの抵抗を感知して出力電圧が安全電圧(30V以下)から無負荷電圧(約85V)に上昇した場合,抵抗回路の抵抗値の切り替えは,310Ωから305Ωに切り替えた制御をおこなったので,始動感度は305Ωと認識してしまうこととなり,誤った結果を得ることになる。請求項5は,そのような不具合をなくして,正確な始動抵抗値を測定するための発明である。
【0045】
図4と図5は本発明の請求項5の実施例によるリレー接点の切り替え順序を説明した図であり,図4は310Ωから305Ωに切り替える間に一度RY7の接点を切り離してT1とT2の間の抵抗値を無限大,すなわち回路を切り離す操作を入れた例であり,RY7が切り離されている間にRY5を入りとして,次にRY0からRY4のリレー接点を入から切に切り替えて,RY7以外のリレーの接点が完全に所望の抵抗値になるよう設定が終わってから,RY7のリレーの接点が入りとなって,所望の305Ωの抵抗値に切替わるようにしたものである。
【0046】
図5は,T1とT2間の抵抗を切り離す代わりに,所望の抵抗値(305Ω)より高くなる抵抗値となる操作を入れた例である。図5の例では,310ΩとなっていてRY5の接点のみが切となっている状態から次に305Ωの接点入切状態に対して状態を切り替える必要のあるリレーRY0からRY5のうち,RY0からRY4のリレー接点を入から切としてR0からR4の抵抗値をR5の抵抗に追加して一旦465Ωと高くして,次にRY5のリレー接点を入にして465Ωの抵抗から305Ωの抵抗値に切り替えている。
【0047】
310Ωから305Ωに切り替える時間は,リレーの種類によって定めることができる。例えば有接点式で電磁式のリレーの場合は比較的短くてもよく,半導体式の無接点リレーの場合は,抵抗値がオンとオフに完全に切替わるまでに比較的時間がかかるので,5mSから60mS程度に長くする必要がある。また,半導体リレーを用いる場合,オン時には,接点間の抵抗が完全には0でない場合が多いが,それに応じて,R0からR7の抵抗値を補正しておけば問題ない。この切替時間を必要に応じて長くすると,実際に溶接をする際の,溶接棒を被溶接金属に手動で当てる,離すといった操作状態に近くなり,現実の溶接機の使用状態に近い測定精度がよく安定した始動抵抗値の測定結果が得られる。
【0048】
また,連続して抵抗値を段階的に切り替えていく方法に比べ,所望の抵抗値と抵抗値の間に抵抗回路がT1とT2から切り離される時間が生じる,または高い抵抗値となることにより,抵抗回路の消費電力量が小さくできることから,温度上昇を抑えられることになり,定格消費電力の小さい抵抗を使用することが可能となる。
【0049】
実際の測定においては,一つの抵抗値から次の抵抗値に移るまでの時間が0.5秒から2秒程度であると,安定した始動抵抗値の測定ができることが実験して確認されている。図2の実施例で図3のように785Ωから150Ωまで5Ωずつ抵抗値を段階的に下げていくようリレー制御回路3が抵抗回路2を制御した場合,一つの抵抗値での測定時間を仮に0.5秒とした場合でも785Ωから150Ωまで至る間の時間は約1分もかかることとなり,測定者にとってははなはだ都合が悪い。また,測定時間中,各抵抗器には,電流を通電するわけであるから,抵抗器の温度上昇も相応に高くなり,使用する抵抗器の定格消費電力を小さくできない。(個々の抵抗器の外形を小さくできない)
【0050】
そこで,本件の発明では,測定時間を短縮するため次のようにリレー制御回路3は抵抗回路の抵抗値を2段階に制御している。第一段階では,リレー制御回路は図3における抵抗値の低減を5Ωずつでなく一例として50Ωずつ,しかも抵抗値の切り替え時間は0.2秒ずつ切り替えていき(最後の150Ωの時だけ抵抗値の切り替えは185Ωから150Ωに低減する),T1とT2の間の電圧が安全電圧から無負荷電圧に上昇したときの抵抗回路のT1とT2間の抵抗値を仮の始動抵抗値(閾値a)として記憶していく。このようにすると,785Ωから150Ωに低減していくのに約1分かかっていた測定が約3秒で終了する。無論抵抗値を50Ωずつ低減する間には,さきに説明した図4や図5の例のように抵抗回路をT1とT2間から切り離したり,抵抗値を一時的に高くする制御は同一に行うこととする。