JP4626114B2 - 画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リカーシブエフェクトの代表であるトレール効果は、残像と現在の画像(以下、現画像と呼ぶ)を合成することによってその効果が得られる。残像はこの合成後の画像フレームメモリに記録し、そのキー信号のレベルを低下させることによって生成している。
【0003】
従来の画像特殊効果装置(DME: Didtal Multi Elcts)において、現画像と残像を合成するには、原画像のキーをそのまま合成係数として使用する方法や、さらにこれを応用し、残像部にキーの存在しない部分は原画像がそのまま出力されるように合成係数を補正する方法などが採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の画像特殊効果装置では、問題点1〜3があった。
【0005】
問題点1:エッジの急峻化
残像に対し原画像を重ねる場合の合成係数に原画像キーを用いる場合、最終的にトレール付加を行うときに再び原画像キーのエッジが使用され、キーのエッジが二重に使用されるので、本来の画像エッジと比較して急峻となり、リンギングやエリアシングの原因となり、画像品位を損なう。
【0006】
問題点2:画像エッジへのカラーマットの滲み込み
トレール部に任意の色を付加する効果を実現する場合は残像部に対しカラーマットを適用するが、この場合、物体が静止しているときも物体のエッジ部にカラーマットが現れてしまい品位が悪い。これは、合成係数にキーエッジの傾斜部が使用されるためである。
【0007】
問題点3:回路の複雑さとパラメータに対する効果の連続性の問題
従来機種においてはキーエッジに対し特別な処理を施すことによって、これらの問題を軽減しているが完全ではなく、回路が複雑難解になるばかりでなく、回路規模が増大するという問題を伴う。さらに、また効果のバリエーションとして現画像を残像の上にかぶせる又はその逆を選択可能とし、さらにその合成比率を変えて原画像と残像との重なり具合を自由に調整することも可能であるが、原画像と残像との重なり具合やトレールにカラーマットを採用する場合等に応じて回路構成や処理アルゴリズムの切替えが必要となり、重なり具合パラメータと完全に原画像が上に重なる状態が連続しておらず、効果の連続的変化を表す場合に不都合を生じていた。
【0008】
そこで、本発明は、画面内を移動する物体にトレールを付加する効果を実現するに当たり、これらの問題点を解決して構成及び動作の理解が容易な画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法を提供するものである。
【0009】
本発明の目的は、トレール部に残像以外の画像を選択可能にするとともに、カラーマット等の残像以外のビデオを付加する機能を有する画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、トレール付加タイプとしてOver状態とUnder状態を選択可能にした画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の他の目的は、上記機能において、残像部が現画像に重なる度合いを調整できるようにした画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
通常、トレールは現画像に残像を引きずる効果であるため、残像の上に現画像を重ねる。しかし、現画像があたかも奥に移動する状態を表現するために、残像が上になる重ね合わせを実現する。ここで、図1に示すように、現画像VLIVEが上の状態をOver、逆に残像VAfterが上となる状態をUnderと定義するまた、残像部が上に重なる度合いを自由に調整可能であれば、奥へ移動するスピードが速い場合に残像部が濃く、遅い場合は重なり方が薄くなるといった効果を表現できる。図1に示すように、Over状態とUnder状態の中間状態をMix状態であると定義する。
【0013】
本発明は、入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果装置において、残像画像と入力された動画像信号の現画像との画像合成比率を示す画像合成信号KMIX、及び、リカーシブ効果処理が施された上記物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを生成するキー生成手段と、上記画像合成信号KMIXに基づき、残像画像と入力された動画像信号の現画像とを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号を生成する画像合成手段とを備え、上記キー生成手段は、出力画像キー信号KOUT及び画像合成信号KMIXを以下の式に基づき生成することを特徴とする。
【0014】
【数5】
Figure 0004626114
【0015】
