JP4627826B2 - 多孔性ムライト物品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多孔性でムライトベースのセラミック製品およびその製造方法に関するものである。そのムライトベースのセラミック製品は、多孔性濾過装置および/または支持体として使用するのに特に有用である。このムライトベースのセラミック製品は、さらに、化学処理工業に用いられる多孔性濾過装置および/または支持体として使用するのに特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
膜分離の分野において、多孔性支持体上に配置された多孔性薄膜が、液状媒体の精密濾過と限外濾過およびガス分離に広く用いられている。そのマクロ多孔性支持体は、多孔性薄膜に機械的強度を与えるように機能する。多孔性支持体材料の例としては、アルミナ、コージエライト、ムライト、シリカ、尖晶石、ジルコニア、他の耐火性酸化物並びに様々な酸化物の混合物、炭素、焼結金属および炭化ケイ素が挙げられる。
【0003】
重要な検討事項および制限がいくつかあるが、その内の一つは、多孔性支持体のための適切な材料を選択することである。多孔性支持体は、好ましくは、以下の特性を示すべきである:(1)Hg貫入に(intrusion)より測定される、30%より大きい全多孔率;(2)高浸透性;および(3)良好な連結性(connectivity)、ミクロンより大きい平均孔径および狭いサイズ分布を示す細孔。これらの特性が組み合わさった効果は、その多孔性支持体が、ほとんどの精密濾過および限外濾過の用途に適するような良好な濾過効率および浸透性の両方を示すことである。最後に、ほとんどの用途に関して、多孔性支持体は、十分に高い機械的強度(MOR)および程良く高い耐薬品性を示すべきである。しかしながら、化学処理用途に関しては、多孔性支持体は、非常に高い耐薬品性を示すべきである。ムライトをこれらの濾過および化学処理用途にとって好ましいセラミックにするのは、この最後の特性、すなわち、耐薬品性である。
【0004】
当業者には、焼結ムライト構造体を製造する従来の方法の一つが、ムライトの構成成分であるアルミナ(Al23)およびシリカ(SiO2)の混合粉末を約1600℃で焼成すること、すなわち、ムライト物品の反応焼結形成を含むことが知られている。このようにして製造されたムライト構造体は十分な耐薬品性および機械的強度を示すけれども、この従来の様式で形成されたムライト構造体は、密であり、ミクロン以下の平均孔径の細孔を有する。
【0005】
増大した細孔容積および30から20,000オングストロームまでの範囲に亘る孔径を示すムライト構造体を形成することのできる、反応焼結ムライト処理のある革新的な方法に、浸出工程を使用するものがある;米国特許第4,601,997号(スペロネロ)および同第4,628,042号(スペロネロ)。最初の文献において、その方法は、多量のムライトの形成を開始せずに、カオリン粘土をその発熱によりか焼する工程を含んでいる。その後、得られたか焼粘土を、シリカを除去するようにアルカリ性水溶液を用いて浸出する。最後に、浸出したカオリン粘土を洗浄し、乾燥させ、ムライトを形成するのに十分な時間と温度でか焼する。二番目のスペロネロの文献には、ムライトおよび遊離シリカに熱的に転化可能な含水粘土、または含水粘土およびか焼粘土を、揮発性結合剤と混合し、その後、その混合物を自立性の未焼結(green)物品に形成する工程が記載されている。次いで、その未焼結物品は、ムライト結晶および遊離シリカを形成するのに十分な時間と温度でか焼し、その後、か焼された物品を、アルカリ溶液で浸出して、その遊離シリカを除去して、細孔を形成する。前の文献におけるように、製造されたムライト製品は、例えば、約15m2/gより大きい、比較的大きい表面積;例えば、約0.22cc/gより大きい、高細孔容積;150から350オングストロームの直径範囲にある高濃度の細孔により特徴付けられた。
【0006】
これらのスペロネロの文献は、そのような浸出技術を用いることにより、従来技術の多孔性で高強度のムライト物品を形成する能力において著しい進歩を与えたけれども、処理工程において浸出の複雑さが加わったことは望ましくない。さらに、これらの技術により製造されたムライト物品が示す、30から20,000オングストロームの孔径は、大部分が100から600オングストロームの範囲にあり、上述した濾過用途にとって望ましいサイズよりも小さい。
【0007】
