JP4621300B2 - 情報処理装置、情報処理方法及びプログラム - Google Patents
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Description
DM方式及びMTM方式の何れのモデルについても、モンテカルロ法によりVaRを算出する方法は知られている。例えば、特許文献1には、DM方式及びMTM方式のモデル化の説明、及び、モンテカルロ法によるVaRの算出方法が記載されている。また、モンテカルロ法以外にも、例えば、非特許文献1には、DM方式について、解析的にVaRを算出する手法が開示されている。
しかしながら、上述したモンテカルロ法の場合、リスク寄与度を求める場合、乱数による誤差があるため、数値が安定しなかったり、全体VaRと個社寄与度の合計が一致しなかったり、あまり細かい単位で寄与度を求めようとすると計算に時間がかかったり、大容量のメモリを必要としたりする問題があった。
これに対して、解析的手法によりVaRを算出する技術も提案されている。解析的手法によれば、個社ごとのリスク寄与度を精度良く高速に計算することが可能となる。上述のとおり、信用リスクのモデル化の方式としては、DM方式とMTM方式とがあり、非特許文献1には、DM方式について、解析的にVaRを算出する手法が開示されている。一方、MTM方式については、DM方式に比べパラメータ数が多く、分布が複雑になるため、解析的にVaRを算出することは困難であると考えられてきた。
図2の格付推移に基づいてDM方式では、
確率分布を求める。ここで、
L:ポートフォリオの損失額
Li:債務者iによる損失額
Di:債務者iの状態(デフォルト、非デフォルト)を示す確率変数
xi:債務者iの企業価値を示す確率変数
1[・]:定義関数
pi:債務者iのデフォルト率
LGDi:債務者iのエクスポージャーのデフォルト時損失率
EADi:債務者iのエクスポージャー額
である。
そのため、従来はモンテカルロ法でシミュレーション(確率変数xiに対応する乱数を試行回数分だけ生成し、Di→Li→Lの順に計算)することで確率分布とそのリスク指標(VaR)とを計算してきた。
近年、グラニュラリティ調整法等の解析的近似によるVaR計算方法が知られてきた。これにより、VaRだけでなく、債務者ごとのリスク寄与度を安定的、かつ、高速に求めることが可能となった。
を求める際の債務者iのリスク寄与度を求める式及びDM方式において解析的にVaRを求める式である。
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの分散である条件付分散ν(z)の債務者ごとの偏微分である債務者別条件付分散ν i (z)を、確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir との代わりに、前記w ir 算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記エクスポージャー価値の差w ir と前記条件付確率算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記条件付確率ps ir (z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付分散算出手段と、前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの分散である前記条件付分散ν(z)を、前記債務者別条件付分散ν i (z)を全債務者iについて加算した半分の値として算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付分散算出手段と、前記債務者別条件付分散ν i (z)の一次導関数ν i '(z)を、前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の一次導関数ps ir '(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付分散導関数算出手段と、前記条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)を、前記債務者別条件付分散導関数算出手段で算出した一次導関数ν i '(z)を全債務者iについて加算した半分の値として算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付分散導関数算出手段と、前記条件付期待値導関数算出手段で算出された前記条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)及び前記条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)と、前記条件付分散算出手段で算出された前記条件付分散ν(z)及び前記条件付分散導関数算出手段で算出された前記条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)とから、各債務者iについてのグラニュラリティ調整項Δqα i (z)を算出し、前記記憶装置に記憶させると共に、前記記憶装置に記憶されている前記債務者iごとの条件付期待値l i (z)と前記グラニュラリティ調整項Δqα i (z)との和である債務者iごとのエクスポージャー価値V i の前記信頼水準αに対応するパーセント点qα i を算出し、前記記憶装置に記憶させるqα i 算出手段と、各債務者iについて、前記債務者データに基づいて、債務者iの現在格付sに対応する前記格付推移確率p sk のうち格付rへ推移する確率p ir と、前記エクスポージャー価値V ir とを前記記憶装置から読み出して、前記確率p ir と前記エクスポージャー価値V ir とを乗算した値の全格付についての総和である債務者iのエクスポージャー価値の期待値E[V i ]を算出し、前記記憶装置に記憶させるE[V i ]算出手段と、前記qα i 算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記パーセント点qα i と前記E[V i ]算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている期待値E[V i ]とから、ポートフォリオVaRを算出するポートフォリオVaR算出手段と、を有する。
<本実施形態の概要>
まず、本実施形態の概要を図4及び図5を用いて説明する。なお、以下に示す処理は、後述する情報処理装置(コンピュータ)が処理を実行する。
上述したように、MTM方式では債務者iの格付推移と損益額とを表す図は、図3のような多項分布になる。しかしながら、マートン・モデル(企業価値モデル)において、債務者iの現在の格付から格付rへの推移確率pirに対応して、債務者iの現在の格付から格付r以下へ推移する確率psirを後述するように求め、債務者iの現在の格付から格付rへ推移したときのエクスポージャー価値Virに対応して、債務者iの隣接する格付間のエクスポージャー価値の差wirを後述するように求めることで、図4に示すように、図3のような多項分布を二項分布の足し合わせにより表現することができる。
MTM方式では、情報処理装置は、債務者iの各付けに応じた推移確率pirをHD等の記憶装置に記憶されている確率推移行列から取得し、
ここで、
psir:債務者iが格付r以下に推移する確率