ここで、KLIVEは、入力された上記動画像信号に表示されているリカーシブ効果処理対象となる物体を示すキー信号である現画像キー信号である。
【0016】
AFTERは、1フレーム前の出力画像キー信号KOUTに所定の減衰量を乗算した残像画像キー信号である。
【0017】
は、0〜1の値をもつパラメータである。
【0018】
また、本発明は、入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果方法において、残像画像と入力された動画像信号の現画像との画像合成比率を示す画像合成信号KMIX、及び、リカーシブ効果処理が施された上記物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを、下式に基づき生成し、上記画像合成信号KMIXに基づき、残像画像と入力された動画像信号の現画像とを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号を生成することを特徴とする。
【0019】
【数6】
Figure 0004626114
【0020】
ここで、KLIVEは、入力された上記動画像信号に表示されているリカーシブ効果処理対象となる物体を示すキー信号である現画像キー信号である。
【0021】
AFTERは、1フレーム前の出力画像キー信号KOUTに所定の減衰量を乗算した残像画像キー信号である。
【0022】
は、0〜1の値をもつパラメータである。
【0023】
また、本発明は、入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果装置において、残像画像と入力された動画像信号の現画像との画像合成比率を示す画像合成信号KMIX、及び、リカーシブ効果処理が施された上記物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを生成するキー生成手段と、上記画像合成信号KMIXに基づき、残像画像と入力された動画像信号の現画像とを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号を生成する画像合成手段とを備え、上記キー生成手段は、下式に基づき画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTを生成することを特徴とする。
【0024】
【数7】
Figure 0004626114
【0025】
ここで、KLIVEは、入力された上記動画像信号に表示されているリカーシブ効果処理対象となる物体を示すキー信号である現画像キー信号である。
【0026】
AFTERは、1フレーム前の出力画像キー信号(KOUT)に所定の減衰量を乗算した残像画像キー信号である。
【0027】
は、0〜1の値をもつパラメータである。
【0028】
また、本発明は、入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果方法において、残像画像と入力された動画像信号の現画像との画像合成比率を示す画像合成信号KMIX、及び、リカーシブ効果処理が施された上記物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを、下式に基づき生成し、上記画像合成信号KMIXに基づき、残像画像と入力された動画像信号の現画像とを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号を生成することを特徴とする。
【0029】
【数8】
Figure 0004626114
【0030】
ここで、KLIVEは、入力された上記動画像信号に表示されているリカーシブ効果処理対象となる物体を示すキー信号である現画像キー信号である。
【0031】
AFTERは、1フレーム前の出力画像キー信号KOUTに所定の減衰量を乗算した残像画像キー信号である。
【0032】
は、0〜1の値をもつパラメータである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
先ず、トレール効果の基本原理について図2及び図3を参照して説明する。
【0035】
図2は、方形の物体が動いている場合のトレール効果のかかり方を表している。物体に記されている数値は夫々何フレーム前の物体であるかを表している。3で示される画像は3フレーム前に画像がその場所にあったことを意味する。画像は時間とともに消えていき、バックグランドに溶け込む様子がわかる。また、この図2のうち1〜4の部分が残像であり、0が現画像である。次のフレームにおいては0〜4の画像が合成され、さらにレベルが下がったものが残像となる。
【0036】
この効果を作り出す画像特殊効果装置10は、その原理的な構成を図3に示すように、画像合成部(Video Mix.)1、キー生成部(Key Proc.)2、フレームメモリ(Frame Mem.)3,4、乗算器5や選択回路6などからなる。
