JP4619686B2 - 開放型循環式冷却水の処理方法及びその装置 - Google Patents

開放型循環式冷却水の処理方法及びその装置 Download PDF

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Description

本発明は、食品工場や製紙工場などの各種製造工場や、廃棄物処理施設などの各種施設において使用される開放型循環式冷却水系、或いは、水や中水道などの再利用水を補給水として使用する開放系の冷却塔などの冷却水システムにおいて、冷却水配管や熱交換器などのへのバイオフィルムやスライムの付着を防止する技術に関する。
図1に開放型循環式冷却水系の代表的な構成例を示す。冷却塔で冷却された冷却水は、一部がブロー水として排出され、残りが各種設備の熱交換器等に供給されて冷却媒体として用いられる。各種設備からの戻り水は、補給水を加えて冷却塔に戻される。冷却塔では、戻り水が充填材の上に供給されて充填材の表面上を流下する。冷却塔内では、ファンによって空気吸込口から排気口への空気流(通常は上昇流)が形成されており、この空気流と水との接触によって水が冷却される。冷却水系への補給水としては、一般に、市水や工業用水の他に、各種汚水の処理水である再利用水が使用される場合もある。
このような開放型の冷却水系では、水中に生息している微生物が、水系設備の壁面に付着・増殖して、細菌、糸状菌、藻類などから構成される粘性を有するバイオフィルムやスライム(以下、代表してスライムのみについて説明する)が生成する。このバイオフィルムやスライムは、配管の閉塞、熱交換器の効率低下、スライム付着部における機器設備の腐食などのスライム障害を起こす。更に、冷却水を食品工場や製紙工場などの各種製造工場で使用する場合には、剥離スライムが製品中に混入して品質が低下するために、生産性に重大な問題が起こる可能性もある。
従来、このような細菌、糸状菌、藻類などから構成されるスライムの発生を防止する手段として、戻り水配管に薬注装置を接続して(図1参照)、各種薬剤を冷却水系中に投入する方法が広く行われている。この目的で使用される薬剤としては、発生したスライムを構成する細菌を死滅させる殺菌剤や、スライムを構成する細菌などの発生を抑制する抗菌剤などを挙げることができる。抗菌剤は、一般に殺菌力が弱く、速効性に劣るが、細菌の発生を抑制することができる。
従来使用されている殺菌剤の具体例としては、次亜塩素酸ソーダ、塩素、サラシ粉、二酸化塩素などの塩素系殺菌剤や、次亜臭素酸ソーダ、過酸化水素、シアヌル酸などの有機塩素化合物、第4級アンモニウム塩などを挙げることができる。また、抗菌剤としては、銀、グルタルアルデヒド、イソチアネート系化合物、ハロシアノアセトアミド系化合物などが一般的である。
また、冷却水系に、スライム剥離剤と殺菌・静菌剤とを連続的に供給することによってスライムの付着を防止する方法が提案されている(特許文献1)。
更に、開放型循環式冷却水系において、冷却水の一部を、水より軽い浮上濾材が充填された濾過装置に通水して、冷却水中の懸濁物質を除去する方法が実用化されている。
特開2000−576号公報
しかしながら、上述の従来方法には次のような問題点があった。
(1) スライムの防止には、抗菌剤や殺菌剤を添加することは有効であるが、冷却水中の懸濁物質(SS)が増加すると、薬剤がSSに消費されてスライム防止効果が低下する。
(2) 冷却水のSSが冷却水系中で堆積すると、冷却水への有機物、即ちスライムを構成する微生物の栄養の供給源となりスライム障害が助長される。
(3) 一般的な濾過装置で冷却水を処理する方法では、冷却水中に溶存する有機物やスライムの核になる微細粒子のSSを除去することは難しい。
(4) 薬剤を使用する方法では、薬剤の使用量が多く、薬剤が混入した水がブロー水として排出されるので、環境への影響が懸念される。
