JP4627973B2 - スピーカ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、聴取者に対して上下に配置された複数のスピーカについて聴感を補正したスピーカ装置に関し、特に、フロントスピーカと車両の天井板に直接取り付けられた車載用スピーカとを含む複数のスピーカが配置され、聴取者の拡がり感を向上し、音像を上昇させることができ、さらに、車両の室内の前部又は後部席における聴感を補正したステレオ再生できるスピーカ装置及びオーディオ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両、例えば、乗用車の車室内において、音楽や音声の音響再生を行うために、スピーカ装置が使用されている。そのスピーカ装置は、例えば、フロントスピーカとして、前部席用のドア内に埋め込まれるか、さらには、リアスピーカとして、リアトレイ上に載置されている。これら複数のスピーカを含むスピーカ装置は、聴感上、前部席と後部席との少なくともいずれか一方に対応するように設定され、取付け配置されることが普通である。
【0003】
自動車の車室内では、ステレオ信号の左チャンネル用スピーカが、車室前方のフロントパネルの左端に、右チャンネル用スピーカがその右端に取り付けられており、運転者からみると、偏ったスピーカ配置になっている。例えば、運転席では、右スピーカがより近く、左スピーカがより遠い配置となっている。この場合、運転者には、右スピーカの音波がより速く到達し、本来のステレオ再生上では、音像が正面に定位すべきところ、右に偏って定位することになる。これを解決するため、右スピーカの信号を遅延させ、左スピーカの信号と同時刻に到達させる処理が知られている。
【0004】
しかし、車室内は、密閉された狭い空間であるため、短時間で反射が起こり、音波が干渉しあって、聴取位置までの伝達特性は非常に複雑なものとなる。また、スピーカ配置に対して左右非対称な位置で音楽を聴くことになるため、左右のスピーカからの伝達特性も大きく異なってくる。このような車室内でステレオ再生する際の悪影響を取り除き、車室内における音響特性の改善を行う種々の提案がなされている。
【0005】
車室内に、左右のフロントスピーカと左右のリアスピーカを配置したステレオ再生装置において、次数の低い帯域遮断特性を持つ帯域フィルタと遅延処理部を直列接続し、次数の高い帯域遮断特性を持つ帯域フィルタと加算するように構成して、音声帯域信号を定位しても遅延振幅特性が平坦に保たれ、スピーカ位置が偏っている車室内で音声帯域の音像を乗員の正面に定位させることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
また、車載用オーディオシステムにおいて、スピーカの他に、マイクロホンが設けられており、遅延手段を用いて、そのマイクロホンに到達する各スピーカからの音のタイミングがほぼ一致するようにし、聴感上の違和感を軽減して音質の向上を図ることが行われている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
さらに、車両の車室内の周囲に配置された複数のスピーカの音量、出力遅延時間等を適切に設定して、車内に最適音場を形成するようにしているが、複数位置に対して最適音場を形成することができない。そこで、車室中央の天井部等に、4方を向いている4個のスピーカからなる音場補正用スピーカセットを配置し、周囲の4個のスピーカと共に、合計8個のスピーカ個々に対して、音量比、音声出力タイミングが調整される独立したフィルタを各々接続し、音を出力させるオーディオシステムが知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【0008】
このオーディオシステムは、車室内の4座席に対して、夫々、最適な音場を形成することができるというものである。周囲に配置された4スピーカのミュートの態様に合わせて、各スピーカのフィルタを予め設定しておき、ミュートの検出時に、そのフィルタを選択し、他の位置の音場を変化させないようにしている。そのため、車室内の複数の位置で各々最適な音場を形成することができるようになり、車室内に座っている全ての人に対して、個々に最適な音場でオーディオを聴くことができ、例えば、1人の人がリア座席において、右側に座っても左側に座っても、同じ様な最適音場で、オーディオを聴くことができるようになる。
【0009】
さらに、音響再生に関わるスピーカ装置を前部座席用のドア内又はリアトレイ上に配置する以外に、車室内に充分な重低音を有するより良い音場を形成するため、車室内の天井部にも、スピーカ装置を配置することが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。
【0010】
この提案されたスピーカ装置は、通常のスピーカ装置を車室内に取り付ける場合に、そのスピーカ装置の取付け位置に制約などがあるため、あまり大きな口径を有するスピーカ装置を使用することができないことに対処するためのものであり、上記の提案では、大きな口径を有するスピーカ装置の代りに、天井板に直接取り付けた振動装置を使用し、天井板の一部を振動板としたスピーカを形成している。
【0011】
従来技術では、大きな口径を有するスピーカ装置が持っている重低音の効果について、ドアやトランクルーム内をエンクロージャとして使用し、このエンクロージャの共振によって、その重低音を増強している。さらに、また他の従来技術では、いわゆるデジタルシグナルプロセッサなどを用いて重低音を増強するように信号処理を行っている。