【0037】
上記画像合成部1は、外部からのビデオ入力(Video Input)として現画像部の動画像信号(以下、現画像信号と呼ぶ)VLIVEが供給され、また、当該画像合成部1から出力される画像信号VOUTがフレームメモリ3を介して残像画像信号VAFTERとして供給され、さらに、上記キー生成部2から画像合成信号KMIXが供給されるようになっている。なお、上記画像合成部1には、フレームメモリ3を介して供給される残像画像信号VAFTERに代えて、残像部の画像信号としてカラーマット信号Mattが選択回路6を介して供給される場合もある。
【0038】
そして、この画像合成部1は、上記画像合成信号KMIXに基づき、次の式(1)に示す直線補間式に従った処理を行うことにより、
【0039】
【数9】
Figure 0004626114
【0040】
上記残像画像信号VAFTERと現画像信号VLIVEとを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号VOUTを生成し、生成した動画像信号VOUTを上記フレームメモリ3に供給するとともに、上記動画像信号VOUTをビデオ出力(Video Output)として外部に出力する。
【0041】
また、上記キー生成部2は、外部からのキー入力(Key Input)として現画像信号VLIVEに対するキー信号(以下、現画像キー信号と呼ぶ)KLIVEが供給され、また、当該キー生成部2から出力される出力画像キー信号KOUTがフレームメモリ4を介し、さらに、乗算器5により調整パラメータDecayが乗算されて残像に対するキー信号(残像画像キー信号と呼ぶ)KAFTERとして供給されるようになっている。
【0042】
そして、このキー生成部2は、上記現画像キー信号KLIVEと残像キー信号KAFTERから、残像画像信号VAFTERと現画像信号VLIVEとの画像合成比率を示す画像合成信号KMIX、及び、リカーシブ効果処理が施された物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを生成し、生成した画像合成信号KMIXを上記画像合成部1に供給し、また、生成した出力画像キー信号KOUTを上記フレームメモリ4に供給するとともに、上記出力画像キー信号KOUTをキー出力(Key Output)として外部に出力する。
【0043】
このような構成の画像特殊効果装置10の動作原理を解説する。
【0044】
残像とは過去の画像が残っている状態のものであり、元画像の信号レベルが時間とともにバックグランドレベルに近づいている状態にある画像全てを表すと考えられる。これを実現するにはキー信号レベルが時間とともに減少し、最終的には0となる処理を行うとよい。このレベルの下がり方の度合い、すなわち、残像部の消え具合を決定するのが、上記フレームメモリ4の出力に上記乗算器5により乗算される調整パラメータDecayである。上記調整パラメータDecayは、1以下の値を持ち、上記フレームメモリ4から出力される1フレーム前のキー出力に乗算される。フレームメモリ4には現画像キー信号KLIVEと残像キー信号KAFTERとが合成されたものが入力されており、キー信号のレベルは時間とともに下がる。残像部分の画像出力はフリーズされた画像となっており、そのレベルは時間とともに変化しない。しかし、キー信号のレベルが下がることによってバックグランドとミックスされた画像では徐々に残像部分が消えていく効果を観測できる。
【0045】
また、任意の色のトレールを付加する効果は、上記画像合成部1に供給する残像画像信号VAFTERにとして選択回路6を介して任意のマット信号Mattを供給することによって実現される。
【0046】
そして、この画像特殊効果装置10では、残像と現画像との合成を2チャンネルのビデオコンバイン原理に基づいて行い、上記キー生成部2において、画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTを次の式(2),(3)により求める。
【0047】
【数10】
Figure 0004626114
【0048】
ここで、Gは残像の重なり度合いを示す変数である。この変数Gの値が1の時残像が最も上に重なっているUnder状態、同変数Gの値が0の場合を現画像が最も上に重なっているOver状態と考える。なお、残像と現画像入力をコンバイン原理式に対して逆のチャンネルに適用すると変数Gに対するOver状態とUnder状態の意味合いが反対となる。
【0049】
上記キー生成部2では、例えば図4に示す構成の演算回路20により、上記式(2),式(3)にしたがって画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTを演算する。
【0050】
すなわち、図4に示す構成の演算回路20において、減算器21は、定数1.0から現画像キー信号KLIVEを減算し、その減算出力(1−KLIVE)を乗算器22に供給する。
