JP4620216B2 - 波長可変半導体レーザ - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ出力光の発振波長を可変にできる波長可変半導体レーザに関し、特に、高出力特性を維持しつつ、波長可変範囲が大きく、各領域を独立に温度制御が行える波長可変半導体レーザに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
DFB(分布帰還型)半導体レーザやDBR(分布反射型)半導体レーザなどの単色性のよい半導体レーザは、注入する電流により発振波長を変化させることができる。
【0003】
特に、DBR半導体レーザは、電流を注入する領域を、発光領域(活性領域)や波長可変領域(位相調整領域、DBR(distributed bragg reflection;分布ブッラグ反射)領域)など、いくつかに分けて、多電極構造にすると、光出力と発振波長とを独立に制御できるなど、高性能な半導体レーザが製作できる。
【0004】
AlGaAs(アルミニュウム・ガリウム・ヒ素)系のDBR半導体レーザでは、波長変化は主として、波長可変領域への電流の注入によって発生したジュール熱によって、半導体レーザ内の導波路の温度が上昇し屈折率が変化することに起因している。
【0005】
通常、半導体レーザのボンディングには、ジャンクション・ダウンとジャンクション・アップとがある。ジャンクション・ダウンは、ダイボンディングするサブマウントやステム側に対して、素子構造を形成している部分(PN接合部分)をサブマウントまたはステム側にして、接着している。ジャンクション・アップは、PN接合部分を、サブマウントまたはステム側の逆にして接着している。
【0006】
ジャンクション・ダウンは、プロセス上やレーザ構造上での工夫が必要となるが、大きな電流(>100mA)を流して動作させるような半導体レーザでは、ジュール熱を放熱しやすく、また、導波路などとの光学的結合を行う場合などにも、半導体レーザの発光点の高さの精度が高いなどのメリットがある。このような半導体レーザを図6に示し説明する。
【0007】
図6において、1はサブマウント(基材)、2は波長可変半導体レーザチップで、活性領域21、位相調整領域22、DBR領域23、電極24〜27からなる。
【0008】
活性領域21は、電流が注入されることにより、レーザ光を発生する。位相調整領域22は、pn接合に垂直に電流を流したり、あるいは、薄膜ヒータに電流を流すことにより、領域の温度が制御され、この温度変化により、導波路の屈折率を変化させ、半導体レーザ内のレーザ光の位相を調整し、発振波長を変化させる。DBR領域23は、位相調整領域22を介して、活性領域21からレーザ光が入力され、pn接合に垂直に電流を流したり、あるいは、薄膜ヒータに電流を流すことにより、領域の温度が制御され、この温度変化により、導波路の屈折率を変化させ、回折格子の反射特性を調整し、発振波長を変化させる。
【0009】
電極24〜26は、それぞれ活性領域21、位相調整領域22、DBR領域23のほぼ全面に形成され、電極27は、電極24〜26が形成される面と反対側の面に、活性領域21、位相調整領域22、DBR領域23の全面に形成される。また、電極27は、図示しないワイヤにより、サブマウント1のコモン電極に接続する。
【0010】
このような波長可変半導体レーザは例えば特開平2−65189号公報等に記載されている。
【0011】
31〜33ははんだパターンで、それぞれ電極24〜26のサイズより大きく設計され、サブマウント1と電極24〜26とを接続する。
【0012】
このような装置の組立動作を以下に説明する。サブマウント1にはんだパターン31〜33をパターニングする。そして、波長可変半導体レーザチップ2を、ジャンクション・ダウンにより、はんだパターン31〜33にボンディングする。これにより、電極24〜26は、それぞれはんだパターン31〜33に接続される。そして、図示しないワイヤをワイヤボンディングにより、電極27とサブマウント1とを接続する。
【0013】
次に半導体レーザチップ2の動作を説明する。活性領域21に、はんだパターン31、電極24を介して、サブマウント1から電流を与える。これにより、活性領域21は、レーザ光を発生し、位相調整領域22を介して、DBR領域23に伝播する。
【0014】
そして、DBR領域23は、サブマウント1から、はんだパターン33、電極26を介して、電流が入力され、温度制御をする。DBR領域23の温度が変化すると導波路の屈折率が温度上昇に伴い増加して発振波長が長くなる。
【0015】
