JP4620833B2 - 香気徐放性に優れた木質粉体及びそれを含有する樹脂成形体 - Google Patents

香気徐放性に優れた木質粉体及びそれを含有する樹脂成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、香気徐放性に優れた木質粉体及びそれを用いた樹脂成形体に関するもので、より詳細には、木粉が有する香気が、木粉と樹脂との混練後にも保持されると共に、木粉配合樹脂成形体から徐々に放出されるような木質粉体及び木質粉体配合樹脂成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木粉を高充填した塩化ビニル系樹脂組成物は古くから種々提案されている。
例えば、特公昭62−41612号公報には、低酢酸ビニル含有量の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、液状可塑剤、高酢酸ビニル含有量の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、木粉及び安定剤よりなる混合物を押出法によってシート状に成形し、扁平状に延伸された気泡を内蔵せしめてなる木粉を高充填した塩化ビニル樹脂系組成物が記載されている。
【0003】
特開平9−20834号公報には、塩化ビニル成分を主体とし、エチレン成分を2〜20重量%含む塩化ビニル系共重合体100重量部と木質粉末10〜175重量部を含み、該木質粉末が、上記塩化ビニル系共重合体用安定剤及び/または熱分解型発泡剤と予め予備混合されたものであることを特徴とする発泡用樹脂組成物が記載されている。
【0004】
特開平10−182991号公報には、(A)塩化ビニル系樹脂100重量部、(B)メチルメタクリレート単位を60重量%以上含有し、共重合体のガラス転移点が50〜90℃で、かつ比粘度が1.5〜4.0であるメチルメタクリレート系共重合体7〜30重量部、(C)熱分解型発泡剤0.1〜3.0重量部、及び(D)平均粒径50〜500μmの木粉5〜150重量部を配合して成る塩化ビニル系樹脂組成物が記載されている。
【0005】
また、塩化ビニル系樹脂以外の熱可塑性樹脂に木粉を配合した例としては、特開平9−40878号公報に記載された熱可塑性樹脂組成物が知られており、スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂20〜95重量%及び木粉5〜80重量%の合計100重量部に対して、少なくとも1種の官能基を有する平均分子量300〜10000の化合物または重合体1〜40重量部を配合したものが用いられている。
【0006】
一方、香気成分を合成樹脂に配合する手段として、香気成分をそのまま、或いはマイクロカプセル化して、樹脂に配合することや、香気成分をゼオライトやクリストバライトなどの多孔性無機担体に吸着させたものやサイクロデキストリンに包接させたものを樹脂に配合することも広く行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱可塑性樹脂に木粉を配合する従来の技術は、樹脂成形体の表面に木材に似た外観特性や風合い乃至感触を付与することを目的としたものであり、樹脂に特有の香気を付与するまでには至っていない。
実際に、香りの強いヒバ、ヒノキ、スギ材等の木粉を樹脂に混練し、成形すると、木材に含まれる香気成分は、樹脂の成形温度に比して揮発温度の低い成分を多く含んでいるため、容易に揮発して、香気成分が失われてしまう。
【0008】
一方、木材等の香気成分を直接樹脂に配合する場合には、やはり加熱成形時に香気成分の揮発が生じ、またマイクロカプセル化したものを配合した場合にも、加熱混練時にカプセル壁が破壊されて、成分が揮発により失われるのである。
更に、多孔性無機担体に担持させ或いはデキストリンに包接させたものでも、加熱により吸着力が低下するため、香気成分の揮発による消失は避けられない。
【0009】
従って、本発明の目的は、樹脂の混練成形の際も香気成分の揮発による損失が防止されると共に、成形後の樹脂成形体からの香気成分の放出が徐々に行われる木質粉体を提供するにある。
