JP4624688B2 - 有機熱安定剤マスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレット - Google Patents

有機熱安定剤マスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレット Download PDF

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Description

本発明は、様々な機械工業部品、電気電子部品などの産業用材料として好適な、熱安定性や靭性に優れたポリアミド66樹脂混合ペレットに関するものである。
ポリアミド樹脂は、種々の熱履歴を受けた場合、熱劣化及び酸化劣化が起こり、黄色度が増加したり、分子量が変化したり、靭性や耐久性等の機械物性が低下する。種々の熱履歴とは、重合、溶融混練、成形加工(射出、押出、ブロー、紡糸、フィルム等)あるいは高温環境での使用等である。該熱履歴での劣化の程度を減少させるために、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、有機リン化合物等の有機熱安定剤をポリアミド樹脂に配合する方法は良く知られ、またよく用いられている。
有機熱安定剤を含有するポリアミド樹脂組成物として、例えば特許文献1には(a)ナイロンベース樹脂及び(b)(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(ii)ホスファイト化合物、(iii)ヒンダードアミン光安定剤を含むナイロン成形組成物が開示されている。該文献における各種添加剤の配合方法は、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドし溶融混練してペレット化する方法が開示されている。
特許文献2にはポリアミド系樹脂に対して、特定の有機環状リン化合物と特定のフェノール化合物を添加してなるポリアミド系樹脂組成物が開示されている。該文献における添加剤の配合方法は、樹脂粉末あるいはペレットと添加剤粉末をドライブレンドする方法、樹脂粉末あるいはペレットに添加剤の溶液あるいは溶融液をスプレーする方法が開示されている。
本発明者の検討によれば、前記文献1に従い周知の熱安定剤の組み合わせをドライブレンド後溶融混練することによりペレット内部にのみ存在させた場合は、溶融混練時の熱履歴が加算され、成形加工や高温環境の使用等での劣化を防止する効果が低いことが分かった。また、文献2に従いペレット表面にのみに付着した場合は、付着量のばらつきにより品質が不安定になる問題を生じやすく、また熱安定性を高めるために数千ppmの有機熱安定剤を付着させるとその分散が不均一となり物性の低下を生じやすいことがわかった。
特許文献3には、ポリアミド6の原料にヒンダードアミンを配合して重合したポリアミド6樹脂が開示されている。更に文献4には、テレフタル酸を含むジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる特定のポリアミド原料に次亜リン酸塩とを配合し重合しオリゴマーを調整した後に、該オリゴマーと有機リン化合物の一種であるテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4‘−ビフェニレンジフォスフォナイトとを配合し溶融重合する製造方法が開示されている。該次亜リン酸金属塩には次亜リン酸カルシウム等の難溶性無機リン化合物が含まれている。
一般にポリアミド樹脂を成形品に加工しまたその加工品を使用する工程には、重合(原料〜プレポリマー〜高分子量化)工程、加工(溶融混練、各種成形)工程、使用環境等の各工程で熱履歴を受ける。従って各工程での熱履歴を抑制するためには、各工程に好適な熱安定化処方を施す必要がある。本発明者の検討によれば、ポリアミド6に代表される、有機熱安定剤と相溶性が高いラクタムを原料とする場合と、ポリアミド66に代表される、有機熱安定剤と相溶性の極めて低いジカルボン酸とジアミンの混合物あるいは塩を原料とする場合とでは、該好適な熱安定化処方が異なることがわかった。また、重合工程の劣化は重合後期の高分子量化工程で起こりやすいことがわかった。
従って、例えば文献3の従来技術に従って、ポリアミド66原料であるアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの塩あるいは混合物の水溶液にヒンダードアミン等の有機熱安定剤を配合しても、有機系熱安定剤と相溶しないため得られるポリアミド66の熱安定性が十分改良できないばかりか、ポリアミド66の重合に不具合を生じる。また文献1、2の従来技術に従って、有機系熱安定剤をポリアミド66ペレットに配合しても該ペレットを製造する重合工程、特に重合後期に熱劣化が起こりやすいため、たとえ得られたペレットに各種有機熱安定剤を処方してもその熱安定性効果は十分とはいえない。また文献4に従いポリアミド66原料水溶液に次亜リン酸ナトリウムを配合しかつ重合工程初期のオリゴマーに有機リン化合物を配合しても、その改良効果は十分とはいえない。
特開平3−181561号公報 特開平3−97755号公報 特開平10−183480号公報 特開平3−43417号公報
本発明は、様々な機械工業部品、電気電子部品などの産業用材料として好適な、熱安定性や靭性に優れた成形品が得られる有機熱安定剤マスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを提供することを目的とする。より詳細には、従来のポリアミド66樹脂に比べ、色調、熱分解が抑制されたペレットでありかつ各種成形により得られる成形品の色調、靭性が優れる有機熱安定剤マスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを提供することを目的とする。
本発明者は、上記本発明課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)と、特定量のヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物及び有機リン化合物から選ばれる少なくともひとつを含有する有機熱安定剤のマスターバッチ(B)とからなるポリアミド樹脂混合ペレットによって上記問題を解決できることを見出した。更にはポリアミド66樹脂ペレット(A)に有機熱安定剤、可溶性無機リン化合物、可溶性アルミン酸金属塩より選ばれる少なくともひとつを含有させることによりその改良効果はより高まることを見出し本発明に到った。
すなわち、本発明は、