次に第二段階として測定をaに50Ωを加えた抵抗値(aが150Ωの場合のみ35Ωとする)からaまでの間を5Ω間隔でしかも抵抗値の切り替え時間を1秒として抵抗値を低減していき,T1とT2間の電圧が安全電圧から無負荷電圧に上昇したときの抵抗値を始動抵抗値(閾値A)として表示出力手段に出力する。このようにすると第二段階の測定は最大でも10秒で終了することとなり,第一段階と第二段階の時間を合計しても約13秒で終了し,このように制御しない場合に比べて,測定時間を1/4以下に短縮できる。しかも,最終的に始動抵抗値を決定する際は,抵抗値を切り替える時間は本来正確に測定するために必要な時間(1秒)を確保できることになる。もしも,第二段階の測定に入った直後にT1とT2間の電圧が変化した場合は,aに100Ωを加えた値から5Ωずつ低減するようにしている。
【0051】
図7は,電圧検知手段の電圧変化の判定部分について説明した図である。IC1とIC2はオペアンプで被判定電圧Vinを正側の判定基準電圧+Vrefと負側の判定電圧−Vrefで比較しVinが+Vrefを超えるか,−Vrefより下がるとIC3に出力を発生する。IC3はエクスクルーブオアICで,IC1かIC2の出力があれば,出力を発生する。このようにすると,T1とT2間の出力電圧が交流の場合,半波ごとに安全電圧か無負荷電圧かの判定がおこなえ,基準を+または−の片側でおこなう場合に比べ,最大で半波分判定時間を短くできる。該判定回路の出力により,リレー制御手段3は,図2に示す抵抗回路のRY7の接点をオフとして抵抗回路をT1とT2から切り離すので,T1とT2間の電圧が無負荷電圧に上昇して半波分の時間しか抵抗回路には無負荷電圧での電流が流れないことになり,無負荷電圧での抵抗器の温度上昇を抑えることができ,より小型の抵抗器を使用することが可能となる。
【0052】
また,図7に示す電圧変化判定部分が,T1とT2間の電圧が安全電圧から無負荷電圧に上昇を検出して,リレー制御手段がRY7をオフとすると同時に図1に示す時間計測手段をスタートさせて,時間を0から計測しはじめる。その後,電撃防止装置は,T1とT2間の電流がなくなったので,溶接作業が終了したと判断して,所定の時間(遅動時間)内でT1とT2間の電圧を無負荷電圧から安全電圧に戻す動作をおこなうが,T1とT2間の電圧が基準値を超えている間中図7の電圧変化判定部分は出力を発生しつづけ,時間計測手段は時間計測を続けていて,T1とT2間の電圧が安全電圧に戻った時点で図7の電圧変化判定部分の出力がなくなった時点で時間計測手段は時間測定を終了し,測定した時間を遅動時間情報として表示出力手段に出力する。したがって,図7に示す電圧変化判定部分は,安全電圧から安全電圧を超える電圧への変化検出のみならず安全電圧を超える状態から安全電圧内への変化の判定も半波ごとにおこなうことができて,遅動時間の計測をより正確におこなうことができる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように本件の発明により,第一に,交流アーク溶接機の電撃防止装置のような電圧発生装置の始動抵抗値の測定や合否判定を精度良く行え,第二に電圧出力端子間に接続する抵抗を小型にできて,計測器自体を可能な限り小型に構成でき,測定の際の配線も最低限の作業で行えて持ち運びと測定作業の容易な計測器を構成でき,第三に始動抵抗値のみならず,安全電圧や遅動時間も測定・判定でき,電圧計としても使用可能な計測器を提供できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本件発明の1実施例のブロック図
【図2】本件発明の抵抗回路の接続図
【図3】本件発明の抵抗回路のリレー接点の入切とT1,T2間の抵抗値の対応表
【図4】本件発明の抵抗回路の抵抗値の切り替えを説明した表
【図5】同上
【図6】本件発明によらない抵抗回路の抵抗値の切り替え状態を示した表
【図7】本件発明による電圧検出回路の基準値判定の説明図
【符号の説明】
1 ・・電圧検知手段
2 ・・抵抗回路
3 ・・リレー制御手段
4 ・・表示出力手段
5 ・・時間計測手段
6 ・・計測計測スタート手段
T1 ・・端子
T2 ・・端子
R0〜R7・・抵抗
RY0〜RY7・・リレー接点
Claims (4)
