JP4629316B2 - ワイヤーハーネスの設計支援システム及びその設計支援プログラム - Google Patents

ワイヤーハーネスの設計支援システム及びその設計支援プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤーハーネスの設計支援システム及びその設計支援プログラムに関し、特に、ワイヤーハーネスの経路レイアウトや治具板レイアウトの設計効率を向上させる設計支援システム及びその設計支援プログラムに関する。
【0002】
【従来技術】
車両等に配策されるワイヤーハーネスの設計は、このワイヤーハーネスが配策される車両等の設計進行と平行に準備される。通常、ワイヤーハーネスの経路レイアウトは車両等のメーカー(単に、カーメーカーとよぶ)から要望が出され、これを受けた部品メーカーがその要望を満たすワイヤーハーネスを製造する。
【0003】
すなわち、生産準備期間中には、カーメーカー側では、モデル変更や仕様変更等が繰り返し検討されており、その度に関連する情報を部品メーカーに提供する。これに応じて部品メーカー側では、現在の治具板レイアウトや所有する治具、製造効率等を考慮して、カーメーカー側が要望するワイヤーハーネスを製造するための治具板レイアウトを設計した後、この治具板レイアウトによって製造可能なワイヤーハーネスの経路レイアウト案をカーメーカー側に提案する。カーメーカー側では、この経路レイアウト案の受け入れを検討し、その結果を部品メーカー側に伝える。生産準備期間中には、このようなやりとりが、カーメーカー側及び部品メーカー側の間で、繰り返し行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、定められた期間の上記生産準備期間中、部品メーカー側においては、カーメーカー側からの変更情報に応じて、頻繁に、治具板レイアウトや経路レイアウト案を設計変更する必要がある。また、変更に関連する書類や図面の量も膨大である。このような状況下で、部品メーカーでは、頻繁に変更をともなう治具板レイアウトや経路レイアウト案の設計の効率化が求められている。
【0005】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、頻繁に発生する設計変更に的確に対応し、治具板レイアウト及びこれにともなう経路レイアウト案の設計効率を向上させるワイヤーハーネスの設計支援システム及びその設計支援プログラムを提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載のワイヤーハーネスの設計支援システムは、図1の基本構成図に示すように、所定箇所に配索されるワイヤーハーネスの経路レイアウト及びこのワイヤーハーネスを製造するための治具板レイアウトの設計を支援するシステムであって、少なくとも現在の経路レイアウトに関する現経路データを格納する経路データ格納手段105aと、少なくとも前記現在の経路レイアウトに対応する現在の治具板レイアウトに関する現治具板データを格納する治具板データ格納手段105bと、変更が要求される新経路レイアウトに関する新経路データを取得する経路データ取得手段2と、前記新経路データと前記現経路データとを比較して、両データの差情報を検出する差情報検出手段3aと、前記差情報に対応して変更されるべき現在の治具板レイアウトの箇所を示す情報を、それ以外の箇所と識別できるように、前記現経路データと前記現治具板データとに基づいて3次元コンピュータ支援設計(CAD)から算出された現治具板レイアウトに、付加して出力する現治具板レイアウト出力手段3bと、を含むことを特徴とする。なお、請求項中の出力という用語は、実施形態中の表示という用語をも含む上位の概念を示す。
【0007】
また、上記課題を解決するためになされた請求項2に記載のワイヤーハーネスの設計支援システムは、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載のワイヤーハーネスの設計支援システムにおいて、前記新経路データに含まれる3次元の位置情報に基づいて前記3次元CADから算出された新治具板レイアウトを出力する新治具板レイアウト出力手段4aと、前記差情報に基づいて前記3次元CADから算出された前記新治具板レイアウトの変更可能箇所を案内する案内情報を、前記新治具板レイアウトに付加して出力する変更案内情報出力手段4bと、を更に含むことを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するためになされた請求項3に記載のワイヤーハーネスの設計支援システムは、図1の基本構成図に示すように、所定箇所に配索されるワイヤーハーネスの経路レイアウト及びこのワイヤーハーネスを製造するための治具板レイアウトの設計を支援するシステムであって、少なくとも現在の経路レイアウトに関する現経路データを格納する経路データ格納手段105aと、少なくとも現在の治具板レイアウトに関する現治具板データを格納する治具板データ格納手段105bと、変更が要求される