[1] 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)と有機熱安定剤のマスターバッチ(B)とをペレットの状態でブレンドして得られた混合ペレットであり、該マスターバッチ(B)が熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.2〜10重量部のヒンダードフェノール化合物(a)を含有することを特徴とするポリアミド66樹脂混合ペレット、
[2] 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ヒンダードフェノール化合物(a)、可溶性無機リン化合物(b)、可溶性アルミン酸金属塩(c)から選ばれる少なくとも1種の熱安定剤を、ポリアミド66樹脂ペレット内部に含有するポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする[1]に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
[3] 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ヒンダードフェノール化合物(a)を含有するポリアミド66樹脂ペレットであって、該ヒンダードフェノール化合物(a)の含有量が、ポリアミド66樹脂100重量部に対し、0.01〜1重量部であることを特徴とする[1]または[2]に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
[4] 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ポリアミド66樹脂の重合を行う工程において、重合が進行しその水分率が0.2〜10重量%の段階でヒンダードフェノール化合物(a)の溶融物を溶融ポリアミド66に配合して得られた、ポリアミド66樹脂ペレット内部に有機熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする[3]に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
] 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、可溶性無機リン化合物(b)を含有するポリアミド66樹脂ペレットであって、該可溶性無機リン化合物(b)の含有量が、ポリアミド66樹脂100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部であることを特徴とする[1]〜[]のいずれかに記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
] 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ポリアミド66樹脂の重合を行う工程において、ポリアミド66原料あるいはそのオリゴマー100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の可溶性無機リン化合物を配合して重合して得られたポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする[]に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
] 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ポリアミド66樹脂100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部の可溶性無機リン化合物(b)および0.0001〜0.1重量部の可溶性アルミン酸金属塩(c)を含有するポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする[1]〜[]のいずれかに記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
] 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ポリアミド66樹脂の重合を行う工程において、ポリアミド66原料あるいはそのオリゴマー100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の可溶性無機リン化合物(b)及び0.0001〜0.1重量部の可溶性アルミン酸金属塩(c)とを配合してポリアミド66の重合を行うことで得られたポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする[]に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
] 可溶性無機リン化合物(b)が、亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩から選ばれる少なくともひとつの化合物であることを特徴とする[2]、[]、[]、[]および[]のいずれかに記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
[10] 可溶性アルミン酸金属塩(c)がアルミン酸ナトリウムであることを特徴とする[2]、[7]および[]のいずれかに記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
[11] マスターバッチ(B)の熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂より選ばれることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
[12] ポリアミド66樹脂ペレット(A)100重量部と0.1〜100重量部のマスターバッチ(B)とからなることを特徴とする[1]〜[11]のいずれかに記載のポリアミド66樹脂混合ペレット、
[13] [1]〜[12]のいずれかに記載のポリアミド66樹脂混合ペレットを用いて成形して得られる成形品、
である。
様々な機械工業部品、電気電子部品などの産業用材料として好適な、高温での成形、繰り返しの溶融工程、長時間の熱滞留において、黄色度の増加が抑制され、熱分解が抑制されかつ各種成形により得られる成形品靭性等の機械物性に優れる有機熱安定剤のマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂ペレットを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリアミド66は、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有するヘキサメチレン単位とアジピン酸単位とから成る重合体である。本発明のポリアミド66は、本発明の目的を損なわない程度でポリアミド66(ヘキサメチレン単位、アジピン酸単位)以外のアミノ酸単位、ラクタム単位、あるいはジアミン単位および/またはジカルボン酸単位を含有した共重合ポリアミド66であってもかまわない。該共重合ポリアミド66は重合体中に少なくともモル比にして約75%以上のポリアミド66の構造単位を有することが好ましい。