【0012】
しかし、これらの従来技術では、スピーカの口径による重低音の不足を充分に補うことは困難である。また、ドア内に埋め込まれたスピーカ装置と、リアトレイ上に載置されたスピーカ装置とから、前部座席および後部座席に乗車している聴取者までの距離が大きく異なってしまい、音場のバランスがくずれてしまうという問題がある。さらにまた、特に、ドア内に埋込まれたスピーカ装置からは、聴取位置の下方から音響が射出されることになり、音像の定位に有効な音響が不足するという問題があり、このため臨場感のある音響再生ができない。
【0013】
そこで、特許文献4で提案された車載用スピーカ装置では、これらの問題点を考慮して、乗用車の天井板の少なくとも一部分を振動板として使用するようにし、少なくとも低音域を再生することができるスピーカ本体を、その開口部が乗用車の車室側を臨むように取り付けられるようにしている。これで、低音域を再生可能とし、天井部にスピーカ装置が設置されることによって音場の臨場感を高めることができ、より良い車室内音場を形成することができる。
【0014】
以上の様に、車室内などの限られた空間内に配置された複数のスピーカによってステレオ再生するときに、その車室内での音響特性を改善し、車室内の各座席で最適な音場を形成できる種々の方策が知られている。
【0015】
【特許文献1】
特開平6−141400号公報
【特許文献2】
特開2001−236077号公報
【特許文献3】
特開2001−286000号公報
【特許文献4】
実開平6−45865号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1で提案されたステレオ再生装置では、スピーカ位置が運転者に対して水平方向に偏っている場合に、音声帯域の音像を運転者の正面に定位させようとするものであり、特許文献2で提案された車載用オーディオシステムでは、聴取位置に応じて、音圧レベルの周波数特性及び群遅延時間特性を求め、音質を向上しようとするものである。そして、特許文献3で提案されたオーディオシステムでは、音場補正用スピーカセットを含めて8つのスピーカを選択するようにして、複数位置における最適音場を形成できるようにしている。
【0017】
これらの提案された技術によるスピーカ装置では、何れのものも、左右のフロントスピーカが、車室内のフロントパネル部などに取り付けられ、それらの配置レベルが聴取者の聴取位置に近いので、その左右のスピーカからの出力による音像は、ある程度、聴取者の前方の位置に形成され、聴感上、音像の位置に関連して違和感を覚えることは少ない。
【0018】
一方、特許文献4に記載されたスピーカ装置のように、左右のフロントスピーカが、車室内に係るフロントドアの下方に取り付けられている場合に、従来に提案されている最適音場の形成や音質の向上に係る技術を適用しても、左右のフロントスピーカが、聴取者の聴取位置より下方になってしまうため、その左右のフロントスピーカによって良好なステレオ再生が可能であっても、これらによる音像は、聴取者の聴取位置より下方の位置となり、オーディオ再生の臨場感が損なわれるという問題がある。
【0019】
さらに、特許文献4で提案されたスピーカ装置では、左右のフロントドアの下方において、その夫々にフロントスピーカが取り付けられ、さらに、車両の天井部に重低音用の天井直付けのスピーカが設けられているが、このスピーカ装置においては、重低音用のスピーカを付加することによって、臨場感を向上しようとしたものであり、左右のフロントスピーカによる音像の位置を、下方から聴取者の聴取位置の前方まで上昇させるものではない。
【0020】
また、各特許文献で提案された技術では、車室内の複数の位置における最適音場を形成するのに、複雑な設定回路や多くのスピーカなどを必要とするため、コスト上昇を招来する。しかも、個々の聴取位置に合わせて、設定する必要があり、聴取者にとって、煩雑な操作が強いられることになり、手間がかかるという問題がある。
【0021】
そこで、本発明は、車両などの室内において、ステレオ再生空間を形成するために、フロントスピーカと、該室の天井部に取り付けたスピーカとが上方と下方に分かれて配置されたスピーカ装置であって、天井部に取り付けられたスピーカの音出力をフロントスピーカの音出力に対して所定時間だけ遅延させることにより、音の拡がり感を向上させると共に、聴取者が感ずる音像の位置を上昇させ、室内のどの聴取位置でも、同様の効果が得られるスピーカ装置及びオーディオ装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、本発明では、車室内の第1聴取者に対して互いに前後に位置し、該車室の下部と天井部に互いに離れた位置に夫々取り付けられるステレオ構成された前記車室に係る左右のフロントドアの各々の下部に取り付けられた左右の第1スピーカ及び、前記天井部に直付けされた左右の第2スピーカと、該第1スピーカから左右の第1音を出力させ、該第2スピーカから左右の第2音を出力させる駆動制御部とを有するスピーカ装置において、前記駆動制御部は、前記第1聴取者の後方で第2聴取者が前記左右の第1音及び前記左右の第2音を聴取する場合に、前記左右の第2スピーカから出力される前記左右の第2音について、前記第1聴取者及び前記第2聴取者の各々における前記左の第1音と前記左の第2音の到達時間差及び前記右の第1音と前記右の第2音の到達時間差のいずれよりも大きく、前記第1聴取者及び前記第2聴取者が、ハース効果によって、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果が得られる範囲内の時間遅延を設定するようにした。
