JP4630539B2 - モルタル・コンクリート用膨張材及びコンクリート - Google Patents

モルタル・コンクリート用膨張材及びコンクリート Download PDF

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本発明は、モルタルやコンクリートに膨張性を付与する混和材、特にケミカルプレストレスの導入を可能にする膨張材及びケミカルプレストレスを導入できるコンクリートに関する。
例えばボックスカルバートやヒューム管などコンクリート製品では常時外圧負荷を受ける状態で使用されるものがある。このようなコンクリート製品では、部材厚さを増したり、特定の膨張材を用いてケミカルプレストレスを導入したコンクリートを使用して強度の向上を図り、耐圧強度を確保させている。
部材厚を厚くすると重量が増大するため大型のコンクリート製品などでは搬送や設置作業に制約が生じやすく、また水和熱が蓄積され易くなるため、収縮によるひび割れ発生の可能性が高まる。一方、ケミカルプレストレスを導入できる膨張材を混和したコンクリートでは、部材厚を増大させずに強度の向上が可能なため、軽量化が図れ、また収縮を著しく抑制することができる。このような膨張材としては、カルシウムサルホアルミネートなどのエトリンガイト形成物質を生成させたクリンカ粉砕物を主成分とする膨張材(例えば特許文献1参照。)や遊離生石灰とエーライトを生成させたクリンカ粉砕物を主成分とする膨張材(例えば特許文献2参照。)、無水石膏と遊離生石灰を生成させたクリンカ粉砕物を主成分とする膨張材(例えば特許文献3参照。)、エトリンガイト形成物質と遊離生石灰を生成させたクリンカ粉砕物を主成分とする膨張材(例えば特許文献4参照。)などが知られているが、何れも水和反応時期や膨張力を調整する上で複数の成分原料を微妙に組み合わせたものを焼成し、クリンカ鉱物相として生成させたものを用いるため、単位重量あたりの価格が普通セメントよりもかなり高くなる。加えてこのような膨張材はコンクリート単位量あたりの使用量を多くしなければ所望の強度向上を図れるようなケミカルプレストレスを導入できないため、該膨張材を使用したコンクリートの製造コストも上昇する。
特公昭42−21840号公報 特開昭53−1170号公報 特開平11−12006号公報 特開2002−29797号公報
収縮を抑制したり、有効なケミカルプレストレスをコンクリートに導入する場合、高い水和膨張を示し且つ安価な生石灰を、例えば他の生成物質と共にクリンカ鉱物中に析出させるような複雑な処理を経ずに、混和材として利用できればコストを大幅に抑えることができる。しかるに、生石灰は水和活性が非常に高く、単にセメント等に加えただけでは、注水すると生石灰が極めて短時間に水和反応を完結し、セメントが殆ど凝結していない間に膨張発現が終了するため、ケミカルプレストレスの導入は実質的にできず、また自己収縮に対する抑制効果も得難い。遅延剤等を併用して生石灰の水和反応時期を遅らすことも可能であるが、共存するセメントにも遅延作用が働くため、両者の水和反応時期のギャップは殆ど解消されない。また、生石灰に風化処理等を施せば、急激な反応活性が抑制され、水和反応期間の増長も可能であるが、反応期間の調整はさほど容易ではなく、処理作業も手間がかかる上に処理コストの加算も大きい。
そこで本発明は、安価な石灰石を、例えば従来のような他の原料成分を加えてクリンカ焼成物を製造するような繁雑な処理を経ることもなく、且つコストの増大を殆どもたらさずに、モルタルやコンクリート用の膨張材として十分使用できるものとして容易に選定することができ、モルタルやコンクリートの収縮や外圧に十分対抗できるような安定した膨張力を付与できる膨張材にすることであり、特に、大量に使用しなくともケミカルプレストレスの導入を可能にした膨張材の選定方法の提供を課題とするものである。