本発明のポリアミド66樹脂の分子量は、本発明の課題を達成するという観点から、ASTM D789に準じて求まる相対粘度(RV)が25〜350であることが好ましく、35〜300であることがより好ましい。相対粘度(RV)の測定は、溶媒として90%ギ酸を用いて、3gサンプル/30mlギ酸の濃度で、25℃の温度条件下で行う。上記範囲内であれば本発明の目的の改良効果を十分に奏することができる。
本発明においてポリアミド66樹脂ペレット(A)が含有する熱安定剤としては、有機熱安定剤、可溶性無機リン化合物および可溶性アルミン酸金属塩が挙げられ、これらの化合物群より選ばれる1種または2種以上の化合物を用いることができる。
本発明において用いられる有機熱安定剤は、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物及び有機リン化合物からなる群から選ばれる少なくともひとつの化合物であり、ポリアミド66原料の水溶液には可溶でない化合物である。これらの有機熱安定剤は、熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)、有機熱安定剤のマスターバッチ(B)の両方に含有することができるものである。
本発明のヒンダードフェノール化合物は特に制限されないが、例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4‘−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−1−ブチルフェノール)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスファスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4、6−トリス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチルカルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2‘−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4‘−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス[3,3‘−ビス−(4’−ヒドロキシ−3‘−T−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5‘−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、d−α−トコフェロールなどが挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。
本発明のヒンダードアミン化合物は特に制限されないが、例えばコハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3.5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。
本発明の有機リン化合物は特に制限されないが、例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4‘−ビフェニレンフォスフォナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジイソデシルフォスファイト、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニル・フェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどが挙げられる。これらは単独であるいはこれらの混合物で用いることができる。
これら有機熱安定剤の中でも好ましいものは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4‘−ビフェニレンフォスフォナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを挙げることができる。
熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が有機熱安定剤を含有する場合は、該ペレット中の有機熱安定剤の含有量は、ポリアミド66樹脂100重量部に対し、成型品色調等の熱安定性の改良効果の観点から、0.01重量部以上が好ましく、有機熱安定剤の分散性および成型品の靭性などの機械物性の観点から1重量部以下であることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.5重量部であり、最も好ましくは0.1〜0.3重量部である。
有機熱安定剤のマスターバッチ(B)中の上記有機熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.2〜10重量部であり、好ましくは0.5〜5重量部であり、最も好ましくは1〜3重量部である。有機熱安定剤の含有量が0.2重量部未満の場合は成型品色調等の熱安定性を改良する効果が十分でない。また、有機熱安定剤の含有量が10重量部を超える場合には、通常の溶融混練操作などでは有機熱安定剤の分散性が不良となったり、熱可塑性樹脂の過大な分子量変化が生じるなど、マスターバッチペレットの加工が困難になる恐れがある。また、マスターバッチペレットが得られた場合でも、成型品の靭性など機械物性の低下を引き起こしやすくなるため注意を要する。
本発明においては、ポリアミド66樹脂ペレット(A)に含有する熱安定剤として有機熱安定剤の他に、可溶性無機リン化合物や可溶性アルミン酸金属塩などの可溶性熱安定剤を含有することができる。該可溶性無機リン化合物や可溶性アルミン酸金属塩の可溶性とは、ポリアミド66原料水溶液に配合した場合、目視において析出物が観測されないことをいう。
可溶性無機リン化合物は、(1)リン酸類、亜リン酸類および次亜リン酸類並びに(2)リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類および次亜リン酸金属塩類からなる群から選ばれた可溶性リン酸化合物、可溶性亜リン酸化合物および/または可溶性次亜リン酸化合物である。
