JP4617330B2 - トラクタ - Google Patents

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本発明は、油圧クラッチ式変速機構を備えるトラクタに関する。
一般に、農業用のトラクタは、ミッションケースの内部に、走行動力伝動経路及びPTO動力伝動経路を構成すると共に、各動力伝動経路に変速機構を設けて走行動力及びPTO動力の変速を行っている。変速機構としては、ギヤや爪の噛み合わせ変更により伝動経路を切換える噛み合い式や、並列状に配置される油圧クラッチの選択的な断続動作により伝動経路を切換える油圧クラッチ式などがある。そして、油圧クラッチ式変速機構は、伝動上手側の主クラッチ機構を切り操作することなく、走行動力を円滑に変速できるという長所を有する反面、油圧配管(油圧クラッチ式変速機構と油圧クラッチ制御バルブを接続するための外部配管)が増加する等の短所を有している。
そこで、ミッションケース(前部ハウジング)の外面に複数の油圧クラッチ制御バルブ(方向切換弁)を並設し、これらの油圧クラッチ制御バルブを、ミッションケースに加工された油路を介して、油圧クラッチ式変速機構に接続することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−283279号公報
しかしながら、油圧クラッチ制御バルブをミッションケースの外面に設けると、油圧クラッチ制御バルブのメンテナンス性が低下する惧れがある。例えば、特許文献1に記載される油圧クラッチ制御バルブは、ミッションケースの側面に設けられているので、ミッションケースの側方に燃料タンクなどを配置しているトラクタに適用した場合、油圧クラッチ制御バルブのメンテナンスに際し、燃料タンクの着脱が必要となり、メンテナンス作業が煩雑になるという問題がある。
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、ステアリングユニットやステアリング軸を覆うステアリングコラムと、該ステアリングコラムの下方に設けられるクラッチハウジングと、該クラッチハウジング内に設けられる主クラッチ機構と、該主クラッチ機構の伝動下手側に設けられる油圧クラッチ式変速機構と、該油圧クラッチ式変速機構を変速作動させる複数の油圧クラッチ制御バルブとを備えるトラクタにおいて、前記ステアリングコラムは、メンテナンス用の開口部と、該開口部を開閉自在に覆蓋する蓋とを備える一方、該ステアリングコラム内に、前記複数の油圧クラッチ制御バルブを、クラッチハウジングの上面に沿って並設し、且つ、バルブユニットに着脱自在に組込まれた状態で配置すると共に、前記クラッチハウジング内に油圧クラッチ式変速機構を設け、該油圧クラッチ式変速機構と前記油圧クラッチ制御バルブとを、クラッチハウジングに加工された油路を介して接続したことを特徴とする。
このようにすると、複数の油圧クラッチ制御バルブをクラッチハウジングの外面に沿って並設し、これらの油圧クラッチ制御バルブを、クラッチハウジングに加工された油路を介して、油圧クラッチ式変速機構に接続するものでありながら、油圧クラッチ制御バルブの良好なメンテナンス性を確保できる。すなわち、油圧クラッチ制御バルブが設けられるクラッチハウジングの上面は、ステアリングコラムの下方に位置しているので、ステアリングコラムの開口部を利用して油圧クラッチ制御バルブに容易にアクセスすることが可能になる。
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図3において、1は農用のトラクタTに搭載されるミッションケースであって、該ミッションケース1は、主クラッチ機構2を介してエンジンEの動力を入力すると共に、入力した動力を走行動力伝動経路3とPTO動力伝動経路4とに分岐させる。走行動力伝動経路3には、走行動力を多段に変速するために、複数の変速機構が設けられている。走行動力伝動経路3に設けられる変速機構には、変速操作に際して伝動上手側の主クラッチ機構2を切る必要がない油圧クラッチ式変速機構Cと、変速操作に際して主クラッチ機構2を切る必要がある噛み合い式変速機構Kとが含まれており、油圧クラッチ式変速機構Cと噛み合い式変速機構Kの組み合せにより走行動力の多段変速を行うようになっている。
具体的に説明すると、走行動力伝動経路3には、伝動上手側から順に、4段変速の油圧クラッチ式変速機構Cからなる第一の主変速機構5と、油圧クラッチ式変速機構Cからなる前後進切換機構6と、3段変速の噛み合い式変速機構Kからなる副変速機構7と、2段変速の油圧クラッチ式変速機構Cからなる第二の主変速機構8とが設けられており、主変速機構5、8による変速と副変速機構7による変速の組み合せにより24段の走行変速が可能になると共に、前後進切換機構6による前後進切換えが可能となっている。