予め反応させたムライト粉末を使用することを含む、ムライト形成方法は、上述した反応焼結方法を改良したものである。予め反応させたムライト粉末の使用を開示している文献としては、米国特許第4,935,390号(ホリウチ等)およびドイツ国特許第4226276号(レフコフ)が挙げられる。
【0008】
ホリウチ等の文献には、改良された曲げ強さを有する焼結されたムライトベースの物品を形成する方法であって、80から99.1重量%のムライト粉末および0.1から20重量%の焼結助剤のイットリウム酸化物の組成物を熱処理する工程を含む方法が開示されている。これらの物品は改良された曲げ強さを示すけれども、この焼結助剤を使用すると、上述した濾過用途にとって適するには密過ぎる(嵩密度が約3.0g/cm3)ムライト物品が形成されてしまう。
【0009】
レフコフの文献には、出発混合物が、0.63から0.1mmまでの間の粒子を有する、90-93重量%のムライト、最大で0.2mmまでの粒径を有する、4-8重量%のコルク片または12-16重量%のゴム片いずれかの細孔形成材料、並びに5-7重量%の粘土および1-3重量%のAl23を含む結合剤からなる点で特徴付けられるセラミック焼結フィルタ物品を製造する方法が開示されている。この方法によりそのように形成されたフィルタ物品は、主にムライト結晶からなり、50-70容積%の多孔率を示し、孔径が30マイクロメートル未満から200マイクロメートルまでの範囲に亘り、平均細孔の大部分は40-100マイクロメートルのサイズの範囲にある。その多孔率および孔径は、反応焼結ムライト物品が有するものよりはずっと大きいけれども、この多孔率、孔径および細孔分布が組み合わさると、精密濾過および限外濾過の用途、特に、加圧液体を含む用途に使用するための多孔性支持体に使用するには適していない、機械的強度および濾過効率の低い物品が形成されてしまう。
【0010】
これらの方法の両方により、反応焼結ムライト物品と比較したときに、孔径がより大きく、濾過性能が改良されたムライト物品が製造されるけれども、それらの化学的耐久性は、多孔性支持体が、化学処理工業に見られる環境と類似した高塩基性または高酸性の環境に露出されるそれらの用途に使用するのに適しているほどのものではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、増大した平均孔径、狭い孔径分布、および高浸透性を有する多孔性ムライト構造体、すなわち、液状媒体の精密濾過と限外濾過およびガス分離に使用するのに適した高濾過効率および高浸透性の両方を有するムライト物品を製造する手段が明らかに必要とされている。さらに、化学的耐久性が向上し、化学処理工業における多孔性支持体に適した十分な濾過効率および浸透性の両方を有する多孔性ムライト構造体を製造する手段が明らかに必要とされている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、従来技術の上述した問題を解決すること、並びに、主相としてムライトを有し、特有なその優れた特性、例えば、機械的強度、高浸透性および全浸透多孔率を損なわずに、良好な細孔連結性、増大した平均浸透孔径および貫通孔径の狭い分布を有する焼結セラミック基体を製造する方法を提供することにある。この貫通孔径の狭い分布、増大した平均浸透孔径および良好な細孔連結性の組み合わさった効果は、高浸透性および予期しなかったけれどもそれに対応して高濾過効率を有するムライト物品が得られることである。
【0013】
本発明の第二の目的は、主相としてムライトを有し、改良された耐薬品性並びに十分な濾過効率および浸透性を有する焼結セラミック基体を製造する方法を提供することにある。
【0014】
意外なことに、ムライト構造体の調製に予め反応させたムライト粉末の使用と組み合わせて水膨潤粘土を用いた場合、得られたセラミック物品は、上述した特性を有することが分かった。特に、本発明は、75から99重量%の予め反応させたムライト粉末、および1.0から25重量%の水膨潤粘土を含む、主相としてムライトを有する焼結基体の調製に使用する組成物に向けられている。
【0015】
本発明の第二の実施の形態は、75から99重量%の予め反応させたムライト粉末、および1.0から25重量%の水膨潤粘土並びにそれらの合計に対して6から25重量%のアルミナおよび/またはアルミナ生成前駆体を含む、主相としてムライトを有する焼結基体の調製に使用する組成物を包含する。
【0016】