経路レイアウトに関する新経路データを取得する経路データ取得手段2と、前記新経路データと前記現経路データとを比較して、両データの差情報を検出する差情報検出手段3aと、前記新経路データに含まれる3次元の位置情報に基づいて3次元コンピュータ支援設計(CAD)から算出された新治具板レイアウトを出力する新治具板レイアウト出力手段4aと、前記差情報に基づいて前記3次元CADから算出された前記新治具板レイアウトの変更可能箇所を案内する案内情報を、前記新治具板レイアウトに付加して出力する変更案内情報出力手段4bと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するためになされた請求項4記載のワイヤーハーネスの設計支援システムは、図1の基本構成図に示すように、請求項2又は請求項3記載のワイヤーハーネスの設計支援システムにおいて、前記案内情報を利用した前記新治具板レイアウトの変更指令に基づいて、前記新治具板レイアウトを変更する変更手段5、を更に含むことを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するためになされた請求項5記載のワイヤーハーネスの設計支援システムは、図1の基本構成図に示すように、請求項4記載のワイヤーハーネスの設計支援システムにおいて、前記新治具板レイアウトの変更を反映させた経路レイアウト案10′を出力する経路レイアウト案出力手段6a、を更に含むことを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた請求項6記載のワイヤーハーネスの設計支援システムは、図1の基本構成図に示すように、請求項5記載のワイヤーハーネスの設計支援システムにおいて、前記経路レイアウト案出力手段6aは、前記新経路レイアウトから想定されるワイヤーハーネスの材料特性に関する情報に基づいた経路レイアウト案10″を出力する、ことを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するためになされた請求項7記載のワイヤーハーネスの設計支援システムは、図1の基本構成図に示すように、請求項6記載のワイヤーハーネスの設計支援システムにおいて、前記経路レイアウト案により、前記新経路レイアウトの長さが変更されたとき、その長さ情報を付加して出力する長さ情報出力手段6b、を更に含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するためになされた請求項8に記載のワイヤーハーネスの設計支援プログラムは、図1の基本構成図に示すように、所定箇所に配索されるワイヤーハーネスの経路レイアウト及びこのワイヤーハーネスを製造するための治具板レイアウトの設計を支援するために、コンピュータを、少なくとも現在の経路レイアウトに関する現経路データを格納する経路データ格納手段、少なくとも現在の治具板レイアウトに関する現治具板データを格納する治具板データ格納手段、変更が要求される新経路レイアウトに関する新経路データを取得する経路データ取得手段、前記新経路データと前記現経路データとを比較して、両データの差情報を検出する差情報検出手段、前記差情報に対応して変更されるべき現在の治具板レイアウトの箇所を示す情報を、それ以外の箇所と識別できるように、前記現経路データと前記現治具板データとに基づいて3次元コンピュータ支援設計(CAD)から算出された現治具板レイアウトに、付加して出力する現治具板レイアウト出力手段、として機能させる、ことを特徴とする。なお、この請求項8の発明には、同様に、上記請求項2〜7に記載された発明の技術的事項を付加することができる。
【0014】
請求項1及び8に記載の発明によれば、変更が要求される新経路レイアウトに関する新経路データが取得され、この新経路データと格納されている現経路データとが比較されてその差情報が検出される。そして、現治具板レイアウトに、上記差情報に基づいて算出した現治具板レイアウトに影響する情報が付加されて出力される。したがって、現治具板レイアウトの変更すべき箇所が容易に認識できて、新たな治具板レイアウトの設計効率が向上する。
【0015】
また、請求項2記載の発明によれば、取得された新経路データに基づいて算出した新治具板レイアウトが出力され、この新治具板レイアウトに、上記差情報に基づいて算出した新治具板レイアウトの変更可能箇所を案内する案内情報が付加されて出力される。したがって、この案内情報に基づいて新たな治具板レイアウトを容易かつ確実に設計することができる。
【0016】
また、請求項3記載の発明によれば、変更が要求される新経路レイアウトに関する新経路データが取得され、この新経路データと格納されている現経路データとが比較されて、両データの差情報が検出される。また、取得された新経路データに基づいて算出した新治具板レイアウトが出力される。そして、この新治具板レイアウトに、上記差情報に基づいて算出した新治具板レイアウトの変更可能箇所を案内する案内情報が付加されて出力される。したがって、この案内情報に基づいて新たな治具板レイアウトを容易に設計することが可能になり、設計効率が向上する。