該(1)のリン酸類、亜リン酸類および次亜リン酸類とは、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸などを挙げることができる。
該(2)のリン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類および次亜リン酸金属塩類とは、上記(1)のリン化合物と周期律表第1族金属との塩を挙げることができる。好ましい可溶性無機リン化合物は、リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムおよび次亜リン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種のものである。より好ましくは亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムあるいはその混合物であり、最も好ましくは次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)、その水和物(NaHPO・nHO)あるいはその混合物である。可溶性無機リン化合物の含有量は、100重量部のポリアミド66に対し、好ましくは0.0001〜0.1重量部、より好ましくは0.0005〜0.05重量部、最も好ましくは0.001〜0.01重量部である。上記範囲で可溶性無機リン化合物を含有させることにより、本発明の目的をより顕著に達成することができる。
上記の可溶性アルミン酸金属塩は、下記一般式で示される。
(MO)(Al
(式中、X+Y=1であり、かつMは周期律表第1族金属である。)
上記一般式中のアルミニウム(Al)と周期律表第1族金属Mとのモル比Y/Xの値は、好ましくは0.35≦Y/X≦1.25であり、より好ましくは0.35≦Y/X<1.00であり、更に好ましくは0.5≦Y/X≦0.87である。また本発明においては、上記一般式中のMの主たる成分がナトリウムであるアルミン酸ナトリウムが好ましい。可溶性アルミン酸金属塩の含有量は、100重量部のポリアミド66に対し、好ましくは0.0001〜0.1重量部、より好ましくは0.0005〜0.05重量部、最も好ましくは0.001〜0.01重量部である。上記範囲で可溶性アルミン酸金属塩を含有させることにより、本発明の目的をより顕著に達成することができる。
本発明においては、前記有機熱安定剤、可溶性無機リン化合物と可溶性アルミン酸金属塩とを併用することもでき、併用することにより本発明の目的を更により顕著に達成できる。
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で上記可溶性無機リン化合物や可溶性アルミン酸金属塩以外に、ポリアミド66に含有することができる周知の可溶性化合物、例えば周期律表第1族金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、アルコキシド、水酸化物あるいは酢酸銅やヨウ化銅などの銅化合物、更にはヨウ化カリウムや臭化カリウムなどのハロゲン金属塩を含有させてもかまわない。
本発明は熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレットと有機熱安定剤のマスターバッチを混合したポリアミド66樹脂混合ペレットを提供するものである。
ポリアミド66樹脂ペレットに含有された熱安定剤の効果により溶融混練加工する際のポリアミド66樹脂の熱劣化を抑制し、有機熱安定剤をマスターバッチとして添加することにより有機熱安定剤の分散性をより高めることができ、成形加工や高温環境の使用等での劣化を防止することが可能である。
本発明において、ポリアミド66樹脂ペレットの内部に熱安定剤を含有することが好ましい。ペレット表面にのみ有機熱安定剤を付着した場合は、付着量のばらつきにより品質が不安定になり易い。また熱安定性を高めるために数千ppmの有機熱安定剤を付着させた場合、その分散が不均一となり物性の低下を生じやすい。従って本発明の熱安定剤を内部に含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)と有機熱安定剤のマスターバッチ(B)とからなる混合ペレットをそのまま成型加工することにより、品質の安定性を高めかつ分散性の悪化を防ぐことが可能となる。
本発明の内部に含有する有機熱安定剤は、ペレット表面をクロロホルム及び熱メタノールの溶媒で洗浄した後のペレットを、凍結粉砕、乾燥、クロロホルム/メタノール混合溶媒でのソックスレー抽出の手順で操作を行い、得られた抽出物を、GC/MS、IR、SEM/EDXで測定することにより同定および定量することができる。
本発明の方法は、熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)の製造方法、有機熱安定剤のマスターバッチ(B)の製造方法、前記(A),(B)の混合方法について順に記載する。
熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)は、(1)水分率が0.2〜10重量%のポリアミド66に、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物及び有機リン化合物から選ばれる少なくともひとつの有機熱安定剤の溶融物を溶融ポリアミド66に配合し内部に有機熱安定剤を含有したペレットを得る方法、(2)可溶性無機リン化合物および/または可溶性アルミン酸金属塩を重合原料またはオリゴマー中に配合し、重合反応を行い、ポリアミド樹脂ペレットを得る方法、(3)溶融状態のポリアミド樹脂と固形または溶融状態の有機熱安定剤、可溶性無機リン化合物、可溶性アルミン酸金属塩から選ばれる少なくともひとつを混練する方法、(4)さらに(1)、(2)、(3)を組み合わせ、有機熱安定剤、可溶性無機リン化合物、可溶性アルミン酸金属塩から選ばれる少なくともひとつを含有するポリアミド66樹脂ペレットを得る方法が挙げられる。前記(1)のポリアミド66樹脂ペレット中に有機熱安定剤を含有させる方法は、水分率が0.2〜10重量%、好ましくは0.25〜5重量%であるポリアミド66に溶融混練法を用いて配合しても良いし、重合工程の溶融ポリアミドに注入し配合してもかまわない。これらの方法を組み合わせてもかまわない。