本発明はまた、主相としてムライトを有する焼結セラミック基体を製造する方法であって、上述した可塑化可能な原料混合物を調製し、この混合物に有機結合剤系を加え、この混合物を混合して、押出可能な混合物を形成し、その混合物を押し出して、所望の形状の基体を形成する各工程を含む方法に関するものである。その未焼結物品を乾燥させ、約2-15μmの間の平均浸透孔径、およびHg貫入により測定した少なくとも30%の全浸透多孔率を示す細孔を含む、貫通孔径の狭い分布を有する焼結ムライト構造体を形成するのに十分な時間と温度で焼成する。
【0017】
この方法にある量のアルミナまたはアルミナ生成前駆体を含めることにより、約20%未満の酸/塩基露出強度損失を示す焼結ムライト構造体が形成される。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態は、主相としてムライトを有するセラミック基体を調製するのに、本発明により調製され、原料として、予め反応させたムライト粉末および所定の量の水膨潤粘土を含む可塑化可能な混合物を使用することを含む。この混合物を含むこれらの材料の相対的な量は、所望の焼成組成に依存するが、一般的に、分析酸化物基準の重量%で、その混合物が、約29-60%のSiO2、約30-70%のAl23、および約1-10%のMgOを含むように用いられる。
【0019】
第二の形態は、同一の相対的量の原料を用いながら、ある量のアルミナおよび/またはそのAl23の供給源としてのアルミナ生成前駆体を含有して、それによって、同一の分析酸化物基準の組成物を形成する。
【0020】
出発原料として使用するムライト粉末の受け入れられる供給源は、アルミナおよび酸化ケイ素を混合し、その混合物をか焼してムライトを形成し、そのムライトを微粉砕することにより得られる粉末であってもよい。受け入れられるムライト粉末の例には、C−Eミネラルス(ペンシルバニア州、キングオブプルシア)により製造され、ムルコア(登録商標)として市販されているものがある。一般的に、ムライト粉末の平均粒径が微細になるほど、そのように形成されたムライト基体は、増大した粗い浸透孔径および高い全浸透多孔率をまだ示しながら、より強く、より化学的に耐久性であるようになる。好ましくは、ムライト粉末は、約150μm未満、より好ましくは、約50μm未満の平均粒径を示す。
【0021】
本発明に使用するために受け入れられる水膨潤粘土は、ベントナイト型のモンモリロナイト粘土、例えば、サザンクレイプロダクツ社(テキサス州、ゴンザレス)より製造販売されているベントライトである。
【0022】
前記アルミナおよび/またはアルミナ生成前駆体に関して、ベーマイトまたは水和アルミナのようなアルミナ生成前駆体が本発明への使用に受け入れられるが、微細なアルミナ、好ましくはα−アルミナが、その大きな反応性のために好ましい。本発明に使用できるある特定のアルミナとしては、ペンシルバニア州、ピッツバーグのアルコアインダストリアルケミカルスより販売されているA−16SGが挙げられる。
【0023】
前記可塑化混合物が構成される上述した原料は、アルミナまたはアルミナ生成前駆体の有無に拘わらず、混合工程において原料相の完全な混合を生じるのに十分に混合されて、熱処理において完全に反応を行うことができる。この時点で結合剤系を加えて、形成可能で成形可能である押出用混合物を形成するのを補助する。本発明に使用する好ましい結合剤系は、メチルセルロース、メチルセルロース誘導体、およびそれらの組合せからなる群より選択されるセルロースエーテル結合剤成分、界面活性剤成分、好ましくは、ステアリン酸またはステアリン酸ナトリウム、並びに水を含む溶媒を含む。無機成分、粘土およびムライト粉末の原料混合物を100重量部と仮定して、約0.2-2重量部のステアリン酸ナトリウム、約2.5-6.0重量部のヒドロキシプロピルメチルセルロース結合剤のメチルセルロース、および約8-30重量部の水を含む結合剤系を用いて、優れた結果が得られた。
【0024】
この結合剤系の個々の成分を、適切な既知の様式で、多量の無機粉末材料、例えば、ムライト粉末および水膨潤粘土の混合物と混合して、例えば、押出しによりセラミック物品に形成できるセラミック材料および結合剤系の完全な混合物を調製する。例えば、その結合剤系の全ての成分は、互いに予め混合されていてもよく、その混合物は、セラミック粉末材料に加えられる。この場合、その結合剤系の全部を一度に加えても、またはこの結合剤系の分割された部分を次々と適切な間隔で加えてもよい。あるいは、結合剤系の成分をセラミック材料に次々と加えるか、または結合剤系の二つ以上の成分の各々以前に調製された混合物をセラミック粉末材料に加えてもよい。さらに、その結合剤系は、最初に、セラミック粉末材料の一部と混合してもよい。この場合、セラミック粉末の残りの部分は、その調製された混合物に続いて加えられる。いずれにせよ、結合剤系は、所定の部分においてセラミック粉末材料と均一に混合されなければならない。結合剤系およびセラミック粉末材料の均一な混合は、既知の混練方法で行ってもよい。