【0017】
また、請求項4記載の発明によれば、案内情報を利用した新治具板レイアウトの変更指令に基づいて、新治具板レイアウトが変更されるので、最適な治具板レイアウトの検討が容易になる。
【0018】
また、請求項5記載の発明によれば、新治具板レイアウトの変更を反映させた経路レイアウト案10′も出力されるので、実現性の高いレイアウト案を得ることができる。
【0019】
また、請求項6記載の発明によれば、新経路レイアウトから想定されるワイヤーハーネスの材料特性に関する情報に基づいた経路レイアウト案10″が出力されるので、より現実性の高い経路レイアウト案を得ることができる。
【0020】
また、請求項7記載の発明によれば、経路レイアウト案により、新経路レイアウトの長さが変更されたとき、その長さ情報が付加されて出力されるので、更に現実性の高い経路レイアウト案を提供することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本実施形態に係るハードウエア構成について説明する。図2は、本実施形態に係るハードウエア構成を示すブロック構成図である。なお、本実施形態では、これ以降、カーメーカーに所定のワイヤーハーネスを提供する部品メーカーを例にして話を進める。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、マイクロコンピュータ101、入力装置102、表示装置103、印字装置104、記憶装置105、通信インターフェース106及びリードライト装置107で基本構成される設計支援装置が用いられる。この設計支援装置のハードウエア構成は、公知のデスクトップコンピュータ等で具現化される。マイクロコンピュータ101は、CPU101a(中央演算装置)、ブートプログラム等を記憶するROM101b、各種処理結果を一時的に記憶するRAM101cを含む。入力装置102は上記各値等を入力するキーボード、マウス等であり、表示装置103は処理結果を表示するCRT等であり、印字装置104は処理結果を印字するプリンタである。また、記憶装置105は、請求項に記載された経路データ格納手段及び治具板データ格納手段に相当するもので、現実的には、処理結果を記憶するハードディスクドライブ等であり、後述の記憶領域M1及びM2を有する。また、経路データ及び治具板データの格納動作は請求項に記載された経路データ格納工程及び治具板データ格納工程に相当する。通信インターフェース106は、例えば、専用回線を用いてカーメーカー側とデータ通信を行うためのモデムボード等である。リードライト装置107は、CDROM等の記録媒体109に格納される本発明に係る設計支援プログラム109a(請求項8に対応する)を読み込んだり、記録媒体109に格納されるカーメーカーから提供される経路レイアウトデータや変更情報を読み出したり、コンピュータ101にて算出した治具板レイアウトやカーメーカー側に提案する経路レイアウト案を記録媒体109に書き込む装置である。これらの各構成要素は、内部バス108を介して接続されている。
【0023】
マイクロコンピュータ101は、リードライト装置107にて読み込まれた設計支援プログラム109aを例えば記憶装置105にインストールする。また、電源投入後、マイクロコンピュータ101は、ROM101bに記憶されるブートプログラムにしたがって起動され、インストールされている設計支援プログラム109aを立ち上げる。そして、マイクロコンピュータ101は、設計支援プログラム109aにしたがって、ワイヤーハーネスの経路レイアウトや治具板レイアウト設計したり、これらを表示装置103や印字装置104から出力させたり、その結果を記憶装置105に保存させたりする。設計支援プログラム109aは、上記基本構成を有する他のパーソナルコンピュータ等にもインストール可能であり、インストール後は、そのコンピュータを設計支援装置(設計支援システムとよんでもよい)として機能させる。なお、記録媒体109に格納される設計支援プログラム109aは請求項8に記載されたワイヤーハーネスの設計支援プログラムに相当する。設計支援プログラム109aは、記録媒体109のみならず、インターネットやLAN等の通信回線を経由して提供されたものであってもよい。
【0024】
図3を用いてまず本実施形態に係る基本的な処理手順について説明する。図3は、上記設計支援装置にて行われる本実施形態に係る基本的な処理手順を示すフローチャートである。
【0025】
本装置の電源がONされて所定の立ち上げ処理が終了して初期画面が表示された後、該当処理への移行トリガが待機されている。図3のステップS1においては、該当処理への移行トリガに対応して、その移行トリガに応じた処理に進む。この移行トリガは、例えば、表示装置103の画面上に表れる、該当処理に移行するためのボタンオブジェクトである。ここで、終了指令があれば、所定の終了処理が行われた後終了されるが、それ以外の移行トリガがあった場合には該当する処理に進む。
【0026】