本発明の他の目的は、樹脂に配合したとき、上記の香気徐放性に加えて、木材に似た外観特性、風合い及び感触を付与することのできる木質粉体及びそれを用いた樹脂成形体を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、香気成分を有する木粉をコアとし、セルロース誘導体の香気徐放性表面処理膜をシェルとした木質粉体であって、セルロース誘導体がセルロースエーテル誘導体であり、且つ、当該セルロースエーテル誘導体が、木粉コア100重量部当たり1乃至5重量部の量で存在する木質粉体100重量部に対して、熱可塑性樹脂15乃至600重量部を含有してなる樹脂組成物を成形してなることを特徴とする樹脂成形体、並びに香気成分を有する木粉をコアとし、セルロース誘導体の香気徐放性表面処理膜をシェルとした木質粉体であって、セルロース誘導体がセルロースエステル誘導体であり、且つ、当該セルロースエステル誘導体が、木粉コア100重量部当たり1乃至3重量部の量で存在する木質粉体100重量部に対して、熱可塑性樹脂15乃至600重量部を含有してなる樹脂組成物を成形してなることを特徴とする樹脂成形体が提供される。
上記木質粉体においては、木粉がヒバ、ヒノキ、或いはスギ材であることが好ましい。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、エチレン系重合体或いはスチレン系重合体であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
[作用]
本発明の木質粉体は、香気成分を有する木粉を、セルロース誘導体で表面処理し、表面に香気徐放性の被膜を形成させたことが特徴であり、これにより樹脂との混練成形時における香気成分の揮散を防止し、樹脂成形体に香気成分の徐放性を付与することができる。
【0012】
後述する例を参照されたい。
ヒバの木粉100重量部を、ABS樹脂40重量部或いはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)40重量部に配合して、溶融混練、成形を行った樹脂成形体では、成形1日後の香りの強さが非常に弱い或いは弱いであり、成形15日後には全て非常に弱いになる(後述する比較例1及び2参照)のに対して、本発明に従い、ヒバの木粉をセルロース誘導体で表面処理したものでは、上記と同様に樹脂に配合して、溶融混練、成形を行った場合、この樹脂成形体では、成形1日後の香りの強さが非常に強い乃至普通であり、成形30日後にも尚強い乃至普通を維持するのであって(後述する実施例1乃至8参照)、樹脂との混練、成形時に香気成分の揮散がなく、しかも香気成分の徐放性に優れているという事実が明らかとなる。
上記官能試験の結果は、ガスクロマトグラフィー等で測定した香気成分の分析値ともよく対応しており、ヒバの木粉をセルロース誘導体で表面処理したものでは、樹脂に配合して、溶融混練、成形を行った樹脂成形体では、成形15日後に発散される香気成分の濃度が、未処理のものを配合したものに比して、2乃至2.7倍に達することも確認されている。
【0013】
一般に、揮発性成分の揮散を防止するため、これを何らかの材料で表面処理することはよく行われている。
本発明では、この表面処理剤としてセルロース誘導体を選択し、これを香気成分を有する木粉に対して、香気徐放性表面処理膜として組み合わせたことが特徴である。
セルロース誘導体は、分子鎖内に多数の水酸基を有し、従って、形成されるセルロース誘導体の被覆では分子鎖間に水素結合が形成され、香気成分の透過に対して強いバリアー性を示す。
また、セルロース誘導体は、上記の水素結合の故に高融点乃至難溶融性であり、そのため、樹脂に配合し、溶融混練した場合にも、表面処理膜が溶融することなく、固体の被膜の状態に保持されるという利点がある。
このため、本発明の木質粉体では、木粉中の香気成分が、樹脂の溶融混練及び成形中に外部に逸散するという不都合が解消されるものである。
【0014】
本発明においては、上記セルロース誘導体を、香気徐放性表面処理膜として施すことも香気徐放性の点で重要である。即ち、この表面処理膜の厚みがあまり大きすぎる場合には、香気成分が表面処理膜内に閉じ込められる結果として、香気成分の徐放性が得られない。
【0015】
香気成分の徐放性を達成するための被覆量は、セルロース誘導体の種類によっても相違するが、具体的には、セルロースエーテル誘導体では前記木粉コア100重量部当たり1乃至5重量部の量で存在し、セルロースエステル誘導体では前記木粉コア100重量部当たり1乃至3重量部の量で存在するのが好ましい。
セルロース誘導体の被覆量が上記範囲を下回ると、樹脂の溶融混練及び成形時に木粉中の香気成分が逸散する傾向があるので好ましくなく、セルロース誘導体の被覆量が上記範囲を上回ると、木粉中の香気成分が被覆内に閉じ込められ、香気成分の徐放性が得られないのでやはり好ましくない。
【0016】