有機熱安定剤のマスターバッチ(B)の製造方法は、(1)熱可塑性樹脂ペレットにヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物及び有機リン化合物から選ばれる少なくともひとつの有機熱安定剤をドライブレンドし、溶融混練する方法、(2)熱可塑性樹脂表面に有機熱安定剤をポリエチレングリコール等のオイルを利用して付着させ後溶融混練する方法、(3)溶融混練装置にて熱可塑性樹脂を溶融状態としこれに固体または溶融状態の有機熱安定剤を注入し混練する方法、(4)熱可塑性樹脂を粉砕し、粉状になった熱可塑性樹脂と該有機熱安定剤をブレンドした後、溶融混練する方法、(5)熱可塑性樹脂がポリアミドから選ばれる少なくともひとつの樹脂である場合は、重合工程において、水分が0.2〜10重量%のポリアミド樹脂に、有機熱安定剤の溶融物を溶融ポリアミド樹脂に配合し内部に有機熱安定剤を含有したペレットを得る方法、(6)さらに(1)〜(5)を組み合わせるまたは(1)〜(5)で得られたペレットをブレンドすることにより有機熱安定剤を含有する熱可塑性樹脂ペレットを得る方法が挙げられる。
上記の(A)と(B)をブレンドする方法としては、周知のブレンダーにてペレット状態でブレンドする方法が挙げられる。
本発明における「混合ペレット」とは、上記のように(A)と(B)をブレンドしたものをいう。
また、ポリアミド樹脂の重合工程において、その水分が0.2〜10重量%の段階で有機熱安定剤を配合する方法は、例えばギアポンプ、プランジャーポンプ等のフィードポンプを使用して、有機熱安定剤の溶融物を重合過程にある溶融ポリアミド中に注入配合する。重合工程における有機熱安定剤の溶融は、該融点〜350℃の温度範囲で加熱し溶融物とする。好ましくは融点〜融点より50℃高い温度範囲である。また、窒素等の不活性ガス雰囲気下で溶融することが好ましい。水分率が0.2〜10重量%の範囲を外れたポリアミドに配合すると、熱安定剤としての効果が十分でないばかりか溶融混練の生産性や重合の安定性が低くなるので注意を要する。
ブレンダーとしては、タンブラー、ヘンシェル、プロシェアミキサー、ナウターミキサー、フロージェットミキサー等周知の装置を用いることができる。
これらの方法のうち好ましい製造方法は、ポリアミド66の重合を行う工程において、重合原料やオリゴマーの水溶液に可溶性無機リン化合物および/または可溶性アルミン酸金属塩を添加し、重合が進行しその水分が0.2〜10重量%の段階でヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物及び有機リン化合物から選ばれる少なくともひとつの有機熱安定剤の溶融物を溶融ポリアミド66に配合し得られた熱安定剤を含有したペレット(A)と、凍結粉砕した熱可塑性樹脂を有機熱安定剤とブレンドし、2軸押出機により溶融混練して得られた有機熱安定剤のマスターバッチ(B)とをブレンダーにて混合する方法である。重合工程で注入する方法が、溶融混練法より熱やせん断を受けにくいため得られるポリアミド樹脂66ペレットの熱劣化は抑制される傾向にある。またこの方法により得られるポリアミド66樹脂ペレットは、熱劣化が起こりやすい重合後期に有機熱安定剤を配合することにより重合工程における劣化を抑制することができる。
また、有機熱安定剤のマスターバッチは、熱可塑性樹脂を凍結粉砕後に有機熱安定剤とブレンドすることにより、より分散性を高めることができる。マスターバッチを構成する熱可塑性樹脂はポリアミド樹脂より選ばれる樹脂であることが好ましく、この場合熱安定剤を含有したポリアミド66樹脂ペレット(A)であれば、さらにマスターバッチ加工時の熱劣化を抑止することができる。
得られた熱安定剤を含有したポリアミド66樹脂ペレット(A)と有機熱安定剤のマスターバッチ(B)とをブレンドすることにより、熱安定剤をより均一に分散させることができ、その後の成形加工や高温環境での使用等の熱履歴やせん断に高い熱安定性を示す。
またポリアミド66原料可溶性熱安定剤を配合することにより、その熱安定性はより高まる。
すなわち、より好ましい製造方法は、ポリアミド66原料あるいはそのオリゴマー100重量部に対して0.0001〜0.1重量部のリン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩から選ばれる少なくともひとつの可溶性無機リン化合物を配合してポリアミド66の重合を行い、ポリアミド66の重合を行う工程において、重合が進行しその水分が0.2〜10重量%の段階でヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物及び有機リン化合物から選ばれる少なくともひとつの有機熱安定剤の溶融物を溶融ポリアミド66に配合し得られた熱安定剤を含有したペレット(A)と、熱可塑性樹脂を押出機内で溶融状態にし、有機熱安定剤を押出途中でサイドフィードし、溶融混練して得られた有機熱安定剤のマスターバッチ(B)とをブレンダーにて混合する方法である。更に最も好ましい製造方法は、ポリアミド66原料あるいはそのオリゴマー100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩から選ばれる少なくともひとつの可溶性無機リン化合物及び0.001〜0.1重量部の可溶性アルミン酸金属塩とを配合してポリアミド66の重合を行い、ポリアミド66の重合を行う工程において、重合が進行しその水分が0.2〜10重量%の段階でヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物及び有機リン化合物から選ばれる少なくともひとつの有機熱安定剤の溶融物を溶融ポリアミド66に配合し得られた熱安定剤を含有したポリアミド66ペレット(A)と、熱可塑性樹脂を押出機内で溶融状態にし、有機熱安定剤を押出途中でサイドフィードし、溶融混練して得られた有機熱安定剤のマスターバッチ(B)とをブレンダーにて混合する方法である。
本発明の製造方法のポリアミド66原料あるいはそのオリゴマーは、ヘキサメチレンとアジピン酸との塩、その混合物あるいはそれらのオリゴマーである。ポリアミド原料は約40〜60重量%の水溶液で用いることが好ましい。ポリアミド66原料には、ポリアミド66以外のポリアミド原料例えば重合可能なアミノ酸、重合可能なラクタム、あるいは重合可能な他のジアミンやジカルボン酸を配合することができる。該ポリアミド66以外のポリアミド原料の配合量は、ポリアミド66原料がモル比にして約75%以上となる範囲で配合することが好ましい。また分子量調節あるいは耐熱水性向上のために周知の化合物を配合することができる。該化合物はモノカルボン酸またはモノアミンが好ましい。その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを挙げることができる。
本発明の製造方法の可溶性無機リン化合物は前記と同様である。可溶性無機リン化合物の配合量は、100重量部のポリアミド66原料に対し、好ましくは0.0001〜0.1重量部、より好ましくは0.0005〜0.05重量部、最も好ましくは0.001〜0.01重量部である。上記範囲で可溶性無機リン化合物を配合するにより、本発明の目的をより顕著に達成できる傾向にある。