また、一般に、位相調整領域22は、単にレーザ出力光の発振波長を可変にするためには必須ではなく、位相連続で発振波長を可変にする場合に必要となる。位相調整領域22も、DBR領域23と同様に、サブマウント1から、はんだパターン32、電極25を介して、電流が入力され、温度制御する。位相調整領域22の温度が変化すると導波路の屈折率が温度上昇に伴い増加して発振波長が長くなる。
【0016】
このような半導体レーザでは、活性領域21で発生する熱を電極24、はんだパターン31を介して、サブマウント1に放熱を行っている。これにより、温度上昇に伴うレーザ出力光の減少を防止している。
【0017】
しかし、位相調整領域22、DBR領域23も、電極25,26、はんだパターン32,33を介して、サブマウント1に放熱が行われてしまう。これにより、位相調整領域22、DBR領域23では、導波路の温度の上昇が抑制され、ジャンプ・アップのボンディングに比べ、波長可変範囲が小さくなってしまうという問題点があった。
【0018】
そこで、特開平11−289131号公報に示されるように、位相調整領域22、DBR領域23の直下に溝部を設け、放熱を防止している。このような装置を図7,8に示し説明する。図7は側面図、図8は上面図である。ここで、図6と同一のものは同一符号を付し説明を省略する。
【0019】
図7,8において、11は溝部で、サブマウント1に設けられ、位相調整領域22、DBR領域23の下部(内部の導波路直下)に、導波路より広く間隙を形成する。34,35ははんだパターンで、それぞれ溝部12を挟んでサブマウント1に設けられ、それぞれ電極25,26に接続する。
【0020】
このような装置の組立動作を以下に説明する。サブマウント1に、はんだパターン31,34,35をパターニングする。そして、波長可変半導体レーザチップ2を、ジャンクション・ダウンにより、はんだパターン31,34,35にボンディングする。これにより、電極24〜26は、それぞれはんだパターン31,34,35に接続される。
【0021】
このように、位相調整領域22、DBR領域23の内部の導波路直下に溝部11を設けたので、導波路の周辺の放熱が防止できる。つまり、同じ発熱量での導波路の屈折率変化(温度変化)を大きくでき、高出力特性を維持しつつ、波長可変範囲を大きくできる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、溝部11を設け、位相調整領域22、DBR領域23の放熱を防止しているため、位相調整領域22の熱がDBR領域23へ熱伝導し、DBR領域23の熱が位相調整領域22へ熱伝導してしまう。この結果、一方の領域だけの温度制御を行おうとしても、他方の領域の温度に影響を及ぼし、一方の領域だけの温度制御ができず、レーザ光の制御が複雑になってしまうという問題点があった。
【0023】
そこで、本発明の目的は、高出力特性を維持しつつ、波長可変範囲が大きく、各領域を独立に温度制御が行える波長可変半導体レーザを実現することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明は、
レーザ出力光の発振波長を変化させる波長可変半導体レーザにおいて、
活性領域と、位相調整領域と、分布ブラッグ反射領域とを有する波長可変半導体レーザチップと、
この波長可変半導体レーザチップが取り付けられ、位相調整領域と分布ブラッグ反射領域の導波路直下に設ける溝部と、この溝部を位相調整領域側と分布ブラッグ反射領域側とに分離する隔壁とを有する基材と
を具備することを特徴とするものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1,2は本発明の第1の実施例を示した構成図で、図1は側面図、図2は上面図である。ここで、図6〜8と同一のものは同一符号を付し説明を省略する。
【0027】
図1,2において、12,13は溝部で、サブマウント1に設けられ、それぞれ位相調整領域22、DBR領域23の下部(内部の導波路直下)に、導波路より広く間隙を形成する。14は隔壁で、溝部12,13を位相調整領域22側とDBR領域23側とに分離し、位相調整領域22直下に設けられる。36ははんだパターンで、溝部12を挟んでサブマウント1に設けられると共に、隔壁14上に設けられ、電極25に接続する。
【0028】
このような装置の組立動作を以下に説明する。サブマウント1に、はんだパターン31,35,36をパターニングする。そして、波長可変半導体レーザチップ2を、ジャンクション・ダウンにより、はんだパターン31,35,36にボンディングする。これにより、電極24〜26は、それぞれはんだパターン31,36,35に接続される。