【0025】
次いで、得られた硬く均一で押出可能なバッチ混合物を、例えば、押出し、射出成形、スリップ注型、遠心注型、圧力注型、乾式プレス成形等のような既知の従来のセラミック形成工程により未焼結物品に形成する。液状媒体の精密濾過と限外濾過およびガス分離に使用するための多孔性支持体として使用するのに適したハニカム基体、または化学処理用途に使用するための多孔性支持体として使用するのに適したハニカム基体の調製に関して、ダイを通しての押出しが好ましい。
【0026】
次いで、調製したセラミック未焼結物品を、熱風乾燥または誘電乾燥のような従来の方法により、焼成前に約5-20分間の期間に亘り乾燥させる。誘電乾燥が好ましい方法である。その後、乾燥させた未焼結物品を、主相としてムライトを含有する焼成セラミック物品を得るのに十分な時間と温度で焼成する。焼成条件は、特定の組成および設備の性質のような工程条件に依存して変わっても差し支えない。しかしながら、いくつかの好ましい焼成条件は以下のようなものである:前記未焼結物品を1時間当たり約5℃から約25℃まで、好ましくは1時間当たり約18℃の焼成速度で約600℃から約650℃までの第一の温度に加熱し、その後、第一の温度から、1時間当たり約10℃から約50℃、好ましくは、1時間当たり約25℃の焼成温度で約1400℃から約1550℃の間の第二の温度に加熱し、約6時間から約16時間、好ましくは約10時間に亘り第二の温度に保持し、その後、未焼結物品を1時間当たり約100℃から約200℃の冷却速度で室温まで冷却する。
【0027】
前述したように、バッチ混合物の主な原料成分として水膨潤粘土および予め反応させたムライト粉末の組合せを用いることにより、ここに記載した混合物が、大きな細孔を有する、高強度で、高耐久性で、高浸透性で、多孔質ムライト基体を調製するのに最も適していることが分かった。本発明のこの実施の形態は、液状媒体の精密濾過と限外濾過およびガス分離に使用するための多孔性支持体として使用するのに適している多孔性基体を調製するのに特に有利であるけれども、請求項の混合物は、例えば、ディーゼル粒子フィルタ、溶融金属フィルタおよび触媒支持体を含む他の用途に使用するムライト構造体を形成するのに用いても差し支えない。
【0028】
バッチ混合物の主な原料成分としての前述した水膨潤粘土および予め反応させたムライト粉末と組み合わせてアルミナまたはアルミナ生成前駆体を含有すると、向上した化学的耐久性および十分な浸透性および濾過効率を示す多孔性ムライト基体の調製に使用するのに最も適した混合物が得られる。この実施の形態は、強塩基性および/または強酸性の環境への露出を含む化学処理用途に用いられる多孔性支持体として使用するのに適した多孔性基体の調製に特に有利であるけれども、請求項の混合物は、他の用途に使用するムライト構造体を形成するのに使用しても差し支えない。それら他の用途の例としては、例えば、液状媒体の精密濾過と限外濾過およびガス分離のための多孔性支持体、並びにディーゼル粒子フィルタ、溶融金属フィルタおよび触媒支持体のような上述した用途が挙げられる。
【0029】
本発明の第一の実施の形態により形成された焼結ムライト物品は、高い化学的耐久性および浸透性並びにHg貫入により測定された約30%の全多孔率を含む、ムライトに特有のある特性により特徴付けられる。本発明により作成されたムライト物品は、さらに、Hg貫入(すなわち、貫入細孔)により測定された、約2-15μmの間の平均孔径、並びに毛管流分析(すなわち、貫通細孔分布)により測定された、実質的に全ての貫通細孔が0.5-7.5μmの間のサイズを示す狭い細孔分布により特徴付けられる。同様の物品には通常見られないフィルタ特性である、高濾過効率および浸透性の両方を示す物品を製造するのに集合的に寄与するのは、粗い浸透細孔および狭い貫通孔径分布の組合せである。
【0030】
これらの本発明のムライト物品の濾過効率に関して、濾過効率は、微細なアリゾナロードダストを用いて、米国衛生基金NSF53-1996プロトコルにしたがって測定される。好ましくは、ここに記載したムライト物品は、25%の流動減少点で99.95%よりも大きい濾過効率を示す。
【0031】
ここで、それぞれ、多孔率/孔径および細孔分布、Hg貫入並びに毛管流分析を特徴付ける技術を参照すると、これらの技術は、多孔率分析に関して相補的である。これら二つの多孔率技術を組み合わせると、セラミック物品の多孔率をより完全に分析することができる。