ステップS2の経路データ取得処理においては、基本的に、変更が要求されるワイヤーハーネスの経路レイアウトに関する新たな経路データが取得される。この変更は、例えば、カーメーカー側での車両モデル変更にともなうコネクタの位置替え等である。これについては、図4(A)を用いて後で説明を加える。
【0027】
ステップS3の現治具板レイアウト表示処理においては、基本的に、新たな経路データと現在の経路データとを比較して両データの差情報が検出される。そして、現在の経路データに基づいて算出した治具板レイアウトに、上記差情報に基づいて算出した現治具板レイアウトに影響する情報を付加して表示する。これについては、図4(B)を用いて後で説明を加える。
【0028】
ここで、本実施形態において、基本となる表示例について、図5を用いて説明しておく。図5は、本実施形態において基本となる表示例を示す図である。なお、本実施形態における表示例は、例えば、マイクロソフト社から提供されているOS(Operating System)であるウインドウズによるウインドウ画面が利用される。図5に示すように、表示装置103上には、その上方に経路レイアウト10、下方に現治具板レイアウト20が表示される。これらは、上記ウインドウ画面中に、3次元CAD(Computer Aided Design)のイメージで表示される。
【0029】
経路レイアウト10は、例えば、カーメーカーから提供される経路データに含まれる3次元の位置情報等に基づいて算出され表示される。経路データからは、例えば、ワイヤーハーネスの線径及び線長、ワイヤーハーネスの端部や中間部に接続される支持部材としてのコネクタやクランプの形状、位置等も得ることができる。
【0030】
図5に示すように経路レイアウト10としては、車両の所定部位に配策される幹線11、分岐点C1から分岐する枝線12、13、コネクタ12a、13a等が、配策イメージ通りに表示される。これと共に、幹線11及び枝線12、13のそれぞれの長さ情報11b、12b、13bも表示可能である。なお、11aは基準面を示す。
【0031】
一方、治具板レイアウト20も、上記経路データに含まれる3次元の位置情報に基づいて算出することができる。但し、ここでは、略平面状の治具板上にワイヤーハーネスが展開されることが想定された上で算出される。算出された治具板レイアウト20は、図5に示すように、ワイヤーハーネスが治具板上に展開されて、このワイヤーハーネスを製造する際に利用される治具22c、23c等に取り付けらた状態で表示される。治具板レイアウト20を経路レイアウト10比較すれば明らかなように、治具板レイアウト20においては分岐点C2から分岐する枝線22、23の幹線21に対する角度が、経路レイアウト10におけるそれらとは異なるものになる。更に、コネクタ22a、23aの移動可能範囲が、分岐点C2を中心とする同心円22d、23dで表示されている。治具板や使用可能な治具に関する情報は、予め記憶装置105に格納されている。
【0032】
なお、治具板レイアウト20における幹線21、枝線22、23、基準面21a、コネクタ22a、23aはそれぞれ、経路レイアウト10における幹線11、枝線12、13、基準面11a、コネクタ12a、13aに対応するものである。また、一旦、算出された治具板レイアウト20は、現在の治具板データとして、記憶装置105に格納しておくことにより、後で、読み出して適宜表示させることができる。また、この経路レイアウト10及び治具板レイアウト20は、例えば、白色で表示されているものとする。
【0033】
ステップS4の変更案内線表示処理においては、基本的に、ステップS2にて取得された経路データに基づいて算出した新たな治具板レイアウトが出力され、この治具板レイアウトに、上記差情報に基づいて算出した、新たな治具板レイアウトに対する変更可能箇所を案内する案内情報が付加されて表示される。これについては、図4(C)を用いて後で説明を加える。
【0034】
ステップS5の手動変更処理においては、基本的に、ステップS4にて表示された案内情報にしたがって、入力装置102を用いて、治具板レイアウトが適宜変更されて表示される。また、この変更が付加された経路レイアウト案も表示される。これについては、図4(D)を用いて後で説明を加える。
【0035】
ステップS6の経路レイアウト案表示処理においては、基本的に、ステップS5の手動変更指令による変更結果に、ワイヤーハーネスの材料特性に関する情報が加味された経路レイアウト案が表示される。また、変更箇所の長さ情報の付加も可能である。これについては、図4(E)を用いて後で説明を加える。
【0036】
ステップS7の印字、格納等の処理においては、上記ステップS3〜ステップS6の各処理にて得られた結果を、印字装置104にて紙上に出力させたり、記憶装置105上に特定ファイル名を付けて格納させたり、リードライト装置107を介して可搬型記録媒体に書き込んだりする。これらの処理は、公知の処理手順が利用可能である。
【0037】