【0029】
次に放熱の動作について説明する。活性領域21の熱は、電極24、はんだパターン31を介して、サブマウント1に放熱される。そして、位相調整領域22の熱は、導波路直下に溝部12があるので、導波路の周囲の放熱が防止され、位相調整領域22からDBR領域23への熱は、隔壁14上に設けられたはんだパターン36を介して、隔壁14(サブマウント1)へ放熱される。また、DBR領域23の熱は、導波路直下に溝部13があるので、導波路の周囲の放熱が防止され、DBR領域23から位相調整領域22への熱は、隔壁14上に設けられたはんだパターン36を介して、隔壁14(サブマウント1)へ放熱される。
【0030】
このように、隔壁14、はんだパターン36により、溝部12,13を位相調整領域22側とDBR領域23側とに分離したので、位相調整領域22とDBR領域23間の熱的干渉を防止でき、各領域独立に温度制御を行うことができる。
すなわち、レーザ光の出力制御を容易に行うことができる。
【0031】
また、DBR領域23は、回折格子を有しているので、領域の温度分布が均一でないと、回折格子の光学的ピッチに分布が生じてしまい、発振波長の単一性に悪影響が生じてしまう。そこで、位相調整領域22直下に隔壁14、はんだパターン36を設けたので、DBR領域23における熱分布が均等に保たれ、発振波長の単一性を維持することができる。なお、位相調整領域22は、回折格子はなく、導波路のみなので、発振波長の単一性に温度不均一は影響しない。
【0032】
そして、図3に示すように、隔壁14上にはんだパターン36を設けずに、はんだパターン34のような構成にしてもよい。この場合、位相調整領域22と隔壁14との隙間は極小なので、位相調整領域22から隔壁14(サブマウント1)へ熱伝導するので、上述とほぼ同一の効果を得ることができる。つまり、位相調整領域22とDBR領域23間の熱的干渉を防止でき、各領域独立に温度制御を行うことができ、発振波長の単一性を維持できる。なお、隔壁14上に、はんだパターン36を設けた方が好適なのはいうまでもない。
【0033】
また、図4に示すように、溝12,13を設けずに、サブマウント1にはんだパターン31,35,36だけを設ける構成にしてもよい。この場合、位相調整領域22、DBR領域23と、はんだパターン36,35が形成されていない領域との隙間が極小なので、熱伝導が起こるが、はんだパターン32,33の場合より、熱伝導を防止できる。この結果、はんだパターン36により、位相調整領域22とDBR領域23間の熱的干渉を防止でき、各領域独立に温度制御を行うことができ、発振波長の単一性を維持できる。
【0034】
以上のような波長可変半導体レーザをSHGレーザ光源に使用する。SHGレーザ光源は、例えば特開平11−26861号公報等に記載されている。つまり、図5に示すように、波長可変半導体レーザチップ2が出力するレーザ光(赤外光)を非線形光学結晶であるSHG(second-harmonic-generation)素子3に入射し第2高調波光(青色光)を発生し、短波長コヒーレント光を得るものである。
【0035】
擬似位相整合のSHG素子3では、赤外光を青色光に変換できる波長範囲が、赤外光でサブ数nm〜数nmの範囲でしかない。そのため、SHGレーザ光源に使用できる半導体レーザには、青色光に変換できる効率のもっとも高い波長に発振波長を制御できることが要求される。また、SHG素子3の変換効率は、赤外光の出力に比例するので、波長可変半導体レーザチップ2の出力に依存する。
【0036】
従って、図1〜4に示す装置の波長可変半導体レーザを、SHGレーザ光源に用いれば、レーザ光の波長やパワーの制御が容易になるため、第2高調波光の制御が容易で、発振波長の制御に必要な広い波長可能範囲を確保できると共に、活性領域では高出力特性が向上し、高効率のSHGレーザ光源を実現できる。
【0037】
なお、基材として、サブマウント1を示したが、ステムでもよい。要するに、波長可変半導体レーザチップ2が搭載される基材であればよい。
【0038】
また、隔壁14を位相調整領域22直下に設ける構成を示したが、隔壁14を、位相調整領域22、DBR領域23の両方の直下に設ける構成やDBR領域23直下だけに設ける構成でもよい。この場合でも、各領域独立に温度制御ができる。
【0039】
そして、図4で示されるはんだパターン36は、コ字形でなくともよく、位相調整領域22の放熱を防止できる接触面積で、位相調整領域22とDBR領域23との間の熱伝導を防止する構成であればよい。
【0040】