【0023】
そして、前記駆動制御部は、複数の聴取者が前記左右の第1音及び前記左右の第2音を聴取する場合に、前記時間遅延について、前記複数の聴取者の各々における前記左の第1音と前記左の第2音の到達時間差及び前記右の第1音と前記右の第2音の到達時間差のいずれよりも大きく、前記複数の聴取者が、ハース効果によって、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果が得られる範囲内の時間遅延を設定するようにした。
【0024】
さらに、前記左右の第1スピーカ及び前記左右の第2スピーカの各々は、夫々ステレオ構成された複数のスピーカを含むこととし、前記左右の第1スピーカが、前記車室に係るフロントドアの各々の下部に取り付けられ、前記左右の第2スピーカが、前記天井部に直付けされていることとし、或いは、前記左右の第2スピーカは、前記室内におけるリア部に取り付けられたスピーカを含むこととした。
【0025】
また、前記左右の第2スピーカを構成する前記スピーカの各々は、ステレオ信号が供給される振動装置を有し、前記振動装置の各々が、前記天井部の天井板における平坦部に互いに所定間隔を置いて直接取り付けられ、該天井板の一部をスピーカの振動板とすることとし、前記駆動制御部は、前記車室内の複数の座席に対応した前記左右の第1音及び前記左右の第2音に係る到達時間差情報を保持しており、選択された該音到達時間差に基づいて、前記所定の時間遅延が設定されるようにした。
【0026】
そして、前記駆動制御部は、前記車室内の複数の座席に対応した前記左の第1音と前記左の第2音に係る到達時間差及び前記右の第1音と前記右の第2音に係る到達時間差に基づいた前記時間遅延を設定し、前記左右の第2スピーカから該時間遅延が行われた前記左右の第2音を出力することとし、さらに、前記駆動制御部は、前記左右の第2音に対する時間遅延が、前記時間遅延より所定時間だけ長く設定され、前記左右の第2スピーカから当該時間遅延が行われた前記左右の第2音を出力することとした。
また、本発明によるオーディオ装置では、車室内の第1聴取者に対して前方に位置し、車室の下部の左右に位置する左右の第1スピーカを駆動する左右の第1音信号と、該車室内の第1聴取者に対して後方に位置し、該左右の第1スピーカと互いに上下に離れた該車室の天井部に位置する左右の第2スピーカを駆動する左右の第2音信号とを出力する出力部と、前記左右の第1音信号及び前記左右の第2音信号を出力制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1聴取者と少なくとも一人が前記第1聴取者の後方に位置する複数の第2聴取者とが前記左右の第1音及び前記左右の第2音を聴取する場合に、前記左右の第2スピーカから出力される前記左右の第2音について、前記第1聴取者及び前記複数の第2聴取者の各々における前記左の第1音と前記左の第2音の到達時間差及び前記右の第1音と前記右の第2音の到達時間差のいずれよりも大きく、前記第1聴取者及び前記複数の第2聴取者が、ハース効果によって、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果が得られる範囲内の時間遅延を設定するようにした。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明によるスピーカ装置の実施形態について、図を参照しながら説明する。ここでは、本実施形態のスピーカ装置が、車両などの車室に適用された場合を例にして、複数のスピーカの配置によって音像を上昇させることが説明されるが、スピーカ装置に含まれる複数のスピーカのうち、一部のスピーカについて、音像を上昇させたステレオ再生空間を形成するに当たって、聴取者の聴取位置より下方に配置せざるを得ないような空間又は部屋であって、しかも、聴取者の聴取位置より上方に別のスピーカを取り付けざるを得ないような場合であれば、車両などの車室に限られることなく、本実施形態のスピーカ装置を適用することができる。
【0028】
最近の乗用車などでは、特許文献4に開示されているように、フロントスピーカをフロントドアの下部に取り付ける場合が多い。そして、本実施形態のスピーカ装置では、音像を上昇させるため、下方にあるフロントスピーカに対して上方に、車室の天井部にもスピーカを必要とすることから、該天井部において取り付けられたスピーカが、邪魔にならないことを配慮して、特許文献4に開示された天井直付けスピーカを採用することとした。
【0029】
特許文献4に記載されたスピーカ装置について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、乗用車の一部縦断面図を示しており、天井直付けスピーカが乗用車に組み込まれた状態が示されている。乗用車1の車室内には、運転席を含む前部席3と、後部席4とが設けられている。前部席3に対するフロントドアの下部内には、フロントスピーカ6が埋め込まれており、後部席4のリアトレイ上には、リアスピーカ7が載置されている。乗用車1の天井部は、外板2と天井板5とから成り、天井板5の中央付近に、後述する振動装置8が取り付けられ、スピーカ装置が構成されている。
【0030】