N(・):標準正規分布の累積確率関数
N-1(・):N(・)の逆関数
である。なお、ここでは、rが小さいほど低格付となる符号にしている。
θirを用いると、格付BBに推移することを示す関数は、図5の(B)のように表すことができる。
ここで、wir=Vir−Vi(r+1)であり、
Sir:債務者iの状態(Riがrであるか否か)を示す確率変数
Ri:債務者iの格付推移後の格付
Dir:債務者iの状態(Riが格付r以下であるか否か)を示す確率変数
Vi:債務者iの格付推移後のエクスポージャーの価値
Vir:債務者iが格付rのときのエクスポージャーの価値
である。
z:リスクファクター
ai:企業価値xiのzへの依存度合を表す定数
ζi:債務者iの企業価値xiのうち、zで表現されない要因
例えば、モデルを拡張してマルチファクターの場合やCorr(ζi、ζj)=0と限らないような場合、特にν(z)、ν'(z)の計算が難しくなるが、二項分布で表現可能になることで計算が容易になる。より具体的に説明すると、DM方式における非特許文献1の補論4、5にあるような計算を、MTM方式について同様に多項分布のまま行おうとすると難しいが、二項分布の足し合わせで表現することにより容易になる。
また、本実施形態によれば、グラニュラリティ調整法をMTM方式へ適用することができる。グラニュラリティ調整法による計算では、極限損失分布(与信集中がない前提)のときに無視できるようになる項とそうでない項とに分けることができ、与信集中の影響把握の観点から有用である。
なお、モンテカルロ法で求められたVaRが得られる場合、このVaRを正式な値とし、解析的近似で求めたVaRがモンテカルロ法で求められたVaRと一致するように、下式のように補正比率cを掛けて個社リスク寄与度を補正するようにしてもよい。
c=VaRモンテカルロ/VaR解析的近似
債務者iの個社リスク寄与度=c・(解析的近似で求めた債務者iの個社リスク寄与度)
図6は、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図6に示されるように、情報処理装置1は、ハードウェア構成として、入力装置11と、表示装置12と、記録媒体ドライブ装置13と、ROM(Read Only Memory)15と、RAM(Random Access Memory)16と、CPU(Central Processing Unit)17と、インターフェース装置18と、HD(Hard Disk)19と、を含む。
図7は、情報処理装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。図7に示されるように、情報処理装置1は、ソフトウェア構成として、z算出部21と、pssr算出部22と、psir算出部23と、θir算出部24と、条件付確率算出部25と、wir算出部26と、条件付期待値算出部27と、条件付分散算出部28と、qα算出部29と、E[Vi]算出部30と、リスク寄与度算出部31と、ポートフォリオVaR算出部32と、を含む。
z算出部21は、パラメータである、信頼水準αを例えばRAM16等より取得し、取得した信頼水準αに対応するリスクファクターzのパーセント点を
z=N-1(1−α)
を用いて算出する。なお、パラメータは、情報処理装置1の操作者によって入力装置11等を介して入力され、RAM16等に格納されているものとしてもよいし、予めHD19等に記憶されているものとしてもよい。以下のパラメータにおいても同様である。
psir算出部23は、pssr算出部22で算出された図9に示されるような格付sから格付rかそれ以下へ推移する確率pssrに基づいて債務者iが格付rかそれ以下へ推移する確率psirを算出する。より具体的に説明すると、psir算出部23は、債務者iの現在の格付を後述する図17に示されるような債務者別の格付情報をより取得し、取得した格付情報に基づいて、該当する格付sから格付rかそれ以下へ推移する確率pssrを図9より取得し(例えば、図9の点線で囲まれた部分を取得し)、図10に示されるようなテーブル(例えば、図9の点線で囲まれた部分)に代入する。図10は、債務者iが格付rかそれ以下へ推移する確率psirを記憶するテーブルの一例を示す図である。
ここで、格付体系が複数ある場合、図8、図9に対応するテーブルが格付体系の数だけ存在することになる。このような場合、psir算出部23は、債務者ごとに対応する格付体系の図8、図9を参照して値を取得する。
θir算出部24は、psir算出部23で算出された図10に示されるような債務者iが格付rかそれ以下へ推移する確率psirをRAM16等より取得し、取得した確率psirに基づいて債務者iが格付r以下となる格付閾値θirを
θir=N-1(psir)
を用いて算出し、図11に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。図11は、債務者iが格付r以下となる格付閾値θirを記憶するテーブルの一例を示す図である。
なお、ここで、債務者単位に与えられる値aiは、図12に示される相関行列及び図13に示される債務者別の相関算出情報を用いて債務者単位に計算される値である(具体的な計算方法は、非特許文献1等に示されているため、本実施形態では詳細を省略する)。
図14は、リスクファクターzを固定したときの条件付で、債務者iが格付r以下となる確率psir(z)(リスクファクターzを固定したときの条件付確率)を記憶するテーブルの一例を示す図である。
また、条件付確率算出部25は、同様に、リスクファクターzを固定したときの条件付で、債務者iが格付r以下となる確率psir(z)の一次導関数psir'(z)を
図15は、リスクファクターzを固定したときの条件付で、債務者iが格付r以下となる確率の一次導関数psir'(z)(リスクファクターzを固定したときの条件付確率)を記憶するテーブルの一例を示す図である。
また、条件付確率算出部25は、同様に、リスクファクターzを固定したときの条件付で、債務者iが格付r以下となる確率psir(z)の二次導関数psir''(z)を、
図16は、リスクファクターzを固定したときの条件付で、債務者iが格付r以下となる確率の二次導関数psir''(z)(リスクファクターzを固定したときの条件付確率)を記憶するテーブルの一例を示す図である。
wir=Vir−Vi(r+1)
を用いて算出し、算出したwirを図18に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
図17は、債務者iの現在の格付及び格付rへ推移したときのエクスポージャー価値Virを記憶するテーブルの一例を示す図である。図18は、債務者iの隣接する格付間の価値の差wirを記憶するテーブルの一例を示す図である。
を用いて算出し、例えば、li(z)を図19に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
図19は、ポートフォリオ価値Vの条件付期待値l(z)やポートフォリオ価値Vの条件付分散等を記憶するテーブルの一例を示す図である。
また、条件付期待値算出部27は、同様に、ポートフォリオ価値Vの条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)及び債務者毎のポートフォリオ価値Vの条件付期待値li(z)の一次導関数li'(z)を