本発明者らは検討を重ねた結果、生石灰の経時的水和熱特性が生石灰の水和反応と相関性があることを見出し、特定の水和熱特性の生石灰を用いると、生石灰の水和反応時期をセメントの水和反応時期に整合でき、モルタルやコンクリートの自己収縮を抑制するに十分な膨張作用を付与できたこと、またこのような生石灰を特定量混和させたコンクリートは、ケミカルプレストレスを容易に導入でき、耐圧強度の高いコンクリートとなったこと等から本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、次の(1)〜(2)で表すモルタル・コンクリート用膨張材の有効成分選定方法及び(3)で表すモルタル・コンクリート用膨張材の選定方法である。(1)水和反応開始後2分経過時点から10分経過時点までの最大水和発熱速度が2000〜3500J/g/Hであって、水和反応開始直後から10分経過時点までの積算水和発熱量が400〜800J/gである生石灰粒子を有効成分に用いることを特徴とするモルタル・コンクリート用膨張材の有効成分選定方法。(2)モルタル・コンクリート用膨張材が、更に、ブレーン比表面積4000cm2/g以上の無水石膏を含有してなるものである前記(1)のモルタル・コンクリート用膨張材の有効成分選定方法。(3)セメント100重量部とモルタル・コンクリート用膨張材5〜20重量部を含有させたケミカルプレストレス導入コンクリートに用いるモルタル・コンクリート用膨張材の選定方法であって、請求項1又は2記載の方法で選定される有効成分を用いたモルタル・コンクリート用膨張材を用いることを特徴とするモルタル・コンクリート用膨張材の選定方法
本発明によれば、従来のモルタル・コンクリート用の膨張材と概ね遜色ない膨張性状を有する膨張材を、かなり安価に得ることができ、しかもケミカルプレストレスを導入させる作用もあるため、本膨張材を混和させれば外圧に対する十分な対抗強度を発現できるだけのケミカルプレストレスが導入されたコンクリートを容易に得ることができる。
本発明のモルタル・コンクリート用膨張材に使用する生石灰は、水和反応開始後2分経過時点から10分経過時点までの最大水和発熱速度が2000〜3500J/g/Hのものとする。ここで最大水和発熱速度は、20±1℃の恒温容器中で等重量の水を加えた生石灰について微小熱量計で測定した値である。最大水和発熱速度が2000J/g/H未満の生石灰では初期水和活性が低く、セメント凝結初期の膨張圧の不足並びにセメントの凝結始発よりも遅れて水和反応する生石灰の割合が増すので好ましくない。水和発熱速度が3500J/g/Hを超える生石灰では、注水直後から急激な水和反応を生じ易く、セメントの凝結初期までに膨張作用が集中することがあるので好ましくない。また、本発明のモルタル・コンクリート用膨張材に使用する生石灰は、前記の最大水和発熱速度であることと共に水和反応開始直後から10分経過時点までの積算水和発熱量が400〜800J/gであることも必須とする。積算水和発熱量も前記と同様の微小熱量計で測定した値とする。最大水和発熱速度が2000〜3500J/g/Hであっても、積算水和発熱量が400J/g未満の水和反応活性が低い生石灰では総膨張力が不足し、また積算水和発熱量が800J/gを超える生石灰は非常に高い水和反応活性を示すため過膨張を起こすことがあるので好ましくない。かかる特性を有する生石灰の原料は、一般に用いられている石灰石で良い。本発明のモルタル・コンクリート用膨張材は、例えば既知の産地の石灰石を種々の温度で焼成したものを適宜粉砕し、前記最大水和発熱速度と積算水和発熱量の範囲に充当した生石灰の焼成温度と粉砕条件等を把握することによって、再現性の良い製造条件を得ることができる。この場合、石灰石の焼成は、いわゆる軟焼〜中焼で行うと、得られる生石灰が所望の水和発熱速度に充当し易いので好ましい。また、生石灰の粒度は粗粒分が多いと所望の積算水和発熱量に至らないことがあり、逆に、微粉分が過多であると所望の水和発熱速度や積算水和発熱量を超える可能性が高まるため、ブレーン比表面積が概ね3000〜6000cm2/gのものが推奨される。