図5は、振動装置8が天井板5に直接取り付けられ、スピーカが構成されていることを示し、取り付けられた振動装置8付近の拡大断面図が示されている。振動装置8では、プレート84とポールピース86の台板との間で環状の磁石85を挟持するようにして、外磁形の磁気回路が形成されている。ボイスコイル82が、この磁気回路を形成するポールピース86とプレート14との間隙に設けられている。ボイスコイル82はボビン81に巻回され、該ボビン81の台座部が、天井板5に固着される。そして、プレート84に取り付けられたダンパ83が、ボビン81の台座部に固定されている。
【0031】
この天井板5自体が振動板の役割を果たしている。従って、ボイスコイル82に交流信号を与えると、該ボイスコイル82が巻回されたボビン81に連結された天井板5を振動させて、該交流信号に応じた音響を発生することができる。また、振動装置8は、外板2と天井板5との間に取り付けられてもよいが、図4において破線で示すように、天井板5の車室内側に取り付けられても、同様の効果が得られる。
【0032】
ただ、特許文献4に記載された天井直付けスピーカは、天井板5を振動板とすることによって、大きな振動板面積を確保できるとして、重低音再生用のスピーカで使用されているが、車両の天井板に互いに所定間隔を置いて2つの振動装置を取り付けて、その振動装置の各々にステレオ信号を供給すれば、該振動装置の取付け部分における天井板を、直接駆動される振動板としたステレオスピーカ装置を形成できることが確認されている。この所定間隔は、車室内の座席に座っている聴取者がステレオ感を得られるような大きさに設定される。乗用車の場合には、その間隔は、80〜120cm程度である。
【0033】
なお、天井直付けスピーカは、振動装置が天井板に直接取り付けられて、天井板の一部を振動板にしていることから、天井板の平坦部に取り付けられる必要がある。通常、乗用車の天井板には、天井部に組み込む都合上、天井板に急変部が存在している。そのため、天井直付けスピーカの振動装置を天井板に取り付ける場合には、その取付け位置は、振動板として機能しないこの急変部を避けた、天井板の平坦部となる。
【0034】
そこで、本実施形態のステレオ装置では、聴取位置より下方にあるフロントスピーカに対して上方の位置に取り付ける必要性から、図4に示される車室のリア部に載置されたリアスピーカの代りに、リアスピーカとして、上述した天井直付けスピーカを採用することとした。ここでは、当該ステレオ装置が車両などの室内に適用される場合を想定しているため、リアスピーカとしては、天井直付けスピーカが好都合であるが、車両などの車室以外の空間又は部屋内に適用する場合には、天井板が設置されていれば、天井直付けスピーカを用いることはできるが、天井板が設置されていなければ、通常のスピーカを上方に取り付けてリアスピーカとすることができる。
【0035】
次に、天井直付けスピーカを、自動車の天井板に取り付けることによって、車室内における音の拡がり感を向上でき、フロントスピーカによって形成される音像を上昇させることができるという効果が得られる。しかし、一般に、乗用車などでは、運転席の他に、同乗者用の座席が備えられ、図4に示されるように、前部席と後部席とが備えられている。そこで、車室内の天井部への天井直付けスピーカの取付け位置によっては、音の拡がり感の向上や音像の上昇という効果が、前後の両席において、同様に得られないという問題がある。
【0036】
そこで、この問題点について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、天井直付けスピーカの取付け位置が、前部席の聴取者に近い場合を示し、図7は、天井直付けスピーカの取付け位置が、後部席の聴取者に近い場合を示している。
図6では、天井直付けスピーカHSPが、後部席の聴取者M2に近く、前部席の聴取者M1からは遠くに離れた位置の天井板に取り付けられている。そのため、この場合には、音の拡がり感の向上と、音像の上昇との効果が前部席に重点が置かれたことになる。一方、後部席の聴取者M2にとっては、天井直付けスピーカHSPからの音が支配的になる聴感となる。これは、聴取者M2と天井直付けスピーカHSPとの距離b21が、フロントスピーカFSPと聴取者M2の聴取位置との距離A2に対して近過ぎるためである。
【0037】
他方、図7では、天井直付けスピーカHSPが、前部席の聴取者M1に近く、後部席の聴取者M2からは離れた位置の天井板に取り付けられている。そのため、この場合には、音の拡がり感の向上と、音像の上昇との効果が後部席に重点が置かれたことになる。しかし、前部席の聴取者M1にとっては、天井直付けスピーカHSPからの音が支配的になる聴感となる。これは、聴取者M1と天井直付けスピーカHSPとの距離b12が、フロントスピーカFSPと聴取者M1の聴取位置との距離A1に対して近過ぎるためである。
【0038】
このように、天井直付けスピーカHSPの取付け位置によって、前部席又は後部席における聴感が同様とならない。しかも、後部席の聴取者M2にとっては、図6又は図7のいずれの場合も、天井直付けスピーカHSPが、聴取者M2より前方にあるため、フロントスピーカFSPと天井直付けスピーカHSPとによる音像は、聴取者M2の前方に定位されることになり、比較的満足できるステレオ感を確保できる状態にある。
【0039】
一方、聴取者M1にとっては、図6又は図7のいずれでも、天井直付けスピーカHSPの取付け位置が、聴取者M1の後方となるため、フロントスピーカFSPと天井直付けスピーカHSPとによる音像は、聴取者M1の上方に定位されることになり、音の拡がり感が得られても、ステレオ感を満足する音場を確保できない状態にある。