また、条件付期待値算出部27は、同様に、ポートフォリオ価値Vの条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)及び債務者毎のポートフォリオ価値Vの条件付期待値li(z)の二次導関数li''(z)を
を用いて算出し、例えばνi(z)を図19に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
また、条件付分散算出部28は、同様に、ポートフォリオ価値Vの条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)及びν'(z)の債務者毎の偏微分νi'(z)を
E[Vi]=ΣpirVir
r
を用いて算出し、算出したE[Vi]を図20に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
図20は、債務者別のエクスポージャー価値の期待値及び個社リスク寄与度等を記憶するテーブルの一例を示す図である。
債務者iのリスク寄与度=qαi−E[Vi]
を用いて算出し、算出した債務者iのリスク寄与度を図20に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
ポートフォリオVaR=qα−ΣE[Vi]=Σ債務者iのリスク寄与度
i i
を用いて算出し、算出した債務者iのリスク寄与度を図20に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
図21は、信頼水準αに対応するリスクファクターzのパーセント点を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS10において、z算出部21は、パラメータである、信頼水準αを例えばRAM16等より取得し、取得した信頼水準αに対応するリスクファクターzのパーセント点を
z=N-1(1−α)
を用いて算出する。
ステップS20において、pssr算出部22は、パラメータである、図8に示される格付推移行列(現在の格付sから格付rへ推移する確率psr)を、例えばRAM16等より取得し、取得した現在の格付sから格付rへ推移する確率psrに基づいて現在の格付sから格付rかそれ以下へ推移する確率pssrを求め、図9に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
ステップS21において、psir算出部23は、ステップS20で算出された図9に示されるような格付sから格付rかそれ以下へ推移する確率pssrに基づいて債務者iが格付rかそれ以下へ推移する確率psirを算出し、図10に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
ステップS22において、ir算出部24は、ステップS21で算出された図10に示されるような債務者iが格付rかそれ以下へ推移する確率psirをRAM16等より取得し、取得した確率psirに基づいて債務者iが格付r以下となる格付閾値θirを
θir=N-1(psir)
を用いて算出し、図11に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
ステップS30において、条件付確率算出部25は、パラメータである、債務者単位に与えられる値aiを例えばRAM16等より取得し、取得したaiと、z算出部21で算出された信頼水準αに対応するリスクファクターzのパーセント点と、θir算出部24で算出されたθirと、に基づいて、リスクファクターzを固定したときの条件付で、債務者iが格付r以下となる確率psir(z)を
ステップS40において、wir算出部26は、パラメータである、図17に示されるような債務者iの現在の格付及び格付rへ推移したときのエクスポージャー価値Virに基づいて、債務者iの隣接する格付間の価値の差wirを
wir=Vir−Vi(r+1)
を用いて算出し、算出したwirを図18に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
ステップS50において、条件付期待値算出部27は、図24の処理で算出された図18に示されるような債務者iの隣接する格付間の価値の差wirと、図23の処理で算出された図14に示されるようなリスクファクターzを固定したときの条件付で、債務者iが格付r以下となる確率psir(z)と、に基づいて、ポートフォリオ価値Vの条件付期待値l(z)及び債務者毎のポートフォリオ価値Vの条件付期待値li(z)を
また、条件付期待値算出部27は、同様に、ポートフォリオ価値Vの条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)及び債務者毎のポートフォリオ価値Vの条件付期待値li(z)の一次導関数li'(z)を
また、条件付期待値算出部27は、同様に、ポートフォリオ価値Vの条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)及び債務者毎のポートフォリオ価値Vの条件付期待値li(z)の二次導関数li''(z)を
また、条件付分散算出部28は、同様に、ポートフォリオ価値Vの条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)及びν'(z)の債務者毎の偏微分νi'(z)を
ここで、ステップS50の処理とステップS51の処理との順序は問わない。ステップS51がステップS50より先であってもよいし、後であってもよい。また、同時に実行されてもよい。
ステップS60において、E[Vi]算出部30は、パラメータである、図8に示される格付推移行列(現在の格付sから格付rへ推移する確率psr)を、例えばRAM16等より取得し、取得した現在の格付sから格付rへ推移する確率psrと、パラメータである、図17に示されるような債務者iの現在の格付及び格付rへ推移したときのエクスポージャー価値Virを、例えばRAM16等より取得し、取得した債務者iの現在の格付及び格付rへ推移したときのエクスポージャー価値Virと、に基づいて、債務者iのエクスポージャー価値の期待値E[Vi]を
E[Vi]=ΣpirVir
r
を用いて算出し、算出したE[Vi]を図20に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
ステップS70において、リスク寄与度算出部31は、図26の処理で算出され、図20に示されるようなテーブルに記憶されているE[Vi]と、図25の処理で算出され、図19に示されるようなテーブルに記憶されているqαiと、に基づいて、債務者iのリスク寄与度(個社リスク寄与度)を例えば、
債務者iのリスク寄与度=qαi−E[Vi]
を用いて算出し、算出した債務者iのリスク寄与度を図20に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
ステップS71において、ポートフォリオVaR算出部32は、ステップS70で算出され、図20に示されるようなテーブルに記憶されている債務者iのリスク寄与度に基づいて、ポートフォリオVaRを例えば、
ポートフォリオVaR=qα−ΣE[Vi]=Σ債務者iのリスク寄与度
i i
を用いて算出し、算出した債務者iのリスク寄与度を図20に示されるようなテーブルの該当する箇所に代入する。
はじめに、DM方式とMTM方式のそれぞれにおけるモンテカルロ法でのVaRの計算について説明する。