また、本発明のモルタル・コンクリート用膨張材は、前記の生石灰に加えてブレーン比表面積4000cm2/g以上の無水石膏を含むものが好ましい。無水石膏の本膨張材中への含有方法は、前記生石灰に粉末状の該無水石膏を乾式混合するだけで良い。無水石膏が含有されると、注水によりセメント中の3CaO・Al23と反応してエトリンガイトを生成し、セメント凝結中期以降の膨張発現性を高めることができる。使用する無水石膏はブレーン比表面積4000cm2/g以上のものなら特に限定されないが、好ましくはブレーン比表面積6000cm2/g以上の無水石膏、より好ましくはブレーン比表面積6000cm2/g以上のII型無水石膏を使用する。ブレーン比表面積4000cm2/g未満の無水石膏は反応活性が低く、含有効果が得られないことがあるので好ましくない。本発明のモルタル・コンクリート用膨張材中の当該無水石膏の好ましい含有率は5〜60重量%である。60重量%を超えると膨張作用の発現性が低下することがあり、5重量%未満では無水石膏含有効果が殆ど発揮されない。無水石膏を含有する本発明のモルタル・コンクリート用膨張材は、例えば混合装置を用い、生石灰粉末と無水石膏粉末を混合させることで容易に製造できる。また、本発明のモルタル・コンクリート用膨張材は、本発明の効果を喪失しない限り前記以外の成分、例えば、カルシウムサルホアルミネート、カルシウムフェライト、カルシウムシリケートの他、早強セメントや普通セメントなどの各種セメント類、も含むことができ、この場合も無水石膏含有の際と同様、生石灰粉末に混合するだけで良く、特にクリンカ焼成物まで作製する必要はない。
また、本発明のコンクリートは、セメント100重量部と前記モルタル・コンクリート用膨張材を5〜20重量部を含むものであり、この他に骨材と水を含み、また他の混和材・剤を適宜含むものでも良い。本発明のコンクリートに使用するセメントは水硬性のセメントであれば何れのものでも良く、例えば、各種ポルトランドセメント、アルミナセメントやエコセメントなどの特殊セメント、フライアッシュセメントや高炉セメントなどの混合セメントが挙げられる。前記モルタル・コンクリート用膨張材の含有量が5重量部未満ではコンクリートに膨張作用が十分付与させず、ケミカルプレストレスが導入し難くなるので好ましくなく、20重量部を超えると過膨張を起し易く、強度が低下することがあるため好ましくない。また、本発明のコンクリートに使用する骨材は何れのものでも使用できる。骨材及び水の配合量は、一般に行われているコンクリートの配合設計の範囲で選定すれば良い。また本発明のコンクリートに含有可能な混和材・剤は、例えばモルタル・コンクリートに使用可能な、減水剤(高性能減水剤、高性能AE減水剤を含む)、空気連行剤、収縮低減剤、防錆剤、防水剤、消泡剤、増粘剤、ポゾラン反応性物質、潜在水硬性物質、繊維、顔料、硬化促進剤等が挙げられ、何れも本発明の効果を概ね低減しない範囲で使用することができる。又、本発明のコンクリートの製造方法は特に限定されず用途や施工条件に応じて適宜定めれば良く、骨材及び水の配合量も、一般に行われているようなコンクリートの配合設計の範囲で良い。単位セメント量については、260kg/m3以上にすると、ケミカルプレストレスを導入できるマトリックス強度が安定して確保できるため推奨され、300kg/m3以上にすると更にマトリックスの高強度化が達成できるのでより好ましい。