【0040】
そこで、聴取者M1と聴取者M2の両者が、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果を得られるようにするには、フロントスピーカFSPがフロントドアの下部に取り付けられている場合には、天井直付けスピーカHSPは、フロントスピーカFSPの上方における天井部に取り付けられる必要がある。
【0041】
しかし、通常の乗用車の天井部は、少なくとも前部席及び後部席の上方を覆っているだけであり、天井直付けスピーカHSPを取り付けようとしたとき、サンルーフの設定等により、天井直付けスピーカHSPの取り付けられるべき天井部が元々無い。
【0042】
また、乗用車の構造によっては、この天井板が、前部席より前方に延びていることもあるが、ここで、天井直付けスピーカHSPが取り付けられたとしても、音像が後部席から遠くなり、後部席の聴取者にとって迫力感が欠けたものとなってしまう。これでは、後部席の聴取者には、天井直付けスピーカHSPが取り付けられている意味が薄れてくる。
【0043】
従って、天井直付けスピーカHSPが乗用車の天井部に取り付けられる範囲は制限されており、天井直付けスピーカHSPを該天井部に取り付けた場合には、図6及び図7に示されるように、フロントドアの下部に取り付けられたフロントスピーカFSPと天井直付けスピーカHSPとでは、聴取者M1と聴取者M2の両者に対して、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果を得ることは困難となる。
【0044】
そのため、本実施形態のスピーカ装置では、フロントドアの下部に取り付けられたフロントスピーカFSPと天井直付けスピーカHSPとによってステレオ再生を行うとき、ハース効果を利用して、前部席の聴取者M1と後部席の聴取者M2との音の到達時間を調整することによって、上述の様な状況下にあった場合でも、両者に対して、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果が得られるようにした。
【0045】
そこで、聴取者に対する音の到達時間を調整にすることによって、前部席と後部席とで、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果が得られる聴感補正の原理について、図1を参照して説明する。フロントスピーカFSPは、フロントドアの下部であり、聴取者M1に対して下方に配置されており、天井直付けスピーカHSPは、取付け位置として最適な場所である乗用車の天井中央部に取り付けられているものとする。
【0046】
ハース効果(先行音効果)は、複数の音源が存在したとき、各音源から同一の音が聴取者の耳に到達する場合、その耳に最初に到達した音の方向に音像が定位する現象であり、各音源からの到達音の時間差が、1〜30msであるときに生じるとされている。本実施形態では、スピーカ及び聴取者が、図1に示されるように配置された場合、このハース効果を利用して、天井直付けスピーカHSPの音出力を、フロントスピーカFSPからの音出力に対して所定時間だけ遅延させて、聴取者に対する音の到達時間を調整にすることとした。
【0047】
例えば、聴取者M1について見たとき、天井直付けスピーカHSPが、フロントスピーカFSPに対して、後方に位置しているため、音の拡がり感や、音像の上昇感は、得られるものの、聴取者M1にとっての前方定位感が損なわれることになるので、天井直付けスピーカHSPの音出力を、フロントスピーカFSPからの音出力に対して所定時間だけ遅延させる。そうすると、聴取者M1にとっては、天井直付けスピーカHSPの見掛けの位置が、フロントスピーカFSPの位置より遠くなったのと同じ効果がある。そのため、聴取者M1にとっては、フロントスピーカFSPからの音が天井直付けスピーカHSPからの音が先に到達して、前方定位感を確保することができる。
【0048】
また、前部席の聴取者M1と後部席の聴取者M2とにおいて、共に同じ効果が得られるようにするには、聴取者M1と聴取者M2とに対する音の到達条件が同じであることが必要となる。図1に示されるように、聴取者M1のフロントスピーカFSPと天井直付けスピーカHSPとの距離をA1、B1とし、聴取者M2のフロントスピーカFSPと天井直付けスピーカHSPとの距離をA2、B2とすると、聴取者M1と聴取者M2とに対する音の到達条件を同じにするということは、各スピーカの配置で実現しようとすれば、(A1−B1)=(A2−B2)の関係を満足させることを意味する。
【0049】
しかし、この関係を満足するスピーカの配置は、上述したように困難な場合が多い。そこで、前述の説明のように、スピーカからの音出力を他のスピーカからの音出力に対して遅延させることにより、見掛けの距離を変えたのと同等になることを利用し、聴取者M1と聴取者M2とにおける音の到達時間差が同様になるように、天井直付けスピーカHSPの音出力をフロントスピーカFSPの音出力に対する遅延時間を設定すれば良いことになる。
【0050】
この様に、音出力の遅延調整によって、聴取者M1と聴取者M2とにおいて共に同様の効果が得られるばかりでなく、図1に示されたスピーカの配置であるような場合でも、天井直付けスピーカの取付け位置を決めるとき、聴取者の聴感に関係なく、乗用車の天井部におけるスピーカ特性を考慮して最適場所を選択することができ、後部席の聴取者M2にとっても、天井直付けスピーカHSPが比較的近づいた位置になるので、音の迫力感を得ることができる。
【0051】