DM方式におけるモンテカルロ法によるシミュレーションを行う場合の式を以下に示す。
ここで、
L:ポートフォリオの損失額
Li:債務者iによる損失額
Di:債務者iの状態(デフォルト、非デフォルト)を示す確率変数
xi:債務者iの企業価値を示す確率変数
1{・}:定義関数
xi < θi:債務者iの企業価値xiがデフォルト閾値θiを下回ったか否か
LGDi:債務者iのエクスポージャーのデフォルト時損失率
EADi:債務者iのエクスポージャー額
Pi:債務者iのデフォルト率
N(・):標準正規分布の累積確率関数
N-1(・):N(・)の逆関数
である。
MTM方式におけるモンテカルロ法によるシミュレーションを行う場合の式を以下に示す。
ここで、
V:ポートフォリオの価値
Vi:債務者iの格付推移後のエクスポージャーの価値
Vir:債務者iが格付rのときのエクスポージャーの価値
Ri:債務者iの格付推移後の格付
Sir:債務者iの状態(Riがrであるか否か)を示す確率変数
xi:債務者iの企業価値を示す確率変数
pik:債務者iが格付kに推移する確率
psir:債務者iが格付r以下に推移する確率
N(・):標準正規分布の累積確率関数
N-1(・):N(・)の逆関数
である。なお、上述した式では、rが小さいほど低格付を示している。
式(5)に示すとおり、DM方式においては、情報処理装置は、確率変数xiに対応する乱数を試行回数分だけ生成し、Di→Li→Lの順に計算することで、確率分布とそのリスク指標(即ちVaR)を計算する。また、式(6)に示すとおり、MTM方式においては、情報処理装置は、確率変数xiに対応する乱数を試行回数分だけ生成し、Sir→Vi→Vの順に計算することで、確率分布とそのリスク指標(即ちVaR)を計算する。
ところで、情報処理装置は、モンテカルロ法では、式(6)に示すとおり、DM方式のLi=DiLGDiEADiの計算に対応して、MTM方式において、
Vi=ΣSirVir
r
を用いている。そこで、情報処理装置は、MTM方式の解析的近似においても、この式を用いて、上述したグラニュラリティ調整項を計算することになる。
ここで、l(z)=E[V|z]、ν(z)=Var[V|z]である。このVar[V|z]の計算は、より具体的には次式のように表される。
一方、本実施形態に係る情報処理装置では、隣接する格付間のエクスポージャー価値の差wirを用いて、ポートフォリオ価値Vのα分位点qαを算出する。このとき、情報処理装置は、Δqαを算出するために、式(3)等におけるE[V|z]や式(4)等におけるVar[V|z]の計算を行うが、この場合にも「(債務者数×格付数)の二乗」に比例する計算量が必要となる。しかしながら、本実施形態の図15、図16等を用いて説明したように、情報処理装置は、wir、psir(z)、ps´ir(z)の他、N-1(psir(z))等を「債務者数×格付数」分だけ計算し、相関ρijを「債務者数の二乗」分だけ計算した値をパラメータとしてメモリやキャッシュ等の記憶装置上に格納しておく。このことで、情報処理装置は、これらのパラメータが必要となる「(債務者数×格付数)の二乗」に比例する量の計算を実行する場合に、メモリ等の記憶装置からパラメータのデータを読み出して再利用することができる。そのため、計算効率が非常に高くなる。また、使用される頻度の高いデータは、情報処理装置がメモリよりも数段読み書きの速度が高速であるキャッシュに格納し続ける。そのため、これらのパラメータがキャッシュに格納され、特にCPU等のSIMD(Single Instruction Multiple Data)という機能を用いて演算を高速化したときに、メモリの読込速度がボトルネックとなることを回避し、CPU等のアイドル時間を小さくすることができる。つまり、MTM方式におけるVaRの解析的近似を求める場合に、隣接する格付間のエクスポージャー価値の差wirを用いることによって、計算効率を高くすることができるため、高速にMTM方式におけるVaRを算出することが可能となる。
さらに、Δqαi(z)は、より具体的には、次式によって表される。
以上、上述したように、本実施形態によれば、グラニュラリティ調整の計算に必要とされるポートフォリオ価値の条件付期待値l(z)、分散ν(z)及びこれらの導関数を、MTM方式の多項分布の場合について高速に計算できるようになる。また、結果として、ポートフォリオVaR(信頼水準αに応じたパーセント点qα)、個社のリスク寄与度も高速に計算することができる。
つまり、本実施形態によれば、MTM方式による債務者iの格付推移と損益額とを表す多項分布を二項分布の足し合わせで表現可能にすることで、MTM方式においても解析的近似でVaR等を高速に求めることを可能にすることができる。
なお、本実施形態の処理を、期待ショートフォール等のVaRに類似するリスク指標の算出等へ応用することもできる。
また、上述したli(z)、li'(z)、li''(z)、νi(z)、νi'(z)、qαiは、債務者毎に同じ計算パターンの繰り返しとなる。そのため、条件付期待値算出部27や、条件付分散算出部28、qα算出部29等は、CPU17等に実装されている、SIMD(Single Instruction Multiple Data)という機能(以下、SIMD機能という)を利用することにより、li(z)、li'(z)、li''(z)、νi(z)、νi'(z)、qαiを高速に算出することができる。
22 pssr算出部
23 psir算出部
24 θir算出部
25 条件付確率算出部
26 wir算出部
27 条件付期待値算出部
28 条件付分散算出部
29 qα算出部
30 E[Vi]算出部
31 リスク寄与度算出部
32 ポートフォリオVaR算出部
Claims (7)
- 各債務者iの現在格付sと各債務者iの格付rのときのエクスポージャー価値V ir とを含む債務者データと、現在格付sから格付kへ推移する確率を表す格付推移確率p sk と、現在格付sから格付r以下の格付へ推移する確率ps sr であって、前記格付推移確率p sk のうち現在格付sからの推移後の格付が格付r以下となるものの総和として算出される確率ps sr と、各債務者iについてのリスクファクターZへの依存度を表す定数a i とを記憶する記憶装置と、
信頼水準αに対応する前記リスクファクターZのパーセント点zを、標準正規分布の累積確率関数Nの逆関数であるN -1 を用いて、z=N -1 (1―α)により算出するz算出手段と、
各債務者iについて、前記債務者データに含まれる現在格付けsを前記記憶装置から読み出し、読み出した現在格付sに対応する前記確率ps sr を前記記憶装置から読み出して、債務者iが現在格付sから格付r以下の格付へ推移する確率ps ir を特定し、債務者iに対応付けて前記確率ps ir を前記記憶装置に記憶させ、更に、前記記憶装置に記憶されている前記確率ps ir を読み出して、債務者iの推移後の格付が格付r以下となるときの格付閾値θ ir を、標準正規分布の累積確率関数の逆関数であるN -1 を用いて、θ ir =N -1 (ps ir )により算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる格付閾値算出手段と、
