JP4619480B2 - 光硬化型インクジェット記録用インク組成物およびそれを用いたインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、インクジェット記録用インク組成物およびそれを用いたインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
背景技術
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。このインクジェット記録方法は、高解像度、高品位な画像を、高速で印刷することができるという特徴を有するものである。インクジェット記録方法に使用されるインク組成物は、水性溶媒を主成分とし、これに色剤成分および目詰まりを防止する目的でグリセリン等の湿潤剤を含有したものが一般的である。
【0003】
また、水性インク組成物が浸透し難い紙、布類、または浸透しない金属、プラスチック等の素材、例えばフェノール、メラミン、塩化ビニル、アクリル、ポリカーボネートなどの樹脂から製造される板、フィルムなどの記録媒体に印字する場合、インク組成物には、色剤を安定して記録媒体に固着させることができる成分を含有することが要求される。特に、プリント配線基盤等に印刷を行う場合、インク組成物には、速乾性や耐薬剤性が要求される。
【0004】
この様な要求に対しては、従来、紫外線照射により高分子化する成分を含んでなるインク組成物が提案されている(例えば、特開平3−216379号)。また、色剤、紫外線硬化剤、光重合開始剤等を含んでなる紫外線硬化型インク組成物が提案されている(例えば、米国特許5,623,001号)。これらのインク組成物およびインクジェット記録方法によれば、記録媒体へのインク組成物の滲みを防止し、画質を向上させることができるとされている。
【0005】
上記のような、紫外線を照射することにより高分子化する成分を含んでなるインク組成物を用いたインクジェット記録方法にあっては、インク組成物を記録媒体に付着させた後、紫外線を照射する。すると、インク組成物中の光重合開始剤がラジカル等を生成し、これによって、オリゴマー、モノマーが重合を開始して硬化するため、インク組成物中の色剤が記録媒体上に固着する。この固着によって、膜強度、耐溶剤性や色濃度が高く、そして滲みやムラの少ない印字が実現できるものと考えられる。なお、このようなインク組成物を用いたインクジェット記録用インク組成物を「光硬化型インクジェット記録用インク組成物」と呼ぶことがある。
【0006】
また、色剤である染料の分離防止、耐擦性や印字信頼性の向上、印字後の滲み防止およびインクの乾燥性を高める目的で、色剤を含んでなるインク組成物と重合開始剤を含んでなる反応液との二液からなるインクジェット記録用インクや、それらの二液用いて記録媒体に印字を行うインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特開平5−186725号、特開平8−218018号)。
【0007】
このような二液からなるインクジェット記録用インクは、光重合開始剤または光硬化型樹脂を、インク組成物または反応液のいずれか一方に含ませるものである。このように、インク組成物と反応液との二液に分けることによって、暗反応を抑制しインク組成物および反応液の長期保存を可能にし、さらに耐光性、耐熱性に優れた印字を可能とするものである。
【0008】
一方、記録媒体に白色印字を行うインクジェット記録においては、色剤成分として白色顔料を含んでなるインク組成物を用いる。白色顔料としては、亜鉛、鉛、バリウム、チタン、アンチモン等の酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩などの白色無機顔料が用いられることがある。酸化チタンは、隠蔽力、着色力、および耐薬剤性に優れた白色顔料として知られている。
【0009】
また、色剤が特定の粒径を有する非水性白色顔料インク組成物が提案されている(例えば、特公平2−45663号)。このインク組成物によれば、白色顔料が特定の粒径を有することで、インク組成物の分散性、印字安定性およびインクジェット記録装置の記録ヘッドの目詰まりを防止することができるとされている。
【0010】
【発明の概要】
本発明者等は、今般、光硬化型インクジェット記録用インク組成物において、ウレタン系オリゴマーと、三官能以上の反応基を有するモノマーとを用いることにより、膜強度、耐薬剤性、分散安定性および印字安定性を顕著に向上させることができるとの知見を得た。また、本発明者等は、インクジェット記録用白色インク組成物において、アナターゼ型二酸化チタンを色剤としてを用いることにより、インク組成物の分散安定性、印字安定性を向上させることが出来るとの知見を得た。さらに、本発明者らは、光硬化型インクジェット記録用インク組成物において、アナターゼ型二酸化チタンと、光重合開始剤と、オリゴマーと、モノマーとを用いることにより、分散安定性、印字安定性に加えて、重合効率、および膜強度を顕著に向上させることができるとの知見を得た。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0011】
よって、本発明は、良好なインクジェット記録および良好な画像が得られるインクジェット記録用インク組成物およびそれを用いたインクジェット記録方法の提供をその目的するものである。
【0012】