【0051】
上記乗算器22は、上記減算器21の減算出力(1−KLIVE)に残像キー信号KAFTERと乗算し、その乗算出力(KAFTER×(1−KLIVE))を加算器23と合成器24に供給する。
【0052】
そして、上記加算器23は、上記乗算器22の乗算出力(KAFTER×(1−KLIVE))と現画像キー信号KLIVEを加算することにより、その加算出力として上記式(3)にて示される出力画像キー信号KOUTを出力するとともに、除算器25に供給する。
【0053】
また、上記合成器24は、残像の重なり度合いを示す変数Gが供給されており、
a=KAFTER,b=KAFTER,k=Gとして、
x=(a−b)k+b
なる合成処理を行い、その合成出力xを上記除算器25に供給する。
【0054】
そして、上記除算器25は、上記加算器23の加算出力すなわち出力画像キー信号KOUTをyとし、上記合成器24の合成出力xを上記出力画像キー信号KOUTすなわちyで除算することにより、その除算出力として上記式(2)で示される画像合成信号KMIXを出力する。
【0055】
上記キー生成部2において上記式(2),式(3)にしたがって画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTを演算することにより、次のような優位性を得ることができる。
【0056】
すなわち、コンバイン原理に基づいており、入力チャンネルのキーの傾斜が合成後も保証される。したがって、二重キーによるエッジの急峻化が発生しない。
【0057】
また、重ね合わせの度合いを自由に調整でき、0ver・Underの状態はMix状態において係数を最大又は最小とした場合と同一となる。さらに、この性質を利用し、残像の重なり度合いを示す変数Gに奥行き情報を反映し、より効果的なトレールを実現することができる。また、トレール以外のリカーシブエフェクトの合成法としては理論に忠実である。リカーシブ回路はトレール以外にMotion Decay、Key Frame Strobe、Multi Freeze及びRecursive Shadow等のエフェクトも実現する。
【0058】
ここで、上記キー生成部2では、Over状態とUnder状態を個別に演算し、その結果をMixして画像合成信号KMIXを求めるようにすることもできる。
【0059】
すなわち、この場合、Overトレール及びUnderトレールの画像信号の状態式を定義し、Mixトレールはこの2状態を合成したものと考える。ただし、各状態の画像信号のMixを行う場合、回路規模が大となるため、ビデオの最終演算結果が求める式と同等となる画像合成信号KMIXを導き出す。
【0060】
Over状態は次の条件A1)〜A3)を満たすように定義される。
【0061】
条件A1) キー信号の合成結果は残像キー信号KAFTERと現画像キー信号KLIVEとの最大値、すなわちPositive NAM出力とする。これによって、静止状態でキーレベルが上昇する問題はなくなる。
【0062】
条件A2)画像エッジの本来の傾斜を有効にするため、バックグランド等と合成した場合の整合性を考え、状態定義はキー処理された状態で行う。
【0063】
条件A3)トレールは残像キー信号KAFTERが現画像キー信号KLIVEのレベルより大のとき付加されると考える。これにより静止状態における残像の滲み込みが生じない。
【0064】
条件A1)を満足するために、出力画像キー信号KOUTを次の式(4)のように定義する。
【0065】
【数11】
Figure 0004626114
【0066】
また、条件A2)より画像出力を次の式(5)のように定義する。
【0067】
【数12】
Figure 0004626114
【0068】
これは、残像キー信号KAFTERのレベルが現画像キー信号KLIVEより大のときのみ残像が付加されることを表しており、3)の条件を満足する。この式(5)を、Over状態での画像合成出力である動画像信号VOVERは、次の式(6)により求めることができる。
【0069】
【数13】
Figure 0004626114
【0070】
この定義式(6)は残像と現画像とのキーレベルがら以下の様に場合わけされる。
【0071】
a.KAFTER≧KLIVEの場合
【0072】
【数14】
Figure 0004626114
【0073】
b.KAFTER≦KLIVEの場合
【0074】
【数15】
Figure 0004626114
【0075】
これから条件A3)が満たされていることがわかる。
【0076】
また、Over状態は次の条件B1)〜B3)を満たすように定義される。
【0077】
B1)キー信号の合成結果は残像キー信号KAFTERと現画像キー信号KLIVEとの最大値、すなわちPositive NAM出力とする。これによって、静止状態でキーレベルが上昇する問題はなくなる。
【0078】