本発明において、木粉としては香気成分を有するものは全て使用できるが、代表的なものとして、ヒバ、ヒノキ、スギを挙げることができる。
【0017】
本発明において、表面処理膜の形成は、乾燥された木粉にセルロース誘導体の溶液を攪拌下に添加し、溶媒を蒸発させることにより得られるので、処理操作が簡単であり、処理コストも低くて済むという利点がある。
【0018】
本発明によれば、上記木質粉体100重量部に対して熱可塑性樹脂を15乃至600重量部、特に45乃至250重量部配合し、この樹脂組成物を成形することにより、香気成分の徐放性を有する樹脂成形体を製造することができる。
この樹脂成形体では、多量の木質粉体を含有しているため、優れた香気性を有すると共に、木材に似た外観、風合い、感触が得られるという利点をも有している。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、エチレン系重合体或いはスチレン系重合体であることが好ましい。
【0019】
[木質粉体]
コアとなる木粉としては、香気成分を含有する木材の粉末は何れも使用可能であり、これに限定されないが、例えばヒバ、ヒノキ、スギなどが有利に使用される。木粉の粒度は、特に制限されないが、或る程度の大きさを有することが香気成分の徐放性の点で有利であり、一般に10乃至2000μm、特に50乃至500μmの粒径を有することが好ましい。
【0020】
木粉としては、新材を使用することもできるし、間伐材或いは廃材を用いることもでき、また、製材の際副生する鋸屑、鉋屑等もボールミル粉砕等で粉末化して使用できる。
【0021】
用いる木粉は、乾燥されているべきであり、一般に含有水分率が30重量%以下、特に15重量%以下であることが望ましい。
水分量が多いと、樹脂と溶融混練する際に水蒸気による発泡の問題や被覆の破れなどの問題を発生するので好ましくない。
【0022】
表面処理に用いるセルロース誘導体としては、セルロースエーテル誘導体やセルロースエステル誘導体などの溶媒に可溶な誘導体が特に適している。
セルロースエーテル誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど挙げられ、セルロースエステル誘導体としては、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースなどが挙げられる。
【0023】
上記セルロース誘導体の内、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどは水溶性であり、水溶液の形で木粉の表面処理に用いることができる。
また、その他の誘導体も、アセトン、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミドなどの極性有機溶媒に可溶であり、有機溶媒溶液の形で木粉の表面処理に用いることができる。
【0024】
本発明において、木粉コアへの表面処理膜の形成は、乾燥された木粉にセルロース誘導体の溶液を攪拌下に添加し、溶媒を蒸発させることにより行われる。
この表面処理は、香気成分の徐放性が得られるように行うべきであり、処理に用いるセルロース誘導体の量は、セルロースエーテル誘導体では前記木粉コア100重量部当たり1乃至5重量部の量で存在し、セルロースエステル誘導体では前記木粉コア100重量部当たり1乃至3重量部の量で存在するのがよい。
【0025】
木粉の表面処理に用いる溶液の濃度は、均一に薄膜を形成させるという見地からは、或る程度稀薄な溶液であることが好ましいが、あまりにも希薄である場合には溶剤の乾燥に時間を必要とするので、一般に0.5乃至5重量%程度の濃度の溶液であることが好ましい。
【0026】
[樹脂成形体]
本発明では、木質粉体を配合する樹脂として、熱可塑性樹脂を用いる。例えば、メラミン樹脂や、尿素樹脂などの熱硬化性樹脂を用いたのでは、香気成分を樹脂内に閉じ込めてしまうため、香気成分の徐放性を達成することができない。
【0027】
また、用いる熱可塑性樹脂は、比較的低い温度で熱成形可能なものが溶融混練及び成形時における香気成分の逸散を防止するために好適であり、また香気成分の徐放性の点では香気成分に対して或る程度の透過性を有していることが好適である。
熱可塑性樹脂の熱成形温度は、一般に90乃至220℃、特に120乃至180℃の範囲にあることが好ましい。
【0028】
これらの要求を満足する樹脂として、エチレン系重合体やスチレン系重合体を挙げることができる。
【0029】