そして、本発明によれば、その第一の態様として、着色剤と、ウレタン系オリゴマーと、三官能以上の反応基を有するモノマーと、光重合開始剤と、水性溶媒とを少なくとも含んでなる光硬化型インクジェット記録用インク組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第二の態様によれば、アナターゼ型二酸化チタンと、水性溶媒とを少なくとも含んでなるインクジェット記録用白色インク組成物が提供される。
【0014】
さらに、本発明の第三の態様によれば、アナターゼ型二酸化チタンと、光重合開始剤と、オリゴマーと、モノマーと、水性溶媒とを少なくとも含んでなる光硬化型インクジェット記録用白色インク組成物が提供される。
【0015】
【発明の具体的説明】
第一の態様のインク組成物
本発明の第一の態様による光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、着色剤と、ウレタン系オリゴマーと、三官能以上の反応基を有するモノマーと、水性溶媒とを少なくとも含んでなるものである。本発明の第一の態様によるインク組成物は、高い保存安定性を示し、インクジェット記録方法において安定した印字が行え、さらに得られた画像は膜強度および耐薬剤性に優れたものとなる。このような利点が得られる理由は定かではないが、ウレタン系オリゴマーと、三官能以上の反応基を有するモノマーとが高い相溶性を有し、さらに他のインク組成物を構成する成分を安定に溶解または分散させることが理由と思われる。
【0016】
ウレタン系オリゴマー
本発明の第一の態様におけるインク組成物は、ウレタン系オリゴマーを含んでなる。本発明におけるウレタン系オリゴマーとは、分子中にウレタン結合とラジカル重合可能な不飽和二重結合とを一以上有するものをいう。ここで、本発明において用いられるオリゴマーとは、相対分子質量(分子量と同義である)の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位の少数回、一般的には約2〜20回、程度の繰返しで構成された構造をもつ中程度の大きさの相対分子質量を有する分子をいう。また本発明において用いられるオリゴマーとは、光重合性プレポリマー、ベースリジン、またはアクリルオリゴマーと呼ばれるものでもある。
【0017】
本発明におけるウレタン系オリゴマーは、官能基としてアクリロイル基を1〜数個有しているため、紫外線照射等によりモノマー等と重合反応を生じ、架橋し重合する性質を有している。
【0018】
本発明において用いられるウレタン系オリゴマーは、ポリオールと、ポリイソシアネートとポリハイドロオキシ化合物との付加反応により生じるオリゴマーの他に、例えば骨格を構成する分子構造により、ポリエステル系ウレタンアクリレート、ポリエーテル系ウレタンアクリレート、ポリブタジエン系ウレタンアクリレート、ポリオール系ウレタンアクリレートが挙げられる。
【0019】
本発明に用いられるウレタン系オリゴマーは、分子量が500〜20,000程度の範囲のもの、好ましくは500〜10,000程度の範囲のものが使用される。
【0020】
本発明によるインク組成物におけるウレタン系オリゴマーの含有量は、1〜50重量%程度の範囲、好ましくは3〜30重量%程度の範囲である。
【0021】
モノマー
本発明の第一の態様によるインク組成物は、三官能以上の反応基を有するモノマーを含んでなる。本発明における三官能以上の反応基を有するモノマーとは、モノマーの基本構造中にラジカル重合可能な不飽和二重結合、好ましくはアクリロイル基を三つ以上有するものをいう。ここで、本発明におけるモノマーとは、高分子の基本構造の構成単位となり得る分子をいう。また、本発明において用いられるモノマーとは、光重合性モノマーとも呼ばれ、三官能以上の多官能アクリレートが含まれる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による三官能以上の反応基を有するモノマーは、下記の式(I)で表されるトリメチロールプロパン、下記の式(II)で表されるペンタエリスリトール、または下記の式(III)で表されるジペンタエリスリトールを基本構造とし、かつ、アクリロイル基を少なくとも三つ以上有するアクリレートモノマーである。
【0023】
【化4】
(上記式中、
AはCH2=CHC(O)、またはCH2=CHC(O)Rnである(Rは炭素数1〜5の直線状または分岐鎖状のアルコキシル基であり、好ましくはエトキシ基、プロポキシ基であり、nはその繰り返し数が1〜10である))
【0024】
【化5】
(上記式中、
AはH、CH2=CHC(O)、またはCH2=CHC(O)Rnであり(Rは炭素数1〜5の直線状または分岐鎖状のアルコキシル基、好ましくはエトキシ基、プロポキシ基であり、nはその繰り返し数が1〜10である)、
BはH、CH2=CHCO、または炭素数1〜5の高級アシル基であり、
かつ、AおよびBの全ての置換基のうち少なくとも三つはアクリロイル基を含んでなる)
【0025】
【化6】
(上記式中、
AはH、CH2=CHC(O)、またはCH2=CHC(O)Rnであり(Rは炭素数1〜5の直線状または分岐鎖状のアルコキシル基、好ましくはエトキシ基、プロポキシ基であり、または炭素数1〜5のラクトン、好ましくはε−カプロラクトンであり、nはその繰り返し数が1〜10である)、
BはH、CH2=CHCO、または炭素数1〜5の高級アシル基であり、
かつ、式中、全てのAの置換基のうち少なくとも三つはアクリロイル基を含んでなる)
【0026】
本発明の第一の態様によるインク組成物におけるモノマーは、低分子ポリオールのアクリレート構造を有しており、硬化性が速いという特徴を有する。