B2)画像エッジの本来の傾斜を有効にするため、バックグランド等と合成した場合の整合性を考え、状態定義はキー処理された状態で行う。
【0079】
B3)Under状態では残像が優先であるがら、残像は全て出力に反映される。現画像はそのキー信号KLIVEが残像のキー信号KAFTERより大のときのみ出力されるものとする。
【0080】
このうちB3)以外はOverと同条件である。出力画像キー信号KOUTは同一式、すなわち、式(4)で定義し、画像出力を次の式(9)のように定義する。
【0081】
【数16】
Figure 0004626114
【0082】
したがって、Under状態での画像合成出力である動画像信号VUNDERは、次の式(10)により求めることができる。
【0083】
【数17】
Figure 0004626114
【0084】
Overと同様に各々のキーレベルを比較して、ビデオ出力は以下の様になる。
【0085】
a.KAFTER≧KLIVEの場合
【0086】
【数18】
Figure 0004626114
【0087】
b.KAFTER≦KLIVEの場合
【0088】
【数19】
Figure 0004626114
【0089】
これから条件B3)を満たすことがわかる。
【0090】
また、Mix状態式は、次のようにして導出される。
【0091】
すなわち、Mix状態はOver状態とUnder状態をあるミックス比により合成したものと考える。出力画像キー信号KOUTの定義はOver状態とUnder状態とで同一であるため、合成後の画像出力である動画像信号VOUTは、合成後のキー信号レベルを考慮することなく単純にVOVERとVUNDERとを次の式(13)に示すように合成するすればよい。
【0092】
【数20】
Figure 0004626114
【0093】
この式(13)で示される動画像信号VOUTは、残像の重なり度合いを示す変数Gに最大値1.0を持つときがUnder状態となり、0.0のときOver状態となる。
【0094】
ここで、残像キー信号KAFTERと現画像キー信号KLIVEとのレベル比較で場合わけすると、以下のように残像と現画像によって表現される。
【0095】
a.KAFTER≧KLIVEの場合
【0096】
【数21】
Figure 0004626114
【0097】
この式(14)は次の式(15)のように変形される。
【0098】
【数22】
Figure 0004626114
【0099】
b.KAFTER≦KLIVEの場合
【0100】
【数23】
Figure 0004626114
【0101】
この式(16)は次の式(17)のように変形される。
【0102】
【数24】
Figure 0004626114
【0103】
ここで、両条件における演算式の相違点に注目すると、上記a.の場合における式(15)の残像キー信号KAFTERから現画像キー信号KLIVEを減算する部分が、b.の場合において0となっていることが分かる。すなわち、残像キー信号KAFTERが現画像キー信号KLIVEのレベル以下の場合に0となることから、合成後の画像出力である動画像信号VOUTは、減算結果に対し出力が0以上となるリミッタをかける以下の式(18)として表現される。
【0104】
【数25】
Figure 0004626114
【0105】
この式(18)は、上述のトレール効果の基本原理において説明した残像と現画像との直線補間式に他ならない。そのときの係数KMIXは、右辺先頭に記述された分数部全体である。また、この係数KMIXの分母は、現画像キー信号KLIVEと残像キー信号KAFTERの最大値となるため、出力画像キー信号KOUTそのものである。したがって、最終的に画像合成比率を表す画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTは、次の式(19)及び式(20)により示される。
【0106】
【数26】
Figure 0004626114
【0107】
したがって、上記キー生成部2では、例えば図5に示す構成の演算回路30により、上記式(19),式(20)にしたがって画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTを演算する。
【0108】
すなわち、図5に示す構成の演算回路30において、減算器31は、残像キー信号KAFTERから現画像キー信号KLIVEを減算し、その減算出力(K FTER−KLIVE)をリミッタ回路32に供給する。
【0109】
上記リミッタ回路32は、上記減算器31の減算出力(KAFTER−KLIVE)に0以上とするリミッタをかけ、そのリミッタ出力(0,KAFTER−KLIVE)を加算器33と合成器34に供給する。
【0110】
そして、上記加算器33は、上記リミッタ回路32のリミッタ出力(0,KAFTER−KLIVE)と現画像キー信号KLIVEを加算することにより、その加算出力として上記式(20)にて示される出力画像キー信号KOUTを出力するとともに、除算器35に供給する。