本実施形態のミッションケース1は、その前部を構成するクラッチハウジング9と、ミッションケース1の後部を構成する後部ハウジング10と、クラッチハウジング9と後部ハウジング10の間に設けられる中間ハウジング11とからなり、上述のように主クラッチ機構2、走行動力伝動経路3及びPTO動力伝動経路4が内装される。また、本実施形態のPTO動力伝動経路4は、走行状態に影響されない独立したインディペンデントPTO仕様のPTO動力伝動経路であり、PTO変速機構(本実施形態では、2段の変速を行う第一PTO変速機構12と、正転2段、逆転1段の変速を行う第二PTO変速機構13)だけでなく、PTO動力を断続するPTOクラッチ機構14が介在している。
次に、走行動力伝動経路3に設けられる各変速機構の構成をより具体的に説明する。図2及び図3に示すように、走行動力伝動経路3は、複数の伝動軸S1〜S11と、4段変速の油圧クラッチ式変速機構C1、C2からなる第一の主変速機構5と、油圧クラッチ式変速機構C3からなる前後進切換機構6と、3段変速の噛み合い式変速機構Kからなる副変速機構7と、2段変速の油圧クラッチ式変速機構C4からなる第二の主変速機構8と、2段変速の油圧クラッチ式変速機構C5からなる前輪増速機構15とを備えて構成されている。
本実施形態の油圧クラッチ式変速機構Cは、図4に示すように、隣接する伝動軸との間に並列する2つの伝動経路100、200を構成すると共に、各伝動経路100、200に介在する2つの油圧クラッチ101、201を選択的に入り/切りすることにより、2段の変速を行うようになっている。例えば、一方の油圧クラッチ101のピストン102を入り動作させると、ギヤ103、内筒104、内筒側ディスク105、外筒側ディスク106及び外筒107を経由して伝動軸Sに動力が伝動され、また、他方の油圧クラッチ201のピストン202を入り動作させると、ギヤ203、内筒204、内筒側ディスク205、外筒側ディスク206及び外筒207を経由して伝動軸Sに動力が伝動される。
第一の主変速機構5は、クラッチハウジング9内に配置される油圧クラッチ式変速機構C1、C2を備えて構成されている。油圧クラッチ式変速機構C1は、伝動軸S1と伝動軸S2との間に1速伝動経路16及び4速伝動経路17を構成し、これらの伝動経路を選択的に断続させる。また、油圧クラッチ式変速機構C2は、伝動軸S1と伝動軸S3との間に2速伝動経路18及び3速伝動経路19を構成し、これらの伝動経路を選択的に断続させる。
前後進切換機構6は、クラッチハウジング9内に配置される油圧クラッチ式変速機構C3を備えて構成されている。油圧クラッチ式変速機構C3は、伝動軸S2と伝動軸S5との間に前進伝動経路20及び後進伝動経路21を構成し、これらの伝動経路を選択的に断続させる。
副変速機構7は、中間ハウジング11内に配置される噛み合い式変速機構Kを備えて構成されている。図2及び図5に示すように、本実施形態の噛み合い式変速機構Kは、伝動軸S5から伝動軸S7の間に構成されており、2つのスリーブ22、23の選択的な噛み合わせにより、3段(L、M、H)の走行変速を行うようになっている。例えば、スリーブ22を図5に示すL側にスライドさせると、伝動軸S5、ハブ24、スリーブ22、ギヤ25、ギヤ26、伝動軸S6、ギヤ27、ギヤ28及びギヤ29を介して、伝動軸S8に走行動力が伝動される。また、スリーブ23を図5に示すM側にスライドさせると、伝動軸S5、ハブ24、スリーブ22、ギヤ28及びギヤ29を介して、伝動軸S8に走行動力が伝動される。また、スリーブ22をN位置とし、スリーブ23を図5に示すH側にスライドさせると、伝動軸S5、ギヤ30、ギヤ31、伝動軸S7、スリーブ23及びハブ32を介して、伝動軸S8に走行動力が伝動される。
第二の主変速機構8は、後部ハウジング10内に配置される油圧クラッチ式変速機構C4を備えて構成されている。油圧クラッチ式変速機構C4は、伝動軸S8と伝動軸S9との間にL伝動経路33及びH伝動経路34を構成し、これらの伝動経路を選択的に断続させる。そして、伝動軸S9に伝動された走行動力は、リヤアクスルケース(図示せず)に入力されると共に、伝動軸S10及び伝動軸S11を介してフロントアクスルケース(図示せず)に入力される。
前輪増速機構15は、油圧クラッチ式変速機構C5を備えて構成されている。油圧クラッチ式変速機構C5は、伝動軸S10と伝動軸S11との間に通常伝動経路35及び倍速伝動経路36を構成し、これらの伝動経路を選択的に断続させる。
油圧クラッチ式変速機構C1〜C5やPTOクラッチ機構14は、例えば、図6に示すような油圧回路を用いて作動させることができる。図6に示す油圧回路は、2つの油圧ポンプP1、P2を備え、一方の油圧ポンプP1から供給される油圧で、油圧リフト機構37、前輪駆動切換機構38及び油圧クラッチ式変速機構C5(前輪倍速機構15)を作動させ、他方の油圧ポンプP2から供給される油圧で、自動ブレーキ旋回機構39、ステアリングユニット40、油圧クラッチ式変速機構C1〜C4(第一の主変速機構5、前後進切換機構6及び第二の主変速機構8)及びPTOクラッチ機構14を作動させるように構成されている。