本発明の第一の態様によるインク組成物において、用いられるモノマーの具体例としては、グリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(アクロイル基が3以上のもの)、イソシアヌレートトリアクリレート等が挙がられ、好ましくは、ジペンタエリストールポリアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレート(アクロイル基が3以上のもの)、である。
【0027】
本発明に用いられるモノマーは、分子量が200〜3,000程度の範囲、好ましくは300〜2,000程度の範囲のものが使用される。
【0028】
本発明の第一の態様によるインク組成物におけるモノマーの含有量は、1〜50重量%程度の範囲、好ましくは3〜30重量%程度の範囲である。
【0029】
なお、オリゴマーとモノマーは共重合して三次元化する性質を有する。従って、本発明によるインク組成物における、オリゴマーまたはモノマーの含有量は、重合効率、重合速度、重合後の耐性収縮率、重合被膜強度等を考慮して定める必要がある。具体的には、本発明によるインク組成物における、ウレタン系オリゴマーと三官能以上の反応基を有するモノマーとの含有量の比は、95:5〜40:60程度の範囲であり、好ましくは90:10〜50:50程度の範囲である。
【0030】
光重合開始剤
本発明の第一の態様によるインク組成物は光重合開始剤を含んでなる。本発明における光重合開始剤は、例えば、250nm〜450nm程度の領域の紫外線を吸収しラジカルまたはイオンを生成してオリゴマー、モノマーの重合を開始させるものである。
【0031】
本発明において用いられる光重合開始剤は、代表的なものとして、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンジル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ポリ塩化ポリフェニル、ヘキサクロロベンゼン等が挙げられ、好ましいくは、イソブチルベンゾインエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムである。
【0032】
また、Vicure10、30(Stauffer Chemical社製)、Irgacure184、651、2959、907、369、1700、1800、1850、819(チバスペシャルティケミカルズ社製)、Darocure1173(EM Chemical社製)、QuantacureCTX、ITX(Aceto Chemical社製)、Lucirin TPO(BASF社製)の商品名で入手可能な光重合開始剤も使用することができる。
【0033】
着色剤
本発明の第一の態様によるインク組成物に含まれる着色剤は、水に分散可能な顔料および/または水に分散可能な染料である。
【0034】
顔料としては、無機顔料、有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0035】
また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
【0036】
染料としては、インクジェット記録に使用することができる分散性を有した染料を使用することができる。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、着色剤がアナターゼ型二酸化チタンであることが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンを含んでなるインク組成物は、ルチル型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン等の他の結晶構造を有する二酸化チタンを含んでなるインク組成物と比較して、インク組成物の分散安定性を向上させることができる点で有利である。また、アナターゼ型二酸化チタンを含んでなる本発明によるインク組成物は、インクジェット記録に用いられた場合、安定した印字と良好な画像とが実現することができる。
【0038】
さらに、着色剤として用いるアナターゼ型二酸化チタンは、その粒径が2.0μm以下程度のものが好ましく、特に好ましくは、粒径が0.2μm以下のものが好ましい。上記範囲の粒径を有するアナターゼ型二酸化チタンを用いると、インク組成物の分散性を向上させることができると考えられる。
【0039】
なお、本明細書中で「粒径」とは、体積換算における50%の粒径を意味する。ここで、「体積換算における50%の粒径」とは、ある二酸化チタンの粉体の集団について、その粒度分布が求められているとする。その粉体の集団の全体積を100%として累積曲線を求めたとき、その曲線が50%となる点を50%の粒径という。
【0040】
本発明によるインク組成物への着色剤の添加量は、1〜50重量%が好ましく、より好ましくは2〜30重量%程度である。
【0041】
本発明によるインク組成物においては、必要に応じて、2種以上の染料および/または顔料などの着色剤を選択して用いることもできる。
【0042】
本発明の好ましい態様によれば、着色剤は、分散剤または界面活性剤で水性媒体中に分散させて得られた着色剤分散液としてインク組成物に添加されるのが好ましい。好ましい分散剤としては、着色剤分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。なお、この着色剤分散液に含まれる分散剤および界面活性剤がインク組成物の分散剤および界面活性剤としても機能することは当業者に明らかであろう。