本発明は、上記の従来方法の課題を解決し、開放型循環式冷却水系におけるスライムの抑制及び配管等の腐食の防止を安定且つ確実に行う方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明の一態様は、開放型循環式冷却水系の冷却水の処理方法であって、冷却水の一部又は全部を冷却水系から取り出して、生物膜濾過処理して懸濁物質及び/又は有機物を除去した後に再び冷却水系に返送することを特徴とする方法を提供する。
生物膜濾過とは、表面上に微生物を生息させてバイオフィルムを形成した生物担体を充填した生物膜濾過装置に被処理水を通水することにより、被処理水とバイオフィルムとを好気性条件で接触させて、微生物によって被処理水中の有機物を生物学的に酸化分解すると共に、微生物によって担体表面上に形成されたバイオフィルムによって被処理水中の懸濁物質を捕捉することによって、清澄な処理水を得る技術である。生物膜濾過では、生物膜であるバイオフィルムを介して濾過が行われるために、一般的な砂濾過などに比べてより清澄な処理水が得られる。本発明者らが知る限りにおいて、このような生物膜濾過を、開放型循環式冷却水系の冷却水の清浄化処理に用いた例はこれまでにはない。これは、従来より、冷却水系の清浄化処理は薬剤処理が主体であり、薬剤が混入されている冷却水は、生物膜濾過などの生物処理が常識的に困難であると思われていたためである。生物膜濾過などの生物処理において働く微生物は、薬剤に弱く、被処理水中に薬剤等の阻害物質が存在すると、死滅したりその活性が低下する。このため、冷却水系の清浄化に生物処理を用いることは不適当であると考えられていた。しかしながら、本発明者らが、冷却水系の清浄化処理に生物処理を用いるという着想に基づいて鋭意研究を行った結果、生物膜濾過処理によってスライムの原因物質である有機物を除去すると共に、スライムの破片などのSSやスライムの温床となるSSを除去することで、従来の薬剤の使用量を削減することが可能となり、その結果、微生物に対して大きな悪影響がない程度まで薬剤使用量を低減したり、或いは従来の薬剤よりもスライムの防止効果が劣っていても、微生物に対する悪影響が小さく、より安全性の高い薬剤を使用することが可能となることが分かった。これにより、冷却水の排出時の環境への影響をも低減することができるという更なる効果が得られることも判明した。
本発明において用いることのできる生物膜濾過装置の一具体例を図2に示す。図2に示す生物膜濾過装置は、生物担体による濾過層(生物膜濾過層)が内部に充填されている。図2に示す形態の装置においては、生物担体として、アンスラサイト、砂、セラミックス、活性炭などのような比重が水より重い担体を用いることができる。使用する担体としては、その表面に凹凸があるものが、生物膜、バイオフィルムの形成に好都合であるので好ましい。使用する担体の粒径は、0.5〜4mm程度が好ましい。粒径が0.5mm未満であると、一般に被処理水中に含まれる懸濁物質によって濾過層が閉塞しやすく、閉塞した場合には生物膜濾過性能を著しく阻害する。一方、粒径が4mmを超えると、一般に十分な濾過性能が得られない。生物膜濾過層に充填する生物担体の充填高さは0.5m〜2mとすることが好ましい。
被処理水を、濾過層の上方より濾過層上に供給して重力によって濾過層を通して流下させる一方で、空気を濾過層の下方より上昇流で通気する。生物担体の表面上にはバクテリアによってバイオフィルムが形成され、被処理水がこのバイオフィルムと接触することにより被処理水の好気処理が行われて被処理水中の有機物が生物学的に分解される。更に、バイオフィルムの粘性によって被処理水中の懸濁物質が付着捕捉される。これによって、被処理水の有機物及び懸濁物質の濾過が行われる。
濾過層へ供給する空気の量は、濾過処理水の溶存酸素(DO)濃度が数ppmとなるように調整することが好ましい。一般に冷却水中に含まれる有機物の量は少なく、有機物の処理に消費される空気中の酸素量が少なくて済むので、冷却塔で飽和酸素濃度となった被処理水が生物膜濾過装置に流入する場合には、濾過層へ外部から空気を供給する必要はない場合もある。