具体的には、第一の主変速機構5の油圧クラッチ式変速機構C1、C2を断続作動させる第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ(比例減圧弁)41〜44、前後進切換機構6の油圧クラッチ式変速機構C3を断続作動させる前後進切換用油圧クラッチ制御バルブ(手動方向切換弁)45、第二の主変速機構8の油圧クラッチ式変速機構C4を断続作動させる第二主変速用油圧クラッチ制御バルブ(電磁方向切換弁)46、前輪倍速機構15の油圧クラッチ式変速機構C5を断続作動させる前輪倍速用油圧クラッチ制御バルブ(電磁方向切換弁)47などを備えている。
図7及び図8に示すように、油圧クラッチ制御バルブ41〜47は、ミッションケース1の外面に取付けられ、ミッションケース1に加工された油路を介して、油圧クラッチ式変速機構C1〜C5に接続される。例えば、油圧クラッチ制御バルブ41〜44は、油圧クラッチ式変速機構C1、C2が内装されるクラッチハウジング9の外面に取付けられ、クラッチハウジング9に加工された油路9aや、伝動軸に加工された油路を介して、油圧クラッチ式変速機構C1、C2に接続されている。これにより、外部配管が削減されるので、コストダウンを図れるだけでなく、外部配管の油漏れを減らして信頼性が高められる。
次に、本発明の要部である第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44について、図6〜図8を参照して詳細に説明する。これらの図に示すように、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44は、一つのバルブユニット48に組み込まれている。このバルブユニット48は、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44が着脱自在(挿抜自在)に組み込まれるメインブロック48aと、フローデバイダバルブ(分流弁)49が組み込まれるサブブロック48bと、クラッチハウジング9との連結部となる連結ブロック48cとからなり、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44がクラッチハウジング9に外面に沿って並列する状態でクラッチハウジング9に固定される。
図7及び図8に示すように、クラッチハウジング9の上方には、ステアリングコラム49が設けられている。ステアリングコラム49は、ステアリングユニット(オービットロール)40やステアリング軸50を覆うカバー体であり、内部に配置された部品をメンテナンスするための開口部49aが形成されている。なお、図8において、符号の51は、ステアリングコラム49の開口部49aを開閉自在に覆蓋する蓋であり、符号の52は、ステアリング軸50を介してステアリングユニット40に連結されるステアリングハンドルである。
本発明では、ステアリングコラム49の下方に設けられるクラッチハウジング9と、クラッチハウジング9内に設けられる主クラッチ機構2と、主クラッチ機構2の伝動下手側に設けられる油圧クラッチ式変速機構C1、C2(第一の主変速機構5)と、油圧クラッチ式変速機構C1、C2を変速作動させる複数の第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44とを備えるトラクタTを構成するにあたり、クラッチハウジング9内に油圧クラッチ式変速機構C1、C2を設けると共に、複数の第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44をクラッチハウジング9の上面に沿って並設し、これらの第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44を、クラッチハウジング9に加工された油路9aを介して、油圧クラッチ式変速機構C1、C2に接続させる。
また、複数の第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44をクラッチハウジング9の上面に沿って並設するにあたり、ステアリングコラム49内に第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44を配置すると共に、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44の近傍位置(対向位置)に開口部49aを形成することが好ましい。