【0043】
水性溶媒、その他の成分
本発明によるインク組成物において、水性溶媒は水と水溶性有機溶媒からなのが好ましい。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、インク組成物を長期保存する場合には、紫外線照射、または過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、カビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0044】
また、水溶性有機溶媒は、好ましくは低沸点有機溶剤であり、その具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。特に一価アルコールが好ましい。低沸点有機溶剤は、インクの乾燥時間を短くする効果がある。低沸点有機溶剤の添加量はインクの0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物は、さらに高沸点有機溶媒からなる湿潤剤を含んでなることが好ましい。高沸点有機溶媒剤の好ましい具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0046】
これら湿潤剤の添加量は、インク組成物の0.5〜40重量%が好ましく、より好ましくは2〜20重量%の範囲である。
【0047】
本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物にはさらに糖を添加することが好ましい。好ましい糖の具体例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここで、n=2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0048】
これら糖類の含有量は、インクの0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%の範囲である。
【0049】
本発明によるインク組成物は、さらに界面活性剤を含有することができる。界面活性剤の具体例としては、アニオン性界面活性剤(例えばドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)および、アセチレングリコール(オレフィンY、並びにサーフィノール82、104、440、465、および485(いずれもAir Products and Chemicals Inc. 製)が挙げられる。これらは単独使用または二種以上を併用することができる。
【0050】
さらに、本発明によるインク組成物は、任意の成分として、多価金属塩、またはポリアリルアミン若しくはその誘導体、樹脂エマルジョン、無機酸化物コロイド、湿潤剤、pH調製剤、防腐剤、防かび剤等を添加しても良い。
【0051】
第一の態様のインク組成物の製造法
本発明の第一の態様によるインクジェット記録用インク組成物の製造法は、ウレタン系オリゴマーに前記三官能以上の反応基を有するモノマー溶解または分散させて、その後、着色剤と、光重合開始剤と、水性溶媒とを添加することを含んでなるものである。
【0052】
本発明によるインク組成物の製造法によれば、保存安定性が高く、インクジェット記録時における印字安定性、および記録媒体における印字物の膜強度、耐薬剤性に優れた、上記インクジェット記録用インク組成物を得ることができる。
【0053】
本発明の第一の態様によるインク組成物の製造法にあっては、先ず、ウレタン系オリゴマーに三官能以上の反応基を有するモノマーを混合して、相溶性の高い分散液または溶液を得ることができる。本発明の好ましい態様によれば、ウレタン系オリゴマーを撹拌している状態で三官能以上の反応基を有するモノマーをゆっくり滴下して溶解し混合することによって、分散液または溶液を得るのが好ましい。
【0054】
ウレタン系オリゴマーと三官能以上の反応基を有するモノマーとからなる分散液または溶液を製造した後、この分散液または溶液に着色剤と、光重合開始剤と、水性溶媒と、任意の成分とを添加する。本発明の好ましい態様によれば、製造した分散液または溶液に上記成分を添加する場合、オリゴマーとモノマーとが光重合開始剤によって重合反応を開始しないよう、光(特に紫外線)を遮断した条件下で行うことが好ましい。
【0055】
本発明によるインク組成物の製造法においては、インク組成物の製造に慣用されている攪拌器を用いることができる。
【0056】
第二の態様のインク組成物
本発明の第二の態様によるインクジェット記録用白色インク組成物は、アナターゼ型二酸化チタンと、水性溶媒とを少なくとも含んでなるものである。
【0057】
二酸化チタン
アナターゼ型二酸化チタンを含んでなる本発明によるインク組成物は、ルチル型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン等の他の結晶構造を有する二酸化チタンを含んでなるインク組成物と比較して、効率的に樹脂を硬化させることができる点で有利である。さらに、アナターゼ型二酸化チタンを含んでなる本発明によるインク組成物は、インク組成物の分散安定性に優れ、インクジェット記録を行った場合、安定した印字と良好な画像とが得られるという利点をも有する。
【0058】
本発明によるインク組成物に用いられるアナターゼ型二酸化チタンの粒径については、前記本発明の第一の態様によるインク組成物と同様のものが挙げられる。その好ましい粒径についても本発明の第一の態様によるインク組成物と同様であってよい。