エチレン系重合体としては、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LULDPE)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋エチレン共重合体(アイオノマー)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
これらのエチレン系重合体のメルトフローレート(JIS K7210)は、1乃至100g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0030】
一方、スチレン系重合体としては、ポリスチレン(PS)をアクリロニトリル(AN)で共重合変性したAS樹脂、AS樹脂中にポリブタジエンのようなゴムを分散させたABS樹脂、ポリブタジエンに代えてエチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)を用いたA/EPDM/S樹脂、アクリル系ゴムを用いたASA樹脂などが挙げられる。
これらのスチレン系重合体のメルトフローレート(JIS K7210)は、1乃至70g/10分の範囲にあることが望ましい。
【0031】
本発明の目的に好適な熱可塑性樹脂として、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合体(ABS)を挙げることができる。ABS樹脂は、それ自体成形性、耐衝撃性、剛性、引張強度、光沢等の諸特性に優れた汎用樹脂であると共に、木粉高充填発泡樹脂成形体の用途に特に適している。
ABS樹脂は、AN含有量が一般に20乃至40重量%、特に25乃至35重量%、及びポリブタジエンの含有量は、一般に5乃至70重量%、特に10乃至30重量%の範囲にあるのものが入手容易である。
AS樹脂では、AN含有量の増大に伴って、耐薬品性が向上し、他に剛性、引張強度、荷重撓み温度、表面硬度、バリアー性、耐光性が向上し、逆に流動性、熱安定性が低下する。したがって、要求される特性に応じて、所定のAN含有量のものを選択し、用いることができる。
このABS樹脂においては、AS樹脂の連続相中にポリブタジエンの粒子が分散層として分散した構造を有し、粒子径は微細であって、一般に0.1乃至0.9μmの範囲にある。
ABS樹脂のグレードには、光沢グレード、良流動グレード、押出グレード、超耐熱グレード、ブローグレードなどの各種のものが知られており、目的に応じてこれらのグレードのものを選択使用することができる。
一般に、メルトフローレート(JIS K7210)は1〜70g/10分の範囲にあるものが使用される。
【0032】
本発明によれば、木質粉体100重量部に対して、熱可塑性樹脂15乃至600重量部、特に45乃至250重量部配合する。
熱可塑性樹脂の配合量が上記範囲を下回ると樹脂成形品の強度が低下したり、外観的特性が低下するので好ましくなく、一方熱可塑性樹脂の配合量が上記範囲を上回ると香気性が不十分であり、また木材調の外観が失われるので好ましくない。
【0033】
本発明の樹脂組成物には、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂乃至ゴム、発泡剤、アクリル系加工助剤等の公知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
【0034】
本発明によれば、木質粉体及び熱可塑性樹脂、或いは更に各種配合剤分を配合し、この樹脂組成物を溶融成形することにより、各種成形体を製造する。
樹脂組成物の調製は、それ自体公知の手段、例えばドライブレンドやメルトブレンド方式で行うことができる。
例えば、各成分の混合を、ブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いてドライブレンドで行うこともできるし、一軸或いは二軸の押出機やバンバリーミキサー、ニーダー等を用いてメルトブレンドで行うことができる。
配合の順序にも特に制限はなく、全成分を同時にブレンドしてもよく、また成分を多段階にブレンドすることもできる。
【0035】
一般に、溶融成形は押出機を用いて行うのが、操作が簡単であるため好ましい。押出成形に当たっては、各成分をドライブレンドし、押出機のホッパーにこれを供給する。押出機としては、単軸或いは二軸のスクリューを備えたそれ自体公知の押出機が使用される。樹脂組成物は押出機中で機械的に溶融混練され、ダイを経て空気中へ押し出されることにより、樹脂成形体となる。この押出成形では、各成分の混練及び押出が一台の押出機で行われ、操作が簡単であると共に生産性も高いという利点を有する。