- 電圧出力端子間の出力電圧が,該端子間に接続される抵抗の抵抗値により閾値Aを境として変化するような交流アーク溶接機の始動抵抗値(閾値A)を測定する計測器において,
該計測器は,
電圧出力端子間の電圧検知手段と,
複数の固定抵抗と複数のリレーからなり,前記固定抵抗の夫々と並列に接続されるリレーと,全ての固定抵抗と直列に接続されたリレーを備え該複数のリレー接点を個別に入切制御することにより両端の抵抗値をデジタル的に可変とした抵抗回路と,
前記複数のリレーを個別に制御するリレー制御手段と,
計測結果を表示もしくは出力する表示出力手段と,
抵抗回路の両端の抵抗値測定手段および計測スタート手段からなり,
前記抵抗回路は電圧出力端子間に接続され,リレー制御手段は,計測スタート手段で計測を始めた後,
前記抵抗回路の両端の抵抗値を初期値としての最大値から段階的に低くなるよう切り替えるとともに,前記全ての固定抵抗と直列に接続されたリレーを制御して,所望の抵抗値に切り替える前には抵抗回路の抵抗値が無限大に切り替わるよう抵抗回路のリレーを制御し,
抵抗値測定手段は,
電圧検知手段で基準電圧と比較したとき,電圧出力端子間の電圧が所定状態に変化した際の抵抗回路の抵抗値を測定し,
表示出力手段は,測定した抵抗値情報を表示出力手段に出力して,
表示出力手段は前記抵抗値情報を,前記電圧発生装置の始動抵抗値(閾値A)情報として表示出力する,
始動抵抗値の計測器。 - 電圧出力端子間の出力電圧が,該端子間に接続される抵抗の抵抗値により閾値Aを境として変化するような電圧発生装置の始動抵抗値(閾値A)を測定する計測器において,
該計測器は,
電圧出力端子間の電圧検知手段と,
複数の固定抵抗と複数のリレーからなり,前記固定抵抗の夫々と並列に接続されるリレーと,全ての固定抵抗と直列に接続されたリレーを備え該複数のリレー接点を個別に入切制御することにより両端の抵抗値をデジタル的に可変とした抵抗回路と,
前記複数のリレーを個別に制御するリレー制御手段と,
計測結果を表示もしくは出力する表示出力手段と,計測スタート手段からなり,
前記抵抗回路は電圧出力端子間に接続されれ,リレー制御手段は,計測スタート手段で計測を始めた後,
リレー制御手段は,前記抵抗回路の両端の抵抗値を初期値としての最大値から段階的に低くなるよう切り替えるとともに,前記全ての固定抵抗と直列に接続されたリレーを制御して,所望の抵抗値に切り替える前には抵抗回路の抵抗値が無限大に切り替わるよう抵抗回路のリレーを制御し,
電圧検知手段で基準電圧と比較したとき,電圧出力端子間の電圧が所定状態に変化した際のリレー制御手段の制御指示抵抗値情報を表示出力手段に出力して,
表示出力手段は,前記抵抗値情報を,前記電圧発生装置の始動抵抗値(閾値A)情報として表示出力する,始動抵抗値の計測器。 - 前記電圧検知手段は電圧値を計測できるものであり,
前記計測スタート手段で計測を始めた直後の電圧検知手段の検知電圧が基準値外の場合,リレー制御手段は,抵抗回路のリレーの制御を開始せず,
表示出力手段は,電圧検知手段の計測電圧値情報を表示出力する一方,
前記計測スタート手段で計測を始めた直後の電圧検知手段で計測した電圧出力端子間の電圧が基準値内の場合は,前記リレー制御手段が抵抗回路のリレー制御を開始し,
電圧検知手段により測定された計測電圧値情報が表示出力手段に出力されて,
表示出力手段は前記始動抵抗値情報と計測電圧値情報を表示出力することを特徴とする請求項1または請求項2の始動抵抗値の計測器。 - 前記始動抵抗値の計測器は,時間計測手段を備え,リレー制御手段または抵抗値測定手段は,始動動抵抗値情報を表示出力手段に出力し,その後,リレー制御手段は抵抗回路の抵抗値を遅動時間測定用抵抗値に設定した抵抗を電圧出力端子間に接続し,電圧発生装置が再始動後,抵抗回路を電圧出力端子から切り離して,時間計測手段の時間計測を開始させ,電圧検知手段の検知電圧が,基準値と比較して指定された状態に戻り状態が変化しなくなるまでの時間を計測して表示出力手段に時間情報を出力し,表示出力手段は時間情報も合わせて表示出力することを特徴とする請求項3の始動抵抗値の計測器。
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