次に、図1に示されたスピーカ配置による本実施形態のスピーカ装置について、その概略ブロック構成を、図2に示した。同図で示したスピーカ装置の構成は、小型の乗用車の場合を例にしている。その小型の乗用車に組み込まれるスピーカ装置として、乗用車の左右のフロントドア下部に設けられた左右のフロントスピーカFSP−L、FSP−Rが、そして、その天井部に取り付けられ、リアスピーカとしての2つの天井直付けスピーカHSP−L、HSP−Rが接続されている。これらのスピーカを駆動するスピーカ装置として、音源部11、信号処理制御部12、出力部14、操作部16、そして、表示器16が備えられている。
【0052】
音源部11には、テープカセットプレーヤー、CD又はMD再生プレーヤー、DVD再生プレーヤーなどが含まれ、音源部11は、信号処理制御部12に選択された音源による音楽信号又は音声信号を供給する。
【0053】
操作部15は、音源部11における音源を選択し、音の再生条件を設定するものであり、さらには、各スピーカに係る出力状態などの車室内の音響環境を選択し或いは設定することができる。
【0054】
信号処理制御部12は、スピーカ装置全体を制御するものであり、音源部11から送信される音楽信号又は音声信号に対して、操作部15で入力された条件に従って復調などの処理を実行し、各スピーカから出力部14を介して音出力させ、表示器16に、例えば、音源の種類、各スピーカの出力状態、車室内の各座席に係る聴感状態などを、他の画像と共有して表示させる。
【0055】
さらに、信号処理制御部12は、その内部に遅延部13を備えており、選択された車室内の音響環境に従って、音源部11から供給される音楽信号又は音声信号に関して、天井直付けスピーカHSP−L及びHSP−Rへの音出力に所定の時間遅延を与える。この遅延時間量は、乗用車の車種毎の最適値が予め設定されていても良く、操作部15によって、ユーザが時間遅延のオン・オフを選択できるように構成することもできる。また、この遅延量は、音源の種類に応じて選択されても、或いは、ユーザの好みに応じて可変とすることもできる。
【0056】
なお、図2に示したスピーカ装置の構成例は、小型乗用車の場合であったが、セダン型乗用車又はワンボックスカーのように、車室が小型乗用車より広い場合には、リアスピーカとして、天井直付けスピーカに加えて、リアドアにもスピーカを配置することもできる。この場合でも、天井直付けスピーカの音出力に対して時間遅延を与えることによって、車室内の座席全体において、同様の効果が得られる。
【0057】
次に、図2に示された構成による本実施形態のスピーカ装置において、天井直付けスピーカHSP−L及びHSP−Rの音出力に対して時間遅延を付与する実施例について、図3を参照しながら説明する。なお、図3は、各スピーカと聴取者との位置関係が明瞭となるように、図示を簡単化し、模式的に表示しているので、実際の寸法と一致していない。
【0058】
図3では、聴取者M1は、当該小型乗用車の運転者であり、前部席の運転席に座っており、聴取者M2は、後部席の右側に、つまり、運転席の直ぐ後ろに座っているものとし、夫々の聴取位置を黒丸で示している。同図では、片側から見た状態を示しており、フロントスピーカFSRと天井直付けスピーカHSPは、右側のFSP−RとHSP−Rとが示されているが、実際には、左側のFSP−LとHSP−Lとを備えているが、片側から見たとき、それらが重なるため、図示を簡単化するため、左側のFSP−LとHSP−Lの表示を省略している。
【0059】
ここで、聴取者M1の聴取位置からフロントスピーカFSP−Rと天井直付けスピーカHSP−Rまでの距離を夫々A1、B11、そして、聴取者M2の聴取位置からフロントスピーカFSP−Rと天井直付けスピーカHSP−Rまでの距離を夫々A2、B21とすると、当該小型乗用車では、それらの実測距離は、次のようになっていた。
【0060】
ところで、前部席と後部席とで、同様の効果が得られる天井直付けスピーカの取付け位置は、前述したように、(A1−B1)=(A2−B2)の関係を満足させるものでなければならない。つまり、理想的な位置に取り付けられる天井直付けスピーカをVSP−Rとすれば、その位置は、図3において破線で示したようになる。この位置によれば、(A1−B10)=(A2−B20)の関係が満足される。
【0061】
しかし、実際には、この破線の位置に、天井直付けスピーカHSP−Rを取り付けることはできないので、乗用車の天井部において、理想的位置の天井直付けスピーカVSP−Rから距離Xだけずらした位置に天井直付けスピーカHSP−Rを取り付けることになる。当該小型乗用車の場合では、後部席における迫力間を確保するため、距離X=200(mm)として、その位置を取付け最適位置とした。このとき、距離Xの中間点付近に、聴取者M1の頭部があり、それらの実測距離は、次のようになっていた。
図3中において破線で示される理想的な位置によれば、
A1−B10=645(mm)
A2−B20=645(mm)
となるが、距離Xだけずれたことによって、実測距離によると、
A1−B11=625(mm)
A2−B21=870(mm)
となり、天井直付けスピーカHSP−Rの取付け位置では、前部席と後部席とで、同様の効果が得られないことが分かる。
【0062】
そこで、聴取者M1及びM2の各聴取位置における、フロントスピーカFSP−L及びFSP−R、天井直付けスピーカHSP−L及びHSP−Rから出力された音のインパルス立ち上り時間を計測すると、聴取者M1に関しては、次の様であり、