なお、生物担体として、発泡ポリスチレンや軽石などのような水よりも軽い担体を用いることもできる。この場合には、生物担体は、浮上生物膜濾過層として機能し、被処理水を濾過層の下方より通水し、空気を濾過層下部より通気する。しかしながら、一般に、水よりも重い担体を生物担体として使用する方が、経験的に清澄な処理水が得られ易いので好ましい。
本発明の一態様に係る方法は、上記に説明したような生物膜濾過装置を開放型循環式冷却水系に組み込んで、冷却水の一部又は全部を冷却水系から取り出して、生物膜濾過処理して懸濁物質及び/又は有機物を除去した後に再び冷却水系に返送することを特徴とする。生物膜濾過装置を開放型循環式冷却水系に組み込む形態としては、例えば、図3(a)に示すように、各種設備で使用され、冷却塔に戻される冷却水(戻り)の少なくとも一部を生物膜濾過装置に導入して、生物膜濾過処理した後の処理水を冷却塔に供給するようにしてもよく、或いは、図3(b)に示すように、冷却水(戻り)の全部を冷却塔に返送する一方で、冷却塔内の冷却水の少なくとも一部を生物膜濾過装置に誘導して、ここで生物膜濾過処理した後、処理水を冷却塔に返送するようにしてもよい。
生物膜濾過は、生物処理であるので、好適な処理温度は30〜35℃程度である。開放型循環式冷却水系の戻り冷却水の温度域は、一般にこの温度範囲とほぼ一致しているので、戻り冷却水をそのまま(冷却塔を通さずに)生物膜濾過装置に導入することが合理的である。
本発明において処理することのできる冷却水としては、各種製造プラントや焼却設備などの熱関連施設において使用される冷却水を挙げることができる。
冷却水系の冷却水中には、土砂や煤塵などの懸濁物質や、設置周辺環境からの汚染物や熱交換器の冷却剤の漏洩物であるエチレングリコールやプロピレングリコールなどの溶解性の有機物が混入する。これらの汚染物質、特にエチレングリコールのような有機性の漏洩物質が冷却水系内に混入すると、通常のスライム防止剤だけでは処理が困難な場合が多い。本発明においては、冷却水系の冷却水の少なくとも一部を生物膜濾過処理することによって、これらの混入物を有効に除去することができる。
本発明において、生物膜濾過装置に導入する冷却水は、冷却水系を循環する冷却水の全量であってもその一部であってもよい。冷却水の一部を処理する場合には、冷却水系を循環する冷却水量の5〜20%を生物膜濾過装置に導入することが好ましい。
なお、本発明方法において、生物膜濾過装置の後段に、浮上濾過装置、カートリッジフィルター、砂濾過装置などの一般の濾過装置を配置することができる。これによって、生物膜濾過装置の出口水中に残留するSSを、一般の濾過装置によって除去することができる。
本発明で使用する生物膜濾過装置においては、生物膜濾過作用を維持するために、生物濾過層を定期的に空気や水で洗浄することが好ましい。生物膜濾過層を定期的に洗浄することで、余分なバイオフィルムが系外に排出される。これにより過剰なバイオフィルムが充填層に存在することがないので、生物膜濾過装置からバイオフィルムやバクテリアが流出することを防止することができ、スライムの温床となるのを防止することができる。
濾過層の洗浄条件は、空気で洗浄を行う場合には、空気を0.1〜1m/分の空塔速度で濾過層に通ガスすることが好ましく、また水で洗浄を行う場合には、洗浄水を同じく0.1〜1m/分の空塔速度で濾過層に通液することが好ましい。水で洗浄を行う場合、洗浄水は水道水でも、或いは生物膜濾過処理水でもよく、更には冷却水系を循環する冷却水でもよい。
生物膜濾過層の洗浄時間は、10〜30分間とすることが好ましい。洗浄時間が短いと洗浄効果が低く、また洗浄時間が長いと、洗浄水或いは洗浄用空気が無駄になる。洗浄の頻度は、生物膜濾過層の差圧が50kPa以上となったら洗浄を行うようにすることが好ましい。或いは、一定時間毎、例えば通水時間6時間〜8時間毎に洗浄を行ってもよい。