[膨張材の作製とその性状] 中焼生石灰(粒径5〜30mm、重安石灰株式会社製)を表1に記したブレーン比表面積となるよう乾式粉砕し、これにブレーン比表面積7000cm2/gに調整したII型無水石膏(市販品)を表1の配合割合となるように加え、混合を行って膨張材を作製した。また、乾式粉砕した生石灰に等重量の水(蒸留水)を加え、水和反応開始後2分経過時点から10分経過時点までの水和発熱速度と水和反応開始後2分経過時点から10分経過時点までの最大水和発熱速度及び水和反応開始直後から10分経過時点までの積算水和発熱量を微小熱量計(商品名;マルチマイクロカロリーメーター、株式会社東京理工製)を使用し、20±1℃の恒温下で測定した。更に、作製した膨張材45g、普通ポルトランドセメント405g、JIS標準砂1350g及び水225gをホバートミキサーで混合し、これを型枠に充填し、蒸気養生を経て24時間後に脱型して得た4×4×16cmの角柱試験体の24時間膨張率をJIS A 6202に準拠した方法で測定した。これらの結果も表1に記す。
Figure 0004630539
[膨張材を使用したコンクリート試験体の作製と性状] 前記混和材、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)、粗骨材(表乾密度2.65g/cm2、栃木県岩瀬産砕石)、細骨材(表乾密度2.60g/cm2、静岡県小笠産陸砂)、ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名;コアフローNP−55、太平洋マテリアル株式会社製)及び水を表2に記した配合量となるようパン型強制ミキサに一括投入し、約2分間混練した。この混練物からJIS A 6202「コンクリート用膨張材」の附属書2に記された拘束膨張B法に準じた方法で試験体を作製した。得られた試験体は温度28℃、湿度80%の環境下で4時間前養生した後、毎時約20℃の昇温速度で65℃まで加熱し、当該温度で4時間蒸気養生を行った後、自然放冷した。次いで、蒸気養生を行った試験体を、約20℃の水中で最長材齢14日まで養生した。蒸気養生終了直後の試験体の拘束膨張率(材齢1日)と水中養生材齢7及び14日の試験体の残存膨張率をそれぞれ測定した。以上の結果も表2に記す。
Figure 0004630539
表2より、本発明による膨張材を適正使用したコンクリート(実施例1〜6)はケミカルプレストレスが導入され、何れも所望の膨張を示したが、本発明外の膨張材(参考品G〜I)を使用したコンクリートはかなり低い膨張(比較例1〜2)しか示さなかったか過膨張(比較例3)を示し、ケミカルプレストレスを十分導入できなかった。
本発明のモルタル・コンクリート用膨張材は、モルタルやコンクリートに配合使用することで収縮を十分抑制できるため、各種充填用モルタル材、補修用モルタル材、グラウト材、現場打マスコンクリート等への使用に適する他、安定した寸法精度と耐圧強度が要求されるヒューム管やボックスカルバート等のコンクリート成形製品、軽量化が要求される大型のコンクリート製品への使用にも適し、特に3軸拘束されたSC杭などの合板コンクリートにおいてはケミカルプレストレス効果が顕著に働くので好適である。

Claims (3)

  1. 水和反応開始後2分経過時点から10分経過時点までの最大水和発熱速度が2000〜3500J/g/Hであって、水和反応開始直後から10分経過時点までの積算水和発熱量が400〜800J/gである生石灰粒子を有効成分に用いることを特徴とするモルタル・コンクリート用膨張材の有効成分選定方法。
  2. モルタル・コンクリート用膨張材が、更に、ブレーン比表面積4000cm2/g以上の無水石膏を含有してなるものである請求項1記載のモルタル・コンクリート用膨張材の有効成分選定方法。
  3. セメント100重量部とモルタル・コンクリート用膨張材5〜20重量部を含有させたケミカルプレストレス導入コンクリートに用いるモルタル・コンクリート用膨張材の選定方法であって、請求項1又は2記載の方法で選定される有効成分を用いたモルタル・コンクリート用膨張材を用いることを特徴とするモルタル・コンクリート用膨張材の選定方法
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