また、聴取者M2に関しては、次の様であった。
【0063】
これらの計測結果に基づいて、聴取者の聴取位置におけるフロントスピーカFSPと天井直付けスピーカHSPとの音の到達時間差を求めると、聴取者M1に関して、右チャネルと左チャネルとについて、
(右FSP)−(右HSP) (左FSP)−(左HSP)
時間差(ms) 1.81 1.56
となり、聴取者M2に関して、右チャネルと左チャネルとについて、
(右FSP)−(右HSP) (左FSP)−(左HSP)
時間差(ms) 2.87 2.71
となる。
【0064】
そこで、例えば、聴取者M1に関するフロンとスピーカFSP−Rと天井直付けスピーカHSP−Rとによる聴感を考えるならば、以上の時間差を参考にすると、天井直付けスピーカHSP−Rの音出力を、フロントスピーカFSP−Rの音出力に対して1.81msだけ時間遅延させることにより、聴取者M1の聴取位置において、フロンとスピーカFSP−Rと天井直付けスピーカHSP−Rとによる音の拡がり感と音像の上昇感を得ることができる。
【0065】
しかし、天井直付けスピーカHSP−RとHSP−Lの音出力の遅延時間を、1.81msに設定しても、前出の時間差結果から見ても分かるように、全席の聴取位置において、同様の拡がり感と音像の上昇感を得ることができない。そこで、全席の聴取位置において、共に同様の拡がり感と音像の上昇感とが得られるようにするには、上で求めた音の到達時間差、(右FSP)−(右HSP)=1.81、(左FSP)−(左HSP)=1.56、(右FSP)−(右HSP)=2.87、(左FSP)−(左HSP)=2.71の全てを含む時間を、天井直付けスピーカHSP−RとHSP−Lの音出力の遅延時間とすればよい。例えば、3msとすることができる。
【0066】
この様に、天井直付けスピーカHSP−RとHSP−Lの音出力の遅延時間を、信号処理制御部12に備えられた遅延部13の設定値を3msとすると、当該小型乗用車の車室内における全席の聴取位置について、同様の効果、つまり、音の拡がり感と音像の上昇感が得られることになる。ただ、この3msの遅延時間が設定された場合に、前部席に座っている聴取者にとっては、天井直付けスピーカHSP−L又はHSP−Rが後方に位置することになるため、前部席の聴取位置では、音の拡がり感と音像の上昇感とが得られるものの、音の前方定位感が欠けたものとなっている。
【0067】
そこで、天井直付けスピーカHSP−RとHSP−Lの音出力の遅延時間を、例えば、聴取者M1の聴取位置から最も遠い位置にあるフロントスピーカFSP−Lからの音の到達時間を参考にして、3msの倍の6msに設定すると、全席での音の拡がり感と音像の上昇感が得られると共に、前部席の聴取者にとっては、音の前方定位感も確保できるようになる。この場合、後部席の聴取者に対しては、天井直付けスピーカHSP−L及びHSP−Rが、近くに位置しているので、音の迫力感は確保されたままとなっている。
【0068】
なお、上記の実施例では、距離X=200(ms)の場合を示したが、必ずしも、この距離Xの大きさは、これに固定されるものではなく、適宜の天井部への取付け位置に応じて、複数の座席における聴取位置における各スピーカからのインパルス立ち上り時間を計測して求められた到達時間差に基づいて、天井直付けスピーカからの音出力を時間遅延させればよい。
【0069】
また、上記の実施例では、複数の座席の聴取位置に対応して求められた到達時間差の全てを含む長さの時間に基づいた時間遅延を、信号処理制御部の遅延部に所定の時間遅延として設定するとしたが、この複数の座席に対応して求められた複数の到達時間差を該制御部内に音到達時間差情報として保持させておき、必要に応じて到達時間差を選択し、所定の時間遅延として設定することもできる。
【0070】
上記の実施例では、乗用車などの車両に適用した場合で説明し、車室内において上下の関係で取り付けられることから、リアスピーカとして天井直付けスピーカが採用されたが、天井直付けスピーカに限らず、通常のフラットスピーカなどを使用することもできる。
【0071】
以上では、乗用車などの車両を中心にして本実施形態のスピーカ装置について説明したが、本実施形態のスピーカ装置は、車両の車室内に限られることなく、複数のスピーカが理想的な配置で取り付けられないような部屋などにも適用可能であり、選択されたスピーカからの音出力に時間遅延を付与し、聴取位置における到達時間を調整することにより、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音の前方定位感を確保することができる。付与する時間遅延量を変えることにより、前方定位の感じ方を調整できる。
【0072】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、上下方向に互いに離れた位置に取り付けられた複数のスピーカを有するスピーカ装置において、聴取者との距離が短い方のスピーカから出力される音について、所定の時間遅延を行うようにし、さらに、該スピーカが該聴取者に対して他のスピーカの反対側に位置している場合に、反対側に位置するスピーカからの音に対する時間遅延を、前記所定の時間遅延より所定時間だけ長くするようにしたので、聴取者に対して、音の拡がり感、音像の上昇感、音像の前方定位感が確保される。
【0073】