【0059】
インク組成物へのアナターゼ型二酸化チタンの添加量は、1〜50重量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは3〜30重量%程度の範囲である。
【0060】
本発明の第二の態様によるインク組成物は、少なくともアナターゼ型二酸化チタンを含んでなるが、その他の染料、顔料などの色剤、分散剤、または界面活性剤などを含むことができる。その他の染料、顔料などの色剤、分散剤、または界面活性剤は、本発明の第一の態様によるインク組成物について挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0061】
水性溶媒およびその他の成分
本発明の第二の態様によるインク組成物に用いられる水性溶媒およびその他の成分は、本発明の第一の態様によるインク組成物と同様のものであってよい。その好ましい水性溶媒およびその他の成分についても、本発明の第一の態様によるインク組成物の場合と同様であってもよい。また、本発明の第二の態様によるインク組成物が水性溶媒およびその他の成分を含んでなる場合、その含有量についても本発明の第一の態様によるインク組成物の場合と同様であってよい。
【0062】
第三の態様のインク組成物
本発明の第三の態様による光硬化型インクジェット記録用白色インク組成物は、アナターゼ型二酸化チタンと、光重合開始剤と、オリゴマーと、モノマーと、水性溶媒とを少なくとも含んでなるものである。
【0063】
二酸化チタン
アナターゼ型二酸化チタンを含んでなる本発明によるインク組成物は、ルチル型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン等の他の結晶構造を有する二酸化チタンを含んでなるインク組成物と比較して、効率的に樹脂を硬化させることができる点で有利である。さらに、アナターゼ型二酸化チタンを含んでなる本発明によるインク組成物は、インク組成物の分散安定性に優れ、インクジェット記録を行った場合、安定した印字と良好な画像とが得られるという利点をも有する。
【0064】
本発明の第三の態様によるインク組成物に用いられるアナターゼ型二酸化チタンの粒径については、前記第一の態様におけるインク組成物と同様のものが挙げられる。その好ましい粒径についても第一の態様のインク組成物と同様であってよい。
【0065】
インク組成物へのアナターゼ型二酸化チタンの添加量は、1〜50重量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは3〜30重量%程度の範囲である。
【0066】
本発明の第三の態様によるインク組成物は、少なくともアナターゼ型二酸化チタンを含んでなるが、その他の染料、顔料などの色剤、分散剤、または界面活性剤などを含むことができる。その他の染料、顔料などの色剤、分散剤、または界面活性剤は、本発明の第一の態様によるインク組成物について挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0067】
光重合開始剤
本発明の第三の態様によるインク組成物は光重合開始剤を含んでなる。この光重合開始剤としては、前記本発明の第一の態様による場合と同様のものを使用することができる。
【0068】
オリゴマー
本発明の第三の態様によるインク組成物は、オリゴマーを含んでなる。ここで、オリゴマーとは、中程度の大きさの相対分子質量をもつ分子で、相対分子質量の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位の少数回、一般的には約2〜20回程度の繰返しで構成された構造をもつものをいう。また本発明において用いられるオリゴマーは、光重合性プレポリマー、ベースリジンまたはアクリルオリゴマーと呼ばれるものでもある。
【0069】
本発明の第三の態様によるオリゴマーは、官能基としてアクリロイル基を1〜数個有しているため、紫外線照射等によりモノマー等と重合反応を起こして架橋し重合する性質を有している。
【0070】
本発明の第三の態様において用いられるオリゴマーは、例えば骨格を構成する分子構造により、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート等が挙げられ、好ましくは、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレートである。特に好ましくはポリウレタンアクリレートである。
【0071】
本発明の第三の態様において用いられるオリゴマーは、分子量が5000〜20,000程度の範囲のもの、好ましくは500〜10,000程度の範囲のものが使用される。
【0072】
本発明の第三の態様によるインク組成物におけるオリゴマーの含有量は、1〜50重量%程度の範囲、好ましくは3〜30重量%程度の範囲である。
【0073】
モノマー
本発明の第三の態様によるインク組成物は、モノマーを含んでなる。ここで、モノマーとは、高分子の基本構造の構成単位となり得る分子をいう。また本発明の第三の態様によるインク組成物において用いられるモノマーは、光重合性モノマーとも呼ばれ、単官能アクリレート、多官能アクリレートが含まれる。本発明の好ましい態様によれば、このモノマーは、本発明の第一の態様によるインク組成物について挙げた三官能以上の反応基を有するモノマーと同様のものであることができる。このモノマーは、低分子ポリオールのアクリレート構造を有しており、低粘度で硬化性が速いという特徴を有する。
【0074】