また、図4に示されるはんだパターン36を、図8に示されるはんだパターン34の形状で形成し、はんだパターン35をコ字形に形成し、位相調整領域22とDBR領域23との間の熱伝導を防止する構成にしてもよい。つまり、DBR領域23に接続するはんだパターンが、DBR領域23の放熱を防止できる接触面積で、位相調整領域22とDBR領域23との間の熱伝導を防止する構成にしてもよい。
【0041】
さらに、波長可変半導体レーザチップ2を電流で制御する例を示したが、波長可変半導体レーザチップ2の電気特性は通常のダイオードなので、電流を変えれば電圧も変わる。従って、波長可変半導体レーザチップ2を電圧制御しているとも言える。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1によれば、隔壁により、溝部を位相調整領域側と分布ブラッグ反射領域側とに分離したので、位相調整領域と分布ブラッグ領域間の熱的干渉を防止でき、高出力特性を維持しつつ、波長可変範囲が大きく、各領域独立に温度制御を行うことができる。つまり、レーザ光の出力制御を容易に行うことができる。
【0043】
請求項2,3によれば、位相調整領域直下に隔壁を設けたので、分布ブラッグ反射領域における温度分布が均等に保たれ、発振波長の単一性を維持することができる。
【0046】
請求項4によれば、SHGレーザ光源に用いたので、レーザ光の波長やパワーの制御が容易になるため、第2高調波光の制御が容易で、発振波長の制御に必要な広い波長可能範囲を確保できると共に、活性領域では高出力特性が向上し、高効率のSHGレーザ光源を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示した側面構成図である。
【図2】本発明の第1の実施例を示した上面構成図である。
【図3】本発明の第2の実施例を示した上面構成図である。
【図4】本発明の第3の実施例を示した上面構成図である。
【図5】SHGレーザ光源の構成を示した図である。
【図6】従来の波長可変半導体レーザの構成を示した図である。
【図7】従来の他の波長可変半導体レーザを示した側面構成図である。
【図8】従来の他の波長可変半導体レーザを示した上面構成図である。
【符号の説明】
1 サブマウント
2 波長可変半導体レーザチップ
3 SHG素子
12,13 溝部
14 隔壁
21 活性領域
22 位相調整領域
23 DBR領域
31,35,36 はんだパターン
Claims (4)
- レーザ出力光の発振波長を変化させる波長可変半導体レーザにおいて、
活性領域と、位相調整領域と、分布ブラッグ反射領域とを有する波長可変半導体レーザチップと、
この波長可変半導体レーザチップが取り付けられ、位相調整領域と分布ブラッグ反射領域の導波路直下に設ける溝部と、この溝部を位相調整領域側と分布ブラッグ反射領域側とに分離する隔壁とを有する基材と
を具備することを特徴とする波長可変半導体レーザ。 - 隔壁は、位相調整領域直下に設けたことを特徴とする請求項1記載の波長可変半導体レーザ。
- 隔壁上に位相調整領域と熱的に接続するはんだパターンを設けたことを特徴とする請求項1または2記載の波長可変半導体レーザ。
- 波長可変半導体レーザチップが出力するレーザ光をSHG素子に入力し、第2高調波光を出力するSHGレーザ光源に用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の波長可変半導体レーザ。
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JPH11289131A (ja) * | 1997-09-02 | 1999-10-19 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 波長可変半導体レーザ及びそれを使用した光集積化デバイス、並びにそれらの製造方法 |
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- 2000-05-16 JP JP2000143261A patent/JP4620216B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11289131A (ja) * | 1997-09-02 | 1999-10-19 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 波長可変半導体レーザ及びそれを使用した光集積化デバイス、並びにそれらの製造方法 |
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