【0111】
また、上記合成器34は、残像の重なり度合いを示す変数Gが供給されており、
a=KAFTER,b=KAFTER,k=Gとして、
x=(a−b)k+b
なる合成処理を行い、その合成出力xを上記除算器35に供給する。
【0112】
そして、上記除算器35は、上記加算器33の加算出力すなわち出力画像キー信号KOUTをyとし、上記合成器24の合成出力xを上記出力画像キー信号KOUTすなわちyで除算することにより、その除算出力として上記式(19)で示される画像合成信号KMIXを出力する。
【0113】
上記キー生成部2において上記式(19),式(20)にしたがって画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTを演算することにより、次のような優位性を得ることができる。
【0114】
すなわち、OverとUnderの状態定義式は残像及び現画像のエッジをそのまま採用しているので、二重キーによる問題は生じない。これはOver・Under 両状態を合成して得られるMix状態においても保証されている。
【0115】
また、原理的にはOverとUnderの両状態を先に演算した後に残像の重なり度合いを示す変数GによってMixを行う思想であるが、図5に示した演算回路30では、先に画像合成信号KMIXに対して残像の重なり度合いを示す変数Gを反映することによって、ハードウェアを最小限に留めている。すなわち、原理手順どおりのハードウェア構成に対し、図5に示した演算回路30では、除算器や加算器が半分程度となる。
【0116】
また、0ver状態は、残像キー信号KAFTERのレベルが現画像キー信号KLIVEのレベル以下である場合にはトレールが付加されない演算式となっている。静止画状態においては残像キー信号KAFTERのレベルは現画像キー信号KLIVE以下となるため、現画像キー信号KLIVEのレベルが1以下の場合においても残像部の画像が表に現れてこない。すなわち、カラーマット信号等の滲み込み問題を完全に解決している。
【0117】
さらに、重ね合わせの度合いを係数Gによって自由に調整でき、0vem・Underの状態はMix状態において係数Gを最大又は最小とした場合と同一となる。したがって、コンバイン方法と同様に残像の重なり度合いを示す変数Gに奥行き情報を反映し、より効果的なトレールを実現することが可能である。
【0118】
ここで、Over状態とUnder状態の合成比である変数Gの極性を逆にした場合を考える。この場合、前述式に対して、次の式(21)で表されるパラメータG'が合成比となる。
【0119】
【数27】
Figure 0004626114
【0120】
パラメータG'は最大値を持つときOver状態となるパラメータであり、合成後の画像出力である動画像信号VOUTは、次の式(22)にて示される。
【0121】
【数28】
Figure 0004626114
【0122】
このとき、同様の演算によって、動画像信号VOUT、画像合成比率を表す画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTは、次の式(23)、式(24)及び式(25)により示される。
【0123】
【数29】
Figure 0004626114
【0124】
これは、元の式と比較して、残像と現画像を入れ替え、さらに残像キー信号KAFTERと現画像キー信号KLIVEとを交換した式となっていることがわかる。すなわち、回路構成を全く変更することなく、残像入力と現画像入力を入れ替えることで対応できる。
【0125】
上述の図4に示した演算回路20と図5に示した演算回路30は、類似する構成要素を多く含んでおり、図6に示す演算回路40ように、上記演算回路20に選択回路41とリミッタ回路42を追加することによって、両方の演算機能を有する演算回路40を実現することができる。
【0126】
ここで、トレール以外のリカーシブエフェクトを実現する場合においてはビデオ合成原理を考えた場合は上記演算回路20による演算手法を採用するのがより適切で画質面において優位である。また、コントロールが複雑ではあるが、動きのある場合のみリカーシブを0Nにすることによってトレール時に上記演算回路20による演算手法を採用することも可能である。
【0127】
さらに、奥行き情報を持つシステムに本発明を適用し、図7に示す画像特殊効果装置50のように、上述の図3に原理的な構成を示した画像特殊効果装置10における上記キー生成部2にOver状態とUnder状態の合成比である変数Gを与える奥行き情報生成部8を設けることにより、奥行き情報をトレール処理に反映させることができる。
【0128】
図7に示す画像特殊効果装置50おいて、上記奥行き情報生成部8は、外部からの奥行き情報入力(Z Input)として現画像信号VLIVEに対する奥行き情報(以下、現画像奥行き情報と呼ぶ)ZLIVEが供給され、また、当該奥行き情報生成部8から出力される出力奥行き情報ZOUTがフレームメモリ9を介して残像に対する奥行き情報(以下、残像奥行き情報と呼ぶ)ZAFTERとして供給されるようになっている。