【0032】
一方で、毛管流分析技術は、毛管力が孔径に反比例するという原理に基づき、多孔性材料を濡らす液体を使用し、加圧ガスを用いることによりその液体を前記材料中に浸透させて通過させる工程を含む。流動が始まる最低の圧力は、最大貫通細孔の関数である。前記物品を通過するガスの流量をモニタし、圧力対流量のプロットに基づいて、貫通多孔率をサイズおよび量に関して特徴付けることができる。他方で、水銀貫入技術は、水銀をそれが濡らさない多孔性物品中に貫入させ、容積および圧力のプロットから、孔径分布を推定する工程を含む。孔径分布の推定に加えて、水銀貫入技術の別の欠点は、小さな細孔のみを通って到達できる粗い細孔は、より小さな多孔率を有するものと推定されることである。小さな首部または貫通細孔により接続される大きな外部細孔を有する平らなシートを想定すると、これらの技術を組み合わせることにより、多孔率をより完全に分析できることが分かる。特に、水銀貫入により、平らな物品がこれらの粗い細孔を有する多孔性のものであることが分かり、一方で、毛管流分析は、貫通細孔の点から同一の平らな物品の多孔率を報告している。
【0033】
本発明の第二の実施の形態により形成された本発明のムライト物品は、約20%未満の酸/塩基露出による強度損失により示されているように、化学的耐久性が向上している。この酸/塩基露出による強度損失は、ハニカム基体の初期細孔圧縮強さを、二日間の酸/塩基耐久性スクリーニング試験を施した後の同一のハニカム基体の強さを比較する尺度である。言い換えれば、この初期細孔圧縮強さを露出したまたは結果としての細孔圧縮強さと比較して、強度損失の百分率を得る。特に、その二日間の酸/塩基試験は、ハニカム基体に以下のような二種類の露出サイクルを施す工程を含む:(1)95℃の温度で、pH1の0.1MのHCl中への24時間の露出;および(2)95℃の温度で、pH14の1.2MのNaOH中への24時間の露出。
【0034】
第一または第二の実施の形態のいずれにおいても、可塑化可能な混合物は、さらに、限定するものではないが、黒鉛、チェリーピットフラワー(cherry pit flower)、木片、おがくずおよびデンプンを含む、細孔形成材として使用するのに適した材料を含んでも差し支えない。これらの細孔形成材を加えることの効果は、形成された細孔の平均孔径が、細孔形成材を加えていない焼結ムライト物品のものよりも大きい、すなわち、平均浸透孔径が典型的に約10-15μmの間にあることである。
【0035】
理論により制限することを意図するものではないが、第一の実施の形態の水膨潤粘土が構造体を膨脹させ、平均孔径を増大させる機構は、負に荷電した粘土層を互いに保持する陽イオンによるものであると考えられている。アルカリおよびアルカリ土類陽イオンは、モンモリロナイトの層内に吸着されて、それらの層の間に橋を形成する。これら層の間の距離は、固体が占める有効容積を増大させる、存在する水の量および吸着された陽イオンのサイズと共に増加する。ナトリウムイオンの場合には、内面のζ電位は高く、静電析力は重要で長い範囲である。結局は、引力と析力との間で釣合いがとれる。未焼結基体を膨脹させ、それによって、その後に焼成された構造体中に大きな細孔を残すのは、この膨潤現象である。
【0036】
理論により制限することを意図するものではないが、第二の実施の形態における原料組成物中にアルミナを含めることは、出発原料中にアルミナおよび/またはアルミナ生成前駆体を含めずに形成したムライト物品と比較した場合、より少ない遊離粒界シリカ(すなわち、化学的攻撃を受けるより少ない遊離シリカ)、より小さいがまだ粗い孔径およびより細かいムライト結晶凝集物を含むムライト物品の形成に寄与する。これらの変化は、アルミナが、攻撃を受ける遊離シリカとムライト凝集物内とその周りで反応して、ムライト凝集物がわずかに小さくなり、ムライト物品が示した平均孔径が減少したことの結果であることが立証されている。より詳しくは、本発明のムライト物品は、従来技術のムライト物品よりも大幅に減少した量の遊離シリカを有するムライト凝集物の間の橋または連結を示し、このことは、酸/塩基露出の強度損失に対する抵抗が対応して増大することにより証拠付けられた化学的耐久性を改良する。さらに、これらの本発明と従来技術のムライト物品の破壊は、応力濃度が最大である粒子の間の橋で最も生じやすいと考えられる。これらの区域における攻撃に関して前記攻撃を受ける遊離シリカが減少したことにより、それ自体で、耐薬品性が生じ、それによって、酸/塩基環境における強度の低減する速度をずっと遅くすることができる。より細かい多孔度は一般的に、化学的攻撃を受ける表面積が広く、それに対応して、化学的耐久性が減少することを示すけれども、遊離シリカを減少させることが、その微細な多孔度が耐薬品性を減少させることよりも、耐薬品性を増大させる上でずっと大きい効果を有することが理論付けられている。