各債務者iについて、前記記憶装置に記憶されている前記定数a i と、前記z算出手段で算出されたパーセント点zと、前記格付閾値算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶さてれている格付閾値θ ir とから、前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付での債務者iの推移後の格付が格付r以下となる条件付確率ps ir (z)を、標準正規分布の累積確率関数Nを用いて算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる条件付確率算出手段と、
各債務者iについて、前記債務者データに含まれている前記エクスポージャー価値V ir を前記記憶装置から読み出して、債務者iの隣接する格付間のエクスポージャー価値の差w ir を、w ir =V ir −V i(r+1) により算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させるw ir 算出手段と、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付での債務者iの格付推移後のエクスポージャー価値V i の期待値である債務者別条件付期待値l i (z)であって、債務者iの現在格付からの推移後の格付が格付rであるか否かを表す確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir とを乗算した値の全格付についての総和として定義される債務者別条件付期待値l i (z)を、確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir との代わりに、前記w ir 算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記エクスポージャー価値の差w ir と前記条件付確率算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記条件付確率ps ir (z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付期待値算出手段と、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの期待値である条件付期待値l(z)を、前記債務者別条件付期待値算出手段で算出した前記債務者別条件付期待値l i (z)を全債務者iについて加算することによって算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付期待値算出手段と、
前記債務者別条件付期待値l i (z)の一次導関数l' i (z)を、前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の一次導関数ps ir '(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させると共に、前記債務者別条件付期待値l i (z)の二次導関数l'' i (z)を前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の二次導関数ps ir ''(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付期待値導関数算出手段と、
前記条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)を、前記債務者別条件付期待値導関数算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記一次導関数l' i (z)を全債務者iについて加算することによって算出すると共に、前記条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)を、前記債務者別条件付期待値導関数算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記二次導関数l'' i (z)を全債務者iについて加算することによって算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付期待値導関数算出手段と、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの分散である条件付分散ν(z)の債務者ごとの偏微分である債務者別条件付分散ν i (z)を、確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir との代わりに、前記w ir 算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記エクスポージャー価値の差w ir と前記条件付確率算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記条件付確率ps ir (z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付分散算出手段と、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの分散である前記条件付分散ν(z)を、前記債務者別条件付分散ν i (z)を全債務者iについて加算した半分の値として算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付分散算出手段と、
前記債務者別条件付分散ν i (z)の一次導関数ν i '(z)を、前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の一次導関数ps ir '(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付分散導関数算出手段と、
前記条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)を、前記債務者別条件付分散導関数算出手段で算出した一次導関数ν i '(z)を全債務者iについて加算した半分の値として算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付分散導関数算出手段と、
前記条件付期待値導関数算出手段で算出された前記条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)及び前記条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)と、前記条件付分散算出手段で算出された前記条件付分散ν(z)及び前記条件付分散導関数算出手段で算出された前記条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)とから、各債務者iについてのグラニュラリティ調整項Δqα i (z)を算出し、前記記憶装置に記憶させると共に、前記記憶装置に記憶されている前記債務者iごとの条件付期待値l i (z)と前記グラニュラリティ調整項Δqα i (z)との和である債務者iごとのエクスポージャー価値V i の前記信頼水準αに対応するパーセント点qα i を算出し、前記記憶装置に記憶させるqα i 算出手段と、