【0129】
そして、この奥行き情報生成部8は、上記現画像奥行き情報ZLIVEと残像奥行き情報ZAFTERから、Over状態とUnder状態の合成比を指定する変数Gと出力画像の奥行き情報(出力画像奥行き情報と呼ぶ)ZOUTを生成し、生成した変数Gをキー生成部2に供給し、また、生成した出力画像画像奥行き情報ZOUTを奥行き情報出力(Key Output)として外部に出力する。
【0130】
上記キー生成部2は、上記奥行き情報生成部8から供給される上記変数Gに応じた画像合成信号KMIXを画像合成部1に供給する。
【0131】
そして、上記画像合成部1は、現画像信号VLIVEと残像画像信号VAFTERとを
上記キー生成部2から供給される画像合成信号KMIXに応じた合成比率で合成することにより動画像信号VOUTを生成する。
【0132】
このように奥行き情報をトレール処理に反映させることによって、特別なコントロールをすることなく手前又は奥へ移動していく状態をトレールで表現することができる。さらに4攻画像がトレール部を突き抜ける効果を得ることも可能である。
【0133】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、トレール効果におけるエッジの急峻化問題すなわち二重キーによるエッジの急峻化を伴うことなくトレール処理を行うことができる。また、トレールのMix状態における残像と現画像が重なる度合いを調整することができる。また、画像エッジへのカラーマットの滲み込みを伴うことなくトレール処理を行うことができる。
【0134】
すなわち、本発明によれば、トレール部に残像以外の画像を選択可能にするとともに、カラーマット等の残像以外のビデオを付加する機能を有する画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法を提供することができる。
【0135】
また、本発明によれば、トレール付加タイプとしてOver状態とUnder状態を選択可能にした画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法を提供することがきる。
【0136】
さらに、本発明によれば、残像部が現画像に重なる度合いを調整でき、Over状態とUnder状態との連続性を確保することができる画像特殊効果装置及び画像特殊効果方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明のトレール処理における現画像と残像の重なり状態を示すUnder状態、Over状態及びMix状態の概念図である。
【図2】方形の物体が動いている場合のトレール効果のかかり方を表す図である。
【図3】上記トレール効果を作り出す画像特殊効果装置の原理的な構成を示すブロック図である。
【図4】上記画像特殊効果装置におけるキー生成部に備えられる演算回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】上記画像特殊効果装置におけるキー生成部に備えられる演算回路の他の構成例を示すブロック図である。
【図6】上記画像特殊効果装置におけるキー生成部に備えられる演算回路のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明を奥行き情報を持つシステムに適用した画像特殊効果装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
10,50 画像特殊効果装置、1 画像合成部(Video Mix.)、2 キー生成部(Key Proc.)、3,4,9 フレームメモリ(Frame Mem.)、5 乗算器、6 選択回路、8 奥行き情報生成部、20,30,40 演算回路、21,31 減算器、22 乗算器、23,33 加算器、24,34 合成器、25,35除算器、32,42 リミッタ回路、50 画像特殊効果装置

Claims (12)

  1. 入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果装置において、
    残像画像と入力された動画像信号の現画像との画像合成比率を示す画像合成信号KMIX、及び、リカーシブ効果処理が施された上記物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを生成するキー生成手段と、
    上記画像合成信号KMIXに基づき、残像画像と入力された動画像信号の現画像とを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号を生成する画像合成手段とを備え、
    上記キー生成手段は、出力画像キー信号KOUT及び画像合成信号KMIXを以下の式に基づき生成することを特徴とする画像特殊効果装置。