【0037】
【実施例】
本発明の発明の原理をさらに説明するために、本発明により形成したムライト物品のいくつかの例を説明する。しかしながら、それらの例は、説明目的のみのために与えられたものであり、本発明はそこには制限されず、様々な改良および変更を、本発明の精神から逸脱せずに行ってもよいことが理解されよう。
【0038】
例1−15
主結晶相としてムライトを有するセラミック物品の形成に適した無機粉末バッチ混合物が重量パーセントで表Iに列記されている。組成1−15の各々は、表Iに列記したような指定無機混合物の成分を組み合わせ、乾式混合することにより調製した。次いで、表Iに列記した所定の量の有機結合剤系を無機乾燥混合物の各々に加え、その後、さらに混合して、可塑化セラミックバッチ混合物を形成した。これら15の異なる可塑化セラミックバッチ混合物の各々は、全無機材料100部に基づいて、24.75部から35部までに亘る、表Iに詳述した異なる量の結合剤系成分を含むものであった。
【0039】
様々な可塑化混合物の各々を、1から11/4インチ(2.54から3.175cm)の直径、24ミルのセル壁厚および約1から2インチ(2.54から5.08cm)の長さを示す100セル/インチ(39.4セル/cm)のセラミックハニカム基体ロッグを形成するのに適した条件下で、押出機を通して押し出した。前記15のバッチ組成物の各々から形成したセラミックハニカム未焼結ロッグを、約10分間に亘り乾燥させ、3インチ(7.62cm)の基体に切断し、その後、それらハニカム基体から有機結合剤系を除去し、これらの基体を焼結するのに十分な加熱および焼成サイクルに施した。特に、これら未焼結基体を1400から1550℃の間で焼成し、約10分間に亘り保持した。すなわち、これは、主相としてムライトを有するセラミック物品を形成するのに適した焼成条件である。
【0040】
これらムライトハニカム基体の嵩密度、平均浸透孔径と貫通細孔分布、全浸透多孔率および機械的強度を測定した。この嵩密度は、ASTMの「沸騰水」試験を用いて測定し、g/ccで報告されている。浸透多孔率データは、マイクロメリティクス社により製造された水銀ポロシメータ、特に、オートポアII9220V3.04を使用し、従来の水銀貫入ポリシメトリー技術を用いて得た。貫通細孔分布データは、上述した毛管流分析を用いて得た。濾過効率データは、上述した米国衛生基金試験を用いて得た。浸透性データは、浸透性を試験する従来の方法を用いた16ミルのデータであり、水カラム1インチ当たり、平方インチ当たり、1分当たりのmlで報告されている。機械的強度、破壊係数(MOR)または曲げ強さは、ハニカム基体と同じ様式で製造された5/16インチ(0.79cm)の棒について測定し、psi単位で報告されている。
【0041】
【表1】
Figure 0004627826
【0042】
【表2】
Figure 0004627826
【0043】
これらの例が示すように、使用した二つのベントナイト型粘土のような水膨潤粘土を約20%までの量で、予め反応させたムライトの使用とともに、バッチ混合物中に含ませることにより、従来技術の反応焼結ムライト物品(例1)と比較した場合、3-10μmの間の増大した平均浸透孔径、ほぼ40%の全多孔率を示す、焼結されたムライトベースのセラミック基体が得られる。さらに、本発明において予測可能に得られる代表的な特性を示す本発明のムライト物品である、例8および14の各々は、それぞれ、0.7-3.5μmおよび0.6-5.5μmの各々が有する狭い貫通孔径分布の結果として、高い濾過効率(>99.95%)およびそれに対応して高い16ミルの浸透率(>0.75)を示した。比較目的のために、標準的なコージエライト物品である例15を、貫通細孔分布、濾過効率および浸透率について測定した。この比較試料の16ミルの浸透率は、本発明のムライト試料のものよりも高かった(1.1)けれども、その比較試料は、一部には、それが示した0.8-12.2の広い貫通細孔分布のために、99.95%未満の濾過効率を示した。
【0044】
これらの本発明のムライト物品の増大した平均浸透孔径および貫通孔径分布の狭さ並びに得られた濾過効率は、その特有の優れた特性、例えば、十分な機械的強度(MOR)、浸透性および全浸透多孔率を損なうことなく、これら本発明のムライト基体を、液状媒体の精密濾過と限外濾過およびガス分離におけるフィルタおよび/またはフィルタ支持体として使用するのに適したものにする。