また、複数の聴取者が複数のスピーカからの音を聴取する場合に、前記所定の遅延時間が、前記聴取者の各々における各スピーカからの音の到達時間差のうちで、最も長い到達時間差に基づいて設定されるようにしたので、複数の聴取者のいずれにおいても同様に、音の拡がり感、音像の上昇感、音像の前方定位感が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車載用のスピーカ装置における聴感補正原理を説明する図である。
【図2】本発明の車載用のステレオスピーカ装置に係る概略ブロック構成を説明する図である。
【図3】本発明の車載用ステレオスピーカ装置において、前後席で同じ効果を得るために聴感補正を行う様子を説明する図である。
【図4】従来の車載用スピーカ装置が車両の天井内装板に取り付けられた状態を説明する図である。
【図5】従来の車載用スピーカ装置の縦断面を示す図である。
【図6】天井直付けスピーカを前部席側に配置した状態を説明する図である。
【図7】天井直付けスピーカを後部席側に配置した状態を説明する図である。
【符号の説明】
1…車両
2…外板
3…前部席
4…後部席
5…天井板
6…フロントスピーカ
7…リアスピーカ
8、8L、8R…振動装置
11…音源部
12…信号処理制御部
13…遅延部
14…出力部
15…操作部
16…表示器
81…ボビン
82…ボイスコイル
83…ダンパ
84…プレート
85…環状磁石
86…ポールピース
FSP…フロントスピーカ
HSP…天井直付けスピーカ
M1…前部席聴取者
M2…後部席聴取者
Claims (6)
- 車室内の第1聴取者に対して互いに前後に位置し、該車室の下部と天井部に互いに離れた位置に夫々取り付けられるステレオ構成された前記車室に係る左右のフロントドアの各々の下部に取り付けられた左右の第1スピーカ及び、前記天井部に直付けされた左右の第2スピーカと、該第1スピーカから左右の第1音を出力させ、該第2スピーカから左右の第2音を出力させる駆動制御部とを有するスピーカ装置において、
前記駆動制御部は、前記第1聴取者の後方で第2聴取者が前記左右の第1音及び前記左右の第2音を聴取する場合に、前記左右の第2スピーカから出力される前記左右の第2音について、前記第1聴取者及び前記第2聴取者の各々における前記左の第1音と前記左の第2音の到達時間差及び前記右の第1音と前記右の第2音の到達時間差のいずれよりも大きく、前記第1聴取者及び前記第2聴取者が、ハース効果によって、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果が得られる範囲内の時間遅延を設定することを特徴とするスピーカ装置。 - 前記駆動制御部は、複数の聴取者が前記左右の第1音及び前記左右の第2音を聴取する場合に、前記時間遅延について、前記複数の聴取者の各々における前記左の第1音と前記左の第2音の到達時間差及び前記右の第1音と前記右の第2音の到達時間差のいずれよりも大きく、前記複数の聴取者が、ハース効果によって、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果が得られる範囲内の時間遅延を設定することを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
- 前記左右の第2スピーカを構成する前記スピーカの各々は、ステレオ信号が供給される振動装置を有し、
前記振動装置の各々が、前記天井部の天井板における平坦部に互いに所定間隔を置いて直接取り付けられ、該天井板の一部をスピーカの振動板とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ装置。 - 前記駆動制御部は、前記車室内の複数の座席に対応した前記左右の第1音及び前記左右の第2音に係る到達時間差情報を保持しており、選択された該音到達時間差に基づいて、前記時間遅延が設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスピーカ装置。
- 前記駆動制御部は、前記車室内の複数の座席に対応した前記左の第1音と前記左の第2音に係る到達時間差及び前記右の第1音と前記右の第2音に係る到達時間差に基づいて前記時間遅延を設定し、前記左右の第2スピーカから該時間遅延が行われた前記左右の第2音を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスピーカ装置。
- 車室内の第1聴取者に対して前方に位置し、車室の下部の左右に位置する左右の第1スピーカを駆動する左右の第1音信号と、該車室内の第1聴取者に対して後方に位置し、該左右の第1スピーカと互いに上下に離れた該車室の天井部に位置する左右の第2スピーカを駆動する左右の第2音信号とを出力する出力部と、
前記左右の第1音信号及び前記左右の第2音信号を出力制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記第1聴取者と少なくとも一人が前記第1聴取者の後方に位置する複数の第2聴取者とが前記左右の第1音及び前記左右の第2音を聴取する場合に、前記左右の第2スピーカから出力される前記左右の第2音について、前記第1聴取者及び前記複数の第2聴取者の各々における前記左の第1音と前記左の第2音の到達時間差及び前記右の第1音と前記右の第2音の到達時間差のいずれよりも大きく、前記第1聴取者及び前記複数の第2聴取者が、ハース効果によって、音の拡がり感、音像の上昇感、そして、音像の前方定位の全てについて、共に同様の効果が得られる範囲内の時間遅延を設定することを特徴とするオーディオ装置。
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