本発明の製造方法の可溶性アルミン酸金属塩は前記と同様である。可溶性アルミン酸金属塩の配合量は、ポリアミド66原料100重量部に対し、好ましくは0.0001〜0.1重量部、より好ましくは0.0005〜0.05重量部、最も好ましくは0.001〜0.01重量部である。上記範囲で可溶性アルミン酸金属塩を配合することにより、本発明の目的をより顕著に達成できる傾向にある。
前記ポリアミド66の重合方法は周知の方法を用いることができる。例えば熱溶融法、ポリアミド66の融点以下の温度で行う固相法、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いた溶液法などを用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもかまわない。中でも熱溶融法が最も効率的である。また、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもかまわない。また、重合装置も特に制限されるものではなく、公知の装置例えば、連続型の反応器、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などを用いることができる。
本発明のポリアミド66樹脂ペレットには、ポリアミドに慣用的に用いられる周知の添加剤例えば顔料及び染料、難燃剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、その他の有機酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核剤、強化剤を配合することができる。また、ポリアミド66以外のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂やゴム等のその他の樹脂も配合することもできる。
本発明のポリアミド66樹脂ペレットは、高温での成形、繰り返しの溶融工程、長時間の熱滞留において、黄色度の増加の抑制、熱分解が抑制されかつ靭性等の機械物性に優れるため、多くの成形用途(自動車部品、工業用途部品、電子部品、ギア等)や押出用途(チューブ、棒、フィラメント、フィルム、ブロー等)において有用である。
本発明の有機熱安定剤のマスターバッチを構成する熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した物性評価は、以下のように行った。
(1)分子量(RV)
溶媒として90%蟻酸を用いて、3gサンプル/30ml蟻酸の濃度で、25℃の温度条件下で行った。ペレットを用いて測定した。
(2)成形品の黄色度
射出成形機(日精樹脂(株)製PS−40E)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度80℃に設定し、射出8秒、冷却13秒の射出成形条件で1mm厚みの平板を成形した。該平板を5枚重ねて、日本電色社製色差計ND−300Aを用い、反射測定でb値を測定し黄色度を評価した。b値が大きいほど黄色度が大きいことを示す。
(3)薄肉成形品での引張物性(靭性)
射出成形機(日精樹脂(株)製PS−40E)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度80℃に設定し、射出8秒、冷却13秒の射出成形条件で2mm厚みの評価用試験片を得たのち、ASTM D638に準じて引張強度及び引張伸度の測定を行った。
(4)熱分解によるガス成分量(重量%)
10mgの試料をTG−DTA装置(理学電機(株)製、Thermo Plus2 TG8120)にセットし、炉内に窒素を30ml/分で流通させる窒素雰囲気で測定した。温度条件は、100℃/分で室温から280℃まで昇温し、280℃で60分間保持した。加熱前の重量(W)と280℃で60分保持した後の重量(W)を測定し、下記式からガス成分の量(重量%)を求めた。
ガス成分の量(重量%)=(W−W)×100/W
(5)水分率(重量%)
測定サンプル約0.7gを水分気化装置(三菱化学社製VA−06型)を用いて、185℃の温度条件下、カールフィッシャー法により測定した。
なお、実施例、比較例、表に示す配合した有機熱安定剤の略号の意味はそれぞれ次の通りである。
・有機熱安定剤A(融点約160℃):N,N‘−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 TMIrganox1098)
・有機熱安定剤B(融点約120℃):ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 TMCHIMASSORB 944FD)
・有機熱安定剤C(融点約185℃):トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 TMIrgafos168)
[実施例1]
ポリアミド66原料(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)を含有する50重量%水溶液を用いた。該水溶液を約3000kg/hrの速度で濃縮層/反応器に注入し、約90%まで濃縮した。次いでフラッシャーに排出し、圧力をゆっくり大気圧まで降圧した。次の容器に移送し、約280℃の温度、−35000Paの減圧下で保持した。次いで、溶融ポリアミド66は排出ラインで移送され、押出されてストランドとなり、冷却、カッティングされペレットとなる。該連続法の重合において、排出ラインにプランジャーポンプを連結し、加熱溶融した有機熱安定剤Aを100重量部のポリアミド66に対して0.1重量部注入した。この注入段階でのポリアミド66の相対粘度(VR)は46、水分率は約0.9重量%であった。得られたペレットは水分率0.08重量%まで乾燥し、相対粘度(VR)が50の有機熱安定剤Aがペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(A)を得た。
さらに、有機熱安定剤Aがペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(A)を凍結粉砕し、得られたポリアミド66樹脂パウダー100重量部に対し、粉状の有機熱安定剤A2重量部をブレンダーにて混合した後、2軸押出機にて溶融混練後押出されてストランドとなり、冷却、カッティングされ有機熱安定剤のマスターバッチ(AA)を得た。
有機熱安定剤がペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(A)100重量部に対し、有機熱安定剤のマスターバッチ(AA)5重量部をブレンダーにて混合し、有機熱安定剤Aのマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを得た。評価結果を表1に示す。