【0045】
例16−20
主結晶相としてムライトを有するセラミック物品の形成に適した無機粉末バッチ混合物が重量パーセントで表IIに列記されている。組成17−19が比較ムライト組成物である、ムライト組成16−19の各々は、表IIに列記したような指定無機混合物の成分を組み合わせ、乾式混合することにより調製した。次いで、表IIに列記した所定の量の有機結合剤系を無機乾燥混合物の各々に加え、その後、さらに混合して、可塑化セラミックバッチ混合物を形成した。これら4つの異なる可塑化セラミックバッチ混合物の各々は、全無機材料100部に基づいて、25.75部から28.25部までに亘る、表IIに詳述した異なる量の結合剤系成分を含むものであった。
【0046】
様々な可塑化混合物の各々を、1から11/4インチ(2.54から3.175cm)の直径、24ミルのセル壁厚および約1から2インチ(2.54から5.08cm)の長さを示す100セル/インチ(39.4セル/cm)のセラミックハニカム基体ロッグを形成するのに適した条件下で、押出機を通して押し出した。前記4つのバッチ組成物の各々から形成したセラミックハニカム未焼結ロッグを、約10分間に亘り乾燥させ、3インチ(7.62cm)の基体に切断し、その後、それらハニカム基体から有機結合剤系を除去し、これらの基体を焼結するのに十分な加熱および焼成サイクルに施した。特に、これら未焼結基体を1400から1550℃の間で焼成し、約10分間に亘り保持した。すなわち、これは、主相としてムライトを有するセラミック物品を形成するのに適した焼成条件である。
【0047】
比較コージエライト組成である組成20は、概して、コージエライト組成物の焼成を含む、4つのムライト組成物と同じ様式で調製した。
【0048】
本発明のムライトおよび比較のムライトとコージエライトのハニカム基体の濾過効率、浸透性、機械的強度および平均浸透孔径を測定した。浸透多孔率データは、マイクロメリティクス社により製造された水銀ポロシメータ、特に、オートポアII9220V3.04を使用し、従来の水銀貫入ポリシメトリー技術を用いて得た。濾過効率データは、上述した米国衛生基金試験を用いて得た。浸透性データは、浸透性を試験する従来の方法を用いた16ミルのデータであり、水カラム1インチ当たり、平方インチ当たり、1分当たりのmlで報告されている。機械的強度、破壊係数(MOR)または曲げ強さは、ハニカム基体と同じ様式で製造された5/16インチ(0.79cm)の棒について測定し、psi単位で報告されている。
【0049】
本発明および比較組成のハニカム基体の化学的耐久性を上述した様式で測定した。手短に言うと、ハニカム基体の各々の初期細孔破壊強度を測定し、次いで、その基体を二日間の酸/塩基耐久性スクリーニング試験に施し、その後、結果としてのまたは露出された細孔破壊強度をした。その後、初期の細孔破壊強度を露出された細孔破壊強度と比較して、酸/塩基露出強度損失を得た。これらの値は、表IIに、細孔破壊強度の初期と露出、並びに強度損失として記録されている。
【0050】
【表3】
Figure 0004627826
【0051】
それぞれ500倍で撮影された例16および17のSEMである図1および2を比較すると、ここに詳述した本発明により形成した、図1に示されている基体/組成物は、図2の比較組成と比較した場合、わずかに小さいが、まだ粗い細孔(黒い区域)およびより微細なムライト結晶凝集物(灰色の区域)の両方を有するのが分かる。それぞれ2500倍で撮影され例16および17のSEMである図3および4は、図3に示した本発明の組成物が、図4の基体/組成物と比較した場合、より少ない粒界シリカ(灰色のムライト凝集物の内部にあるやや暗い区域)を含有することが分かる。図1および2の比較により示される、ムライト物品の耐薬品性を減少させることが予測されるムライト凝集物サイズと平均孔径の減少にも拘わらず、本発明のムライト物品は、表IIに報告したように増大した耐薬品性を有する。特に、例16により示された7.6%の酸/塩基露出強度損失は、比較例17により示された36.6%のものよりも実質的に小さい。すなわち、例16は、実質的に大きい耐薬品性を示した。例16の酸/塩基露出強度損失が、同様に、表IIに詳述した他の例よりもずっと小さいこと;7.6%に対して、29.6%から79.4%(例20は、標準的なコージエライト物品である)までに亘る値に留意すべきである。上述したように、図3および4の比較により分かるように、粒界シリカの量の減少は、減少した酸/塩基露出強度損失により立証されるように、増大した耐薬品性の原因となる現象であると考えられる。