生物膜濾過層の水洗浄の際に排出される洗浄排水は、開放型循環式冷却水系のブロー水で希釈して下水道に排出することができる。但し、洗浄排水は高濃度のSSを含んでいるので、一般に排水処理が必要である。排水処理法としては、一般的な排水処理や凝集沈殿処理などを行うことができる。また、下水道が整備されている地域では、排水を下水道に放流することができる。この場合、SS以外の要素については排水規制値を満足しているので、洗浄排水を規制SS値以下になるように冷却水系のブロー水で希釈して、下水道に放流することができる。洗浄排水を下水道に放流する場合には、SS濃度計で排出水のSS濃度を監視又は制御することができる。排出水のSS濃度が規制値を超える場合は、規制値以下となるように希釈用のブロー水量を調整する。
また、本発明の好ましい態様においては、上記に説明のように冷却水に対して生物膜濾過処理を行うと共に、冷却水に当該技術において用いられる各種水処理剤を添加することができる。本発明において使用することのできる冷却水に添加する水処理剤としては、スライム防止剤、スライム剥離剤、スライムコントロール剤、抗菌剤、殺菌剤、殺藻剤、金属腐食防止剤、スケール防止剤などを挙げることができる。
上記に説明した本発明方法によって、有機物が除去された生物膜濾過水が冷却水系に供給されることで、スライムの発生が抑制される。しかしながら、生物膜濾過によってスライムの発生を完全に抑えるまで有機物が除去できない場合には、生物膜濾過の処理水にスライム防止剤を添加して、スライムの発生をより完全に抑制することができる。例えば、従来公知の殺菌剤であるヒドラジン、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、次亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸イオンなどのハロゲン化物は、冷却塔の戻り水に対して数mg/L以下の量で用いる限りにおいては生物膜濾過に影響を与えないので、上記の目的のスライム防止剤として本発明において使用することができる。しかしながら、冷却塔戻り水に対して10mg/L以上の量を使用するのは、生物膜濾過に悪影響を与えるので好ましくない。更に、生物膜濾過によってバクテリアの餌となる有機物及びSSが除去されているので、従来のハロゲン系殺菌剤のような強力なスライム防止剤は必要ない。したがって、本発明において使用するスライム防止剤としては、生物膜濾過装置への流入水中に残留しても生物膜濾過装置で分解することのできる過酸化水素のような過酸化物系のスライム防止剤をより好ましく使用することができる。また、上述のハロゲン化物系殺菌剤を使用する場合には、必要最低限の濃度で使用することが必要である。
また、開放型循環式冷却水系の水処理において、配管などの金属材料の腐食防止の目的で、リン酸塩、重合リン酸塩、亜鉛などの金属塩が腐食防止剤として使用されているが、このような金属腐食防止剤を本発明方法において冷却水系に添加することができる。金属腐食防止剤としては、配管などの金属材料の腐食を防止する目的で、リン酸塩や重合リン酸塩、亜鉛などが使用されている。これらのリン酸塩は、生物膜濾過装置においても、生物処理時における生物体(菌体)の合成に必須であり、生物膜濾過の阻害にもならない。したがって、これらの金属腐食防止剤を添加することが好ましい。本発明において、冷却水系に金属腐食防止剤を添加する場合には、その使用濃度は冷却水に対して30〜300mg/Lとすることが好ましい。なお、金属腐食防止剤の主成分がリン酸塩である場合には、生物膜濾過装置での生物処理時における生物体の合成に必要な金属腐食防止剤の濃度は、この量の10分の1〜100分の1程度と少ないので、上記の量を冷却水系に加えれば、生物膜濾過装置での生物体の合成を十分に効率的に行うことができる。
本発明において上記水処理剤を冷却水に添加する場合には、処理剤は、冷却水を生物膜濾過装置で生物膜濾過処理した生物濾過処理水に加えることが好ましいが、冷却塔から各種設備に向けて送られる冷却水(冷却塔出口水)中に加えてもよい。また、上記水処理剤は、冷却水系において通常用いられる各種薬剤と共に冷却水戻り水中に加えることもできる。
本発明によれば、生物膜濾過装置によってスライムの発生が抑制されるために、金属の腐食も抑制される。特に、スライムが形成された母材の表面では孔食などの腐食が進行するが、本発明によればこのメカニズムによる腐食を抑制することができる。したがって、本発明によれば、冷却水系に加えるスライム防止剤と金属腐食防止剤の添加量を削減することができる。このように、金属腐食防止剤の添加量を削減することができるので、冷却塔からブローされるブロー水中のリン負荷量も低減することができる。