参考例1
有機熱安定剤Aの代わりに有機熱安定剤Bを用いる以外は実施例1と同様にして実施し、有機熱安定剤Bがペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(B)を得た。該ポリアミド66樹脂ペレット(B)を凍結粉砕し、得られたポリアミド66樹脂パウダー100重量部に対し、粉状の有機熱安定剤B2重量部をブレンダーにて混合した後、2軸押出機にて溶融混練後押出されてストランドとなり、冷却、カッティングされ有機熱安定剤Bのマスターバッチ(BB)を得た。
有機熱安定剤がペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(B)100重量部に対し、有機熱安定剤のマスターバッチ(BB)5重量部をブレンダーにて混合し、有機熱安定剤Bのマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを得た。評価結果を表1に示す。
参考例2
有機熱安定剤Aの代わりに有機熱安定剤Cを用いる以外は実施例1と同様にして実施し、有機熱安定剤Cがペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(C)を得た。該ポリアミド66樹脂ペレット(C)を凍結粉砕し、得られたポリアミド66樹脂パウダー100重量部に対し、粉状の有機熱安定剤C2重量部をブレンダーにて混合した後、2軸押出機にて溶融混練後押出されてストランドとなり、冷却、カッティングされ有機熱安定剤Cのマスターバッチ(CC)を得た。
有機熱安定剤がペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(C)100重量部に対し、有機熱安定剤のマスターバッチ(CC)5重量部をブレンダーにて混合し、有機熱安定剤Cのマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
ポリアミド66原料(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)を含有する50重量%水溶液に次亜リン酸ナトリウムを配合した。以後の操作は実施例1と同様にして実施し、可溶性無機リン化合物を含有しかつ有機熱安定剤Aのマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
ポリアミド66原料(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)を含有する50重量%水溶液に次亜リン酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウム(Y/X=0.59)とを配合した。以後の操作は実施例1と同様にして実施し、可溶性無機リン化合物と可溶性アルミン酸金属塩とを含有しかつ有機熱安定剤Aのマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを得た。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
有機熱安定剤Aを配合せず実施例1と同様にして実施し、ポリアミド66樹脂ペレットを得た。評価結果を表2に示す。
参考例3
実施例1の有機熱安定剤Aがペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(A)を凍結粉砕し、得られたポリアミド66樹脂パウダー100重量部に対し、粉状の有機熱安定剤B2重量部をブレンダーにて混合した後、2軸押出機にて溶融混練後押出されてストランドとなり、冷却、カッティングされ有機熱安定剤のマスターバッチ(AB)を得た。
有機熱安定剤がペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(A)100重量部に対し、有機熱安定剤のマスターバッチ(AB)5重量部をブレンダーにて混合し、有機熱安定剤AおよびBのマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを得た。評価結果を表2に示す。
参考例4
実施例1の有機熱安定剤Aがペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(A)を凍結粉砕し、得られたポリアミド66樹脂パウダー100重量部に対し、粉状の有機熱安定剤C2重量部をブレンダーにて混合した後、2軸押出機にて溶融混練後押出されてストランドとなり、冷却、カッティングされ有機熱安定剤のマスターバッチ(AC)を得た。
有機熱安定剤がペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(A)100重量部に対し、有機熱安定剤のマスターバッチ(AC)5重量部をブレンダーにて混合し、有機熱安定剤AおよびCのマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを得た。評価結果を表2に示す。
参考例5
参考例1の有機熱安定剤Bがペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(B)を凍結粉砕し、得られたポリアミド66樹脂パウダー100重量部に対し、粉状の有機熱安定剤C2重量部をブレンダーにて混合した後、2軸押出機にて溶融混練後押出されてストランドとなり、冷却、カッティングされ有機熱安定剤のマスターバッチ(BC)を得た。
有機熱安定剤Bがペレット内部に存在するポリアミド66樹脂ペレット(B)100重量部に対し、有機熱安定剤のマスターバッチ(BC)5重量部をブレンダーにて混合し、有機熱安定剤BおよびCのマスターバッチを含有するポリアミド66樹脂混合ペレットを得た。評価結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例3のポリアミド66樹脂ペレット(C)を用いて、有機熱安定剤のマスターバッチをブレンドせずに評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例3]
比較例1で得られたポリアミド66樹脂ペレット100重量部に対して、有機熱安定剤Aを0.2重量部、ポリエチレングリコールを0.03重量部を配合し、ブレンダーで攪拌して有機熱安定剤Aがペレット表面に付着したポリアミド66樹脂ペレットを得た。評価結果を表3に示す。
[比較例4]