なお、本実施形態では、上記ステップS2、ステップS3、ステップS4、ステップS5、ステップS6の処理は、所定の移行トリガにより、基本的にこの順に進行していくものとする。但し、ステップS7は、ステップS2、ステップS3、ステップS4、ステップS5、ステップS6の処理の途中でも適宜、実行可能であるとする。
【0038】
次に、図4〜図11を用いて図3の各サブルーチン処理の手順及びその処理の過程で得られる表示例について説明する。図4(A)〜図4(E)は、図3における各サブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。図5〜図11は、図3に示す処理手順の過程で得られる出力例を示す図である。なお、ここでは、既に、上記図5で示したようなレイアウト表示が可能な治具板データ及び経路データが記憶装置105に格納されているものとする。
【0039】
図4(A)に示す経路データ取得処理では、通信インターフェース106又はリードライト装置107を介して、例えば、カーメーカー側から提供される変更が要求される経路レイアウトに関する新たな経路データが取得される。この経路データには、少なくとも新たな経路レイアウトを示すワイヤーハーネスの幹線、枝線の3次元の位置情報が含まれる。この経路データを記憶装置105に割り当てられた記憶領域M1に格納するために、ステップS21においてこの記憶領域M1にある現在の経路データを記憶領域M2に転送し、ステップS22において取得された新たな経路データを、ステップS23において記憶領域M1に格納する。この結果、記憶領域M1には今回取得された新たな経路データが格納され、記憶領域M2には前回取得された経路データが格納されることになる。なお、上記ステップS22及び関連するハードウエアは、請求項に記載された経路データ取得手段及び工程に相当する。
【0040】
図4(B)に示す現治具板レイアウト表示処理では、まず、ステップS31において、記憶領域M1、M2から上記経路データが読み出される。次に、ステップS32において、記憶領域M1から読み出された経路データ、すなわち、新たな経路データに基づき、図6に示すような経路レイアウト10が表示装置103上に表示される。この経路レイアウト10の表示は、上記図5を用いて説明した方法と同様にして行われる。但し、ここに示す経路レイアウト10では、図5に示した枝線13の位置及び線長が、枝線13―2で示すように変更されていることがわかる。この変更にともなう長さ情報13b―2も同時に表示可能である。他の箇所については、変更はないので、図5に示した経路レイアウトと同様の表示が行われる。
【0041】
次に、ステップS33において上記記憶装置105に格納される現在の治具板データを読み出し、ステップS34においては上記読み出した治具板データに基づき、図6に示すような現在の治具板レイアウト20が表示される。この治具板レイアウト20は、この時点では、上記図5で示したレイアウトと同様である。
【0042】
次に、ステップS35において、上記記憶領域M1、M2から読みされた両経路データの比較が行われて、両データの差情報が検出される。更に、この差情報に基づいて、現在の治具板レイアウト20に影響する箇所が検出される。そして、ステップS36において、この影響する箇所が、現在の治具板レイアウト20に付加されて表示される。すなわち、図6の治具板レイアウト20に示すように、影響する箇所が、それ以外の箇所と識別できるように、該当するコネクタ23a1、治具23c1、及び枝線23−1が、例えば、赤色で表示される。なお、影響しない箇所は、例えば、白色のままとする。また、上記コネクタ23a1に対応する、分岐点C2を中心とする同心円23d1も赤色で表示される。これにより、現在の治具板レイアウトにおける変更すべき箇所が容易に認識できて、新たな治具板レイアウトの設計効率が向上する。なお、幹線名や枝線名も同時に表示しておき、文字やキャラクタにより、変更情報を幹線名や枝線名に対応づけて表示するようしてもよい。この場合、経路データには、幹線名や枝線名も含まれていることになる。こうすると、カーメーカーから提供された新たな経路レイアウトに枝線がなくなっている場合にも、容易に対応できるようになる。なお、上記ステップS35及び関連するハードウエアは請求項に記載された差情報検出手段及び工程に相当し、上記ステップS36及び関連するハードウエアは請求項に記載された現治具板レイアウト出力手段及び工程に相当する。
【0043】
図4(C)に示す変更案内線表示処理では、まず、ステップS41において、上記記憶領域M1から読み出された経路データ、すなわち、新たな経路データに基づき、図7に示すような新たな治具板レイアウト20が、図6に示した治具板レイアウトに替わって、表示装置103上に表示される。この新たな治具板レイアウト20の表示に際しては、上記図5を用いて説明したと同様の処理にて行われる。なお、ここに示す治具板レイアウト20では、図5に示したコネクタ23aの位置が変更された結果、23―2で示すように枝線が変更されていることがわかる。
【0044】