ダイから押出成形される成形体は、必要により、これをサイジングダイを通すことにより、寸法及び形状を安定化させることができる。
【0036】
本発明の溶融押出成形では、溶融混練時の樹脂の温度(シリンダー温度)は、樹脂の種類や配合比によっても相違するが、一般的にいって90乃至220℃、特に120乃至180℃の範囲にあるのがよい。
【0037】
成形用ダイとしては、成形すべき成形品の形状に合わせて任意の成形用ダイを用いることができ、例えばやシートやパネルの成形の場合には、Tダイが使用され、異形断面成形品の場合には、対応する断面形状の異形断面ダイが使用される。勿論、リングダイを用いて、パイプ状の発泡成形品を製造することもできる。
【0038】
本発明による樹脂組成物は、それ単独で樹脂成形体の製造に用いられる他、他の樹脂乃至樹脂組成物との組合せで、同時押出等による積層体の製造にも用いることができる。
例えば、通常の樹脂からなる芯材の表面に、木質粉体を配合した樹脂組成物の被覆層を設け、香気性のある樹脂成形体とすることもできる。
芯材の樹脂は、本発明の木質粉体配合樹脂のそれと同種のものであることが最も好ましいが、木質粉体配合樹脂に対して熱接着性を示す樹脂であれば、同種の樹脂以外の熱可塑性樹脂も勿論使用可能である。
上記の積層成形体は、芯材となる樹脂組成物を溶融混練する押出機と、木質粉体配合樹脂被覆層となる樹脂を溶融混練する押出機と、これらの溶融樹脂流を積層するための多重多層ダイとを用い、両溶融樹脂を共押出することにより製造できる。
【0039】
本発明による樹脂成形体及び積層体は、上記特性を利用して、種々の建材、例えば床材乃至床仕上げ材、壁材乃至壁仕上げ材、天井材乃至天井仕上げ材、閾い、窓枠、サッシュ等、家具などの構造材乃至パネル材、車両用内装材、OA機器や家電製品の外装材乃至ハウジングなどの分野に有用である。
【0040】
【実施例】
本発明を次の実施例で更に説明する。次の実施例は、説明のためのものであり、いかなる意味においても本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
[木質粉体の調製]
木粉としては、(1)香りが強く、粒径が0.4mmのヒバ木粉及び(2)香りが弱い、粒径が0.4mmのベイツガ木粉を用いた。
表面処理剤としては、下記のものを使用した。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 松本油脂(社)製
酢酸セルロース 松本油脂(社)製
コーンスターチ(デンプン) 日本コーンスターチ(社)製
TEOS(テトラエチルシリケート) 和光純薬(社)製
ヒバ油含有エマルジョン(マイクロカプセルタイプ) キセイテック(社)製
除湿乾燥機にて含水率1%未満に乾燥させた木粉をヘンシェルミキサーで撹拌しながら、上記の表面処理剤を表1に示す量で添加した。
【0042】
樹脂及び配合剤として、下記のものを用いた。
ABS樹脂 日本A&L(社)製
LDPE 三井化学(社)製
EVA(VA14%) 三井デュポン(社)製
ステアリン酸亜鉛 水沢化学(社)製
木質粉体と上記樹脂及び配合剤とを表1に示す割合で、常温にてドライブレンド(10分)し、押出機に供給して溶融混練し、ダイから押し出して、シート状の成形体に溶融成形した。
シリンダー温度は100〜180℃で、ダイ温度は150℃で、スクリューのL/Dは25であった。
【0043】
測定評価は次のように行った。
[香気成分]
ガスクロマトグラフィー(GC)及び質量分析(MS)で測定した比較例1のヒバ油本来の香気成分のピーク面積の和を100として、成形15日後の樹脂成形品に含まれる香気成分の相対値を、下記式から求めた。
Figure 0004620833
[ヒノキチオールの比較]
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定したピーク面積からg当たりのピーク面積を求め、比較例1のピーク面積/gを100として相対値を求めた。
[香りの強さ]
各樹脂成形品について、成形1日後、15日後、30日後の香りの強さを官能試験で測定し、下記の基準で示した。
0:なし 1:非常に弱い 2:弱い 3:普通 4:強い
5:非常に強い
【0044】
実施例1〜5及び比較例6
ヒドロキシプロピルメチルセルロース1.5%水溶液を調製し、表1に示す量で木粉に添加し、水分を蒸発させて木質粉体を調製した。
得られた木質粉体と樹脂及び滑剤とを表1に示す割合でブレンドし、樹脂成形品を製造した。