叙述の如く構成された本実施形態によれば、ステアリングユニット40やステアリング軸50を覆うステアリングコラム49と、該ステアリングコラム49の下方に設けられるクラッチハウジング9と、該クラッチハウジング9内に設けられる主クラッチ機構2と、該主クラッチ機構2の伝動下手側に設けられる油圧クラッチ式変速機構C1、C2と、該油圧クラッチ式変速機構C1、C2を変速作動させる複数の油圧クラッチ制御バルブ41〜44とを備えるトラクタTにおいて、前記ステアリングコラム49は、メンテナンス用の開口部49aと、該開口部49aを開閉自在に覆蓋する蓋51とを備える一方、該ステアリングコラム49内に、前記複数の油圧クラッチ制御バルブ41〜44を、クラッチハウジング9の上面に沿って並設し、且つ、バルブユニット48に着脱自在に組込まれた状態で配置すると共に、前記クラッチハウジング9内に油圧クラッチ式変速機構C1、C2を設け、該油圧クラッチ式変速機構C1、C2と前記油圧クラッチ制御バルブ41〜44とを、クラッチハウジング9に加工された油路9aを介して接続したので、複数の第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44をクラッチハウジング9の外面に沿って並設し、これらの第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44を、クラッチハウジング9に加工された油路9aを介して、油圧クラッチ式変速機構C1、C2に接続するものでありながら、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44の良好なメンテナンス性を確保できる。すなわち、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44が設けられるクラッチハウジング9の上面は、ステアリングコラム49の下方に位置しているので、ステアリングコラム49の開口部49aを利用して第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44に容易にアクセスすることが可能になる。
また、複数の第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44をクラッチハウジング9の上面に沿って並設するにあたり、ステアリングコラム49内に第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44が配置されているから、ステアリングコラム49を利用して第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44を雨や泥から保護したり、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44の作動音をステアリングコラム49で遮蔽し、トラクタTの低騒音化が図れる。さらに、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44の近傍位置に開口部49aを形成した場合は、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ41〜44へのアクセスがより簡単になる。
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、例えば、前記実施形態では、第一主変速用油圧クラッチ制御バルブを対象として本発明を適用しているが、他の油圧クラッチ制御バルブを対象として本発明が実施できることは言うまでもない。
トラクタの斜視図である。 ミッションケースの伝動構成を示す伝動回路図である。 ミッションケースの全体展開図である。 油圧クラッチ式変速機構の説明図である。 噛み合い式変速機構の説明図である。 トラクタの油圧構成を示す油圧回路図である。 油圧クラッチ制御バルブの配置構成を示す要部平面図である。 油圧クラッチ制御バルブの配置構成を示す要部側面図である。
符号の説明
1 ミッションケース
2 主クラッチ機構
3 走行動力伝動経路
5 第一の主変速機構
6 前後進切換機構
7 副変速機構
8 第二の主変速機構
9 クラッチハウジング
9a 油路
41〜44 第一主変速用油圧クラッチ制御バルブ
49 ステアリングコラム
49a 開口部
C 油圧クラッチ式変速機構
T トラクタ

Claims (1)

  1. ステアリングユニットやステアリング軸を覆うステアリングコラムと、該ステアリングコラムの下方に設けられるクラッチハウジングと、該クラッチハウジング内に設けられる主クラッチ機構と、該主クラッチ機構の伝動下手側に設けられる油圧クラッチ式変速機構と、該油圧クラッチ式変速機構を変速作動させる複数の油圧クラッチ制御バルブとを備えるトラクタにおいて、
    前記ステアリングコラムは、メンテナンス用の開口部と、該開口部を開閉自在に覆蓋する蓋とを備える一方、
    該ステアリングコラム内に、前記複数の油圧クラッチ制御バルブを、クラッチハウジングの上面に沿って並設し、且つ、バルブユニットに着脱自在に組込まれた状態で配置すると共に、
    前記クラッチハウジング内に油圧クラッチ式変速機構を設け、該油圧クラッチ式変速機構と前記油圧クラッチ制御バルブとを、クラッチハウジングに加工された油路を介して接続したことを特徴とするトラクタ。
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