ポリアミド66原料(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩)15kgを用いた。該原料を含有する50重量%水溶液に、有機熱安定剤Bを25.9g(100重量部のポリアミド66に対して0.2重量部に相当)を配合した。シリコーン系消泡剤を配合し40Lの重合槽に仕込み、約50℃の温度条件で混合し窒素で置換した。次に温度を約50から約150℃まで昇温した。この際槽内の圧力をゲージ圧にして約0.05〜0.15MPaに保つため水を系外に除去しながら加熱を続けたが、水と同時に槽内のポリアミド66原料が排出され重合を継続することができなかった。
Figure 0004624688
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本発明のポリアミド66樹脂ペレットは、高温での成形、繰り返しの溶融工程、長時間の熱滞留において、黄色度の増加の抑制、熱分解が抑制されかつ靭性等の機械物性に優れるため、多くの成形用途(自動車部品、工業用途部品、電子部品、ギア等)や押出用途(チューブ、棒、フィラメント、フィルム、ブロー等)において有用である。

Claims (13)

  1. 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)と有機熱安定剤のマスターバッチ(B)とをペレットの状態でブレンドして得られた混合ペレットであり、該マスターバッチ(B)が熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.2〜10重量部のンダードフェノール化合物(a)を含有することを特徴とするポリアミド66樹脂混合ペレット。
  2. 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ヒンダードフェノール化合物(a)、可溶性無機リン化合物(b)、可溶性アルミン酸金属塩(c)から選ばれる少なくとも1種の熱安定剤を、ポリアミド66樹脂ペレット内部に含有するポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  3. 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ヒンダードフェノール化合物(a)を含有するポリアミド66樹脂ペレットであって、該ヒンダードフェノール化合物(a)の含有量が、ポリアミド66樹脂100重量部に対し、0.01〜1重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  4. 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ポリアミド66樹脂の重合を行う工程において、重合が進行しその水分率が0.2〜10重量%の段階でヒンダードフェノール化合物(a)の溶融物を溶融ポリアミド66に配合して得られた、ポリアミド66樹脂ペレット内部に有機熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする請求項3に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  5. 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、可溶性無機リン化合物(b)を含有するポリアミド66樹脂ペレットであって、該可溶性無機リン化合物(b)の含有量が、ポリアミド66樹脂100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  6. 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ポリアミド66樹脂の重合を行う工程において、ポリアミド66原料あるいはそのオリゴマー100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の可溶性無機リン化合物を配合して重合して得られたポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする請求項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  7. 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ポリアミド66樹脂100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部の可溶性無機リン化合物(b)および0.0001〜0.1重量部の可溶性アルミン酸金属塩(c)を含有するポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  8. 熱安定剤を含有するポリアミド66樹脂ペレット(A)が、ポリアミド66樹脂の重合を行う工程において、ポリアミド66原料あるいはそのオリゴマー100重量部に対して0.0001〜0.1重量部の可溶性無機リン化合物(b)及び0.0001〜0.1重量部の可溶性アルミン酸金属塩(c)とを配合してポリアミド66の重合を行うことで得られたポリアミド66樹脂ペレットであることを特徴とする請求項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  9. 可溶性無機リン化合物(b)が、亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩から選ばれる少なくともひとつの化合物であることを特徴とする請求項2、およびのいずれか1項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  10. 可溶性アルミン酸金属塩(c)がアルミン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項2、7およびのいずれか1項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  11. マスターバッチ(B)の熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂より選ばれることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  12. ポリアミド66樹脂ペレット(A)100重量部と0.1〜100重量部のマスターバッチ(B)とからなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレット。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリアミド66樹脂混合ペレットを用いて成形して得られる成形品。
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