得られた結果を表2に示す。
【0045】
実施例6〜8及び比較例7
酢酸セルロース4%アセトン溶液を調製し、表1に示す量で木粉に添加し、アセトンを揮発させて木質粉体を調製した。
得られた木質粉体と樹脂及び滑剤とを表1に示す割合でブレンドし、樹脂成形品を製造した。
得られた結果を表2に示す。
【0046】
比較例1〜2
未処理の木粉と樹脂及び滑剤とを表1に示す割合でブレンドし、樹脂成形品を製造した。
得られた結果を表2に示す。
【0047】
比較例3
デンプン2%水溶液を調製し、表1に示す量で木粉に添加し、水分を蒸発させて木質粉体を調製した。
得られた木質粉体と樹脂及び滑剤とを表1に示す割合でブレンドし、樹脂成形品を製造した。
得られた結果を表2に示す。
【0048】
比較例4
ゾルゲル法によりテトラエチルシリケート(TEOS)を使用して、木粉にSiO被膜を形成し、乾燥した。
得られた木質粉体と樹脂及び滑剤とを表1に示す割合でブレンドし、樹脂成形品を製造した。
得られた結果を表2に示す。
【0049】
比較例5
ベイツガ木粉にひば油エマルジョンを表1に示す量で添加し、水分を蒸発させて木質粉体を調製した。
得られた木質粉体と樹脂及び滑剤とを表1に示す割合でブレンドし、樹脂成形品を製造した。
得られた結果を表2に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004620833
【0051】
【表2】
Figure 0004620833
【0052】
木粉にセルロース誘導体の表面処理膜を形成したもの(実施例1〜8)では、未処理の木粉を配合したもの(比較例1〜2)に比して、樹脂成形体中に香気成分が有効に保持されており、成形後30日後にも尚香気性が保たれている。
木粉にデンプンの表面処理膜を形成したもの(比較例2)では、樹脂成形体中に香気成分が有効に保持されていなく、香気性も不十分であった。
木粉にシリカの表面処理膜を形成したもの(比較例4)では、未処理の木粉を配合したもの(比較例1〜2)に比して、樹脂成形体中に香気成分が有効に保持されているが、香気成分の徐放性は全くなかった。
木粉にセルロース誘導体の表面処理膜を過度に厚く形成したもの(比較例6〜7)では、未処理の木粉を配合したもの(比較例1〜2)に比して、樹脂成形体中に香気成分が有効に保持されているが、香気成分の徐放性は全くなかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、木粉の表面処理膜として、木粉に対して親和性のあるセルロース誘導体を選択することにより、木粉表面に強固に被膜を形成することができ、耐熱性を向上させることができる。
これにより、加熱成形時においても、香気成分が木粉内に有効に担持され、且つこの被膜が適度なガス透過性を有しているため、香気成分の徐放性に優れている。
本発明によればかくして、成形体に香り、抗菌性、防かび性、防虫性、防蟻性、防腐性などを付与することができる。
更に、木粉に上記被膜を形成することにより、樹脂との相溶性が向上し、樹脂に多量に配合し、また樹脂との混練作業性にも優れている。

Claims (4)

  1. 香気成分を有する木粉をコアとし、セルロース誘導体の香気徐放性表面処理膜をシェルとした木質粉体であって、セルロース誘導体がセルロースエーテル誘導体であり、且つ、当該セルロースエーテル誘導体が、木粉コア100重量部当たり1乃至5重量部の量で存在する木質粉体100重量部に対して、熱可塑性樹脂15乃至600重量部を含有してなる樹脂組成物を成形してなることを特徴とする樹脂成形体。
  2. 香気成分を有する木粉をコアとし、セルロース誘導体の香気徐放性表面処理膜をシェルとした木質粉体であって、セルロース誘導体がセルロースエステル誘導体であり、且つ、当該セルロースエステル誘導体が、木粉コア100重量部当たり1乃至3重量部の量で存在する木質粉体100重量部に対して、熱可塑性樹脂15乃至600重量部を含有してなる樹脂組成物を成形してなることを特徴とする樹脂成形体。
  3. 木粉がヒバ、ヒノキ、或いはスギ材であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成型体
  4. 熱可塑性樹脂がエチレン系重合体或いはスチレン系重合体であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の樹脂成形体。
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