各債務者iについて、前記債務者データに基づいて、債務者iの現在格付sに対応する前記格付推移確率p sk のうち格付rへ推移する確率p ir と、前記エクスポージャー価値V ir とを前記記憶装置から読み出して、前記確率p ir と前記エクスポージャー価値V ir とを乗算した値の全格付についての総和である債務者iのエクスポージャー価値の期待値E[V i ]を算出し、前記記憶装置に記憶させるE[V i ]算出手段と、
前記qα i 算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記パーセント点qα i と前記E[V i ]算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている期待値E[V i ]とから、ポートフォリオVaRを算出するポートフォリオVaR算出手段と、
を有する情報処理装置。 - 前記ポートフォリオVaR算出手段は、前記qα i 算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記パーセント点qα i を全債務者iについて加算することにより、ポートフォリオ価値Vの前記信頼水準αに対応するパーセント点qαを算出し、前記E[V i ]算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている期待値E[V i ]の全債務者iについての総和を、前記パーセント点qαから減算した値を、ポートフォリオVaRとして算出する請求項1記載の情報処理装置。
- 前記qα i 算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記パーセント点qα i から、前記E[V i ]算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記期待値E[V i ]を減算した値を債務者iのリスク寄与度として算出し、前記記憶装置に記憶させるリスク寄与度算出手段を更に有する請求項1記載の情報処理装置。
- 前記ポートフォリオVaR算出手段は、前記リスク寄与度算出手段で算出されて前記記憶装置に記憶されている前記債務者iのリスク寄与度を全債務者iについて加算した値を、ポートフォリオVaRとして算出する請求項3記載の情報処理装置。
- 前記条件付期待値算出手段は、CPUが提供する1回の命令で複数のデータに対する同種の計算を実行するためのSIMD機能を利用して、ポートフォリオ価値Vの条件付期待値l(z)を算出し、
前記条件付分散算出手段は、CPUが提供する1回の命令で複数のデータに対する同種の計算を実行するためのSIMD機能を利用して、ポートフォリオ価値Vの条件付分散ν(z)を算出する請求項1乃至4何れか1項記載の情報処理装置。 - 情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
信頼水準αに対応するリスクファクターZのパーセント点zを、標準正規分布の累積確率関数Nの逆関数であるN -1 を用いて、z=N -1 (1―α)により算出するz算出ステップと、
各債務者iについて、債務者データに含まれる現在格付けsを各債務者iの現在格付sと各債務者iの格付rのときのエクスポージャー価値V ir とを含む債務者データと、現在格付sから格付kへ推移する確率を表す格付推移確率p sk と、現在格付sから格付r以下の格付へ推移する確率ps sr であって、前記格付推移確率p sk のうち現在格付sからの推移後の格付が格付r以下となるものの総和として算出される確率ps sr と、各債務者iについてのリスクファクターZへの依存度を表す定数a i とを記憶する記憶装置から読み出し、読み出した現在格付sに対応する前記確率ps sr を前記記憶装置から読み出して、債務者iが現在格付sから格付r以下の格付へ推移する確率ps ir を特定し、債務者iに対応付けて前記確率ps ir を前記記憶装置に記憶させ、更に、前記記憶装置に記憶されている前記確率ps ir を読み出して、債務者iの推移後の格付が格付r以下となるときの格付閾値θ ir を、標準正規分布の累積確率関数の逆関数であるN -1 を用いて、θ ir =N -1 (ps ir )により算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる格付閾値算出ステップと、
各債務者iについて、前記記憶装置に記憶されている前記定数a i と、前記z算出ステップで算出されたパーセント点zと、前記格付閾値算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶さてれている格付閾値θ ir とから、前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付での債務者iの推移後の格付が格付r以下となる条件付確率ps ir (z)を、標準正規分布の累積確率関数Nを用いて算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる条件付確率算出ステップと、
各債務者iについて、前記債務者データに含まれている前記エクスポージャー価値V ir を前記記憶装置から読み出して、債務者iの隣接する格付間のエクスポージャー価値の差w ir を、w ir =V ir −V i(r+1) により算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させるw ir 算出ステップと、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付での債務者iの格付推移後のエクスポージャー価値V i の期待値である債務者別条件付期待値l i (z)であって、債務者iの現在格付からの推移後の格付が格付rであるか否かを表す確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir とを乗算した値の全格付についての総和として定義される債務者別条件付期待値l i (z)を、確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir との代わりに、前記w ir 算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記エクスポージャー価値の差w ir と前記条件付確率算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記条件付確率ps ir (z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付期待値算出ステップと、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの期待値である条件付期待値l(z)を、前記債務者別条件付期待値算出ステップで算出した前記債務者別条件付期待値l i (z)を全債務者iについて加算することによって算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付期待値算出ステップと、
前記債務者別条件付期待値l i (z)の一次導関数l' i (z)を、前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の一次導関数ps ir '(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させると共に、前記債務者別条件付期待値l i (z)の二次導関数l'' i (z)を前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の二次導関数ps ir ''(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付期待値導関数算出ステップと、