本発明の第三の態様によるインク組成物において用いられるモノマーの好ましい例として、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピペリン酸エステルネオペンチンルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート、アクロイルモルホリン、2−フェノキシエチルアクリレート、フタル酸水素−(2,2,2−トリアクロイルオキシメチル)エチル、ジペンタエリストールポリアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレート等が挙がられ、より好ましくは、アクロイルモルホリン、2−フェノキシエチルアクリレート、フタル酸水素−(2,2,2−トリアクロイルオキシメチル)エチル、ジペンタエリストールポリアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレートである。
【0075】
本発明の第三の態様によるインク組成物に用いられるモノマーは、分子量が100〜3,000程度の範囲、好ましくは100〜2,000程度の範囲のものが使用される。
【0076】
本発明の第三の態様によるインク組成物におけるモノマーの含有量は、1〜70重量%程度の範囲、好ましくは3〜50重量%程度の範囲である。
【0077】
なお、オリゴマーとモノマーは共重合して3次元化する性質を有する。従って、本発明のインク組成物における、オリゴマーまたはモノマーの含有量は、重合効率、重合速度、重合後の耐性収縮率、重合被膜強度等を考慮して定める必要がある。
【0078】
水性溶媒およびその他の成分
本発明の第三の態様によるインク組成物に用いられる水性溶媒およびその他の成分は、本発明の第一の態様によるインク組成物と同様のものであってよい。その好ましい水性溶媒およびその他の成分についても、本発明の第一の態様によるインク組成物の場合と同様であってもよい。また、本発明の第三の態様によるインク組成物が水性溶媒およびその他の成分を含んでなる場合、その含有量についても本発明の第一の態様によるインク組成物と同様であってよい。
【0079】
インクジェット記録方法
本発明の一つの態様によるインクジェット記録方法は、着色剤と、ウレタン系オリゴマーと、三官能以上の反応基を有するモノマーと、光重合開始剤と、水性溶媒とを少なくとも含んでなる、光硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いて記録媒体に印字を行うものである。
【0080】
本発明によるインクジェット記録方法によれば、上記した光硬化型インクジェット記録用インク組成物を用いて印字を行うため、良好な画質、良好な印字を得ることができる。
【0081】
本発明の別の態様によるインクジェット記録方法は、アナターゼ型二酸化チタンと、水性溶媒とを少なくとも含んでなるインクジェット記録用白色インク組成物の液滴を形成し、この液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うものである。
【0082】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、インクジェット記録方法として、アナターゼ型二酸化チタンと、光重合開始剤と、オリゴマーと、モノマーと、水性溶媒とを少なくとも含んでなる光硬化型インクジェット記録用インク組成物の液滴を形成し、この液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うものが提供される。
【0083】
本発明によるインクジェット記録方法にあっては、インク組成物を記録媒体付着させた後に、光照射を照射する。照射された光によって光重合開始剤がラジカル等を生じ、これによって、オリゴマー(例えば、ウレタン系オリゴマー)とモノマー(例えば、三官能以上の反応基を有するモノマー)とが重合反応を開始してインク組成物中の着色剤(例えば、アナターゼ型二酸化チタン)を記録媒体に固着する。これにより、金属やプラスチック等の水性媒体を浸透することが不可能な媒体表面にも鮮明でかつ膜強度、耐薬剤性に優れた印字を行うことができるものと考えられる。光照射は、可視光照射、紫外線照射であってもよく、特に紫外線照射が好ましい。
【0084】
本発明の好ましい態様によれば、紫外線照射を行う場合、紫外線照射量は、100mJ/cm2以上、好ましくは500mJ/cm2以上であり、また、10,000mJ/cm2以下、好ましくは5,000mJ/cm2以下の範囲で行う。かかる程度の範囲内における紫外線照射量であれば、十分硬化反応を行うことができ、また紫外線照射によって着色剤が退色してしまうことも防止できるので有利である。
【0085】
紫外線照射は、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等のランプが挙げられる。例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
【0086】
また、本発明によるインクジェック記録方法では、光照射と同時またはその後に加熱してもよい。任意成分として水性溶媒を含んでなるインク組成物を記録媒体に付着する場合、記録媒体に残存する水分を特に加熱手段を用いて除去することにより、重合反応を効率良く行うことができる。その結果、記録媒体に印字された印字物の固着性を高め、膜強度や耐薬剤性を向上させることが可能となる。
【0087】