次に、ステップS42において、コネクタ23a1に対応する、分岐点C2を中心とする赤色の同心円が、上記同心円23dに替わって、変更案内線23d2として表示装置103上に表示される。この変更案内線23d2は、他の同心円と区別がつく色であれば、赤色以外であってもよい。この変更案内線23d2は、位置変更されたコネクタ23aが移動可能な範囲を示唆するものである。よって、この変更案内線23d2にしたがって新たな治具板レイアウトを容易に設計することが可能になり、設計効率が向上する。なお、上記ステップS41及び関連するハードウエアは請求項に記載された新治具板レイアウト出力手段に相当し、上記ステップS42及び関連するハードウエアは請求項に記載された変更案内情報出力手段に相当する。また、上記変更案内線23d2は、変更案内情報に相当する。
【0045】
図4(D)に示す手動変更処理では、ステップS51において、手動変更指令の有無が待機されている(ステップS51のN)。この手動変更指令は、例えば、入力装置102としてのマウスを用いて、図7のコネクタ23aを、変更目標点Dまで公知のドラッグ操作をすることにより行うことができる。このような手動変更指令があるとステップS52に進む(ステップS51のY)。
【0046】
ステップS52においては、上記変更指令にしたがって、図8に示すように、コネクタ23aが上記変更目標点Dの位置まで移動され、これにともなって、治具及び枝線も、23c3及び23―3で示すように表示変更される。また、この変更は、ボタンオブジェクトのクリック操作等に応じて、経路レイアウトにも反映させることができる。すなわち、ステップS53において、位置変更された枝線23―3が、図9の13―3で示すように、図8等で示した経路レイアウト10に付加された経路レイアウト10′が表示される。この13―3は、変更後の枝線を示し、その旨を識別できるように、例えば、黄色にて表示されるようにする。更に、治具板レイアウトをドラッグ操作することにより、図10に示すように、経路レイアウトと重ね合わせた、平面図のイメージで表示させることも可能である。これにより、幹線に対する枝線の角度の検討及び調整等を容易に行うことができる。治具板レイアウトと経路レイアウトとはお互いリンクして、図9に示すような斜視図、又は、図10に示すような平面図のイメージで表示可能である。
【0047】
そして、このような手動変更処理は、ステップS54において、ボタンオブジェクトのクリック操作等による所定の手動変更終了トリガがあるまで継続可能である。このように、手動操作に応じて、治具板レイアウトが変更できるので、最適な治具板レイアウトの検討が容易になる。なお、この図4(D)のステップS52及びこれに関連するハードウエアは請求項4の変更手段に相当し、ステップS53及びこれに関連するハードウエアは請求項4の経路レイアウト案出力手段に相当する。
【0048】
そして、図4(E)に示す経路レイアウト案表示処理では、ステップS61において、カーメーカーから提供される上記新たな経路レイアウトに対応するワイヤーハーネスの幹線、枝線の3次元の位置情報(すなわち、幹線、枝線の太さや長さ等)から想定されるワイヤーハーネスの材料特性データに基づき、ステップS62において、図11に示すような経路レイアウト案10″を算出して表示装置103上に表示することも可能である(請求項6に対応)。
【0049】
詳しくは、治具板上では既に存在する治具等の関係を考慮した、図4(D)の手動変更処理等の結果、枝線13−2″を図11の治具板レイアウト20のような方向に分岐させざるを得ないとき、この分岐方向及び求められるコネクタの位置や方向等の拘束条件の両方を満足させる経路レイアウト案を作成する必要がある。しかしながら、ワイヤーハーネスは電源線や制御線から構成されているため、自由に曲げることはできない。そこで、このワイヤーハーネスの材料特性データとしての最小曲げ半径や弾性の許容範囲も満たすような経路レイアウト案10″を算出するようにする。この際、カーメーカーから提供される新たな経路レイアウトには材料特性データが含まれていないので、新たな経路レイアウトに含まれる上記位置情報から材料特性データを予測、すなわち想定するようにする。このために、部品メーカー内において、典型的なワイヤーハーネスの形状(上記位置情報に相当する)と材料特性とを対応づけたデータベースを、予め試験等を行って作成しておく。そして、このデータベースを参照しつつ、カーメーカーから提供される新たな経路レイアウトに含まれる位置情報から、これに最も近似する材料特性データを選択するようにする。この材料特性データを用いて、図11の13−2″で示すような形状の枝線を算出して表示させる。なお、このとき、対象となる枝線はできるだけ短くなるようにする。そして、ステップS63において、このようにして得られた経路レイアウト案10″による長さ情報13b2も付加して表示可能である。
【0050】
なお、このようにして得られた結果は、リードライト装置107にて可搬型記録媒体に格納してカーメーカー側に提供するようにしたり、通信インターフェース106を介してカーメーカー側に提供するようにすることが可能である。