図4に、本発明に従って、開放型循環式冷却水系に生物膜濾過装置を組み込んだ形態の具体例を示す。生物膜濾過装置へ供給する被処理水としては、各種設備からの冷却水戻り水と、冷却塔下部の冷却水槽に貯留される冷却水とを合わせて供給することができる。冷却塔下部の冷却水槽に貯留される冷却水と、冷却塔からのブロー水は、冷却水槽内が完全に混合されている場合には水質が同じなので、いずれも被処理水として生物膜濾過装置に供給することができる。しかしながら、一般に、ブロー水の排出口としては、冷却水槽に堆積する汚泥などが排出されやすい場所が選ばれるので、これを生物膜濾過装置に被処理水として供給すると、懸濁物質の影響で濾過層の閉塞などの運転上の問題を引き起こす可能性がある。したがって、冷却水槽に貯留される冷却水を被処理水として生物膜濾過装置に供給することが好ましい。各種設備からの冷却水戻り水は、冷却塔で冷却する前であるので一般に30℃程度であり、生物処理を行うには適温であるので、冷却水戻り水の少なくとも一部を生物膜濾過装置を生物膜濾過装置に供給することが極めて好ましい。また、生物膜濾過装置に供給する戻り水には、各種薬剤や補給水を添加しないことが好ましい。生物膜濾過装置から排出される生物膜濾過処理水は、冷却塔下部の冷却水槽に供給することが好ましい。この際、途中の配管に水処理剤供給装置を配して、上記に説明したような各種水処理剤を生物膜濾過処理水に添加することもできる。
生物膜濾過装置から排出される生物膜濾過処理水は、冷却が必要であるので、一度冷却塔に送ってそこで冷却した後に各種設備に冷却水として供給することが好ましい。
本発明の各種態様は次の通りである。
1.開放型循環式冷却水系の冷却水の処理方法であって、冷却水の一部又は全部を冷却水系から取り出して、生物膜濾過処理して懸濁物質及び/又は有機物を除去した後に再び冷却水系に返送することを特徴とする方法。
2.更に冷却水に水処理剤を添加する上記第1項に記載の方法。
3.生物膜濾過処理を行った冷却水に水処理剤を添加して冷却水系に返送する上記第2項に記載の方法。
4.水処理剤が、スライム防止剤、殺菌剤、殺藻剤、金属腐食防止剤、スケール防止剤から選択される上記第2項又は第3項に記載の方法。
5.開放型循環式冷却水系における冷却水の戻り水の少なくとも一部を、生物膜濾過装置に導入して生物膜濾過処理した後に冷却塔に導入する上記第1項〜第4項のいずれかに記載の方法。
6.冷却塔と、冷却塔によって冷却された冷却水を各種設備に供給する冷却水配管と、各種設備で使用された冷却水の戻り水を冷却塔に返送する冷却水戻り水配管とを有する開放型循環式冷却水システムにおいて、生物担体を充填した生物膜濾過層を有する生物膜濾過装置と、各種設備からの冷却水戻り水の少なくとも一部を該生物膜濾過装置に供給する配管と、生物膜濾過装置から排出される生物膜濾過処理水を冷却塔に導入する生物膜濾過処理水導入配管とを更に具備することを特徴とする開放型循環式冷却水システム。
7.生物膜濾過装置から排出される生物膜濾過処理水に、水処理剤を添加する手段を具備する上記第6項に記載のシステム。
以下の実施例により、本発明の具体的な形態例を説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
実施例1
冷却塔(エバラシンワ株式会社製、型式SBC−100E、入口温度35℃、出口温度31℃、循環水量1m/分)と熱交換器(保有水量0.3m)とを冷却水配管で接続して、実験用の開放型循環式冷却水系を構築した。冷却塔下部の冷却水槽から冷却水の一部を後述する生物膜濾過装置に供給し、生物膜濾過処理水を冷却塔に戻すように配管を取り付けた。
生物膜濾過装置としては、断面が内径1.3mの円柱形のカラムに粒径1.5mmの市販セラミックス粒を均等係数1.2、充填層高さ1000mmに充填したものを用いた。