    Figure 0004626114
    ここで、KLIVEは、入力された上記動画像信号に表示されているリカーシブ効果処理対象となる物体を示すキー信号である現画像キー信号である。KAFTERは、1フレーム前の出力画像キー信号KOUTに所定の減衰量を乗算した残像画像キー信号である。Gは、0〜1の値をもつパラメータである。
  2. 上記残像画像は、1フレーム前の出力画像であること
    を特徴とする請求項1記載の画像特殊効果装置。
  3. 上記残像画像は、カラーマット信号であること
    を特徴とする請求項1記載の画像特殊効果装置。
  4. 入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果方法において、
    残像画像と入力された動画像信号の現画像との画像合成比率を示す画像合成信号KMIX、及び、リカーシブ効果処理が施された上記物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを、下式に基づき生成し、
    上記画像合成信号KMIXに基づき、残像画像と入力された動画像信号の現画像とを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号を生成すること
    を特徴とする画像特殊効果方法。
    Figure 0004626114
    ここで、KLIVEは、入力された上記動画像信号に表示されているリカーシブ効果処理対象となる物体を示すキー信号である現画像キー信号である。
    AFTERは、1フレーム前の出力画像キー信号KOUTに所定の減衰量を乗算した残像画像キー信号である。
    は、0〜1の値をもつパラメータである。
  5. 上記残像画像は、1フレーム前の出力画像であること
    を特徴とする請求項4記載の画像特殊効果方法。
  6. 上記残像画像は、カラーマット信号であること
    を特徴とする請求項4記載の画像特殊効果方法。
  7. 入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果装置において、
    残像画像と入力された動画像信号の現画像との画像合成比率を示す画像合成信号(KMIX)、及び、リカーシブ効果処理が施された上記物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを生成するキー生成手段と、
    上記画像合成信号KMIXに基づき、残像画像と入力された動画像信号の現画像とを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号を生成する画像合成手段とを備え、
    上記キー生成手段は、下式に基づき画像合成信号KMIX及び出力画像キー信号KOUTを生成することを特徴とする画像特殊効果装置。
    Figure 0004626114
    ここで、KLIVEは、入力された上記動画像信号に表示されているリカーシブ効果処理対象となる物体を示すキー信号である現画像キー信号である。
    AFTERは、1フレーム前の出力画像キー信号KOUTに所定の減衰量を乗算した残像画像キー信号である。
    は、0〜1の値をもつパラメータである。
  8. 上記残像画像は、1フレーム前の出力画像であること
    を特徴とする請求項7記載の画像特殊効果装置。
  9. 上記残像画像は、カラーマット信号であること
    を特徴とする請求項7記載の画像特殊効果装置。
  10. 入力された動画像信号内に表示されている物体に対してリカーシブ効果処理を施す画像特殊効果方法において、
    残像画像と入力された動画像信号の現画像との画像合成比率を示す画像合成信号KMIX、及び、リカーシブ効果処理が施された上記物体を示すキー信号である出力画像キー信号KOUTを、下式に基づき生成し、
    上記画像合成信号KMIXに基づき、残像画像と入力された動画像信号の現画像とを合成して、上記物体にリカーシブ効果処理が施された動画像信号を生成すること
    を特徴とする画像特殊効果方法。
    Figure 0004626114
    ここで、KLIVEは、入力された上記動画像信号に表示されているリカーシブ効果処理対象となる物体を示すキー信号である現画像キー信号である。
    AFTERは、1フレーム前の出力画像キー信号KOUTに所定の減衰量を乗算した残像画像キー信号である。
    は、0〜1の値をもつパラメータである。
  11. 上記残像画像は、1フレーム前の出力画像であること
    を特徴とする請求項10記載の画像特殊効果方法。
  12. 上記残像画像は、カラーマット信号であること
    を特徴とする請求項10記載の画像特殊効果方法。
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