【0051】
このように、本実施形態によれば、非常に現実性の高い経路レイアウト案を提供することができる。また、この経路レイアウト案を提供されたカーメーカー側も、干渉物との位置関係等を容易に検討できる。なお、上記ステップS62及び関連するハードウエアは請求項6の経路レイアウト案出力手段に相当し、上記ステップS63及び関連するハードウエアは請求項に記載された長さ情報出力手段に相当する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、頻繁に発生する設計変更に的確に対応し、治具板レイアウト及びこれにともなう経路レイアウト案の設計効率を向上させることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、カーメーカーにワイヤーハーネスを提供する部品メーカーを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施形態で示した部品メーカーを、例えば、同一社内における製造部門にワイヤーハーネスを提供する部門に置き替えても、同様に本発明は適用可能である。また、実施形態にて示した幹線、枝線、案内線、長さ情報のデザイン、色分け等も、適宜、変更可能である。この他、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々変形した例も、本発明に含まれることはいうまでもない。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1及び8に記載の発明によれば、変更が要求される新経路レイアウトに関する新経路データが取得され、この新経路データと格納されている現経路データとが比較されてその差情報が検出される。そして、現治具板レイアウトに、上記差情報に基づいて算出した現治具板レイアウトに影響する情報が付加されて出力される。したがって、現治具板レイアウトの変更すべき箇所が容易に認識できて、新たな治具板レイアウトの設計効率が向上する。
【0055】
請求項2記載の発明によれば、取得された新経路データに基づいて算出した新治具板レイアウトが出力され、この新治具板レイアウトに、上記差情報に基づいて算出した新治具板レイアウトの変更可能箇所を案内する案内情報が付加されて出力される。したがって、この案内情報に基づいて新たな治具板レイアウトを容易かつ確実に設計することができる。
【0056】
請求項3記載の発明によれば、変更が要求される新経路レイアウトに関する新経路データが取得され、この新経路データと格納されている現経路データとが比較されて、両データの差情報が検出される。また、取得された新経路データに基づいて算出した新治具板レイアウトが出力される。そして、この新治具板レイアウトに、上記差情報に基づいて算出した新治具板レイアウトの変更可能箇所を案内する案内情報が付加されて出力される。したがって、この案内情報に基づいて新たな治具板レイアウトを容易に設計することが可能になり、設計効率が向上する。
【0057】
請求項4記載の発明によれば、案内情報を利用した新治具板レイアウトの変更指令に基づいて、新治具板レイアウトが変更されるので、最適な治具板レイアウトの検討が容易になる。
【0058】
請求項5記載の発明によれば、新治具板レイアウトの変更を反映させた経路レイアウト案10′も出力されるので、実現性の高いレイアウト案を得ることができる。
【0059】
請求項6記載の発明によれば、新経路レイアウトから想定されるワイヤーハーネスの材料特性に関する情報に基づいた経路レイアウト案10″が出力されるので、より現実性の高い経路レイアウト案を得ることができる。
【0060】
請求項7記載の発明によれば、経路レイアウト案により、新経路レイアウトの長さが変更されたとき、その長さ情報が付加されて出力されるので、更に現実性の高い経路レイアウト案を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のワイヤーハーネスの設計支援システムの基本構成を示すブロック図である。
【図2】 図2は、本実施形態に係るハードウエア構成を示すブロック構成図である。
【図3】 本実施形態に係る基本的な処理手順を示すフローチャートである。
【図4】 図4(A)〜図4(E)は、図3における各サブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】 本実施形態において基本となる表示例を示す図である。
【図6】 現治具板レイアウト表示処理に係る表示例を示す図である。
【図7】 変更案内線表示処理に係る表示例を示す図である。
【図8】 手動変更処理に係る表示例を示す図である。
【図9】 手動変更処理に係る表示例を示す図である。
【図10】 手動変更処理に係る表示例を示す図である。
【図11】 経路レイアウト案表示処理に係る表示例を示す図である。
【符号の説明】
10、10″ 経路レイアウト
20 治具板レイアウト
11、21 幹線
12、13、22、23 枝線