加熱は、記録媒体に熱源を接触させて加熱する方法、赤外線やマイクロウェーブ(2,450Mhz程度に極大波長を持つ電磁波)などを照射し、または熱風を吹き付けるなど記録媒体に接触させずに加熱する方法などが挙げられる。
【0088】
【実施例】
以下本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるれものではない。
【0089】
インク組成物の調製a
例1a
水性酸化チタン分散体(顔料分30重量%) 33重量%
ウレタン系オリゴマー(水性ウレタンオリゴマー分散体、
NR−445、ゼネカ(株)製) 34重量%
モノマー(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、
A−9530、新中村化学(株)製) 1.5重量%
光重合開始剤(イルガキュア1700、
チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1.5重量%
水 30重量%
【0090】
例2a
水性酸化チタン分散体(顔料分30重量%) 33重量%
ウレタン系オリゴマー(水性ウレタンオリゴマー分散体、
NR−445、ゼネカ(株)製) 26重量%
モノマー(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、
A−9530、新中村化学(株)製) 4.5重量%
光重合開始剤(イルガキュア1700、
チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1.5重量%
水 35重量%
【0091】
例3a
水性酸化チタン分散体(顔料分30重量%) 33重量%
ウレタン系オリゴマー(水性ウレタンオリゴマー分散体、
NR−445、ゼネカ(株)製) 19重量%
モノマー(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、
A−9530、新中村化学(株)製) 7.5重量%
光重合開始剤(イルガキュア1700、
チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1.5重量%
水 39重量%
【0092】
例4a
水性カーボンブラック分散体(顔料分30重量%) 33重量%
ウレタン系オリゴマー(水性ウレタンオリゴマー分散体、
NR−445、ゼネカ(株)製) 26重量%
モノマー(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、
A−9530、新中村化学(株)製) 4.5重量%
光重合開始剤(イルガキュア1700、
チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1.5重量%
水 35重量%
【0093】
例5a
水性酸化チタン分散体(顔料分30重量%) 33重量%
ウレタン系オリゴマー(水性ウレタンオリゴマー分散体、
NR−445、ゼネカ(株)製) 34重量%
モノマー(β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、
CB−1、新中村化学(株)製) 1.5重量%
光重合開始剤(イルガキュア1700、
チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1.5重量%
水 30重量%
【0094】
評価試験a
上記組成のインク組成物(例1a〜5a)をそれぞれインクジェット記録装置の記録ヘッドに充填し、記録媒体であるプリント基板上に付着させて印字を行った。その後、50℃10分間乾燥後、紫外線照射量2,000mJ/cm2で紫外線照射を行った。
【0095】
インクジェット記録装置はインクジェットプリンターMJ510C(セイコーエプソン社製)を使用した。紫外線照射に使用した照射ランプは、メタルハライドタイプで、365nmの波長のものを用いた。
上記インク組成物および上記記録媒体に印字された印字物について、以下の試験を行い評価した。
【0096】
評価1a:保存安定性試験
上記組成のインク組成物を50℃で10日間放置した後、体積換算における50%粒子径(着色剤)を測定し、評価した。
ここで、「体積換算における50%の粒径」とは、ある着色剤の粉体の集団について、その粒度分布が求められているとする。その粉体の集団の全体積を100%として累積曲線を求めたとき、その曲線が50%となる点を50%の粒径という。
【0097】
評価2a:鉛筆硬度試験
記録媒体に印字された印字物に対して、JIS K5400(鉛筆引っ掻き試験手書き法)に規定される方法により、印字物の硬度を評価した。
【0098】
評価3a:耐薬剤性試験
記録媒体に印字された印字物をエタノール中に5分間浸漬させた後、取り出して歯ブラシで往復5回擦った。評価は以下の基準によって行った。
評価A:剥がれなかった。
評価B:一部剥がれた。
評価C:全部剥がれた。
【0099】
ウレタン系オリゴマーとモノマーとの比率、ウレタン系オリゴマーとモノマーとの合計量の含有率は下記表1に示される通りであった。例1a〜例5aのインク組成物について行った各試験結果は、下記表2に示される通りであった。
【0100】
【0101】
【0102】
インク組成物の調製b
例1b
水性アナターゼ型二酸化チタン分散体(顔料分30重量%、
体積換算における50%粒径は0.16μm) 33重量%
エチレングリコール 10重量%
水 57重量%
【0103】
例2b
水性アナターゼ型二酸化チタン分散体(顔料分30重量%、
体積換算における50%粒径は0.16μm) 33重量%