前記条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)を、前記債務者別条件付期待値導関数算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記一次導関数l' i (z)を全債務者iについて加算することによって算出すると共に、前記条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)を、前記債務者別条件付期待値導関数算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記二次導関数l'' i (z)を全債務者iについて加算することによって算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付期待値導関数算出ステップと、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの分散である条件付分散ν(z)の債務者ごとの偏微分である債務者別条件付分散ν i (z)を、確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir との代わりに、前記w ir 算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記エクスポージャー価値の差w ir と前記条件付確率算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記条件付確率ps ir (z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付分散算出ステップと、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの分散である前記条件付分散ν(z)を、前記債務者別条件付分散ν i (z)を全債務者iについて加算した半分の値として算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付分散算出ステップと、
前記債務者別条件付分散ν i (z)の一次導関数ν i '(z)を、前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の一次導関数ps ir '(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付分散導関数算出ステップと、
前記条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)を、前記債務者別条件付分散導関数算出ステップで算出した一次導関数ν i '(z)を全債務者iについて加算した半分の値として算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付分散導関数算出ステップと、
前記条件付期待値導関数算出ステップで算出された前記条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)及び前記条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)と、前記条件付分散算出ステップで算出された前記条件付分散ν(z)及び前記条件付分散導関数算出ステップで算出された前記条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)とから、各債務者iについてのグラニュラリティ調整項Δqα i (z)を算出し、前記記憶装置に記憶させると共に、前記記憶装置に記憶されている前記債務者iごとの条件付期待値l i (z)と前記グラニュラリティ調整項Δqα i (z)との和である債務者iごとのエクスポージャー価値V i の前記信頼水準αに対応するパーセント点qα i を算出し、前記記憶装置に記憶させるqα i 算出ステップと、
各債務者iについて、前記債務者データに基づいて、債務者iの現在格付sに対応する前記格付推移確率p sk のうち格付rへ推移する確率p ir と、前記エクスポージャー価値V ir とを前記記憶装置から読み出して、前記確率p ir と前記エクスポージャー価値V ir とを乗算した値の全格付についての総和である債務者iのエクスポージャー価値の期待値E[V i ]を算出し、前記記憶装置に記憶させるE[V i ]算出ステップと、
前記qα i 算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記パーセント点qα i と前記E[V i ]算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている期待値E[V i ]とから、ポートフォリオVaRを算出するポートフォリオVaR算出ステップと、
を含む情報処理方法。 - コンピュータに、
信頼水準αに対応するリスクファクターZのパーセント点zを、標準正規分布の累積確率関数Nの逆関数であるN -1 を用いて、z=N -1 (1―α)により算出するz算出ステップと、
各債務者iについて、債務者データに含まれる現在格付けsを各債務者iの現在格付sと各債務者iの格付rのときのエクスポージャー価値V ir とを含む債務者データと、現在格付sから格付kへ推移する確率を表す格付推移確率p sk と、現在格付sから格付r以下の格付へ推移する確率ps sr であって、前記格付推移確率p sk のうち現在格付sからの推移後の格付が格付r以下となるものの総和として算出される確率ps sr と、各債務者iについてのリスクファクターZへの依存度を表す定数a i とを記憶する記憶装置から読み出し、読み出した現在格付sに対応する前記確率ps sr を前記記憶装置から読み出して、債務者iが現在格付sから格付r以下の格付へ推移する確率ps ir を特定し、債務者iに対応付けて前記確率ps ir を前記記憶装置に記憶させ、更に、前記記憶装置に記憶されている前記確率ps ir を読み出して、債務者iの推移後の格付が格付r以下となるときの格付閾値θ ir を、標準正規分布の累積確率関数の逆関数であるN -1 を用いて、θ ir =N -1 (ps ir )により算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる格付閾値算出ステップと、
各債務者iについて、前記記憶装置に記憶されている前記定数a i と、前記z算出ステップで算出されたパーセント点zと、前記格付閾値算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶さてれている格付閾値θ ir とから、前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付での債務者iの推移後の格付が格付r以下となる条件付確率ps ir (z)を、標準正規分布の累積確率関数Nを用いて算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる条件付確率算出ステップと、