12a、13a、22a、23a コネクタ
11b、12b、13b 長さ情報
50 中央文字板(文字板)

Claims (8)

  1. 所定箇所に配索されるワイヤーハーネスの経路レイアウト及びこのワイヤーハーネスを製造するための治具板レイアウトの設計を支援するシステムであって、
    少なくとも現在の経路レイアウトに関する現経路データを格納する経路データ格納手段と、
    少なくとも前記現在の経路レイアウトに対応する現在の治具板レイアウトに関する現治具板データを格納する治具板データ格納手段と、
    変更が要求される新経路レイアウトに関する新経路データを取得する経路データ取得手段と、
    前記新経路データと前記現経路データとを比較して、両データの差情報を検出する差情報検出手段と、
    前記差情報に対応して変更されるべき現在の治具板レイアウトの箇所を示す情報を、それ以外の箇所と識別できるように、前記現経路データと前記現治具板データとに基づいて3次元コンピュータ支援設計(CAD)から算出された現治具板レイアウトに、付加して出力する現治具板レイアウト出力手段と、
    を含むことを特徴とするワイヤーハーネスの設計支援システム。
  2. 前記新経路データに含まれる3次元の位置情報に基づいて前記3次元CADから算出された新治具板レイアウトを出力する新治具板レイアウト出力手段と、
    前記差情報に基づいて前記3次元CADから算出された前記新治具板レイアウトの変更可能箇所を案内する案内情報を、前記新治具板レイアウトに付加して出力する変更案内情報出力手段と、
    を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネスの設計支援システム。
  3. 所定箇所に配索されるワイヤーハーネスの経路レイアウト及びこのワイヤーハーネスを製造するための治具板レイアウトの設計を支援するシステムであって、
    少なくとも現在の経路レイアウトに関する現経路データを格納する経路データ格納手段と、
    少なくとも現在の治具板レイアウトに関する現治具板データを格納する治具板データ格納手段と、
    変更が要求される経路レイアウトに対応する新経路データを取得する経路データ取得手段と、
    前記新経路データと前記現経路データとを比較して、両データの差情報を検出する差情報検出手段と、
    前記新経路データに含まれる3次元の位置情報に基づいて3次元コンピュータ支援設計(CAD)から算出された新治具板レイアウトを出力する新治具板レイアウト出力手段と、
    前記差情報に基づいて前記3次元CADから算出された前記新治具板レイアウトの変更可能箇所を案内する案内情報を、前記新治具板レイアウトに付加して出力する変更案内情報出力手段と、
    を含むことを特徴とするワイヤーハーネスの設計支援システム。
  4. 前記案内情報を利用した前記新治具板レイアウトの変更指令に基づいて、前記新治具板レイアウトを変更する変更手段更に含むことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のワイヤーハーネスの設計支援システム。
  5. 前記新治具板レイアウトの変更を反映させた経路レイアウト案を出力する経路レイアウト案出力手段更に含むことを特徴とする請求項4に記載のワイヤーハーネスの設計支援システム。
  6. 前記経路レイアウト案出力手段では、前記新経路レイアウトから想定されるワイヤーハーネスの材料特性に関する情報に基づいた経路レイアウト案が出力されることを特徴とする請求項5に記載のワイヤーハーネスの設計支援システム。
  7. 前記経路レイアウト案により、前記新経路レイアウトの長さが変更されたとき、その長さ情報を付加して出力する長さ情報出力手段更に含むことを特徴とする請求項6に記載のワイヤーハーネスの設計支援システム。
  8. 所定箇所に配索されるワイヤーハーネスの経路レイアウト及びこのワイヤーハーネスを製造するための治具板レイアウトの設計を支援するために、コンピュータを、
    少なくとも現在の経路レイアウトに関する現経路データを格納する経路データ格納手段、
    少なくとも前記現在の経路レイアウトに対応する現在の治具板レイアウトに関する現治具板データを格納する治具板データ格納手段、
    変更が要求される新経路レイアウトに関する新経路データを取得する経路データ取得手段、
    前記新経路データと前記現経路データとを比較して、両データの差情報を検出する差情報検出手段、及び、
    前記差情報に対応して変更されるべき現在の治具板レイアウトの箇所を示す情報を、それ以外の箇所と識別できるように、前記現経路データと前記現治具板データとに基づいて3次元コンピュータ支援設計(CAD)から算出された現治具板レイアウトに、付加して出力する現治具板レイアウト出力手段、
    として機能させる
    ことを特徴とするワイヤーハーネスの設計支援プログラム。
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