冷却水系に補給水を補給しながら、冷却水のカルシウム硬度から求めた冷却水の濃縮倍数が5倍となるように冷却塔からのブロー水量を調整して冷却水系を30日間連続運転し、引き続き濃縮倍数を10倍に調整して30日間連続運転した(計60日の運転)。金属腐食防止剤として、冷却水系の冷却水のリン濃度が5mg/Lとなるように市販の第3リン酸ソーダを、熱交換器から冷却塔への冷却水戻り水に添加した。冷却塔の下部の冷却水槽から冷却水を6m/時で生物膜濾過装置に供給し、生物膜濾過処理水を冷却塔に戻した。これにより、生物膜濾過装置を通過する被処理水の空塔速度は100m/日となった。生物膜濾過処理水の溶存酸素(DO)濃度は2〜3mg/Lと、生物膜濾過装置での好気処理に十分な量であったので、生物膜濾過装置への空気の供給は行わなかった。
生物膜濾過装置は、通水5.5時間毎に0.7m/分の空塔速度で洗浄水を30分間通水することによって1日に4回定期的に洗浄を行った。
60日の連続運転中、腐食試験片(炭素鋼、表面積31cm)を冷却塔下部の冷却水槽に浸漬し、運転前と60日運転後の試験片の重量差から平均腐食速度を求めた。また、60日運転後に熱交換器を開放してスライムを剥がし、スライム付着量を求めた。
また、比較データとして、冷却水系に生物膜濾過装置を取り付けずに、熱交換器からの戻り水の全てを冷却塔に返送して、同様に運転試験を行った。
表1に、冷却水系への補給水(水道水)の水質分析結果を示す。
Figure 0004619686
運転10日目及び30日目に、冷却水系の熱交換器からの戻り水、生物膜濾過装置流入水、生物膜濾過装置流出水(処理水)を採取し、SS濃度及び一般細菌数を測定した。一般細菌数は、試料水200mLを容量300mLの三角フラスコにとり、30℃で72時間振盪培養した後に、標準寒天培地法で測定した。
表2に実施例1の実験結果を示す。
Figure 0004619686
上記表に示す結果から明らかなように、生物膜濾過装置を導入したことによって、冷却水中の一般細菌数が大きく減少し、スライムの付着を大きく抑制することができた。また、冷却水中のSS濃度も大幅に減少し、炭素鋼の腐食速度も低下した。生物膜濾過装置を設置していない系では、腐食試験片の炭素鋼の表面に孔食が見られたが、生物膜濾過装置を設置した系では孔食は全く認められなかった。
実施例2
実施例1で用いたものと同じ2系列の開放型循環式冷却水系を用い、熱交換器から冷却塔への冷却水戻り水に表3に示すスライム防止剤を添加した他は、実施例1と同じ条件で冷却水系の運転を行った。但し、冷却水のカルシウム硬度から求めた冷却水の濃縮倍数が5倍となるように冷却塔からのブロー水量を調整して冷却水系を30日間連続運転した。
30日運転後の熱交換器戻り水、生物膜濾過装置流入水、及び生物膜濾過処理水の一般細菌数を実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
Figure 0004619686
上記表に示す結果から明らかなように、生物膜濾過装置とスライム防止剤とを併用することによって、冷却水中の一般細菌数が大きく減少した。
実施例3
実施例2のスライム防止剤をスケール防止剤に代えて実施例2と同様に実験を行った。熱交換器から冷却塔への冷却水戻り水に市販のスケール防止剤であるエバスパース2660(荏原エンジニアリングサービス株式会社製)を添加して、実施例2と同様に冷却水系を30日間連続運転した。
30日間運転後に熱交換器を開放して付着物を採取し、電気炉で600℃、3時間加熱することによって灰化した。この灰化物の重量をスケール付着量として表4に示す。なお、表4に示すスケール付着量は、灰化物の重量を熱交換器接液部の面積で割った値である。
Figure 0004619686
上記表に示す結果から明らかなように、生物濾過装置とスケール防止剤とを併用することでスケール付着量が減少した。
実施例4