【0052】
これらの例が示すように、ミクロン以下のアルミナを約25%までの量で、予め反応させたムライトおよび水膨潤粘土の使用とともにバッチ混合物中に含めることにより、化学的耐久性の増大した焼結ムライトベースセラミック基体が得られる。これらのムライト物品の増大した化学的耐久性は、その特有の優れた特性、例えば、浸透性および濾過効率を損なうことなく、これら本発明のムライト基体を、化学処理工業に見られるような強塩基性または強酸性環境におけるフィルタおよび/または多孔性支持体として使用できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【図1】例16の本発明のムライト焼結物品の結晶構造を示す、500倍で撮影されたSEM写真
【図2】例17の比較のためのムライト焼結物品の結晶構造を示す、500倍で撮影されたSEM写真
【図3】例16の本発明のムライト焼結物品の結晶構造を示す、2500倍で撮影されたSEM写真
【図4】例17の比較のためのムライト焼結物品の結晶構造を示す、2500倍で撮影されたSEM写真

Claims (13)

  1. 焼結ムライト基体を調製するのに使用する組成物であって、75-99重量%のムライト粉末、および1.0-25重量%の水膨潤粘土、並びにそれらの合計に対して5-25重量%のアルミナおよび/またはアルミナ生成前駆体を含み、前記ムライト粉末が約150μm以下の平均粒径を有することを特徴とする組成物。
  2. 前記水膨潤粘土がモンモリロナイトベントナイト型粘土であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
  3. 前記ムライト粉末が約50μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
  4. 焼結ムライトセラミック基体を製造する方法であって、
    重量%で表して、75-99重量%のムライト粉末、および1.0-25重量%の水膨潤粘土並びにそれらの合計に対して5-25重量%のアルミナおよび/またはアルミナ生成前駆体を含む化学組成を有する可塑化可能な無機原料混合物を調製し、
    該無機混合物に有機結合剤系を加え、
    その混合物を混練し、
    その後、その混合物を押し出して、未焼結基体を形成し、さらに
    該基体を、焼結ムライト構造体を形成するのに十分な時間と温度で焼成する、各工程を含み、
    前記ムライト粉末が約150μm以下の平均粒径を有することを特徴とする方法。
  5. 前記原料混合物が、約20%未満の酸/塩基露出強度損失を有する焼結ムライト構造体を形成するのに十分な時間と温度で焼成されることを特徴とする請求項記載の方法。
  6. 前記水膨潤粘土がモンモリロナイトベントナイト型粘土であることを特徴とする請求項記載の方法。
  7. 前記ムライト粉末が約50μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項記載の方法。
  8. 請求項からいずれか1項記載の方法によって作成された多孔性焼結ムライトセラミック材料であって、29-60重量%のSiO、30-70重量%のAl、および1-10%のMgOを含む組成を有し、狭い貫通孔径分布、約2-15μmの間の平均浸透孔径を示す細孔、少なくとも30%の全浸透多孔率を有することを特徴とする多孔性焼結ムライトセラミック材料。
  9. 約20%未満の酸/塩基露出強度損失を示すことを特徴とする請求項記載の多孔性焼結ムライトセラミック材料。
  10. 約10%未満の酸/塩基露出強度損失を示すことを特徴とする請求項記載の多孔性焼結ムライトセラミック材料。
  11. 前記貫通孔径分布が、貫通細孔の実質的に全てが約0.5-7.5μmの間のサイズを有するものであることを特徴とする請求項記載の多孔性焼結ムライトセラミック材料。
  12. 前記平均浸透孔径が2-10μmの間にあり、MORが約5000psiより大きいことを特徴とする請求項記載の多孔性焼結ムライトセラミック材料。
  13. 前記材料が、25%の流動減少点での約99.95%より大きい濾過効率および約0.7ml/分/平方インチ/1インチの水カラムより大きい16ミルの浸透率を有することを特徴とする請求項12記載の多孔性焼結ムライトセラミック材料。
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