各債務者iについて、前記債務者データに含まれている前記エクスポージャー価値V ir を前記記憶装置から読み出して、債務者iの隣接する格付間のエクスポージャー価値の差w ir を、w ir =V ir −V i(r+1) により算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させるw ir 算出ステップと、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付での債務者iの格付推移後のエクスポージャー価値V i の期待値である債務者別条件付期待値l i (z)であって、債務者iの現在格付からの推移後の格付が格付rであるか否かを表す確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir とを乗算した値の全格付についての総和として定義される債務者別条件付期待値l i (z)を、確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir との代わりに、前記w ir 算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記エクスポージャー価値の差w ir と前記条件付確率算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記条件付確率ps ir (z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付期待値算出ステップと、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの期待値である条件付期待値l(z)を、前記債務者別条件付期待値算出ステップで算出した前記債務者別条件付期待値l i (z)を全債務者iについて加算することによって算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付期待値算出ステップと、
前記債務者別条件付期待値l i (z)の一次導関数l' i (z)を、前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の一次導関数ps ir '(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させると共に、前記債務者別条件付期待値l i (z)の二次導関数l'' i (z)を前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の二次導関数ps ir ''(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付期待値導関数算出ステップと、
前記条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)を、前記債務者別条件付期待値導関数算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記一次導関数l' i (z)を全債務者iについて加算することによって算出すると共に、前記条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)を、前記債務者別条件付期待値導関数算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記二次導関数l'' i (z)を全債務者iについて加算することによって算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付期待値導関数算出ステップと、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの分散である条件付分散ν(z)の債務者ごとの偏微分である債務者別条件付分散ν i (z)を、確率変数S ir と前記エクスポージャー価値V ir との代わりに、前記w ir 算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記エクスポージャー価値の差w ir と前記条件付確率算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記条件付確率ps ir (z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付分散算出ステップと、
前記リスクファクターZをzで固定したときの条件付でのポートフォリオ価値Vの分散である前記条件付分散ν(z)を、前記債務者別条件付分散ν i (z)を全債務者iについて加算した半分の値として算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付分散算出ステップと、
前記債務者別条件付分散ν i (z)の一次導関数ν i '(z)を、前記エクスポージャー価値の差w ir と前記前記条件付確率ps ir (z)の一次導関数ps ir '(z)とから算出し、債務者iに対応付けて前記記憶装置に記憶させる債務者別条件付分散導関数算出ステップと、
前記条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)を、前記債務者別条件付分散導関数算出ステップで算出した一次導関数ν i '(z)を全債務者iについて加算した半分の値として算出し、前記記憶装置に記憶させる条件付分散導関数算出ステップと、
前記条件付期待値導関数算出ステップで算出された前記条件付期待値l(z)の一次導関数l'(z)及び前記条件付期待値l(z)の二次導関数l''(z)と、前記条件付分散算出ステップで算出された前記条件付分散ν(z)及び前記条件付分散導関数算出ステップで算出された前記条件付分散ν(z)の一次導関数ν'(z)とから、各債務者iについてのグラニュラリティ調整項Δqα i (z)を算出し、前記記憶装置に記憶させると共に、前記記憶装置に記憶されている前記債務者iごとの条件付期待値l i (z)と前記グラニュラリティ調整項Δqα i (z)との和である債務者iごとのエクスポージャー価値V i の前記信頼水準αに対応するパーセント点qα i を算出し、前記記憶装置に記憶させるqα i 算出ステップと、
各債務者iについて、前記債務者データに基づいて、債務者iの現在格付sに対応する前記格付推移確率p sk のうち格付rへ推移する確率p ir と、前記エクスポージャー価値V ir とを前記記憶装置から読み出して、前記確率p ir と前記エクスポージャー価値V ir とを乗算した値の全格付についての総和である債務者iのエクスポージャー価値の期待値E[V i ]を算出し、前記記憶装置に記憶させるE[V i ]算出ステップと、
前記qα i 算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている前記パーセント点qα i と前記E[V i ]算出ステップで算出されて前記記憶装置に記憶されている期待値E[V i ]とから、ポートフォリオVaRを算出するポートフォリオVaR算出ステップと、
を実行させるプログラム。
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