実施例2のスライム防止剤を殺藻剤に代えて実施例2と同様に冷却水系の運転を行った。熱交換器から冷却塔への冷却水戻り水に殺藻剤(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム)を添加して、実施例2と同様に冷却水系を30日間連続運転した。30日運転後の熱交換器戻り水、生物膜濾過装置流入水、及び生物膜濾過処理水のAGP(藻類生産力)をATPテスター(東亜ディーケーケー株式会社製、形式AF−70,高機能型)によって測定した。AGPは最大藻類増殖量の指標として当該技術において公知である。結果を表5に示す。
Figure 0004619686
上記表に示す結果から明らかなように、生物濾過装置と殺藻剤とを併用することで、藻類生産力(AGP)が減少し、藻類の発生を抑えることができた。
実施例5
実施例1と同じ2系列の開放型循環式冷却水系を用いて実験を行った。冷却水系にエチレングリコールが混入した事態を想定し、熱交換器の入口にエチレングリコールを2mg/L連続的に添加した。また、冷却塔の出口水に表4に示すスライム防止剤を添加して、実施例2と同様に開放型循環式冷却水系の30日間の連続運転実験を行った。結果を表6に示す。
Figure 0004619686
表6に示す結果から明らかなように、スライムの餌となるエチレングリコールが冷却水中に混入した場合であっても、生物膜濾過装置及びスライム防止剤を併用することによって、生物膜濾過装置で有機物を除去することができ、スライムの発生を防止することができた。
本発明によれば、開放型循環式冷却水系において、冷却効率を妨げるスライムの発生を抑制することができる。特に、スライム発生の原因である有機物とスライムの温床となる懸濁物質の両方を同時に除去することができ、スライム抑制効果が大である。また、ブロー水によって消費される薬剤の量を削減することができるので、薬剤の使用量が抑えられ、またブロー水中の残留薬剤量も低減させることができるので、環境への影響を最小限に抑えることができる。更には、冷却水系において用いる添加薬剤の種類を減らすことができる。
開放型循環式冷却水系の代表的な構成例を示す概念図である。 本発明において用いることのできる生物膜濾過装置の一具体例の構成を示す概念図である。 本発明によって開放型循環式冷却水系に生物膜濾過装置を組み込む形態例を示す概念図である。 本発明に従って、開放型循環式冷却水系に生物膜濾過装置を組み込んだ形態の具体例を示す概念図である。

Claims (4)

  1. 開放型循環式冷却水系の冷却水の処理方法であって、
    当該冷却水を被処理水として、表面に生物膜を形成した比重が水より重く粒径が0.5〜4mmの担体を充填した生物膜濾過装置の上方から下方に向けて通水させると共に当該濾過装置の下方から空気を通気させ、当該被処理水中に含まれる懸濁物質及び/又は溶解性の有機物を当該生物膜による濾過処理及び好気性分解処理に供して除去し
    生物膜処理後の処理水に、スライム防止剤、スケール防止剤、殺藻剤から選ばれる水処理剤を添加し、再び冷却水として使用する、方法。
  2. 前記生物膜濾過装置に通水させる前記被処理水の温度は、30〜35℃である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記スライム防止剤として、ヒドラジン、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、次亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素イオンから選ばれるハロゲン化物系スライム防止剤を前記被処理水に対して5mg/L〜30mg/Lとなる量で添加するか、あるいは過酸化水素を前記被処理水に対して10mg/L〜50mg/Lとなる量で添加する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記被処理水に対して、リン酸塩、重合リン酸塩から選ばれる金属腐食防止剤を0.3〜30mg/Lとなるように添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
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