光重合開始剤(イルガキュア1700、
チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1.5重量%
オリゴマー(水性ウレタンオリゴマー分散体、
NR−445、ゼネカ(株)製) 34重量%
モノマー(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、
A−9530、新中村化学(株)製) 1.5重量%
エチレングリコール 5重量%
水 25重量%
【0104】
例3b
水性ルチル型二酸化チタン分散体(顔料分30重量%、
体積換算における50%粒径は0.35μm) 33重量%
光重合開始剤(イルガキュア1700、
チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1.5重量%
オリゴマー(水性ウレタンオリゴマー分散体、
NR−445、ゼネカ(株)製) 34重量%
モノマー(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、
A−9530、新中村化学(株)製) 1.5重量%
エチレングリコール 5重量%
水 25重量%
【0105】
評価試験b
上記組成のインク組成物(例1b〜3b)をそれぞれインクジェット記録装置の記録ヘッドに充填し、記録媒体であるプリント基板上に付着させて印字を行った。その後、50℃ 10分間乾燥後、紫外線照射を行った。
インクジェット記録装置はインクジェットプリンターMJ510C(セイコーエプソン社製)を使用した。紫外線照射に使用した照射ランプは、メタルハライドタイプで、365nmの波長のものを用いた。
【0106】
上記インク組成物および上記記録媒体に印字された印字物について、以下の試験を行い評価した。
【0107】
評価1b:分散安定性試験
上記組成のインク組成物を50℃で10日間放置した後、沈殿物の有無を調べた。
【0108】
評価2b:鉛筆硬度試験
記録媒体に印字された印字物に対して、JIS K5400(鉛筆引っ掻き試験手書き法)に規定される方法により、印字物の硬度を評価した。
なお、紫外線照射量は、1000mJ/cm2、2000mJ/cm2および4000mJ/cm2の3種によって行った。
【0109】
評価3b:印字安定性試験
上記組成のインク組成物をインクジェット記録装置の記録ヘッドに充填し、記録媒体上にキャラクター、グラフィックが混在するパターンをA4紙に200枚印刷を行った時のドット抜けの回数を算えた。
【0110】
例1b〜例3bにおいて用いた二酸化チタンの種類とその粒径は、下記表3に示した通りであった。例1b〜例3bにおけるインク組成物についての各試験結果は、下記表4に示した通りであった。
【0111】
【0112】
Claims (7)
- 着色剤と、ウレタン系オリゴマーと、三官能以上の反応基を有するモノマーと、光重合開始剤と、水性溶媒とを少なくとも含んでなる、光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
着色剤がアナターゼ型二酸化チタンであり、かつ
三官能以上の反応基を有するモノマーが、下記の式(I)で表されるトリメチロールプロパン、下記の式(II)で表されるペンタエリスリトール、または下記の式(III)で表されるジペンタエリスリトールを基本構造とし、かつ、アクリロイル基を少なくとも三つ以上有するアクリレートモノマーである、硬化型インクジェット記録用インク組成物:
AはCH2=CHC(O)、またはCH2=CHC(O)Rnである(Rは炭素数1〜5の直線状または分岐鎖状のアルコキシル基であり、nはその繰り返し数が1〜10である));
AはH、CH2=CHC(O)、またはCH2=CHC(O)Rnであり(Rは炭素数1〜5の直線状または分岐鎖状のアルコキシル基であり、nはその繰り返し数が1〜10である)、
BはH、CH2=CHCO、または炭素数1〜5の高級アシル基であり、
かつ、AおよびBの全ての置換基のうち少なくとも三つはアクリロイル基を含んでなる);または
AはH、CH2=CHC(O)、またはCH2=CHC(O)Rnであり(Rは炭素数1〜5の直線状または分岐鎖状のアルコキシル基、または炭素数1〜5のラクトンであり、nはその繰り返し数が1〜10である)、
かつ、全てのAの置換基のうち少なくとも三つはアクリロイル基を含んでなる)。 - 前記インク組成物における着色剤の含有量が1〜50重量%である、請求項1に記載のインク組成物。
- アナターゼ型二酸化チタンの粒径が0.2μm以下である、請求項1に記載のインク組成物。
- 前記インク組成物におけるウレタン系オリゴマーの含有量が1〜50重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
- 前記インク組成物における三官能以上の反応基を有するモノマーの含有量が1〜50重量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
- アナターゼ型二酸化チタンの含有量が1〜50重量%である、請求項1に記載のインク組成物。
- インク組成物の液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、
前記インク組成物として、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク組成物を用いることを特徴とする、インクジェット記録方法。
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